第48回金融審議会総会・第36回金融分科会合同会合議事録

  • 1.日時:

    令和3年11月22日(月曜)10時28分~11時40分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室(オンライン会議) 
     
    ○神田会長  
     それでは、ただいまから第48回金融審議会総会・第36回金融分科会合同会合を開催いたします。
     本日の総会におきましては、オンライン会議を併用した開催とし、一般傍聴はなしとさせて頂きます。報道記者の方々には、金融庁内の別室にて傍聴頂いております。議事録は通常どおり作成の上、金融庁ホームページにて、後日、公開させて頂く予定ですので、よろしくお願いいたします。
     会議を始める前に、いつもどおりの留意事項でございますが、御発言を希望される際は、オンライン会議システムのチャット上にて、全員宛てにお名前を御入力ください。それを確認し、私のほうから指名をさせて頂きますので、御自身の名前を名乗って頂いた上で、御発言をお願いいたします。
     それでは、本日は鈴木大臣に御参加頂いております。開会に当たりまして、鈴木大臣から御挨拶を頂き、続きまして、本審議会に対する新たな諮問を頂きたいと存じます。
     鈴木大臣、どうぞよろしくお願いいたします。
     
    ○鈴木大臣  
     皆さんおはようございます。金融担当大臣を拝命いたしました鈴木俊一でございます。よろしくお願い申し上げます。
     神田会長をはじめ委員の皆様におかれましては、常日頃より金融審議会に御尽力頂き、誠にありがとうございます。開催にあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
     先週、政府としては、新型コロナウイルス感染症対策に万全を期すとともに、「新しい資本主義」を起動させ、成長と分配の好循環を実現するため、総合的な経済対策を策定いたしました。
    新型コロナの新規感染者は大きく減少しており、今後は、感染拡大リスクを適切に管理しながら、一日も早く通常に近い社会経済活動の回復を図る必要があります。金融庁では、引き続き、民間金融機関による中小企業等の資金繰り支援に万全を期してまいります。
     また、ポストコロナを見据え、経済を自律的な成長軌道へと乗せていくため、未来社会を切り拓く「新しい資本主義」を実現する上で、車の両輪となる「成長戦略と分配戦略」を推進していくことが重要です。金融庁では、国際金融センターとしての機能向上や地方活性化等の成長戦略とともに、企業の人的投資の促進等、分配戦略に取り組んでまいります。
     これらの一環として、サステナビリティや非財務情報に係る開示の充実等についても推進してまいりますが、その前提として、開示の質を向上させ、資本市場に対する信頼性を確保するための公認会計士制度は極めて重要であります。そこで、本日は、公認会計士制度に関する調査、審議をお願いすべく、新たに諮問を行いたいと思います。
     金融庁では、本年9月より、「会計監査の在り方に関する懇談会」で、近年の会計監査をめぐる環境変化を踏まえた公認会計士制度の課題について検討してまいりました。この度、「上場会社の監査に関する規律付けの向上」、「公認会計士の能力向上・能力発揮策」を柱とする論点整理が行われたところです。
     これを踏まえ、公認会計士制度の改善に取り組むべく、具体的な制度整備に向けた調査・審議を担う金融審議会において、幅広い観点から忌憚のないご審議をお願いいたしたいと思います。
     それでは、諮問をいたします。

    2021年11月22日

    金融審議会
     会長 神田秀樹 殿

     金融担当大臣 鈴木俊一

     金融庁設置法第7条第1項第6号により下記のとおり諮問する。
     

     
     ○ 公認会計士制度の改善に関する検討
     
     会計監査を取り巻く経済社会情勢の変化を踏まえ、会計監査の信頼性確保や公認会計士の一層の能力発揮及び能力向上に資する公認会計士制度の改善に関する事項について検討を行うこと。
     
    以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。


    ○神田会長 
     鈴木大臣、どうもありがとうございました。
     それでは、カメラの方々におかれましては、ここまでとさせて頂きます。退室をお願いいたします。

     

    (報道関係者退室)

    ○神田会長  

     それでは、議事に入ります前に、本年9月の総会以降、委員の異動がございましたので、御報告をさせて頂きます。
     井村和夫委員が金融審議会委員を退任されまして、新たに冨田珠代委員が任命されました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
     それでは、議事に移らせて頂きます。本日の議事の流れについてですけれども、まず、今、大臣から頂きました諮問事項についての補足説明を事務局からして頂きます。続けて、「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」の中間論点整理、それに続いて、金融庁の経済対策項目について説明をして頂きます。その上で、全体について皆様に討議をお願いするという流れで進めたいと思います。
     それでは、まず最初に、先ほど大臣から頂きました諮問事項の補足説明につきまして、事務局の廣川企業開示課長から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
     
    ○廣川企業開示課長  
     企業開示課長の廣川でございます。よろしくお願いいたします。
     それでは、早速ですけれども、お手元の資料1-1、説明資料、公認会計士制度の改善に関する検討という表紙がついてございます資料に基づいて説明をさせて頂きます。
     こちらは先ほども大臣から御紹介を頂きました、「会計監査の在り方に関する懇談会」の論点整理についての概要を示させて頂いた資料でございます。この「会計監査の在り方に関する懇談会」は、今回開催しているわけですが、2016年3月にも一度開催の上、提言を取りまとめて頂いております。その際には、一番上の左上にあります大手上場企業の不正会計事案というのがありまして、その他海外の動向も踏まえての御議論を頂いたということでございました。
     今回は、資料の中程でございますけれども、会計監査を巡る環境変化と新たな課題ということで、1つは上場会社監査の担い手が拡大している。2つ目に、会計監査の品質管理の高度化が求められるようになってきている。また、海外においては、監査の在り方の見直しに向けた動向というのもあります。さらには公認会計士の働き方の多様化、あるいはAIを始めとする監査の技術革新の進展、こういった様々な動向がございまして、それも踏まえた上で、下にありますとおり、「会計監査の在り方に関する懇談会」におきましては、大きく3つ、会計監査の信頼性確保、公認会計士の能力発揮・能力向上、さらには高品質な会計監査を実施するための環境整備等々ということで、論点並びに対応の方向性というものを取りまとめて頂きました。
     次のページにまいりまして、特に本日は諮問事項が公認会計士制度の改善に関する事項について検討を行うこととされていますことも踏まえまして、公認会計士制度に関わる点を中心に説明させて頂きたく存じます。
     大きく1つ目の会計監査の信頼性確保のところでございますけれども、環境変化・新たな課題のところにありますように、企業活動が複雑化をして、さらに上場会社の多様性が広がる中で、中小の監査事務所を含めて、上場会社の監査の担い手の裾野が拡大しているといった現状がございます。
     また、会計監査の品質管理の高度化が求められている等々動きがありまして、こうした中で、特に対応の方向性の中で公認会計士制度に関わるものとしては、2つ目でございますけれども、上場会社の監査に高い規律を求める制度的な枠組みの検討をする必要があるというふうにされてございます。
     また、3つ目の四角のところの2つ目の点ですけれども、公認会計士・監査審査会による検査範囲の見直しをする必要があるということで、具体的に論点整理の中では虚偽証明に係る監査手続の検証も行えるようにすべきである。こういったことが記されてございます。
     大きく2つ目の柱、公認会計士の能力発揮・能力向上のところでございますけれども、環境変化といたしましては公認会計士の働き方の多様化ということで、具体的には、最近、女性の公認会計士の数が増えてきておりますけれども、女性活躍の進展をさらに図っていく必要がある。さらに組織内会計士、企業等にお勤めの公認会計士のことですけれども、こうした方々の数が増えてきているという環境変化がございます。
     こうした中で、右側、対応の方向性でございますけれども、1つ目の四角、監査法人の社員の配偶関係に基づく業務制限について見直しを検討する必要があるとされてございます。また、2つ目ですけれども、組織内会計士向けの指導・支援を広げるための方策の検討を行っていく必要性が掲げられてございます。
     続いて、公認会計士の能力発揮・能力向上の大きく2つ目として、監査基準の高度化やAIを始めとする監査の技術革新の進展といった環境変化がある中で、右側の対応の方向性のところでございますけれども、継続的専門研修(CPE)や実務補習・業務補助等の充実を図っていく必要があるとされてございます。この業務補助等の充実のところは、制度に関係する事項でございます。
     また、そこの箱の中の3つ目の四角ですけれども、継続的専門研修の受講義務を適切に履行しない者に対する対応ということで、この論点整理の中では、長期に継続的専門研修を受講していない者については、登録の取消しも含めた対応を検討することが求められるとされてございます。ここも制度に関係する事項でございます。
     公認会計士制度に関係するものについては、以上、私が申し上げた6点でございます。そういった辺りを中心に、金融審議会において御議論を頂きたいと考えてございます。
     なお、大きく3つ目の柱、高品質な会計監査を実施するための環境整備等ということで、直接的に公認会計士制度に関わるものでは必ずしもございませんけれども、より広く会計監査の信頼性を高めていくという観点からは、企業側においても監査役等や内部監査部門とのコミュニケーション、連携の強化を図っていく、あるいは内部統制の整備、運用状況の分析をした上で実効性向上に向けた議論を行っていく必要がある。こういった提言も頂いているところでございます。
     簡単ですけれども、説明は以上でございます。

    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは、続きまして、「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」の中間論点整理につきまして、端本信用制度参事官から御説明をお願いいたします。端本さん、よろしくお願いいたします。
     
    ○端本信用制度参事官  
     信用制度参事官の端本でございます。資料2-1「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」中間論点整理に沿って御説明させて頂きます。
     まず、1ページでございます。この研究会につきまして、社会経済全体のデジタル化が進む中で、金融のデジタル化が加速している。こうした中で、民間のイノベーションを促進しつつ、利用者保護などを適切に確保する観点から、デジタル化への対応のあり方等を検討して頂いております。
     下の図を見て頂きますと、真ん中でございますが、2008年、ブロックチェーン技術とビットコイン、いわゆる暗号資産が登場いたしました。その後、この暗号資産は左側の送金(デジタルマネー)、あるいは右側の証券、コンテンツ・著作物といった幅広い分野で使われるようになっております。
     こうした中で、これらのデジタル・分散型金融への対応についての課題全般、それから一番左側、送金(デジタルマネー)への対応について御議論頂きました。
     続きまして、2ページでございます。メンバーということで、神田会長、岩下委員、翁委員、神作委員、佐古委員に御参加して頂きまして、4回にわたり御議論頂きました。
     3ページでございます。開催実績でございます。まず第1回、ブロックチェーン技術の概要やメリット・デメリット、その活用に向けて考慮すべき実務上の課題、あるいはシステムの品質管理において考慮すべき観点から、現行システムの特徴と課題等々について御議論頂きました。
     第2回、分散型金融の時代に求められる規制のためのコミュニケーション、スマートコントラクトや分散型金融、いわゆるディセントラライズドファイナンスの利便性や問題点、そして規制上の論点などについて御議論頂きました。
     第3回、パーミッションレス型のブロックチェーンに関しまして、航空分野における取組について御説明をお伺いした後、パーミッションレス型の分散型台帳を利用した金融サービスに関する基本的課題、ステーブルコインをめぐる諸課題について御議論頂きました。
     第4回、日本銀行よりCBDCについての説明を頂いた後、パーミッションレス型の分散型台帳を利用した金融サービスに関する課題、ステーブルコインをめぐる課題、CBDCに関する留意点について御議論頂きました。
     4ページでございます。分散台帳の具体的なユースケースといたしまして、まず右側、パーミッションレス型の分散台帳というものがございます。これにつきましてはネットワークの参加は自由ということでございます。こうしたパーミッションレス型の分散台帳に基づいたサービスといたしまして、その下のTether(ステーブルコイン)という言葉でございます。
     下の表で見て頂きますと、例えばTether社のようなステーブルコインを提供している社が管理しているプラットフォーム、この左側のところは、発行者等々の管理の下で、本人確認が行われた社の間での取引ということになりますが、その右側の赤でシャドーをつけているところでございますが、本人確認のない当事者間での売買も許容されているということでございます。
     それに対しまして、左側のパーミッション型分散台帳につきましては、ネットワークの参加に管理者の許可等が必要となる形態のものでございますけれども、これにつきましては、分散台帳等を活用いたしまして情報共有を図るということで、その下にございます証券分野、あるいは資金決済分野における実証事業などが行われているという状況にございます。
     
    ○若原総務課長  
     失礼いたします。議事の途中でございますけれども、鈴木大臣はほかの公務の都合がございますので、ここで御退室されます。
     

    (鈴木大臣退室)

    ○端本信用制度参事官

     5ページにいって頂けますでしょうか。パーミッションレス型の分散台帳等を利用した金融サービスに関する基本的な課題といたしまして、ここの上の箱にありますとおり、複数のレイヤーが存在する場合、一部のレイヤーのみに中央管理者を置く形態でサービス提供をされている場合がございます。これに対しまして、従来の金融規制の枠組みは、金融機関が全レイヤーを管理する主体として存在し、規制の名宛人として管理責任を果たせる立場にあることを前提としております。
     こうした中で、対応の方向性と下にありますとおり、複数レイヤー全体を管理する主体が存在しない場合であっても、システム全体が技術・契約・制度・インセンティブ・信頼等によって規律づけられる必要があると御議論頂いております。
     また、それに関しまして、新しい技術の活用に対応していく観点ということで、規制当局と技術者コミュニティーを含む関係者間での対話、求められる機能・水準の共有等、規制当局側にも技術的素養を持った人物の確保等が求められるという御議論を頂いております。
     続きまして、6ページでございます。ここからはステーブルコインの現状等についての御説明になります。
     まず、左側の上ですけれども、主な暗号資産の市場規模ということで、8月末現在ですと、総額200兆円を超える規模となっております。
     その下でございます。主な取引所における取引高に占める暗号資産等の割合ということで、ステーブルコインが4分の3となっております。暗号資産の取引におきましては、ビットコインのような暗号資産とステーブルコインという形で取引する形態が幅広く広がっているという様子がうかがえます。
     続きまして、7ページでございます。主に暗号資産取引で用いられている海外発行のステーブルコインの概要ということで、各社ウェブサイト等から情報をまとめさせて頂きました。
     まず一番上、Tetherというところを見て頂きますと、発行者は現時点では香港ということですし、売買は暗号資産交換業者等々で行っている。それから、ベースになります台帳につきましてはパーミッションレス型の分散台帳ということで、先ほど御説明させて頂きましたとおり、本人確認を経ない者の間のPtoP取引が許容されているということでございます。
     それから、その右側、払込資金の管理状況等を見ますと、CP49%、社債等8%、貸付金4%ということで、クレジットリスクのある運用が6割を超えているということかと思いますし、この開示状況につきましても、監督当局の確認を得たものではないということに留意する必要があろうかと思います。
     右側のUSDCのスキームということで見て頂きますと、発行者、それから仲介者に分かれる形で、顧客にサービスを提供しているということでございます。
     その下、参考、Diem USD構想と左側にございます。これはもともと2019年夏に出ましたリブラ構想が、現時点でこういう形になっているということでございますが、発行者を銀行とし、分散台帳はパーミッション型の分散台帳にするという形で、現在はホワイトペーパーで公表されております。米国当局におきましても、ステーブルコイン、いわゆるペイメントステーブルコイン、決済型のステーブルコインについては発行者を銀行にするという方向性が出されております。それに沿ったものというふうに考えられます。
     最後に8ページでございます。こうした状況を踏まえまして、我が国においてステーブルコイン等に対してどう対応するかということでございます。
     まず、上のところに①②とありますとおり、デジタルマネー類似型のステーブルコイン、それ以外というものに分けまして、①につきましてはデジタルマネーとして規律する、②につきましては暗号資産や金融商品として規律するということでございます。
     その上で、デジタルマネー類似型について、発行者、仲介者、それから発行者と仲介者の関係等に関する規律ということで、ここに書いてあるとおり、規律を求めていってはどうかということで、この制度的な対応の細部につきましては、現在、金融審議会「資金決済ワーキング・グループ」で議論して頂いているところでございます。
     以上でございます。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは、続きまして、金融庁の経済対策項目につきまして、太田原総合政策課長から御説明をお願いします。太田原さん、よろしくお願いいたします。
     
    ○太田原総合政策課長  
     それでは、資料3を御覧ください。先ほど鈴木大臣から御紹介がありましたとおり、先週19日に「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が閣議決定されました。本日は、そのうち金融庁関連部分につきまして御説明いたします。資料の1ページを御覧ください。まず、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者への支援として、資金繰り支援に万全を期すこと、自然災害やコロナの影響を受けた個人・個人事業主の生活・事業の債務整理支援等が盛り込まれております。
     次に、2ページになります。未来社会を切り開く「新しい資本主義」の起動として、グリーンボンド等の客観的な認証枠組みや情報プラットフォームの整備、サステナビリティに関する国際的な開示枠組みの策定の推進、スタートアップの国内での資金調達を改善する観点からの制度の検討などが盛り込まれたほか、3ページになりますけれども、本文で事業承継・引継ぎ、事業再生等の支援、中小企業の私的整理等のガイドラインの年度内策定、経営者保証に関するガイドラインの活用、下のポツになりますけれども、地域金融機関等による人材マッチング支援、銀行等向け資本規制の柔軟な運用を通じた事業者支援に資する貸出余力の確保、そして4ページになりますけれども、非財務情報開示の充実や四半期開示見直しなどの一体的な市場環境整備、金融機関職員の地域・組織・業態を超えた事業者支援のノウハウ共有や兼業・副業の普及促進などが盛り込まれております。
     このほか、この対策の文言上は「等」の中に含まれて、特段明記はされておりませんけれども、先ほど廣川企業開示課長から御説明がありました上場会社の会計監査を担う監査事務所の信頼性の確保、端本信用制度参事官から御説明がありました送金手段等のデジタル化に対応した制度整備の検討なども、経済対策の一部と位置付けております。
     簡単ではございますが、私からの説明は以上です。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは、以上の御説明を踏まえて、討議に入らせて頂きたいと思います。
     御説明は3つありまして、1つ目が先ほど大臣から頂きました諮問事項についての補足説明、2つ目が「デジタル分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」の中間論点整理、そして今、3つ目として金融庁の経済対策項目ということですけれども、どの項目についてでも結構ですので、御質問、御意見等をお出し頂ければありがたく存じます。どなたからでも結構でございます。冒頭に申し上げましたようにチャット機能を使って、全員宛てに一言チャットを入れて頂ければありがたく存じます。
     どうもありがとうございます。それでは、今チャットを頂きました岩下委員、どうぞお願いいたします。
     
    ○岩下委員  
     どうもありがとうございます。私からは、メンバーとして参加させて頂いたデジタル・分散型金融に関する研究会の中間取りまとめをはじめとする研究会での議論の内容等についてコメントを差し上げたいと思います。
     まず冒頭、金融庁さんのほうから、ブロックチェーンを利用した新しい金融技術というのが普及しつつあるという御説明を頂いたと思いますけれども、確かに最近テレビをつけますと、暗号資産の交換業者が大量のテレビコマーシャルを打っていますので、我々の周りにビットコインなり、その他の暗号資産があふれていたり、あるいはそれを取引する対象であるTetherであるとか、USDCであるとか、DAIであるとか、そういうステーブルコインがあるように錯覚してしまいますが、実際には我々の生活の中にはそういうものは全く溶け込んでおりません。
     実際のビットコイン取引は、暗号資産交換業者に投資目的で資金を預ける人がビットコインを買うという行為に専ら限定されるのであって、そこから先にビットコインが、いわゆるパーミッションレスブロックチェーンの中で取引をされるのには、日本の個々の投資家、消費者に当たる人たちというのは、直接関与することはほとんどないという実態があります。
     このために、この研究会の中での議論というのは、多分、今日、明日ということではなくて、今後のことを考えた上でどういう影響があるかということ。それからもう一つは、部品として使える場合、パーミッションドブロックチェーンのようなものが金融取引の部品として使われた場合でも、結局それは取引の背後に隠れているものですので、それは例えば銀行のコンピューターがセンター型から、例えばクラウドシステムに変わったからといって、銀行の預金に何ら影響がないように、一般の消費者に影響があるような形の実質的なインパクトというのはほとんどないだろうと考えています。
     ただ、この中で、唯一一般にしみ出してくる可能性がある部分というのは、一昨年のリブラ構想ですけれども、これの現在形としてのDiemというものは存在しまして、これが今後、世界的にもしかしたら利用されるようになるかもしれない。そうすると、彼らはステーブルコインをうたっていて、かつフェイスブックのアプリの中で自由に使えるというものですので、これ自体についての対応が比較的みんな課題となるだろうということで、今回の中間取りまとめにおいては、ステーブルコインを中心に取りまとめたということだと理解しています。
     その意味では今回の取りまとめ自体は、とりわけそういう形で暗号資産の世界から一般の社会にしみ出してくるステーブルコインの中の特定のステーブルコイン、Diemのような、この中で言うと電子マネー類似型というんでしたかね、そういうものを対象にきちんとしたルールを設けましょうという話はしているわけですが、一方で、暗号資産の世界自体は一般の経済と切り離されていますので、その中のあるものについて、分散型金融と言われるものについては研究会の中でいろいろな議論がありましたが、それを積極的に規制するとかこうしろという議論は結論には至っていませんし、そういうことは私自身も現時点でやるべきではないと考えています。
     ただ、それらのものについて、必ずしも一般の金融で見られているような規律が達成されているわけではないとか、開示が十分に行われていないとか、詐欺的な取引が横行しているという面も一方でありますので、一般の健全な投資家、消費者についてはそういった世界に近づきさえしなければ問題はなく、そこからしみ出してくるものについては、きちんとルールを設けるという整理の仕方で私はよいのでないかないかと考えています。
     最後に1点だけ。今回、公認会計士に関する諮問があり、それに関する検討が行われることになりました。この中でとりわけ私が気になったのは、内部で環境変化のような、AIをはじめとする監査の技術的革新が進展しているという部分であります。AIを使って様々な伝統的な業務を変革していくというのは、技術革新の分野ではいろんなところで見られている現象なので、それ自体は非常によいことだと思うんですけれども、ただ一方で、これの使い方を誤ると、例えば自動運転の車が事故を起こしたときの責任能力がどうなるかといった問題のような、従来になかった様々な論点が登場するのだろうと思います。
     そうすると、AIに責任を着せることはできないわけですけれども、一方で、大量の情報を上手にAIで利用するということが逆になければ、有効な監査が行えないという時代に徐々になりつつあると私は思っておりますので、そこの部分についての考え方をきちんと整理するべきです。こういう議論をすると、昔ながらの人間が手でやっているのが一番信頼できるんだというふうになりがちなんですけれども、それよりも現実の動きをしっかり見極めた上で、技術進歩を十分に取り込んだ上でルールが必要だということを議論して頂ければと思います。
     私からは以上です。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは、続きまして、河村委員、どうぞお願いいたします。
     
    ○河村委員  
     デジタル・分散型金融のことについて若干のコメントを申し上げます。
     まず、議論の前提で、マクロ観の整理があったほうがいいと思います。実は中国のようなほとんどキャッシュを見ない世界を想定しているのか、あるいは今、日本の現状のように、キャッシュ、クレジットカード中心の経済活動を前提にしているのか、どの辺のことを想定しているのかという議論がまず最初にあったほうがいいと思います。
     例えばキャッシュマシンは、日本ほどすごいキャッシュマシンを展開している国は世界に例がないのであって、こういうものがずっと残っていくのか、レガシーで残っていくのかどうかを含めて、日本の金融というか、通貨の流通がどうなっていくか、場合によっては金融政策にどういう影響があるかという、マクロ観の議論が最初に必要と思います。
     2つ目は、デジタルをやるときのインフラの問題なんですが、これは御案内のとおり、日本は決定的に遅れているわけです。インドのスタックが非常にいい例になるんですが、2016年にモディ首相がやられたものですけど、これは全部で5つのインフラがあるわけです。個人識別のID、本人確認、それから電子署名、電子保管庫、ロッカーですね、それから送金、こういうもののインフラをどういうふうに整備していくかという議論が十分でないと、ただ将来どうしたいかというお話を理論的・観念的にやられても十分ではないものですから、インフラ整備、それからそれに伴う制度設計をどうしていくかという問題が2つ目にあります。
     3つ目は、これは日本で閉じた議論をやっているんですが、事実上は、例えば今、日本ではPayPayなどがものすごい勢いで入っていまして、PayPayというのは裏側にテンセントだと思うんですけど、さらに横に楽天が入っていてということで、これは中国のCBDCとも少なくとも裏ではリンクしていますので、この議論は日本に閉じた議論をするんじゃなくて、そういう中国のこと等々、国際的に開かれたスタンディングベースで議論をするべきだと思います。
     以上3つです。ありがとうございました。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは、続きまして、福田委員、どうぞお願いいたします。
     
    ○福田委員  
     福田でございます。それぞれ3つの問題に関して、手短にコメントをさせて頂きたいと思います。
     まず、会計監査に関しての論点、私は望ましい方向性での議論が進んでいると思います。個人的に重要な論点と考えておりますのは、これからの会計監査を担う人材は多様な人材が必要だろうということであります。
     例えばこれからはAIの活用がますます重要になっていくのは間違いないことだと思いますので、それをちゃんと理解できるような会計士が必要になってくると思うんです。今までのように、会計の狭い知識だけがあるということではなくて、そういう意味では、例えば理系人材を会計士にどうやって受け入れていくかということは大事な問題だと思います。あるいはグローバル化も進んでいる中では、グローバルな人材を会計士にどうやって受け入れるかということも大事でしょう。あるいは経済学や法律といった他の分野の人材も必要になってくるでしょう。
     そういう意味では、現在の会計士制度というのは、もちろん会計の基本的な知識があるというのは大前提であるわけですけれども、そこに余りにも狭い範囲の試験をパスした人材のみを受入れるという仕組みがつくられてきたという懸念があるわけです。もちろんそういった人たちは優秀なので、研修や実務補習である程度は補えます。けれども、こういうダイナミックに世の中が変わっていく中では、会計士になる人材ももう少し幅広く門戸を広げて頂きたいというのが、私からの要望でございます。
     第2点目は金融のデジタル化ということで、こちらも非常に積極的な議論をして頂いたということで、すばらしいことだとは思います。けれども、大きな問題意識として私が持って頂きたいと考えているのは、日本の金融のデジタル化というのは残念ながら世界に遅れを取っているということです。その問題意識を前提にして、こういう問題を活発に議論して頂くことは大事なんじゃないだろうかと思います。
     なぜ遅れているんだという大局的なことも含めて、デジタル化をめぐる技術的な問題を議論して頂くことは大事です。日本が今までも金融庁も含めていろんな形で取組を進めてきた中でも、それに対して他の先進国に比べると金融のデジタル化というのが遅れを取っています。そういう意味では個々の問題も大事なんですけれども、こういった大局的な問題をうまく組み合わせて、日本が世界に遅れを取らないような金融デジタル社会をどうつくっていくかという問題を、こういう研究会を通じて議論していただきたいということです。
     最後に、経済対策の問題もいろんな形で金融庁も関わっていくということで、非常に大事なんだろうとは思います。けれども、少しずつこれからの経済対策は、これまでのウィズコロナというか、コロナで非常に大変な目に遭った人をいかに救済するかという問題から、新しい日本の成長に向けて、どういう形で経済対策をしていくかという問題に軸足が変わっていくべきなんだろうと思います。
     特に足元で起こっていることというのは、他の先進国ではインフレが非常に深刻な形で起こっているわけですけれども、日本だけが、川上の原材料は物価がすごく上がっているにもかかわらず、一般物価というのは相変わらずなかなか上がらないということです。これはコロナ前から存在していたデフレ経済の構造というのが依然として日本はあるんだということが、足元でも非常に明確になっています。
     そういう意味では経済の新陳代謝が他の主要国に比べても起こりにくい経済構造というのが、そういう意味で日本のデフレ経済構造というのを生み出している面もあります。金融庁の取組に関しても、もちろんこういう感染拡大の中で厳しい状況にある方々を救済するということも大事なんですけれども、それと同時に、成長に向けて経済の新陳代謝を高めるような金融の仕組みをどういうふうにサポートしていくかということを積極的に議論して頂きたいと思います。
     以上でございます。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは、続きまして、冨田委員、どうぞお願いいたします。
     
    ○冨田委員  
     ありがとうございます。今回から委員に就任いたしました冨田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
     私からは2点、意見を申し上げたいと思います。
     1点目は経済対策についてです。経済対策の中には、サステナビリティに関する国際的な枠組み開示の策定促進や人材育成の強力な推進に向けた非財務情報開示の充実に取り組むとありますが、この取組に当たっては、サプライチェーン全体を俯瞰できる様式であることや、強制労働の禁止、児童労働廃止などILO中核的労働基準の遵守、社会保険の適用状況、安全衛生、労働組合との対話、女性管理職の登用状況、そして労働分配率など労働者への分配の状況や人材の育成など、ディーセント・ワークの実現に関わる視点をぜひ盛り込んで頂きたいと存じます。
     それから、デジタル・分散型金融へのあり方に関する研究会に関連して、1点、御意見を申し上げたいと思います。
     今回のそのものの御意見とは少し異なるかもしれませんが、デジタルマネーの発行者の一つである資金移動業者についてです。この資金移動業者は許可制ではなく登録制であり、破綻時の資金保全のスキームが銀行業に比べて脆弱性があります。現在、労働政策審議会の中では、賃金のデジタル払いの検討が進んでいるということがありますので、この資金移動業者の役割やそれに応じた規制の在り方などについても併せて御検討頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
     私からは以上です。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは次に、河野委員、どうぞお願いいたします。
     
    ○河野委員  
     日本消費者協会の河野でございます。本日の議題3点について、一般消費者としての受け止めをお伝えいたします。
     1点目、公認会計士制度の改善については、ビジネスのさらなるグローバル化や来春スタートのプライム市場等への対応、また本日の議題でもあるデジタル・分散型金融への対応等も含めて、懇談会の論点整理で示されたとおり、一層の信頼性確保や品質向上を目指して、時宜を得た改善を進めて頂ければと思います。
     2点目、「デジタル・分散型金融への対応のあり方に関する研究会」の中間論点整理に関しましては、資料8ページに示されているような制度の創設等が考えられるとのことですが、一般消費者としますと、先ほど岩下メンバーの御発言で状況を把握いたしましたので、少しほっとしたところでございます。
     ただ、一般消費者の間でも暗号資産取引の情報が増加しておりまして、不十分な理解による消費者トラブルや詐欺事件などが頻発するようになりました。専門家の皆様の観点からは、暗号資産、ステーブルコインなどのメリット・デメリット、リスク等が整理されつつありますけれども、今後の方向性について、社会全体に対する周知と情報発信に関しましては、金融庁の役割に大きな期待を持っております。
     3点目、金融庁の経済対策項目についてですけれども、コロナ禍の影響で国民生活の格差はさらに広がっております。10万円給付の一方で、首都圏のマンション需要が増えているなど、画一的な対策では救えない状況もあるという視点を忘れないで頂きたいと思っています。
     その上で、2050年カーボンニュートラル実現に向けたクリーンエネルギー戦略として記述のある、国民のライフスタイルの転換と企業の低炭素化支援についてですけれども、大きな方向とゴールは示されているものの、その手段と財源が見えない状況ですので、金融機関の役割も大いに期待しております。
     また、地方活性化に関しても、様々な方策が挙げられているところ、ソーシャル・インパクト・ボンドの活用による地域活性化など民間資金への期待が示されていますので、こうした取組をしっかり進めて頂きたいと考えております。
     私からは以上でございます。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは次に、小林委員、どうぞお願いいたします。
     
    ○小林委員  
     私は、公認会計士制度の改善に関する検討について、1つ意見を申し上げたいと思います。
     まず現実、スタートアップの上場企業、特にIPOの準備において、それをサポートする監査法人が非常に不足していて、なかなか見つけるのが難しいという中、中小の監査法人の負担が増えていき、また一方で、中小の監査法人の能力にかなり差があるということをあちこちで聞いております。こうした状況を改善するためにも、今回、中小の監査法人まで含めて、監査の質を高めるような施策をしていくということについては大いに賛成いたします。
     一方で、今後期待される非財務情報の開示、それについての監査の拡大等を考えますと、会計士あるいは企業の担当部門の負担はますます増大していくものと思います。
     このような現状を考えると、今の会計監査の仕組みを維持したままで何かを追加をしていくという方策では限度があるのではないかと思います。AIの監査も含めまして監査のやり方が変わってきているわけですから、企業開示、監査の仕方全体を見直して、これまでの制度に囚われず、制度そのものを見直していく時期ではないかと思いますので、その点についても今後検討頂きたいと思います。
     以上です。ありがとうございました。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは次に、佐々木委員、どうぞお願いいたします。
     
    ○佐々木委員  
     ありがとうございます。私は1点だけ、金融庁の経済対策項目について感想と期待というか、要望というか、意見を述べさせて頂きます。
     コロナ禍における支援というのはもちろんですが、それと同時に、現在、エグジットの政策をどう考えていくかというのが非常に重要になってきていると思います。そういう意味で、例えば事業者支援の中にあります、具体的に言うと、官民連携ファンドを通じた債権買取り、こういった具体的な策がどんどん進められていくことが重要かと思っております。これがまた、(2)の地方を活性化し、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」にも関係しておりまして、そちらにも書かれておりますように、この構造変化の時期をチャンスと捉えて、よりコロナの出口政策ということと積極的に絡めることで、大きく金融機関と地方経済との関係を変えていくことができるのではないかと思いますので、この機会をいい意味でうまく捉えて頂ければという期待を持っております。
     また、資本規制、例えばバーゼルⅢについても、現在、特別措置が取られております。そのことは一言ここの中にも書かれているんですけれど、これは海外では、例えばレバレッジ比率規制などは既に解除されつつありますので、日本でも、実際レバレッジ規制比率規制の特別措置がなくても規制値はクリアしているというのは公表されておりますし、そろそろエグジットなのかなと思っていますが、そういった形で、全体的に出口戦略についていい形でできるようにということを期待しております。
     以上です。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは次に、佐古委員、どうぞお願いいたします。
     
    ○佐古委員  
     発言の機会をありがとうございます。私からは、公認会計士に関わる件とデジタル・分散型金融に関する研究についてコメントさせて頂きます。
     前者の公認会計士の件については、女性の公認会計士が配偶者の存在によって働き方が制限されているということを、今まで寡聞にして知らなくて、今回それが改善されるということはとても喜ばしいことだと思っています。
     AIの活用についてのお話がありましたが、これも岩下委員からの御指摘もありましたけれども、まさにAIと一口に言っても様々なアルゴリズム、方式がございますので、AIそのものに関する監査というのも今後検討していく必要があるのではないかと思っております。
     あと、2点目のデジタル・分散型金融に関する研究会のアウトプットに関してですけれども、こちらは私もメンバーとして議論に参加させて頂いたんですけれども、今まさに表示して頂いているステーブルコインの分類が示されましたが、大変申し訳ないんですけれども、私自身、例えば具体的なアルゴリズムを持ってきて、これはステーブルコインのどちらの分類なのか、あるいは暗号資産なのか、電子マネーなのか、デジタルマネーなのかという明確な線引きができるかどうかまだ自信がないところがございまして、今後、「資金決済ワーキング・グループ」にこの検討は引き継がれるということですけれども、ぜひ技術系のメンバーが多い研究会のほうにも検討結果をフィードバックして頂いて、議論をさせて頂ければと思っております。
     以上です。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは次に、山本眞弓委員、どうぞお願いいたします。
     
    ○山本(眞)委員  
     山本です。それぞれの点について、一言ずつ申し上げたいと思います。
     まず、公認会計士のことですが、もちろんAIなどが普及して、デジタルの知識とか、そういうことについて研鑽を積んで頂くことは当然のことなんですけども、結局のところ、不正をするのは人間でありまして、数字とかデジタルのみじゃなくて、人間がやるというところを忘れないで頂きたいと思います。
     その意味では今回の論点整理の中でも、例えば企業活動の実態を理解するとか、過去の不正の実例を学ぶとか、そういうことを御指摘頂いていますし、前にも申し上げたように、その点では性悪説に立つ訓練みたいなものも必要なのではないかと思いますので、そこら辺で教育というか、育成に努めて頂ければと思っております。
     それから、デジタル・分散型金融についてですが、最初に岩下委員が、一般の生活者の中にはまだしみ出してきていないというふうに言って頂いて少し安心をしたというのは、河野委員のお気持ちと同じだなと思ったんですが、ただ、これだけいろんなことが加速度的に進んでいくと、結局いつの間にか普通の人もこういうところに触れるようになってしまうのではないかということを非常に危惧しております。
     そういう意味では今後、いろいろ対策を御検討頂く、特に資料にもありましたけど、利用者保護を適切に確保するというお言葉を書いて頂いておりますけれども、消費者被害を起こさないという観点を忘れないようにして頂きたいと心から思います。
     それから、経済対策についてですが、本当に狭いところで恐縮なんですけれども、資料の3ページのデジタル田園都市国家構想という中にくくられていますが、丸ポツの5個目、経営者保証に依存しない融資の促進、上にも書いてありますけど、倒産時の個人破産というのが非常に個々人を痛めます。経営者に保証させないことが良いと一律には言えないと思いますが、とにかく依存しない融資の枠組みを具体的にきちっと進めて頂きたいなと心から思います。
     以上です。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは、続きまして、原田委員、どうぞお願いいたします。
     
    ○原田委員  
     ありがとうございます。原田でございます。3点ございます。
     まず1点目は、会計監査の在り方についての意見になります。最後のページでいろいろと資料、課題も並列して挙げて頂いているんですけれども、この中でより集中して議論していくべきこととしましては、海外が関わる監査の在り方の見直しに向けた動向というふうに書いて頂いているところであろうかと思っております。
     昨今、ニュースでも円安が進んでいるということは目にしますが、輸出企業は既に海外に移転していて、子会社も工場も海外にあるという企業が多いんですけれども、円安の恩恵が少ない時代だというのがニュースではありますけれども、これに関係して会計監査の新たな課題というのは、海外の子会社ですとか海外の拠点での不正が増えてきていることに対して、国内の監査でどう対応するかという、これは一つ大きな論点になろうかと思っております。ですので、ここのところは、議論して頂ければと思います。
     もう一つは、デジタル・分散型金融に今後引き継いで頂く研究会への要望ということになります。暗号資産を裏づけにした金融商品がいろいろある、あまりない、数もよく分かっておりませんけれども、詐欺的な商品があるということがこれまたニュースになって、注目されるのですけれども、その結果、すごく否定的な見方が主流になってしまうことがいいのかどうかというのは、実はあまり分かっていないのですけれども、実際、詐欺的なものというのは全体の数からして多いのか少ないのか、統計などがありましたら、今後、そういったものも見せて頂ければというふうに考えました。
     これは要望になります。新たな金融商品というのは資本市場の育成にとって必要な面もあるかと思いますので、そこで新たな金融商品がなかなか認められないというのは、消費者保護の観点からいいことなのか、それとも資本市場の育成という面からよくないのかというところがよく分かっておりませんので、今後、暗号資産を裏づけにした金融商品に関する統計資料など、お見せ頂ければと思いました。
     そして3点目としまして、非常に瑣末な意見で申し訳ないんですけども、本日、会場で音を拾うマイクがあるかと思うんですけれども、この近くに人がいらっしゃるのか、今日は非常に紙をめくる音ですとか、PCのキーボードを打つ音ですとか、オンライン参加の人たちにはかなり聞こえていたのではないかと思います。音を拾うマイクのある位置を次回以降少し考えて頂ければと思いました。
     以上になります。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは次に、吉戒委員、どうぞお願いいたします。
     
    ○吉戒委員  
     ありがとうございます。吉戒です。私からは経済対策について少し意見を述べさせていただきます。コロナ禍の目下、事業者への支援、それから3ページの経済対策の地方を活性化するというデジタル田園都市国家構想、ここに関わってくることについて若干お話をしたいと思います。
     目下こういった事業者の足元の状況はどうか。もちろんケース・バイ・ケースで、個社ごとに違うんですが、まだ資金繰りがそんなにきつくないといいますか、昨年以来の資金繰り支援がかなり効いている、あるいはこれからもそういった資金繰り支援は続くということで、現に倒産も非常に少ないわけです。恐らく足元ですぐさま再生とか私的整理ということが恐らくぴんとこない。そういう感じなのかなと。これは金融機関、銀行のクレジットコストにも反映していると思うんです。まだほとんどそういったものが顕在化してこない。
     ただ、もちろん今はまだ返済猶予の時期だったり、そういったことで表に出てこないんですけども、やがてこれは必ずや過剰債務の問題になって現れてくると思います。それはいつのことなのか、半年か1年か2年か分かりませんか、恐らく1年先にはこういった問題が必ず出てくるということで、今からこういったものに対する備えという意味では、先ほどもちょっとお話のあった私的整理ガイドラインを整備するとか、再生ファンドの立てつけを考えていく必要があると。まさにそのとおりだと思います。
     ただ、最近よくこういったファンドなどに関わっている人たちとの議論で出てくる話は、再生人材がいないと。再生人材ってどういう人たちのことを言っているかというと、多分2000年初頭の頃に、不良債権に苦しんだあの時期に事業再生に突き進んだわけですが、その頃を経験したキャリアのある人がいない。これは実際、金融機関その他の場面から卒業してしまっているんです。
     では、人がいないかというと、実はそれ以降、プライベートエクイティー、事業承継型のファンドというのが非常に多いと思うんですけども、ここではハンズオンで投資先に対して入っていって経営を改善する、あるいはさらにバリューアップするということをやってきていまして、これはかなりの広がりと人材もそこにはいると思うんです。
     従来型のいわゆる再生人材と言っている中の、これは前回の金融審議会でもお話ししたかと思うんですが、以前はバランスシートの改善というのが非常に重要なテーマでして、過剰債務をどうやって解消するかと。債務カットを含めて、そういったことが中心だったわけですけども、恐らくこれからポストコロナというのを考えると、バランスシートはさることながら、もちろんこれを改善するというのは入り口で、これはマストなんですけども、バランスシートを改善しただけでは再生しないわけです。
     そうすると、PLをどうやって立ち上げていくか、これはまさにPEファンドでやってきたハンズオンでの経営支援みたいなこと、これが非常に有効ではないかと思います。
     ただ、ファンドということになりますと、当然、エグジットが必要になってくるわけで、多分5年程度でのエグジット、ここが一つのまた新たな問題といいますか、考えようによってはエグジットを必要としないファンドみたいな、これは恐らく今はほとんどないと思うんですけど、投資家にどうリターンを返すかということに直結するので、簡単ではありませんが、こういったことも、特に官民の官のほうで考えていかれるべきではないかと思います。
     こういう状況の中での再生ということになってきますので、ファンドといっても高いリターンを求めるべきではないと思います。IRR20%とか、そういう話ではないだろうと思うんです。国を救うと言うと大げさですけど、救国ファンド的な志で、あんまり数字を言うのもどうかと思うんですが、2桁の利回りを本当に求める必要があるのかという感じがいたします。
     ただ、もちろんLP投資家のお金がこれで集まってくるかとか、いろんな問題はありますけども、これからのポストコロナをにらんだときのこういったファンドでの支援というのは、これまでのものとはちょっと違うということを考えておくべきではないかと思います。
     地方の活性化ということもそうなんですけども、地方に就職先として、若い人がそこで働きたいという中堅企業を育成していく必要があると。これは前々からそういうふうに感じていますし、そういう意味でもコロナ危機を乗り越えていくという装置が必要なんだろうと思います。
     ただ、地方ということになると、どうしてもそこの地域の金融機関が主な役割を担うべきだと。私もそう思うんですけども、そこにばかりあまり大きな期待をするのではなくて、さっき申しましたような、例えばPEファンドみたいなものはプレーヤーのほとんどが在京なんです、東京なんです。こういうところのノウハウとか人、知恵を持ち込むということが必要ではないかと思っています。
     長くなりましたけど、以上であります。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。それでは次に、翁委員、どうぞお願いいたします。
     
    ○翁委員  
     3点につきまして、それぞれ意見を申し上げます。
     公認会計士制度の在り方の見直しにつきましては、ぜひこういう方向で進めて頂ければと思います。特に環境とかグリーンについても、これからいろいろな会計的な整備が行われていくと思いますし、どんどん公認会計士の守備範囲が広がっていくと思います。また、その広い守備範囲のところでの責任も広がっていくと感じております。
     先ほどグリーンの件も申し上げましたが、そのほかにもこれから無形資産なども含めて、いろいろなことが守備範囲に入ってくると思いますので、継続的な人材育成ということが非常に重要だと思いますので、そういった仕組みをぜひ整えて頂くことが大事になってくるかと思っております。
     2つ目のデジタル・分散型金融につきましては、今後、ステーブルコインについての議論が進んでいくわけでございますが、これは欧州やアメリカなどでも様々な議論が今繰り広げられておりまして、日本でも金融システム全体の視点からの議論というのもしっかりしていく必要があるのではないかと思っております。
     まず、グローバルな整合性についてどう考えていくのか。それから、ステーブルコインというのはどうしてもネットワーク効果がありますので、寡占的な状況になりがちなので、そういったインターオペラビリティー(相互運用性)をどういうふうに確保していくのかといったこと。それから、発行者については、銀行業の免許とか資金移動業者の登録ということまで書いてございますけれども、そこでの商品設計の自由度を、償還請求権を明確に確保しながら、どこまで許容していくのかといったこと。それから、こういったコインをどこまで保護するのかといったこと。保護するということについては、預金保険とかそういったことに関係してきまして、そういたしますとCBDCの発行戦略等、そういった保護とどういうふうに関係してくるのか。これは日本全体のデジタルマネーシステム、設計にも絡む話だと思いますので、いろいろな観点から議論していくことが大事ではないかと思っております。
     それから、最後に経済対策でございますが、私もアフターコロナに向けての中小企業・中堅企業などのビジネスモデルをどういうふうに改革していくか、それから過剰債務となってしまっている企業について、どういうふうに再生を促していくか、どうやって新陳代謝を促していくかということが、今後、本当に大事だと思っております。私的整理の枠組みを整備していくこととか、経営者保証のことなどのネックになっていることがいろいろと書かれていますが、ぜひともこういった再生を阻害しているような要因をきちんと洗い出して、スムーズに事業再生やアフターコロナのビジネスモデルの改革が進むような環境を整えて頂きたいと思っております。
     以上でございます。
     
    ○神田会長  
     どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。
     それでは、本日も多くの方々から貴重な御意見をたくさん頂きましてありがとうございました。原田委員御指摘のオンライン会議システムの改善については、金融庁のほうで御検討頂くことにしたいと思います。
     それでは、本日、大臣から頂戴いたしました諮問についてですけれども、これは公認会計士制度部会というところで具体的な検討を進めるということとさせて頂きたいと思います。公認会計士制度部会の部会長ですけれども、本年2月の総会におきまして、大変僣越ですが、私が務めさせて頂くということに御賛同頂いております。部会に属する委員、それから臨時委員、そして専門委員、これらの方々については会長が指名することとなっておりますので、制度部会のメンバーの決定につきましては、恐縮ですが、私に御一任を頂ければありがたく存じます。
     以上のような形で、今回の諮問事項の検討を進めさせて頂きたいと思いますけれども、御承認頂けますでしょうか。
     

    (「異議なし」の声あり)

    ○神田会長  
     オンラインシステムでやりにくいのですけれども、どうもありがとうございます。御協力に感謝いたします。
     それでは、本日予定しておりました時間よりは少し早いのでございますけれども、予定の議事は全て終了いたしましたので、以上をもちまして、本日の金融審議会総会・金融分科会合同会合を終了とさせて頂きたいと思います。
     なお、本日の議事の模様につきましては、事務局から後ほど記者レクを行いますので、御承知おき頂ければと存じます。
     また、今後の日程などについてですけれども、これも事務局から後日御連絡をさせて頂きますので、引き続きよろしくお願いいたします。
     それでは、皆様方には、本日も大変お忙しい中を御参加頂きまして、誠にありがとうございました。
     以上で終了とさせて頂きます。どうもありがとうございました。

     

     

    以上

     

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