第49回金融審議会総会・第37回金融分科会合同会合議事録
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1.日時:
令和4年1月31日(月)13時00分~14時15分
○神田会長
それでは、定刻になりましたので、始めさせて頂きます。第49回金融審議会総会・第37回金融分科会の合同会合を開催させて頂きます。
本日の総会でございますけれども、オンライン会議を併用した開催とさせて頂き、会議の模様はウェブ上でライブ中継をさせて頂いておりますので、よろしくお願いいたします。
議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させて頂く予定ですので、よろしくお願いいたします。
会議を始める前に、留意事項がございます。これまでと同じですけれども、御発言を希望される場合には、オンライン会議システムのチャット機能を使って頂いて、全員宛てにてお名前を御入力ください。私のほうで確認をさせて頂き、御指名をさせて頂きますので、そうしましたら、御自身のお名前を名のった上で御発言をお願いいたします。
本日でございますが、黄川田副大臣に御参加を頂いております。開会に当たりまして副大臣から御挨拶を頂けるということでございます。
それでは、副大臣、よろしくお願いいたします。
○黄川田副大臣
皆様、こんにちは。金融担当副大臣の黄川田仁志でございます。神田会長をはじめ委員の皆様におかれましては、お忙しいところ、金融審議会に御参加頂きまして、誠にありがとうございます。開会に当たり、一言、御挨拶を申し上げます。
まず初めに、日本経済は、新型コロナ感染症による厳しい状況から徐々に回復しつつあるものの、オミクロン株の感染拡大に直面し、国民生活や経済への影響が依然として続いております。
こうした中、政府としては、まずは新型コロナ感染症対策に万全を期してまいります。また、この感染症による危機を乗り越え、「新しい資本主義」に向けて「成長と分配の好循環」を実現していくために、令和3年度補正予算を含む経済対策を迅速かつ着実に実行してまいります。経済対策を踏まえ、金融機関に対しては、依然として厳しい状況にある事業者への支援の徹底を要請したほか、ポストコロナを見据えた経済再生のために取組を促してまいります。
さらに、新型コロナへの対応に加え、活力ある経済社会を実現する金融システムを構築する観点から、国内外の環境変化を踏まえた取組も着実に進めていかなければいけません。
こうした取組の一環として、本日の金融審議会では、「公認会計士制度部会」と「資金決済ワーキング・グループ」から、昨年行われた諮問に対する検討結果を頂戴することとしております。
「公認会計士制度部会」には、会計監査を取り巻く経済社会情勢の変化を踏まえ、会計監査の信頼性確保や公認会計士の一層の能力発揮及び能力向上に資する公認会計士制度の改善について議論し、報告書を取り纏めて頂きました。
「資金決済ワーキング・グループ」には、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関する国際的な要請やデジタル化の進展等も踏まえ、安定的かつ効率的な資金決済に関する制度のあり方について議論し、報告書を取りまとめて頂きました。
いずれの報告も、金融を取り巻く環境変化を捉えて議論を重ね、制度整備の方向性を示して頂いたものと存じます。
委員の皆様方におかれましては、適切な金融行政の実現、ひいては日本経済の更なる発展に向けて、本日の報告についても御議論頂きますようよろしくお願いを申し上げまして、私の冒頭の御挨拶とさせて頂きます。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
○神田会長
副大臣、どうもありがとうございました。
○黄川田副大臣
どうもありがとうございました。
○神田会長
なお、副大臣におかれましては、他の公務のため、ここで御退席されると伺っております。どうもありがとうございました。
○黄川田副大臣
どうもありがとうございました。(黄川田副大臣退室)
○神田会長
それでは、カメラの方々におかれましてはここまでとさせて頂きます。よろしくお願いいたします。 -
(報道関係者退室)
○神田会長
それでは、議事に移らせて頂きます。
本日の議事の流れですけれども、簡単に申し上げます。まず、「諮問事項にかかる報告」といたしまして、「公認会計士制度部会」、それから「資金決済ワーキング・グループ」、この2つから御報告がございます。その上で、全体について皆様方に討議をお願いしたいと思います。
なお、前回と前々回のこの総会における委員の皆様方の主な御意見を資料1としてまとめさせて頂いておりますので、適宜御参考にして頂ければと思います。
それでは、まず、本年1月4日に公表されました「公認会計士制度部会」の報告についてでありますけれども、私が同制度部会の部会長を務めさせて頂きましたので、私から説明をさせて頂きます。
お手元の資料番号ですと、資料の2-1が概要で、資料の2-2が報告の本体になります。資料2-1の概要に基づいて簡単に説明・報告をさせて頂きます。
昨年11月の第48回金融審議会総会において、金融担当大臣から公認会計士制度の改善に関する検討を行うよう諮問を受けまして、「公認会計士制度部会」での議論が再開いたしました。昨年の11月から12月にかけて3回審議をして頂きまして、その議論の内容をまとめたものが本日説明させて頂く報告ということになります。
部会におきましては、大きく2つの観点から検討を行いました。第1は、会計監査の信頼性確保のための方策です。第2は、公認会計士の能力発揮・能力向上に向けた環境整備であります。
まず、会計監査の信頼性確保のための方策ですけれども、上場会社に対する監査について、公認会計士法上、新たな登録制度を設けることを提言しています。
足下の日本の上場会社監査の状況を見ますと、中小監査法人等への上場会社監査の担い手の裾野が拡大しているという傾向が見られます。こうした中、前回の総会でも御指摘がありましたけれども、中小監査法人まで含めての監査の担い手全体の一層の監査品質の向上が急務と考えられます。そこで、法律の規定に基づく新たな登録制度を導入することにより、上場会社監査の担い手の適格性を担保するとともに、体制整備や情報開示について高い規律づけを設けるということを提言しています。
このうちの体制整備についてですけれども、上場会社監査を行う全ての監査事務所に対して、「監査法人のガバナンス・コード」の受入れを求めるべきという取りまとめをしています。
また、前回の総会で複数の委員の方々から、人材育成とかAIを用いた監査について御意見があったかと思いますけれども、部会においても、上場会社監査を行う監査事務所に求められる情報開示の観点としまして、品質管理やガバナンスの状況のほかに、人材確保やデジタル対応等を求めていくべきとの議論がありました。
ガバナンス・コードそのものの内容を含め、求められる体制整備や情報開示の具体的な内容は、こうした議論も踏まえて、当局、そしてその他の関係者において詳細が検討されることを期待しています。
また、会計監査の信頼性確保に向けましては、当局においてより効率的・効果的なモニタリングを実施できるよう、公認会計士監査審査会が行使できる立入検査権限等の範囲を見直すことも提言しています。
次に、公認会計士の能力発揮・能力向上に向けた環境整備のほうですけれども、前回の総会でも賛同の意見を頂いているところですが、監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限を見直すことを提言しています。
現在の制度では、監査法人の社員の配偶者が企業側の役員等を務めている場合、監査の独立性を確保する観点から、その監査法人は、配偶者が勤める企業に対して監査証明業務を行ってはならないこととされています。この規定は、社員本人が配偶者の勤める企業の監査に関与するか否かを問わず適用されることとされていますので、資料2-1の右側の図でいいますと、ケース1、ケース2のいずれの場合も業務制限の対象になっています。
共働き世帯の増加や監査法人の大規模化が進んでいる中で、監査の独立性の確保という本規定の趣旨に立ち返って考えますと、配偶者の勤める企業の監査に関与しない場合、図でいいますとケース2の場合についてでありますけれども、この場合は独立性に及ぼす影響は限定的であると考えられますので、業務制限の対象外とすることを提言いたしました。
このほかにも、いわゆる組織内会計士を念頭にした登録事項の整備、公認会計士の資格要件である実務経験期間を「2年以上」から「3年以上」にすること、公認会計士の登録抹消規定の整備、そして日本公認会計士協会による会計教育活動の推進、以上4点についても見直しを提言しています。
なお、前回の総会で御指摘のありました監査法人の守備範囲の広がりや、それを踏まえた試験制度のあり方についてですけれども、これらにつきましては、腰を据えた議論が必要な中長期的な課題として部会の報告に記載しております。
以上、簡単でございますけれども、公認会計士制度部会報告の主な内容となります。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、本年1月11日に公表されました「資金決済ワーキング・グループ」の報告について、同ワーキング・グループの座長を務められました神作委員から御説明をお願いしたいと思います。
神作先生、どうぞよろしくお願いいたします。
○神作委員
神作でございます。それでは、「資金決済ワーキング・グループ」報告について、主なポイントを御報告させて頂きます。資料3-1を御覧ください。
本ワーキング・グループは、昨年9月の第47回金融審議会総会において、金融担当大臣より、安定的かつ効率的な資金決済に関する制度のあり方について検討を行うよう諮問を受けて設置されました。その後、10月から12月にかけて計5回にわたり、主に3つのテーマについて議論を行い、その内容をまとめたものが本日御説明させて頂く報告となります。
まず、銀行等におけるAML/CFTの高度化・効率化に向けた対応について御説明申し上げます。資料3ページを御覧ください。
金融のデジタル化の進展やマネー・ローンダリング等の手口の巧妙化等を踏まえ、銀行等におけるAML/CFT、すなわちマネロン等対策の実効性向上は喫緊の課題となっています。
こうした状況を踏まえ、銀行業界において、マネロン等対策業務の共同化による高度化・効率化に向け具体的な検討が進んでおりますが、その業務運営の質を確保するため、一定以上の規模等の共同機関に対する業規制のあり方について本ワーキング・グループで議論を行いました。
具体的な業規制の内容については、資料4ページを御覧ください。報告書では、銀行等の為替取引に関する取引モニタリング等を共同機関の行う業務とし、これらが的確に行われるよう、一定の参入要件や兼業規制、個人情報の適正な取扱い等について整理しております。
このほか、報告書では、マネロン等対策業務の円滑かつ実効的な実施に当たっては、定期的な本人情報の確認等について国民の理解を得るため、国民への周知・広報など官民一体となった取組が求められると整理しており、昨年9月の総会での御意見を踏まえたものとしております。
次に、金融サービスのデジタル化への対応のうち、電子的支払手段に関する規律のあり方について御説明申し上げます。資料6ページを御覧ください。
2019年6月のいわゆるリブラ構想以降、グローバル・ステーブルコインに係る規制監督上の対応等に関する議論が行われ、国際的に「同じビジネス、同じリスクには同じルールを適用する」との原則が合意されています。これを踏まえ、米国や欧州でも、いわゆるステーブルコインについての規制案の検討が進められています。
このような金融のデジタル化の動きを念頭に、昨年11月の前回の総会でも紹介がありました「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」の「中間論点整理」の内容を踏まえ、いわゆるステーブルコインについて、具体的な制度設計の議論を行いました。
資料7ページを御覧ください。いわゆるステーブルコインのうち、法定通貨の価値と連動した価格で発行され、発行価格と同額で償還を約するものについては、送金・決済の手段、すなわちデジタルマネーとしての規律を適用することが適当であると整理いたしました。
現行のデジタルマネーに関する国内の法制度は、銀行や資金移動業者といった発行者が責任を負う形でのサービス提供が想定されていますが、本ワーキング・グループでは、現在、米国等で発行・流通しているステーブルコインのように、発行者と仲介者が分離し得ることを前提に検討を行い、仲介者による行為を新たに業規制の対象とすること等が提言されています。
なお、報告書では、民間事業者の発行するデジタルマネーに関する制度整備の検討は、利用者保護やマネロン等対策としての側面のほか、民間事業者が決済の効率化等に向けた様々な取組を試行できる環境整備としての意義があるとしています。また、国内の決済サービスをマクロで見た規模に触れつつ、今回の制度整備によって決済サービスの利便性向上等が期待されるとしておりますが、これらのいずれも、昨年9月の総会での御意見も踏まえて整理をしたものでございます。
最後に、金融サービスのデジタル化への対応のうち、「前払式支払手段に関するAML/CFTの観点からの規律」について御説明申し上げます。資料9ページを御覧ください。
前払式支払手段のうち、高額で電子的に価値の移転が可能なものについて、昨今のサービス提供の動向等を踏まえ、マネロン等対策の観点からの適切な規律のあり方等について議論を行いました。
報告書では、こうした高額電子移転可能型前払式支払手段の発行者に対し、利用者保護等の観点から、資金決済法上の業務実施計画の届出を求めることで、当局のモニタリングを強化することや、犯収法に基づく取引時確認等の規律の適用関係を検討すべきことが提言されています。
以上、簡単ではございますが、「資金決済ワーキング・グループ」報告の主なポイントの御報告とさせて頂きます。どうもありがとうございました。
○神田会長
神作先生、どうもありがとうございました。
それでは、討議に入りたいと思います。
今の2つの報告ですね、「公認会計士制度部会」からの報告、そして「資金決済ワーキング・グループ」からの報告につきまして、委員の皆様方から御質問、御意見等をお出し頂けましたら大変ありがたく存じます。恐縮ですけれども、チャット機能を利用して、御発言頂ける方は全員宛てに1行、「発言希望」などとチャットを入れて頂ければありがたく思います。いかがでしょうか。
ありがとうございます。岩下委員、どうぞお願いいたします。
○岩下委員
岩下でございます。御指名どうもありがとうございます。本日御報告頂きました「公認会計士制度部会」及び「資金決済ワーキング・グループ」の両方の報告書及び御説明内容につきまして、コメントを述べさせて頂きます。
まず、「公認会計士制度部会」の報告につきましては、これは喫緊に必要とされる制度的な改正についての御検討を頂き、御報告頂いたということで、これ自体の内容については全て賛同するものでありますが、報告書の最後の19ページの下のところに、今回の検討は制度面を中心に検討を行ったのであるけれども、今後さらに検討を要する部分としてデジタル対応等という話が書かれてございます。こちらにつきましては、今後さらに「公認会計士制度部会」として必要に応じて検討を進めていくと書かれてございますので、ぜひ御検討を進めて頂きたいわけですが、とりわけ、前回の議論のときに論点となって、必ずしもAIという言葉を使うべきかどうかというのにはこだわりませんけれども、様々な会計監査事務のオートメーションというか、自動化というか、そういったようなものが既に幅広く行われているかと思います。例えばAIと会計監査といった報告書が幾つかの大手会計事務所から出ておりますし、それらの中では、例えば現在の事務における様々な証票の照合であるとか、様々な会計情報の確認の事務のかなりの部分を人手ではなくて電子的な、あるいは人工知能による処理に任せるということも検討をされているということの記述がございます。これらの事務については、もちろん、進んでいるところ、進んでいないところ、いろいろあると思うんですけれども、私が気にしているのは、進んでいる部分について、ぜひ現在の制度によってそれが止められないようにして頂きたいということです。
どういうことかと申しますと、どうしてもこの種のきちんときっちりがっちりやる制度というのは、従来のとおりの仕組みでやろうという力が働きがちです。しかし、今、様々な会計事務であるとか企業内の経理事務の中で電子化が必要になっている。それは金融の世界の観点から見ても、もともと金融というのはかなり早い時期に電子化を達成していた分野ではありますが、一方で、いまだに紙の様々な書類が残っているという批判にさらされるケースも多々あるわけです。紙が残っているがゆえに金融機関のコストがいっぱいかかってしまって、それが機関自身の経営にもよろしくないし、あるいは日本全体の効率化、生産性の向上という観点からもよろしくないという現象が生じているとすれば、そういう部分を積極的に新しい技術に置き換えていくということは大事なことであろうと思います。そうはいっても、例えば会計であるとか、税務であるとかといった伝統的な規制のある部分で、それらのものが従来のやり方を踏襲しなければいけないから、全体の電子化・合理化が阻害されるということが往々にして起こりがちであるというのは、一般論として言えるかと思います。そういうことにくれぐれもならないように、新しい技術の採用についてはいわゆるプリエンプティブな規制上の対応というのがぜひ必要であって、それがまだ緒についたばかりのものであって、判断が難しい部分はあると思いますが、そういう部分についてもぜひ積極的に今後審議をしていって頂きたいというのが第1点でございます。
第2点は、「資金決済ワーキング・グループ」へのコメントでございます。まず、銀行等におけるAML/CFTの高度化につきましては、これはもうFATFの審査を受けて、日本としても不退転で取り組まなければいけない重大な問題でございますので、これを取り組まれるということは極めて適切であり、かつ、こういった形での共同機関を設立してAML/CFTに対する対策を講じて頂くということは、例えば、個人の信用情報についてCICのような組織が既に設立されて金融機関が共同で利用しているという実態もありますし、そういう組織が存在することによって、例えば個人が過剰な借入れを行うことが未然に防止できたり、あるいは金融機関が不適切な融資を行ってしまうことを予防できたりするという意味では、実際に有効に機能しているところですので、それと同じような形でこういう組織を稼働させるというのも、これも非常に大事なことであろうと思います。
私が1点気になりましたのは、4ページの情報システム・プログラムのところのパラメータを共有してもいいという記述です。これは個人情報保護法において、委託でやるのか、それとも第三者提供になるのかという部分について、基本的にここのデータのやり取りは委託であるので、第三者提供に係るデータの第三者提供に係る当該個人からの都度の許諾というのは受けなくてよいのだけれども、その代わり、それらのものから抽出したパラメータは、個人データから抽出されたものであっても個人を特定はできなくなっているので、これ自体は共有してもよい、つまりは第三者提供には当たらないけれども、これらのものをこの組織が共有することを認めるということだと思います。もちろん、その結論に異論はないんですが、もともとこういったAMLに対応するものというのは公益に資するものでありますので、個人情報を適切に利用しなかったからプライバシーの侵害が問題になる度合いはかなり低いものだと私は考えております。ただし、気になるのはこのパラメータという表現でありまして、最近のこの種のデータを分析する場合に、もちろんこれは分析の仕方にもよりますけれども、一般の最小二乗法で推定した単純なパラメータの値というものだけではもちろんない、もっと複雑な構造を持ったものが、ここでいうパラメータに存在するものであるだろうと思います。いわゆる深層学習における学習結果に当たるものだと思いますが、それらのものの中には、完全に個人データから分離されるかというと、そこの部分はなかなか難しい部分があるのかなと思います。その場合に、パラメータという言葉が極めてシンプルな数字だけを意味するもののように捉えられてしまうと、あまり適切ではないと思います。こういう組織がAIで学んだ結果というのは非常に有用なものですし、それらのものが共有されることは望ましいことなので、そこの部分についてそれをあまり狭いものと解釈しないように、ぜひ工夫をして頂きたいとお願いしたいと思います。
このパラメータというのが、単純な統計数値みたいなものだから問題ないと考えたとすると、実際はそれよりももうちょっと複雑な学習の過程を経たデータである可能性があって、そういうものであったとしても利用可能にするというためには、例えばCICにおいて現在使われているような、様々なデータをこういう共同機関に渡すことについての許諾のようなものをむしろ取ったほうがいいのかもしれません。それについての検討も、これから実際の実務での利用について検討して頂きたいわけですが、少なくとも、そうしないことによって高度なAI技術の利用というものを妨げることがないように工夫して頂きたいというのが1点でございます。
最後の点でございます。長くなくなって申し訳ございませんが、ステーブルコインの話についてです。このステーブルコインの問題については、いわゆるリブラ構想があって、それに対応するため米欧の規制もあり、日本としても遅滞なく対応していくことはぜひ必要だと思います。リブラと同じようなものが国際的に提案されて、それが日本の国内にどんどん入ってくるということになってはあまり望ましくないと思いますので、それについてはきちんとした準備が必要です。現時点でリブラ的なものが日本に入ってくることが本当にあるのかというと、それは現実的にはあまり可能性はないように私は思っているんですが、いずれにせよ、この種の対策を事前に講じていくことは大事であろうと思います。
ただ、一方で、現在もう既に、暗号資産の世界で使われるステーブルコインが、全世界で十七、八兆円程度発行されておりますし、それらの中には、実はここの中で挙げられたような投資家保護・消費者保護に問題が生じかねないようなものも含まれています。それらは今のところ暗号資産取引に使われるものですので、少なくともリブラと同じように議論する必要はないと思っています。デジタルマネー類似型で発行額と同額の償還を事実上、約しているものとして、TetherやDaiが存在します。それらのものが多分この定義には入らないという理屈だと思うんですが、どちらかというと、それらは暗号資産の取引のために専ら使われるもので、国内で一般的な決済には利用されないから、対象外であるという理解でいいと私は考えています。そうでないと、リブラとTetherの実質的な違いはどこにあるのかが改めて問われることになり、ちょっと難しい話になってしまうのではないかと思いましたので、その点だけコメントとして述べさせて頂きます。
私から以上です。ありがとうございました。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは次に、川口委員、どうぞお願いいたします。
○川口委員
ありがとうございます。私から2つの報告書についてコメントさせて頂きます。
まず、「資金決済ワーキング・グループ」報告ですけれども、マネー・ローンダリング対策について、金融業界が全体としてこれに取り組むということは重要で、その方策として共同機関を設立するということは適切なものと思います。
この共同機関について、少し細かいことですが、組織について質問があります。参入要件を拝見すると、一定の財産的基礎があり、また、適切なガバナンス体制の確保や資金調達の容易性等から株式会社形態が基本となるとあります。「基本となる」という書きぶりはややファジーでありますが、場合によっては他の組織形態も考えられるということでありましょうか。
また、仮に、株式会社を念頭においているとして、この会社の株主といいますか、出資者はどのようなものを想定されているのでしょうか。参加する銀行などでしょうか。
また、株式会社は、会社法のテキストでは、営利を目的とする企業体と説明されますが、この会社の事業はそもそも利益が上がるようなものなのでしょうか。
ガバナンスという点では、金融庁による検査や監督が予定されているようでありまして、株主による市場規律を働かせる必要もないように思います。また、どれほどの規模を想定されているのか分かりませんが、内部統制による規律もどこまで必要なのかなという気がいたします。必ずしも組織体として株式会社に反対するというものではありませんけれども、これにこだわる必要もなかったのではないか、とも思い、これらについて、どういう議論があったのか教えて頂ければと思います。
2つ目に、「公認会計士制度部会」の報告についてですが、今回、上場会社の会計監査について登録制を採用するという点ですが、上場会社の会計監査結果の信頼をより向上させるという点で、その方向性に賛成いたします。
登録制の採用については、既に日本公認会計士協会が上場会社監査事務所制度を設けて、上場会社の監査を行う場合に登録を要求し、また、取引所の規則でも、金融商品取引法上の財務監査について、上場会社監査事務所による監査を受けることが上場の形式要件としております。この点で、今回の提言は、これらの自主規制を法律上の制度として位置づけるという点に意味があると理解をいたしました。自主規制から格上げの側面もあり、日本公認会計士協会の責任も重くなり、体制整備も急がれるところです。
御説明の資料によりますと、登録に際して、日本公認会計士協会が適格性を確認するとあります。この確認の意味なのですが、登録あるいは登録の取消しの権限も与えるのか、あるいは、従来の行政処分のように、金融庁が最後にそれを行うことが前提で、協会には、勧告権限などを与えるということなのか、この点、教えて頂ければと思います。
長くなって恐縮です。最後に、監査機関の規律づけを強化する手段の1つとして、監査法人のガバナンス・コードの受入れを求めるということでした。これはまさしく監査法人のコードですので、これを遵守させるためには監査法人である必要があります。一部の個人事務所も上場会社の監査を行うところがあるようです。登録要件をどういうふうに設定するのかによりますが、個人事務所の法人化への誘導がなされるということかと思います。
他方で、このコードは、監査法人の中でも大規模な監査法人による組織的な運営を念頭に置いているものも多く見られます。コードの遵守を求めるとして、中規模の監査法人などには遵守が難しいものもあるように思われます。これはコンプライ・オア・エクスプレインですので、守れなければ、エクスプレインすればよいのかもしれませんが、一方で、上場会社の監査の品質向上には一定の水準は必要になると思いますので、このバランスが気になるところであります。これは以前からある問題なのかもしれませんけども、今回の改正を契機に、このコードの中身ももう少し細分化が必要ではないかと思った次第です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
御質問を頂きましたので、1点目は端本さんでよろしゅうございますか。お願いします。
○端本信用制度参事官
信用制度参事官の端本でございます。
まず、マネロンの共同機関の関係、御質問頂いた件ですが、利益が上がるのかという点につきましては、この共同機関のサービスの利用者として想定されます銀行等からユーザー・フィーを徴収して業務を行っていくことを想定しております。そうしたこともありまして、株式会社基本ということで取りまとめて頂いておりますけれども、基本ということですので、その他の形態もあり得るということかと考えております。
出資者につきましては、今回のこの共同機関、全銀協での検討を契機として制度的対応ということで議論させて頂いたわけですけれども、今後の検討によるということかと思います。現時点で、誰が出資者になるとか、そこまでの議論が進んでいるものではないというふうに承知しております。
以上でございます。
○神田会長
ありがとうございました。
それでは、2点目は井上さん、お願いします。
○井上審議官
日本公認会計士協会が上場会社の監査をする事務所の登録を求める際に適格性を確認するということを前提に、登録の取消しの権限も公認会計士協会に委ねるのかというような御質問だったと思います。当然、適格性を確認して頂く、それは「公認会計士制度部会」の報告書ですと5ページ辺りに、例えば一定の社員数を有すること等を要件とするというふうなことが提言されているわけですけれども、そのようなことを確認して頂いて、その適格性を満たさないというような場合には日本公認会計士協会に取消しをして頂くということを念頭に、法案の策定作業を進めているところでございます。
以上でございます。
○神田会長
ありがとうございます。
○川口委員
ありがとうございます。行政処分の権限を日本公認会計士協会に与えるという趣旨ということでしょうか。
○井上審議官
引き続きお答えさせて頂きます。前提条件としまして、監査法人に対する解散命令等の権限については、当然、公認会計士法の現在の規定どおり、それは当局に処分権限があるという理解でございます。今回、新たにそれに加えて、上場会社の監査をされる監査法人に対しての登録制度、これを公認会計士協会に登録されるということですけれども、その部分については公認会計士協会に登録の取消し権限を委ねるということでございます。
○川口委員
ありがとうございました。
○神田会長
それでは、川口先生の3点目は御意見かと思いますので、ガバナンス・コードをきめ細かくというのは御指摘のとおりかと思います。どうもありがとうございます。
それでは、先に進ませて頂きます。チャット欄に記入頂き、ありがとうございます。順番が、原田委員、渡辺委員、佐々木委員、松井委員の順になるかと思います。
それでは、原田委員、お願いします。
○原田委員
2つの報告書の取りまとめ、ありがとうございました。
「公認会計士制度部会」の報告書に関係することで少々意見がございます。そして、資金決済ワーキングに関することで要望が1点ございます。
まず、「公認会計士制度部会」の報告書に関係することとしましては2つございまして、1つは、上場会社の監査を担うのは、会計士個人ではなく監査法人であってほしいという点についてです。もう1つは、最近相次いでいる不正会計をめぐる議論について、これは部会で直接議論したことではございませんが、関係する点について申し上げます。
まず、不正会計に関することで、最近メディアでも取り上げられていますので皆さん御存じのところだと思いますが、上場前からの不正会計が発覚してマザーズに降格になった東証第一部企業ですとか、もうすぐ上場廃止になる同じく東証第一部企業がありますけれども、相次いでいるということで、新聞などでもいろいろな議論がなされているところであります。
議論の1つは、人員の伸びより業務が増えているから、つまりは制度疲労だというような議論もありまして、あるいは新制度になって若年齢化が進んでいって能力が下がったといったような意見もありますけれども、考えてみれば、上場会社の数は4,000社を超えますので、確率論的に不正を働くインセンティブを持っている人たちの不正を100%見抜くというのは、これは非常に難しいことであろうと思います。人が足りないですとか、異変を感知する能力が若いから足りないとか、そういう見方だけでは対応できないということを前提に考えるべきであろうかと思います。
どういうことかと申しますと、コロナの感染者をゼロにできないように、長期的に粉飾決算をする企業をゼロにすることも恐らく無理なんじゃないかと思います。ですので、監査法人に責任を押しつけるということではなく、例えば、もう少し他の手だても考えていただきたいと思います。見方を変えて、経営者の刑事罰の金額ですとか、そういった他の抑止力を高めるということも併せて考えていくほうがよいはずです。現状では罰則が抑止力として働いていない、罰金の見直しなどを、しかるべき議論の場で議論して頂きたいという要望になります。
こういう話をしますと、大体、監督官庁による行政処分は重いものがありますとか、取引所など自主規制団体の課徴金の制度もあるといったような御説明を頂きますけれども、それでも前例主義で金額が昔から全然変わっていなかったりしますので、全般的な見直しというのも別の観点から必要ではないかと考えます。
投資家保護というのは、金融審議会でも重要な視点の1つでありますけれども、粉飾決算に関してもやはり投資家保護って重要なんじゃないかと考えます。パッシブ運用の機関投資家ですとか、年金基金、ひいては私たちも間接的に影響を受けているという見方もできます。なので、不正会計をなくすということは、報告書の話でいえば監査の信頼性の確保を高めるということにもつながるかと思うんですけれども、金融庁でできることがあれば率先して始めて頂きたいなと思いました。
もう1つ、「公認会計士制度部会」の報告書に関することで、これは具体的なことなんですけれども、5ページから6ページ目にかけてのところですが、公認会計士個人が上場企業の監査をすることに関する記述がございます。非常に数少ない1桁台の個人事務所がありまして、ここが複数の上場会社の監査をしているということで、これは部会でも議論してもめたところなんですけれども、公認会計士個人が上場会社の監査をするということについては、報告書でも書き方は非常に曖昧でありますけれども、今後、早急に見直すべき事項として頂きたいと考えております。
「資金決済ワーキング・グループ」の報告書に関して、1つ要望がございます。内容に関しては何も異論はございません。取りまとめありがとうございました。この「資金決済ワーキング・グループ」で扱っていることの他にもデジタル関連の内容というのは様々にあり、この資金決済ワーキング・グループの他の審議会などに分かれて、省庁横断的に議論がなされているところであります。例えば金融庁内でいいますと、デジタルトークンなどの話になりますと、資金決済のワーキング・グループのほうではなくて、有価証券を裏づけにしているから、電子的なものではあるものの恐らく市場制度ワーキングのほうで議論することになるという形だと思うんですけれども、1つの省庁の中だけでも複数の場で分かれて議論されています。経産省で議論される金融デジタルもありますので、経産省と共同して、協力してといったような内容もあるかと思いますので、どこで何を議論しているかについて、何か横断的に分かるマップのようなものがあると、一般の人にもメディアの人にも役に立つのかなというふうにちょっと漠然と考えております。可能でしたら作成して頂ければありがたく思います。要望になります。
以上になります。ありがとうございました。
○神田会長
どうもありがとうございました。それでは、最後におっしゃった点は、事務局でも御検討頂くということにしたいと思います。
それでは次に、渡辺委員、どうぞお願いいたします。
○渡辺委員
ありがとうございます。1点だけなんですけれども、まさに岩下先生がお話しされた2点目の点と全く同じ点です。そこについて、資料3-1の4ページ目のパラメータと書かれているところ、何をどこまで共有するのかという話ですけれども、これ、資料3-2のほうで対応するところを挙げると、明示的に「学習済みパラメータ(重み係数)」と書かれている。こういうデータを、私自身、分析するほうなんですけれども、今回のように特に低い確率の事象を分析していく場合を考えると、データセットそのものが大きいこと自体が分析の精度を上げていくことに直結していて、それぞれの金融機関の小さなデータセットから得られるパラメータの推定結果をたくさん集めてきても精度が上がるわけではありません。むしろそれぞれの小さなデータセットをうまく大きなデータセットにした上で推定することによってはるかに精度を上げることができると思います。ですので、まさにこれは岩下先生がおっしゃった点と全く同じなんですけれども、狭義の、「学習済みパラメータ(重み係数)」というふうに報告書に書かれてしまっているんですが、そうではなくて、より分析のもう少し前のほうですね、特定の個人との対応関係を除去したデータというぐらいのところを共有しないと意味がないと思います。個人情報、プライバシーの問題にも対応しながらデータセットとして必要な情報を共有することは可能です。今の書き方ですとかなり限定的で、かつ、あまり意味がないことになってしまいかねないので、もっと幅広く、学習済みの重み係数じゃなく、分析を始める前の段階で、特定の個人との対応関係を除去したレベルでの取引であったり、非常に細かいレベルのデータを共有できるようにすることが重要であり、そのような解釈が可能な、また、そういうような仕組みというのをつくって頂かないと、少なくとも分析という意味においては、あまり共同でやる意味はない形になってしまうのかなということを懸念しています。ですので、ここのところをあまり限定的に書かずに、もう少し幅広く解釈できるとよいと思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。若干音が途切れたところがあるのですけれども、また議事録で確認させて頂ければと思います。どうもありがとうございました。
それでは、続きまして、次は佐々木委員、どうぞお願いいたします。
○佐々木委員
ありがとうございます。2つのワーキング・グループからの報告、とてもよく分かりました。私からは、1つ質問と、1つ意見を申し上げたいと思います。
上場会社監査に関する登録制の導入に関して、まず、こちらはもちろん私も非常に賛成なんですけれど、そもそも、報告書はよく読んだつもりなんですが、いろんな環境変化があるということではあったんですが、大手監査法人のシェアが減って、中小規模の監査事務所のシェアが非常に増えてきているという根本的な原因に対応するという意味で、今回のこの対応でよいのかなというのがちょっと自分的には確認できなかったかなと思っています。
それに関連してなんですが、先ほどもちょっと御意見あったかと思うんですが、この登録制を用いることで、条件を満たしにくいために登録できなくなるというようなところが中小のところで例えば出てくるというようなものなのか、それとも、ほとんどのところは登録を満たせるという感じのものなのか、もちろん、これからのことなので分からないかもしれないんですけど、実際のところどういう程度のものなのかが分からなかったので、もしよろしければその点について感触があったら教えて頂きたいと思いました。
もう1つは、「資金決済ワーキング・グループ」の報告について、特に7ページの脚注の27にちょっと関係するところかと思うんですが、私のこだわりでもあるんですけど、検査・監督というところがどうしても具体的に分かりにくいなと思いました。例えば、システム関係って非常にリスク対策が難しくて、最近でも東証が停止してしまうとか、民間の銀行でもシステムの問題というのはよく話題になっております。これ、共同機関ということになりますと、やはり停止とか誤作動とかそういったものというのが起こってしまっては大変ということで、サブシステムをつくるとか、BCP訓練を義務づけるとか、いろんなことが必要になってくると思うんですね。また、注の27に触れられておりますけれど、やっぱりシステムを向上させていかなければいけないし、そういった努力がされているかということに対するモニタリングも必要になってくると思いますので、この検査・監督という形、またあと、ちょっと読んでみますと、銀行が共同機関に対して検査・監督ということも書かれているんですけれど、かなりこの部分をしっかりしないと、運営上、検査・監督はされるって言われると、できちゃうように思えるんですけれど、やはりこの部分のしっかりした対応をぜひお願いしたいなと思いました。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
御質問がございましたけども、井上さん、よろしくお願いします。
○井上審議官
佐々木委員の1点目の御質問についてお答え申し上げます。中小監査法人がいきなり登録できなくなるようなレベルのものを求めるかどうかというような御質問だと理解させて頂きました。報告書の5ページ、6ページの辺りに関連の記述はございますけれども、基本的には、現行の上場会社を監査していらっしゃる方が突然監査できなくなるというようなことは望ましくないということもございますので、当初は、現行の監査をやっていらっしゃる方がある程度を満たせるような基準というのを考えているということではございます。ただ、報告書の5ページ等にございますように、中小監査法人等の体制整備の育成支援を日本公認会計士協会で担って頂きまして、それに併せて、その適格性に関する要件の見直しも将来的には行っていくということが御提言されているものと理解しております。
○神田会長
よろしいでしょうか。
○佐々木委員
はい、ありがとうございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、次に進ませて頂きます。次は、松井委員、どうぞお願いいたします。
○松井委員
御報告2つ、ありがとうございました。私も佐々木委員と川口委員の御質問に関連する部分になりますが、共同機関について少し意見を述べさせて頂きたいと思います。
先ほど御指摘がありましたとおり、この報告書が出た後、具体的にどういう共同組織をつくって監督していくのかを考えていくという段階に入っていくかと思います。この際、事務局のお答えのとおり、まだ株主構成などについてはオープンであるということではありましたけれども、川口委員、それから佐々木委員の御指摘にありましたとおり、システムの設計思想であるとかセキュリティーレベルの確保、この後の運営費用のつくり方など、様々な点において予想が難しく、裁量に委ねるべき部分はいろいろあるかと思いますので、柔軟な事業上の対応ができるような組織をつくるということは必要であろうということから、個人的には株式会社という組織を使うということも一案かと思います。けれども、他方で、例えば銀行業に関連する者が中心的な株主になったと仮定した場合にも、今後、銀行以外の事業者が例えばそのデータを利用するといった可能性も考えられ、そのような将来的な事業上の変更等にも備えられるような設備投資の可能性を考えるなど、ある程度中立的な視野に立った決定もできるような運営が確保できる必要もあると思いますので、組織形態について、オープンかつ慎重な議論ということをお願いしたいと思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは次に、河野委員、どうぞお願いいたします。
○河野委員
日本消費者協会の河野でございます。御説明頂いた2つの議案については、私のような一般消費者としてはやや距離のあるテーマでございますが、受け止めを申し上げたいと思います。
1点目の公認会計士制度については、会計制度の信頼性確保と公認会計士の能力発揮・能力向上を目指したという御提案に賛同いたします。2022年の1月から改正電子帳簿保存法が施行されましたし、2023年の10月からは消費税のインボイス制度が始まるなど、会計制度全体の状況変化に戸惑わずに、デジタル環境に呼応した監査の品質向上と、加えて、企業の評価においては、ESG投資の視点から非財務分野での適正な情報開示が求められておりますところ、公認会計士の皆さんに対しては、これまで以上に健全な企業会計を堅固に支える役割が期待されていると思います。今回の提案は、日本の企業の競争力強化のためにも、ぜひ整理された内容が早期に効果を発揮できるように関係各所でしっかり取り組んで頂きたいと考えています。
2点目の「資金決済ワーキング・グループ」の報告については、私もメンバーとして議論に加わらせて頂いておりまして、今回の取りまとめを支持いたします。電子的支払手段や前払式支払手段の規律のあり方については、関係事業者の皆様からは御懸念もあったところですけれども、抜け穴を残さずに国として包括的な対策を示すという点で今回の整理は有効だと考えています。関係当局は、多分今日からだと思いますけれども、非上場を含む株式会社約350万社に大株主に関する情報の提出を求めていますし、また、法制審議会では、マネー・ローンダリングを処罰する罪の法定刑の上限を引き上げるよう、組織的犯罪処罰法の改正が議論されるという報道を耳にしました。国際社会の懸念払拭のためにも、多様な関係者が同じ方向を向いて対策強化を進めていくという姿勢を明確にすることが重要だと考えますし、私たち一般国民を対象とした顧客情報の把握についても、国を挙げての対策の一環であるという視点でしっかりと広報を展開して頂くことで協力を求めていくという形になれば、実効性が担保されるのではないかと考えております。
私からは以上でございます。ありがとうございました。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは次に、翁委員、どうぞお願いいたします。
○翁委員
翁でございます。御報告どうもありがとうございました。2つのそれぞれの報告についてコメントを申し上げます。
資金決済ワーキングのほうは参加させて頂いておりました。今すぐに必要な対応についてきちんと整理されていると思います。一方、国際的にステーブルコインやCBDCなどの動きというのはいろいろな動きが出てきておりますので、さらに国際的な情勢なども見ながら議論をしっかりと深めていくということが必要だと思っております。
もう1つ、公認会計士のほうでございますけれども、こちらも今回、会計監査の信頼性確保や能力発揮についての必要な項目が網羅されているというふうには思っておりますが、1つ申し上げたいと思っておりますのは、やはり経済社会の情勢の変化ということでは、かなり投資家の判断においてもSDGsということが重視されるようになってきていると思います。恐らく公認会計士はGについてはかなりの御知見があると思うんですが、EとかSについては、さらに知見を深めつつ、様々な専門家とも連携して開示情報の信頼性を確保していくということへのニーズも高まっていくものと思っております。無形資産など非財務情報の領域にも信頼性を付していくというような方向で取り組んで頂くことで、さらに経済情勢変化を踏まえて信頼性を確保されるような方向で検討していくことが期待されると思っております。
以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
チャットを頂いている委員の方々からの御発言はこれで一通り御発言頂いたということかと思いますけれども、他の委員の方々、あるいは一度発言された方、二度目ももちろん歓迎ですので、さらに御発言頂ければぜひチャット欄でお知らせ頂きたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
ありがとうございます。小林委員、どうぞお願いいたします。
○小林委員
2つの取りまとめ、ありがとうございます。私、基本的にどちらも賛成しております。共同機関につきましては、やはりマネロン等の対策、マネロン等の確認というのは、各金融機関の情報収集能力によって精度を高めるというのは非常に難しい問題でございますので、ここについては、もちろん個人情報の使い方ということに関しては十分留意をした上で、一方で、共同機関であるからこそできるような情報の収集の仕方、データの集め方というのをして頂いて、それをぜひ活用して頂きたいと思います。
それから2点目は、公認会計士の件についてです。今、翁さんがおっしゃられましたように、これから非財務についての開示が進んでいく中で、公認会計士もその情報・知識の質の担保についてはそれなりに負荷がかかってくると思います。今までの公認会計士の皆様のスキルは、必ずしも非財務が専門ではございませんので、そういった点の今後の質の向上ということを図るという意味においても、今回のこの提言について私は賛同いたします。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは次に、山本眞弓委員、どうぞお願いいたします。
○山本(眞)委員
山本です。川口委員が御発言されたことと全く同じことを考えていたので、何かもういいかなと思っていたのですが、やはり御回答にあったように、株式会社か、営利はどうやって商売するんだろうと一瞬思っていたのと、あと、もちろん株主としてどういう人がイメージされているのかとか、この共同機関のところについてはもっと知りたいなと思っておりました。先ほどの御説明ですとこれからという感じもありますので、この間に、各委員がおっしゃった検査・監督のところとか、あとパラメータというか、個人情報の扱いをどうするのかとか、具体的な検討をきちっとして頂きたいなと思っている次第です。
それから、公認会計士のところですが、やはり時代が変わってきているというところで、報告書の中期的な課題というところも取り上げて頂いていましたけれども、監査法人の運営実態が非常に多様化しているということを前提にして、これから形態のあり方については検討するというふうに書いて頂いていますが、多分ここら辺の実態に合った方策をこれから考えていくという必要があると思いますので、ぜひ検討を継続して頂きたいと思っております。
何か皆さんとダブってしまっていますが、以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
他にいかがでしょうか。佐々木委員、どうぞお願いします。
○佐々木委員
開催方法について希望だけ申し上げたいんですけど、事前に事務局の方ともお話ししたんですが、ハイブリッドでやる場合に、会場を映して頂いているのは非常に分かりやすいんですが、会場で御発言頂いている方のお顔が私たちから見えないというか、非常に小さくて見えないので、もしできましたら、例えば、よくハイブリッドのときにやりますけど、会場におられる方も発言されるときは個々のカメラで発言して頂いて、全体を映すカメラと別にして頂くと、どなたが発言されているか分かりやすいかと思います。神田先生のお顔もよく見えないような状態なので、もし何か開催方法で映し方など改善ができるようでしたら、希望として申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。
○神田会長
どうもありがとうございます。私も多分、目の前にパソコンを置かせていただいていますので、時間を取って恐縮ですが、これをオンにすれば映るのではないでしょうか。ですから、承知いたしましたというか、ちょっと検討していただいて、事務局から回答とか御発言頂くときに、その方の前に、今日ちょっと局長の前にはパソコンが見当たらないですが、パソコンを置くなりして工夫させて頂きたいと思います。どうも貴重な御指摘ありがとうございます。
それでは、吉戒委員、どうぞお願いいたします。
○吉戒委員
吉戒です。今日の基本的な2つのテーマについては、いずれも賛同です。
共同機関の件について少しだけ、実は皆さんの意見と大分かぶるんですけども、先ほども、株式会社であるのかどうかとか、あるいは、その場合、株主がどうなるのか、非常に興味深いところでもありますし、この共同機関というのは恐らく、利用する金融機関によって設立されるのであろうと思うんですけども、この利用する金融機関の経営サイズというのは本当に大小様々であろうと思います。それから、当然、この機関を利用する頻度といいますか、非常に頻繁に利用をする金融機関もあれば、そうでないところもあると思うんですが、この共同機関というのは実は一番使わないところが一番必要とするのではないかと思うんですね。今後、出資を募る場合の出資負担の割合であるとか、費用負担とか、これはこれからの制度設計の中で議論されることだと思うんですけれども、そういった点も十分考慮して頂いて検討を進めて頂きたい。具体的な設計というのはまだ今の段階では見えませんが、そういったものについても逐次お教え頂ければと思います。
それから、この共同機関もそうなんですが、マネロン全般に言えることだと思うんですけども、この問題の重要性みたいなことについてもっと広く広報活動といいますか、これはぜひ当局にお願いしたいわけです。もちろん、金融機関の仕事としてこれは当然必要なことだと思うんですが、まだまだ一般にこれがそれほど重要な問題だという認知が進んでいるとはちょっと思いづらいかなという気がいたします。恐らくこういう共同機関ができても、あるいはできなくても、今もそうだと思うんですが、例えば外国送金1つするにしても、相当従来とは違う扱いを各金融機関でやっているはずなので、顧客サービスという面では、トラブルとまでは言いませんけど、いろんな面で難しい面もあろうかと思うんですね。ぜひこのマネロン対策の重要性について当局あるいは金融機関も含めて、もっと広報活動に力を入れるべきではないかなと思います。
以上であります。
○神田会長
どうもありがとうございました。
他にいかがでしょうか。私も1点だけ、時間稼ぎみたいで申し訳ないのですけれども、感想を申し述べたいと思うのですが、先ほど原田委員がおっしゃったことの全体像という話ですけども、全体像の意識の仕方ということで、デジタル資産の例で言いますと、セーム・ファンクション、セーム・ルールとか、今日の資料でも「same business, same risk, same rule」、という表現が使われていたと思いますけども、それが投資の対象として使われる場合には、現在の体系でいえば金商法の議論になり、支払いの手段として使われるような場合には資金決済法の範囲になるというのが、セーム・ビジネスなり、セーム・ファンクション、セーム・リスク、したがってセーム・ルールということかと思いますので、それは1つ意識するところで、両方に当たったらどうなるのかということはありますけど、両方に当たれば、本来両方なのですけど、必要な調整をするということかと思います。
もう1点、資金決済法の枠組みですが、今回、ワーキング・グループで各論を非常にきちんと丁寧にやって頂いていると思うのですけれども、意識すべきフレームワークということでいいますと、支払いの手段として使われるものが、あるいは決済サービス業とでも呼ぶべきものが、歴史を反映して、前払式支払手段発行業、それから資金移動業、暗号資産交換業と、こういうふうになっていて、もちろん銀行業がその他にあるわけですが、非常に1つ1つの各論はきちんとされているのですけれども、大きなフレームワークとして、その他にクレジットカードもありますし、意識するのであれば、やはりそれは決済サービス事業というか、決済サービス業ということで頭の中は意識しながら、各論というか、1つ1つ前へ進んで頂ければよろしいかなと思いました。
他にいかがでしょうか。御発言ございませんでしょうか。それでは、特によろしゅうございますでしょうか。今日も多くの貴重な御意見を頂きまして、誠にありがとうございました。
そこでということになるのですけれども、今回の2つの報告書、「公認会計士制度部会」の報告と「資金決済ワーキング・グループ」の報告、この2つにつきましては、これらをこの金融審議会として御了承頂ければ大変ありがたく存じますけれども、御了承頂けますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○神田会長
どうもありがとうございました。なかなかウェブでやりにくいのですけれども、どうもありがとうございました。それでは、御了承とさせて頂きます。
それでは、本日予定の議事は全て終了いたしておりますので、以上をもちまして、本日の金融審議会総会・金融分科会の合同会合を終了とさせて頂きたいと思います。
なお、本日の議事の模様につきましては、事務局から後ほど記者レクを行いますので、御承知おき頂きたいと思います。
また、今後の日程などでございますけれども、これにつきましては、事務局からまた後日、連絡をさせて頂きますので、よろしくお願いいたします。引き続きこの会議の運営についても改善を図りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
皆様方には、本日もお忙しい中を御参加頂きまして、誠にありがとうございました。以上で終了とさせて頂きます。どうもありがとうございました。
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以上
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