「ソーシャルボンド検討会議」(第1回):議事録
1.日時:
令和3年3月10日(水曜日)10時00分~12時00分
2.場所:中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室
ソーシャルボンド検討会議(第1回)
令和3年3月10日
【北川座長】
それでは定刻になりましたので、ただいまよりソーシャルボンド検討会議、第1回会合を開催いたします。
皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。
当検討会議の座長を務めさせていただきます、青山学院大学の北川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
初めに、当検討会議について御説明したいと思います。本年1月21日に金融庁に置かれたサステナブルファイナンス有識者会議の第1回会合におきまして、同有識者会議の下に本検討会議の設置が決定されまして、私が座長を拝命いたしました。
今般の新型コロナウイルス感染症の拡大等の中で、従来の環境分野(E)以外にも、ソーシャル(S)分野の課題の重要性が再認識されつつあります。そして、こうしたソーシャル分野の課題に取り組むための資金調達手段であるソーシャルボンドが国内外で注目され、発行も増加しております。
ソーシャルボンドにつきましては、ICMA(国際資本市場協会)におきましてソーシャルボンド原則が策定されておりますが、抽象度の高い一般的な原理原則が記載されたものとなっておりまして、現状では我が国の企業がソーシャルボンドの発行に当たって参照できる具体的かつ実務的な指針がないため、経済界等から我が国におけるガイドラインの早期策定を求める声も聞いております。
こうした状況を踏まえまして、今般、本検討会議で、我が国の特性を踏まえた実務指針の策定について検討することといたしました。皆様にはぜひ、活発な御議論をお願いしたいと考えております。
本日は、検討会議の第1回でございますので、初めに、御参加いただくメンバーの紹介をしたいと思います。メンバーの紹介を事務局よりお願いいたします。
【太田原市場課長】
市場課長の太田原でございます。
それでは、当検討会議のメンバーの方々を御紹介申し上げます。お手元に資料1として名簿がございます。また、オブザーバーにつきましても、同様に資料1に記載しておりますので、そちらを御覧ください。また、本日は、大和証券デット・キャピタルマーケット部SDGsファイナンス課長の清水一滴様にも、第1回プレゼンターとして御参加いただいております。事務局につきましては、時間の都合もあり、お手元の配席表をもって御紹介に代えさせていただきます。
メンバー等の御紹介につきましては、以上でございます。
【北川座長】
ただいま事務局より説明がございましたメンバー等につきましては、本検討会議における議論は幅広い分野に関係し得るものでございますので、今後の議論の進展によりましては、メンバー等の方の追加を検討することもあり得るものと考えております。
次に、会議の運営につきまして、幾つか御承認いただきたいと思います。
会議は、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、本日のようにオンライン会議を併用した開催としたいと考えております。また、議事の公開につきましては、オンライン会議の場合は一般の傍聴はなしとした上で、メディア関係者の皆様には金融庁内の別室において傍聴いただくこととしたいと考えております。仮にオンライン開催でない場合は改めて取り決めることとしたいと思います。
また、議事録はメンバーの皆様に御確認いただき作成の上、後日、金融庁ウェブサイトに掲載させていただきたいと考えておりますが、以上、皆様よろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【北川座長】
異議なしと認めました。ありがとうございます。それでは、このような形で進めさせていただきます。
次に、議事に移ります前に2点注意事項がございます。まず、御発言されない間は必ずミュート設定にしていただくようお願いいたします。御発言される際にミュートを解除していただき、御発言が終わられましたら再びミュート設定にしていただくよう、御協力をお願いいたします。
次に、御発言を希望される際は、オンライン会議システムのチャット上に、全員宛てにお名前または協会名などの組織名を御入力していただいた上、そちらを確認して、私のほうで指名させていただきますので、御自身の御名前を名乗っていただいた上で御発言いただきたいと思います。なお、他の会議では、事務局のみにチャットを送られるということもあったと伺っておりますけれども、必ず全員宛てにお願いいたしたいと存じます。
それでは、議事に移ろうと思います。議事次第を御覧ください。
本日は、古澤企画市場局長に御出席いただいております。開会に当たりまして、古澤企画市場局長から御挨拶をいただき、引き続きまして事務局より、本検討会議で御議論いただきたい論点等につきまして御説明いただきます。その後、環境省環境経済課環境金融室長の近藤崇史様、次いで、大和証券デット・キャピタルマーケット部SDGsファイナンス課長の清水一滴様より御報告いただき、その後、自由討議とさせていただきます。
それでは、早速でございますけれども、古澤企画市場局長、お願いいたします。
【古澤企画市場局長】
古澤でございます。皆様におかれましては、本検討会議メンバーへの御就任、御快諾いただきまして、誠にありがとうございます。特に本日、御多忙の中、御参加いただきましてありがとうございます。
皆さん御覧のとおり、本日はウェブ会議ということで、いろいろと不慣れな点、音声が聞きにくい点などおありかと思います。他の会議でもそういうことがたまに起きてしまうわけですけれども、お気づきの点とか連絡が取りにくいという話がございましたら、チャットでも構いませんので、遠慮なく御意見なりお気づきの点、御指摘いただけるととてもありがたく存じます。また、不慣れな点、御不便おかけいたしますけれども、よろしくお願いいたします。
本会議の背景・趣旨につきましては、先ほど座長からございましたので、私は一言だけ補足いたします。
御案内のとおり、サステナブルファイナンスにつきましては、2015年の国連サミットのSDGs以来、本当に様々な動きが出てきているというふうに感じてございます。いわゆる環境分野以外にも、ソーシャル分野につきまして重要性がますます認識されているということかと思います。
ただ、国内で状況を拝見いたしますと、民間企業によりますソーシャルボンド発行が少しずつ始まってきており、実務指針がないという中で、発行体企業のほうは不確実性を抱えたまま検討を進めざるを得ないという状況も伺っております。
こうした背景で、実は昨年の12月でございますけれども、経団連、日証協から金融庁のほうに対しまして、ICMA原則との整合性、それからその国際的な動向も踏まえて、我が国の特性に即した実務指針を作成できないかといった御要望をいただきました。
金融庁といたしましても、実務指針の策定を通じて、ソーシャルボンドで資金調達する民間企業の取組をぜひ後押しし、社会的課題への対応を促進していくということがとても重要な課題だというふうに考えてございます。
御参加の皆様の御意見を踏まえまして、発行体や投資家などの関係者にとって信頼性のある実務指針をぜひ作成していきたいと考えておりますので、是非とも活発な御議論を頂戴できればと思います。
私からは以上でございます。
【北川座長】
古澤企画市場局長、ありがとうございました。
それでは、事務局の金融庁より、第1回目の検討会議でございますので、ソーシャルボンド市場の概況等の御紹介及び本日御議論いただきたい論点について説明をお願いいたします。
【太田原市場課長】
それでは、資料2、事務局説明資料を御覧ください。
2ページ以降がソーシャルボンドの概況です。2ページは、国際資本市場協会(ICMA)のソーシャルボンド原則からソーシャルボンドの定義を引用しています。
ソーシャルボンドとは、調達資金の全てが、新規又は既存の適格なソーシャルプロジェクト、つまり社会的課題への対処・軽減、ポジティブな社会的成果の達成を目指すプロジェクトの一部又は全部の初期投資又はリファイナンスのみに充当される債券とされています。
グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドの関係につきましては、3ページを御覧ください。環境・社会的課題の解決に資するプロジェクトに調達資金の使途を限定した資金調達手法であるグリーンボンド・ソーシャルボンド・サステナビリティボンドがございますが、それぞれ調達される資金の使途によってグリーンボンド、ソーシャルボンドと分かれますけれども、ベン図にありますように、重なり合う部分につきましてはサステナビリティボンドと呼ばれているという状況でございます。この他、類似のものとして、サステナビリティ・リンク・ボンド等がございます。3ページ下の方を御覧ください。
続きまして、4ページ、グローバルな発行額の推移です。グリーンボンド、ソーシャルボンド、サステナビリティボンドの発行は、近年増加傾向でありまして、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、2020年にソーシャルボンドの発行が急拡大しております。
5ページ、国内における発行額等の推移についてでございます。国際的な動向と同様、国内でも発行は増加傾向であり、これまでグリーンボンドとほぼ同水準で推移していたソーシャルボンドの発行は、2020年にグリーンボンドを上回って急拡大しています。
6ページ、国内におけるソーシャルボンドの発行体別発行額です。グリーンボンドと比較して、ソーシャルボンドの発行における社債の割合は低く、財投機関債等の割合が高い状況です。
8ページ以降がICMAのソーシャルボンド原則の骨子です。ICMAのソーシャルボンド原則では、以下の4つの核となる要素に適合している債券をソーシャルボンドとし、原則内では「すべき」と「奨励・望ましい」を使い分けて規定しています。
4つの要素としましては、1、調達資金の使途。2、プロジェクトの評価と選定のプロセス。3、調達資金の管理。4、レポーティングがあり、これらの4つの核となる要素の充足に加え、外部評価を行うことが望ましいとされています。
9ページです。ICMAのソーシャルボンド原則では、ソーシャルプロジェクトの事業区分として、以下の6つを例示しています。ただし、これらに限られるものではないとしております。
10ページです。ICMAのソーシャルボンド原則では、ソーシャルプロジェクトの対象とする人々として以下の10個の例示をしています。ただし、こちらにつきましても、これらに限られるものではないとしておりまして、また、注にありますように、対象となる人々の定義は、地域の文脈によって異なり、ある場合にはそれらの対象となる人々は一般の対象を想定する場合もあり得るとされております。
11ページ以降は、ICMAのソーシャルボンド原則の改訂状況を示しています。ICMAソーシャルボンド原則は、2017年6月に策定された後、2018年6月、2020年6月に改訂されております。
少し飛びまして、15ページ以降では、ICMAソーシャルボンド原則における4つの要素ごとの記載内容を紹介しています。各々、先ほど申し上げたように、すべきことと奨励・望ましいことが記載されております。
また少し飛びまして、19ページでは、ICMAソーシャルボンド原則の外部評価の部分において、奨励・望ましいことが記載されております。
続きまして、21ページ以降ですが、国内におけるソーシャルボンドの発行事例を掲げております。
同様に25ページ以降では、国内におけるサステナビリティボンドの発行事例を紹介しております。
次に、28ページ、29ページでは、海外事例としてICMAのケーススタディーで示されている海外の民間事業会社のソーシャルボンドの発行事例を紹介しております。
30ページでは、2020年3月の世界銀行グループIFCのレポートにおける、新型コロナウイルス感染症関連のソーシャルボンドの資金使途の想定の例示を紹介しております。
32ページです。環境省のグリーンボンドガイドラインが先行して策定されておりますが、こちらは、ICMAのグリーンボンドの原則に沿いつつ、例示・解説など、日本の発行体等に資すると思われる情報を追記しています。後ほど、環境省から説明があると思います。
33ページです。ソーシャルボンドにつきましては、EU域内で基準策定等の議論はありますが、主要な国/地域ではガイドラインは策定されておらず、現状、ICMAのソーシャルボンド原則のみが主要な指針となっている状況です。一方、グリーンボンドの方は、幾つか基準あるいはガイドラインが策定されているという状況でございます。
34ページです。国内の民間事業者のソーシャルボンドの発行は少しずつ始まってきた段階で、今後大きく増加することが期待されておりますところ、経済界、経団連や日本証券業協会から国内における実務的なガイドラインの早期策定の要望が、昨年12月に金融庁に寄せられていたところでございます。
以上を踏まえまして、35ページ、36ページに、本日この検討会議で御議論いただくための叩き台として事務局から論点を提示しております。
35ページが、総論についてでございます。ソーシャルボンドに関する検討の大前提として、以下の点についてそれぞれどのように考えるか。社会に有用なもののうち、特定のものを「ソーシャルプロジェクト」として推進する意義。ソーシャルボンドを推進することのメリット。なお、ソーシャルボンドの想定されるメリットにつきましては、37ページに、社会的課題への対応、発行体、投資家ごとに、こちらはグリーンボンドのときの議論を参考に整理したものを掲げております。
次に、35ページの2番目の黒い丸でございますが、ソーシャルボンドガイドラインの検討に当たり、以下のそれぞれの観点についてどう考えるか。他に考慮すべき観点/事項はあるか。我が国の社会的課題への対処・軽減等のため、発行体及び投資家をはじめとする市場関係者が、ソーシャルボンドに関する具体的対応を検討するに当たっての有用性。国際的な原則として認知されているICMAソーシャルボンド原則との整合性。先行して策定されている環境省のグリーンボンドガイドラインとの整合性、役割分担。本ガイドラインの検討に当たり、基本的な考え方の整理を優先的に行うこと等の進め方。そういったものを掲げております。
次に、36ページが、各論としてICMA原則の4つの要素の1番目であります、調達資金の使途についての論点です。
ICMAソーシャルボンド原則では、ソーシャルボンドの調達資金の使途となるソーシャルプロジェクトについて、「社会的課題への対処・軽減、ポジティブな社会的成果の達成を目指す」としているが、本ガイドラインにおいてもソーシャルプロジェクトについて同様に考えることでよいか。
ICMAソーシャルボンド原則では、ソーシャルプロジェクトの6つの事業区分を例示しているが、本ガイドラインでは、ソーシャルボンドの調達資金の使途となるソーシャルプロジェクトをどのように示すべきか。課題先進国とも言われる我が国における社会的課題を踏まえたソーシャルプロジェクトとして、どのようなものが考えられるか。
ICMAソーシャルボンド原則では、ソーシャルプロジェクトの対象とする人々を例示しているが、本ガイドラインでは、ソーシャルプロジェクトの対象とする人々をどのように示すべきか。また、同原則では、一般の大衆に影響を与える社会的課題もあることから、対象は一般の対象となり得るとしているが、この点、どのように考えるべきか。
そのほか、ICMAソーシャルボンド原則の「調達資金の使途」に関連し、38ページの内容について、本ガイドラインに取り入れるに当たり、特段考慮を要する事項は考えられるか。そういったことを掲げております。
なお、注にありますように、ICMAソーシャルボンド原則の4つの要素のうち、2番目以降の「プロジェクトの評価と選定のプロセス」、「調達資金の管理」、「レポーティング」及び「外部評価」につきましては、次回以降の検討会議で御検討いただく予定でございます。
37ページ以降は、御参考として御覧いただければと思います。
私からは以上です。
【北川座長】
ありがとうございました。
続きまして、環境省環境経済課、今井環境金融推進室長補佐より、資料3、グリーンボンドに関する環境省の取組につきまして、御報告いただければと存じます。今井様、よろしくお願いいたします。
【今井環境金融推進室長補佐】
ありがとうございます。ただいま御紹介いただきました、環境省の環境経済課環境金融推進室で室長補佐をしております今井と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日、私のほうから、グリーンボンドに関する環境省の取組についてということで、御説明させていただきます。
まず始めに、本日お招きいただきましてありがとうございます。ソーシャルボンドに関しましても、これまで環境省としてはグリーンボンドを中心に、グリーンファイナンスの推進を進めてまいりましたけれども、ESGということで、全体とかなり密接な関係を持っているというところでございます。
今回のこの金融庁さんの検討について、非常に環境省として歓迎をさせていただくとともに、これまでの経験を踏まえて、ぜひ最大限の貢献をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、1ページ目をお願いできればと思います。E、Environment、S、Social、それからG、Governanceに関する非財務情報を何らかの形で考慮して行う投融資をESG金融と言っておりまして、これが世界的にも大きな伸びを示しておりますが、日本の中でも、少し遅ればせながらになっておりますが、近年、非常に大きな伸びを示しているということでございます。まだ、世界に占める割合は、我々としては少し小さい状況にございますが、世界を上回る伸び率で進んできているという状況でございます。
2ページ目をお願いいたします。本日の検討に必ずしも全て直接関係するものではございませんが、環境省といたしまして、ESG金融、Eを中心にということでございますけれども、様々な取組を進めさせていただいております。全体としてのESG要素を考慮した資金の流れを大きくするということによるポジティブなインパクトを生み出すということを通じまして、今言われておりますような、SDGsの達成、またはパリ協定の実現を促進していく、そういう形で、我々としては促進をさせていただいているということでございます。
1、2、3と書いておりますが、様々な施策をやっていますけれども、3のポジティブなインパクトを狙った投融資の拡大、この施策の一環として、グリーンボンドについても促進をさせていただいているという状況にございます。
3ページ目お願いいたします。この検討会の場にお集まりいただいている方に対しては、ここの説明は少し釈迦に説法の世界がございますけれども、グリーンボンドとはということで御説明をさせていただいております。
企業や自治体等がグリーンプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券ということでございます。基本的にはICMAさんが出されています、グリーンボンド原則、グリーンボンド・プリンシプルが市場において最も広く認知をされているところでございまして、これに基づいて、環境省としても国内向けのガイドラインを策定いたしまして、促進を進めております。必要な手続等につきましては、下の表の中で、一般的なスキームとして御紹介をさせていただいているというところでございます。
4ページ目お願いいたします。これまでの経緯ということで、これは完全な環境省目線ということで国内的なお話だけをさせていただいておりますが、2014年にグリーンボンドの原則がICMAのほうで出されまして、それに基づいて2017年に環境省のほうでグリーンボンドガイドラインを最初に策定させていただいております。
その後、環境省のほうで、この後、御紹介いたしますが、モデル事業ですとか促進の補助金とか、そういったものをいろいろ出させていただくとともに、昨年、2020年3月には、ICMA等の国際的な様々な動向を踏まえまして、ガイドラインの改定なども行っているというところでございます。そういう形で、国内のグリーンボンド発行額も毎年伸びてきているというような状況がございます。
5ページ目お願いいたします。この辺り、幾つか色々な数字があるところではございますが、国内の主体の方が私募債を含めて発行されているグリーンボンドの数字ということでございます。左のほうを御覧いただくと分かりますように、近年伸びてきているという形でございます。事業会社さんとか財投機関さん、もともとかなりグリーンボンドの発行については積極的にやっていただいているということでございまして、その上、メガバンク以外の金融機関の方々もグリーンボンドの発行をし始めていただいているという状況がございます。
資金使途につきましては、ここもやはり再生可能エネルギーというのがかなり中心となっておりますが、省エネルギー関係ですとか、もしくはグリーンビルディング、非常にエネルギー消費効率のよい建物、こういったものを資金使途とするグリーンボンドの割合も増加をしているという形で、資金使途はかなり多様化してきているということが見て取れるということでございます。
次のページお願いいたします。サステナビリティボンドは先ほど、金融庁さんの資料のほうでも御紹介ございましたけれども、こちらについてもかなり伸びてきているということでございます。
環境省ではサステナビリティボンドに関しましても、グリーン性を含むものに関しては併せて支援対象とするという形で進めてきております。
7ページ目をお願いいたします。少し細かい字で恐縮でございますが、グリーンボンドのガイドライン、環境省のほうでICMAの原則に整合する形で出させていただいております。スライドには、ガイドラインの期待される事項のところを書いておりますが、本文を見ていただきますと、目的ですとか趣旨、それから事業会社さんがこういったものを発行する意義とか、それに対して投資家さんとして投資をする意義、そういったものをまずはいろいろ整理をさせていただいた上で、発行に当たっての期待される事項、要件みたいなものをお示ししているものでございます。
1のところが使途でございます。明確な環境改善効果をもたらすグリーンプロジェクトに充当されるということが必要だということを述べておりまして、こちらにつきましては、明確な環境改善効果の意味は、要は、ポジティブな効果に合わせてネガティブな効果が発生する場合が環境面でございますので、それを大きく明確に上回るような形で、全体として明確に環境改善効果があるということが必要だということで、ネガティブなインパクトへの配慮も必要だということが述べられております。
そこに使途に関して幾つか例示を挙げさせていただいておりますが、あくまでこれは例示ということでガイドラインには載せさせていただいておりまして、これに限るものではないということにしておりますが、日本国内の一般的な理解に基づいて、こういった例示も挙げさせていただく形で、より促進をする形にしております。
2が評価・選定のプロセスでございます。発行体の方のほうで、環境面での目標ですとか、評価選定の判断根拠となる規準ですとか、その判断を行う際のプロセスなどを、事前に投資家さんに説明するということが必要だということを書いております。こういったものについて、発行体さんは、環境面での包括的な目標ですとか戦略、こういったものの中にきちんと位置づけるという形で投資家さんに説明することが望ましいということを述べております。
次、この先、ソーシャルボンドと基本的にはあまり変わらないところは多うございますが、3が調達資金の管理ということでございまして、きちんと追跡管理ができるような形で資金を管理するということについて、こういった追跡管理の方法について投資家さんのほうに事前に説明すべきというようなことですとか、4のほうはレポーティングのやり方でございます。発行後、きちんと一般開示をすべきだということ、公募債を想定しつつ、そういったことを述べているところでございます。
その下が、外部機関によるレビューということでございます。外部機関によるレビューを活用することが、客観的な評価が必要と判断する場合には望ましいということで、外部機関によるレビューを受けた場合には一般に開示すべきということを述べさせていただいております。どういう場合にレビューを受けることが適当かといった場合の例示についても、ガイドラインの中では述べさせていただいているということでございます。
最後に、一番下の投資家さんに望まれる事項ということが書いてございます。実はこれ、昨年の改訂の際に追記をした中身でございますけれども、先ほど例示という形で何がグリーンプロジェクトに当たるのかということの資金使途に関してお示しをしているところではございますが、実際にはやはりこういうものに関しましては、市場の状況とか社会の状況によっても大きく変わっていくというものでもございますし、基本的にやはり投資家さんのほうでしっかり判断するということが必要になるということでございます。それに必要な情報の提供等は当然ながら発行体さんなりのほうでやっていただくことになりますが、その判断の見極めに関しては、やはりその投資家さんのほうにも知見を蓄積し、適切な判断をするというだけの実力を備えることが必要だということを書かせていただいておりまして、こういうことを踏まえて、投資家さんのほうはグリーンボンドに関する投資を促進していただきたいということを述べさせていただいているところでございます。
次8ページ目を御覧いただければと思いますけれども、グリーンボンド等のガイドラインにつきましては、我々のほうで有識者の方々にお集まりいただきまして検討会を開催し、その中で御議論いただいて、その意見も踏まえて改訂等を過去やらせていただいております。これは昨年度やらせていただいた検討会でございまして、今年度は見直し等をしておりませんので動かしておりませんが、こういった有識者の検討会、策定の際も含めて動かせていただいて議論をして、その上で改訂等を進めているということでございます。
次のページ、9ページ目をお願いいたします。これは昨年のガイドライン改訂の概要でございます。細かい内容は省きますけれども、先ほど申し上げた、やはり発行実績等最新の動向を踏まえて、適宜見直しをするということとともに、ICMAのほうでも、新しい商品、サステナビリティボンドへの適用範囲拡大ですとか、もしくはサステナビリティ・リンク・ローンのような、これはICMAではなくてLMAさん、ローンマーケットアソシエーションのほうでございますけれども、こちらで出ているような新しい金融商品への対応についても、新たにガイドを策定して対応したり、そういったことを順次進めさせていただいているということでございます。
次のページお願いいたします。ここから先、環境省のほうでどういう支援策をやっているかということで2つほど御紹介をさせていただきます。
1つはモデル事業でございます。これは2017年から2019年にグリーンボンドに関してはこの3年間でやらせていただいておりまして、今年度はサステナビリティ・リンク・ローンのほうでやらせていただいておりますけども、そういう形で、先進的に取り組まれる方、企業さんと一緒に、モデル事業を一緒にやるということで、ある意味で、フレームワークに関して環境面においてモデル的な事例の創出をお手伝いするというようなことをやらせていただいているところでございます。
次10ページお願いいたします。これに加えて、我々のほうでプラットフォームというのを作成して、そこに対して補助金を出すというようなことをしております。グリーンボンドの発行に当たりましては、当然ながら追加的な費用がかかるということでございます。かかる分につきましては、例えば外部レビューの費用、それから、これは必要な場合と使わない場合とありますけれども、コンサルティングの費用といった形で通常の債券発行に比べてかかり増しの費用がかかる場合があるということでございます。
環境省としましては、そういったストラクチャーですとか、コンサルティングもしくは外部レビューされる方々に関して、一定の要件をかけましてプラットフォームに御登録いただくということをいたしまして、そのプラットフォームに登録いただいた方々が実際の発行体さんのほうの発行支援をするというような場合に、そこにかかる費用を一部補助させていただくというような取組をやらせていただいているところでございます。
基本的には民間で進めるべきものでありますので、毎年、徐々に補助率等を下げていく形で自立を促すということにしておりますが、日本国内で発行されていますグリーンボンドのかなりの割合が、この補助金を使っていただきつつ取り組んでいただいている状況と認識をしておりますし、こういったものを通じまして、環境省としましても、様々な発行の実態を把握し、我々としても勉強させていただくというような取組が進んでいるというふうに理解をしております。
私からの説明は以上でございます。あとは参考資料といたしまして、環境省のほうで手元で把握しておりますグリーンボンドの国内の発行の2020年の実績を貼らせていただいています。これは環境省のホームページで公表させていただいているものでございまして、基本的には公表情報を基につくらせていただいたものでございますが、御参考ということで載せさせていただいているところでございます。
簡単ではございますが、私からの説明は以上とさせていただきます。ありがとうございます。
【北川座長】
ありがとうございました。
それでは続きまして、大和証券デット・キャピタルマーケット部SDGsファイナンス課、清水課長様より、資料4「ソーシャルボンド発行実務に関して」につきまして御報告いただければと存じます。清水様、よろしくお願いいたします。
【清水氏】
大和証券の清水でございます。ありがとうございます。それでは、ソーシャルボンドの発行の実務、そしてICMAの動向を含めて、説明をさせていただきたいと思います。
まずは、今回このような形で検討会のところでお話をさせていただく時間をつくっていただきまして、誠にありがとうございます。表紙にありますとおり、私、大和証券のSDGsファイナンスの全体の推進取りまとめをさせていただいております。
資料説明する前に、簡単に自己紹介と、あとキーワードとして2つ言及させていただいて、資料のほうの説明に入りたいと思います。
私の名前は先ほどあったように「しみずかずし」と読みますけれども、漢字を見ると「一滴」という文字を書いて、基本的には社内外で「いってき」と呼ばれています。辞書で清水という字を調べると、岩から湧き出るきれいな水というのが定義でして、その一滴、綺麗な水が一滴という意味になります。SDGsファイナンスの大きな流れを皆さん感じていると思います。ソーシャルファイナンスについてもこの大きな流れになってくるかと思いますので、その流れを支えるのが「『清水』の『一滴』」であるという形で自己紹介させていただいております。
先ほど申し上げた2つのキーワードということですけれども、今申し上げた「大きな流れ」、「支える」、「『大きな流れ』を『支える』」、こういった観点から、本日ちょっと御説明させていただきたいと思います。
それでは資料の1ページ目になります。本日お伝えさせていただきたい内容をまとめています。日本独自のガイドラインを策定していただくという形になりますが、4つのポイントで整理していただくのがいいかなと個人的には考えております。
1つ目が社会的課題の解決。2つ目が資金使途、プロジェクトの事業区分です。3つ目が対象となる人々。そして4つ目がレポーティングという観点でございます。先ほど申し上げたように、新たなソーシャルボンドと異なる独自のガイドラインという形になりますので、それに向けて重要なことというのはあるのじゃないかなと考えておりますが、この点は最後に述べさせていただきたいと思います。
それでは、ICMAの動向の紹介ということで2ページ目に移りたいと思います。Advisory Councilの御紹介になります。大和証券が、このAdvisory Councilに指名されて対応しております。このAdvisory Councilについては2019年にできた制度でありまして、ICMAはExecutive Committeeという執行委員会が統治しているという形になります。この統治機関、Executive Committeeに対しましてアドバイスするのがAdvisory Councilという立場になっております。
全体で40機関ありますけれども、右下にアンダーライター、引受証券会社を5社挙げていますけれども、証券会社が5社のみです。地理的、地域的には、日本だけではなくてアジア含めて大和証券のみとなっております。ICMAの活動をしっかりと対応して日本の情報発信に努めてまいりたいと思っています。
それでは資料の3ページ目を御覧ください。こちらはICMAのワーキンググループの全体概要になります。この表のとおり、現在5つのワーキンググループがあります。大和証券はソーシャルボンドとトランジションファイナンスの2つのワーキンググループに参加しております。ソーシャルボンドに参加している団体は56団体、日系では弊社大和証券を含めて7団体が参加をしているという状況です。
緑色で背景色づけさせていただいていますけれども、文言見ていただくと、統合、推進、成長、発展、こういった前向きな言葉が出ているということです。ソーシャルボンド原則が現在のものが完成形ではなくて、現在形で変化していくものということで御認識いただければと思います。
それでは、資料の4ページ目になります。ソーシャルボンドワーキンググループの動向ということで、詳細まとめております。
目的ということで4つの観点を、ICMAのワーキンググループでは明確にしています。1つ目がマーケットインテリジェンスの構築。2つ目が原則の改善。3つ目がインフラの整備。4つ目が関係性の提言、プロモーション。このように進めていこうという形になっています。
上段のほうにポイントの文言を入れました発行増に向けたケーススタディーの拡充、そして、企業が注力する事業においてソーシャルボンドの資金使途の拡大、そして、インパクトKPIの拡充です。このような観点、特にやはり事業区分、あとインパクトといった点を重視しているということが認識できるかと思います。
あとは、KPIのところでちょっと意訳させていただいたのですが、KPIがセカンドオピニオンプロバイダーごとに異なっていることは、発行体のハードルになっているような文言があります。KPIを統一して、その整理をいかにしていくかという重要性があるのではないかなというふうに考えております。
それでは、資料5ページ目になります。こちらでは発行会社様にソーシャルボンド原則の概要を御案内させていただいています。
冒頭で申し上げた4つのポイント、1つ目のところ、赤字で掲載していますけども、社会的な課題というものでございます。社会的な課題が明確になってくれば、そのソリューションとしての事業のソーシャル性というのが見えてくるのではないかなというふうに考えております。
例えば、高齢者をひとつにとっても、医療の問題、介護施設の問題、あと年金、財政の問題、そして住まい、住居の問題といったいろんな論点があります。何が社会的な課題なのかという部分を明確にして、発行会社様とはディスカッションをしております。
ソーシャルボンドの事業区分については、先ほどあったように6つの事業区分が用意されているという形でございます。今のICMAの状況見ていると、今後変化していく可能性はあるのではないかなと思っていますので、御議論する際にはここにこだわらずディスカッションしていただくのがいいのかなというふうに考えております。
右側が「対象となる人々」です。右下に掲載させていただいていますけども、特に高齢者のところ、先ほども少し申し上げましたけれども、この追加は2020年、昨年行われたという状況でございます。先進国の課題も反映しているのかなと考えておりますが、非常に驚き、ようやく入ってきたのかという認識であります。そのあたりの柔軟性という部分も検討をいろいろしていただきたいなと思います。
それでは次の資料の6ページ目、ケーススタディーということで3つ挙げさせていただきました。見ていただきたいのは、真ん中のところの社会的な課題です。
学研ホールディングス様では、認知症介護の必要性という部分です。真ん中の商船三井で申し上げると、フィリピンの商船大学という資金使途ですけども、フィリピン人の船員への高い教育というのを課題に挙げられています。商船三井様におかれましては、フィリピンの船員が68%で約7割ということなので、いかに教育していくのが重要なのかといったあたりを論点とされています。そして、MUFG様、幅広く融資をしていくという流れでございますけども、社会的な課題という部分で、医療、教育、自然災害、感染症、公共住宅といった、幅広く対象にされているという形でございます。
発行会社様からソーシャル性、自分たちの事業にソーシャル性がありますかという質問を受けることが多いですが、そういうときに、まずそれに答えるのではなくて、逆に、発行会社様に私のほうから質問して、解決すべき社会課題はありますかという形でディスカッションをさせていただいております。
それでは、次の7ページ目になりますが、社会的な課題をどう整備すればいいのかということで、私からのひとつアイデアを出させていただいております。SDGsアクションプラン2021ということで、昨年12月に公表されております。社会的な課題については、グローバル、国、地域で整備できるものとあります。
日本全体でということになりますと、国で公表していくアクション、何を起こしていくのかということが非常に重要である中で、SDGsのアクションプラン2021は、ソーシャル性を整理する上で非常に重要な考え方ではないかなと考えております。
「重点事項」を社会的課題と整理して、「事業区分」、「対象となる人々」とひとつの整理ができるかなと思っています。具体的には一番上、コロナ関連のところで申し上げると、医療介護の重要性、一番下にありますけども、食の安全、食糧システムの重要性。最近ちょっと話題にはなっていませんが、学校給食が昨年なくなったときに牛乳廃棄の問題があったかと思いますけれども、食糧システムとしての論点整理ができるのではないかなと思います。
3つ目です。明日で東日本大震災10年目になりますけれども、私個人的にはやはりインフラの重要性というのを10年前に気づきました。ソーシャル性において整理がしっかりできるのではないかなというふうに考えております。
それでは、次の8ページ目になります。レポーティングになります。発行会社様にレポーティングを御説明する際に、やはりグリーンと違いましてなかなか分かりづらいという点です。ICMAの原則で用意されている、Output、Outcomes、Impactという考え方を御説明させていただきます。
真ん中のところに挙げていますけれども、Recommendations、推奨ということで、定量的な指標が非常に奨励されています。そして定性的な情報は補足、代用という考え方になっております。このあたりの整理を、この検討会では次回以降、ぜひディスカッションをしていただければと思います。
9ページ目を御覧ください。ケーススタディーになります。ここでは東京建物様とイオンモール様を挙げさせていただきました。上段のほうが、プロジェクトの内容、「社会的な課題」、「事業区分」、「対象となる人々」という概要になります。
レポーティングでは、下の表を見ていただければ、アウトプット、アウトカム、インパクトという形でしっかり分けられているという状況です。特に東京建物については、ソーシャル性を数多く明示されているという形になりまして、まさしくケーススタディーだなというふうに感じております。発行会社様への負担、評価機関によって変わるということも念頭に置きながら、いろいろ御検討していただければと思っております。
最後、10ページ目でございます。冒頭申し上げました、本日お伝えしたい内容、一番下のところに掲載させていただきました。最も重要なことは、ソーシャルボンドをプロダクト/金融商品として提供するようなつくり込みというのをぜひお願いしたいなと思っております。ESGに投資したい投資家、機関投資家だけではなくて個人の投資家さんも非常に多いと感じております。あるべきソーシャルボンドというところではなくて、日本社会の課題解決につながる、より現実的なソーシャルボンドという大きな流れ、キーワードで申し上げました、「大きな流れ」をぜひ作っていただきたいと思っておりますので、それを「支える」という観点から、僣越ながらではありますが、ぜひ活発なディスカッションを行って、国内の指針づくりをお願いしたいと思っています。
最後に、本検討会は、冒頭ありましたが、サステナブルファイナンス有識者会議の下部の会議体という認識です。第1回の有識者会議で、元GPIFの水野様がESGの商品をぜひつくってくださいとおっしゃっていました。弊社の副社長の田代も委員になっていますけれども、幾度となくこの商品をつくる重要性という点を言及させていただいております。
繰り返しになりますけれども、国内指針を利用する立場となる民間会社、まず発行会社様が、商品、プロダクトをソーシャルボンドとしてより多く出せるような「大きな流れ」をつくっていただく、それを「支えていただく」ディスカッションをぜひ行っていただきたいなと考えております。
私から御説明、以上でございます。ありがとうございました。
【北川座長】
清水様、ありがとうございました。
それでは、3人の方が終わりまして、これより皆様から御意見等をお伺いする討議の時間とさせていただきます。今回多くのメンバーに御発言いただく機会を確保するという観点から、御発言のお時間といたしましては5分を目安にしていただければと思います。4分を過ぎますと、勝手ながら事務局から、発言時間の残りが1分である旨のチャットが発言されています委員のみに送付されますので、発言時間の御参考にしていただければと存じます。
それでは、早速でございますけども、皆様いかがでございましょうか。まず、熊谷さん、よろしくお願いいたします。熊谷さん、どうぞ。
【熊谷委員】
大和総研の熊谷でございます。よろしくお願いいたします。
まず初めに、誠に僣越ながら、今回金融庁がソーシャルボンドの検討会を立ち上げられたことを高く評価したいと思います。ESG投資の2大分野であるE、すなわち環境、気候変動、脱炭素化、の分野につきましては、パリ協定が策定された2015年以降、グローバルで市場規模が拡大しております。我が国においても、これまで環境省によるグリーンボンドガイドラインの整備等が進められてまいりましたけれども、昨年、菅政権によって、2050年のカーボンニュートラル宣言が出されて、我が国全体として気候変動問題に本格的に取り組むことになりました。ただ、この分野では、先行する諸外国に対して、我が国としてどのように対応するかが課題になっているわけです。
一方で、S(ソーシャル)の分野については、我が国は2008年にIFFImワクチン債を個人投資家向けに販売した実績があり、また、現在、各国とも新型コロナ感染症拡大に伴って、ヘルスケア等のSの分野への対応が、当面の最重要課題となっています。
しかしながら、Eの分野と比較をすると、まず第一に、パリ協定のようなグローバルな合意がない中で、対象範囲が非常に幅広いこと。第2に、二酸化炭素(CO2)のような明快な社会的成果の指標が共有されていないこと等から、実務的、標準的な取組が確立されていない状況にございます。
こうした中で、事務局の御説明資料33ページで、さりげなく説明されておりますけれども、国際的に見ても、S(ソーシャル)の分野における指針は、ICMAのソーシャルボンド原則のみであって、今回、金融庁がICMA原則を踏まえて実務的なガイドラインを検討されるという動きは、まさに世界のフロントランナーの位置にいるという認識をしております。
こうした、極めて先進的かつ困難な取組にチャレンジするという、金融庁及び関係省庁の御英断に敬意を表するとともに、大和総研、大和証券グループのみならず証券界を挙げて、ソーシャルボンドガイドラインの策定に御協力申し上げたいと考えます。
以上のことをお伝えした上で、私からは具体的に4点ほど申し上げます。第1点は、大前提としてのソーシャルボンド推進のメリットについてでございます。資料の37ページに、グリーンボンドのメリットを踏まえた整理がなされておりますけれども、証券界の反応としては、例えば、投資家等に対する社会的課題の啓発につながることなどを、前向きに評価する声がございます。さらに私としては、もう少し目線を上げて、SDGsの達成、SDGsの達成に貢献する資金の流れの確保、という意義が非常に重要であることを強調させていただきたい。現在、世界が共有しているアジェンダには、2015年にCOP21で採択されたパリ協定のほかにも、同年国連サミットで採択をされたSDGsがあるわけでございますけれども、政府もSDGs推進のためのアクションプランに取り組んでおり、産業界においても、経団連が「Society5.0 for SDGs」を掲げて、SDGsの達成に邁進しておるところであります。
こうした官民一体となった取組を支えていくために、証券界としても、ソーシャルボンド、グリーンボンドがともに、資金調達がSDGsに貢献する事業に充当される債券であることから、「SDGs債」という統一呼称を提案しています。以上、ソーシャルボンド推進の根本的な意義は、SDGsの達成に貢献する資金の流れを債券市場において確保することにあると考えております。
第2のポイントとしては、35ページの論点において、民間事業法人がソーシャルボンドを発行する際の有用性という表現があり、また発行事例の説明においても民間の発行体にフォーカスがなされているように感じられますが、そういう考え方で進めていただいてよいと思います。我が国のソーシャルボンドの発行実績は、財投機関債や高速道路会社の社債が多いわけですが、こうした公的セクターのソーシャルボンドは、民間事業法人とは設立の目的が異なり、別の規律が働くものと考えられます。
当検討会議で策定するガイドラインは、上場企業をはじめとする民間企業等を主な対象とし、企業活動における社会的成果の指標を明らかにして、「Society5.0 for SDGs」等として、本業でSDGsへの貢献を目指す民間企業等のソーシャルボンド発行を円滑にしていくことを目指すことが適当であると考えます。
第3のポイントでございますけれども、今回のガイドラインを2段階論で行うことは、グリーンボンドのガイドラインが環境省のみで策定されたことに比べ、ソーシャルボンドは多数の関係省庁が存在する中で、まずは金融庁が中心となって前に進めるという方法として理解できます。ただ、民間の発行体にとって実務的に有用なものは、2段階目の社会的成果の指標例です。
つきましてはここで1つ御質問させていただきたいのですが、事務局には、現時点における第1段階の検討スケジュール、第2段階の検討の体制及びスケジュールに関するお考えをお示しいただきたいと思います。
ここからが最後の、第4のポイントでございます。ICMAのソーシャルボンド原則の改訂の経緯について事務局から御説明がございましたけれども、ICMAも社会課題を途上国の課題に限らず、先進国の課題まで包含してきております。この検討会議で検討するガイドラインにおいても、課題先進国とも言える我が国において、今日的な社会的課題を取り上げていただくことでよいと考えます。ただし、社会的課題は時代とともに変わる可能性があることから、ICMA原則のように例示にとどめるなど、柔軟に捉える余地を残すことが望ましいと思います。
また、ソーシャルボンドという特別な債券により、民間企業が有償資金を調達して取り組む事業によって得られる社会的成果を意識して、資金調達の使途を検討する必要がございます。例えば、現下の我が国の社会的課題として、少子高齢化、子供の相対的な貧困、地方創生などが浮かびますけれども、公的セクターがその成り立ちや使命を踏まえて、財政資金とともに有償資金によって対応すべき課題解決と、民間企業が健全な利益を確保しながら有償資金によって解決できる課題はおのずと異なります。
したがって、ガイドラインの策定は2段階で進めるとはいえ、第1段階における資金調達の使途についての検討も、第2段階における指標例の共有の実現可能性を考慮して、関係省庁の協力の下、省庁横断的な検討、例えば、政府が策定したSDGsアクションプランにうたわれた施策などを手がかりとした検討を行う必要があるのではないかと考えます。
以上の4点が事務局の資料に則した私の考え方でございますけれども、我が国金融市場の国際的な信認ですとか、発行体のグローバルなレピュテーションリスクの観点等から、ICMAソーシャルボンド原則との整合性は極めて重要です。本日の大和証券のプレゼンにございましたけれども、ICMAにおいてもソーシャルボンドの論点を明確化しつつ、議論を進めているということでございますので、そういった海外の動向及びソーシャルボンドの発行実務を踏まえて、最終的にソーシャルボンドをより多くの金融商品、プロダクトとして提供できるように検討していくこと、これこそが最も重要な課題であると考えます。
少し長くなってしまいましたが、私からは以上でございます。ありがとうございました。
【北川座長】
それでは、今御質問のあった件について事務局のほうで御説明をお願いいたします。
【太田原市場課長】
時間の制約もあるので簡潔に申し上げたいと思います。今後のスケジュールあるいは第2段階の体制など、御質問がございましたが、まず、第1段階につきましては、今後、夏までの間にこの検討会議を3回、あるいはそのプラスα程度開催して議論を進めてまいりたいと考えております。
その後につきましては、熊谷委員御指摘のとおり、関係省庁の関与が必要と思われますので、本日も内閣官房からも御出席いただいておりますけれども、また、政府全体の進め方について検討させていただければというふうに考えております。
以上です。
【北川座長】
それではよろしゅうございますか。
時間の関係もございますので。それでは竹林様、お願いいたします。
【竹林委員】
Sustainalyticsの竹林でございます。ESG評価の専門機関として、ソーシャルボンドに対するセカンドパーティーオピニオンの提供をグローバルに展開させていただいている立場から、まず、論点の総論に対してコメントをさせていただきたいと思います。
大前提のところで、ICMAの各原則や環境省のグリーンボンドガイドラインとの整合性を踏まえて検討していくというところは、こちら当然その考え方を支持させていただきます。
検討の進め方についてでございますが、ソーシャルボンドの意義という原点に立ち返って考えますと、ソーシャルに限らずグリーン、サステナビリティボンドを含めたいわゆるラベルドボンドと言われるもの全てについて、それらの最大の意義というところは御承知のとおり、特定の目的に用いることを期待されているお金の流れを見える化するということにあります。
この見える化によって、ビジネス・アズ・ユージュアルでもたらされる社会インパクトとの違いを見定めた投資意思決定を行うということが可能になり、その結果としてサステナブルな社会実現のための経済活動に向けたお金の流れというものは確実になっていくというのが、基本の考え方です。しかし、これは我々自身にもよくあることなんですが、このロジックを逆にしてしまった議論、つまり、サステナブルであるというラベルをつけた金融商品をいかに増やすかということにばかり目がいってしまい、増やすためにどういう基準にするべきかという議論に陥ってしまうことがあります。その最悪のケースがいわゆるインパクト・ウォッシュというところにつながってしまう場合もありますので、ここは議論を進めるに当たって気をつけていきたいなというふうに考えております。
もう一点なのですけれど、こちらのガイドラインを策定していくに当たって、当然もともと要望が経団連、つまり発行体の側から出てきたという点を踏まえた内容になると思いますけれども、環境省様のプレゼンのところにもありましたとおり、投資家様の目線ででも活用できるガイドラインとなるよう、単純にソーシャルボンドとラベルがついたものに対して投資するというようなことだけではなく、その中で、どんなソーシャルボンドであれば自分たちの投資対象としたいかというところを考えるための指針としてもつかえるような成果物を意識すべきかと思います。
最後に同じく進め方についてというところですが、これは社会的成果の指標例というところの検討に入った段階で、改めてお伝えすべき内容かもしれませんけれども、この追加的な社会インパクトをもたらす経済活動というのはどういうものかという指標は、いわゆるこのソーシャルボンドのみに限らず、サステナブルファイナンス関連のその他の金融商品の検討においても非常に有用なものになり得ると思いますので、例えば金融庁さんで別途進めておられるインパクト投資の勉強会もあるかと思いますので、そこでの議論とも連携していくというところはあってもいいのかなと考えております。
各論の資金使途のところの話につきましては、また後ほどお時間があればコメントさせていただきたいなと思っております。
以上でございます。
【北川座長】
ありがとうございました。
それでは次に、反田様、お願いいたします。
【反田委員】
ありがとうございます。日本生命の反田でございます。私のほうからは、投資家の立場として申し上げさせていただきたいと思います。
当社はこれまでも生命保険事業の使命や公共性を踏まえて、資産運用において環境や地域社会と共生して、経済、企業と安定的な成長を共有していくという観点から、環境問題の解決並びに社会貢献に資する投融資を積極的に実施してまいりました。また、この4月からは、全ての投融資においてESG要素を踏まえた投資判断をするなど、今後もESG投融資を一層強化する方針でございます。
いわゆるソーシャルボンドにつきましては、ICMAが2017年にソーシャルボンド原則を策定する以前から投資を進めてございます。例えば社債について言えば、2016年には、チリの国立銀行、またインドのICICI銀行が発行した女性活用支援債券にも投資を実施しております。その中でプレスまた各種会議体などを通じて対外発信を実施しております。今後も社会課題の解決に資するESG投資を積極化して、経済、企業の持続性を高める動きを後押ししていきたいと考えております。
国内市場におけるソーシャルボンドの社債投資についても積極的に行っておりまして、本日参加されているANAグループさんのソーシャルボンド、また、今回の説明資料にも掲載されておりましたが、フランスの銀行であるBPCE、こちらが発行したソーシャルサムライボンドにも投資を行っております。ただし、いずれの場合もグリーンボンドなどと同様に、通常のシニア債と比較して割高な場合については、経済合理性という観点から、ソーシャルボンドということだけをもって投資するということは行っておりません。
そうした中、現段階では国内のソーシャルボンド市場は極めて黎明期にあるという認識をしておりまして、まずはソーシャルボンドと銘打った債券を発行しやすい環境を整えて、発行量を増やすことで社会的認知を高めて、ソーシャルボンド市場を拡大させることが望ましいと考えております。
したがいまして、現段階でICMAのソーシャルボンド原則における事業区分、それから対象となる人々の範囲を狭めて限定するというよりは、一定の規律を保ちつつも市場がさらに発展していくという方向で、ソーシャルボンドのガイドライン策定が推進されていくことが望ましいと考えております。
また、我が国の社会的課題の対処という観点につきましては、少子高齢化それから自然災害の増加、都市化、地方の過疎化など、確かに課題先進国というところはございますが、一方でグローバルスタンダードから乖離し過ぎてしまうと、国内市場が取り残されてしまうという可能性も相応に高いと考えております。
一方で、あまりにも範囲を緩め過ぎてしまうと、ソーシャルとしての意義が薄まってしまうということになりますので、やはりバランスが重要であるとのスタンスでございます。いずれにせよ、まずは投資家の裾野が拡大して、ソーシャルボンド市場も拡大していくという好循環が生まれていくというところを望んでいるところでございます。
以上になります。
【北川座長】
ありがとうございました。
それでは、水口先生、お願いできますでしょうか。
【水口委員】
水口です。ありがとうございます。
私は有識者会議のメンバーでもありますので、まずは、有識者会議の立場として、北川先生はじめ関係者の皆様の本検討会議における御尽力に感謝を申し上げたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
以降は、有識者会議とは離れて、一個人といいましょうか、一委員の立場からコメントを申し上げたいと思います。まず、総論で挙げられております、社会で有用なもののうち特定なものをソーシャルプロジェクトとして推進する意義ですけれども、私は、意義はあると思っております。特に、あらゆる商品・サービスは何らかの社会的なニーズに応えるものではあるわけですが、その中でも、単に私的なニーズに応えるだけではなくて、同時に社会的なインパクトをもつもの、つまりはパブリックに、公的な利益にも資するものをソーシャルプロジェクトとして推進する、言わば社会課題に取り組むんだということを、アカウンタビリティーをもって示していくということは重要なのだろうと思っております。
したがって、この場合には、ではソーシャルプロジェクトとは何なのかということと、その課題、取組がどのぐらい実際にインパクトを生んでいるのかという2つが重要になってくるのだろうと思います。そこで、各論の2番目にも出ておりましたけども、ICMAでは6つの事業区分が挙げられております。しかし、これは熊谷さんの話もありましたが、やはり途上国を前提にしている部分がかなりあって、手頃な価格の住宅ですとか、基礎的なインフラですとか、確かに途上国においてはまだそういうものが足りない、インフラが足りない国もあるわけですから、それが社会的課題になっているわけですが、日本においてはむしろ、そういったことではなくて、少子高齢化ですとか、地域社会の疲弊ですとか、経済格差の拡大、働き方とか雇用の問題、こういった日本に特有の社会的課題がたくさんあるというふうに考えられます。そのような意味でも、この日本における課題を前提にして、日本におけるガイドラインをつくるということは、実は非常に重要なことだろうというふうに考えております。
一方で、ではこの課題を挙げて、ICMAの原則にあてはめればよいのか。まずICMAとの国際的な整合性は非常に重要ですので、国際的な整合性を十分に配慮するということは重要だと考えております。しかし、単にその課題を挙げて、プロジェクトを示して、そのプロジェクトに沿っていればソーシャルボンドなんだということでいいのかどうか。恐らくこのソーシャルボンドを推進するということの最終的な意義、ソーシャルボンドを推進すること自体のインパクトやアウトカムというのは、結果として、実際に社会課題が解決したなという、そういう実感を得られるということなんだろうと思います。単に発行件数や発行金額が増えたかどうかではなくて、結果として社会課題が解決に向かうということが重要なんだと。
その意味では、そのソーシャルボンドのソーシャルのレベルとか、インパクトのレベルを言わば測定していくという段階にそろそろ入っていく必要があるのではないか。世界的に見ても、ソーシャルボンドやグリーンボンドの先にインパクトファイナンスやインパクト投資という議論が進んでいる。これは恐らく同じような問題意識を、世界の関係者が持っているからなのではないか、そのように思いますので、恐らくインパクトを測定するということをどこかで議論していく必要があるのではないかと、こんなふうにも思います。
私からは以上です。
【北川座長】
ありがとうございました。
それでは、梶原様、お願いいたします。
【梶原委員】
JCR、日本格付研究所の梶原でございます。ありがとうございます。
それでは、私ども、こういった社会、ソーシャルボンドに対する第三者評価を提供する立場として、主に実務面からどのような面を考慮して、その評価に反映しているかというところも踏まえ、35ページ、36ページについて意見を述べさせていただきたいと思います。私からは主に、その36ページの2ポツ目と3ポツ目、ソーシャルプロジェクトとしてどのようなものが考えられるかというところについて、考えていることをお伝えしたいということです。
まず最初に、私ども、2018年からICMAのソーシャルボンドワーキンググループに参加しておりまして、まさにこれが立ち上げて1年目とかそんな時期から入らせていただいております。その頃は、欧州の評価会社の皆様も入っておられて、積極的な議論をしていた中では、やはり、まず最初に、社会開発に民間が取り組むというのがこれまでなく、最初にその原則をつくるときは、EBRDですとかIFCといった開発機関の考え方を相当程度考慮してつくられたものではあったとして、そこでその南北間格差ではなくて先進国特有の社会的課題、これに着目していく必要があるよねというような話をしていました。
第三者評価機関としてそれでは何を参照したらいいのかというところで、やはり各国の社会課題に資するような政策、これを参照するということになるだろうと。グリーンボンドに関しては、例えばパリ協定のような国際的に統一され、一貫性のあるゴールというのが見えやすいのですが、社会的課題に関しては、必ずしもそれが難しいということであるとすると、やはり各国の政策なのだろうというような話をしておりました。
それで、私ども、熊谷様からもお話がありましたが、当初からSDGsアクションプランで政府が何を重点課題と置いているかというところとのソーシャルプロジェクトとの整合性、そしてICMAが出しているソーシャルプロジェクトと、SDGsの169のターゲットとのマッピング、この2つをもって、ソーシャルプロジェクトとしてのピックアップ性をまず第一に見ていたというところがございます。
もう一つ考えたいのは、やはりその、パブリックセクターがやられることと民間がやられることが異なるというのは、単なるソーシャルセーフティーネットというアプローチとは異なる、民間企業が実施するという点だと思っております。その観点からは、投資家様からもそうだと思いますが、やはり投資利益と社会改善効果への貢献の両立ということを考えると、ソーシャルプロジェクト自体の収益力、あるいはこのソーシャルプロジェクトを実現することによって、最終的にその企業の価値が向上していくという道筋も合わせて、ソーシャルボンドを組成していただいたときに検討しているところでございます。
3点目のほうの、一般の大衆となり得るとしている、この点をどのように考えるべきかという、対象とする人々の問題についてもお話をしたいと思います。
やはりそのソーシャルプロジェクトというのは、今のコロナの問題もそうですけれども、世界、社会全体に及ぼす影響が大きく、一般の大衆と考え得る課題というのは非常にあると思っています。一方で、先ほどから出ておりますインパクトファイナンス、このプロジェクトがどのようなインパクトがあるのかということを考える一番最初の前提のところ、誰が裨益するのか。これが分からないとインパクトが把握できないということがあると思っておりますので、仮にその一般の大衆を広くということであったとしても、それによって実際にどのような人々が裨益するのかということがなるべく具体的に分かるようにということを評価書の中で気をつけているというところです。
また、先ほどから、3段階のインパクト、アウトプット、アウトカム、インパクトのお話があったと思いますが、グリーンボンドはどちらかというとアウトプットが分かりやすく、そこからアウトカムの多くはCO2削減につながることが多いため、一覧性が高く定量的に把握しやすいのですけども、ソーシャルボンドに関してはアウトプット、アウトカム、インパクトがそれぞれ個別性が非常に強いと思っています。
そこをあえて発行体の皆さんに考えていただくと、最終的に大きなインパクトというのが社会に対する還元とともに、その会社さんがお持ちの企業倫理につながることがあります。そうなると、やはりその社会にもいいし、御自身の企業にとってもいいというところにつながってきますので、ぜひこういった3段階のインパクトの把握、これを最終的に考慮していただければと思っております。
すみません。長くなりました。私からは以上でございます。
【北川座長】
ありがとうございました。
それでは、相原様、よろしくお願いいたします。
【相原委員】
野村証券の相原でございます。よろしくお願いいたします。
今回、このような検討会議に参加させていただきまして誠にありがとうございます。発行体様と投資家様という市場参加者の中間を取り持つインターミディアリーとしての役割としての証券会社として、市場の発展に向けて尽力できればということを考えております。
皆さんも御承知のように、サステナブルファイナンスに関しましては、非常に速いペースで拡大しているという状況でございます。ESG投資という、これは資金がやはりグローバルで動いているというところが、この背景にあると我々としては考えておりまして、やはりグローバルな目線というものを持つということは非常に必要ではないかというように考えております。
従前から、皆様から市場参加者のスタンダードであります、ICMAソーシャルボンド原則との適合というようなお話がございますけれども、それはまさにそのとおりではないのかと考えております。
もちろん、日本の社会課題、特に少子高齢化ですとか格差ですとか、最近問題化されているような点に関しての観点は必要であるというように考えておりますけれども、ICMAのソーシャルボンド原則との整合という点に関しまして、我々としてはやはり、そこを目線としては外すことはできないのではないかなと考えております。
特にソーシャルボンドにつきまして、こちらのソーシャル性の評価という点について申し上げますと、ソーシャルボンドのみならず、サステナビリティボンドというようなプロダクトに対しても影響があると考えておりますので、この点につきましてはやはり、留意すべき部分なのかなと考えております。
その点に関しまして、35ページ、36ページで、事務局の皆様から提示されました論点につきまして、私どもとして、問題点としましては2点あるというように考えております。
1点目は、やはりこれはいわゆるインターミディアリーの立場として申し上げますけれども、投資家保護の観点という点でございます。ソーシャルウォッシュの回避ということを、非常に極端な言葉を使って申し上げますと表現できるかと思いますけれども、EUタクソノミーですとかEUグリーンボンドスタンダード、いわゆるICMA原則よりもさらに厳格なスタンダードというものが今できているところでございますけれども、これはひとえに投資家をグリーンウォッシュから守っていく、保護していくというようなためにできているというところでございます。
このような観点というのが、このソーシャルボンドに関しましては、基準というものを考えていく中で必要であると考えております。対象となるプロジェクトですとか、対象となる人々の明確化という点も大事だと考えておりますけれども、やはりプロジェクトに関しましての明確な社会的便益とインパクトの開示というものが、この点につきましては要請されているのではないかと考えております。
このように、私どもの問題意識としてございますのも、投資家の皆さんは、単にラベリングされた債券を買うのではなくて、いわゆるソーシャルプロジェクト、グリーンプロジェクトに参加されているということが、その投資の背景にあると考えております。今はエンゲージメントが非常に着目されてきております。これは投資家の方が、いわゆる発行体とこのESGのインパクトに対しての対話を要請されている。発行体も、このようなエンゲージメントに対しての意識というものが高まってきているというのが、最近このサステナブルファイナンスのマーケットが進展するにつれて、状況として、そういった現象が起きてきているなと考えております。
もう一点に関しましては、市場の拡大という点でございます。この市場の拡大というところについては、いろいろ考え方があるのかと思いますけれども、私どもとして考えていますのは、市場の拡大のために分かりやすい投資対象であるべきだと考えております。
その中で一番端的に申し上げますと、やはり比較可能性というところではないのかと考えております。グリーンボンドに関しましては、CO2排出量というもので定量的な計測ができるというものでございますけれども、ソーシャルボンドというのも、その結果が、何をもってそのインパクトを測定していくのか、やはり定性的にとどまらない、定量的な分析が必要ではないのかと考えております。
もう一つ、新しい課題としてちょっと持ち出させていただければと思いますのが、ジャストトランジションということでございます。これは、トランジションファイナンスというものが今非常に話題になってきておりますけれども、公正な移行をするために、そのネガティブな社会的な影響に対しての投資、業績の悪化ですとか、場合によっては雇用の確保という点を、ジャストトランジションという課題の中でカバーすべきであると考えております。ソーシャルファイナンスの枠組みの中で検討されるということも御検討いただいてはいかがかと考えております。
発言以上でございます。ありがとうございました。
【北川座長】
ありがとうございました。
それでは、林様、よろしくお願いいたします。
【林委員】
よろしくお願いいたします。今日はありがとうございます。
皆様おっしゃられていることに何一つ反論はないのですけれども、ポイントとしてその国際資本市場協会がつくっているグリーンボンド原則に対して、環境省さんがつくられたグリーンボンドのガイドラインと同様に、やはりソーシャルについても、同じようでいいのではないかと考えます。というのは、今まで皆さんおっしゃられたとおり、やっぱりグローバルから見て、日本だけが何か不思議なことをやっているというふうに思われるのは誰にとってもプラスでないというのがまず第一にありまして、加えて、サステナビリティボンドというのは既にグリーンとソーシャルの要素を併せ持った形で日本で行っているわけですので、そことの整合性ということも大事だというふうに思っております。
それで、先ほど梶原さんがおっしゃられましたように、もともとはソーシャルボンドは発展途上国向けで始まったものではありますが、昨年の6月の改訂にも見られておりますように、既にその先進国もきちっと対応できるようなものに変わってきているということと、あともう一つ、そのガイドラインの原則を見ていただきますと、これに限ったものではないというふうにいろんなところに書いてあり、我々の会社の話で恐縮ですけれども、真っ先にCOVID-19ボンドも出した一社でございますけれども、ガイドライン、あるいは原則になかったとしても、社会の課題であると、自ら発行会社として判断して、かつ投資家にきちんとそのインパクトも含めて説明できるものであれば、全体のルールにとらわれることなくマーケットに訴えていけばいいのではないかというふうに思っています。本当にこのソーシャルという課題はダイナミックなものでございますので、それを見ながら、ICMAもソーシャルボンドのプリンシプルを変えてきていると思っているので、一つのプラットフォームだというふうにお考えいただくのが一番ふさわしいのではないかと思っています。
とはいえ、日本の御発行体あるいは引受会社も含めて、見えにくいということかもしれませんので、そういう中で、SDGsのアクションプラン、あるいは海外の事例など、そういったものを見ながら、最終的には御発行体が自ら、自分のビジネスとどう位置づけて、このソーシャルな課題に取り組むのかということをきちんと説明して、かつ投資家から見ても、それに対する投資をする意義があるということを説明できるような、そんな形で進めていければいいのではないかというふうに思っております。
以上でございます。
【北川座長】
ありがとうございました。それでは、森様、よろしくお願いいたします。
【森委員】
JICAの森です。御指名ありがとうございます。
年間、約600億でございますけれども、発行体としてソーシャルボンドを2016年から出してきているというところの経験を踏まえて、コメントさせていただければと思っております。
日本の課題、高齢化、地方経済の停滞、そしてここ数年の天地の自然災害と、そういう中で、例えば高齢者施設さんが被災するというような映像、これを我々多く見ているというような昨今の状況だと思います。特に昨年のコロナというところで、多くの国民、市場参加者含めですけれども、社会が変わっていっているというところを実感しているただ中にあると感じております。
昨年、12月でございますけれども、JICA債をソーシャル、特にコロナ対応ということで発行させていただいております。資金使途は非常に分かりやすいと、困窮している人々を支援するのに貢献したいということで、コロナ債なので投資していただくというような方々も実際にいらっしゃいました。
また、ソーシャルボンドということで、その対象、意義について説明を様々な方にIRさせていただいているわけですけれども、困った方々に対して支援していくということについて、我々投資家としても、ぜひそこに参加していきたいと、先ほど御指摘ありましたけれども、まさに参加していきたいという御意見が大きくなっていると思っております。これは逆に、そういうアセットオーナーであったり、税金を払うタックスペイヤーの思いを反映することが、社会全体として必要になっていると感じるところでございます。
例えば2016年以降、JICA債に投資した方に関心表明をしていただいておりますけれども、これまで大体4年強で173ございます。特に、このうち77については、この1年間で投資を表明されているというところが数字的にも社会の変化を表していると思っております。
他方、社会の変化を表わしていないというところが、ソーシャルボンドの発行体の構成だと考えております。今回、金融庁のほうで準備いただきました資料を見ても、グリーンボンドと比較しまして、ソーシャルボンドですと、我々財投機関が5割、高速道路会社を含めると約7割から8割というのが現状でございます。
一方で、投資家の方々、ステークホルダーの方々は、社会的なコストをどういうふうに自分たちで負担していくべきか、公的な役割と民間の役割が変化していくべきではないかということを、考えられていると実感しております。そうしますと、ソーシャルボンドのガイドラインが念頭に置くのはいかにその民間企業の方がまさに参加していける、発行しやすいようなものとしていくのかというのが1点と、もう一つは資金の出どころが既存の投資をソーシャルボンドにリアロケートするだけではなく、これまで生産的なところにまだ使われていなかった家計の貯蓄等が、また企業の余剰金が新しくこのソーシャルの投資の世界に入ってくるのを促すようなガイドラインの構成になっていくべきかなというふうに考えております。
2点目です。そのために、では我々投資家とコミュニケートをしていくという観点で、対象の例示、また人々はどういうふうに例示されていくべきかというところに、コメントさせていただければと思います。
もともとワクチン債とかIFCが発行したということが先行事例でございますので、途上国事業への投融資を行うJICAとしては、そもそものICMAの例示というものは非常に腹落ちのするものでございます。非常にこれは分かりやすい。
他方、この途上国と先進国を二分化すれば分かりやすいですけれども、世界が200近い国々の中で、様々な国が様々な状況に置かれている中で、それを全て包括して分かりやすく示せるような例示というものは、まずあり得ないのだろうなと思います。日本であれば、先ほど来出ています高齢化、地方経済、また自然災害というところがキーワードになってまいりますし、そこに対して社会的なプロジェクトをやっていくということを発行体は説明し、それに対して投資家の方が納得し共感していただけるというための例示ということが必要になってくるのではないかと思いますし、そこを通じて、ウォッシュとも排除していくということが必要じゃないかなというふうに思います。
他方、では日本が独自のものをつくっていけばいいのかということになりますと、これは皆さん御指摘のように、独自性は追求しつつも、ICMAのフレームワークというところは、その範囲の中に入っていくべきだというふうに考えます。やはり市場の信頼性というのは非常に、後ほど申し上げます理由からも大きいと思っております。
その際参考になりますのが、これも参考資料につけていただいております、IFCのケーススタディーかなと思います。SDGsを社会的課題、投資の目的にひもづけております。日本でも、政府がSDGsのアクションプランをおつくりになって、これでSDGsを推進されている。これはもう地方自治体津々浦々、非常にもう日本に根づいたものになっております。ここが大きな分類をスタート台として、引き出していく。その引き出された中で実現されるソーシャルプロジェクトがあり、それを達成するためのソーシャルボンドという位置づけにしていくということであれば、国際的に認知されたフレームワークということで、ICMAとも整合性が取れるのかなというふうに考えております。
3点目は指標についてなんですけれども、社会的な指標については、我々、特にIRの中でインパクトレポートというものを使いまして、投資家の方々に、どれだけの水が世界的に供給できましたか、またどれだけの病院を造ってどれだけの患者の方々が受診できるようになっていますかというところを説明しております。やはり、投資家の方々の裾野を広げるという意味においては非常に重要だと思いますが、なかなか一朝一夕にこれはできるものとも思えませんし、あまりに指標の議論だけが先行して発行自体が遅くなるということも問題です。
他方、申し上げましたように、ここはぜひ同時に検討を進めていくべきだと思います。発行体としては、将来的にはノーマルボンドとソーシャルボンドでスプレッド差が出ると、そのスプレッド差というのはまさに、この投資インパクトというところに投資家の方々が納得して出していただけるというようなものになっていただければと思います。
最後に整合性というところでございますが、ICMAとグリーンボンドにいたしましても、我々、国内債であれば、海外の投資家の方々からも、為替リスクを勘案しつつも投資していただきたいと思っております。その際、やはり国際的に整合性のあるものでないと海外の投資家が入ってこないというのもございますし、グリーンボンド、ソーシャルボンド、両方出すこともできるかなと思いますときに、両方であまりにも違うものですと、そこはまた困惑いたしますので、ぜひ共通化できるものは共通化し、かつそれに基づいて投資家の方も横比較ができるようなものにしていくということが重要かと思っております。
以上でございます。
【北川座長】
ありがとうございました。
それでは、有江様、よろしくお願いいたします。
【有江委員】
有江でございます。ありがとうございます。
私が手短に2つほど論点かけさせていただきたいと思います。皆様もう、いろいろな方がおっしゃっているとおりなんですけれども、やはりソーシャルになりますと、そのインパクトの計測というのは非常に難しい、グリーンと比べると難しいかなというところがあろうかと思います。
実際の例として、これ数年前にある自動車の部品メーカーさんとちょっとお話をした際に、その会社の中では自動車事故を減らす取組を一生懸命やっていらっしゃる。そのための部品開発もされていると。じゃあ、これのファイナンスをソーシャルボンドでやりたいなと考えたときに、インパクトの見せ方が非常に難しいと。完成車メーカーであれば、事故がこれだけ減ったということが言いやすいんだけれども、部品であるがゆえに、どこまでそれが貢献できていたのかが非常に表示しにくいし、あるいは完成車の、例えば原価率で出すということも可能かもしれないけれども、実際その原価というのは開示されていませんので、数値として出しにくいというようなこともありまして、使いたいのだけれども使えない、いいことをしているんだけど、それも表明できないというところで非常に、困っているといいますか、どうしたもんかなという御相談を以前受けたことがありますので、まさに先ほど森さんもおっしゃいましたけれども、そのインパクトの開示を通して、その民間企業に使いやすいものになるといいなというふうに思います。ただ、使いやすい一方で、これも先ほど議論になっていますけれども、そのウォッシングをちゃんと防ぐというこの両方をちょっと見ながら、議論が進められればいいなというふうに考えております。
それから、これもさんざん議論も出尽くしておりますけれども、やはりグリーンボンドガイドラインとの整合性というところですが、こちらについては、グリーンボンドのときの座長であります水口教授も今日いらっしゃる中で、こういう言い方するとちょっと失礼かもしれませんけれども、グリーンボンドのときにも、サステナビリティボンドのガイドラインについて、時間がないこともあってなかなか踏み込んだ議論ができていなかったかなと思いますので、できればサステナビリティボンドの話も介しながら、そういった整合性といったところにも目が配れると、よりよいのかなというふうにも考えております。
以上でございます。
【北川座長】
ありがとうございました。
それでは、川北先生、お待たせいたしました。よろしくお願いいたします。
【川北委員】
京都大学の川北です。
端的に述べますと、今日のような、何がソーシャルなのか、それを議論する意義に関しては当然あると思っています。法律に反しない限り、お金の使い方とか調達の仕方は自由ですけれども、ただ、国が狭くなり地球全体が狭くなり、かつ相互の依存が高まってくると、そういう現状では、社会の物的もしくは精神的な発展に対してどの程度貢献しているのか、それに関する大きな基準をつくって、お金の使い方、調達の仕方を評価し、その結果としてお金の流れに強弱をつける、そのことの重要性が増していると思います。
この観点から、今回のようなソーシャルボンドに関する議論に意義があるということです。これはボンドの話ですが、貸出しとか株式投資とか、それへの援用も可能になると思っています。
投資家にとっての意義について、債券の場合はソーシャルだから投資収益率が明らかに高くなるという話ではないのでしょうが、片方でちゃんとしたソーシャルであれば、デフォルトリスクは小さくなるでしょう。また、そういう社会的な責任を果たしている企業への応援にもなるし、広義の意味での投資家責任を果たすことになる、そう評価ができると思っています。
ガイドラインの議論に関しましては、グリーンに関しては、これは欧州の土俵の上で議論が進んでいて、日本などの先進国や発展途上国にとっては、端的に言うと、欧州のエゴじゃないかという部分があると思います。ということで、ソーシャルに関して、先進国の一員としての日本が先行して議論をし、原則を制定していく、その意義はかなり大きいだろうというふうに思います。
もっとも、今回の議論がこれだけで終わりというわけではなくて、時間の流れとともにその課題も変化していくわけなので、原則の書きぶりを含めて変更をしていく必要性も、当然あるだろうと思います。
さらに個別テーマに関しまして、少し思っているところを述べたいと思います。ICMAの原則にある事業とか対象となる人々、それはそのとおりだろうと思うし、それに原則は従うべきだとは思います。ただ、日本が今直面している視点からの追加とか整理とか、そういうものが必要でしょう。整理というのはICMAの原則に対しての加重をつけていくということだろうと思います。特にそういうことを今回、議論すればいいのではないのか。もっとも日本が、日本企業がグローバルに活動することに関しては、これは当然、ICMAがベースになり得るというふうに思います。
もう少し具体的に、日本として重要性の高い事業という意味では、クリーンなエネルギーの生成とかその供給の方法、それからエネルギーの効率的な利用の方法がありえます。これはその環境ともかなりオーバーラップする部分だろうと思います。それから、情報とか医療に関する先端分野での研究とか教育とか、それに基づく起業です。すなわちベンチャービジネスのことですけれども、そういう起業の支援もあります。さらに言うと、自然環境の活用を含む地域活性化などもあります。こういうことにおいては、日本のみならず、先進国としての共通の部分がかなりあるのではないでしょうか。
重要性の高い人々としては、これは弱者に入るわけですけれども、地域の住民、特に高齢者、そういう人々の重要性が高いし、それから子育ての世代、特に通勤に多くの時間を割かれる世代の支援、そういうふうなものが、日本として重要性が高いと思っています。
以上です。
【北川座長】
ありがとうございました。
発言されてない方で発言希望の方いらっしゃいましたら、若干いらっしゃるんですけど、当てられていない方、よろしゅうございますかね。私に届いてない可能性もあるんですが。
【大石委員】
R&Iの大石ですけれど、お願いします。
【北川座長】
どうぞ、お願いいたします。
【森澤委員】
森澤も出しております。お願いします。
【北川座長】
じゃあ、大石さんからお願いいたします。
【大石委員】
R&Iの大石です。
評価会社として、たくさんのソーシャルボンドの評価に携わっておる立場から少しだけお話ししたいと思います。
ソーシャルボンドに関する社会的内容なもの、ソーシャルプロジェクトとして推薦する意義というところですけれども、多様な社会的な課題というのは非常に多く存在するということを考えますと、グリーンボンドだけではカバーできない世界、領域というのは必ずあるということで、非常に有力なものと考えています。
ただ、どうしても特定とする人々が、やや途上国に寄っている部分もありますので、なかなか民間会社としては対応しにくい部分があるのかなというのは思っているところです。
これから例示等もつくっていくことになると思いますけれども、いろいろ手を広げるのもいいですが、一方で、あまり限定的になるというのもよくないのかなというふうには思っているというところです。
やはり、先進国あるいは我が国における社会的課題というのがそれなりに多く存在しておりまして、高齢化ですとか社会的な格差、地域振興とかコロナの問題、いろいろあるとは存じますが、あるいはちょっと思っている点としては、文化の保護とか推進とか、こういった点も先進国的な課題としてはあるのかなというふうには思っているところです。対象とする人々、ここで少し議論があるところではあると思うのですけれども、まず、一般の人々を対象とした場合、ポイントとしては、便益を受ける人々に対して差別をしないことがひとつ大事な条件かなと思っているということです。
それから、特に一般大衆というふうになってしまうと少しぼやけてしまう部分があるので、具体的な課題というものをやはり明確化すること。それから、発行体のESG等の戦略において非常に重要な要素を占めているというところ、この辺がひとつ大きなポイントかなと。やっぱりウォッシュと言われないようにするためには、まずこの社会的な課題というものを極めて明確化していく必要があるのかなというふうには思っているというところでございます。
以上です。
【北川座長】
ありがとうございました。それでは、森澤様、お願いいたします。
【森澤委員】
ありがとうございます。PRIの森澤でございます。よろしくお願いいたします。
今回、金融庁がソーシャルボンドガイドライン策定を手がけられますこと、すばらしいと思います。ESG投資を世界で後押ししておりますPRIは、株式が先行しておりましたが、債券につきましても取組を進めております。
また、ESGの分野で考えますと、Gに続きましてEが進んできた中で、EとSが独立しているものだけでなく双方が重なっていることは多くあります。ジャストトランジションにつきましても御発言がございましたが、これは理にかなった移行というような訳を私のほうは使わせていただいておりますが、脱炭素に向かって移行を促進するもので、従業員や地域が取り残されないようにという検討をするもので、EとS双方の観点から移行促進するものです。
Sについての取組で伺うことが多くなっておりまして、PRIとしましては、人権、ダイバーシティー、ディーセントワークが検討されております。また、SDGsの取組もされております。
ここまでは少しPRIの立場としてお話しさせていただきましたが、ここからは私の個人の意見としてお話しさせていただきます。
今回日本が先行しておりますことはすばらしいと思います。また、ICMAとの整合性が取れていることは必要と思います。先ほども申し上げましたとおりにEとSが重なっているという分野がありますので、ソーシャルボンドの範囲がグリーンボンドと重なることだということかと思います。
途上国と先進国のお話がございましたが、日本企業に即した考え方から進めることで、途上国をはじめ世界で使用できるプロジェクトも多いと思います。
個別の例を、時間も大分迫っておりますので少し加えさせていただきますと、例えば地下水の活用があるかと思います。これは持続可能な取水ということを考えましたら、食糧の安全保障と持続可能な食糧システムというICMAの出していらっしゃるソーシャルボンドのガイドラインが入ってまいります。
これは、日本はほかの他国に比べましては、水はまだ恵まれているほうですが、その日本におきましても、この水をどのように使っていくかということを考えていかないといけない。これは途上国だけでなく、先進国におきましても活用可能と思います。
ここの部分もグリーンボンドとかなり重なるところもあるかと思いますけれども、これは国土強靭化であったり河川であったり森林保全、涵養林というところへもつながってきますし、効果のはかり方ということは、やはり難しいところにはなるかと思います。効用がたくさんあるということで、はかり方は難しいのかとは思います。
また、高齢化が進む日本でございますけれども、地方におきましては、公共交通が少なく、外出がし難い状況でいらっしゃるわけですけれども、そこを考えて新たな交通手段構築はインフラ整備ともいえます。また、高齢化とはかけ離れている途上国におきましても、そういうような公共交通手段は需要があるかと思います。
ヘルスにつきましても様々な取組が必要かと思いますし、このようなソーシャルボンドの考え方が進んでいきますこと、例が進んでいきますことを望んでおります。
時間も押していますので、この辺りにさせていただきます。ありがとうございます。
【北川座長】
ありがとうございました。
森澤さん、音声が時々途切れましたので、議事録の作成の段階では、ちょっと御発言をこちらから確認させていただきますので、よろしくお願いいたします。
【礒根委員】
すみません。最後、発言していないので発行体として、ANAホールディングスから少しだけ発言してよろしいでしょうか。
【北川座長】
礒根さん、お願いいたします。
【礒根委員】
大体いろいろと議論されているので、あまり重複することは言わないほうがいいと思うんですけど、発行体として思うところを正直に、ちょっと感想めいたところですけれども、御紹介させていただければと思います。
グリーンプロジェクトに比べて、どうしてもソーシャルプロジェクトというのは、民間企業から見ると、何がソーシャルプロジェクトに該当するかどうかというのは、特定、非常に難しいというのが入り口としてあります。実際にICMAのソーシャルボンド原則の事業区分なりその対象となる人々を見たときに、これで何がこれに該当するかというのが悩んだのが正直なところでして、あと、実際我々、ユニバーサルサービスということで、障害がある方に対してバリアフリーなサービスをいかにつくるかということだけを資金使途にしたんですけれども、対象として、やっていて当たり前という指摘を受けるんじゃないかというような意識もありますので、そういう意味では、民間の事業としてソーシャルプロジェクトとして言っていいものなのかどうかと悩む方が多いんじゃないかと思います。
そういった意味では、今回議論されていてあれですけれど、前は日本の政府の政策もからめてSDGsアクションプラン等を参考にして、具体的なその資金使途の事例を出すということが、そういった民間企業の心理的ハードルを下げるんだろうなということも思いますので、非常にいい取組だと思っております。
あとは、発行体としてのメリットなんですけれども、基本的にそのESGに対する取組を金融市場を通じてアピールできるということで、IR的な効果は非常に高いと思うのですけれども、経済的メリットは実はあまりなくて、ソーシャルだからとかグリーンだからとかいうことで、金利がその分低くなるとかそういうことは、先ほど投資家さんからの御意見でもありましたとおり、ない部分だったりとか、あとは、外部レビューをすると、どうしてもそこにまた追加の費用等もかかりますので、グリーンボンドのように補助金等があると、非常に発行体としては助かるのかなというふうには思っております。
あとは、ソーシャルということですので、公的な機関でないところが取り込もうとすると、民間ですとどうしても特定の業種に偏りがちなのかなと。原則等を見てもそうなんですけど、食品だったりとか医療だったり、通信とか自動運転関係も含めて、関係する業種で見ると非常に少なくなってくるのかなと思うんですけど、マーケット自体を広げるためには、そうでないところも含めて、広く可能性を広げたほうがいいのかなと。
ただ、まとまった資金使途が、資金使途として金額がなかなかまとまらないということもあると思いますので、結果的にはサステナビリティボンドという形で、社債の中に一部ソーシャル性のものがあるということで広がったことでも、ソーシャルで広がったとみなしていいんじゃないかなというふうには思っております。
すみません。簡単ですが、以上です。
【北川座長】
ありがとうございました。
一渡り行き渡りましたけども、竹林さん、御発言求めていらっしゃいましたが、いかがでございましょうか。
【竹林委員】
竹林です。度々ありがとうございます。
総論の方向性についてはあらかた出尽くしたところかなと思いますので、各論として挙げていただいている論点を、具体的にガイドラインにどのように落とし込んでいただきたいかという点にコメントさせていただきます。
まず、ソーシャルプロジェクトの事業区分とターゲットポピュレーションというところをどういうふうに検討していくかという点ですが、この事業区分とターゲットポピュレーションは一体的に検討する必要があるという点をガイドラインの中では強調していただきたいと考えます。
つまり、事業区分はどれがいいか、ターゲットポピュレーションは誰に設定しよう、というように個別に検討するものではないということです。個人的にはソーシャルにおいては事業区分よりもむしろこのターゲットポピュレーションの設定のほうが重要だとは思っていますけれども、資金使途からのプロジェクトがたとえ事業区分のいずれかに属しているものであったとしても、誰への裨益かというところをきちんと念頭に置いてフレームが設定されていないと、先ほどもお話ありましたが、追加的なインパクトの創出という点で説得力がないものになってしまいます。つまりソーシャルボンドと名のることができたとしても、ESGを標榜する投資家の目から見れば、投資対象として優先度が低くなってしまうということがありますので、ここは一体的にやる必要があるという点、強調させていただきたいというふうに思います。
あと、一般大衆の件ですよね。これをターゲットとして設定し得るケースとして、大きくは、途上国でのプロジェクトに見られるような、ある特定のコミュニティー全体が社会的困難に直面しているケース、または、COVID-19や震災対応プロジェクトに見られるような、緊急での資金投入が求められる中で、対象を絞る手続にコストをかけるよりも、ある程度のロスを許容しつつも面的支援の早期実現を優先したほうがいいケースなどはあると思います。
つまり何が言いたいかというと、どういった社会コンテクストにおいて、どういう事業を実施する場合であれば、一般大衆をターゲット、ポピュレーションとしたアプローチが許容し得るかというところを事例として示していくというところは可能だと思いますので、それこそがガイドラインというものを策定する意義の一つなのではないかなというふうに言えると思います。
最後に、課題先進国とも言われる我が国の社会課題という、強調された文言のところですけれども、日本の社会課題を掘り下げて検討することの意義についてはもちろん賛同するところではあるんですけれども、一方で、日本の発行体が発行するボンドであったとしても、企業のグローバル化進んでおりますし、事業をささえるサプライチェーンもグローバル化していく中で、ソーシャルプロジェクトは必ず日本国内に限定されるものと想定するのはちょっと現実的ではないというところもあります。
仮にボンドの資金使途となるソーシャルプロジェクトの実施対象地域が多国籍にわたるようなものになった場合ですと、日本と日本以外のコミュニティーでの事業内容にダブルスタンダードみたいなものが仮に生じてしまったりすると、これはこれで事業推進者、つまり発行体様のほうに批判の目が向けられるということも可能性としてございます。これはターゲットポビュレーションの議論と全く一緒になるんですけども、日本の基準がどうあるべきかという議論ではなくて、こういう社会コンテクストにおいてはこういう事業というようにある程度普遍化された議論に持っていくという形のほうがよいのかなというふうに思っております。
すみません。以上でございます。ありがとうございました。
【北川座長】
ありがとうございます。
大分時間も押していますけども、オブザーバーの方の中から、国際銀行協会様からちょっとコメントいただければと思います。よろしゅうございますか。
【平山オブザーバー】
ありがとうございます。国際銀行協会、平山と申します。
国際銀行協会は53の外資系銀行、証券会社から構成される一般社団法人でございまして、先週、15社ほどで本件について議論させていただきました。
本日多数の御発言ありましたけれども、手前どもは、本検討会議で策定されるガイドラインが国際的整合性に配慮されたものであることを希望しております。もちろん日本での実情を考慮することは大事ではありますが、日本の発行体が国際的整合性を持ったものをソーシャルボンドで発行すれば海外でも売りやすくなるといった面もありますし、また、日本での実績が積み上がることが、世界に対して日本におけるSDGsへの取組を情報発信できるいい機会になると思います。そういった点から、国際的整合性、ぜひ御配慮いただければと思っております。
以上です。ありがとうございます。
【北川座長】
ありがとうございました。まだ御意見ある方もいらっしゃると思いますけども、既に定刻になりましたので、討議はここで終わらせていただきます。
本日時間の関係で御発言いただけなかった御意見につきましては、事務局のほうにお寄せいただければと思います。本日の議論を踏まえまして、次回以降さらに議論を深めていきたいと思います。本日は非常に多様な、しかも深い議論をしていただきまして、ありがとうございました。
それでは最後に、事務局のほうから御連絡等がございましたらお願いいたします。
【太田原市場課長】
本日は貴重な御意見を多数、どうもありがとうございました。
次回以降の検討会議の日程でございますが、皆様方の御都合を踏まえた上で、事務局より別途、また御案内させていただければと思います。
事務局からは以上でございます。
【北川座長】
どうもありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。ありがとうございました。
―― 了 ――
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