「サステナブルファイナンス有識者会議」(第3回):議事録

1.日時:

令和3年2月18日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所:

オンライン開催
 
 【水口座長】  それでは、ただいまよりサステナブルファイナンス有識者会議(第3回)を開催いたします。先週に引き続いてということになりますが、本日も御参加いただきまして、ありがとうございます。また、前回は大変活発に御議論いただきまして、ありがとうございました。今回もよろしくお願いいたします。
 
 初めに、前回同様の注意事項ですが、御発言をされない間はミュート設定にしていただければと思います。発言される際にミュートを解除し、御発言が終わられましたら、再びミュート設定に戻していただくようにお願いいたします。
 
 それでは、議事に移りたいと思います。本日は、全体のテーマを投資家への投資機会の提供としまして、渋澤様、林様、岸上様、田代様の4人の方からの御報告をお願いしております。時間も限られておりますので、前回と同様、個々の御報告で質問を受けるのではなくて、全ての御報告をいただいた後に全体で自由討論としたいと思います。参加者の皆様には、しばらくはお聞きいただくということになりますけれども、どうぞお許しください。
 
 それでは、最初に、渋澤様から、資料1に基づきまして御報告をいただければと思います。渋澤様、よろしくお願いいたします。
 
【渋澤メンバー】  水口座長、どうもありがとうございます。皆さん、こんにちは。渋澤でございます。
 
 冒頭に、ファイナンスの役割は、当然ながら、価値創造です。そして、本会議における価値創造はサステナビリティーであり、サステナブルファイナンスには、当然ながら、サステナブルな財源が必要であるということを確認したいと思います。そういう意味では、そのファイナンスは長期的な視野を持っていることが必要だなと思います。それはテーマ型投資のようなものではなく、きっちりと長期的にストックを積み上げるファイナンシングが必要だと思っております。
 
 そして、今までの討議でメジャーメントの話が既に出ていたと思いますが、ESGでは、実はGのメジャーメントはかなり安易に出来ています。社外役員が何人ですかとか、女性の役員の比率が何割ですかとか、あるいはROEが何%ですかとかという、極端な話、Gができているか、できていないかということは、この3つのメジャーメントだけで判断しています。一方、EとSの場合にはメジャーメントはもっと複雑になります。だから、EとSの共通言語が必要になり、それがインパクト・メジャーメントであると思っております。
 
経済的なメジャーメントというのは結構シンプルに出来ていまして、そこには業種別の配慮は特にありません。けれども、前回の議論でも、COの排出のメジャーメントでは、例えば鉄鋼業界と金融業界のCO排出量が全く異なるので、単純に測定するだけではなくて、設定目標と比べて達成しているか、達成してないかという測定になります。その方が公正と言えばそうかもしれませんが、メジャーメントを複雑化しているという課題もあると思います。
 
 ただ経済的なメジャーメントであれば、鉄鋼会社であろうが、金融会社であろうが、業種に対する配慮なく、ROEはROEで、ROAはROAということでメジャーメントしています。後ほどもうちょっとお話ししますが、現在の会計制度はアメリカの大恐慌のときに始まり、当時では業種が異なるから同じような数字をメジャーメントできないという反応があったようなんです。けれども、今では当たり前になっているということを考えると、EとSのメジャーメントもシンプルにするということは普及させるという意味では大事だと思います。
 
 グリーンの政策化は、やはりEUが先導しておりまして、日本はぎりぎりのタイミングで政府がカーボンニュートラルということを宣言したと思います。その直後にアメリカがバイデン政権になったという、すごくいいタイミングです。

 ところが、今までアメリカがフィデューシャリー・デューティーの観点から年金運用はファイナンシャル・リターンだけに注視して、環境Eや社会Sへの意識がそれほど高くなかったところ、もしかするとバイデン政権によって一気にグリーンにシフトする可能性があると思います。つまりに、ファイナンシャルだけではなくて、環境や社会のマテリアリティも重要であるという舵を切って、ものすごい速いスピードで動いてしまう可能性があると思います。

 日本がせっかくカーボンニュートラルを打ち出しても、EUが更に先に行って、もたもたしていたアメリカも一気にそれがEUに近づいて、気が付いたら、日本が後れを取る可能性もリスクとしてしっかりと注視すべきだと思っております。
 
 あと、本会議の主催は金融庁なので、サステナブルファイナンスと考えたときに金融機関という組織の観点も重要だと思います。伝統的には、金融機関内部のベスト・アンド・ブライテスト、優秀な人材というのは、経営企画とか人事とかそういうところに上層へのキャリアパスがあったと思います。ただ、これからはサステナブルファイナンスの分野でも同じような、ベスト・アンド・ブライテストが配置され、もちろん英語が堪能な人物が世界のいろいろな場面で活躍して築くキャリアパスも設けるべきだと思っております。
 
 また、ファイナンスを広義的に考えても良いと思います。地域創生という観点で地域金融機関の役割には期待があると思っていますが、伝統的な貸出し業務ではなかなか難しい。したがって、どの地域金融機関もコンサルティング業とおっしゃるんですが、実際に何やっていいか分からないという戸惑いもあると思います。
 
 その中で、例えば、先日ある再生エネルギーのベンチャーと話しているときに、既に設置している太陽光パネルをメンテナンスするだけで出力が何十%改善するという話がありました。ですから既に設置している太陽光パネルのメンテナンスを地域金融機関と組んでコンサルティング事業を展開できるかもしれません。これは1つの例に過ぎませんが、再生エネルギー関連のコンサルティングや企画立案に色々な可能性があると思うんです。
 
 地域金融機関さんとの意見交換の中で、もちろん彼たちもその可能性を意識しているんですが、新しい企画を立ち上げようとしても、実際にマネタイズするときには業法の制限でできないという声も聞こえてきます。それが事実であるとすれば、まさに金融庁ですから、業法の整理が期待できるのではないかと思います。あるいは、業法の制限が無いところに、地域金融機関がきちんと理解していないのであれば、その認識ギャップを改善すべきだと思います。
 
 この数週間この委員会を通じて私がランダムに感じたことをつらつらとお話しいたしましたが、ここから3つ御報告させていただきたいことがあります。

 その1つが、外務省で2019年の春に「SDGsを達成するための新たな資金を考える有識者懇談会」が設置され、座長を務めさせていただきました。当時は河野大臣であり、御関心があった「新たな資金」は税金でした。例えば、長年議論されていた(感染症対策財源として)航空券への国際連帯税がインバウンドのインフラを整備する「出国税」という形になっていたので、「入国税」や「寄付」ということも議論しました。

 また大臣は金融取引税に関心を持っていらっしゃいましたが、株式とか債券の取引税をかけると市場の流動性に悪影響を与えるということで私はポジティブではありませんでした。ただ、為替は国境を越えるという意味で検討したのですが、意味がある規模の財源にならなかったという結論に至りました。税は、今回の有識者会議の本題ではないので割愛します。ちなみに、炭素税は議論しなかったことを、今ではちょっと反省しておりまして心残りになります。
 
 一方、提言書の提案で期待が高かったのはインパクト投資です。皆さん御存じのとおり、インパクト投資は、ポジティブな社会的インパクトを意図しながらも、同時に経済的リターンを求めます。ただ、日本では前例が乏しいために成功事例を促す官民連携の新たな資金の流れをつくることと同時に人材を育成するエコシステムをつくることが大事であるということを提言しています。
 
 もちろんインパクト投資にはインパクト・メジャーメントが不可欠であり、インパクト評価の国際的なスタンダードづくりに日本も積極的に参画することと国内に浸透させることが重要であることも提言しました。
 
 また前回の会合でも私からちょっと発言させていただきましたが、日本でESG投資やサステナビリティー投資を促すために、自己資本比率のリスクウェイト規制の緩和が税優遇より重視されているようです。
 
 あと、休眠預金の活用も提言しました。法律の柔軟な解釈により、インパクト投資の財源として考えられるということです。その場合、年次に入ってきたお金を使い切るということではなくて、次世代にもきちんと残るようなストックを積み立てることが重要だと思います。

 米国では「5%ペイアウトルール」という考え方があります。5%を社会的事業へ拠出すれば、非営利の基金として認める税制度です。したがって、残った95%を基金は投資しているわけです。その投資が長期的に5%以上の利回りがあれば、その基金は永続的に継続する、好調な運用であれば拡大していくということができているんです。

 そういう意味では、グリーンファイナンスの財源を積み立てて、5%はマネタイズしづらいグリーン事業に活用して、残った95%をサステナブル関連のリスクキャピタルとして長期投資するストックを築く考え方が必要だと思っています。
 
 直近では大学研究支援ファンドという構想が立ち上がっていまして、そちらでも関係者に5%ペイアウトルールの構想を活用すべきではないかと提案しています。繰り返しますが、長期的なストックを財源としてつくるということが重要だと思っています。
 
 二つ目に御報告したいことは、UNDP(国連開発計画)のSDG Impactというプログラムです。私は、そこのステアリンググループのメンバーとして参画しています。一言でいうと狙いはSDGsにアラインメントしていることを判断する基準づくりであって、その基準を満たしているのであれば「Impact Seal」という認証を与えるプログラムです。プライベートエクイティ、債券、そして、企業の基準がつくられております。
 
 当初、この基準はチェックリストみたいなものだと思っていましたが、実は情報開示のチェックリストやレポーティングの基準ではなくて、プリンシパルベースを求めています。
 
 私が用意したレジュメで、4つのスタンダード、Strategy、Management Approach、Transparency、Governanceと示してあります。1番目のStrategyではEmbedding foundational elements into purpose and strategyと書いてありますから、企業の存在意義とSDGsがいかに接続しているか、融合されているかということの確認になります。そして、スタンダード2のところではその戦略が執行、マネジメントされていて、スタンダード3のところでは透明性の確認、そして、スタンダード4では上位全てのコミットメントを確認するガバナンスという考え方です。

 ですから、かなりハードルが高い考え方ではありますが、とても重要だなと思っています。担当部署がアンケートを答えて、基準を満たせばシールをもらえるというレベルの話ではなくて、経営トップのコミットメントをはじめ、組織全体がSDGsとしっかり接続していますという考え方です。非常にレベルが高いですが、企業の価値創造を考える上でとても重要なポイントだなと思っております。
 
 現在、プライベートエクイティの基準は完成しておりまして、債券も最終形になっています。企業の基準の草案はパブリックコンサルテーションの期間を経て今年の前半に最終版が整う形になっております。
 
 SDG ImpactはUNDP自身が認証するということではなく、独立アシュアランス機関になります。そのアシュアラーのための研修プログラムを、今年夏から後半ぐらいに米デューク大学が運営することになっています。ですから、Impactシールがプログラムとして始まるのは、早くても年末、1年後ぐらいになると思っています。
 
 そういう意味ではちょっと先の話かもしれませんが、現在は日本の企業がちょうど今年度の統合報告書の制作の準備を進めているところだと思いますので、これは非常にいいガイドラインになる示唆がたくさんあると思います。ぜひ日本企業にUNDP SDG Impactについて調べてみていただきたいと思っております。
 
 さて、最後の三つ目の報告事項ですが、結構重要なポイントだと思っています。SDG Impactのステアリンググループにちょうど1年ぐらい前に出席したときに上がった話でした。実は、ESGの次の流れが既に始まっているということです。
 
 ただ非財務的な価値の情報開示ではなく、企業が、インパクトをきちんとメジャーメントしていますか、メジャーメントしているのであれば目標設定にしていますかという流れがあるということです。
 
 このコメントの発言者はロナルド・コーエンさんという方で「インパクト投資の父」という存在感がありますが、もともとイギリスでベンチャーキャピタルの草分けの大ベテランです。
 
 コーエンさんが指摘されているのは先ほどの会計制度についてです。現在の会計制度の在り方は、実は大恐慌というショックのときに始まっている。現在も、コロナでショックが世界で生じている。だから今から30年後、50年後に振り返ったときに、実は企業が経済的インパクトだけでなくて、環境的インパクト、社会的インパクトも会計制度に反映されていることが当たり前になっているかもしれないということです。なるほどと思いました。
 
 コーエンさんが紹介しているのはImpact-Weighted Accounts Initiativeといいまして、ハーバードビジネススクールが進めている研究であります。去年の夏に研究の成果がいろいろ出ていまして、その中、2018年のときのデータを使って、黒字化していた1,694社のグローバルの企業に環境的インパクトを加味すると実は15%が赤字になり、32%は利益が25%以上減益になっていたという結果になったようです。
 
 これは当たり前と言えば当たり前の結果であります。また、環境のインパクトから入るというのも、社会的インパクトと比べると数値化が測定しやすいというポイントもありそうです。だから、順番として社会的インパクトより、環境的インパクトが先だなと思いました。
 
 そして、日本企業にとって大切なポイント、これが私の最後の報告事項になりますが、株式市場が30年以来の高値といわれていますが、まだ上場企業のおよそ半数がPBR1.0を割れているという状態を考えると、日本の会社の多くが、財務的な価値と比べると、EとSを含む非財務的な価値が可視化できていなく、資本市場から見えない、評価されていないということだと思います。
 
 しかし、もし環境的インパクトと社会的インパクトを合わせて可視化して、それが会計制度に反映できる流れになったときに、「我が社はきちんと非財務的な価値を持っています、我々の会社に勤めている人材はマイナスな価値ではなくて、当然ながらポジティブな価値がある存在です」ということを企業が示すことができるはずです。
 
 社会的インパクト、環境的インパクトという「見えない価値」の可視化が会計制度に反映されれば、日本企業の市場におけるバリュエーションが高まる可能性があると思います。

 ですから、少なくともこのような動きが世界で始まっているということを感知していただきたいです。また、これは大学の研究なので、当然ながら色々なデータや考え方のインプットがあったほうが良い研究成果になるメリットがありますので、彼らは日本企業からのアプローチを歓迎すると思います。日本企業から積極的に関与することは、すごく大事だと思っております。
 
 すみません、ちょっと長くなりましたけれども、私の発表は以上となります。ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。それでは次に岸上様、よろしくお願いします。
 
【岸上メンバー】  よろしくお願いいたします。初めに、事前に皆様のESG評価機関に関する問題意識の共有をお願いいたしましたが、その結果、非常に多くのコメントをいただきまして、感謝いたします。この短い時間で全てにお答えすることは難しいと思いますが、今後の評価機関との対話などの参考にもなりましたらと、後半の参考資料に詳細を表示しておりますので、本日はそれを踏まえまして、主に整理が必要な点、そして、提案を私のほうから紹介させていただければと思います。

 時間も限られておりますので、最初に4点主要なポイントを御紹介いたします。1点目として、ESG評価機関に対して、具体的に投資家が何を一番必要としているのかを整理して伝達する必要性。2点目としましては、評価結果の違いや利益相反が生じるという可能性を課題点として挙げられることが多いかと思います。まずその課題が生じる背景を理解した上、最善の対応が考えられるのではないかと思われます。3点目ですが、評価対象企業のESG情報源の媒体の整備。そして4点目、主に事業リスクに着目しがちなESG関連情報開示の整理だと思いますが、それに加えまして、投資機会となり得る製品やサービスに関しての戦略的な取組の有無が読み取られるような開示の促進も整備されればと思われます。

 こちらは、当会議の委員から提起された主なESG評価の仕組みに関する問題意識となっております。前半に関しましては、これから詳細を整理いたします。後半に関しましては、評価機関が直接というよりも、周りのステークホルダーとの関係性の中で必要であれば整備できるものではないかと考えられます。より詳細に関しましては、スライド15でまとめておりますので、ご参照いただければと思います。

 先ほども御紹介いたしましたとおり、ESGの評価結果の相関関係のなさや利益相反が生じる危険性、そもそもの評価機関の在り方というところに問題視が行くことが多いかと思います。そこでまず整理が必要な点として考えられますのが、そもそもESG評価を行っている機関が、必ずしもESG格付機関ではないという点かと思われます。ですので、以降ではESG評価機関という形で統一させていただければと思います。

 評価機関は、もともと各国の独自の機関として調査を行ってきましたが、ESG要素を考慮することが主流化する中で、指数会社、信用格付会社、情報ベンダー、ファンド格付会社などによって内製化または買収が加速化して、現在に至るかと思います。今回事前にいただいた問題提起の中でも、主に指数会社の下で算出されているESG評価に集中していたかと思いますが、それ以外の機関におきましても、評価が実施されている点も確認いただければと思います。

 そして、ESG RatingがESG格付と訳されていることもあり、債券の信用格付と同様、統一した手法での評価という認識になっていることが原因になっているかと思いますが、実際はそもそも世界で、皆様御存じかと思いますが、統一されたESG基準がない中でESGデータをそれぞれ投資家のニーズに沿うと思われるモデルで開発してきた経緯があります。その結果、統一されていることがよいか悪いかは別として、実際問題として、例えばESGリスクに関する事業活動での対応度合い、環境や社会課題に向けた製品やサービスの貢献、将来的なキャッシュフローに影響するESG課題など、それぞれの視点を独自に組み合わせてデータを提供しておりますので、ある意味、評価結果に違いが出ることは当然かと思われます。

 そして、もう一点整理させていただきたい点ですが、ESG評価を実施している会社と基準を実施している会社はそもそも団体が異なりまして、ESG評価会社におきましては、本来はESG基準を利用して評価するという役割になるかと思います。しかし、唯一の基準がないという中で、それぞれの評価機関が様々な基準の中から選択して組み合わせているので、結果的に2次的な基準を作成しているかと思います。仮に信用格付のような一律のESG格付を求めているということになれば、当然一律の基準が必要となります。そういった背景もありまして、各ESG評価機関におきましても、EU タクソノミーとか、TCFDの枠組みの内在とか、統一に向けた行動に積極的に参加しています。

 一方で、果たしてESG格付情報としての扱い、その基となるESG情報や評価のみが、各評価に携わる機関の最終アウトプットでよいのかどうかという点は留意すべき点ではないかと思われます。

 また、指数会社が提供するESG情報やインデックスは対応すべきなのか。事業会社を中心として問われることが多いと思われますが、その疑問に対して全体像を整理いたします。全体像の傾向として、総運用資産高においてインデックス連動型の残高が増加傾向にあります。また、ESG要因を明示的に考慮している残高も、欧州を中心としてインデックス連動にある傾向にあります。

 また、指数会社の指数利用者の大半は、実はアクティブ運用におけるベンチマークの参照用となっております。現時点では、ESG指数といいますと、どちらかというと、インデックス連動型のファンドという実態だと思いますが、もしも今後アクティブ運用の参照ベンチマークとしてESG考慮型に移行する傾向が強まった場合、よりESG評価が要になってくるかと思います。

 また、こうした指数会社でのESG情報は、指数の構築だけではなく、アクティブ運用のそもそもの参照データとか、Climate Action 100+などの共同エンゲージメントの参照情報、またはEUタクソノミーを遵守するためのファンドの内訳を整理するための情報など利用が多岐にわたっております。ですので、一般的にイメージされる特定のESG指数のインパクトというよりも、マクロの視点でグローバルなESG指数会社の評価対象、またはそのデータを利用される投資家の投資対象とバリューチェーン・サプライチェーンに位置する企業にとって重要な評価内容と言えるのではないかと思います。

 ここで、その重要性を認識した上で、再び指数会社に着目しますと、一般的にインデックス運用を採用する主な理由の1つとして、運用コストを下げるということが挙げられます。こうした流れの中で、プロセスの効率化は合理的であるかと思います。また、これまでのESG指数でイメージされるのはボトムアップのアナリストによる調査だと思いますが、気候変動関連を中心として、ビッグデータやAIを活用する方向に進んでおります。

 一方で、現実問題としての企業の取組やESG課題は刻一刻と変わっており、複雑な情報となっております。そのため、アナリストが個別の情報を確認する一定の価値があるかと思われます。同時に、今回提出された事前フィードバックでも挙げられた通り、評価対象企業からは対話が必要という要望が非常に上がってきております。
こうした効率化を求める声と実際のボトムアップの調査のニーズと対話のニーズというところに、最終的に投資家が何を求めているかによって評価機関の今後の役割が変わってくるかと思いますので、投資関係者の声をまとめて提供するという必要性があるのではないかと思われます。

 もう一点、良く挙がってくる課題点として、評価結果の正確性と評価側のリソース不足という懸念です。こちらを解消する1つの解決策としましては、実際に評価対象となっている企業情報の媒体の整備になるかと思います。

 ここで1つ具体的な事例を御紹介いたします。前回発表いただきましたJFEホールディングスの事例に沿って御紹介できればと思います。左側が低炭素経済移行に貢献している製品情報を評価する際の情報源、右側がESGのリスクに対応した場合の情報源となっております。合わせまして約40の異なる情報源を見て評価していることが分かるかと思います。また、多くの場合はこちらの右側のリスクに関する情報をイメージされるかと思いますが、左側は、アニュアルレポートや有価証券報告書に加えて、大半の情報に関しましては、個別の製品に関する情報開示に依存しています。こういった低炭素経済移行に貢献型の製品とその売上高などの財務的な情報の結びつけが確認できないがために、投資機会につながっていないという課題があるかと思います。

 こちらの資料はそういった評価の裏づけ情報の透明性の確保の事例となりますが、時間の都合上、説明は割愛させていただきます。

 最後に1点追加の問題提起ですが、今JFEホールディングス様の事例でも御紹介いたしましたとおり、日本の低炭素経済への移行に向けた製品・サービスの取り組みは、世界の中でも決して少なくないという傾向分析が独立した機関においても確認されております。一方で財務的な情報との結びつけや、情報開示の整備というところがまだないという現状かと思います。こうした結びつけがあることによって、ベンチマーク、インデックス連動型の投資を含めて投資機会を得る比率が上がっていくのではないかと思われます。

 以上です。ありがとうございました。
 
【水口座長】  それでは、続きまして、林様から資料3に基づいて御報告をいただければと思います。林様、お願いいたします。
 
【林(礼)メンバー】  よろしくお願いします。本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。BofA証券の林と申します。本日、「トランジション・ファイナンスの動向について」ということをお話しさせていただく立場にあったのは、恐らくなんですけれども、「Climate Transition Finance Handbook」を作成いたしました国際資本市場協会(ICMA)の理事を務めているということ、それからあと、BofAがこのワーキング・グループの1社であるということからだと考えております。この資料に沿いながら簡単に御案内を申し上げます。
 
 日本におきましてトランジション・ファイナンスということにつきましては、昨年から経産省さんの環境イノベーションに向けたファイナンスのあり方研究会というのがありまして、それに続いて今年の1月より、金融庁さん、経産省さん、環境省さんの3省庁が共同でトランジション・ファイナンス環境整備検討会というのがありまして、そこでも議論をされております。私もそのメンバーの1人でございます。このトランジション・ファイナンスというところで、検討会で使われています資料を使って御報告を申し上げたいと思いまして、多分皆さん結構御覧になっていると思いますので、ポイントだけということだと思います。
 
 次のページお願いいたします。トランジション・ファイナンスがなぜ盛り上がってきたかということなんですが、1つには、当然ながら、先ほど申し上げた研究会などもそうですけれども、昨年菅首相によりカーボンニュートラルの実現と、それに向けて、カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略が発表されております。この1ポツ目に書いてありますけれども、トランジション・ファイナンスの位置づけといたしまして、着実な低炭素化に向け、移行段階に必要な技術に対して資金供給を行うためのものということで位置づけております。
 
 では、なぜグリーンではなくてトランジション・ファイナンスという話になったのかということですけれども、次のページ、お願いいたします。先ほどから岸上さんの発表やその前の渋澤さんの御発表にもありましたように、EUタクソノミーというものが大きく影響しているというふうに理解をしております。EUにおいては、御案内のとおり、気候変動対策として様々な施策を推進していますけれども、その1つとして、サステナブルな経済活動とは何かというタクソノミーをつくりました。分類法と日本語では訳すようですけれども、一般的にタクソノミーという言葉が使われております。
 
 その1つの例ということで、ここには鉄鋼の製造の話が入っておりますけれども、正直、今の日本の鉄鋼産業ですと、この厳しいしきい値を達成するということは極めて難しいと言われております。それ以外の話でも、例えば石炭火力のみならず、その他の化石燃料につきましても、このタクソノミーという定義に行きますと、サステナブルではない、つまり、グリーンではないということになります。あるいは、有名な話では、日本のハイブリッド車につきましてもサステナブルではないということになってしまうということでございます。
 
 そうなると何が起きるかと。これはヨーロッパもそうなんですけれども、いわゆるEUのグリーンというものだけがグリーンボンドになってしまうと、本当はみんなで達成したい移行に対して十分な資金が行かないのではないかということで、このトランジション・ファイナンスというのは実はヨーロッパから始まっております。
 
 次のページに行っていただきたいんですけれども、対象はそもそもEUタクソノミーというのは、ヨーロッパの金融機関であったり、事業会社だったりするんですけれども、グローバル経済の下では、ヨーロッパの企業・金融機関だけではなくて、日本も含めて世界中の人々に関係が及ぶという中で、EUタクソノミーだけでは把握されない、把握しにくいトランジションを支えていくファイナンスをやろうということになりました。
 
 このICMAの作った「Transition Finance Handbook」というのは、昨年の12月に発表されたんですけれども、実際には一昨年の6月から議論が始まっております。実際、去年の2月ぐらいからワーキング・グループ、80社以上の関係者、非常に多いメンバーで構成されています。そのメンバーも公表されていますけれども、証券会社、金融機関のみならず、御発行体、当局、それから、証券取引所、それから、NPO、それから、EUタクソノミーをつくっている人々も入って、ああでもない、こうでもないとさんざん議論をして、3回か4回ドラフトが回って、それから、春先にはパブリックコメントも募集されておりましたので、日本の方々も多くの方々がコメントをしてくださいました。そういった中で、トランジション・ファイナンスについてのハンドブックができたというところでございます。これによって、多排出産業がグリーンに向かっていくためのボンドが発行しやすくなるだろうという枠組みになっております。
 
 このトランジション・ファイナンスにつきましては、実は既に経産省さんが翻訳をしまして、ICMAのホームページにも翻訳が載っておりますので、ぜひ御覧いただきたいと思っております。ここのポイントとしては、とはいえ、パリ協定という、とにかく世界的に重要な目標を達するためにみんなで資本市場で頑張っていこうねということで、そのための明確のガイダンスを示そうというものでございます。
 
 ここに4要素というふうにありますが、戦略、マテリアリティ、科学的根拠、透明性というふうに書いてあります。詳細は申し上げませんけれども、要は、それぞれの発行体がパリ協定の実現に向かっての戦略、そして、それはビジネスにおいてちゃんとマテリアルなものであるということと、それから、やる気だけではなくて、ちゃんと科学的根拠を示すということ、そして、透明性のある投資計画をちゃんと発表してくださいと。そうなれば、多排出産業の方々も十分に調達ができるということだと思っております。
 
 あともう一つ特徴的なこととしては、ハンドブックを見ていただくと分かるんですが、ここに小さく下に書かせていただいていますけれども、トランジションへの経路は、発行体のセクターごと、または事業地域ごとに考えなければならないというふうに書いてあります。一般的に発行体は、異なる出発点や経路にあるため、このハンドブックでは、トランジション・プロジェクトについての定義とかタクソノミーは提示しませんと。既にこの分野において幾つかの取組が世界各地でも進められていますというふうに書いてあります。
 
 一応御参考までに申し上げておきますと、この世界各地で進められているという中に、日本の政府や民間におけるトランジション・ファイナンスのイニシアティブということで、例えば経産省さんのほうで昨年発表したクライメート・イノベーション・ファイナンス戦略のリンクが貼ってあるということで、私としては非常にインクルーシブなハンドブックだなというふうに思っております。
 
 次に、次のページに行っていただきまして、今申し上げた4つの要素ということで、ここに詳細を書かせていただいております。見ていただきますと、いろいろな4要素について、ポイントはクレディビリティとトランスパレンシーだということを繰り返し言っておりまして、やはりパリ協定に向かっての長期目標、そこにたどり着くまでの様々な科学的な根拠とパスウェイを示してくださいということが書いてあるということだと思っております。一方でこれはあくまでも我々金融機関あるいは市場参加者がつくった自主的なガイドラインでございますので、この上から2ポツ目に書いておりますけれども、ベストエフォートベースとなります。例えばスコープ3につきましては、なかなか難しい業態もあるので、ベストエフォートだというふうに書いてあります。
 
 ここからが問題なんですけれども、トランジション・ファイナンスというのはいろいろな地域の方々がパリ協定に向かって資金を調達することを容易にするものだという位置づけであるがゆえに、ここのきちんとした説明を怠りますと、グリーンウォッシュではないかとか、パリ協定に本当に整合しているのかということを、資金調達を実際に行った後に評判を落とすということにもなりますので、ここは透明性高くやっていかなければいけないというふうに思っております。
 
 あともう一つ、特に日本の発行体さんにとって、今申し上げたこととも重なりますけれども、まだ脱炭素化の明確なパスウェイが出来ていない初期段階の発行体を支援することができるのかというのが、Q&A、これもハンドブックの後ろのほうについておりますので、御覧いただきたいんですけれども、まだ断言はできないんだけれども、取り組む意思がある発行体も調達できるのかという質問が書いてあります。答えはイエスでございます。ただし、発行体さんとしては、このガイドラインに適合するように最大限努力するということ、それから、途中については、先ほどもレポーティングとかメジャーメントという話がありましたけれども、進捗状況とかできるだけ詳細についてインパクトレポーティングをすべきであるということを言っております。
 
 最後のページに行かせていただきます。最後に日本での取組でございますが、先ほど申し上げた環境整備検討会が今立ち上がっておりますけれども、年度内にある程度の基本方針を定め、そして、多排出産業の事例収集だったり、業種別のロードマップを策定しようということになっております。日本にはやはりヨーロッパに比べてやらなければいけないことがたくさんあると思っていますので、このトランジション・ファイナンスというのがいかにグローバルに受け入れられて、かつ我々の抱えている課題を解決しながら経済の発展にもつなげられるかという、極めてチャレンジングなテーマだと思っていますけれども、これはこのサステナブルファイナンス有識者会議での議論と切り離せない重要なテーマだと考えておりますので、ぜひまた皆様とも意見を交換できればと思っております。
 
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。それでは最後に、田代様から資料4に基づいて御報告をいただければと思います。田代様、よろしくお願いいたします。
 
【田代メンバー】  よろしくお願いいたします。大和証券の田代でございます。本日はこのような場でお話しする機会をいただきまして、ありがとうございます。本日の資料でございますが、私どもだけではなく、ここにありますように、日本証券業協会の「証券業界におけるSDGsの推進に関する懇談会」と一緒にこの資料を作成させていただいております。
 
 まず1ページ捲っていただきましてスライドの1です。皆様御存じのとおり、環境・社会を考慮する投資というのは、1920年より様々に変遷しております。最近の動きとしましては、2006年にPRIが策定されたことをきっかけにESG投資が始まり、同年、国際金融ファシリティ(IFFIm)によるワクチン債が発行されております。その後、先ほども御説明がありましたように、インパクト・インベストメントの世界では、2014年にICMAがグリーンボンド原則を策定、翌年には国連がSDGsを採択し、また、COP21ではパリ協定が採択されております。2017年になりましてソーシャルボンド原則が策定され、その後にトランジションという流れになっており、現在でも急速に市場が拡大しているというのが現状でございます。
 
 次のスライドです。釈迦に説法ではございますが、ICMAのグリーンボンド原則及びソーシャルボンド原則を掲載しております。ICMAの原則では満たすべき4つの核の要素が示されておりますが、それに加えまして、発行には外部評価を行うことが望ましいとされております。そのために、皆様御存じのとおり、通常の債券を発行するよりも発行体にとってはハードルの高い発行となっております。
 
 次のページでは、インベストメントチェーンの中での、私ども証券会社の役割と立ち位置を説明させていただきます。債券市場では、環境を含む社会課題解決型の事業の中で、発行体がソーシャルボンド、グリーンボンドという債券を発行しますが、それに対して、投資信託や年金資金等の機関投資家、または個人といった様々な投資家が投資をすることによって資金が供給されております。この債券市場において様々な発行体と投資家をつなぐ役割を証券会社が果たしております。証券業界は、市場の仲介業者として発行体、投資家双方に働きかけを行うことによって、SDGs達成のために必要とされる資金の流れを拡大していくという大切な役割を担っていると考えております。
 
 次のスライドをお願いします。このような役割の下で、証券業界としては、本業で何ができるかという検討を行いまして、まずグリーンボンドをはじめとした債券にフォーカスして、その普及拡大を図ることにいたしました。そのための普及啓蒙活動といたしまして、SDGs債という統一呼称の提唱、SDGsに貢献する金融商品に関するガイドブックの制作、SDGs債統計情報の作成・公表、あとは、ICMAや環境省、東京大学といった組織と連携・協力したイベントを開催することに取り組んでおります。
 
 次のページです。取組のうちの1つですが、2017年よりICMAと日本証券業協会は毎年、共催するコンファレンスを開催しております。第1回の開催以降、こちらは経団連様の御協力をいただいていることもありまして、事業会社、地方公共団体、金融機関の参加が右肩上がりに増え続けているのを表で見ていただけると思います。そういった意味でも、証券業界としては、発行体へのグリーン・ソーシャルボンド市場のアウトリーチが着実に進められていると考えております。
 
 次のページです。こちらのスライドは、協会のSDGsの推進に関する懇談会の下部ワーキング・グループのメンバーより寄せられた、サステナブルファイナンス、インパクト・インベストメントに関する課題認識の一覧表となっております。詳しいことはぜひ御覧になっていただきたいと思いますが、幾つか取り上げさせていただきたいと思います。まず表の上からですが、インパクト・インベストメント商品に関する定義やガイドラインの整理・策定を課題とする「市場関係者における目線・認識等のインテグレーション」という項目があります。それ以外にも、「統計データの作成」、「評価体系の確立」、開示書類の改善、整備」等、これらは先ほどの皆様からも御発表があったとおりの課題だと思います。
 
 次のページに移っていただきまして、さらには、「投資家行動の在り方」、「投資家向けの普及・啓発」、「証券会社の役職員向けの普及・啓発活動」、「セルサイドアナリストの役割」もございます。最後の2つですが、こちらは、個人向けSDGs債発行に関わる発行体への政策的支援や、ソーシャルボンド発行促進への税制をはじめとした政策的支援を課題といたします「投資機会の提供」と、「発行と投資・保有に関する政策的対応・支援」という課題を挙げさせていただいておりますが、様々な観点からの課題があると認識しており、先ほどの皆様の発表と同様なものをこちらに並べさせていただいております。
 
 私からの説明は以上となりますが、御参考までに9ページ以降に市場関係者による課題認識の詳細を記載しております。また、別添参考資料として、「証券業界におけるサステナブルファイナンスへの取組み」という表題で、これまでの証券業界における取組をまとめさせていただいております。お時間があるときにぜひ御高覧いただければ幸いでございます。
 
 以上、簡単ではございますが、私からの御説明とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。それでは、ここからは自由討論としたいと思います。ここまで御報告いただいた内容を中心に、本日のテーマであります、投資家への投資機会の提供について御議論いただければと思います。
 
 ただ、今日4人の皆様からいただいた報告は大変幅広うございまして、どこからどう議論したらよいのかという感じがするかと思います。そこで、資料を直前ですが作らせていただきましたので、事務局の方に共有をお願いいたします。
 
 この資料は、実は今、私は金融庁の会議室にいるのですけれども、金融庁に来る道々、皆様の資料を事前に拝見しながら、今日はこんな話になるのかなということを想像しながら作った資料です。お話を伺う前に作りましたので、十分に論点が拾えていない部分があろうかと思います。その点はおわびします。また、事前にこの資料をお送りすることができませんでした。何しろ来る道々作って、先ほど金融庁の事務局の方にお願いをしたところです。このような資料を突然提出するというのは大変異例のことだそうでありまして、手続上の不備につきましては、全て私の責任です。おわびを申し上げますとともに、すぐに、できるだけ早めに共有をさせていただきますので、どうぞお許しください。皆様にはデータとして共有させていただきますので、お許しをいただければと思います。
 
 この図は何をしようとしたかというと、今日の4人の方の報告をマッピングしてみようと思ったということです。おそらく今日の皆様の御議論は、Who、Where、Howという、誰が、どこに、どんなふうに投資をするのかという観点で整理できるのではないかと考えたわけです。
 
 まずWhoというのはアクターでありまして、個人の方のお金が金融機関や機関投資家を通して最後は企業に向かうわけですけれども、このインベストメントチェーンの中で、例えば岸上さんからは、ESG評価機関のお話をいただきました。また、今、田代様からは、証券会社のような仲介機関の役割についてもお話をいただきました。岸上さんからは、ESG評価機関の評価が言わば参照情報となって非常に重要な役割を果たす、こういう御指摘もいただいていたと思います。まず、このインベストメントチェーンの中のプレーヤーの観点から、どこにどういう役割を求めるのかというのが1つの論点になると思います。
 
 次に、そのお金がどこにどんなふうに向かっていくのかというときに、林様からはトランジションの話をいただきました。このトランジションという考え方は、どういう分野にお金を流していくのかと、こういう話なのかなと思いますし、渋澤様からは、SDG Impactの話をいただきました。このSDG Impactというのも、言わば資金の流れていく方向をどういう方向に持っていくかということなのだろうと思います。また、ESG情報の開示のところで会計に組み込んでいくという話もそんなふうに解釈するのかなと思いました。渋澤さんの話は大変幅広くて全部拾えていなくて申し訳ないのですけれども、こんなふうに考えてみました。
 
 そして最後に、そのお金の流れをどういう媒体でといいましょうか、どういう商品で流していくのかというときに、今、田代様からありましたSDGs債の話というのが1つ今日の議論の中心になるのだろうと思います。一方で渋澤様からはインパクト投資という議論をいただきましたし、田代さんの話もインパクト投資の文脈の中で議論されたんだと思いますが、インパクト投資やSDGs債という議論があるのかなと。また、岸上さんからはインデックスの話もありました。ESG評価がインデックスの基になっているという意味では、ESG指数のような商品というのもあるんだろうと。

 それと、今日あまり議論になりませんでしたが、SDGs債が資金使途を限定して発行する債券であるとすると、資金使途を限定するのではなくて、KPIを約束して発行するリンクローンとかリンクボンドといった方法もあると考えます。また、ここにはエクイティのことがあんまり出ておりませんけれども、あるいは渋澤様から地域金融の話もありました。地域金融がどういう役割を果たすのかという意味での融資の役割とかエクイティの話というのも、どういう経路や媒体で資金を流すのかという、こんな整理ができるのかなと思っております。
 
 こういう整理を一応したのですが、これは参考ですので、見ていただいて、どこの議論をしようかなと考えていただいた上で、この先は自由討論です。本日も、なるべくインタラクティブな議論とするために、直接、声を上げて御発言いただければと思います。御発言を希望される方は、ミュートを解除して、例えば「水口ですけれども、ちょっといいですか」と一言言っていただいて、そのまま御発言いただければと思います。
 
 前回同様ですが、ルールは2つです。1つは、発言中の方の発言は遮らないように思います。もう1つは、対話のキャッチボールができるように、1回の発言を短めにお願いします。1つの発言では、1つのテーマに絞って発言していただき、長くても一、二分程度で御発言いただければと思います。そして、次の方に発言の機会を譲っていただいて、また自分の番が回ってくる、こんなふうにしたいと思います。前回のように、次は俺が発言するぞということで手を振っていただいても構いません。でも、私が気づかないときもあるかもしれませんので、気づかなければ声を上げていただければと思います。また、チャットのほうで、全員宛てにお名前と発言希望だと記入していただいても構いません。その場合には事務局の方が見ていてくださって、私に教えていただけます。
 
 それでは、共有を消して皆様の顔が見えるようにさせていただいて、発言をお願いしたいと思いますが、早速、藤井様からコメントありとのことですので、まず藤井様からお願いいたします。
 
【藤井メンバー】  ありがとうございます。ちょっと技術的なことが入るので、一、二分というご指示を超えそうですけれども、御説明の中で、渋澤様から自己資本比率のリスクウェイトの優遇という御意見がありました。あと、田代様の資料の12ページにもそういう一文が入っているので、ここについて、私は、バーゼル規制に関連しまして、民間業界の立場で、2000年から今までずっとバーゼルの自己資本規制の検討に関わってまいりましたので、そこでの経験からのコメントということでございます。
 
 自己資本比率規制のリスクウェイトですけれども、基本的にはバーゼル委員会で、委員会メンバー28か国が合意して決めるということでありまして、日本だけこれでいきますというのはなかなか難しいつくりになっております。もともと自己資本比率は最低基準で、これ以上の資本をもたないといけませんということなので、厳しくするほうはある程度どうぞということですが、1国だけここを優遇するというのは国際的に不公平になってしまいますので難しい。加えて、リスクウェイトというのは、言わば一体成形の車のボディーみたいなところがありまして、車の前のボンネットをぼんとへこますと、後ろのトランクの蓋がぽんと開くみたいなところがございます。そういうふうにできています。
 
 何が言いたいかといいますと、SDGs債は社会的意義があるからウェイトを下げようという議論をすると、そうか、じゃあ埋め合わせで何のウェイトを上げようかと、こういう話になるんです。要は銀行に求める資本全体の額を減らしてあげようとは誰も言わないということであります。そうすると、いきおい、ブラウンな社債とかブラウンな貸出金のリスクウェイトを上げたらいいではないかというような話になる可能性もあると思っています。
 
 日本の事業債については、伝統的に重厚長大企業の発行ウェイトがかなり高いですから、SDGs債を優遇するのはいいんですけれども、結果的にエネルギー企業さんの債券のリスクウェイトが上げられてしまう、資金調達できなくなる。そういうことになって、今日のトランジションの話と逆行するようなことが起きないように注意しないといけない。逆に、先行しているヨーロッパからすると、渡りに船とか、棚からぼた餅みたいな話に聞こえるかもしれないということでございます。
 
 加えて、リスクウェイトですけれども、これは従来から相当の数学的な根拠に基づいて決められております。例えば、格付シングルAの貸出しはトリプルBの貸出しよりどれぐらい倒産確率が高いから、どれぐらいリスクが高いと、だからリスクウェイトを幾ら上げるんだと、何度も何度も試算して、モデルなども回して、それを各国が持ち寄って、最終的にグローバル28か国で合意するということです。
 
 気候変動関連資産は、既に今までの議論に出ているように、合意した定義もない。再生エネルギー企業のほうが何々電力より、幾ら低炭素社会に貢献するのかというモデルもない、データもないということの中で、でも再生エネルギーだから2割ぐらい優遇しようかという話にはなかなかならないというのが、この自己資本比率、リスクウェイトのつくりであります。
 
 こういったことがありまして、前回、御紹介しましたIIF(国際金融協会)が1月に監督当局宛てに送った提言書の中では、自己資本比率規制での、いわゆるリスクウェイトを使った扱いについては、リスクに基づいたもの、論拠に基づいたものにすべきであって、気候変動関連のリスクに、現時点で自己資本比率規制を使うのは適切ではないと業界全体でコメントをしております。
 
 すみません、あともう1点、申し上げます。これは、座長から先ほどお示しいただいた図に関連するんですけれども、今日、御説明いただいた中に入っていなかったものとして、排出権取引があるのではないかと思っております。先ほどの図でいいますと、右側に投資先企業とありまして、その左下に仲介金融機関というのがございます。ここをつなぐところがWhoで、Whereについてはトランジション、Howのところに排出権取引が加わってくるのではないかと思います。これにつきましても、IIFがボランティアから成るタスクフォースを組成しまして、1月に提言書を出しております。そこでは、排出権取引市場の創設に取り組むと明言しております。特に、トランジションにおけるカーボンオフセット、これはいい悪いは別途議論はありますけれども、その手段として期待されるものということで、もちろんいろいろな課題はあるんですけれども、報告書には欧米の主要な金融機関が名を連ねていまして、市場創設に向けて動き出すと宣言をしておりますので、本会議においてもこういう動きがあるということについては少なくとも認識しておく必要があるのではないかと思っています。
 
 長くなりましたが、以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
【渋澤メンバー】  水口座長、ちょっとよろしいですか。すみません。
 
【水口座長】  どうぞ。
 
【渋澤メンバー】  すみません。
 藤井さん、ありがとうございました。いろいろ自己資本のところを教えていただきました。私の感覚ですと、もちろん日本だけが勝手に変えるということはなくて、難しいということは分かっています。ただ日本は莫大な現金を抱えている国でありまして、それを投資するきっかけとして、機関投資家が自己資本規制のことを検討してくださいという声があることは事実だと思うんです。
 
 すぐに変えることは難しいことは承知しているんですけれども、こういう声があることをバーゼルなど、そのような場で日本が主張すべきだと思うんです。もちろん、今まで多くの議論の積み重ねで現在が存在していると思いますが、恐らく2年前の議論の常識と今はコロナを経て、全然、土台が変わっているのではないでしょうか。今、このタイミングで、日本にこういうニーズがありますということを国際議論の舞台で示すことは重要ではありませんか。
 
 もう1点ですけれども、バーゼル規制はクレジットリスクから始まり、そこから市場リスクへと展開したと理解しています。今、我々が温暖化などサステナブルで議論していることはまさにリスクだと思うんです。そのリスクをバーゼルの中でもきちんと議論していただきたいと思っていて、そこで日本がリーダーシップを取っていただきたいというところが私の願いであります。ありがとうございます。
 
【水口座長】  何人が発言希望の方がおられるんですけれども、多分、今のことのお答えだと思いますので、藤井さん、ちょっと短めにリプライを。
 
【藤井メンバー】  1点目ですけれども、バーゼル委員会の中では去年、気候変動関連金融リスクについてのタスクフォースが出来上がっております。そういう意味では、タスクフォースの中での会話というか、議論は始まっているということですので、そこが1点目についてです。
 
 もう1つの点は、バーゼルがリスクを認識をしないといけないというご指摘ですけれども、バーゼル委員会というか、BISでは、昨年、「グリーンスワン」という極めて重要な報告書を出しておりまして、ここで気候変動リスクは金融リスクであると。それも、非常に大きい、いわゆるブラックスワンのようなインパクトが生じうるという報告書が、これはかなり反響を呼んだ報告でしたが、公表しておりますので、そういう意味ではリスクの認識は十分にあると御理解いただいていいのではないかとは思います。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 小野塚さんから予約が来ているので、まず小野塚さんから。
 
【小野塚メンバー】  小野塚です。

 水口先生、チャートを作っていただいて、ありがとうございました。私も、どの観点で話したらいいのかちょっと迷いましたので、そういう意味では先生の表のWhoと、それに関連するHowにひもづけてお話をしたいと思うんですが、まず渋澤メンバーと田代メンバーの挙げていた人材に関連するポイントについて、賛同のコメントを述べさせていただきたいと思います。
 
 1つは、サステナブルファイナンスにおける重要な点として、国内の金融セクターのサステナビリティーというものが重要だと考えます。その中で、渋澤さんのおっしゃったベスト・アンド・ブライテストの起用とか、活躍の場の提供というのはすごくポイントになってきます。また、そういった人材は国内だけでなくて、海外からもちゃんとアトラクトするような市場、日本が魅力的な金融市場でないといけないと思いました。
 
 そして、CG(コーポレートガバナンス)コードのフォローアップ会議の中でもたしか発言があったと思いますけれども、サステナビリティーについてのアナリスト教育を進めていくというポイントも、今後、日本企業の分析を、EとかSを含めた見えない価値を見える化、すなわちPBR1割れのある意味是正というか、そういったところにつながるということで、プロフェッショナル側の場ですとか、教育、高度化というのは大変重要だと思います。
 
 関連したポイントとして、Howなんですけれども、そういった意味では機関投資家、いわゆるアセットオーナー向けのサステナビリティー、サステナブルファイナンスの運用機会、あるいは個人投資家向けの投資信託ですとか、NISA、そういったところでの商品の提供というのはあると思うんですが、1点、私、20年間、資産運用業界に携わってきたと思うのは、やはり提供商品の価格、過度な価格競争の是正はやはりしなくてはいけないと思います。
 
 日本は、商品に対しても比較的安いプライスがつくということで、グローバルの金融機関の中では、日本はあまり高度な商品を提供する市場ではなく、ジャパンパッシングということがやはり起こっています。そういう意味では、限られたサステナブルファイナンスの商品を提供する場としても魅力的な市場になるように適正な、これはある意味高いという意味ですけれども、安過ぎない商品の提供ができる市場でないといけないと思います。
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 インタラクティブと言いながら、すみません、いっぱい予約が来ているので、まずは指名していきたいと思います。経団連の長谷川様、JFEの手塚様から、ESG評価についてコメントということですので、長谷川様、手塚様の順番でお願いいたします。
 
【長谷川メンバー】  発言の機会をいただき、ありがとうございます。経団連の長谷川です。
 
 今回、岸上メンバーからの事前の御依頼を受けて、会員企業にESG評価機関に関する課題についてアンケートをしましたので、その結果から見えてくるESG評価機関が企業と投資家をつなぐ役割を果たす際の課題を3点、発言させていただきます。
 
 1つ目は、岸上様のプレゼンにもありましたが、評価基準が明確でないということです。今回、実施しましたアンケートでも、評価基準や、その項目を評価する意図、評価手法が不明確であるという回答が多数ございました。今後、企業が納得して情報開示をしていくためには、ESG評価機関の評価基準、各企業をなぜそういう評価にしたのかという評価理由の説明を充足、充実させていただきたいということです。
 
 他方、評価基準そのものについては、画一的なものでなくて、業種や個社による重要性を考慮する必要がある、柔軟なものであるべきという回答が多く、岸上様のプレゼンにも評価モデルの統一と柔軟性のバランスが重要と指摘されておりましたが、まさにそういうことだと思います。
 
 2つ目は、ESG評価機関のガバナンスに関わる問題です。多分、人員リソースが十分でないということから来るのだと思いますが、評価ミスが散見される、エンゲージメントをお願いしても来てくれない、質問への明確な回答がないといった回答が散見されております。ESG評価機関や市場関係者の信頼を得るための円滑なコミュニケーションが取れる体制、それから運用をお願いしたいということです。
 
 3点目、これも岸上メンバーの資料の3ページに記載いただいておりますが、ESG評価機関の利用状況の見える化ということです。企業からは、投資家がESG評価機関の情報、格付をどの程度利用しているのか、また、どのような基準で活用する評価機関を選定しているのかが分からないという御意見が多数ございました。それから、評価結果を活用しているESGインデックス指数や機関投資家などが分かれば、ESG情報に関する企業と投資家の対話をより充実させていくことが可能となるという御意見もございました。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 手塚さんはいかがでしょうか。
 
【手塚メンバー】  JFEの手塚です。どうもありがとうございます。
 
 今、長谷川さんから全体のコメントが出ていますので、あと岸上さん、JFEの例を引用いただきまして、ありがとうございました。ちょっと具体的な話をさせていただければと思います。
 
 私どもJFEホールディングスは、昨年、FTSEの4Good Index、あるいはBlossom Japan Indexに採用いただきまして、ありがとうございます。それなりの努力はしているつもりですけれども、一方で、今、長谷川様から御指摘がありましたように、実はこの評価をいただくに当たっては、どういう項目に重点を置いて、どのような開示をしていったらいいのか、評価がどういう形で上がっていくのかというようなことが必ずしも明確ではなくて、我々自身も模索をしているところでございます。実際、その評価基準なり、評価のメソドロジーみたいなものが公開されていないという中で、試行錯誤をしているというのが実態です。
 
 それに加えて、いろいろな評価インデックス、あるいはESG評価の方々が乱立しているような状況で、さらに新しい概念ということもあって、恐らくフォーカスされている部分がそれぞれ違う世界をやられているんだろう。
 
 一方、そこに取り組んでいくに当たっては、私どもコンサルティングを使えば成績が上がりますみたいな様々なコンサルの方々がアプローチされてきて、事業会社としては、どこに重点を置いて、どういうふうにやっていくか、しかも複数の評価機関さんに対応するということで、社内的には大変手間がかかるというか、生産性があまり高くならないという課題、悩みを抱えております。そういう意味で、もう少しその基準なり、方法論なり、メソドロジーなりが明確になって、自分の社内でそれにどういうふうに取り組んでいくかがきちんと確立できるような体制にしていただけると、生産性も上がりますし、よりいい結果がもたらされるかと思います。
 
 先ほど例でいただきましたように、様々な開示の中でグリーン商品の羅列はあるんだけれども、それが実際の経営戦略なり、あるいは売上高等を含めた経営の成績にどう反映しているのか、あるいはしていくのかが足りないのではないかという御指摘がありましたけれども、そういうことを逆に御指摘いただければ、それにフォーカスを当てた開示というのは当然、こちらもできると考えております。ぜひ、何が求められているのか、どこの比重が大きいのかというようなことも含めて、コミュニケーションを深めていただければと思います。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 いろいろな方から発言希望があるんですが。
 
【岸上メンバー】  すこし反応させていただいても良いでしょうか。
 
【水口座長】  はい。
 
【岸上メンバー】  ありがとうございます。

 個別の評価機関に対する反応を私の方で行うことよりも、こうした非常に多くの事業会社による評価機関に対する御意見があるということを、今回の場でも共有させていただき、また資料の中でもまとめ、認識の共有とさせていただければと思いました。

 一点、改めてご紹介させてください。企業側からすると対話の量が足りないというご意見もあるとは思いますが、例えばGPIFで選定されている様なESG指数の裏付け情報としましては、ボトムアップの調査に基づいて企業への確認も内在された形のESGデータの構築がされてきました。一方で、より広範の統計データですとか、モデリングリングを使ってつくられる気候変動型の指数などの算出が今、増えている状況です。そうした中で、利用される最終的な投資家が、そういった企業との継続的な対話を求めているかどうかということによっても、指数会社における重点の置き方も変わってくると思われます。最終的なサステナブルファイナンスに関連した商品の在り方にも影響してくると思いますので、事業会社側の御意見と御要望と、最終的に投資判断用の商品としても、ニーズのバランスを取るかが必要な議論になってくるかと思います。

 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 まず、今のESG評価に関わる議論を皆様から全ていただいた上で、自己資本比率規制の話でお話ししたいという方がいますので、そこに戻り、その後、ESG評価と自己資本比率規制以外の議論、論点に移りたいと思います。
 
 まず、今のESG評価の議論でコメントのある方がおられましたら。
 
【田代メンバー】  すみません、田代です。評価のところと関係があるので、よろしいでしょうか。
 
【水口座長】  お願いします。
 
【田代メンバー】  証券業協会ではなく、証券会社の立場からお話しさせていただきます。SDGs債につきましては2000年代後半から、先ほどご説明させていただきましたとおり、発行が開始されましたが、当初は発行体がほぼ海外となっておりました。投資家側のニーズは大変高かったのですが、日本の発行体としては発行するのが難しいという状況だったと思います。中にはJFEホールディングス様のように大変対応が早い会社もありますが、先ほど長谷川メンバーから御発言があったように、国内発行体にはまだハードルが高いという状況なのだと思います。一方で、世界中の発行体が日本の豊富な資金を目当てにやってくるというのが現状だと思います。そうすると、SDGs債としては、海外の発行体中心となり、日本のSDGsには日本のお金があまり貢献できないという状況を招くリスクが非常に高くなるのかと思われます。どうやったら日本の発行体の方もグローバルな基準に合ったSDGs債を発行できるか。仲介業者としては大変問題意識が高くなっております。それにつきましては、もしかするとニッセイアセットの井口メンバーが良い案をお持ちかもしれないですが、証券会社の立場からはそういった観点からの問題提起をさせていただきたいと思います。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 ESG評価に関わる議論、今、手を挙げられた方は井口さんですか。お願いします。
 
【井口メンバー】  まず、今日は4名の方、すごくいいプレゼンをしていただいて、どうもありがとうございました。時間の関係もあるので全部コメントできないですので、まずはESG評価機関についてコメントさせていただければと思います。それで、渋澤さんが取り上げられたインパクト投資の位置づけについても意見を申し上げたく思いますが、これについては、後でまた発言の機会をつくっていただければと思っています。
 
 まず、岸上さんにやっていただいたプレゼンで、評価機関がどういう取組内容なのか分かりまして、大変感謝をしたいと思っております。これは第1回目にも申し上げたと思いますが、意図する、しないに関わらず、評価機関が大きな影響力を持っていると思っていまして、これは田代様から御指摘のあったESG関連の債券の認証もありますし、株式ではESGインデックスの組み入れ、それと最近は役員報酬の評価項目にもESG評価が入っている、いい悪いは別にして、そういうものが入っているということで、私のようなアクティブ運用者にとってもすごく重要になっているということかと思います。
 
 岸上さんがおっしゃっていたように、信用格付けを行う格付会社という位置づけよりも、むしろ投資家の私などからすると、ESG評価機関は、株主総会における議決権行使助言会社みたいに、自由な意見は言えるんだけれども、それはちゃんとアカウンタビリティーを保ってくださいというポジショニングと思っています。
 
 それで、3点ほどポイントがあると思っています。まず、利益相反管理は投資家から見てすごく重要だと思っています。企業さんにアドバイスをして、そして、また、債権の認証をしたり、ESG評価をするというのはすごく重要なポイントと思っています。林(礼)様からご説明のあったように、今後、トランジションボンドというものも出てくるという中では、それを第三者機関がどう認証するかがすごく大事になってくると思うので、ESG評価機関の信頼度合いの維持は重要と考えています。
 
 2つ目は、岸上さんがおっしゃったように、評価会社の評価結果に差があるのは当然で、責められるべき事象ではないとは思っています。ただ、透明性について指摘された委員の方がいらっしゃいましたが、その違いが何かが分かるように、評価手法などをパブリックに開示することは重要ではないかと思っています。例えば、議決権行使助言会社の世界で言うと、ISSさんとグラスルイスさんも助言内容が違うことがあります。ただ、それは公開されている議決権行使基準を見ることによって、何でそうなっているかが分かります。そういうアカウンタビリティーやトランスペアレンシーの確保は重要と思っています。
 
 3つ目は、やっていらっしゃるかもしれないですか、やはりその判断が正しかったのかの振り返りとか、あるいは、これも先ほど、他の委員からご指摘あったように、評価を行うにあたって十分な態勢を置いているかということも重要と思います。
 
 何か規制をはめるというのではなくて、例えばスチュワードシップ・コードの原則8、これは1回目でも申し上げたかもしれませんが、コードの原則8にあるようなもので、ESG評価機関の透明性を確保するようなプリンシプルみたいなものが必要ではないかと思っております。
 
 以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 足達さんから評価についての御意見があるということなので、足達さんにお話をいただいて、その後、自己資本比率規制の話で、JPXの小沼さんと高村先生にと、こういう順番で行こうかと思います。
 
 足達さん、いかがでしょうか。
 
【足達メンバー】  ポイントを絞って申し上げます。
 
 私どもも、20年前に評価機関の端くれのような仕事を始めましたので、一言申し上げます。現状、徐々に評価機関の役割というのは下がってきていると思います。それは、アセットマネジメントファームの中のインハウスのアナリストの皆さんが独自の予測だとか分析をされ始めているということ、これをまず最初に押さえておきたいと思います。
 
 2つ目には、この評価情報というものを公共財化するという試みがなされている。事例として御紹介したいのは台湾の例です。台湾では証券取引所の外郭団体が各評価機関と組んで、評価情報を無償で一般に公開しています。趣旨に賛同した評価機関と、そうでないところがあるのが実態ですが。そこで、同様のかたちで、日本でも証券取引所で、評価情報をここに載せてくださいというプラットフォームをお作りいただけないかという提案です。パラレルに比較できるようにし、方法論を含めて開示してもらう。どこのクライアントが使っているのかという情報も、そのプラットフォームで開示してもらうと良いでしょう。もちろん、評価機関の中にはそこに載るのは嫌ですというところがあるかもしれませんが、金融庁から一つの規範として、評価機関も当該プラットフォームを活用するなどして透明性を確保すべきだという一言を言っていただければいいのではないかと思います。こんなことを提案したいと思います。
 
 以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。
 
 高村先生はESG評価に関わるご意見ということですので、高村先生、お願いいたします。
 
【高村メンバー】  ありがとうございます。多分、自己資本比率の話ではないと思ってなんですけれども、2点ございます。
 
 まず、御報告いただきました皆様、どうもありがとうございました。実務については大変知識が乏しいので、大変勉強になっております。本当にありがとうございます。
 
 今回の有識者会合の一つの狙いというのは、2050年カーボンニュートラルが象徴的ですけれども、そういう日本が目指すところに資金を取り込む、金融市場の枠組みをつくるというのが一つの課題としてあると思っていますので、ぜひ伺いたい、今日、共通しておっしゃっていた点で2つほど例に挙げて伺いたいのは、国として具体的にどういう政策なり枠組みが必要なのかという点について、御示唆を追加的にいただけるとありがたいと思って発言いたします。
 
 1点目は、どの報告者の方も、ESG評価機関の方も含めて、情報の重要性ということを強調されていたと思います。1つは企業情報。これについて、例えばやはりどうしてもこれだけはしっかり開示をしていただかないといけないコアの情報というのが、例えばTCFDを中心に収れんされてきていると思うんですけれども、それがしっかり明確化されているのかという点。それから、私、前回お休みしてしまったんですが、どういう形で開示すべきなのか。有価証券報告書という御示唆も前回資料であったと思いますが、これが1つです。企業情報、本当に正確にといいましょうか、できるだけ正当な評価を導き出すような企業情報の開示のために、国はどういう対応をする必要があるのか、あるいは国はどういう支援をする必要があるのか。
 
 もう一つは、統計データというのを田代さんが、統計データがやはり重要だと。これは温対計画、温対法の改正の中でも出てまいりますけれども、どういうデータが必要なのか。何が今、日本に足りていないのかというのをぜひ教えていただきたいなと思っております。
 
 大きな点の2つ目は、林さんのトランジション・ファイナンス、それから、田代さんが多分御回答の中で、質のよい案件形成というお話をされていたと思うんですけれども、これは質のよいボンドという意味でもあると思うんですけれども、それを行うために、具体的に国として何が必要なのか。何かそういうファイナンスを導き出すようなガイダンスをつくろうというような動きも、もちろん指針を幾つかつくっていらっしゃったりもすると思うんですけれども、今、さらに加えて何が必要なのかという点はぜひ教えていただきたいと思っております。
 
 例えば、トランジションのところでいくと、信頼性が高いトランジション、つまりグリーンウォッシュと言われないトランジションのためには、恐らく今、既にできることを一種延期するようなトランジション・ファイナンスというのは、そういう対象になると思っていまして、そういう意味では、何かガイダンスの中で明確にすることで、そうしたクレディビリティを上げるような、そういう成果的なガイダンスもあり得るように思っていまして、そういう観点から、もし御意見いただけると大変ありがたいなと思います。以上です。すみません、長くなりました。
 
【水口座長】  ありがとうございます。前段については、どなたにお答えいただいたらいいのか分からないんですが、誰か答えるぞというのを考えていてください。その間に林さん、後段のお話について何かコメントいただければと思いますが、いかがでしょう。
 
【林(礼)メンバー】  質のよい案件形成に向けて国がやるべきことということですかね。延期って今、おっしゃいましたか。ちょっと私、意味がよく分からなかったんですけれども、これをやめろとかそういうことですか。
 
【高村メンバー】  すみません、高村です。ありがとうございます。トランジションという概念の中で、既に実は代替ができるにもかかわらず、トランジションということで一種現状をロックインした形で温存するというようなリスクを、多分市民社会の人たちは懸念していると思うんですけれども。そういう意味です。
 
【林(礼)メンバー】  分かりました。ありがとうございます。
 
 これは本当に難しいところではあるんですが、一応ICMAのハンドブックなどでは、世の中で入手可能な、ベストな技術を使っているとか、アグレッシブなターゲットをつくりましょうとか、一応定性的には書いてあるんですね。本当に言葉をちょっと選ばないでいくと、本当は変わらなくちゃいけないのに変わらない、ちょっとゾンビみたいになっては、ゾンビと言うんでしたっけね、変な生き残りになってはいけないと思って、それを誰が定めるんですかって本当に大きなテーマだと思っていて。ヨーロッパではEUタクソノミーというものが燦然と輝いて、とにかくそっちに向かっている感を出すということが求められているんですけれども、よく高村先生も心配されているとおっしゃいますが、これはどこの国もまだ十分に達成しているわけではないとは思っています。
 
 さっきのWhoのところにも関係あるんですけれども、あそこに国とかという言葉は、多分さっきもなかったように思うんですけれども、これはやっぱり誰か、例えば日本は日本として、ここまではやろうよ的なガイダンスというか目線みたいなものは、業界によって当然異なると思いますので、それで業種別のロードマップをつくろうという議論にもなっているんだと思うんですけれども、そこがとにかくグローバル、かなり見たときに、何だかんだいって言い訳しているよねというふうにならないようにするのが本当に肝だと思っているので、それに対する答えはないんですよ、私には。でも、やっぱり市場からは必ずバッシングされますから。
 
 前に関係者の人とこの話をしたときに、そうはいってもいろんなものが出てくるのは仕方がないだろうと、資本市場の世界で。その中できっと収れんしていくはずであると。マーケットが、これは神の見えざる手なのかどうか分かりませんけれども、投資家の目線を上げて、そして発行体も本当に誠実に向き合えば収れんするだろうという性善説に基づいている部分もあるんですが、ここは本当にこの場で皆さんと議論したいと思います。すみません、答えになってません。
 
【水口座長】  ありがとうございます。市場がきちんと機能すればということで、おっしゃるように市場側の目線が上がることは大事ですよね。
 
 前段、高村先生からいただいた開示は収れんしているのかどうか。そして、どこでどう開示するのか。前回の議論に戻っちゃうと、また大変なことになるんですけれども、どなたかコメントありますか。簡単にコメントいただけると。
 
 
【岸上メンバー】  では、私のほうから少しコメントさせていただいても宜しいでしょうか。そのために画面共有を戻させていただければと思います。先ほど御案内させていただいた点と重なりますが、やはり開示情報が多様化していることによって調査に係る時間も増え、結果的に評価結果の正確性、見落としにもつながってくるかと思いますので、1つできることしましては、有価証券報告、前回の法定開示というところ以前の段階で、より開示の媒体の整備というところが挙げられます。

 また、先ほど割愛させていただきましたが、評価機関にどの程度の透明性を求めるのか。1つの事例として、企業としても投資家としても参考までにご紹介します。数百ある個別の評価項目に対して、どういった評価結果となり、その情報の裏づけとしてはどのレポートの何ページを参照していますという情報。また、評価に利用した製品情報の開示先を一括して公開しているという事例もあります。具体的にどこまでの透明性を投資家として求めているか、または事業として求めている声を投資家に届けて合意を得ることによって、それに向けてリソースを割くというところにつながってくるのではないかと思います。

 最後の統計データに関してですが、具体的にどの統計データが足りていないということよりも、結果的にそういったマクロデータを利用しているため、そこに関しては個別企業のボトムアップの調査ではないので、ボトムアップの評価の説明や対話とは別の形になっている現状を共有する意味でご紹介いたしました。そうした場合、企業の評価の背景を理解したいニーズとのバランスはどこにあるのか、投資家がニーズとしてはっきりと集約して伝える必要があるのではないかと思います。直接のご質問のお答えになっているかどうか分からないですけれども、以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございます。いっぱい御発言希望がありまして、お待ちいただいている方がいるんですが、トランジション・ファイナンスについてということで、手塚さんから簡単に、トランジション・ファイナンスについてお話をいただいて、ずっとお待ちいただいている小沼さんにいきたいと思います。それでは、手塚さん、お願いいたします。
 
【手塚メンバー】  ありがとうございます。恐縮です。2回目ですみません。
 
 今、林様から御説明がありましたけれども、トランジション・ファイナンス、これは私ども鉄鋼業界は非常に大きな期待をしている部分でございます。と言いますのも、林様のプレゼンにありましたように、EUのやっているグリーンボンド、EUタクソノミーというのは、御説明にもありましたけれども、非常に厳しいグリーンのスレッシュホールドを設けていて、実際例示されている鉄鋼の話も、EUの鉄鋼会社でも満たせているのはほとんどいない。なぜならば、ETSの無償配布、ここまではただでCO出してもいいという基準を決めるためにつくった数字がそのままコピペで入っているんですね。そうなると、要するにこれでもってファイナンスをできる鉄鋼会社はEUにもほとんど存在しないという話になってしまうわけで。
 
 一方で、実際にパリ協定の目標に向かって、例えば世界の鉄鋼産業がトランジションしていこうと思うと、莫大な資金が必要になってくるというのは明らかなわけなので、そういう意味で、今グリーンでないものをグリーンにするためにどうするかという議論のためには、このタクソノミーはあまり役に立たないわけです。
 
 そういう意味で、このトランジション・ファイナンスというのは、非常に重要になってくると考えています。その中で、EUタクソノミーではない考え方で、このトランジションの的確性をどう見ていくかという1つのアイデアとして、これは実はタクソノミーの世界標準をつくるISOの動きというのがありまして、EUのタクソノミーをそのまま入れるというアイデアもあったんですけれども、これは私が環境委員長をたまたまやっていました世界鉄鋼連盟、60か国の鉄鋼会社の集まりですけれども、ここで非常に強く意見書を出しまして、先ほど林様からも御示唆がありましたBAT(Best Available Technology)ですね、現在考えられる最も環境性能の技術を入れるものは、トランジションが的確であるというような考え方で組み立てるべきだというような意見書を入れたりして、今まさに議論を進めている最中でございます。
 
 そういう意味で、この分野は大変期待も大きいですし、我々としてもぜひアクセスをしていきたいという部分でございますので、現実的に需要に合って、かつ世界のトランジションに供し得るような制度設計なり、ルール設計なりが行われていくように期待したいと思っております。以上です。
 
【水口座長】  ありがとうございました。トランジションについては、ちょうど林様の御発表の中で触れられたICMAのハンドブックが参考になりますよね。タクソノミーをつくるのではなくて、原理原則を示した。パリ協定と整合する目標で長期の戦略がきちんとあるとか、そういう原理原則の中でトランジションの在り方を示すというのは1つの見方なのかなと思います。
 
 それでは、大変お待たせをしておりましてすみません。JPXの小沼様から、すみません、どうぞお願いいたします。
 
【小沼メンバー】  
ありがとうございます、お時間をいただきまして。取引所の小沼ですが。先生がお示しされたチャートのWhoとHowのところにちょっと関連してコメントさせていただきます。
 
 まず、インベストメントチェーンの関係なんですけれども、上場企業が今、3,700社以上ございまして、もちろんこういった議論にすごく前向きに対応できるような会社から、上場したての小さな会社まで含めて、いろいろなグラデーションというか、段階とフェーズの会社がございます。こういう全上場会社にいかにサステナビリティーの問題をしっかり経営の中で議論していただいて、腹落ちしていただいて、事業に向かっていただくか。そして、中長期の企業価値ということを目指してもらうか。
 
 これが一番重要なことなので、これに向けて、まずは情報提供して、いろいろな検討していただくような材料を提供し、セミナー活動をやったり対話をしたり、そんなことが今、一番重要かなということで、ホームページなどで必要な情報の実務ハンドブックを提供したり、あと「ESGナレッジハブ」という形で、上場会社が参加していろいろお問い合わせいただけるような、あるいはセミナーの情報などを提供できるような、そういうところをやらせていただいています。サステナビリティーの関係者の皆様にも、コンテンツで御協力いただいているところもありまして、本当にありがとうございます。
 
 エクイティの関係で言うと、インパクト投資のところは、未公開から新興市場の分野が、ある意味、投資家と発行体の距離感が近くて、対話の密度も高いというようなことがあって、考えやすい部分かと。昨年の12月ですが、IPOの段階で、国際資本市場協会(ICMA)のソーシャルボンド原則に基づいて、まさに今日の田代委員の資料の2ページにある4つの核に基づいて、第三者の外部の方の評価を受けて、IPOのときに投資家にその情報を提供し、ロードショーのときにも御説明して、上場した案件も出てきております。
 
 いよいよエクイティの世界でもそういうことが始まりつつありまして、これは大変面白い試みかなと見ておりまして、まだまだ認知、これからということかもしれませんが、こういうことが拡大していくというようなことを後押しできればなというのが1つでございます。
 
 それから、取引所のマーケットは、全ての証券会社がお客様に提供できるアクセスの広さと、それから流動性、マーケットプライスで売り買いできるというところが特徴であり、逆にその分、情報開示や上場基準といったことも高いものが求められ、分かりやすい説明をしなければいけないと。そんな中で、投資信託や投資法人の法制の中でも、サステナビリティー絡みの商品は少しずつ増えてきております。ETF、特にESG関連指数の商品が、今25本で約3兆円弱の規模にも広がってきておりますが、今回の評価機関の話にも絡むんですが、この辺がまだまだ深化をしていく余地があるのかなと楽しみにしておりますし、関係の皆様の御尽力もいただければなと思っているところでございます。
 
 あと、実物資産を流動化していくという世界がありまして、一番分かりやすいのは、J-REITですね。不動産投資信託と呼んでいますけれども、こちらは今、日本は米国に次ぐ、ワールドワイドでは第2のマーケットと規模的になっておりますけれども、60社以上が出ておりますけれども、そのうちの多くが、ESG関連の認証を受けているということで、不動産マーケットに、資本市場の組合せでいい効果が出てきている部分があるのかなと思います。
 
 不動産に加えて、次に社会インフラ設備を流動化していくという、そういった商品群が出てきておりまして、今、7銘柄で、目下のところは再生可能エネルギー設備ですね。太陽光の設備を流動化してというようなものも出てきておりまして、この辺は新しいマーケットで、これからということでございますけれども、やはり一般の投資家の皆様も、サステナビリティーに貢献する、そういったマインドで参加できるチャンスでもございますので、広げていければと思っております。この辺も皆様、御関係の御協力をいただければなと思っております。以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。
 
 お待ちいただいていた損保協会の半田様と生保協会の中村様、お二人とも自己資本比率規制についてということですので、まずお二人から、ちょっとお話戻りますけれども、自己資本比率規制のところ、コメントいただければと思います。まず半田様、いかがでしょうか。
 
【半田メンバー】  日本損害保険協会の半田でございます。先ほど入りそびれましたため、議論の流れが元に戻り大変申し訳ございません。
 
 資本規制のところに絞って、損保業界の考えを述べさせていただきます。資本規制はあくまでも契約者保護を目的とする健全性の規制でございますので、ここでのリスク量の計測につきましては、客観的なデータの裏づけに基づくことが基本なのではないかなと考えているところでございます。
 
 もちろんESG投資ですとかSDGs債に関わりますリスクが、実際のデータの上からも低いということが客観的に確認、観測できる可能性もございますので、そうした点を確認するためのデータの収集ですとか、あるいは分析、そういった取組を行っていくことは意味があるのではないかと思いますけれども、そういったプロセスを省略して、政策的にキャピタルチャージを直接下げていくというアプローチは、慎重にしたほうがいいのではないかなと考えているところでございます。以上でございます。
 
【水口座長】  ありがとうございました。中村様は書面でもよいですということで、御配慮いただきましてありがとうございます。
 
 それでは、井口さんから、先ほど言えなかったことでインパクト投資というところにコメントいただければと思います。お願いします。
 
【井口メンバー】  すみません中村様、お時間いただいて。渋澤さんのいつもながらのすばらしいプレゼンの中で、インパクト投資というのがあったので、そこについて私の考え方を述べたいと思います。
 
 座長の整理にもありましたが、インパクト投資をどう位置づけるかということは、この委員会でも重要になってくるのではないかと思っています。私の整理ですが、ESG投資という中でも、今、多くの機関投資家が採用している手法はESGインテグレーションというもので、これは企業の持続的な成長に与える環境や社会への影響を配慮しつつ、中長期的なリターンの最大化を図るというものです。また、投資先企業がこれを対応できるようにサポートするために、投資家は、エンゲージメントあるいは対話、時には議決権行使といった活動を行っています。このやり方は、スチュワードシップ・コードに定められるスチュワードシップ責任にも沿ったものと考えております。
 
 一方、インパクト投資というのは、財務的リターンと同様、社会的なリターンの最大化を図るという運用手法で、その運用手法の中でもいろいろな幅というかポジショニングがあると思っています。今、御説明したESGインテグレーションと重なる部分もありますが、場合によっては財務的なリターンより、社会的なリターンを優先する場合もあると理解しております。
 
 今後インパクト投資は重要な投資手法になると思っております。ただ、ESGインテグレーションの次世代がインパクト投資という方もいらっしゃるんですが、個人的にはそうとは言い切れずに、両者が併存するような形になっていくんだろうと思っています。したがって、サステナブルファイナンスの仕組みを築くときには、この2つをどう組み込んでいくかということが重要になってくると思います。
 
 もう1点ですが、金融庁で定められたスチュワードシップ・コード、今、議論されているコーポレートガバナンス・コードでも、その主眼というのは、サステナビリティーに配慮しつつ、最終的な目的は、日本企業をどう強くしていくか、収益性をどう改善していくかというところにあると思います。ですので、コードは、私が御説明したESGインテグレーション、あるいはこれに類するインパクト投資を意味しておると理解しておりますので、この委員会でもこういった状況も考慮にいれながら、ESG投資の位置づけを明確にした方が企業サイドも混乱することはないのではないかと思っております。
 
 最後ですが、投資家の報告というところで、最近、インパクト投資という冠をつけている個人向け投信を見ますが、インパクト投資という起源から見ると、従来のパフォーマンスの説明のほかに、インパクト、社会的なリターンについての取組みについての説明がないというのは、個人投資家保護の観点がやや欠けているのではないかと思います。年金基金のようなアセットオーナーからインパクト投資を受託すると、多分インパクトについての報告が求められると思いますが、同様に個人向けのインパクト投資信託の運用報告書でも、インパクトへの取り組みを開示していくというような努力をするということも必要ではないかと考えております。
 
 以上でございます。ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。インパクト投資は共通言語、インパクトが共通言語だという渋澤さんからのお話もありましたし、今、最後におっしゃられましたインパクト投資という冠のついた、特に個人向けの商品については、やはり検討が必要なのかなと思います。
 
 時間があとほんの数分となりましたけれども、吉高様からまだ御発言いただいておりません。それと中村様、まだ時間がありますので、やはり御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。中村様と吉高様からコメントいただければと思いますが。
 
【中村メンバー】  大丈夫です。渋澤委員の資本規制に関する御発言に関連して、事実としてどういうことがヨーロッパのほうで起こっているかということについて、文章でお示ししたいと思いますので、改めてよろしくお願いします。
 
【水口座長】  ありがとうございます。では、吉高様。
 
【吉高メンバー】  では、私のほうから一言だけ。先ほど、藤井委員がおっしゃったように、排出量取引については、他国でも金融当局が関わるところですので含める必要があると思います。以前、エコボンドというボンド発行と排出権取引の仕組みを組み合わせた商品がございまして、これは(投資の環境)インパクトについて見える化できる商品だったと思います。そういった事例も踏まえますと、インパクトとしてCO排出量での評価は重要な視点かと思います。また詳しくは次回以降に話せればと思います。すみません、失礼いたします。ありがとうございました。
 
【水口座長】  ありがとうございました。排出権の取引の話は、重要な論点ですのに、なかなか議論する時間がとれず、すみませんでした。
 
 そろそろ時間ではありますけれども、これだけは言っておきたいという方があれば、ぜひ伺いたいと思いますが、言い残したことがあればいかがでしょうか。あとお一人ぐらい。特によろしいでしょうか。大丈夫でしょうか。
 
 司会の不手際で、皆さんから十分に御意見いただけず申し訳ありませんでした。また、
今回は非常に幅の広い論点がありまして、今日十分に御議論いただけなかった論点も多く残っているかと思います。本日言い足りなかったこと、また議論できていないことにつきまして、ぜひ書面で事務局のほうにお送りいただければと思います。お送りいただいた御意見は、皆様に共有させていただきたいと思います。
 
 それでは、最後に、事務局のほうから御連絡がございましたらお願いいたします。
 
【岡田総合政策課長】  本日はありがとうございました。次回は、3月2日火曜日に開催いたします。また近くなりましたら、改めて連絡させていただきます。以上です。
 
【水口座長】  どうもありがとうございました。大変重要な論点がたくさんあり、なかなか一遍に議論できないのですが、不足の部分は皆様から書面でもコメントいただきながら、有識者会議としてきちんと成果をまとめてまいりたいと思いますので、今後とも御協力のほどよろしくお願いいたします。
 
 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきたいと思います。どうも御協力いただきましてありがとうございました。
 

―― 了 ――

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