スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会(令和元年度第1回):議事録
1.日時:
令和元年10月2日(水)16時00分~18時00分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室
【神作座長】
ただいまより、スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会を開催いたします。皆様、ご多用のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。このたび、検討会の座長を務めることとなりました東京大学の神作でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
初めに、金融庁の中島企画市場局長よりご挨拶をいただきたいと存じます。中島企画市場局長、どうぞよろしくお願いいたします。
【中島企画市場局長】
中島でございます。よろしくお願いいたします。
本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。令和元年度のスチュワードシップ・コードに関する有識者検討会の開催に当たり、一言ご挨拶申し上げます。
政府の成長戦略の一環として、平成26年にスチュワードシップ・コードが、平成27年にコーポレートガバナンス・コードが策定されております。その後、平成29年にスチュワードシップ・コードが、平成30年にはコーポレートガバナンス・コードが改訂されたところです。車の両輪である両コードのもとで、企業のガバナンス改革には一定の進捗が見られ、機関投資家と企業の間の対話も活発化しつつあるとの評価も聞かれるところであります。
他方、例えば、機関投資家と企業との対話は、量的には増加しているものの、質の面では改善の余地があるといった課題を指摘する声も聞かれております。
こうした状況のもと、金融庁に設置されておりますスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議においては、本年4月に「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性」と題する意見書が取りまとめられました。そこでは、コーポレートガバナンス改革の実効性を高めるためには、投資家と企業の対話の質の向上が必要であることなどが指摘されており、スチュワードシップ・コードの改訂が提言されたところであります。
これを受け、本有識者検討会を開催させていただき、来年の株主総会の準備に間に合うように改訂案の取りまとめをさせていただきたいと思っております。メンバーの皆様には実効的なスチュワードシップ・コードの改訂に向け、積極的なご議論をいただくようお願い申し上げまして、私からの挨拶とさせていただきます。よろしくお願いします。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、事務局からメンバーのご紹介をお願いいたします。
【井上企業開示課長】
事務局を務めさせていただきます、金融庁企業開示課長の井上でございます。
まず、事務局から検討会のメンバーの皆様をご紹介させていただきます。座席順にご紹介させていただきます。メンバーの皆様側からご覧になって右側からでございますけれども、まず、
石田猛行様です。
大海太郎様です。
大場昭義様です。
岡田譲治様です。
翁百合様です。
小口俊朗様です。
三瓶裕喜様です。
柴崎俊雄様です。
スコット・キャロン様です。
高山与志子様です。
武井一浩様です。
田中亘様です。
佃秀昭様です。
春田雄一様です。
北後健一郎様です。
松谷博司様です。
松永陽介様です。
松山彰宏様です。
米花哲也様です。
また、本日ご欠席ですけれども、上田亮子様、ケリー・ワリング様、冨山和彦様にもご参加いただくこととなっております。
次に、オブザーバーをご紹介申し上げます。
東京証券取引所の青執行役員です。
経済産業省経済産業政策局の坂本産業組織課長です。
厚生労働省年金局企業年金・個人年金課の西岡基金数理室長です。
このほか、本日ご欠席でございますけれども、法務省の竹林大臣官房参事官にもオブザーバーをお願いしております。
なお、事務局につきましては金融庁が務めさせていただきますけれども、時間の都合もございますので、配席図をもってご紹介に代えさせていただきます。
【神作座長】
本日の会議では、タブレットを使用して行うことといたしますので、事務局からタブレットの操作方法について、ご説明をお願いいたします。
【島貫企業開示課課長補佐】
本日の会議では、タブレットを使用して開催いたしますので、ご協力よろしくお願いいたします。
それでは、タブレットの使用方法を説明いたします。画面上部中央に個人、共有、発表者の3つのボタンがございます。発表者のボタンは発表者の方のみが使用いたしますので、発表者以外の方のご使用はお控えください。共有モードの場合、発表者の画面が皆様の画面に連動して表示されますので、基本的に共有ボタンをタップして共有モードにしていただくようお願いいたします。発表者の画面とは関係なく資料をご覧いただくには、個人のボタンをタップして個人モードをご利用ください。また、個人モードでは、画面上部右側の紙が2枚重なっている形の資料メニューボタンで参考資料もご覧いただけます。タブレットの使用につき、ご不明点等ございましたら、会場窓側の両端の係の者が伺いますので、適宜挙手いただければと思います。
傍聴の皆様には開催通知でご案内のとおり、会場での紙の資料配付は行っておりませんが、資料を事前に準備いただいていない方も、金融庁のウエブサイトに資料を掲載してございますので、適宜お持ちのタブレット等でご覧いただくか、またはプロジェクターでご覧ください。
以上となります。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、事務局から運営要領(案)のご説明をお願いいたします。
【井上企業開示課長】
それでは、資料2を画面に出していただけますでしょうか。こちらになります。
本運営要領(案)は、第1条にございますとおり、スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会の運営について書かせていただいているものでございます。第2条は会議は座長が招集する旨、第3条は座長が検討会の議長となり、議事を整理する旨、第4条はヒアリングができる旨、第5条は検討会の会議は公開とする旨、第6条は議事録についても会議の都度作成し、公表するものとする旨、第7条は検討会の資料は公表する旨、第8条はこの運営要領に定めるもののほか、検討会に関し必要な事項は座長が定める旨を定めているものでございます。
説明は以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
このように進めさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【神作座長】
どうもありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきます。
それでは、早速議事に移らせていただきます。
本有識者検討会は、資料1にございますとおり、スチュワードシップ・コードを改訂することを目的として開催させていただくものです。スチュワードシップ・コードにつきましては、金融庁、東京証券取引所を共同事務局とする「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」が本年4月に意見書を取りまとめており、意見書の内容を踏まえたコードの見直しが提言されています。
このため、コード改訂に向けた本検討会を開始するに当たり、まずは、事務局より、前回改訂以降のスチュワードシップ・コードをめぐる状況についてご説明いただくとともに、フォローアップ会議の意見書における論点等についてご説明をお願いしたいと存じます。
【井上企業開示課長】
改めまして、事務局の井上でございます。私の方から資料3をもとに説明を進めさせていただきたいと思います。
なお、資料4を参考資料としまして、資料3の各項目のデータや海外の動向などに関する資料をまとめてタブレットに格納しておりますけれども、本日は、時間の関係からそちらの説明は省略させていただきたいと思いますので、適宜議論の過程でご参照いただければと思います。
資料3のスチュワードシップ・コードをめぐる状況と論点等についてをご覧ください。この目次にございますように、スチュワードシップ・コードをめぐる前回改訂以降の状況をまずお示しした上で、スチュワードシップ・コードにおける主体ごとに論点をご紹介してまいりたいと思います。
まずは4ページですけれども、スチュワードシップ・コードの現状等についてご説明差し上げます。ここでは、2014年2月のスチュワードシップ・コード策定以降のコードの受け入れ機関数の推移をお示ししております。コードの受け入れ数は着実に増加しておりまして、本年の9月30日時点で269機関が受け入れを表明している状況でございます。
5ページでございます。こちらでは、欧米とアジア諸国におけるスチュワードシップ・コードの策定と改訂の状況を整理しております。スチュワードシップ・コードという形では、イギリスにおいて2010年7月に初めて策定されたものでございます。その後、イギリスでは2012年9月に改訂されまして、現在、2回目の改訂作業中と伺っております。アジアでは、日本が2014年2月に日本版スチュワードシップ・コードを策定したのが初めでございまして、その後、マレーシア、香港、台湾、シンガポール、韓国でコードが策定され、日本のコードの策定をきっかけに、アジア諸国でのスチュワードシップ・コードの導入の動きが広まったところでございます。また、米国でも機関投資家を中心とする自主団体――ISGと呼ばれるものですけれども――こちらにおいて、2017年にスチュワードシップ・フレームワークが策定されたところでございます。
6ページをお願いします。こちらでは、英米と日本のスチュワードシップ・コードの一部をご紹介しております。このスライドの左端でございますけれども、策定当時の英国スチュワードシップ・コードの原則4では、機関投資家によるエスカレーションについて規定されていたところでございます。他方、2014年に策定しました日本版のスチュワードシップ・コードの原則4では、これはある意味、日本風にアレンジいたしまして、機関投資家と企業との建設的な対話という点に着目した規定ぶりとされたところです。2017年のアメリカのISGのフレームワークの原則Eでは、建設的かつ実用的な方法で、企業との見解の違いを解決するよう努めるとされておりまして、現在、改訂作業中のイギリスのスチュワードシップ・コード改訂案の原則4でも、これを受けて、建設的なエンゲージメントに言及するという案に改訂されているところでございます。
次に、個別の論点に入ります前に、前回、2017年のスチュワードシップ・コードの改訂の要点と、本年4月に公表されましたフォローアップ会議の意見書の概要をご紹介させていただきます。
8ページはスチュワードシップ・コードの概要でございますけれども、メンバーの皆様ご承知の内容かと思いますので、本日は説明を省略させていただきます。
9ページでございますけれども、こちらは2017年5月、前回のスチュワードシップ・コードの改訂のご紹介でございます。前回のコードの改訂では、コーポレートガバナンス改革を形式から実質へと深化させていくために、機関投資家が実効的に企業との間で建設的な対話に取り組むことが重要とされまして、運用機関については、ガバナンス・利益相反管理の強化等を促すとともに、企業年金等のアセットオーナーの役割を明確化したところでございます。また、議決権行使助言会社についても、助言の際に企業の状況の的確な把握等のために、十分な経営資源を投入すべき等の視点を追加したところでございます。
次に、10ページ、11ページで、本年4月にコーポレートガバナンス改革の更なる推進のために、フォローアップ会議におきましてまとめられました意見書についてご紹介いたします。
こちらでは、足元の課題を踏まえましたスチュワードシップ・コードの再改訂の方向性とコーポレートガバナンス改革において残された課題についてまとめたものでございます。詳細なものはお手元のタブレットにも参考として意見書を保存しておりますので、必要に応じてそちらをご覧いただければと思います。
11ページでその意見書のうちスチュワードシップ・コードに関連する部分につきまして、主体別に検討課題を挙げておりまして、それぞれ課題へのスチュワードシップ・コードの更なる改訂に向けた方向性を示しているところでございます。
それぞれの事項につきましては、これからお話しいたします主体別の論点ごとに改めてご紹介いたしますので、ここでの説明は割愛させていただければと思います。
次に、これから主体別の論点をご説明させていただければと思います。
14ページですけれども、まず、運用機関につきましてです。こちらは、建設的な対話の実質化に向けた取組みについてのフォローアップ会議の意見書での指摘事項及びこの点に関するフォローアップ会議でのご意見等を紹介しているというつくりになっております。
まず、上の方の意見書の記述ですけれども、フォローアップ会議において、運用機関に関して議決権行使の理由の説明など、投資先企業との対話の状況等についての公表が不十分というご指摘もあったことも踏まえまして、こちらでは建設的な対話の実質化に向けて、アセットオーナーへの説明責任を果たすとともに企業との相互理解を深める観点から、1つ目として、個別の議決権行使に係る賛否の理由、2つ目として、企業との対話活動及びその結果、3つ目として、スチュワードシップ・コードの各原則の実施状況の自己評価等に関する説明や情報提供の充実を運用機関に促すことが重要であるとされたところでございます。
他方、下の方ですけれども、運用機関等からは、議決権行使に係る賛否の理由を公表すると、企業が機関投資家との対話に応じてくれなくなるのではないかといったような不安の声も聞かれているところでございます。これらの点についてどう考えるべきか、後ほどの討議の時間にて、皆様のご意見を頂戴できればと思います。
ページをおめくりいただきまして、15ページですけれども、こちらでは運用機関の議案に関する議決権行使結果の推移を示したグラフを掲げさせていただいております。
まず、左側の図ですけれども、会社提案の全議案に関する議決権行使結果に関しまして、国内機関投資家と海外機関投資家別の反対率の推移を示したものです。全議案を通じて見ますと、反対の議決権行使率はそれほど変化がないようにも見られます。もっとも個別の議案を見ますと、例えばその右側の図の方ですが、会社提案の買収防衛策に関する反対率の推移では、国内の機関投資家――青のラインですけれども――こちらの反対の議決権行使は、スチュワードシップ・コード策定以降、徐々に数が増加しておりまして、特に、前回のスチュワードシップ・コード改訂によりまして、個別の議案の議決権行使結果の開示が求められるようになって以降は顕著に増加しているというデータになっております。
これは必ずしも反対の議決権行使を行うことがよいということをお示しするものではなくて、運用機関が個別の議案を判断し、実質的に議決権行使を行うようになったことを表す1つの事象ではないかと理解しております。
他方で、このグラフでは、海外の機関投資家については、若干ですが、反対の議決権行使比率が下がっているところも見てとれるかと思います。
次に、16ページですけれども、こちらは機関投資家における個別の議決権行使結果の公表状況についてでございます。これは2日前の2019年9月末時点でデータをまとめておりますので、速報値ではございますけれども、この時点におきまして、議決権行使結果の個別公表を行っているのは100機関を超える119機関となっております。2018年12月時点、棒グラフの左側の薄い青のところから足元の濃い青のところへの大きな変化という意味では、2018年12月時点で会社提案に反対したなどの理由について、個別議案ごとに公表しているのは20機関でしたけれども、足元の9月末時点ではおおむね倍増しているという形になっています。
1枚おめくりいただきまして、17ページですけれども、これは、先ほどの機関投資家の議決権行使結果の公表状況を業界別にまとめたものでございます。こちらも集計の関係で速報値でございますけれども、いずれの業界におきましても、議決権行使の理由の開示も含めて、個別議案ごとに結果を開示している機関が増加しているというところが見ていただけるかと思います。
続きまして、18ページですけれども、こちらは議決権行使結果の理由の公表例を挙げさせていただいております。上の四角の下の方にございますけれども、「スチュワードシップ・コードの指針5-3においては、『議決権行使の賛否の理由について対外的に明確に説明することも、可視性を高めることに資すると考えられる』」という記載がございますが、多くの運用機関では会社提案への反対理由のみを公表しているというのが実情かと思います。
一方で、右の方ですけれども、会社提案の反対理由とともに株主提案への賛成理由を公表しているような機関や、あるいは、賛成も含む全ての議案への議決権行使結果について理由を公表している機関も少数ながら存在しているところでございます。
19ページでございますけれども、こちらはスチュワードシップ活動状況の公表についてでございます。現在、スチュワードシップ活動報告を公表しているのは、運用機関で5割ぐらいとなっております。スチュワードシップ活動報告では、特徴的なものとしては、この下の図の左側ですが、対話の内容とかその結果にまで触れている機関ですとか、あるいは、対話についての対話先とか第三者機関からのフィードバックを公表している機関、自己評価を踏まえて今後の方針について記載している機関――これは右側の方の例ですけれども――そういうのもございました。総じて、活動状況の報告につきましては、機関投資家ごとに記載内容の差異が大きく、まだ内容が具体的と言えないものも幾つかございます。
次に、20ページでございますけれども、こちらはサステナビリティに関する意見書の指摘やフォローアップ会議での議論を紹介させていただいております。この点、現行のスチュワードシップ・コードの指針の3-3では、機関投資家が投資先企業について把握する内容の一例として、事業におけるリスク・収益機会、社会・環境問題に関連するものも含むとされておりまして、その脚注において、ガバナンスとともにESG要素と言われるという記載になっております。
本年4月のフォローアップ会議の意見書では、運用機関がESG要素等を含むサステナビリティをめぐる課題に関する対話を行う場合には、投資戦略と整合的で、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値向上に結びつくものとなるよう意識することが期待されるというご指摘をいただいています。
フォローアップ会議では、企業評価において、ESGの要素がますます重要な意味を持つようになっているというご意見ですとか、あるいは、スチュワードシップ活動におけるESG要素のインテグレーションの重要性を指摘するようなご意見がございました。また一方で、ESGのGがおろそかにならないようにすべきというご意見もいただいたところです。このESG要素を含むサステナビリティを取り巻く大きな流れの中で、本検討会において、これらをどのように取り扱うべきかについてもご議論いただければと思います。
続きまして、企業年金等のアセットオーナーに関するご説明でございます。
22ページですけれども、フォローアップ会議の意見書では、アセットオーナーにつきましては、経済界をはじめとする幅広いステークホルダーとも連携しながら、企業年金のスチュワードシップ活動を後押しするための取組みを推進することが重要という指摘がございました。
企業年金の中には、下の方のご意見にもございますように、スチュワードシップ活動の範囲や程度につき、誤解を生じているような場合もあるというご意見も伺っております。金融庁では、昨年に引き続き、経済界や関係各省とも連携しながら、企業年金等のアセットオーナーによるスチュワードシップ活動の後押しに向けた活動を行ってまいりたいと考えております。
続きまして、サービスプロバイダーについてのご紹介でございます。まず、議決権行使助言会社についてのフォローアップ会議でのご議論を紹介させていただきます。
24ページでございますけれども、議決権行使助言会社に関しては、個々の企業に関する正確な情報を前提とした助言が運用機関に提供されることが重要。十分かつ適切な人的・組織的体制の整備と、それを含む助言策定のプロセスの具体的な公表が行われることが期待される。企業の開示情報のみに基づくばかりではなくて、必要に応じ自ら企業と積極的な意見交換をしつつ助言を行うことが期待される。また、運用機関側でも、議決権行使助言会社の活用状況について、具体的な議決権行使助言会社名ですとか、運用機関における助言内容の確認の体制、具体的な活用方法等に関する説明や情報提供を促すことが重要というご指摘をいただいています。
その他のご意見として、議決権行使助言会社の判断の前提となる事実に誤認がある場合もあるといったことや、助言会社の推奨レポートを企業が事前に確認できる機会、あるいは、企業の意見が掲載される機会が充実するとよいといったご意見も聞かれているところでございます。
次の25ページは、機関投資家による議決権行使助言会社の活用状況を示したものです。こちらの左側の円グラフですけれども、機関投資家の約4割が議決権行使助言会社を活用しているというアンケート結果が出ているところでございます。また、資料の右側では、議決権行使助言会社の活用状況についての運用機関による公表例を紹介しています。上の例は、議決権行使助言会社を活用する場合を示した上で、具体的な活用方法について公表しておられる例です。下の例は、利用している議決権行使助言会社の個社名を公表しておられる例でございます。
最後に、26ページでございますけれども、こちらは、サービスプロバイダーにおけるもう一つの主体であります年金運用コンサルタントについてでございます。フォローアップ会議では、運用コンサルタントが、顧客に対するその影響力を背景として、コンサルタント業務とあわせて自らの投資商品の購入の勧誘を行う例が見られるといったご意見ですとか、あるいは、運用コンサルタントが運用機関のスチュワードシップ活動を適切に評価していないのではないかといったご意見もございました。
これらを踏まえまして、意見書では、年金運用コンサルタントが、自ら企業年金等のスチュワードシップ活動をサポートする重要な主体の一つであるということを明確化した上で、自らの利益相反管理体制の整備ですとか、その取組み状況を通じて説明等を行っていただいて、こうした取組みを通じて、インベストメント・チェーン全体の機能向上を図ることが重要であるというご指摘をいただいています。
資料の左下の図は、企業年金における運用コンサルタントの契約状況についてのデータをお示ししています。全体としての平均契約率は26.4%でございますけれども、資産規模1,000億円以上の企業年金では、7割弱の企業年金が運用コンサルタントと契約しておりまして、資産規模の大きい企業年金ほど運用コンサルタントと契約している場合が多いということがお分かりいただけるかと思います。
早口で恐縮でしたが、事務局からの説明は以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、メンバーの方々からのご説明に移りたいと思います。
ただいま事務局からご説明がございましたとおり、フォローアップ会議の意見書におきましては、運用機関、議決権行使助言会社、年金運用コンサルタントに関する論点が提出されておりますので、まず最初に、運用機関の立場から、日本投資顧問業協会会長の大場メンバーより、10分程度でご説明をお願いしたいと存じます。大場メンバーからは、資料5のご提出をいただいております。
それでは、大場メンバー、どうかよろしくお願いいたします。
【大場メンバー】
ご紹介いただきました、投資顧問業協会の大場でございます。
業界全体がどのような方向で活動が進められているかお話をさせていただければと思います。
資料5の表紙に2018年10月実施分と書いておりますが、今年度は、ただ今実施中で、まだ集計されておりません。したがいまして、昨年度の結果をもってご説明させていただきます。
当協会では、2014年から継続してアンケート調査を実施しており、昨年度の回答会員数は225社中218社、回答率97%と大変高い回答となっており(資料1ページ目)、全体像が把握できるのではないかと思います。回答会員の日本株投資残高は約66兆円です。
アンケートの目的は、スチュワードシップ活動の普及・定着を図ることにより、日本におけるコーポレートガバナンスの向上に貢献すると、これが目的でございまして、具体的な数字にこだわるのではなく、これはあくまで手段でございまして、目的はガバナンスの向上にあると、もっと言えば、持続的な企業価値の向上にあるということではないかと思っておりまして、そういう観点でアンケートを継続して実施しております。
本日は、その中から4つのテーマでご紹介申し上げたいと思います。
1つ目のテーマが、議決権行使の結果の公表についてです(資料2ページ目)。議決権行使の結果を「公表している」会社が50%、「検討中」が11.5%、「今後も公表の予定なし」が38.5%です。
公表しない理由は、「顧客の承認を得られなかった」、「システム対応が必要であり、コストがかかる」―これは、おそらく、TOPIXがインデックスになっているケースが多いので、大変な数の議案を判断していかなくてはいけない、相当の経営資源の投下が必要になるということが背景にあるものと想定されます―、「契約上、議決権を有していないため」、「顧客が少なく要請があれば個別に開示する」などでございます。
今年のアンケートにおいても、「今後も公表予定なし」とする理由を具体的に質問しております。
投資一任契約では、顧客ごとに詳細な報告を行っておりますが、このアンケートにおける「公表」とは、あくまで一般的な公表のことを言っております。投資一任契約では、顧客ごとに詳細な結果を報告をしておりますので、これは個別にやっています。しかし、アンケートでは一般的に公表しているかどうかということを聞いております。
議決権行の結果を公表する際、賛否の理由についても説明しているかどうかについてですが(資料3ページ目)、「説明している」会社が23.4%、「説明していない」が76.6%です。
今年のアンケートでは、賛否の理由について説明している議案について、会社提案の議案か株主提案の議案か、それぞれに賛成、反対、棄権をしたか、個別に説明が必要と判断した議案のみ説明している場合は具体的な事例を書いていただくということで、質問を追加しております。言ってみれば、注目されている議案であるとか、この議案は反対した方が、あるいは賛成した方が受益者のためになると考えられる議案のみ説明していることが想定されますけれども、このようなことを具体的に記入していただくという趣旨であります。
2つ目のテーマは、議決権行使助言会社の活用についてです(資料4ページ目)。「活用した」会社が41.5%、「活用しなかった」が58.5%です。活用対象は、「日本株式・外国株式の両方」が59%です。
助言内容をどのように活用しているかについてですが(資料5ページ目)、「議決権行使指図の判断の際、参考としている」会社が43.6%、「稀に異なる時もあるが、基本、助言内容に沿って議決権行使を指図する」が30.8%、「親会社等について、助言内容に沿って議決権行使を指図する」が20.5%で、これは利益相反管理の一環ではないかと思います。
助言会社を活用した旨およびサービスをどのように活用しているかを公表しているかどうかについてですが(資料6ページ目)、「公表している」会社が81.8%、「公表しておらず、かつその理由も開示していない」が15.2%です。多くの日本株運用会社が活用して公表しているわけですが、議決権行使の作業に手間やコストがかかり、経営資源の投下が要請されるということで活用されているのではないかと推測されます。
議決権行使助言会社の活用における公表の具体例についてですが(資料7ページ目)、「助言会社からレポートを取得し、議決権行使に際して参考資料の位置づけとして利用し、最終判断は当社で行う」や「資本関係を有する企業や営業上の関係を有する企業についての議決権行使の判断は、利益相反管理の観点から活用している」などが、具体例として示されています。
3つ目のテーマは、運用コンサルタントの活用についてです(資料8ページ目)。運用コンサルタントから日本版スチュワードシップ・コードに係る活動について質問を受けたことがあるかについてですが、「ある」会社が38.2%、「ない」が61.8%です。これは前回の回答からすると、やや「ある」が多くなってはいるのですが、今年度どうなっているか注目してみたいと思っております。
運用コンサルタントから受けた質問内容についてですが(資料9ページ目)、「日本版スチュワードシップ・コードに関する方針」が一番多く、「エンゲージメント活動について」、「議決権行使状況について」がそれに続きます。
先ほど井上課長からも、運用コンサルタントの問題意識等について、まだ不十分ではないかというお話もございましたので、今年度のアンケートでも、運用コンサルタントの動向を把握するために、同様の質問を実施しております。
4つ目のテーマは、ESG投資についてです(資料10ページ目)。回答会員の日本株投資残高約66兆円のうち、約27兆円がESG投資を行っております。
顧客からESGに関連するようなマンデートを受けたことがあるかについては、「受けたことがない」会社が77.1%です。顧客はアセットオーナーだけではなく、金融機関や一般投資家もいると思います。今年度のアンケートでどうなっているか注目したいと思います。
アクティブ運用の際にESG要素を考慮しているかどうかについては(資料11ページ目)、「考慮している」会社が62.9%、「考慮していない」が18.9%です。銘柄選択において、個々の企業がESG要素をどのように取り入れて企業活動を行っているか考慮しているという回答が多くなっています。
資料12ページ目は、私が申し上げた内容のまとめです。1点目は、議決権行使結果の個別開示は発展途上。賛否の理由の開示は70%が未実施。この実態からして、スチュワードシップ・コードの原則5に照らして改善の余地は大きいのではないでしょうか。
2点目は、議決権行使助言機関の活用は40%程度、活用対象は日本株と外国株式が過半。活用方法は、助言内容に沿う議決権行使を行う場合と、参考意見として活用する場合がおおむね半々。活用した旨の開示は80%。原則5に従い、運用会社は活用内容を含め、より充実した開示を行う必要があるのではないでしょうか。
3点目は、運用コンサルタントから日本版スチュワードシップ・コードに係る活動について質問を受けた、あるいは質問状が送付されてきた運用会社は40%弱でありますので、これがもう少し高くなるよう課題として挙げる必要があるのではないでしょうか。
4点目は、ESG要素を考慮するマンデートを受けたことがないという運用会社が80%程度。アクティブ運用において、ESG要素を考慮するとした運用会社は60%超。原則3に照らしてESG要素を取り入れた運用の促進という観点から、改善の余地が大きいのではないでしょうか。
以上であります。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、議決権行使助言会社の立場から、インスティテューショナルシェアホルダーサービシーズ株式会社(ISS)、代表取締役の石田メンバーより、10分程度でご説明をお願いいたします。
それでは、石田メンバー、どうかよろしくお願いいたします。
【石田メンバー】
ISSの石田と申します。本日はこのような機会をいただき、まことにありがとうございます。当方からは資料は用意しておりませんので、口頭での解説とさせていただきたいと思います。
私の方からは、フォローアップ会議のご指摘を踏まえて、幾つかの論点について、ISSの立場から述べたいと思います。
最初に、利益相反管理についてですが、ISSの子会社にISSコーポレート・ソリューションズ(ICS)という会社があります。ICSは、企業に対してコンサルティングサービスを提供しております。そこで、ここで指摘される懸念は、発行企業がICSのクライアントである場合、ISSは、その企業の議案の賛否の推奨に何らかの配慮をするのではないかということだと思います。この懸念は、ISSがICSのクライアント企業を知ってしまうことから生じます。そこで、ファイアウオールを設けまして、ISSがICSのクライアント企業を知ることができない仕組みをつくっています。
具体的には、ISSとICSは物理的に隔離された別々の場所で業務を行っていること、また、コンピュータシステムのアクセスなども、ISSとICSでは別々に管理されております。更に、内部の規定によりまして、ICSは個々の企業や特定の議案に関してISSとコミュニケーションをとってはならないことなどが定められております。
また、利益相反を防ぐために、ICSとそのクライアント企業との契約には幾つかの規定があります。例えば、ISSはICSのクライアント企業の議案の賛否推奨にあたり、有利な判断は行わないということ、また、議案の賛否推奨レポートの作成はISSのスタッフだけが行い、ICSのスタッフは関与しないということ、更に、ICSのクライアントはICSのサービスを受けているということを社外で口外してはいけないということ――これは、ISSがICSのクライアント企業を知ることを避けるための工夫です――こういったことが契約に明記されております。
また、利益相反を防ぐ別の仕組みとして、情報開示の充実があります。ISSの顧客である機関投資家は、発行企業がICSからサービスを受けているのかどうかを確認することができます。更に、そのサービス内容やサービスの対価の金額までも確認することができます。この点につきましても、ICSとそのクライアント企業との契約に明記されております。こういった情報開示によりまして、ISSの顧客である機関投資家は、ISSの行動をモニタリングすることができます。つまり、ICSのクライアント企業であることがISSの助言に影響した可能性があるのか、本来は反対すべき議案に賛成したのではないかといった点からISSの行動を監視できるわけです。
それらに加えまして、ポリシーの存在があります。ポリシーとはISSが議案ごとに定めた議決権行使助言の基準のことをいいます。ISSは、公表されたポリシーに基づき議決権行使の助言を行います。ポリシーを見れば、ISSはどのように賛否を推奨するのかが、誰でも事前にわかります。これは透明性だけではなく、利益相反を防止する点からも有意義です。といいますのは、ISSは公表されたポリシーどおりに賛否の推奨を行うので、ICSのクライアント企業だけに有利な推奨はできないからです。
次に、調査の体制について述べたいと思います。ISSは世界中にオフィスを持ち、2017年6月時点で合計450名のリサーチ人員を擁しています。日本企業に関するリサーチは東京が拠点ですが、1年を通じて日本以外のISSオフィスからもサポートを受けています。特に、6月の繁忙期にはそれが重要になってまいります。情報技術が発展した今日、世界のどこからでもネットワークで作業ができますので、日本のリサーチを行うのに東京にいる必要はありません。重要なのは、6月の繁忙期にどれだけのリソースを日本のリサーチに投入できるかという点だと思いまして、この点につきまして、今年の6月の実績では13名のISSのアナリストが日本のリサーチに参加いたしました。また、6月は大量の招集通知を取り扱いますので、フルタイムのスタッフだけでは足りません。したがって、事務作業的な要素が強い作業につきましては、例年多くの臨時スタッフを東京で採用して対応しています。
議決権行使の推奨には正確な情報が必要です。調査で利用する基本的な資料は、招集通知、有価証券報告書、決算短信などですが、ISSでは、可能な限り、これらの情報を電子的、つまり、XBRLファイルの形式で入手しております。また、情報の正確性につきましては、外部から購入するデータも活用してクロスチェックをかけています。更に、人の手を介して入力されるデータにつきましては、複数の人間によるチェックを行い、データの正確性に配慮しています。これらのデータは、1年間を通じてメンテナンスされています。
また、制度的な面での話ですが、ISSは、以前から米国の証券取引委員会(SEC)に投資顧問業者として登録されております。また、リサーチ業務の正確性を担保するため、ISSはSSAE16と呼ばれる内部統制保証を監査法人から受けております。SSAE16は米国公認会計士協会が定めたものであり、アウトソーシングなどを行う会社の内部統制の有効性を評価する保証基準となっております。
最後に、発行企業との対話について述べたいと思います。ISSにとって企業との対話を持つ最大の理由は、ISSの顧客である機関投資家のため、議案推奨レポートの質を高めることにあります。企業行動に変化を与えることは、ISSの目的ではありません。ですので、双方向の意見交換というよりも、どちらかといえば、企業の考え方を聞いたり、招集通知だけではよくわからない事柄の確認が対話の主な目的です。例えば、経営統合、株主提案、プロキシーファイト、あるいは、不祥事が発生したような状況では、招集通知の情報だけでは不十分です。そのような場合、質の高いレポートを作成するには企業の考え方を聞くことが重要になってきます。また、考えを聞くのは企業からだけではありません。例えば、株主提案やプロキシーファイトのような状況では、提案株主からも意見を聞くようにしています。次に重要な対話の目的は、企業の方に正しくISSの考え方を理解していただくことにあります。なお、ISSのポリシーはISSのウエブサイトに全て掲載されておりますので、基本的なISSの考え方はそれで確認できます。
企業との対話は、私たちからお願いする場合もあれば、企業からの依頼で行うこともあります。対話の依頼は、総会の集中月、3月や6月以外は基本的に全て受けています。しかし、重要度によっては集中期でも対話の依頼を受けておりますし、ISSから対話をお願いすることも少なくありません。
対話は、実際に会って面談する物理的な場合もあれば、電話による場合もあります。そのような対話の記録は、ISSの議案推奨レポートに記載されています。よって、その場合、ISSの顧客である機関投資家は、ISSの賛否推奨は企業との対話を経て作成されたことがわかります。例年150社から200社程度の議案推奨レポートにおきまして、そのような対話の記録を記載しています。
また、透明性の観点では、発行企業は当該企業の議案推奨レポートを無料でISSから入手することができます。そのレポートには連絡先のメールアドレスが掲載されておりますので、推奨に関して問題があると思った際には、企業の意見や反論をISSに連絡することが可能です。実際に発行企業からISSに寄せられた反論は、全て内容を確認しております。修正が必要な場合は、レポートを修正して再配信します。例年、議案の賛否の推奨に関して数十件の意見や反論がISSに連絡されます。ISSによる事実誤認などエラーの場合は、早急にレポートの内容を修正します。しかし、解釈の違いによる反論も多くあり、その場合は賛否の推奨の変更は行いません。また、企業からの反論をISSのレポートに追加して、レポートを再配信することもあります。
また、これは他国の事例ですが、ISSではアメリカやカナダ、フランスでは、大企業を対象にレポートをドラフトの段階で確認してもらうことも行っております。これが可能なのは、それら市場では総会シーズンが数カ月に分散し、総会の1カ月以上前に招集通知が開示されているという背景があります。日本では総会が6月下旬の1週間に集中しておりますので、実務的な課題が多く、現在は行っておりません。
それ以外の発行企業との対話の機会としては、ISSのポリシー改訂に関するものがあります。ISSは、ポリシーを毎年見直します。その際には、投資家だけではなく、発行企業の意見も聞きます。ISSは、その過程でパブリックコメントも実施いたします。実際に、例年多くの発行企業の方から意見をいただき、そうした意見に基づき、ポリシー改定内容を変更する事例も過去にはありました。
発行企業との対話は、日本企業の実情を勘案した議決権行使基準を作成するために貴重な機会であると考えております。
私からは以上です。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、年金運用コンサルタントの立場から、タワーズワトソン・インベストメント・サービス株式会社、代表取締役会長の大海メンバーより、10分程度でご説明をお願いいたします。大海メンバーからは、資料6のご提出をいただいております。
それでは、大海メンバー、よろしくお願いいたします。
【大海メンバー】
ただいまご紹介いただきました、タワーズワトソン・インベストメント・サービスの大海と申します。よろしくお願いいたします。
運用コンサルタントについてご指摘を受けているということで、私からは、運用コンサルタントを含めた日本の年金に対するサービスプロバイダーの現状を説明させていただきたいと思います。
年金コンサルタントに関しましては、最近、英国のCMAでも取り上げられまして、このレポートの概要は、事務局さんの資料にも含まれております。ただし、海外と日本とは違う面もあることもあるため、まずは海外の状況を説明した上で、日本の状況を説明したいと思います。
それでは、早速内容に入りたいと思います。
1ページ目ですが、これは、海外で年金運用のアウトソースが急速に拡大しているというものを示しているグラフでございます。海外では、OCIO――アウトソースCIO、あるいはフィデューシャリー・マネジメントと呼ばれますけれども、こういったものが、最近、急速に拡大しているところでございます。
その年金によるアウトソースが拡大している理由が2ページに挙げられておりますけれども、1番目には年金自身の「内部リソースの不足」、2番目には「より良いリスクの管理」ということで、餅は餅屋にということで専門家にアウトソースする。3番目にはどんどん運用というものが複雑化するという中で、なかなか自分たちでは全部理解して管理し切れないということで、受託者としてきちんと責任を全うするために、やはり専門家にお願いするという形で、こういったものが上位にきております。この点では、ここでも今まで意見が出ておりますけれども、リソースが限られている日本の年金なんかも検討する余地があるのではないかなと個人的には考えております。
このアウトソースを実際に請け負う側のプレーヤーとして、主要な運用会社さんはもちろんですし、私どものようなグローバルなコンサルティング会社もこのビジネスを手がけているということで、それに関して利益相反の話も出てくるということでございます。
日本では少し状況が違って、まだこういった形で丸々アウトソースという形はほとんどありませんし、また、コンサルティング会社さんによってビジネスモデルも違うということで、それぞれ状況が異なります。その中で、他社さんがどうかということは申し上げられないので、弊社に関してはどうかということをご説明させていただきたいと思います。
こちらのページでございますが、まずご理解いただきたいのは、コンサルが運用を行うのはけしからんという反応を受けることがあるんですが、私どもで運用と言う場合には、株式や債券を実際に売ったり買ったりする運用そのものを行っているというわけでありません。あくまでゲートキーパーとして、委託する運用機関の選定を任せていただく、委託されるということでございます。その意味では、この図の左側が、いわゆるコンサルティング会社として、お客様に対してどこに委託するかの選定の助言をする。それに対して、右側ではゲートキーパーとして、選定の助言だけではなくて、いやいやなかなか全部はよくわからないし、タイムリーに入れかえもできないから、それであれば、実際、もう助言だけではなくて、決めて執行もしてくださいという形で委託されるという形が、私どもが行っている、いわゆる運用と言われるものでございます。
その意味では、左側の図と右側の図は本質的には変わらないと考えておりまして、右側であれば利益相反がないというよりは、左側のコンサルタントとしても生じ得る利益相反というものを、コンサルタントとしてもきちんと管理しておりますし、ゲートキーパーとしても、当然、同様に管理しているということでございます。
具体的には、こちらのページに弊社の対応策を挙げております。全部細々とご説明するつもりはございませんが、一番上の点だけ述べさせていただきたいと思います。ご理解いただきたいのは、私どもは特定の金融グループには属していないということです。その意味からすると、自分たち自身では、先ほど申し上げたように、証券の売った買ったという運用はやっておりませんし、グループの中でどこか違う会社がそういったことをやっている、そういった会社に委託をするということは生じないということでございます。
更に言えば、当然、全くの他社であっても、そういうところと不透明な関係があってはいけないということで、その選定先、評価先に対して何らかの、例えば、委託した、あるいは弊社のお客様のお金を誘導した場合にキックバックで報酬をいただくとか、そういうことは決してやっていないということで、それによって、あくまでもお客さんのため、そして最終受益者のために何がベストな運用かという観点からアドバイスするなり、実際に選定の委託を受けているということでございます。
ということで、自分たちとしてはきちんとやっているつもりでございますが、このあたりの情報開示等が不十分ということであれば、これをもっときちんと厳格に行うということはやぶさかではありませんし、CMAのレポートの中にも徹底した、誰が誰に対してどういう報酬を払っているのかといったものの開示等の指摘がありましたので、そういったことが必要であれば、今まで以上にやらせていただくということは対応いたします。
ただし、日本においては、ある意味、私どもの力不足を示しているようでお恥ずかしいんですけれども、多分、年金さんの運用に関しては、コンサルティング会社以外にいろいろと影響を与えているプロバイダーさんがいらっしゃると私は理解しております。
この5ページ目の資料ですけど、これは弊社で過去20年近くにわたって毎年アンケートをとっているんですが、その年金基金さんが母体、親会社の取引関係で委託先を決めている割合はどのぐらいですかという質問を過去18年にわたって聞いております。これをご覧いただきますと、全体では2割ぐらい、ただし、大体想像できますけれども、規模が小さくなるほどこの割合が大きくなってくるということで、小規模な基金さんでは、場合によっては、4割ぐらいは親会社さん、母体の取引関係で委託先を決めざるを得なくなっているという状態でございます。
先ほど井上課長のご説明にありましたように、コンサルの場合、日本では大体26%がコンサルを採用しているということですが、これを見ると、小規模な基金さんでは4割ぐらい、更に言うと、これは弊社のお客様だけではありませんが、弊社のお客様を中心に100基金弱にアンケートをとっているので、残りの1万以上の基金さん、コンサルも使っていないところも含めて全部に実際に聞いたら、この数字を上回ることはあっても、下回ることはないのではないかなと理解しております。
あともう一つは、私も海外の同僚に説明してなかなかわかってもらえないのが、日本の総幹事という制度になります。総幹事さんは、管理業務、数理業務、そして運用業務を行っていらっしゃるということで、ある意味、基金さんにとっては非常に強い味方と言うことができるかと思います。
一方で、やはりその管理業務、数理業務で全面的に依存しているという状態の中、運用に関しても、委託することに関して大きな影響を受けているというのは、私が感じるところでございます。その意味では、受託者責任の忠実義務、本当に加入者、受益者のことのみを考えて委託を決められているのかということに関して、疑義を差し挟まざるを得ない状況もあるのではないかと考えております。
また、前のページで見ましたように、実際、大手金融グループで基金の母体に何らかの形で働きかける、結果として、実際に基金の人たちが財務とか営業の方と相談しないと、とてもじゃないけれども委託先の入替えはもちろんのこと、シェアを変更することもままならないという例も見聞きしております。
ということで、次の2ページは、蛇足ながら、この日本の運用業界がどういう状態になっているか、そして、日本の運用会社がどういう状態かということを示しているんですが、ここで申し上げたいのは、個人的な意見となりますけれども、結局、日本の運用機関の多くは、ビジネスの獲得や維持をこういう形で行ってきた結果、残念ながら、グローバルに見ると、日本の運用業界ないしは運用会社というのは、少なくとも世界2位、3位の経済大国、金融大国として見合う形で存在感を発揮できていないのではないかなと感じております。
ということで、これまでもこの場でも指摘されてきたかと思いますけれども、日本の企業年金の場合、リソースが非常に限定的で、必ずしも専門家じゃない方々が苦労しながらやられております。そういう中で、総幹事さんや、場合によっては母体のメーンバンク、融資先、あるいは取引関係、こういったものに縛られていたら、スチュワードシップ・コードの受け入れどころか、受託者責任もなかなか果たせない、あるいは、果たすことが困難な状態が多々あるというのが現状と私自身は理解しております。その意味では、こういった状態をまずは是正することがインベストメント・チェーンの起点で非常に重要な、アセットオーナーが本来の機能を発揮するための、遠いようで近道なのではないかと考えております。
私からは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、これより、事務局説明並びに大場メンバー、石田メンバー及び大海メンバーによるただいまのご説明に関しまして、皆様からご意見等をお伺いする討議の時間とさせていただきます。
今回は、運用機関、議決権行使助言会社、年金運用コンサルタントの方々にご説明をいただきましたけれども、それ以外の論点についても幅広くご発言をいただければと存じます。また、本日は初回ということもございますので、本検討会の進め方につきましても、何かご意見等がございましたらご発言をお願いいたしたく存じます。
それでは、どなたからでもご発言よろしくお願いいたします。それでは、佃メンバー、お願いいたします。
【佃メンバー】
じゃあ、トップバッターを務めさせていただきますけれども、まず、事務局も含めて、プレゼンテーションありがとうございました。
この金融庁さんの資料の中で、10ページのところ、「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性」にスチュワードシップ・コード、そしてコーポレートガバナンス・コードの残された課題といったところが出ていると思います。
私の方からは、ここに載っていない話ということで、これはコメントというよりも、多分、大場メンバーに対するご質問という形の方が適切かなと思いまして、2つ質問させていただきたいと思います。
この10ページの前の方の6ページのところに、建設的な対話に関して、実は、日本のコードが「建設的な「目的を持った対話」を通じて」というのは、これが初めてであるというのはすばらしいことだと思ったのですけれども、それ(2014年の2月)から5年たちました。
フォローアップ会議でも何度か問題提起させていただいていますけれども、まず1番目に、エンゲージメントの質は、5年たって上がったのか。例えば、パッシブ運用の会社が企業の経営者にとり気づきとなるような対話が、全部とは言わないにしても、5年前と比べて広がっているのかどうか。逆の立場で言うと、企業の経営者にとって、エンゲージメントが自分たちの企業価値を上げる上で非常にプラスになっているという実感を得られるような状況が実現できているのかどうかといった観点で、大場メンバーから見たときに全体状況がどうなっているかを、ぜひお伺いしてみたいなと考えたのが1点目です。
それから、2点目に、今、プレゼンテーションを聞いていると、至るところに利益相反管理という言葉が出てきていますよね。また、先ほどの大海メンバーの資料の中にも、6ページに「大手金融グループが基金の親会社にプレッシャーをかける例が多数、存在」という話がある。そうすると、当然ながら、その大手金融グループにおける利益相反管理というのは極めて重要になってくる。これは、日本では特にそうだろうということがあると思いますけれども。そうすると、じゃあ利益相反管理は、現状、5年前と比べてどこまで改善したのか。当然、皆さんきっちりやっておられると思いますけれども、それを客観的に見たときに、例えば、総合金融グループに属する運用機関も含めて、どこまで利益相反がちゃんとできているのかをどう評価すべきかという課題が残っていると思います。そもそも論として、この課題をどう考えるべきかにつき、ぜひご質問させていただきたいなと考えた次第です。
以上です。
【神作座長】
大場メンバー、ただいまのご質問に対してお答えいただけますでしょうか。
【大場メンバー】
エンゲージメントの対象である上場会社が2,000社を超えている一方で、アンケートに回答した運用会社が約200社であるため、一言で回答するのは難しいです。
私の印象で言いますと、エンゲージメントについては、グローバルに活動する企業の一部において、運用会社によるエンゲージメント活動を意識して、主要な財務情報と非財務情報を網羅した統合報告書の作成等によって企業成長のストーリーを描いていくといったように、活動に改善が見られます。
一方で、残念ながら、経営資源の投入が追いつかない等の理由で、すべての企業が同じように改善しているわけではありません。従って、全体として一言で表現するのは大変難しいのが現状だと思います。そもそも片仮名ばかりでよくわからないとか、いろんな意見が出ているのも実態であります。
したがいまして、一言でどうかと言われるのは大変難しいのですが、一部の企業においては、大変その効果が出ていて、更に進んでいる。一方では、とてもそういうところについていくのが難しくなっている、これが実態ではないかというのが私の印象です。
【佃メンバー】
利益相反関係については?
【神作座長】
利益相反については何かコメントございますでしょうか。
【大場メンバー】
私ですか。
【神作座長】
大場メンバー、お願いいたします。
【大場メンバー】
利益相反管理については、大海メンバーのお話にも出てきておりますけれども、日本では金融系列の運用機関が多いため、相当程度神経をとがらせて対応しなければ疑われてしまうという問題意識が背景にあるのではないでしょうか。議決権行使に係る賛否の理由の開示にあたっては、全部を開示することは、コストとの関係で難しいと思います。従って、利益相反が懸念される議案や世の中で注目されている議案に対し、賛否の理由を開示することが望ましいのではないでしょうか。
更に言うと、これはちょっとこの検討会の枠を超えるかもわかりませんが、ここまで議論してなかなかそういうことが解決しないということであるとすると、少しいろんなルールを見直してもいいのかなという気もしないでもありません。アメリカの大恐慌時に人間の知恵として、なぜグラス・スティーガルというのをつくったのか再考してみる必要も感じます。その後いろいろな事情から撤廃してきています。その結果どうだったかという検証もそもそも論としては必要かもしれない。だけど、これはちょっとこの検討会の枠を超えてしまいますので、単なる私の感想ということにとどめたいと思います。
【神作座長】
ありがとうございます。佃メンバー、よろしゅうございますでしょうか。
【佃メンバー】
ありがとうございます。
【神作座長】
他にご発言、ございますか。
小口メンバー、お願いいたします。
【小口メンバー】
ありがとうございます。時間も限られていますので、細かい話というよりも、そもそも論ということでお話しさせていただきます。中島局長の方から冒頭お話があったとおり、2014年にコードが作られて、もう5年たちました。2017年に1回改訂していますので、今回は2回目の改訂に当たります。どんどん議論が進むことによって議論の範囲が拡大してきた状況の中で、こういう状況になればなるほど、そもそもスチュワードシップ・コードって何のために作ったのだろうという原点のところを改めて確認していく必要があるのではないかということを強く感じています。
それは何かというと、資料3の8ページですか、説明は割愛されたのかもしれませんが、スチュワードシップ・コードの冒頭にも書いてあるのですけども、機関投資家が、投資先企業との建設的な対話を通じて、企業の持続的成長、これは1つですよね、もう一つが顧客・受益者の中長期的な投資リターンの拡大、この2つを図る責任というのがスチュワードシップ責任だということです。ということであれば、先ほどの佃メンバーのお話にも関係するのかもしれませんが、コードを作って5年たち、5年というのは長期とは言えないまでも、いろんなものを振り返るにはいいタイミングだという中で、コードは企業の持続的成長と中長期的な投資リターンの拡大を目的にして作られた、この二つを意図した結果とすると、英語で言うところのアウトカムですが、アウトカムがどの程度達成できたのかという振り返りや評価というのが、まずは行われるべきではないかなと思いました。
今回、いろいろ資料でお話があったとおり、確かに受入機関の数とか、あるいは個別の議決権行使結果の公表の増加といった、例えば透明性に係る部分というのは、大場メンバーのご説明にあったとおり、まだまだ改善の余地はあると思いますけれども、さはさりながら、活動自体は確かに進展してきたなと思っています。ただ、この進展というのは、結果として、アウトカムとして求めた企業の持続的成長と中長期的な投資リターンの拡大というものにつながったのかどうかということが示されないのであれば、結局のところ、スチュワードシップ活動の実質の評価というのは難しいのではないかと思っています。
それどころか、先ほど少し申し上げましたけれども、どんどん議論が深まって、議論の対象が拡大すればするほど、そもそも何を目的に作ったのだろうかというところの意識が薄れてしまうと、スチュワードシップ活動自体が目的を達成するというよりも、形式論に終始してしまって、ガバナンス改革というと、必ず形式から実質の深化という話が出てくるのですが、それがかけ声だけに終わってしまうのではないのかと危惧しています。結局、実質に対するコミットメント意識がないと、形だけ―形は多分よくなると思うのですけれども―ということになってしまうのではないか。
今回のコードのいろんな改訂の中、やはりアウトカムへの意識というものをコード全体の問題として考えていくべきで、アウトカムの視点からこの改訂はどうかといった議論というのが要るのではないかということです。
これはコード全体の話であるのですが、実際にかかわっている、これまでコードを受け入れた機関投資家、あるいは今回のサービスプロバイダーもそうですし、アセットオーナーもそうだと思うのですが、それぞれが自らの立場で知恵を絞って、こういうスチュワードシップ活動をしていますという中に、このアウトカムへの意識を入れ込んで、公表していくという視点が要るのではないかということを考えました。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、米花メンバー、松永メンバー、北後メンバーの順でご発言お願いいたします。
それでは、米花メンバー。
【米花メンバー】
どうもありがとうございます。私から2点コメントを申し上げさせていただきたいと思います。
1つ目は、今回のスチュワードシップ・コードの改訂に向けて全般的なコメントということでありまして、まず、これまでの経緯ということで振り返ってみますと、これは個社の話になってしまうところではございますけれども、私どもとしても運用機関として前回の改訂以降、実質的な取組みへの対応を進めてきているところでありまして、スチュワードシップ・コードの策定やその後の改訂を経る中で感じておりますのが、運用機関や企業において対話の重要性の認識が確実に高まってきているなというふうに感じております。その結果ということでありますけども、運用機関として企業との対話がやりやすくなったというふうに感じているところでございます。
これはいろいろご意見あるのかもしれませんけれども、まさにスチュワードシップ・コードが運用機関と企業の双方それぞれの取組みがあるべき方向に向かうことを後押ししているということを実感している次第でございまして、今回のスチュワードシップ・コードの改訂に当たりましても、このフォローアップ会議の議論を踏まえて、こういったスチュワードシップ活動の高度化を更に後押しするような改訂になると、こういったことを期待しているということでございます。
2つ目は、大海メンバーのご説明に関してでありますけれども、先ほど佃メンバーからもお話がありましたけど、私どもの業界に関連するお話が出てきましたので、ちょっとこのあたりについてコメントをさせていただきたいと思います。
アセットオーナーである企業年金を取り巻く状況についてご説明がありましたけれども、まず、年金の総幹事に関してでございます。資料は6ページのところであります。この年金の総幹事業務といいますと、なかなかなじみがないところだと思いますけども、主に信託銀行と生命保険会社が受託している業務でありまして、これは企業年金の受給者への給付でありますとか掛金といった資金の送金や回収といった企業年金制度を運営していくための事務や、年金の財政決算や数理計算といった制度の管理のための事務、これを受託している者ということでございまして、企業年金の運用に関する業務ではないということでございます。したがいまして、企業年金の運用の委託に関して総幹事は関与していないというところでございます。
現場感覚で申し上げますと、総幹事業務は、いわゆる事務の受託でございますので、総幹事業務を受託いたしておりますと、非幹事先と比較するとお客様と接触頻度が高くなると、こういった傾向がございまして、その結果、お客様のニーズをお聞きしたり、制度の提案や運用提案の機会が多くなるということはあろうかと思っております。
一方で、企業年金のガバナンスの高度化が進む中で、お客様が資産運用商品を選択されるに当たっては、内部での説明責任も視野に入れてということかと思いますけども、商品の内容の精査、その上での採用ということが増えてきているというふうには理解をしております。実際、弊社が総幹事を受託している先においても、弊社の運用商品を解約して他社の商品が採用されるケースといったものが日常的に起こっているのが現実でございまして、総幹事だからといって自然に受託資産が集まると、こういうわけではないということでございます。これが1点目でございます。
2点目は、佃メンバーからのご指摘もあったところでございますけども、大手金融グループとの関係というところでございます。これは、先ほど利益相反というような観点のお話もありましたけど、どちらかというと優越的な地位の濫用に関連する論点かなというふうに思いますので、その観点から申し上げますと、私ども大手金融グループに属する信託銀行ということでありまして、個社としては法人向けの融資業務は行っていないところでございますが、こちら年金業務に限らずということでございますけども、グループ内の商業銀行含めて、グループベースで優越的な地位の濫用を防止するための手続きを踏んだ上で全ての業務を厳格に行っているということでございまして、この点については、おそらく他の金融機関についても同様だというふうに思っております。
また、こちらも現場感覚で申し上げますと、我々自体もセールスに当たっては、企業年金の方から、先ほど話に出ていましたけれども、財務や営業にといったフレーズをよく耳にすることがございます。ただ、経験則で申し上げますと、断り文句としてお使いになっている場合が多いというように感じている次第でございます。
以上申し上げましたように、ベースの見方については、先ほどの大海メンバーのご説明とは異なるというところがございますけれども、一方で、相対的に規模の小さい企業年金がいかに受託者責任を果たしていくかという点については、課題としてはあるんだろうなというふうに思っております。
そして、この課題に対しましては、一つは企業年金の母体企業の対応が重要だということだと思いますし、これは昨年6月のコーポレートガバナンス・コードの改訂に際して、原則の2-6に企業年金のアセットオーナーとしての機能発揮という項目が追加されましたので、これによって対応が図られていくことを期待しているということではございますけれども、一方、スチュワードシップ・コードとの関係で申し上げますと、スチュワードシップ活動全体の高度化には、これまでもいろんな場面で議論されているところではございますけれども、アセットオーナーと運用機関、この双方がともにそれぞれの立場で高度化を進めていくことが重要だろうなと考えている次第でございます。
すいません、以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、松永メンバー、お願いいたします。
【松永メンバー】
日本生命の松永でございます。長期の視点から運用を行う生命保険会社の立場から、まず3点申し上げたいと思います。
1点目は、議決権行使の賛否理由の開示についてであります。
賛否理由の開示は、スチュワードシップ活動の透明性の観点から大変重要と考えておりますが、具体的な対話内容の開示につながり得る個別詳細な開示を、一律に求めることは、企業との相互信頼の観点で、今後の対話活動に悪影響を及ぼす懸念が強く、慎重にご検討の方をいただければと、このように思っております。
2点目、企業との対話活動及びその結果に関する説明の充実についてであります。
開示の充実は、各社が創意工夫を重ねて継続的に取組みを強化すべきポイントと考えておりますが、一方で各社の実力、体力等も踏まえて柔軟なものとなるようご検討いただきたいと、このように思っております。
3点目、ESGについてであります。
ESGは、ご高承のとおり、中長期的企業価値向上に大切な要素であり、生命保険協会でもESG投融資推進ワーキング・グループを立ち上げて、ESG投融資全般を推進しております。
一方で、ESGに関する建設的な対話という視点では、その取組みは今、発展段階にありまして、個社ごとの取組みスタンスも区々であります。
こういった現状と、更に対話を通じて得られる企業側のEやSに関する情報も現段階で必ずしも十分とは言えないのではないかなと思っております。
よって、建設的対話を通じて得たESG要素を投資プロセスに組み込む、いわゆるインテグレーションを、即時画一的にコードに入れ込むことは、現段階では慎重に考えるべき点もあろうかと、このように思っております。
以上3点を申し上げましたが、最後に、米花メンバーのお話と重なる部分がございますが、大海メンバーのプレゼンテーションに関して2点申し上げたいと思います。
1点目は、総幹事業務の実態についてでございます。
米花メンバーからもあったとおり、総幹事の業務は、年金契約の負債の管理、企業年金の支払いにかかわる制度管理業務であります。資産運用にかかわるアドバイスは年金管理契約には含まれておりません。
資産運用会社の立場として運用に関するアドバイスをご提案することがございますが、これは自社の運用商品の採用に向けたものであって、他社運用商品の比較推奨を行う運用コンサルティング業務とは一線を画したものであるということであります。
総幹事は制度管理業務があるため、他の関係者よりおのずと接点が多くなると思いますが、運用商品を選択いただくのは(年金)基金様でございまして、運用機関としては、他社と同等の立場にあると、このように考えております。
続いて、2点目の優越的地位の濫用防止についてであります。
生命保険各社それぞれに取組みを行ってございますが、弊社の例で申し上げますと、時間の関係もあり、具体内容についてはあえて言及いたしませんが、利益相反の適切な管理体制を整備しており、顧客本位の業務運用を徹底するという意味においても非常に重要であると、経営層を含め認識しております。そして、取組みを実践しております。
いずれにいたしましても、そういった利益相反の管理体制の構築や顧客ニーズに合わせた商品開発、提案も含め、顧客本位の業務運営を徹底していくことが重要と認識をしております。
私からは以上でございます。ありがとうございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、北後メンバー、お願いいたします。
【北後メンバー】
企業年金連合会年金運用部の北後と申します。よろしくお願いいたします。
まずもって、このスチュワードシップ・コード、こちらのフォローアップ会議のメンバーの方々によくここまでまとめていただきまして、ありがとうございます。アセットオーナーの一人として意見を申し上げたいと思います。
スチュワードシップ・コード、それからコーポレートガバナンス・コード、この2つのおかげで、大分日本市場に関する関心は本当に高まってきたと思います。これは本当にできてよかったなというふうに率直に思っております。
私、ヘッジファンド投資のヘッドもしておりますけれども、よく海外のヘッジファンド、ないしはロングオンリーもありますけれども、から日本市場への関心、あるいはどうやったらいいんだろうみたいな、そういった相談を受けたりとか、そういった話を聞いたりとかしておりますので、明らかに効果はあるんだなと思っております。
今日はちょっと2点だけ短めに申し上げたいと思います。初回ですので、細かい話でなくて、ちょっとハイレベルな話をしたいと思いますけども、先ほど小口メンバーから何のためのコードであろうかというような話があったんですけれども、私的には、先ほどご覧いただいた資料3の8ページの概要に書いてありますけれども、その中の3つ目、投資先企業のガバナンスですとか企業戦略、この状況を的確に把握すべきと、まさにこのガバナンスというものが日本の企業にとっては問題なのではないかと。
アセットオーナーとしては、運用業者さんも同様ではございますが、リターンが第一のマンデートというか、フィデューシャリー・デューティーでございますので、極端な話、単なる理屈だけですけれども、日本市場からリターンがあがらないということであれば、日本市場から出ていくというのは、もう全くもって常に選択肢としてあるというふうなことでございますので、この2つのコードに関しましては、日本市場の底上げが大前提になるということを一つ申し上げておきます。それについてはコーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コードの両方が大事というふうなことだと感じます。
今回のこの検討会は、それをどのアングルで改訂していくのかというところだと思うんですけれども、それはあと2回、細かい話はするとして、2点目として申し上げたいのは、この2つは両輪というふうに言われておりますけれども、今までの経験と市場での見てきたこと、あるいはエンゲージメントで実際に感じてきたこと、これを申しますと、スチュワードシップ・コードの車輪の方が若干小さいのではないかと感じております。そうすると、本当に下手なたとえで申しわけないんですけれども、片方の車輪が小さいと、基本的にくるくる回って、同じところで回っているわけではないんですけれども、結果として前に行くスピードが落ちているんじゃないかと感じている次第でございまして、具体的に何言っているんだというところですが、コーポレートガバナンス・コードは、基本的に上場企業皆さんに当てはまること、それからスチュワードシップ・コードについては、一応機関投資家というふうなくくりでやっておられるかと思います。もちろんUKのスチュワードシップ・コードも同様の範疇というふうには聞いておりますけれども、日本の場合、事業会社株主というのが25%近くございまして、こちらの特殊事情を勘案すると、そのスチュワードシップ・コードに縛られるというか、スチュワードシップ・コードにコンプライすべき人たちというのがちょっと少なく、小さく見えて、パワーがないなみたいな、そういうふうな感じは持っております。
ですので、もちろんこういった話、非常にアウト・オブ・ザ・ボックスな話で、ここでどう結論が出るという話じゃないとは思うんですけれども、例えば今対象になっていない銀行ですとか、それから一般事業会社さん、バランスシートにあるアセットのリターンというものは、上場していようがしていまいが経営者の責任ですから、という意味では投資家さんであるというふうに考えるべきだと私は思うんです。そうすると、事業会社さんで、持ち合い株と呼んでもいいですし、安定株主と呼んでもいいですし、そういった株を持っている方々、こちらの方々もスチュワードシップ・コードの署名対象者になるというような、そういった切り口もあってもいいんじゃないかなというふうに思われます。そうすると、より厚みとかインパクトが出てきて、その結果として議決権行使結果を開示しなきゃいけないとか、そういったいろんな負担が増えますから、結果としてそういった企業が持っている株式、これはもう本当に資本効率に大きな影響を与えますから、そういったこともあって、日本の株式額はあまり上がっていかない、いまだに半分ぐらいがPBRが1未満とか、そういう状況が少しずつでも改善されていくのではないかなと多少思った次第でございます。
ちょっと長くなりましたが、私の方からは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、春田メンバー、岡田メンバー、高山メンバーの順でご発言お願いいたします。
春田メンバーからどうぞ。
【春田メンバー】
ありがとうございます。連合の春田でございます。
まずもって、スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会のメンバーに加えていただきまして感謝申し上げます。
今も説明あったとおり、この有識者検討会、スチュワードシップ・コードの改訂の議論ということになろうかと思いますけれども、コーポレートガバナンス・コード、それからスチュワードシップ・コードがうまく両輪として機能していくことが私は重要と考えておりまして、それが社会の持続可能性、企業の持続的な成長、これにつながるように取組みを進めていただけたらと思っているところであります。
私の方から2点、フォローアップ会議の指摘について触れさせていただきたいと思います。
1つ目が、事務局の資料の22ページ目のところでございます。主体別論点の中で、アセットオーナーのスチュワードシップ活動というところでありますけれども、企業年金のスチュワードシップ活動を後押しするための取組みを推進することが重要であり、この指摘については我々も同じような認識でございます。
企業年金は、直接的に投資先企業との対話は行わないとしても、企業経営に影響を及ぼす立場であることはもう言うまでもないところでありまして、具体的に企業年金につきましては、運用委託先に対しスチュワードシップ責任に対する考え方、判断基準を明確に示すことが重要ではないかと思っておりまして、今回のコード改訂の議論の中でも、この観点を踏まえた検討も必要かと思っているところであります。
それから、もう1点が20ページ目でございまして、先ほど来話があるESG、サスサステナビリティについてというところであります。
この指摘の中にもありますとおり、ESG要素等を含むサステナビリティをめぐる課題に対する対話というのは非常に重要だと思っているところであります。我々連合としても、このESG投資に関しては、その普及と実践に向けた運動を展開してきたところであります。
ただ、20ページの指摘にあるとおり、なかなかESに特化してGがおろそかになるようなことがないようにとか、ESGの中でも、そういう意味では取組みに偏りがあるようなところもあろうかと思っております。
我々、労働組合ということもありますけれども、ESGの中で特にSの部分、労働、人権というところにもうちょっと着目した取組みというのが必要なのかなと思っているところでございます。とりわけ、公的年金、それから企業年金ということであれば、まさに労働者が拠出した、ないしは労働者のために拠出された、我々ワーカーズキャピタルという言い方をしているんですけれども、労働者の資金ということになりまして、そういう意味では、労働者にとっても重要なことだと思っているところであります。
こういったことを踏まえると、投資先企業における、例えばILOの中核的労働基準とか、安全衛生とか、そういった人材育成、それからワーク・ライフ・バランスとか、ディーセント・ワークへの配慮といった、こういったことにも着目して、スチュワードシップ・コードについてもこういった観点をいろいろ踏まえていただければありがたいかなと思っているところであります。
長くなりましたけれども、以上になります。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、岡田メンバー、お願いいたします。
【岡田メンバー】
私はこの会議に参加するのが初めてなので、既にご議論された話かもしれませんが、私のCFOや監査役の経験から実務面で感じたことを2点申し上げたいと思います。
まず1つは、対話について、いわゆる形式から実質へという議論を聞いていて感じますのは、投資家の方に、非業務執行役員、具体的に言えば社外取締役、それから監査役、これは社外、社内も含めていますけれども、これらの非業務執行役員に対してインタビューをもっとして戴きたいと思います。私が投資家なら、非業務執行役員が当該会社のガバナンス体制についてどう考えているか、その考え方を聞きたいと思います。あるいはもっと具体的な質問では、社外取締役に対し執行側からの説明や資料の提出はあるかとか、適時適切に報告がなされているかとか、あるいは経営会議には希望すれば出席させてもらえるのかなどなど。そういうことを聞けば、その会社の執行のガバナンス意識がかなりわかります。
おそらく執行側の方に聞いても、コーポレートガバナンス報告でもう全部コンプライと言っている以上違うことは言えないと思います。非業務執行役員はそのために独立した立場でいると思いますので、彼らからのインタビューを受けるというのは有用ではないかと思います。
更にそのインタビューが効果的だと思うのは、非業務執行役員(即ち社外役員)が、どれだけガバナンス等に対して知見がある人たちかということを確かめられるのではないでしょうか。つまり、まさに形式から実質を確認できると思うのです。社外役員の数をそろえたということで満足している投資家の方が多いと、私は思っていますが、非業務執行役員(即ち社外役員)にインタビューすることによって、その方たちが本当に実質的に会社のガバナンスに貢献できる人かどうかというのを確認していただきたいと思います。
もう1点は、参考資料2の真ん中あたりの「他方、更なる課題としては」というところに、企業年金の運用資産に占める政策保有株式が過大となっている例があるという点です。私も企業を離れてしまったので、実態がよくわからないんですが、年金の運用資産に政策保有株式があることは事実です。年金会計を導入するときに、積み立て不足を解消するために、当時の日本独特のやり方で、株式で年金を積みました。これは基金が直接保有するというより信託して持っているケースだと思います。これが課題といえるかどうかはよくわからないんですが、そもそもこれらの株式に関しては、実態として親会社が議決権を行使しています。年金基金としてはお金を払わずに、資産としては政策投資株が時価で積み立てられているということです。収益は何かというと、配当のみです。
ここで申し上げたいのは、配当に関する議案にたいして親会社が議決権行使を行っていますので、ここにコンフリクトが発生しています。年金基金から親会社に対してこの配当では少ないから反対してくれということは、おそらく実質的に言えない状況だと思います。しかし、年金基金としては投資先の配当方針にその利回りが依存しているという実態です。
そういう意味で言うと、この政策投資株式が企業の年金基金にどれぐらい含まれているのかわかりませんけれども、本来は親会社がキャッシュでその株式を全部買い戻して、そのキャッシュの運用を年金基金が自律的に行う、こういう形に戻らないとおかしいのではないのかなと感じます。
これは詳細に制度の仕組みを私がヒアリングしたわけではないので、もしかしたら誤解もあるかもしれませんが、ここに書いてあるように、ある会社では年金運用資産に占める割合が課題というケースがあるとすれば、以上のような問題が起きている可能性があると思いましたのでお話し申し上げました。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、高山メンバー、お願いいたします。
【高山メンバー】
先ほど来から企業と投資家の間の対話についてお話が出ておりますけれど、私の方からも企業の視点から見た対話の現状について少しコメントさせていただきます。
私たちは企業の立場に立って、企業と投資家の対話を支援する立場にございますので、今回の総会シーズンも含めて多くの対話に関わってきました。
そこでは変化がいろいろ見られました。その変化について2つの観点から説明したいと思います。
1つは、スチュワードシップ・コードの前回の改訂によって議決権行使の個別開示が求められるようになりましたけれども、その個別開示によってどういうふうに対話に影響を与えたかという観点です。それからもう一つはESGに関する対話についてです。この2点から対話の変化の状況についてコメントをさせていただきます。
まず、行使結果の個別開示による影響ですが、結論を先に言いますと、投資家と企業双方の行動が変化して、双方が歩み寄ることによって対話の質がより高まったというふうに感じております。
投資家の状況についてですが、企業から見た印象なんですが、個別開示となった当初は、多くの大手機関投資家は、非常に詳細な議決権行使ガイドラインを公表されました。それに基づいて厳格に行使を行うという傾向がございました。
ただ、その後、行使の状況、意思決定の状況が少しずつ変わっていきました。例えばアクティブファンドで持っているような企業については、単純にガイドラインに従うというわけではなくて、アナリストも入れて、より定性的な判断をするようになっています。また、パッシブ、アクティブ問わず、企業に対するエンゲージメントを通じてより総合的な判断を行う傾向が見られる状況でございます。
一方、企業においては、個別開示がなされることによって、各投資家がそのような行使をしたというその結果だけではなくて、その背景に対して非常に関心が高まっています。その理由を知りたいと考え、自ら分析したり、あるいは、投資家と直接対話する企業も少しずつ増えております。
個別開示はもしかしたらネガティブな影響を与えるかもしれないというような懸念も一部あったかもしれませんけれども、現実には、議決権行使の個別開示は、投資家と企業の対話にポジティブな影響を与えているという状況にあると考えます。
それから2つ目は、ESGに関する対話です。
これも結論から先に言いますと、ESG全般に関して、企業と投資家の間でより深い対話ができるようになった、より対話が増えるようになったという状況であると考えます。投資家のサイドでは、ESGに関する担当者というと、多くは責任投資部門の方々がそれに該当すると思いますが、対話ではその責任投資部門の方のみがご対応される場合もありますが、昨今は、責任投資部門の方と運用担当者が同席して、ESGに関してより深い議論がなされる、その結果、形式的な話だけではなくて、より実質的な議論もなされるという状況も増えています。
一方、企業の方でも変化がございます。かつては、企業と投資家の対話においては、1つはIRのチームが投資家の運用サイドと議論をする。もう一つは、総務部などの総会対応のチームが投資家の議決権行使担当者と会話する。そのような対話が別々に行われているというのが一般的なケースでございました。
しかし、ガバナンス・コード、スチュワードシップ・コードができ、改訂されたという過程で、現在はESG全般に関して、企業の方も総会やESGの担当者プラス、IRのチームが共に対話に参加するケースが少しずつ増えつつあります。
そのような状況から、ESG全般に関する対話については、企業、投資家の間で変化が見られ、対話がより深まっていると考えます。
このような対話の状況は、絶対的なレベルから、あるいは、変化のスピードから見るとどうかということを考えると、まだ不十分かもしれません。しかし、ガバナンス・コード、スチュワードシップ・コードで設定された対話のフレームワークは、非常に適切であると思いますし、そのフレームワークのもとで企業と投資家の対話が着実に深化しているというふうに考えております。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、三瓶メンバー、武井メンバー、田中メンバーの順でご発言お願いいたします。まず、三瓶メンバーからお願いいたします。
【三瓶メンバー】
ありがとうございます。先ほど大場メンバーから、今、集計できているアンケートの状況等のご説明があって、今年の分は集計中というお話があったので、ちょっと現場感覚で、今こんな感じですということをここで共有させていただきたいと思います。運用コンサルからの質問とかアンケートはどうかというところです。
実際増えていると思います。運用コンサルから直接だけではなくて、アセットオーナーさんからの質問も増えています。たたき台を運用コンサルの方がつくったんだろうとわかるものもあります。
ただ、ここに問題意識を持っています。すごく増えているんですけれども、内容があまりにもいま一つと。例えば、議決権行使についての質問で、ガバナンス・コードにこうありますと。それをコンプライしていなかったら反対するのか、イエスかノーか。反対していなかったら、なぜ反対しないんだ、みたいな誘導的な質問もあります。実際コンプライしていなくてもエクスプレインをして、それに納得すればいいわけですね。だから、そもそもコードの趣旨がわかっているかなとか。あと、ESGに関しても質問が急に増えてきています。ESGインテグレーションということで今どんどん進めようとしていると思いますけれども、ところが質問はばらばらで、EとSとGとどんどん分解して、それぞれ数を数えたいというような質問があったりします。
そもそも、先ほど小口メンバーとか大場メンバーもおっしゃっていましたけれども、最終的なゴールというのは持続的な企業価値の向上ということだと思いますが、そこにこんなことでたどり着くんだろうかという心配があります。特にESGについて、企業側は一生懸命、統合報告書というのを発行して、どんどんレベルが上がってきています。なのに、統合しようという思考があるところに対してばらばらにしていく質問の仕方というのはどうなんだろうと疑問に思います。アンケートと質問の数は増えているけれども、ちょっと違う方向に、誘導している感じがして、これがどんどん加速、広まると心配だなという懸念を持っています。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、武井メンバー、お願いします。
【武井メンバー】
私も小口メンバーとか三瓶メンバーの今おっしゃったことと若干かぶるところがありますが、1つ目が、まさにガバナンス・コードについて「形式から実質へ」という議論がなされてきている中で、スチュワードシップ・コードのほうについても「形式から実質へ」ということを考えないといけないように思います。先ほどの建設的対話の質をどうやって引き上げるのかということも重要なテーマでありますし。特に、前回のコード改訂以降、あるいはコード制定以降で、形式化に走っているのではないかと見受けられるような現象・事象については、何らか警鐘を鳴らすか、注意を促すか、あるいはその根底にある誤解を解くか、何らか方策を行った方がよいと思っています。
その観点で、各論としてまず1つ目が、助言会社の絡みの24ページの箇所です。24ページに書かれている諸事項は全て重要だと思いますので、ぜひ今回の改訂で踏み込んで書いていくべきだと思っています。ただこれらの点に加えて、助言会社の方が企業の方と話すに当たって、この24ページに書かれています情報の正確さの担保といった点を超えて、建設的対話の機能を担っているのだという発想をもう少し持っていただいた対話もしていただければと思います。
パッシブの方、特に海外のパッシブの方は大半スチュワードシップ・コードにサインアップしていない中で、助言会社というのは私の理解では、日本のスチュワードシップ・コードの仕組みの一つの重要なゲートキーパーとしての役割もあるように思います。助言会社側にいろいろなリソース上の制約があることは認識しているのですが、日本のスチュワードシップ・コードにサインアップする以上は、建設的対話の機能も担うということでサインアップしていただければということがあります。
関連した点で、助言会社に関して今年8月にアメリカから新しい規律が示されています。いろいろと厳しいことが、説明責任の強化を含めて示されているわけですけれども、逆にこうした説明責任への対応を気にして、行使基準をより細かくしてぽんぽん形式的に決めきってしまおう、全部マルバツで形式的に助言を行おうという、そういった方向に説明責任への対応として助言会社が走ってしまうことは、適切ではないと思います。そういった形式的な対応をやってしまうことは、逆に日本の現在のスチュワードシップ・コードの趣旨に反する話になるわけなので、そういった形式的なことに走らないということにぜひご留意いただいた上で、助言会社のかたにはスチュワードシップ・コードにサインアップしていただければありがたいと思います。以上が1点目でございます。
次に2点目で、議決権行使結果の開示の関連ですが、今回いろんな理由の開示に踏み込むという案で、それ自体はそれでいいと思うのですが、先ほど三瓶メンバーがおっしゃった点には、形式的な対応の問題と言うことで、大変重要な点が含まれているように思います。これはさきほどの小口メンバーのおっしゃっていたアウトカムの検証にも絡むのですが、たとえば、運用会社がどのくらいの反対票を行使していないといけないなどといった、そういった形で形式的に評価をする傾向は、いかがなものかと思います。当然、建設的対話の過程で意味のある賛成票もあるわけでして、企業の取り組みが着実に前に進んでいるということで賛成ですということもあるわけですから、実際対話に出ていない方が外から結果だけ見て「反対票が少ない」とかそういった形式的なことで、アセットマネジャーを評価すべきでないと思います。こうしたややもすると反対票の数による形式的な評価に対しても、何らか警鐘を鳴らすべきかと思います。ケース・バイ・ケースでもあるかもしれませんが、前回の改訂を経て、アセットマネジャー側の利益相反の話は対処がかなり進んだことは間違いないので、賛成・反対の判断とかに関して、アセットオーナーの方なり年金コンサル担当の方がもう少し、実際に現場で真摯に行っていらっしゃるアセットマネジャーの方を信用するということがあって良いのではないかと思います。
あと、今の点とも絡んで3点目ですが、22ページの箇所です。企業年金の方のスチュワードシップ・コードに関するサインアップが少ないという論点で、課題として、負担が多いと思っていたとか、直接対話しないといけないとか、スチュワード活動の範囲を過大に誤解していたということがいろいろ書かれています。この誤解の指摘に絡むのですが、アセットオーナーの方として、フィデューシャリー責任を果たすと言うことの意味の理解も絡んでいるのではないか、フィデューシャリーの解釈として、もう少しアセットマネジャーに任せる世界があってもよいのではないか、という論点があるように思います。逆にあまり良くない事態として思いますのが、たとえばアセットオーナーの方がアセットマネジャーに議決権行使等で細かい指示を出してアセットマネジャーの方の裁量を縛っておいて、他方でリソースは割かないしコストも費用も負担しない、でも成果は出せみたいな、そういう世界は、きちんと機能するフィデューシャリーの世界とは少し異なるように思います。各アセットオーナーの特徴を踏まえつつ、アセットマネジャーが現場でいろいろな建設的対話をされているのであれば、そこはある程度アセットマネジャーの裁量に任せるという対応も、スチュワードシップ・コードをサインアップしたアセットオーナーの対応としてありえるように思います。こうした点を含めたフィデューシャリーのあり方に関して、フィデューシャリーであるとうたった瞬間に、自分が細かく見なきゃいけない世界ではないのだということも、メッセージとして出しておいた方が良いかなと思いました。
以上3点です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続いて、田中メンバー、お願いします。
【田中メンバー】
東京大学の田中です。事務局のご報告、それから各メンバーのご報告、ご意見から大変勉強させていただきました。初回ということで、私が重要と考える意見を、直接的に今回の改訂に結びつくものになるかどうかはわかりませんが、述べさせていただきたいと思います。
私は、今ほど日本の上場企業に対するエンゲージメントが重要になっている時期はないと思います。ここ10年ほどで上場企業のガバナンス改革が進んで、確かに外形的、形式的には独立社外取締役が増加し、グローバルスタンダードと呼べるようなガバナンス構造に近づいているように見えます。
しかし、その実質を見ると、無論これは各社によって異なるわけですが、取締役会がトップ経営陣によって多数が占められる構造になっており、独立社外役員はいたとしても少数派であり、したがって、この独立社外役員の人選によろしきを得なければ、取締役会は容易にトップ経営陣の独裁体制になるという、非常に危険な状況にあると見ることもできるかと思います。
かつて大きな取締役会が当然であった時代において、同輩者の第一人者にすぎなかった社長が、現在のような、トップ経営陣数名の他は、2人か3人ぐらいの社外取締役から成っている取締役会においては、かつての同輩者に対して支配的な影響力を行使することが可能な仕組みになっているようにも見えます。
このような仕組みは、もちろんトップ経営者および独立役員の人選によろしきを得れば効果的なガバナンス体制になるところではありますが、この人選によろしきを得ませんと、例えば不祥事を行った経営者の居座りでありますとか、M&Aにおいても株主の利益をないがしろにし、自己の保身を図るような出来事が容易に可能になるおそれもなしとしません。
このように、取締役会のレベルで十分な対応ができないときに、上場企業のガバナンスの適正を図るのは株主以外にはいません。そして株主権の行使は、現在、機関投資家の重要な役割になっており、機関投資家による議決権行使を含めたエンゲージメント活動こそが、上場企業のガバナンスが、ややもすれば腐敗のおそれがあるところを、いわば最後の砦として企業のガバナンスを回復し、その持続的な成長力や企業価値を維持向上につながるわけですので、その点でエンゲージメントの重要性はかつてなく高まっていると思います。
その観点で一言申し上げますと、本日の検討会ではさまざまな、これまで議論されていなかったような新しい領域の問題点が出てまいりました。もとよりそれらの論点の重要性は否定できませんが、やはり中心となるのはエンゲージメント活動であります。企業との対話を図り、その企業価値向上の方策を一緒に考えていくと。そして一方、その友好的なエンゲージメント活動が功を奏しないときにどのような対応策をとるかという点も重要かと思います。
今回、検討会に先立って事務局からご説明いただいた資料の中で、資料3の6ページでありますが、英国のコードに始まって、日本、ISG、それから英国コード改訂案に移る中で、英国コードの最初の原則において、原則4で「スチュワードシップ活動のエスカレーション」という表現があったわけですが、これが改訂案では「建設的なエンゲージメント」という言葉になっていて、エスカレーションという言葉が落ちているということをご説明いただきまして、私は、従来エスカレーションという考え方をかなり重視していたものですから少し驚いたのです。
今回、事務局から配付いただいた参考資料4の10ページを見ますと、これが英国の「建設的なエンゲージメント」に関する原則なのですが、その下に「条項」というのが入っていて、これは下位の原則ということなのかと思いますが、その中の19番目には、必要に応じたエンゲージメントのエスカレーションという条項が入っております。それから、前回の日本版コードの改訂時にも議論になった集団的エンゲージメントについての言及も条項の20番に入っています。このことから、英国の改訂では、必要に応じてスチュワードシップ活動をエスカレーションさせるということも、また集団的エンゲージメントも否定されていなくて、ただそれが条項に落とし込まれて、これら一切を含む概念として「建設的なエンゲージメント」がある、というふうに整理されていると理解しております。ちょっと私の理解が誤っていたらご指摘いただきたいのですが。
そういうことですので、英国も、必要に応じたエスカレーションという概念は否定されておりませんと思いますし、日本においてもそれは必要ではないかと思います。
その点において、ちょっとこの場で金融庁の方々もいらっしゃいますから、1つ強調していただきたいことがあります。集団的エンゲージメントについて前回改訂の検討会で議論したときに、法解釈が整理されて、集団的エンゲージメントについて大量保有報告における共同保有者の規定に抵触するのではないかという問題についても、ある程度整理はされたと思います。
しかし、私が実際に運用機関でエンゲージメントをされている方の話を伺うと、問題は決して解決していないと思っております。依然として、大量保有報告規制は萎縮効果をもたらしていると。それは一つには、もともと「重要提案行為」という包括的な、経営支配とは関係なく、一定の重要性のある行為は全て重要な重要提案行為に含まれるような規定ぶりになっているという、もともとの規制の広範さに加えまして、「共同の株主権行使」という概念が、英国その他の国と違って、経営支配を目的にするとかそういった限定がないために、極めて包括的に規制しているように読めてしまうということです。これは究極的には、立法による解決を図ることが望ましいと思っております。
現在の法制度のもとでは、このような規制があるために、投資家が実際には提案をしようと思っているときに、質問というような形で行うと、つまり、このことについてどう考えていますかと経営陣に問う、というような形で行わざるを得なくなるというご指摘を伺っております。
日本は伝統的に以心伝心の文化だというようなことを言って、それで伝わるということもまことしやかに言われていたように思うのですけれども、私がお話を伺った方の話では、はっきり言って伝わっていない。ただ質問するだけでは経営者に意図が伝わらない、少なくとも伝わらない経営者がいるということを伺っております。もっとダイレクトに言えるような仕組みにしなければいけないと思います。
このようなことは、もちろんそれほど多く起こるわけではないかもしれません。ガバナンスが非常に悪化して、株主が直接行動を起こすということはそれほど多く起こることではないかもしれませんけれども、いざというときにそういうことができるということが非常に重要であると思いますので、このようなエンゲージメントのいわば原点に立ち返った部分で、なお議論して、よりよい制度をつくる余地が残されていると思いますので、ぜひこの点に関してご検討いただきたいと思います。
以上です。
【神作座長】
ありがとうございました。
それでは、翁メンバー、大海メンバーの順でご発言お願いいたします。
【翁メンバー】
2点だけ申し上げたいと思います。
先ほど大場メンバーからアンケート調査の結果をご紹介いただき、ESGに関しまして、もっと改善する方向ではないかとおっしゃったのですが、私もやはりこのスチュワードシップ・コードが中長期的な企業価値向上というのを目指している以上、長期的投資を考えれば、Gだけでなく環境や社会を配慮しない投資対象というのはやっぱりリスクが大きいと考えますので、あくまでも合理的な投資戦略の判断の中で、企業との対話でそういったエンゲージメントをしていくということはやはりもっと広がっていくべきではないかと思っています。
それからもう一つは、議決権行使助言会社の話でございまして、先ほどメンバーの方からもいろいろご説明いただきましたが、また、大場メンバーのアンケート調査でも、それなりに広く活用されており、その助言に沿った形でやっているところも少なくないわけで、やはり議決権行使助言会社は今非常に重要な大きな役割を持つようになってきていると思っております。その意味で、やはり正確な情報を前提として発信される必要があり、人的、組織的な体制の充実というのが非常に大事ではないかと思っております。
一方で、投資家サイドの方もきちんと充実した体制を整備して、それを参考にして判断していくということが必要ではないかと思っております。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、大海メンバー、お願いします。
【大海メンバー】
私からは、先ほど三瓶メンバーからもご指摘ありましたけど、運用コンサルタントがスチュワードシップ活動に関してアセットマネジャー、運用機関に関してどのような調査をしているのか、取組みをしているのかということについて一言申し上げさせていただきます。
弊社は、自分自身、あるいはお客様を通じてアンケートとかはお送りしていませんし、他社の状況はわかりませんので、そういう意味では直接、三瓶メンバーのご指摘へのご回答にはなりませんが、弊社の取組みとしては、弊社ではサステナビリティというのを非常に重視しております。したがいまして、サステナビリティの中に含まれる、こういったスチュワードシップ活動とかESGに関しましては、アセットマネジャーを調査する際、ヒアリングする際には必ずお伺いするということで評価項目の中にも入っております。
じゃ、何でコンサルタントから聞かれたのが40%しかないのか、100%じゃないのかということですが、ちょっと申し上げにくいんですが、弊社の場合、必ずヒアリングして調査、評価するんですけれども、日本株のアクティブマネジャーに関しましては、残念ながら、海外からもそうですし、日本の年金さんも過去20年間リスクを落とす中で株の配分を減らされてきている。そして、その株の中でも内外株式の割合、昔からホームカントリーバイアスで6割ぐらいが日本株だったのが、最近では、場合によってはグローバル株式の時価総額でいいということで、株の中のもう10%以下に日本株をしてしまうということでトータルも減る、その中の割合も減るということで、日本株に対するウエートがどんどんどんどん減ってきている中で、日本株のアクティブ運用機関に対するニーズというのが残念ながら減っております。
アクティブの運用機関は今まで3社、4社あった、どこを減らそうという話があっても、新たに採用しようとか入替えるというお話が非常に少なくなってきている中、私は手元にちゃんとしたデータを持っているわけじゃありませんが、多分日本株に対する、日本株アクティブマネジャーに対する弊社の調査というものも減ってきているというのが現状ではないかということで、その意味では日本株の運用されているところは、少なくとも弊社からは昔ほどヒアリングされないなというのが、もしかしたら感覚としてはあるかもしれないということを申し上げておきたいと思います。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
ほかにございますでしょうか。それでは、松谷メンバー、お願いいたします。
【松谷メンバー】
投資信託協会の松谷でございます。初参加でございますので、時間もございませんので、一言感想という形で述べさせていただきたいと思います。
スチュワードシップ活動が更に深化して、企業価値の向上及び受託者の利益に資することは大変すばらしいことだと思っていますし、更に活動が進んでいくことに期待をいたしております。
ただ、このスチュワードシップ活動、エンゲージメント活動というものの高度化ということでの議論が更にここで進んでいくように期待をしたいと思いますが、決して厳格化という方向にならないようにお願いしたいと思っています。大場メンバーからもありましたように、まだ成績は上がっていない部分はありますが、厳格化という形で宿題が多くなりますとコピペが増えるというのは学校でもよくあるようでございますので、ぜひ高度化に向けての議論ということで進めさせていただければと思っています。よろしくお願いいたします。
【神作座長】
どうもありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。予定された時間が過ぎてしまいました。まだご議論も尽きないところではございますけれども、本日の討議はこれで終わらせていただきたいと存じます。
最後に、事務局の方から何かご連絡等ございましたらお願いいたします。
【井上企業開示課長】
次回の検討会の日程は、メンバーの皆様とご調整させていただいていますけれども、最終的に皆様のご都合を踏まえた上で決定させていただきたいと思います。ご案内をお待ちいただければと思います。
事務局からは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、以上をもちまして、本日の検討会を終了させていただきます。
どうもありがとうございました。
―― 了 ――