第51回金融審議会総会・第39回金融分科会合同会合議事録
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1.日時:
令和5年3月2日(木曜)15時00分~16時30分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第1特別会議室 及び オンライン形式
○若原総務課長
それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第51回金融審議会総会及び第39回の金融分科会の合同会合を開催いたします。
本日は、皆様、御多用のところ御参集頂きまして、誠にありがとうございます。また、金融審議会委員への御就任をお引き受けくださいましたことにつきまして、改めて御礼申し上げます。
本日の総会は、オンライン会議と実際にいらっしゃった先生方との併用した開催といたしまして、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせて頂いておりますので、よろしくお願いいたします。
この後、審議会長の選任がございますが、それまでの間は私、事務局のほうで議事進行を務めさせて頂きます。どうぞよろしくお願いいたします。
会議を始める前に、留意事項につきまして事務的に御連絡申し上げます。発言を御希望される際には、いらっしゃっている方々におかれましては挙手を頂きまして、また、オンラインで参加されている先生方におかれましては、オンライン会議システムのチャット上にて、全員宛てでお名前を御入力ください。そちらを確認いたしまして、私のほうから指名をさせて頂きますので、御自身のお名前を名乗って頂いた上で、御発言頂ければと存じます。
それでは、議事を進めさせて頂きます。まず、本日の総会は、本年1月25日付での委員の改選の後、初めての会合でございます。総会委員の皆様の名簿につきましては、事前に資料を送付しておりますので、適宜御参照ください。なお、本日、河村委員、渡辺委員は御欠席と承っております。また、翁委員は15時半頃からの御出席と承っております。
それでは、まず、先日の委員改選にて、これまでお務め頂いた方の再任ではなくて、新しく御就任頂いた委員の皆様より一言ずつ御挨拶を頂戴したいと思っております。五十音順ということで、まずは加藤委員からお願いいたします。
○加藤委員
東京大学の加藤といいます。会社法、金融法を研究しております。よろしくお願いいたします。
○若原総務課長
ありがとうございます。続きまして、北尾委員、お願いいたします。
○北尾委員
東京大学の北尾です。マクロ経済学ですけれども、ミクロデータを使ったような経済研究を行っております。よろしくお願いいたします。
○若原総務課長
ありがとうございます。続きまして、星委員、お願いいたします。
○星委員
同じく東京大学の星岳雄です。私も経済学者で、マクロ経済学、金融、コーポレートガバナンス、そういったところを研究しております。よろしくお願いします。
○若原総務課長
ありがとうございました。すみません、先ほど翁委員、遅れてと申し上げましたけれども、既に御出席頂いています。失礼いたしました。お詫びいたします。
○翁委員
よろしくお願いします。
○若原総務課長
では、続きまして、金融審議会会長及び金融分科会会長をお決め頂きたいと思っております。金融審議会令第4条第1項及び第5条第3項の規定によりまして、委員の互選により選任することとされておりますので、委員の皆様の御意見を伺いたいと思います。いかがでしょうか。
それでは、山本委員、お願いいたします。
○山本(和)委員
私は、これまでの金融審議会における御経験や、金融分野における御見識を踏まえて、神田委員を会長及び分科会長に御推薦申し上げたいと思います。
○若原総務課長
ありがとうございます。では、続きまして、星委員、お願いいたします。
○星委員
今の山本委員の発言に全く賛成で、僕も神田委員にお願いしたいと思います。
○若原総務課長
ありがとうございます。では、続きまして、川口委員、お願いいたします。
○川口委員
私も同意見でございます。よろしくお願いいたします。
○若原総務課長
ありがとうございます。ほかに御発言ございますでしょうか。松井委員、お願いいたします。
○松井委員
私も全く同意見でございます。
○若原総務課長
それでは、金融審議会会長及び金融分科会会長には神田委員に御就任頂くということで、皆様、よろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○若原総務課長
それでは、御異論はないようでございますので、神田委員の御承諾をもちまして、金融審議会会長及び金融分科会長への御就任をお願いいたしたいと思います。神田委員、いかがでございましょうか。
○神田委員
選んで頂きましたので、謹んでお引き受けしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○若原総務課長
ありがとうございます。それでは、神田委員に会長及び分科会長をお願いするということございまして、この後の議事進行は新会長にお願いしたいと存じます。
○神田会長
それでは、進行を務めさせて頂きます、神田でございます。本日でございますが、鈴木政務官に御出席を頂いておりますので、御挨拶を頂きます。
それでは、鈴木政務官、よろしくお願いいたします。
○鈴木政務官
金融担当の大臣政務官を務めております鈴木英敬でございます。神田会長はじめ、委員の皆様には新任、再任を含めまして御快諾を頂き、また、大変お忙しいところ、御参加を頂きまして心から感謝申し上げたいと思います。
開会に当たりまして、一言、御挨拶を申し上げたいと思います。岸田政権は、昨年11月、NISAの抜本的拡充や恒久化等を盛り込んだ資産所得倍増プランを策定いたしました。資産所得倍増プランに盛り込まれた施策を総動員することで、家計の資金が日本企業の成長投資の原資となり、持続的な企業価値向上の恩恵が、金融資産所得の拡大という形で家計にも及ぶという、「成長と資産所得の好循環」を実現してまいります。
こうした好循環を実現していく上では、審議会でも御議論頂きましたとおり、顧客本位の業務運営の確保と金融リテラシーの向上が何より重要であります。御議論を踏まえ、顧客本位の業務運営の確保につきましては、顧客の最善の利益を図るべきであることを広く金融事業者及び企業年金関係者なども含む、幅広い主体一般に共通する義務とすることなどにより、顧客本位の業務運営の取組みの定着、底上げや横断化を図ってまいります。
金融リテラシーの向上につきましても、より広く国民の皆様に金融経済教育が提供され、個々人のライフプランに応じた適切な金融サービスの利用につながっていくよう、取組みを進めてまいります。
また、政府は、同じく昨年11月にスタートアップ育成5か年計画を策定いたしました。金融庁といたしましても、金融機関が企業の事業性に着目した融資に取り組みやすくするための新たな担保権の検討など、スタートアップ企業への成長資金の供給に向けた取組みを進めてまいります。
昨年9月以降、金融審議会の各ワーキング・グループ及びタスクフォースにおきましては、これらの課題について幅広い観点から御検討を頂きました。本日、総会で御審議頂いた上で、それぞれの報告を頂くことになります。委員の皆様の御尽力に改めて感謝申し上げるとともに、私どもとしましては各報告をしっかりと受け止め、必要な対応を行ってまいります。
くわえて、近時のパッシブ投資の増加や非友好的な買収事例の増加などの市場環境の変化に伴い、公開買付制度・大量保有報告制度等についても課題が指摘をされております。こうした指摘を踏まえまして、市場の透明性・公正性を確保するとともに、企業の持続的な成長と、中長期的な企業価値の向上に向けて、企業と投資家との間の建設的な対話を促進する観点より、公開買付制度・大量保有報告制度等のあり方について検討して頂きたいと考えております。
本件に関しましては、鈴木俊一金融担当大臣より諮問をさせて頂き、委員の皆様には、適切な資本市場のあり方や、その実現のために必要な施策について、幅広い観点から御審議をお願いしたいと思います。
それでは、ここで諮問文を読み上げさせて頂きます。
2023年3月2日
金融審議会
会長 神田秀樹 殿金融担当大臣 鈴木俊一
金融庁設置法第7条第1項第1号により下記のとおり諮問する。
記
○ 公開買付制度・大量保有報告制度等のあり方に関する検討
近時の資本市場における環境変化を踏まえ、市場の透明性・公正性の確保や、企業と投資家との間の建設的な対話の促進等の観点から、公開買付制度・大量保有報告制度等のあり方について検討を行うこと。
以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○神田会長
どうもありがとうございました。なお、鈴木政務官は他の公務のため、ここで御退席と伺っております。政務官、どうもありがとうございました。
○鈴木政務官
ありがとうございました。どうぞよろしくお願いします。
(鈴木政務官退室)
○神田会長
それでは、議事を進めたいと思います。会長を拝命させて頂くに当たって、一言だけ申し上げさせて頂きます。皆様方、御存じのように、金融をめぐる環境の変化は、今世紀に入って二十数年経ちますけれども、ものすごいスピードになっています。技術革新もすごいスピードの中で、金融制度自体も細かな点、基本的な点、いろいろと議論が、日本だけではなくて、世界中で行われているわけです。
この金融審議会におきましても、これまで精力的な御議論をいろいろな分野で行って頂きまして、必要な制度の改正をしたり、あるいは、いろいろな提言に基づく実務の進展を後押ししたりということをしてきたわけですけれども、引き続き、皆様方におかれましては、金融制度を巡る諸々の問題について、活発な御議論を頂ければありがたいと存じます。
よい議論をして頂けるように進行を努めたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
以上、簡単ですが、御挨拶とさせて頂きまして、本日の議事に入らせて頂きます。
まず、議事運営についてでございますが、今後とも、金融審議会議事規則及び金融分科会議事規則に則って執り行ってまいりたいと思います。なお、会議ですが、原則として公開とさせて頂きますので、御承知頂ければと思います。議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開をさせて頂く予定ですので、よろしくお願いいたします。
また、私が、万が一、会議に出席できないような場合の会長代理及び分科会長代理につきましては、大変恐縮ですが、私に御一任を頂き、その都度、御指名をさせて頂きたいと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○神田会長
どうもありがとうございます。
それで、次に、各部会の部会長は会長が指名することになっておりますけれども、自動車損害賠償責任保険制度部会というものと、公認会計士制度部会というものがございます。これらの部会長につきましては、特に御異論がなければ、私自身が務めさせて頂きたいと考えております。そのようにさせて頂いてもよろしゅうございますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○神田会長
どうもありがとうございます。
それでは、本日の議事の流れについて、簡単に御案内させて頂きます。まず、先ほど大臣から頂きました諮問事項について、事務局から補足説明をして頂きます。続きまして、各ワーキング・グループ等の報告書について御説明をして頂きます。具体的には、「ディスクロージャーワーキング・グループ」の報告、「市場制度ワーキング・グループ」の第二次中間整理、そして、「顧客本位タスクフォース」の中間報告、そして、「事業性に着目した融資率を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」の報告、これらについての説明がございます。
全て終わった後で、全体について委員の皆様方に討議をお願いしたいと思います。
それでは、まず、先ほど大臣から諮問を頂きました、公開買付制度・大量保有報告制度等のあり方に関する検討につきまして、廣川企業開示課長から御説明を頂きます。よろしくお願いいたします。
○廣川企業開示課長
ありがとうございます。企画市場局の企業開示課長、廣川でございます。本日もよろしくお願いいたします。
それでは、早速ですけれども、先ほど諮問が行われました、公開買付制度・大量保有報告制度等のあり方に関する検討について、お手元の資料1に沿って簡単に御説明をさせて頂きたいと存じます。
内容に入ります前に、昨日来、一部報道におきまして、金融庁が特定の方針を既に決めている、あるいは特定の結論の方向性を既に持っているかのような報道、または、本日開催されます金融審議会で見直し案を示すといったような報道も見られましたけれども、そういうことではございません。
金融庁といたしましては、様々御指摘を頂いている課題について、方向性について何ら予断を持つことなく、是非も含めて幅広い観点から御議論を頂きたいと考えておりますことを、あらかじめ申し上げさせて頂きたいと存じます。
それでは、内容に入らせて頂きます。表紙をめくって、1ページを御覧ください。公開買付制度・大量保有報告制度に関する主な導入・改正の経緯ということで、これまでの制度の変遷を簡単に振り返ってまいりたいと存じます。日本の公開買付制度は1971年に、大量保有報告制度は1990年にそれぞれ導入され、その後の市場環境の変化等を踏まえて、改正されてきました。
まず、1971年、証券取引法改正で、米国の制度等を参考に公開買付制度が導入されました。当時は、10%以上の株券等を所有することとなる公開買付け、具体的には不特定、かつ多数の者に対する市場外での買付勧誘を行う場合に、公開買付届出書の提出等が必要とされました。
その後、公開買付制度については、1990年改正において、今申し上げた10%基準が5%基準に見直されるとともに、英国の制度等を参考に3分の1超の株券等を取得する場合には、少数の者からの買付けであっても公開買付けによらなければならないとする、いわゆる3分の1ルールが導入されました。ただし、この3分の1ルールについては、当時は市場外取引のみを適用対象としたほか、全部買付義務を課さないなど、英国の制度等を一部採用しないものとなっておりました。
同じく、1990年改正におきまして、米国の制度等を参考に、株券等の保有割合が5%超となった場合等において、大量保有者に対して報告を義務づける大量保有報告制度が導入されました。
その後、公開買付制度については、2005年改正で3分の1ルールの適用対象に、立会外の市場内取引、例えば東京証券取引所で言いますと、ToSTNeT取引、こういったものを含めることとしたほか、2006年改正、この年は証券取引法が金融商品取引法に改正された年でもありますけれども、この2006年におきまして、株券等所有割合が3分の2以上となる公開買付けについて、全部買付義務を課すなどの改正が行われてございます。
また、大量保有報告制度においては、日常の営業活動等において、反復継続的に株券等の売買を行っている金融商品取引業者等について、報告頻度を緩和する特例報告制度の適用範囲を明確化するとともに、EDINETによる提出義務化などが定められました。両制度につきましては、この2006年の改正以降、この15年超の間に大きな改正はなされてございません。
次に、2ページを御覧ください。このように、長年、制度の大きな改正が行われずに来た中で、近時の市場環境の変化に伴いまして、公開買付制度・大量保有報告制度につきましては、様々な課題が指摘されてございます。
例えば公開買付制度につきましては、市場内取引等を通じた非友好的買収事例の増加や、M&Aの多様化といった環境変化を受けまして、右側ですけれども、公開買付規制の適用範囲、例えば市場内取引の取扱いですとか、閾値等の見直しといった御指摘、あるいは、公開買付の強圧性を解消・低減させるための方策、さらには、その他、公開買付規制の柔軟化が必要と、こういったような御指摘を頂いているところでございます。
また、左下のほうへまいりまして、環境変化といたしましては、パッシブ投資の増加、それから協働エンゲージメント。協働エンゲージメントと申しますのは、例えば、気候変動等のテーマについて、機関投資家が協働して特定の企業との間で対話の場を設けると、こういうエンゲージメントですけれども、こうした協働エンゲージメントの広がりが見られる。
あるいは、企業と投資家の建設的な対話、エンゲージメントの重要性の高まりと、こういったことが言われております。
それから、ここには書いてございませんけれども、近年、デリバティブ取引の活用も大分進んできているということでございます。こういった環境変化を受けまして、大量保有報告制度につきましては、右側にまいりますけれども、先ほど少し申し上げました特例報告制度、こちらについて適用要件の明確化が必要ではないかといった御指摘。
あるいは、その下ですけれども、共同保有者、こちらにつきましては定義を御説明申し上げたほうがいいかと思います。共同保有者というのは、共同して株券等を取得し、または譲渡することを合意している者、あるいは共同して株主としての議決権、その他の権利を行使することを合意している者等でありますけれども、こういった共同保有者は合算して報告が求められております。この共同保有者の範囲を明確化する必要があるのではないか、こういった御指摘。
さらには、一番下ですけれども、現金で決済するタイプの現金決済型エクイティ・デリバティブ取引の取扱いの明確化をする必要があるのではないか。こういったような御指摘がなされてございます。
また、一番右下になりますけれども、実質株主、すなわち実質的に運用を判断したりですとか、議決権行使を決定したりしている者、こういう実質株主の透明性を図るための方策の必要性といったところも、御指摘を頂いているところでございます。
金融審議会におきましては、公開買付制度・大量保有報告制度及び実質株主の透明性につきまして、今申し上げた課題などについて御議論を頂きたいと考えてございます。もちろん、今右側に書かせて頂いたのは、あくまでも主なものの例示でございまして、これらのテーマに関連するその他の課題についても、様々御意見を頂戴しながら御議論を頂くというものであると考えてございます。
簡単ですけれども、私からは以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、昨年12月27日に公表されました「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告について、私がそのワーキング・グループの座長を務めておりましたので、私から説明をさせて頂きます。
主なポイントを御報告させて頂きます。お手元の資料番号で言いますと、資料2-1が報告の概要、資料2-2が報告の本体、資料2-3がロードマップということになります。
「ディスクロージャーワーキング・グループ」では、資料2-1の1ページ目にありますとおり、四半期開示とサステナビリティ開示について、昨年の10月から4回にわたって審議を行って頂きました。12月に報告を取りまとめました。
まず第1点目の四半期開示についてですけれども、金融商品取引法上の開示義務は廃止することとし、取引所の規則に基づく四半期決算短信へ「一本化」するという方向での具体案を取りまとめました。
四半期開示の見直しにつきましては、幾つかの提言を頂いておりますが、この報告の中では第1に、当面は四半期決算短信を一律義務づけることとして、その任意化について継続的に検討する。第2に、開示内容につきましては、投資家からの要望が特に強い情報を追加する。第3に、監査人によるレビューについては、原則任意とする。第4に、虚偽記載に対しては、取引所のエンフォースメントをより適切に実施する。第5に、半期報告書について、上場企業は現行の第2四半期報告書と同程度の記載内容、及び監査人のレビューを求め、提出期限は決算後45日以内とし、非上場企業も上場企業と同じ枠組みを選択可能にするなどの提言がされました。
以上のほか、半期報告書及び臨時報告書の公衆縦覧期間の延長なども提言されています。
続きまして、2ページ目になるのですけれども、第2点目、すなわちサステナビリティ開示についても審議を行いまして、SSBJや、今後策定される開示基準を法令上の枠組みの中で位置づけていくことが提言されました。
また、サステナビリティ開示基準、開示内容に対する第三者による保証といった、今後の検討課題も議論されましたほか、資料2-3ですけれども、我が国におけるロードマップについても示されています。
簡単でございますが、以上が「ディスクロージャーワーキング・グループ」に関する御報告ということになります。
続きまして、昨年12月21日に公表されました、「市場制度ワーキング・グループ」の第二次中間整理でございます。こちらも、私が座長を務めさせて頂きましたので、私から説明をさせて頂きます。
こちらは、お手元でいいますと資料3ということになります。「市場制度ワーキング・グループ」でございますが、昨年6月に中間整理を取りまとめております。そこで「成長と分配の好循環」の実現に向けた対応策をお示しし、引き続き、残された課題の検討を進めていくということに当時されました。その後、秋から再び審議を行いまして、12月に第二次中間整理を取りまとめました。
第二次中間整理におきましては、「成長と分配の好循環」の実現に向けた具体的な施策について、3つの観点から方向性や課題を整理しています。第1点目、市場インフラの機能強化であります。これについては、取引所とPTSにおいて、利用者保護を前提として、その多様なニーズに応えるべく、市場間で競争が行われ、市場システム全体の機能強化が図られるよう取組みを行っていくことが重要です。
こうした問題意識を踏まえ、具体的な事項に関する施策を盛り込んでおります。第1に、PTSのオークション方式に係る売買高上限の緩和と、取引の公正性や価格の透明性の確保を図る制度整備です。第2に、PTS取引の中で取引所の立会外取引に類似する取引について、TOBの公開買付規制ですけれども、5%ルールの適用除外とすること。そして、第3に、取引所とPTSのティック・サイズの適切な設定、そして第4に、投資単位の大きい上場会社株式の投資単位の引下げの促進、こういった事柄等について施策を盛り込んでおります。
2点目になりますが、スタートアップ企業等への円滑な資金供給についてということになります。我が国全体として、ベンチャー投資に携わる者の能力向上を図るとともに、利用者保護を確保し、スタートアップ企業に向けたプライマリー、セカンダリー、双方での投資の活性化を促していくことが重要です。
そうした問題意識に立ちまして、これまた具体的に幾つかそこに挙がっていますけれども、次のことを盛り込んでおります。第1に、特定投資家による非上場株式の取引活性化、第2に、公正価値評価を促進するための環境整備、第3に、IPOに必要な期間の短縮に向けた株式の振替制度の整備、そして第4に、いわゆるダイレクトリスティングの利用の円滑化等の事項に関する施策、を盛り込んでいます。
3点目ですけれども、その他の環境整備ということになります。デジタル化の進展等により、既存のビジネスの垣根を超えた変化が生じているということを踏まえまして、金融・資本市場に関連する制度についても、見直しを進めていく必要があるということになります。
こうした問題意識を踏まえまして、第1に、トークン化された不動産特定共同事業契約に対する金融商品取引法における販売・勧誘規制等を適用、第2に、金融商品取引業者の営業所に掲示する標識について、インターネットで同内容の情報公表を義務づけるなどといった事項に関する施策を盛り込んでいます。
この第二次中間整理についてですけれども、ここで具体的な対応策を示した事項につきましては順次実施し、その他の事項につきまして、さらに引き続き検討を進めることとしております。
以上が「市場制度ワーキング・グループ」第二次中間整理の主な内容の御報告ということになります。
続きまして、昨年12月9日に公表されました、「顧客本位タスクフォース」の中間報告についてであります。同タスクフォースの座長をお務め頂いております神作先生が、今日御都合がつかないということでございますので、島崎市場課長から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○島崎市場課長
市場課長の島崎でございます。よろしくお願いいたします。「顧客本位タスクフォース」におきましては、2022年9月から5回にわたって審議を頂きまして、12月にその内容を中間報告としてお取りまとめ頂いております。この概要は資料4-1にございます。中間報告本文は、資料4-2にございます。
資料4-1にありますとおり、この中間報告におきましては、家計の安定的な資産形成、経済成長の成果の家計への還元促進に向けた諸施策について御議論頂きました。こちらの資料4-1にございますとおり、主にインベストメント・チェーン全体における顧客等の最善の利益を考えた業務運営の確保、顧客への情報提供・アドバイス、資産運用業の高度化、金融リテラシーの向上の4つの観点におきまして、幅広い施策が必要であるとされております。
以下、それぞれの柱の内容について申し上げます。まず、インベストメント・チェーン全体における顧客等の最善の利益を考えた業務運営の確保につきましては、顧客等の最善の利益を図るべきであることを、金融事業者及び企業年金関係者なども含む、資産形成を支える幅広い主体一般に共通する義務として法律に定めるなどにより、顧客本位の業務運営の定着・底上げや、横断化を進めることとされております。
顧客への情報提供・アドバイスにつきましては、顧客の立場に立ったアドバイザーの見える化などを通じた、良質なアドバイスがより広く提供されるための環境整備や、顧客属性に応じた説明義務を法律に定め、情報提供におけるデジタル技術の活用、利益相反の可能性や手数料等についての顧客への情報提供のルール化、そして、組成者が組成に係る費用等を販売会社に情報提供するための体制整備等の施策が盛り込まれております。
資産運用業の高度化でございます。資産運用会社のガバナンスや独立性の確保、顧客の最善の利益に適った商品組成等を確保するためのプロダクトガバナンスの実践、組成会社・販売会社それぞれの役割の明確化を実現するために必要な、「顧客本位の業務運営の原則」の見直しあるいはルール化等を引き続き検討することとされております。
金融リテラシーの向上につきましては、それぞれの個人が主体的に金融商品・サービスを選択し、安定的な資産形成を行えるよう、生活設計や家計管理、社会保障・税制等も含む広範な金融リテラシーの向上に向けて、まず政府において基本的な方針を策定して、リテラシー向上に向けた取組みを含みます、資産形成支援に関連する施策を、関係省庁や、地方自治体・民間団体等と連携して、国全体として総合的・計画的に推進するとともに、中立的な立場から金融経済教育を推進するための常設の組織を構築し、広く金融経済教育を受ける機会を提供すべきであるとされております。
こうした中間報告において具体的な対応策を示した事項につきましては順次実施し、その他の事項については、引き続き「顧客本位タスクフォース」において検討を進めることとして頂いております。
以上、「顧客本位タスクフォース」中間報告について、私のほうから主な内容の御報告をさせて頂きました。どうもありがとうございました。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、今年の2月10日に公表されました「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」報告についてであります。このワーキング・グループも、御縁があって、私が座長を務めさせて頂いておりますので、私から御説明をさせて頂きます。
主なポイントを御報告させて頂きます。このワーキング・グループですが、昨年の9月に、事業性に着目した融資を促進するための制度や実務のあり方に関する検討について、金融担当大臣から諮問を頂きました。そして、それに基づき、昨年の11月から7回にわたって審議を行い、本年2月に報告を取りまとめているという次第でございます。
資料5-1を御覧頂ければと思います。現行の担保権には、その対象が土地や工場等の有形資産が中心となっていまして、こうした資産を持たないスタートアップ等の資金調達の支障となっているなどの課題があることが指摘されております。
このような状況を踏まえまして、このワーキング・グループの報告におきましては、まず、そこに書いてあるとおりですけれども、金融機関が不動産担保や経営者保証に過度に依存せず、企業の事業性に着目した融資に取り組みやすくなるということ。
そして、事業者のほうですけれども、無形資産を含む事業全体を担保に成長資金等を調達しやすくなる、こういう環境を実現するために、新たな担保権として事業成長担保権の創設を提言しています。
次のページを御覧頂きますと、ページの左上、青い箱の中ですけれども、事業成長担保権の利用が期待されるケースとしてスタートアップ等を想定しています。次に、この事業成長担保権の制度の概要については、左下になりますけれども、まず担保目的財産につきましては、会社の総財産とする。実行手続ですけれども、その公正性を確保するために、裁判所が管財人を選任する。そして、換価の際は、原則としてスポンサーに承継させる。そして、労働者や商取引先には、与信者等よりも優先して弁済することとしております。
また、右側、ページ全体でいうと、右下になりますが、事業成長担保権の設定につきましては信託契約によることとし、その設定時には、信託会社が設定企業に対し、制度の概要や与信者の属性等を説明することによって、濫用を防止する。その一方で、制度利用を促進する観点から、簡素な信託業を新設する、こういうことを提言しております。
簡単でございますけれども、以上が、「事業性に着目した融資実務を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」の報告についての御説明ということになります。
以上で、御説明を終わりまして、今日は残りの時間、皆様方に討議をお願いしたいと思います。
先ほど、大臣から頂きました諮問事項、それについての補足説明を事務局にして頂きましたので、その補足説明、それから、各ワーキング・グループやタスクフォースの報告等につきまして、どの点でも結構でございますので、御質問や御意見等ございましたら、どなたからでもお出し頂ければありがたく存じます。
いつものようにというか、初めての方もいらっしゃいますが、恐縮ですけれども、チャット欄に全員宛てに発言希望と1行入れて頂きますと、私のほうで確認をして、御指名をさせて頂きます。
なお、御発言に当たりましては、念のためお名前を一言言って頂いた上で御発言頂ければ、ありがたく存じます。チャット欄が使いにくいという場合には、適宜の方法でお知らせ頂くということでも大丈夫かと思います。
それでは、どなたからでもお願いしたいと思うのですけれども、今日、あらかじめ途中での退席ということでお伺いしている方が、加藤委員と思いますけれども、もし加藤委員、御発言があれば先に承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤委員
それでは、発言させて頂きます。申し訳ございません、新参者ですが、一番最初に発言させて頂きます。
2点ございます。1点目は、公開買付制度と大量保有報告制度の改正についてです。大きな改正が2006年を最後に行われていないということもありますし、2006年以降、特に上場会社のコーポレートガバナンスについては様々な制度整備がされております。公開買付制度と大量保有報告制度は、金融商品取引法に基づく市場に関する制度ではありますけれども、コーポレートガバナンスとも非常に密接な関係を持っております。したがって、2006年以降のコーポレートガバナンスなどに関する様々な制度の発展と整合性がとれる形で制度整備を図っていき、かつ、コーポレートガバナンスなどに関する制度の検討の中で両制度に関して改善の必要があると指摘されていた問題に適宜対応していく必要があると思います。
2点目は、事業成長担保権についてです。事業成長担保権そのものとは直接関連はしないのですけれども、その趣旨であります経営者保証に過度に依存しない融資慣行をつくるということは、非常に重要であると考えます。
その一方で、経営者保証というのが、なぜ慣行として存在していたかというと、様々な理由があるかと思いますけれども、1つの理由として、非上場会社では、経営者の財産と会社の財産が丼勘定になっていることへの懸念もあったと考えます。丼勘定になっているから経営者保証の必要性があったのか、経営者保証の慣行が存在したから丼勘定が放置されたのかという、これは鶏と卵の関係になるかもしれませんけれども、経営者保証に過度に依存せずに、事業の価値に着目して融資するという際には、やはり事業の価値を算定できるような情報というものが利用可能な形になっていなければいけないと思います。
そういった情報を信頼に値するような形で入手する仕組みは、これは金融機関に限った話ではありませんけれども、公的なインフラのようなものですので、それが利用可能になっているのかどうかというところも、併せて検討する必要があると考えております。
私からは以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは、チャットを頂いております順番で行きたいと思います。翁委員、川口委員の順でお願いしたいと思います。
翁委員、どうぞお願いいたします。
○翁委員
御説明ありがとうございました。4点申し上げたいと思います。公開買付制度のあり方についての見直しというのはぜひ進めて頂きたいと思いますが、書かれている論点だけでなく、例えばプライシングなど、少数株主の利益に配慮したものになっているのか、そういった点も幅広い様々な事例を検討して、信頼される制度になるよう、検討を進めて頂きたいと思っております。
また、実質株主の透明性につきましても長らく課題と思っておりましたが、海外の動向はどうなっているのかも調査して、ぜひ検討を深めて頂きたいと思っております。
2点目ですが、市場制度ワーキングについて、特に様々な制度整備について御報告頂いておりますけれども、特に今、日本が課題となっているスタートアップにつきましては、東証でもグロース市場の市場区分の議論に絡んで、いろいろな議論が進められると思います。海外の目から見てもより魅力的な市場になるよう、しっかりとした不断の検討を進めて頂きたいと思います。スタートアップ育成については、日本経済にとって、極めて重要な課題だと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。
それから、3点目の顧客本位タスクフォースについてですが、企業年金などの幅広い主体一般に共通する義務として、顧客本位の考え方を導入するということや、インベストメント・チェーンの中で、業務運営を行うことになるということは大変すばらしいと思っております。アセットオーナーなど、こういった意識がまだまだ低いところもありますが、これを契機に金融庁としてエンフォースメントの上でも、こういった考え方をしっかり定着させていって頂きたいというように思っております。
また、金融教育についても、新しい機関をつくって進めていくということで、もちろんその長期・積立・分散投資などの重要性とか、こういったリテラシーのレベルを上げていくということも重要ですけれども、日米の一般の方に意識調査などをしますと、国民がこの金融に向き合う姿勢、金融ケイパビリティというようなことの彼我の差がすごく大きいと思っております。
こういったリテラシーの面と同様に、行動変容を促すにはどういうふうに考えていけばいいのかというようなことも含めて、ぜひこの新しい機関で金融教育について実践を深めていって頂きたいというふうに思っております。
最後の4点目ですけれども、事業性に着目した融資実務に関して、これから日本の中堅・中小企業も含めて、新しいスタートアップについて、個人保証に依存せずに融資をしていくという慣行を定着させていくことは極めて大事だと思っております。これと同時に、目利き力をしっかり高めて、リスクテイクを促すようなこととか、与信判断の高度化を進めていくといった環境整備も進めながら、こういった個人保証に依存しないような事業性に着目した融資を定着させていく検討を、ぜひお願いしたいというふうに思っております。
以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、川口委員、どうぞお願いいたします。
○川口委員
ありがとうございます。まず、今回の諮問についてです。公開買付制度は、会社の支配権を取得する手段として利用されるものですが、先ほど事務局から説明がありましたように、現行法上、市場内取引を規制の対象にしていません。市場内では平等に自由に取引ができるほか、市場内での買い集めは、取得コストがかかり過ぎて、会社の支配権を取ることが難しく、特に規制を及ぼす必要性が低いということが背景にあったように思います。
しかしながら、近年、市場内での買い集めで一定の支配権を取得するという事例が発生し、その場合の既存の株主の保護のあり方が問題になりました。このような状況で、市場内取引を含めた公開買付制度のあり方を検討するということは、時宜を得たものと思います。
また、公開買付制度自体につきましても、法改正により、株券等の所有割合が一定以上となる場合には、応募した株主について全部買付義務が導入されました。これは、応募した株主の保護にはなるのかもしれません。しかし、応募しなかった株主の保護にはならず、やはり、売りたくないにもかかわらず売ることを余儀なくされるという強圧性の問題は積み残しになっています。今後、このような問題についても検討がなされると思いますけれども、有益な施策が実施されることを期待しております。
つぎに、「ディスクロージャーワーキング・グループ報告」についてです。特に、四半期開示について様々な意見がある中、一定の方向性をお示し頂きました。四半期開示については、もともと法定の制度である四半期報告制度と自主規制である四半期短信で重複があるということで、それを解消する必要がある、前回の審議会でも、このような問題意識を前提にワーキング・グループに検討を委ねたと理解しております。そのため、ワーキング・グループで最初から四半期開示の任意化まで議論がされたということはやや驚きましたけれども、結論として義務づけが明示されたことに賛成いたします。
今後、任意化の議論は続くようですが、適時開示で代替できるのか、すなわち、四半期開示と性格が違うように思いますし、さらに、エンフォースメントは十分であるかなど、詰める課題は多いように思います。いずれにせよ日本の資本市場における情報開示の劣化のないような方策を期待しております。
最後になりますけれども、タスクフォースの報告書についてです。報告書では、「顧客の最善の利益を図るべき」という現在金融庁の定める「原則」にあるものを法定するということが提案されております。取引業者に顧客本位の業務を徹底させるという趣旨は理解いたしますが、既に金商法上、公正・誠実な義務が規定され、また適合性の原則も存在します。この点で、私としては、法制度として内容が重複する可能性がある抽象的な規定をさらに置く意義が少し気になるところです。この辺りも今後詰めて検討頂ければと思います。
以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは、たくさんの方からチャットを入れて頂いておりまして、ありがとうございます。
次が河野委員、どうぞお願いいたします。
○河野委員
ありがとうございます。日本消費者協会の河野です。御報告ありがとうございました。今回の各種施策の検討は、国内外の社会経済の環境変化に応じた積極的な議論の下で、それぞれの施策が他の施策を強化し、また補完するような内容でもあり、関係各所に対する予見性を持った取りまとめとなっているというふうに受け止めました。
その上で、3点申し上げたいと思います。1点目は、ディスクロージャーワーキングでの議論に関しまして、グローバル課題解決のためのESG市場が急速に拡大していると認識しております。先般、閣議決定されたDX実行方針では、脱炭素投資の成否が企業や国の競争力を左右するとして、2050年カーボンニュートラルを官民で支援するために、GX移行債や成長型カーボンプライシングの導入が計画され、これらを起爆剤に民間のグリーン・ファイナンスやトランジション・ファイナンスを活用したGXの実現をうたっています。
そこで懸念されるのが、グリーンウォッシュ問題です。ESG投資の判断は、地域や時勢によっても変化しますし、それぞれがトレードオフとなる側面もあるため、企業のサステナビリティ情報の開示においては、透明性のある公正な要件の設定をお願いしたいというふうに思います。
2点目は、「顧客本位タスクフォース」で御検討頂いた家計の安定的な資産形成の実現に向けた基本的な方針についてです。ぜひ早期に実行に移して頂きたいというふうに思って、伺っておりました。昨年来の物価高騰や賃上げの停滞などもあって、家計において、将来の人生設計を考えるときに、節約・貯金という従来型の守りから、資金の運用へと考え方が少しずつ変化してきているのは事実だと思います。
金融商品に十分な知識と経験がない消費者にとって、全て自己責任となる本格的な投資を行うことには躊躇があるものの、多少のリスクを負うにしても、安全で安心できる運用方法や、自分に合った無理のない商品選択ができるようなスキームを社会全体で構築して頂ければありがたいというふうに思います。
成人年齢が18歳となり、望まない契約に誘導されるとか、身の丈に合っていない契約を勧められるなどのトラブルを防ぐためにも、金融リテラシー教育と併せまして、例えば医療分野におけるかかりつけ医のように、本人と暮らしに寄り添って、親身で信頼できる情報提供と、適宜適切なアドバイスを受けられる仕組みがあれば、機運はさらに高まるのではないかと思います。
最後ですけれども、公正取引委員会から銀行の金額ごとに異なる振込手数料と金額区分や、決済事業者が銀行に支払う接続料などについて、説明を求める旨の調査報告が発表されました。消費者からは内情が見えにくい、こうした料金のあり方についても、合理的で公正であるかどうか、ぜひ関係各所で精査をお願いしたいというふうに思っております。
私からは以上です。ありがとうございました。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、小林委員、どうぞお願いいたします。
○小林委員
小林です。私から4点、申し上げたいと思います。まず、1点は、諮問事項についてです。市場が大きく変化している、あるいは企業のガバナンスが変わってきている中で、この諮問事項については非常に良い議論のタイミングだと思います。是非一般株主の利益の確保について十分に考えて議論をして頂きたいと思います。
2点目は、「顧客本位タスクフォース」です。顧客の最善の利益を図ることは最も重要なことですが、一方で、「顧客の最善の利益を図る、イコール、常に顧客が利益を得る」という誤解を招かないようにして頂きたいということ。加えて、顧客の最善の利益を図るための法律が、逆に取引業者の手足を縛ってしまい、市場の活性化に逆行するようなことにならないよう、このタスクフォースでは、取引業者の意見も前広にしっかりと聞いて、議論を進めて頂きたいと思います。
3点目は、金融経済教育ですけれども、これも非常に重要な課題だと思います。金融教育は、必ずしも成人だけではなく、子供のときからお金の使い方、金融とは何なのかを理解していくことが非常に重要だと思います。関係省庁、特に文科省との連携をぜひよろしくお願いしたいと思います。
最後、4点目は事業性に着目した融資事務を支える制度、これは個人保証に依存しない融資制度を確立するという意味で、非常に重要な制度だと思っております。報告書を拝見したところ、まだまだ山のように課題があるようです。それに併せて、本当に現在の金融機関の職員がスタートアップに寄り添って、その成長に資するような支援をするスキルの部分においても、まだまだ心もとないというのが実態だと思います。
ですので、指摘された課題を一つ一つ丁寧に検証していくとともに、既存の金融機関の職員に必要なスキルについても、併せて見て頂きたいと思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、星委員、どうぞお願いいたします。
○星委員
星です。2点だけ、思いついたことをちょっと発言したいと思います。1つは、今、河野委員も、それから小林委員も発言された顧客本位というところです。顧客本位の中に金融リテラシーの向上というのも入っていまして、これは金融の教育者の1人としてありがたいことですけれども、1つ重要なのは、金融リテラシーが当然高い人と低い人というのが出てくると思います。成人に限らず、もうちょっと若い人にも金融リテラシーを高めて頂くというのは、小林委員がおっしゃったように非常に重要なことだと思います。
ただ、もう一つ重要なのは、金融リテラシーの高低によらず、顧客本位というのが重要になるということを強調しておくことです。これは、河野委員がおっしゃったこととほぼ同じで、誰にでも合ったような、金融リテラシーが高い人でも、低い人でも、同じように安定的な資産形成が行えるような、そういった金融業を発展させていくというのが重要になります。
あともう一つは、大量保有報告制度、それと公開買付制度、これが2006年以来改正されていないということで、その間、加藤委員がおっしゃったように実務面での発展がいろいろあったと思います。同時に、経済学の研究も、ここ20年ぐらい、いろいろなオーナーシップに関して進んできています。たとえば、コモン・オーナーシップという議論です。
大量保有報告制度などは、個々の企業のオーナーシップに注目しますが、二つ以上の企業が同じ株主に保有されているというコモン・オーナーシップの状態を見ることによって、それが企業の間の競争条件を変えて、それが社会的厚生に影響を与えるとか、そういう研究が出てきている。
そうした研究を参考にして、企業の集合あるいはネットワークの株式所有に、もうちょっと注目するという視点も必要なのかなと思います。これは、もしかしたら規制とか、法制とか、そういうことではなくて、すでに存在するデータをどういうふうに規制当局が見ていくかということかもしれません。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは続きまして、北尾委員、どうぞお願いいたします。
○北尾委員
ありがとうございます。東京大学の経済学研究科でマクロ経済を研究しております関係で、少し経済学的な観点からコメントを幾つかさせて頂きます。最初のほうに「新しい資本主義」、それから「成長と分配の好循環」に最終的につなげたいということで、そこのリンクというのが、それぞれの制度の話からもう少し見える形になると良いのではないかと、全体として感じました。
特にいろいろな事例に関する検証に基づいて、定量的なアプローチを試み、こういう変更が起きた場合、正確に示すことはできないものの、こういった事例や先行研究に基づくと、こういった効果が期待できるというようなことを議論の中に加えていくと、関係する当事者、あるいは国民の理解も得やすいのかなと少し感じました。
そういった面から3つほどコメントさせて頂きます。1つは、今まで河野委員、それから小林委員、星委員が強調されていたことに同調するというところもありますが、顧客の最善の利益という点が、非常に抽象的かと感じています。
経済学的にも、それぞれの人にとって最適な投資のポートフォリオや、投資行動というのはどういったものなのかということに関しては、数多くの研究の蓄積があります。個人的な選好ですとか、あるいは目に見えない健康状態、所得・資産といったものに依存する部分ももちろんあって、そういったところまで変数として取り入れて、アドバイスをするということはなかなか難しいと思いますが、それ以外に、例えば年齢、家族構成、大まかな経済状況などの情報があれば、最適な投資行動というのはこういったものだというレンジというのは、示すことができるかと思います。そういったところは、ガイドラインというのか分かりませんけれども、ある程度それを超える範囲での投資行動を促すには少しハードルを設けるとか、もう少し踏み込んだことができるのではないかと思いました。
特に若い人ということを他の委員が言及されていましたけれども、特に私が気になるのは、高齢者の資産の運用の仕方、認知症が進行したり、健康状態が悪化したりして、投資の判断力が鈍っていく中で、客観的に見える情報を使って、きちんとしたガイドラインというのを設けるということは重要なのかなと思いました。
二つ目は、最後の事業成長担保権に関してですが、こういったテーマは、経済学研究の蓄積もあるところです。例えば借入制約にかかる起業家がどの程度いて、その借入制約が取り除かれることによって、どういった投資行動が期待されるのか、生産、あるいは雇用に対してどういったプラスの影響が及ぶのかということが、例えば定量的な分析を基に議論ができると面白いのではないかなというふうに、個人的には感じました。
あと、最後の3点目ですけれども、「ディスクロージャーワーキング・グループ」の報告にありました、透明性を高めるというのは、投資家にとっていいことだと思いますが、それに対して、当然そういった情報を集める行政的なコストを満たすためのコストのトレードオフというのもあるかと思います。
経済産業研究所の森川所長がコンプライアンスコストによって、どれだけの労働時間が失われて、それによって生産がどれだけ下がって、成長にも影響を及ぼすかというような研究をされていますが、日本国内外で様々な実証研究があります。そうしたコストも横目で見ながら、どういった情報を提供していくのがいいかというのを考えることも重要なのではないかと思いました。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、冨田委員、どうぞお願いいたします。
○冨田委員
ありがとうございます。連合の冨田でございます。私からは、働く者の立場から、今後の検討に当たっての要望を3点申し上げます。
まず1点目が、「ディスクロージャーワーキング・グループ」の報告についてでございます。中間報告のときにも申し上げましたが、昨今の国際情勢における企業行動などを踏まえると、サプライチェーンも含めた人権の尊重に対して、企業がどのような姿勢を示すのかということは、企業価値を向上させるためにも不可欠だと考えております。ぜひ、開示項目の中に人権の尊重を加えることにつきまして、引き続きの御検討をお願いしたいと存じます。
2点目は、「顧客本位タスクフォース」についてです。報告では、金融経済教育の機会提供について、企業などにおける職域での取組みが鍵とされており、中小企業については、置き去りにされないよう留意が必要とされておりますが、雇用労働者の4割を占めるパート、有期、契約など非正規雇用で働く方に対しては言及がございませんでした。従いまして、具現化に当たっては、全ての国民に教育機会が提供できるような、丁寧な制度設計をお願いしたいと思います。
この点、主権者教育の観点でいきますと、先ほど小林委員も触れておられましたが、文部科学省などと連携したICTを活用した学校教育カリキュラムへの導入なども、検討の余地があるのではないかと思いますので、御検討頂けると幸いです。
それから、3点目が事業成長担保権についてでございます。このワーキング・グループには連合も委員として参画をしてまいりましたが、報告で示されている事業成長担保制度は、労働契約を含む企業の総財産を担保に資金調達を可能とする制度として設定をされておりますので、繰り返し労働者保護の視点が必要だと申し上げてまいりました。
報告の中では、連合の意見も踏まえて頂きまして、担保権を実行するときに労働債権を優先弁済する仕組みや、事業譲渡時におきまして、事業を解体せず雇用を維持しつつ継承することを原則とすることが盛り込まれましたが、担保権を設定する際の、労働組合等への通知や労使協議をルール化することは盛り込まれておりません。
企業が持続性を持って成長していくためには、そこで働く労働者の意欲と努力が必要であり、労働者の労働契約を担保として資金調達するのであれば、設定時においても、労働組合等への通知は必要不可欠だと考えております。
従いまして、今後の法文化に向けた条文作業においては、制度に対する労働者の理解と納得を高める観点から、設定時における労働組合等への通知や協議の必要性につきまして、改めて御検討を頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、松井委員、どうぞお願いいたします。
○松井委員
ありがとうございます。松井でございます。私からは、各提言につきまして、少しずつ、ポイントだけ意見を述べさせて頂きます。まず、公開買付、大量保有報告書に関しましては、先ほど川口委員が御指摘のとおり、やはり買収という場面において、買収者が実際に市場内での買い集めを先行して行っているという事実があるのではないかといった事実認識があり、現実の日本の市場で、現にどのくらいの買収者が市場内買い集めを買収の迂回路と認識しており、また株主がそうした行動への対応を果たして正しく判断できるという環境があるのかどうかを、データをベースにしながら、適切に考えていくということが必要だと思いますので、この時期に対応を考えるというのは非常に適切なことではないかというふうに思います。
大量保有報告に関しましては、文言についての形式的指摘だけですが、実質株主という言葉が出てまいりました。事務局から既に御説明がありましたけれども、法律の既存の文言とかぶる可能性があるので、対外資料において、紛れがないほうがよいのかなというふうに思ったということであります。
2点目、ディスクロージャーに関しましても、これまた川口委員から御発言ありましたけれども、レビューという形にし、かつ、それを任意化するという方向に進めるとしますと、その制度の性格が変わるということがあるのかどうかということについて、この説明資料の中には、より適切に虚偽表示に関する対処を実施すると書いてあって、このより適切というのが、規制の強化とも緩和とも変更とも言い難い状況にあってなかなか含蓄の深い言葉かなとは思います。法律上の義務でなくなったレビューにおいて何を書き、そして、それについてどういうチェックを受けるのかが自由化されていくときに、どういった対応をするのかということについて、慎重に検討することが必要かと思います。
そして、サステナビリティ開示につきましては、タイムスケジュールが非常に早く物事が進んでおりまして、2、3年のうちに、人材育成も含めて、制度を運用にまで乗せるということが急務になってくると思いますので、検討と併せて、この制度を運用する足もとの実務に対し注意喚起に努めるということが重要ではないかと感じました。
それから、顧客本位のワーキング・グループに関しましては、北尾委員が検証しながら政策を立てていくことが大事だとおっしゃっておられて、これは本当にそのとおりだと思います。
他方で、できることからやっていくという中で、拙速に、例えば年齢によって販売ポリシーが異なり得るというメッセージを出すと、実務の側が非常に硬直的な対応をしてしまうという可能性が、場合によってはある。例えば70歳以上の方には、これはもう推奨しませんとか、販売しませんといったような対応になった場合に、それが適切なのかどうかといったようなこともあると思います。
データを見ながら、かつ、人々に対する分配ということについての結果に思いを致しながら、着地点を探るという形でやっていくことが重要と思います。
最後に、事業成長担保権につきましても、もう既に御指摘がありましたけれども、企業の成長に関しては非常に重要なことかと思います。ただ、目利き力というものが今まで以上に必要になり、ガバナンスに入り込んだり、踏み込んでいくというような銀行のあり方ということ、それから、銀行としての貸付債権というものの性格、いろいろなことについて、銀行が適切に管理し続けられる制度が大切と思いました。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、吉戒委員、どうぞお願いいたします。
○吉戒委員
ありがとうございます。吉戒です。企業融資の現場に近いところに長く携わった者として、事業成長担保権について、意見を申し上げさせて頂きたいと思います。
そもそも、不動産担保とか、経営者保証に過度に依存せずという、このフレーズ、必ずいつも出てきます。ちょっと弁解めいてくるんですけれども、不動産担保はともかく、経営者保証に、それほど依存してきたということはありません。、実は私自身の長い銀行員生活の中でも、保証人から回収したということはほとんどないんです。
とはいえ実際には、保証人になってもらうということは、かなり過度なプレッシャーを与えているのも確かに事実だろうと思います。
そういうことで、保証人に関しては、どちらかというと、やっぱりこれもよく言われるんですけれども、経営者としての規律づけみたいな。これ、ちょっと上から目線みたいで嫌な言い方ではあるんですけれども、むしろ、そっちのほうの意味のほうが強い。例えば実際には経営者の自宅を担保に取るというようなことも極力避けてきているんです。
それは、やっぱり後々の担保の実行なんていうことになると、幾ら回収するとか、しないとかという以前に、地域ではレピュテーショナル・リスクにもなるわけです。
なので、そこのところは、実はそれほど私自身が問題だとはあまり思ってはいないんです。ただ、事業性を見ていくという意味で、先ほどのお話であった「目利き」は、やっぱりこのところ、金融機関自身も大分練度を上げてきつつあるのではないかなと思っています。
ただ、事業成長担保権というのは大企業を想定しているわけではないでしょうし、中小企業ということになると、先ほどもお話がありましたように、法人・個人の分別管理みたいなものというのはできている場合もあるんですけれども、大方、多分そうではないと思います。
それと、いわゆる財務情報、具体的に言うと決算書がどこまで信頼できるかという問題だって、実際にあるわけです。やっぱり担保権だけの話ではなくて、こういったことも含めて、前に進めていくといいますか、財務情報の中身の信頼性を高めるというようなことについては、相当程度を詰めていけるのではないかなと思っています。
それから、具体的な設計といいますか、細かいことは、まだこれからだと思うんですけれども、確かに中小企業でもそうですけれども、事業承継の場合のLBOローンとか、あるいはプロジェクトファイナンスには、まさにこれはうってつけ、つまり、やや特殊な貸出には非常に有効ですけれども、通常の中小企業を中心とした、企業への貸出、つまり運転資金だとか、そういったことに利用できるかというのが、課題になっていくのだろうと思うんです。
総資産を担保に入れるということは、その入れた金融機関としか取引できなくなってしまうに近い形だと思うんです。そうなっていきますと、事実上の1行取引みたいな状況になっていくわけです。こういったLBOとか、やや特殊なストラクチャーものだとかというのは、確かにこういう形で、一旦シンジケートローンみたいな形で、対応できるし、非常に有効ではないかなと、私も思います。
ただ、一方で、スタートアップなんかに関して言うと、いつまでもスタートアップではないんです。当初スタートアップで、こういった全資産担保を入れるんでしょうけれども、その後、企業も成長していくでしょうし、いってほしいわけですけれども、そのプロセスで、他の金融機関からの資金調達の道を閉ざしてしまわないかとか。これは、もちろん運用次第だと思います。極度額を設けたり、で対応できるのかもしれません。
それと、一方で、貸出している金融機関からいうと、この総財産を担保として徴求してしまうと、ある種、融資義務を負ってしまうのではないかとの懸念があります。他からの調達の道がないという声も、実際にはよく聞くんです。そういった中小企業の、通常の運転資金だとか、設備資金だとか、そういったものの担保としては、、取り組みにくいと私、先ほど申し上げましたけれども、そういうことの中から、こういう疑問なり、課題というのをやっぱり現場では感じるところではないかと思います。
いずれにしても、こういう従来なかった担保法制といいますか、担保の仕組みなので、いろいろな問題があるのはもちろんだと思うんですけれども、まずはそのLBOローンでも結構ですし、プロジェクトファイナンスでも、いずれにしても、これまで使えなかったものが使えるようになるわけなので、これは非常にいいことだと思います。
あとは、中小企業金融の実務に、どれだけこれを本当にワークさせることができるかということで、特に金融機関向けだったり、あるいは事業者向けにも丁寧な説明をしていく必要があるかなと。事業者の皆さんに、総財産を担保に出すということの意味というのは、なかなか説明が難しいのではないかなと思うところでもあるので、その辺の広報活動が必要ではないかなと思います。
ちょっと長くなりましたけれども、以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは、続きまして、山本和彦委員、どうぞお願いいたします。
○山本(和)委員
ありがとうございます。私も、最後の事業成長担保権について、一言だけ申し上げたいと思います。この点について、当審議会で発議をする際にも、やはり民事基本法制とかなり密接な関連を持つ問題なので、できるだけ丁寧な審議をお願いしたいと申し上げたところであります。
結果として、私もワーキング・グループに参加しておりましたが、大変に丁寧な議論がされ、その結果として、非常によく考えられた報告書が、本日提案されたものと理解をしており、私自身はこの報告に賛成をしているところであります。
ただ、今後のことをさらに考えると、もう既に何人かの委員からお話がありました。小林委員からは、山のような問題がまだあるという御指摘がありました。実際に、今後、制度をさらに詰めていく、条文化していくに当たりましては、非常に細かな詰めがいろいろなところで必要になってくるのだろうと思っております。
神は細部に宿ると言いますが、その細かな詰めのところが、実はこの制度、担保法制であり、執行・倒産法制であり、そうした法制の基本的なところと実は大きく関わっている部分があるのではないかと思っています。そういう意味では、今後、法制化をさらに進めていかれるに当たっては、ぜひ引き続き丁寧な形で行って頂きたい。ステークホルダー、関係者の御意見等を、なお引き続き伺いながら丁寧に進めていって頂きたいということを希望したいと思います。
私からは以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは、次に、山本眞弓委員、どうぞお願いいたします。
○山本(眞)委員
ありがとうございます。私も、今の事業成長担保権について、吉戒委員がおっしゃったこととほぼ同じようなことですけれども、結局この伴走型と書いてありますが、企業が成長してきて、担保力が上がってきたときに、必要な分を追加融資してくれるのかなどについて非常に気になっております。
その場合に、報告書を読ませて頂いたところでは、極度額は設定しないかのような表現もあり、ある銀行だけから融資を受けて、もう貸せないと言われてしまったら、どうするのかなどが非常に気になりましたので、そのあたりの制度設計について、まだ多くの課題もありそうですので、ぜひ考えて頂ければと思います。
1つ質問ですが、先ほど御説明頂いた概要紙に、信託会社をかませることで濫用を予防するとの記載があるにも関わらず、注記で信託会社と与信者が一致することも許容と書いてあることの意味がよく分からない。これだと果たして濫用予防になるのかと思いましたので、その点は後で御説明を頂ければありがたいです。
それから、「顧客本位タスクフォース」の件ですけれども、顧客本位の業務運営については誰でも賛成する、反対する人はいないと思いますが、実務の中でこれをやろうとすると、例えば情報提供のルールをきちっと守りましたかとか、デジタルを使って情報提供しましたけれども、それはちゃんとされていますかとか、ちゃんと業務運営する側のルールを守ったかどうかというのを確認しなければいけなくなる。すると、結局そこに形式が入ってきて、形式だけやりましたということで済まされてしまうことが、往々にして起こると思います。ですので、ぜひ顧客本位という実質が実現できるような枠組みを工夫して頂きたいと切に思っております。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。御質問があったかと思いますが。では、尾﨑参事官、よろしくお願いします。
○尾﨑参事官
濫用を防止するという際に、信託会社と与信者が一致していても構わないという趣旨ですが、信託会社は、一定の要件を満たして、免許を付与され、金融庁の監督を受けるということになります。したがって、その信託会社が与信者を兼ねているということであれば、結果的に、一体となった与信者兼信託会社が、一定の要件を満たし、金融庁の監督を受けるという形になります。このため、濫用されるということになれば、監督を行うことができますし、そもそも、そういう濫用を行わないような人が参入してくるという形になりますので、濫用を防止することができるということになるというふうに考えています。
それから、必ずしも質問ではなかったのかもしれませんけれども、1行で貸す可能性はもちろんあると思いますけれども、必ずしもそうなるとは限らず、複数行で貸すという場合もあると思います。また、1行で貸すとしても、よく事業を理解することで、その事業に融資していくことができるということになるのではないかと思っています。仮に複数行で貸したからといって、必ずしも追加融資には常に応じてくれるわけではないのではないかなというふうに考えています。
すみません、ありがとうございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。私もワーキング・グループに参加しておりましたので、委員御指摘の例えば極度額の点というのも、法律上設けるということではないわけですけれども、例えばある銀行が融資をしていて、後から次の銀行が出てきたというような場合には、アメリカ的に言えば、銀行間で話し合って、そこで極度額 ―債権者間合意とか、協定とかとも呼んでいますけれども― を定めて、第2、第3と仮に入ってくるとすると、比喩的に言えば、縦に並んでいくというか、そういう実務がほぼ確立していると思いますし、日本にとっては新しい発想になると思いますので、新しい問題にも注意して、制度もつくり、実務もそこで育てていくということになろうかとは思います。
よろしいでしょうか。
○山本(眞)委員
はい。
○神田会長
ありがとうございます。それでは、次に進ませて頂きまして、岩下委員、どうぞお願いいたします。
○岩下委員
京都大学の岩下でございます。本日の諮問事項への対応、及び御報告された検討結果につきましては、いずれも望ましい方向に向かっていると思いますので、基本的に賛成させて頂きます。
ここでは、それらのものをやや包括するような観点から意見を申し上げたいと思います。やや主語が大きいのですが、我が国の金融というのは、これまで社会の変化とか、人々、顧客のニーズの変化に対応して様々な見直しが行われてきたと思います。とりわけ、個人が利用する資金決済、株式や投資信託等への投資、あるいは住宅ローンの借入れなど、そういった分野については様々な技術革新が行われて、新たな担い手が、新しくて効率的な金融サービスを提供するようになったと思います。もちろん、問題がないわけでありませんけれども、そういったことについても、金融制度の観点からも適切な対応をとられてきたと思います。
このように個人が直面する金融サービスが大きく変質する一方、法人が対応するようなものというのは、どうもあまり変化していないような感じがするわけです。私も金融の世界にかれこれ40年ぐらいいるんですけれども、40年前に見ていた法人の取引の慣行とか、融資とか、あるいは株式の発行市場のやり方というのは、もちろん細かいところを比べると、確かにいろいろ変わってはいるんですが、例えば個人の分野で発生している変化と比べると、あまり変わっていない感じがします。
これはどうしてなのかなと考えると、やはり伝統的な様々な慣行とか、ソフトロー的なルールがあります。企業向け融資なんかは典型的にそうです。あるいは、様々規制があります。例えば、四半期の開示みたいな話というのも、これもかなり古い時代からやられてきた流儀がそのまま踏襲されているわけです。
こうした制度とか業界慣行等にがんじがらめにされていた部分が相当あるんじゃないでしょうか。そういうのに比べると、個人の分野が比較的新しく頑張って時代の変化に対応しようとして、イノベーションしてきた。もちろん、これに対応して、例えば今日のテーマになった金融教育の新たな組織をつくるなど、さらなる見直しを進めることはとても大事なことだと思います。
そういう意味では、金融が大きく変化している個人の分野に対して、法人周りとか、金融機関同士のプロの世界というのは、どうも古めかしいままなような気がするんです。その部分というのは、もうちょっと変化、改革を加速しないといけないのではないかというのをすごく感じています。
今回、公開買付制度等について、極めて何十年ぶりかの見直しみたいな話になってしまったわけですけれども、この分野には様々な利害関係者がいてがちがちになっていますので、ちょっとずつ関係者の利害を調整しながら直していこうとすると、ものすごく時間がかかります。この辺は、事務局の方々が大変御苦労されている部分ではないかと思います。
ただ、これをそのまま放置しますと、何が起こるか。典型的に起こっているのは、ほかの新しい商品、抜け道への逃避が行われるわけです。典型的に言うと、最近スタートアップ系の人たちの資金調達の議論で非常によく使われるのが、トークンを発行して資金調達するということです。
それって株式じゃないんですかというと、いや、IPOじゃなくてICOですよとか、あるいはNFTを出すみたいな話をよくされるんですが、それというのは多分、せっかくこれまで金融制度の中で築き上げてきた、きちんとしたディスクロージャーをして、リターンに対して間違いないような配当をしましょうという仕組みを、根底から覆してしまうようなものではないかと思います。
もちろん、今の規制の中でがんじがらめになっている、あまりよくないものもあるでしょうが、必要な規制というのはあるわけです。こういう新しいものに目を向ける人たちというのは、そういう必要な規制までもすっ飛ばしてしまうという傾向があります。新しいものに対して規制の網をかぶせていくということも必要だと思いますけれども、それ以上に、そういうニーズはなぜ出てきたのかというと、やっぱり今のものが使いにくいから、そうなっているんだという認識を持つ必要があると思います。
これと同じような話が、今日のワーキング・グループの市場インフラの機能強化の議論の中で出てきたPTSの規制緩和というのがありました。これも非常に細かい規制緩和ですけれども、なぜこういう議論になっているかと。皆さん、覚えていらっしゃるかと思いますが、2020年10月1日、東京証券取引上のアローヘッドが大きな障害を起こしまして、1日、日本の証券市場が止まったことがありました。
これは前代未聞というか、世界にも丸1日止めた事例というのはほとんどないわけであります。こういうことが起こってしまったときに、日本には東証及び東証のシステムを使っているその他の札幌とか、名古屋とか、そういうところしかなかったというのは、日本にとって大変大きなリスクです。ですから、PTSを拡大していこうという発想はいいんですけれども、どうもそこの進み方がすごく遅いんです。やっぱり今のままの形をちょっとずつ利害調整したのではうまくいかないということの典型的な例のような気がします。
その意味では、今必要とされていることにせっかく取り組んでいらっしゃるので、もうちょっと改革の歩みを深めて頂きたい。今回、報告された、あるいは諮問をされたことをさらに乗り越えて、変化を先取りしないと、逆に先ほどの証券発行に対するICOとかトークン発行みたいなへんてこりんな議論になってしまって、かえって金融制度とか、関係する人たちの害になってしまう可能性があるということを注意する必要があるのではないかと思います。
私からのコメントは以上です。
○神田会長
ありがとうございました。それでは、あと、星委員、佐古委員、それから本日、会場に佐々木委員に御出席頂いていますので、若干時間を超過するかもしれませんが、もし御発言があれば承りたいと思います。
星委員、どうぞお願いします。
○星委員
2回目で時間も押していますので、パスします。
○神田会長
申し訳ありません。それでは、またの機会によろしくお願いいたします。
それでは、佐古委員、お願いいたします。
○佐古委員
初めましての委員の皆様、早稲田大学で暗号技術を使ってセキュリティーとプライバシーを研究しております、佐古和恵と申します。お時間もありますので、私も1点だけ申し上げたいと思います。「顧客本位タスクフォース」の取組みについて、とても興味深く、ぜひ推進して頂きたいと思っております。
顧客のリテラシーレベルに応じた説明が難しいというのは、実はセキュリティー業界でも、個人に対してプライバシーポリシーをどのように分かりやすく説明して、納得、合意してもらうかということが大きな課題となっており、どのようにデジタル画面を通じて分かりやすく、個々人のレベルに応じて説明ができるかということも研究しておりますので、ぜひこの辺りは、お互いの分野でベストプラクティスを共有しながら、議論ができたらいいのではないかと思いました。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは、佐々木委員、お願いいたします。
○佐々木委員
ありがとうございます。明治学院大学の佐々木百合です。今日は対面で出てきまして、3つ申し上げたいことがあります。
1つ目は、対面で来ていることに関係があるのですが、開催方法について、今回、恐らく皆さん、オンラインだと思っていました。ですので、私だけ来るのはすごく勇気が要ることだったのですけれども、やはり対面でないと分からないこととか、新しい委員の方もいらっしゃるのでと思って、今日まいりました。
来てみて、やはり分かったことがありました。こちらにおりますと、委員の方のお顔は大きく映し出されて、お名前も、話している表情もよく分かります。ただ、委員の方からは、恐らく、例えば私の小さいパソコンで家で見ていますと、会場の枠というのはすごく小さくて、その中で私も今あまり大きく映っていないと思うのです。表情も分かりにくいですし、会場でお答え頂く方のお名前を一度聞き逃してしまうと、どなたがお話しになっているかが分からないといったことが起こります。
今日、こちらにいますと、どなたがお話しになっているのか、その都度確認できますので、やはり対面で来てよかったと思っております。1点目としては、要望で、こちら金融庁で御出席のお答えになる方のお顔やお名前も委員の方と同じような形で画面に表示して頂けると、オンラインでも、委員の方にもよくお分かりになるのではないかと思います。設備が重厚なので、簡単に変更できないかもしれませんが、ぜひ、御検討頂きたいというのが1点目です。
次に、2点目ですが、顧客本位の業務運営に関して、私も顧客本位タスクフォースに出席しておりますが、政府の資産所得倍増プランが進められていることもありまして、ある程度スピード感を持って、議論が進んでいるように思っております。リテラシーの進め方、アドバイザー制度、NISAの抜本的な改革や拡充ということはすごく喜ばしいことだと思っております。
ただ、やはりスピード感を持って進んでいる中で気になることもあります。例えばNISAの拡充は、個人投資家の資産選択に大きな影響を与えますし、また、金融機関にとっても、どのような商品を提供できるか、既存の商品への影響など、非常に大きな影響があると思います。
例えば税額控除を変更すると、個人の資産形成が変化するといった実証研究もこれまでにも行われてきていますので、今後スピード感を持って進める中で、ぜひまた修正すべきところがあるかどうかということを注視して頂きたいと思います。
顧客にとって最良、あるいは忠実なアドバイザーの定義についても、顧客本位タスクフォースでもかなり議論がございました。勧誘なのか、アドバイスなのかといった線引きは難しいという問題もあると思います。また、金融リテラシーの進め方についても、常設組織を設立する方向で話が進むのだと思いますが、こちらに関しても、走り出してからも修正すべきところは修正して進めて頂きたいと思います。
北尾委員の御意見にも少し関連するかと思いますが、事前事後のデータを活用した検証や、内部ではなく、外部の専門家を活用した政策研究の推進をしていただきたいと思います。さらに、私も今、金融行政モニター委員をしておりますが、金融行政モニターの窓口や、事後的なフィードバックを受ける窓口の拡充などをして頂くと、そういったことをフォローしていけるのではないかと思います。
また、山本眞弓委員が先ほどおっしゃったことに関連しますが、やはり金融業者が形式的に何かを守るといったことではなく、自発的に行動できるようなシステムデザインも重要だと思います。例えば金融庁が様々なデータの見える化をされていますが、そうしたことは、とても意義があると私は思っていまして、そういったシステム上、自発的に顧客本位の業務運営を行いたいというような形になるシステムを考えて頂きたいと思っております。
最後に、これは簡単に申し上げさせて頂きます。コロナが収束してきて、この開催方法とも関係あると思うのですが、いろいろな特例を、いつ解除するのかといったことが金融行政にも関係してきて、いろいろな問題があると思います。また、これまでインフレや金利が落ち着いている間に非常にFinTechが進んで、暗号資産とか、ソーシャルレンディングとか、今までなかったようなものがいろいろ出てきている中で、久しぶりのインフレや金融政策のテーパリングといった変化がどのような影響を与えるかというところに注視して頂きたいと思っております。
以上です。ありがとうございました。
○神田会長
どうもありがとうございました。ちょっと予定の時間を過ぎておりまして、大変申し訳ありませんけれども、今日、御出席の委員の皆様方全員から貴重な御意見を頂きました。
あと2つ、お諮りしなければいけないことがありまして、申し訳ありませんけれども、お願いしたく存じます。まず、本日、大臣から頂戴いたしました諮問についてですけれども、具体的な検討を進めていくためにワーキング・グループを設置させて頂きたいと思っております。それで、ワーキング・グループの座長でございますが、大変恐縮でございますが、もしお認め頂けるのであれば、私が務めさせて頂ければと考えております。
ワーキング・グループの名称とか、メンバーの決定につきましては、大変恐縮ですが、御一任を頂ければ大変ありがたく存じます。そのような形で進めさせて頂きたいというふうに思っているのですけれども、皆様方に御承認頂けますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○神田会長
どうもありがとうございます。なかなかオンラインで難しいのですけれども、うなずいて頂きまして、大変ありがとうございます。
もう一点です。これは、先ほど御説明させて頂きました2つの報告書、具体的には「ディスクロージャーワーキング・グループ」報告と、「事業性に着目した融資率を支える制度のあり方等に関するワーキング・グループ」報告、この2つにつきましては、これを金融審議会として御了承をして頂きたいと存じますけれども、御了承頂けますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○神田会長
どうもありがとうございます。それでは、御了承ということとさせて頂きます。
以上で、予定の議事を全て終了いたしました。私の不手際もあり、時間を延長してしまいまして申し訳ございませんでした。
以上をもちまして、本日の金融審議会総会と金融分科会の合同会合を終了させて頂きます。
なお、本日の議事の模様につきましては、事務局から後ほど記者レクを行います。また、今後の日程などにつきましては、事務局から後日、御連絡をさせて頂きますので、よろしくお願いいたします。
皆様方には、本日は大変お忙しい中をいつものように御参加頂き、活発な御意見の御披露、また討議を頂きまして、誠にありがとうございました。
以上をもちまして、終了とさせて頂きます。どうもありがとうございました。
以上
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