第27回金融機能強化審査会 議事要旨
1.日時:
令和3年9月9日(木)10時00分~15時15分
2.議題:
〇経営強化計画(みちのく銀行、東和銀行、高知銀行、宮崎太陽銀行、三十三フィナンシャルグループ(三十三銀行・第三銀行)、フィデアホールディングス(北都銀行)及びじもとホールディングス(仙台銀行・きらやか銀行))の審議
〇実施計画(福邦銀行)の審議
3.議事内容
○みちのく銀行の藤澤頭取より、新たな経営強化計画の追加の説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
・取引先へのコンサルティング等の取組状況について説明いただきたい。また、こうした取組みを収益向上に結び付けるためにどのようなKPIを設定しているか。
⇒一次産品、観光資源、洋上風力発電を成長ドライバーとして支援していきたい。なお、コロナで影響を受けている観光・宿泊・医療関係事業者には将来を見据えた丁寧なコンサルティングが必要と考えている。
収益向上に向けたKPIについては、社外役員からも「金融仲介の取組みが収益向上につながっていない」との指摘があり、今計画では、プロセスや収益を意識した顧客へのコンタクトや提案件数、M&A・事業承継の契約件数を設定している。
・青森県内で大規模風力発電事業が計画されているが、当該事業による再開発、宿泊・飲食事業者の需要の高まり等に対し、どのように対応していくのか。
⇒大規模風力発電事業については、中央資本が多くなると考えているが、再開発を含めた本事業や事業後のメンテナンスに地元企業が如何に参画できるかが重要であり、地元企業の声も聞きながらしっかり支援していきたい。
・協働先の個人向け運用商品は高齢者が多い貴行の顧客層にはなじまないものもあるのではないか。
⇒金融資産の保有額のほか、年齢層、資金の性格、年収、投資経験を踏まえ、本部においても厳しい目線で顧客プロファイルを実施しており、顧客特性に応じた商品提供ができていると認識している。
・青森銀行との経営統合のシナジーを発揮していく上で課題はあるか。
⇒コスト削減効果を大きく見込んでいるが、店舗統廃合については顧客の理解を得ながら進めていく必要があるほか、人員の適正化についても採用調整による人員削減を考えており、スピード感を持って対応していくことが課題と認識している。
〇東和銀行の江原頭取より、新たな経営強化計画の追加の説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
・「真の資金繰り支援」等の取組みを収益に結び付けていくためには効果検証が必要と考えるが、どのようなKPIを設定しているか。また、金融仲介の取組みを収益に結び付けるために、行員にどのようなインセンティブ付けをしているか。
⇒本業・財務面から顧客の経営課題やニーズの解決につながるKPIを半期毎に目標設定し、資金繰り支援を6千先まで広げていく方針である。
行員へのインセンティブ付けについては「真の資金繰り支援」を業績評価の最重要項目としているほか、グッドプラクティスを行内で共有して競争意識を醸成している。
・外部機関と連携して貴行及び顧客のデジタル化を推進するとしているが、どのような目的を持って進めるのか。
⇒中小・零細企業ではデジタル化が進んでいないため、オンライン診療や卸売業者向け受発注システム等、売上増加や経費削減につながるデジタル化を支援していきたい。また、行内においても、デジタル化の実施により、経費削減や意思決定のスピードアップを図るとともに、組織体制を改革していきたい。
・デジタル化の推進には経営陣のスキルアップも必要ではないか。
⇒ご指摘のとおり、経営陣がその知見を有することが重要と考えており、個々人でのスキルアップのほか、役員会議での研修実施や外部研修の受講など、しっかりと取り組んでいきたい。
〇高知銀行の海治頭取より、新たな経営強化計画の追加の説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
・コンサルティング強化を収益向上に結び付けるためにどのようなKPIを設定しているか。
⇒コンサルティング強化に向けたKPIについては、事業性評価を行う上で、顧客との対話から課題解決策の提案に至るまでの各プロセスで設定しているほか、顧客管理システムにおける様々な指標も活用している。
・農産物の直販所が新設されたことにより活気を失っている商店街もある。高知県には名産品も多く、どこでどういう商品を販売すれば事業者の売上が向上するのかを考えて、しっかりと販路開拓支援に取り組んでいただきたい。
⇒経営陣を含む本部行員や支店行員が地域の商店等にも積極的に足を運び、地域のために何ができるのかということを考えて、しっかりと販路開拓支援を行っていきたい。
・経費削減が急務と考えているが、今後、どのように取り組んでいくのか。
⇒これまで、BPRを進展することにより、事務量を約3割削減してきた。今後は、全店でのモバイルPC導入やグループウェア更改等による効率化のほか、他社との連携も視野に入れつつ、更なる経費削減に向けた取組みを進めていきたい。
・市場運用部門の収益への貢献が大きいが、リスク管理態勢の構築・高度化や運用担当者の人材育成などをどのように進めていくのか。
⇒金利上昇や株式・REITの価格下落、為替相場の上昇等を想定したストレステスト等を毎月実施しているが、適切なリスク管理態勢を構築していきたい。
また、運用担当者の人材育成は特に課題と考えており、OJTや外部研修を通じたスキルアップを行うほか、外部機関への出向等も検討していきたい。
〇宮崎太陽銀行の林田頭取より、新たな経営強化計画の追加の説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
・業務粗利益経費率の改善方法について説明いただきたい。
⇒メール便の運行回数の減少、店舗統廃合やペーパーレス化の推進、他社との連携等により人件費・物件費の削減を考えているほか、本計画を着実に履行することにより、貸出金利息や役務取引等利益の増加を図っていきたい。
・監査等委員会の実効性も含めて、監査部が経営陣から十分に独立した監査態勢が担保されているか。
⇒監査部は、取締役会の直轄の組織として業務執行部門の取締役には兼務させず、レポーティングラインを頭取直轄にするなど、独立性を担保している。
また、令和元年に監査等委員会設置会社に移行し、社外取締役による取締役会の監督機能を強化している。現在、監査態勢の高度化に向けて、監査部を取締役会の直轄から監査等委員会の直轄にするといった議論を実施している。
〇三十三フィナンシャルグループ・三十三銀行の渡辺頭取より、新たな経営強化計画の追加の説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
・インバウンド・アウトバウンド営業やECモール等の地域創生の取組みについて、これまでの成果と今後の方向性を説明いただきたい。
⇒以前より、農業6次産業化プロジェクトやガストロノミーコンテンツといった観光企業への支援のほか、新規事業創出支援を実施している。本年4月に認可を受けた銀行業高度化等会社のECモールで県内特産品を販売するなど、地元事業者の販路開拓支援を行っているほか、次世代の経営者育成に向けて経営を学ぶための塾を開講した。今後もグループ横断的な推進体制を整備し、地方創生の取組みに注力していきたい。
・他金融機関からの低金利攻勢は金融仲介機能の維持の観点からは懸念事項と考えるが、経営統合や合併は一つの解決策になると考えているか。
⇒金利競争をするのではなく、顧客の付加価値向上につながるようなソリューションビジネスを展開していきたい。例えば、事業承継やM&Aを外注せずに自前で取り組んで収益を増強することができれば、金利競争をする必要もなくなると考えている。
〇フィデアホールディングスの田尾社長及び同ホールディングス・北都銀行の伊藤頭取より、新たな経営強化計画の追加の説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
・個々の融資先の貸出シェアを増加させるとしているが、競合行の行動変容をどのように予測し、どのように差別化していくのか。
⇒競合行の動向として残高確保に向けた貸出金利の弾力化も予想されるが、当行は目先の取引拡大ではなく、経営者の夢の実現や課題解決等の本質的なコンサルティングに注力する。「エリア・セグメント戦略」の徹底により、必要な先に必要なサービスを高い水準で提供できると考えているほか、外部からの経験豊富な人材の受け入れにより、専門性の面でも優位性があると考えている。
・風力発電の位置付けをどのように考えているか。また、コストが大きいことが課題とされている洋上風力発電をどのように評価しているか。
⇒エネルギー基本計画等における再生可能エネルギー比率や国内部品調達比率の目標を踏まえると、洋上風力の産業化が期待される。洋上風力の事業コストは大きいが、先行する欧州の知見等を活用し、コスト削減を行った上でFIT制度により事業化を行うものであり、諸々のリスクはあるが、安定した事業になると考えている。
・指名委員会等設置会社として、社外取締役の割合が11人中8人とかなり高い構成割合となっているが、執行と監督の分離という観点からどのような考えでこの設計を考えたのか。また、実効性はどうか。
⇒指名委員会等設置会社としている大きな理由は、監督と執行を分離することにより、経営の透明性が向上するほか、執行側が監督側から与えられた権限の中で執行するという役割分担により、効率性と厳格な監督の両立を果たすことを狙いとしている。また、取締役会においても、様々な専門分野の方を社外取締役として招聘し、外部の目をしっかり入れることができていると考えている。
〇じもとホールディングス(以下「じもとHD」)社長兼仙台銀行の鈴木頭取及びじもとHD会長兼きらやか銀行の川越頭取より、新たな経営強化計画の追加の説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
・両行の本業支援について、前計画では取引先の営業キャッシュフローの改善につながらなかったと考えているが、今後、KPIを設けて管理していくことを検討しているか。
⇒本業支援については、仙台・きらやか銀行ともに全渉外担当行員が「アクティブリスニング」を実施しており、その内容はじもとHDの本部で集約し、分析・コーディネートを実施している。営業キャッシュフローの改善・販路開拓・人材支援などの本業支援を実施していきたいと考えており、KPIを用いた管理も検討していきたい。きらやか銀行では、営業キャッシュフロー改善先数などについて遷移管理を行っている。
・じもとHDのガバナンス態勢について、子銀行の頭取がじもとHDの役員会に出席・監視する態勢になっているなど、牽制機能が働き辛くなっているのではないか。
⇒ご指摘のとおり。有価証券運用リスクや信用リスク関連については、これまでは子銀行で決議してじもとHDのリスク管理委員会や取締役会で報告する形であったが、これまでの反省を踏まえ、子銀行が抱えるリスクの高い事案についてはじもとHDにおいて決議することとし、その決議には子銀行の頭取は入らない仕組みとした。
・きらやか銀行について、令和3年3月期に国債等債券評価損を損失計上し、大幅な経常損失が発生しているが、どのような点に課題があったと考えているか。
⇒収益を確保するために本業利益の赤字を投信解約益で補う運用をしてきたことが、結果的に損失処理を先送りする形となり、リスク管理の枠組みが適切に機能していなかったと認識している。
・仙台銀行について、今計画でも中小企業向け貸出を大幅に増加させる計画であるが、計画達成に向けてどのように取り組んでいくのか。
⇒店舗戦略や業務効率化、適正な人員配置を通じて、営業店の窓口や本部業務を担当する行員を融資渉外やコンサルティング部門に配置転換し、融資渉外行員を増員することにより営業力を強化することを考えている。
〇福邦銀行の渡邉頭取より、資金交付制度の活用申請に係る実施計画の追加の説明が行われた。主な質疑応答は以下のとおり。
・経営や営業面等について、Fプロジェクトの中で福井銀行とどのように棲み分けし、行員のモチベーションをどのように維持していくのか。
⇒経営はそれぞれで意思決定、営業は企業規模で概ね棲分けができている。10月に両行の営業店長を集めた説明会を開催し、これまで築き上げてきたお客さまとの関係が何より重要であり、誇りと責任を持って顧客支援を行っていくために2ブランドであること、最優先は地域の成長や顧客の経営改善であり、それがグループの収益となることをしっかりと説明する。
・北陸新幹線が敦賀まで延伸するが、観光政策を通じた地域活性化への対応をどのように考えているか。また、福井県には伝統工芸品も多くあり、販路開拓支援をしっかり行っていただきたい。
⇒観光面については、福井銀行や各観光協会とも連携して、新たに設立する地域商社を活用しながら、地域の観光資源を活かせるようにしっかりと支援してきたい。また、伝統工芸品については、外部機関と連携してネット通販などを活用して販路開拓を行うなど、積極的に支援していきたい。
・勘定系システムの刷新等には障害リスクがあるが、システム障害が発生した場合の対策について説明いただきたい。
⇒システム障害管理規程で、重大な事象が発生した場合は災害対策本部を設置し、頭取が対策本部長となり対応する。システム障害は特に初動対応が重要であり、障害発生後の経営陣への速やかな報告や関係者への共有、顧客への丁寧かつ適切な説明等をしっかり実施していく。
〇その後、みちのく銀行、東和銀行、高知銀行、宮崎太陽銀行、三十三フィナンシャルグループ(第三銀行・三十三銀行)、フィデアホールディングス(北都銀行)及びじもとホールディングス(仙台銀行・きらやか銀行)の新たな経営強化計画について討議が行われた。主な意見は以下のとおり。
・コロナの長期化に伴い、事業者に対する資金繰り・本業支援の重要性が増しており、資本参加行が積極的な事業者支援を行うよう、金融庁においてしっかりとモニタリングしていただきたい。
・貸倒引当金の計上について、銀行毎にばらつきがあると感じており、コロナの不透明感も高まっており、金融庁において、大口先の与信管理も含めた信用リスク管理態勢をフォローアップしていただきたい。
・金融機関が経営理念を基に自由度を持って経営していただくことも重要であるが、そのためには、自己資本の充実がより一層重要性と考えており、信用リスクを含めて様々なリスクをカバーする観点からも、各行において十分な資本政策をしっかりと協議して欲しい。
・多くの銀行で経費削減を積極的に実施していくとしているが、計画が適切に達成できているかについて、金融庁においてフォローアップしていただきたい。なお、採用抑制を削減策としている銀行も多く、地域経済への影響が懸念される。
・SBIと資本や業務の提携を行っているところが多いが、例えば、SBIが推奨する投資信託等が銀行のリスク・アペタイトに合っているのか、また、銀行としてリスク管理がしっかりできているのか、SBIとの連携・提携によってどのような効果が出ているのか等について、金融庁においてモニタリングしていただきたい。
・公的資金の返済までの期間が短くなっている銀行もあるが、返済財源となる利益剰余金が相応に積み上がってきている中で、返済後を見据えた経営改革等を検討・実施しているところも多く、全体的に見れば順調に出口が見えてきていると感じた。
〇続いて、福邦銀行の資金交付制度に係る実施計画について討議が行われた。主な意見は以下のとおり。
・昨年の審査会で了承した経営強化計画を着実に履行しているほか、福井銀行の子会社になることで大幅なコスト削減等を図ることとしており、十分に評価できる。
・金融庁においては、実施計画の履行状況について、しっかりとフォローアップしていただきたい。
〇討議の結果、今回提出を受けた、みちのく銀行、東和銀行、高知銀行、宮崎太陽銀行、三十三フィナンシャルグループ(第三銀行・三十三銀行)、フィデアホールディングス(北都銀行)及びじもとホールディングス(仙台銀行・きらやか銀行)の新たな経営強化計画、及び福邦銀行の資金交付制度の活用申請に向けた実施計画について、審査会として了承することとされた。
お問い合わせ先
金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
監督局 銀行第二課
(内線3393・3759)本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。