第44回金融審議会総会・第32回金融分科会合同会合議事録
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1.日時:
令和2年9月11日(金)14時30分~16時00分
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2.場所:
中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室(オンライン会議)
○神田会長
それでは、定刻になりましたので、始めさせて頂きます。
ただ今から、第44回金融審議会総会・第32回金融分科会合同会合を開催させて頂きます。本日の総会におきましては、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンライン会議を併用した開催とさせて頂き、一般の傍聴はなしとさせて頂いております。メディア関係者の方々には、金融庁内の別室において傍聴頂いております。議事録のほうは通常どおり作成し、金融庁のホームページにて後日公開させて頂く予定でありますので、よろしくお願いいたします。
会議を始める前に、ちょっと留意事項を申し上げさせて頂きます。ご発言を希望されるときには、オンライン会議システムのチャット機能というのがございますので、それを使って全員宛てにお名前をご入力頂けるとありがたく存じます。それを確認させて頂き、私の方からご指名をさせて頂きますので、ご自身のお名前をお名乗り頂いた上で、ご発言頂けると有り難く存じます。
なお、本日の総会では、委員の皆様方にはオンラインでのご出席をお願いしているところですが、議事に入ります前に、委員の皆様方の出席方法などの観点から、金融審議会議事規則の改訂案についてお諮りをさせて頂きます。詳しくは事務局からご説明頂きたく、野崎総務課長、よろしくお願いいたします。
○野崎総務課長
企画市場局の総務課長を拝命しました野崎でございます。よろしくお願いいたします。
それでは、右肩に資料1-1と記載された金融審議会令、それから資料1-2の金融審議会議事規則改訂案、それから資料1-3の金融分科会議事規則改訂案をご覧頂ければと思います。改訂案は金融審議会と金融分科会の2種類ございますけれども、改訂箇所及び改訂内容は共通ですので、本日は、資料の1-2の金融審議会議事規則改訂案をご覧頂きながら、改訂のポイントをご説明させて頂きます。
金融審議会の運営につきましては、金融審議会令と金融審議会議事規則に規定されておりますが、委員の皆様方の出席方法につきましては明示的に記載されておりません。こうした状況下で、今回の総会は、新型コロナウイルス感染症対策の観点から神田会長とご相談させて頂きまして、金融審議会議事規則の現行の第7条の「この議事規則に定めるもののほか、議事手続その他会議の運営に必要な事項は、会長が定める。」との規定を活用して、オンラインでご出席頂いております。
今後、新型コロナウイルス感染症が更に拡大した場合や、全く別の有事が発生した場合に、この議事規則第7条を適用し続けることも可能と考えられるところですけれども、明確化の観点から、こうしたオンラインでの出席も明示的に可能となるように議事規則を改訂してはいかがかと考えております。
具体的な改訂箇所でございますけれども、2点ございまして、1点目は議事規則の第1条の会議の招集のところで第2項を追加いたしまして、「会長は、必要があると認めるときは、情報通信機器を利用して会議を開催することができる。」と改訂してはいかがかと考えております。この情報通信機器というのは、まさに本日皆様方がお使いのオンライン会議の出席を可能とする通信機器を想定しております。
それから、続いて2点目でございますけれども、第5条のところで、「会長は、特に緊急の必要があると認めるときは、委員に対し文書その他の方法により、議決を求めることができる。なお、この議決を行った場合は、会長が招集する次の会議に報告しなければならない。」と規定してはいかがかと考えております。こうした規定を追加することによりまして、例えばオンライン会議の開催ができないようなときでも、会長が緊急に議決を求める場合には総会を書面開催し、文書による議決を求めることができるよう措置したいと考えております。
具体的な改訂のポイントは以上2点でございます。
議事規則を改訂する場合には、1-1の金融審議会令のほうに戻りますけれども、金融審議会令の第11条におきまして、「この政令に定めるもののほか、議事の手続その他審議会の運営に関し必要な事項は、会長が審議会に諮って定める。」と規定されておりますので、本日会長より委員の皆様方にお諮り頂きたく存じます。
以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。今ご説明頂きました改訂案につきまして、委員の皆様方からご質問やご意見がございましたらお伺いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。
そうしましたら、今ご説明頂きましたとおりの改訂をするということで、金融審議会としてご了解を頂きたいと存じますが、ご了承頂けますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○神田会長
どうもありがとうございました。それではご了解頂いたということで進めさせて頂きます。
それでは、次に移らせて頂きます。本日は宮下副大臣にご出席を頂いております。開会に当たりまして、宮下副大臣からご挨拶を頂き、それに引き続きまして、この審議会に対する新しい諮問を頂きたいと存じます。
宮下副大臣、よろしくお願いいたします。
○宮下内閣府副大臣
本日は大変お忙しい中、金融審議会総会にお集まり頂き、ありがとうございます。
本年7月1日、金融庁がその前身である金融監督庁から改組される形で発足してから、ちょうど20年を迎えました。これまでの我が国の金融の歩みを振り返りますと、私自身も1980年代から90年代初頭まで銀行員でございましたが、当時は不動産の価格が上がり続けると言われ、その担保価値のみに着目した融資が当たり前のように行われておりました。こうした不動産神話に端を発した不良債権問題や、その後の世界金融危機、欧州債務危機、東日本大震災など、我が国は国内外の数多くの金融・経済ショックに見舞われました。
この間、金融審議会の委員の皆様には、こうした幾多の課題に直面するたびに、金融行政の確固たる羅針盤として、金融庁を力強く導いて頂きましたことに感謝を申し上げます。
現在、我々はまた新たな課題に直面しております。新型コロナウイルス感染症の拡大により、対面を前提とした事業の抱える課題や、都市集中型社会の抱えるリスクの顕在化など、経済社会の構造に関わる様々な課題が明らかとなっております。
こうした課題に向き合い、更にこれを乗り越えて新しい経済社会の姿を築いていくために、今後、世界中の企業が、リモートワークの普及やサービス提供の非対面化、デジタル・イノベーションの進展やサプライチェーンの再構築などに取り組んでいくものと思います。コロナを契機としたこうした「ニューノーマル」への移行を、従来の経済社会・産業構造を革新していくための大きなチャンスとしていくことが求められています。
こうした中、我が国の銀行部門や資本市場は、企業をはじめとする経済主体の構造変革をこれまで以上に力強く後押しする役割を果たす必要があります。そのためには、企業等の構造変革のリスクを適切に分担し規律できる、多様な金融仲介システムを構築することが求められています。
こうした観点に立ち、今事務年度、金融審議会においては、銀行制度等のあり方に関する検討と、市場制度のあり方に関する検討を進めて頂き、我々はそれを受けて必要な見直しを行っていきたいと考えております。金融審議会の委員の皆様方には、ぜひ活発なご議論をお願い申し上げます。
それでは、大臣の諮問を読み上げさせて頂きます。2020年9月11日
金融審議会
会長 神田秀樹 殿金融担当大臣 麻生太郎
金融庁設置法第7条第1項第1号により下記のとおり諮問する。
記
〇 銀行制度等のあり方に関する検討
人口減少など社会経済の構造的な課題や新型コロナウイルス感染症等の影響を踏まえ、金融システムの安定を確保しつつ経済の回復と持続的な成長に資するとの観点から、銀行の業務範囲規制をはじめとする銀行制度等のあり方について検討を行うこと。
〇 市場制度のあり方に関する検討
コロナ後の新たな経済社会を見据え、我が国資本市場の一層の機能発揮を通じた経済の回復と持続的な成長に向けて、投資家保護に配意しつつ、成長資金の供給、海外金融機関等の受入れに係る制度整備、金融商品取引業者と銀行との顧客情報の共有等について検討を行うこと。
以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○神田会長
副大臣、どうもありがとうございました。
それでは、次に進ませて頂きます。本日の議事の流れについて簡単にご案内いたします。まず、今大臣より頂きました諮問事項2件についての補足説明、そして続きまして、8月5日に公表しました「市場ワーキング・グループ」の報告書、そして8月31日に公表されました金融行政方針、これらについて説明がございます。全て説明が終わった後で、全体について委員の皆様方にご討議をお願いしたいと存じます。
それでは、大臣から頂きました諮問事項の補足説明につきまして、端本信用制度参事官、そして太田原市場課長からお願いしたいと思います。端本さん、よろしくお願いいたします。
○端本信用制度参事官
このたび信用制度参事官に着任いたしました端本と申します。よろしくお願いいたします。
それでは、宮下副大臣からご紹介頂きました大臣の諮問、銀行制度等のあり方に関する検討につきまして、資料2に沿ってご説明させて頂きたいと思います。
資料2の1ページ目をご覧頂きたいと思います。銀行等は、人口減少・少子高齢化といった地域社会の課題解決に加えまして、ポストコロナを見据えて、デジタル・トランスフォーメーションの進展をはじめとする産業構造の革新、それから企業をはじめとする経済主体の構造改革を、これまで以上に強く後押しすることが求められます。
こうした観点に立ちまして、ここの資料2の真ん中に書いてある点でございますけれども、まず銀行が保有する人材、技術などを活用した地方創生への貢献、2点目といたしまして、銀行による出資を通じた地域の事業再生・事業承継、それからベンチャービジネスの支援、更には3点目として国際競争力の強化に資する措置につきまして検討頂くことが考えられます。
これらの点につきましては、本年7月に閣議決定されました成長戦略フォローアップにおいて、4つの検討項目として整理されております。次のページがその関連資料の抜粋となります。
これらに加えまして、地方創生の観点からは、地域における金融機能を維持するという視点からの検討が重要になってまいります。人口減少や低金利などの厳しい経営環境が続く中で、地域における金融機能を維持するための方策について、幅広くご検討頂くことが考えられます。
以上が補足説明になります。ありがとうございました。
○神田会長
ありがとうございました。それでは太田原さん、お願いします。
○太田原市場課長
市場課長の太田原です。よろしくお願いいたします。
それでは、2つ目の諮問事項である「市場制度のあり方に関する検討」について、補足説明をいたします。宮下副大臣から説明がありました諮問の内容にもありましたように、現状大きく3つのテーマが課題として挙げられています。
1つ目のテーマは、成長資金の供給です。コロナ後の新たな経済社会に向けた成長資金の円滑な供給に向け、上場企業及び非上場企業の資金調達など、取引所内外における資金の流れの多様化を促す施策についてご議論頂きたいと考えております。
参考までに、本年7月に閣議決定されました成長戦略フォローアップにおきまして、プロ投資家規制の見直しやクラウドファンディング制度、非上場の有価証券の取引の改善等について検討を行う旨が盛り込まれております。
2つ目のテーマは、近時の海外情勢の変化も視野に入れ、日本市場がアジアにおける国際金融の中心的な都市の1つとして発展していけるよう、海外金融機関等の受入れに係る制度整備についてご議論頂きたいと考えております。
3つ目のテーマは、金融商品取引業者と銀行との顧客情報の共有等についてご議論頂きたいと考えております。銀行・証券会社間の顧客情報の共有に関しましては、いわゆるファイアーウォール規制によって制限されておりますところ、本年7月に閣議決定されました成長戦略フォローアップでは、外国法人顧客に関する情報を銀証ファイアーウォール規制から除外することについて検討するとともに、国内顧客を含めたファイアーウォール規制の必要性についても、公正な競争環境に留意しつつ検討すべき旨が盛り込まれております。この他、金融商品取引法に関連する制度について、必要に応じご議論頂きたいと考えております。
以上の点につきまして、有識者の方々から、幅広い観点から、また実態を踏まえた建設的なご議論を期待しているところでございます。
私からは以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、8月に「市場ワーキング・グループ」が作成しました報告書につきまして、座長を務めさせて頂きました私から概要をご説明させて頂きます。お手元の資料では3-1と3-2になります。3-1が概要、3-2が本体ということになります。
「市場ワーキング・グループ」では、顧客本位の業務運営に関する原則、これが策定されて3年が経過するわけですけれども、その更なる進展を目指すとともに、高齢化が急速に進む中で、認知判断能力が低下した高齢顧客等への対応を充実させるという観点から、具体的な方策について審議、検討を行いました。以下、報告書で指摘する主な内容を簡単にご説明させて頂きます。
まず、顧客本位の業務運営についてですけれども、この原則を採択してその取組方針を公表するなど、顧客本位の業務に取り組む金融事業者は着実に増加しています。他方において、原則の選択が目的化し、実効的な取組が伴っていないような事例や、また顧客の利益を犠牲にして業者の利益を追求するといった、不適切な販売事例もいまだに見受けられます。
そこでこうした現状を踏まえて、原則の具体的内容の充実、金融事業者の取組の見える化、そして不適切な販売事例に対する監督上の対応の強化などを提言しております。特に顧客に対して商品内容を分かりやすく簡潔に説明する方法について、欧米で導入されている書面というのがあるのですけれども、それも参考にご議論を頂きまして、報告書では、金融商品のリスクや手数料等について、顧客が同種の金融商品間で比較することが容易となるように配意した重要情報シートの活用を提言しています。
次に、超高齢社会における金融業務のあり方のほうでありますけれども、高齢化が進む我が国におきまして、将来的に、誰もが自ら、あるいは家族の認知判断能力や身体機能の低下に直面する可能性があるわけであります。こうした中、金融事業者には認知判断能力や身体機能の低下した高齢顧客の様々な課題やニーズに対応し、顧客本位の業務運営に取り組んでいくことが期待されているわけであります。そこで報告書におきましては、金融取引の代理等のあり方や金融機関等、福祉関係機関等との連携のあり方等について、業界団体において指針を策定することなどを提案しております。
以上が報告書の主な内容ということになりますが、現在報告書の提言を踏まえまして、金融庁では、原則の改訂、そして監督指針の改正などが進められているものと承知しております。また金融業界においても、報告書で指摘されている指針の策定等、所要の対応を進めて頂くことを期待しております。
簡単ですが、以上、「市場ワーキング・グループ」の報告書の主な内容のご報告とさせて頂きます。どうもありがとうございました。
それでは続きまして、金融行政方針について、岡田総合政策課長からご説明をお願いいたします。岡田さん、よろしくお願いいたします。
○岡田総合政策課長
総合政策課長の岡田でございます。お手元の配付資料2つ、資料4-1と4-2がございます。4-1が概要、4-2が行政方針本文でございますが、4-1のこの横の資料を用いてご説明申し上げたいと思います。ご覧のとおり、令和2事務年度金融行政方針ということで、1、2、3と3つの柱からなっております。
その上で左側の緑のところですが、「1.コロナと戦い、コロナ後の新しい社会を築く」ということでございまして、金融行政上の課題も、まず何といっても第一に今事務年度はコロナの対応ということだと理解しております。その内容は2つに分かれておりまして、この資料でも2つに分かれてございますが、まず当面コロナと戦い、経済の力強い回復を支えるという部分と、あともう1つは、コロナ後の新しい社会を築く、そういう2つのパーツになっております。
まず、コロナと戦い、経済の力強い回復を支えるのパーツでございますが、何といっても金融機関が継続的に事業者の業況をきめ細かく把握し、資金繰り支援を適切に行えることを行政としても支援していくとともに、取組状況を確認していくといったこと、それから、時間軸的にはその次なのかも分かりませんが、金融機関による事業者の経営改善・事業再生支援等の取組状況の確認、関係省庁とも連携して、政府としても必要なサポートを行っていくといったこと、それに加えまして、そうした中で、銀行をはじめとする預金取扱金融機関の役割が重要ということだと思いますので、そうした金融機関が顧客・地域の再生に必要な業務を可能にするため、銀行の業務範囲等を見直すということで、これは先ほど当審議会で新しい諮問がございましたが、そのうちの1つに関連するものでございます。
そうしたことと同時に、コロナ後の新しい社会、これがどういったものになるかというのは、残念ながらまだはっきりしたものは見えていないわけなのですが、新しい産業構造への転換を支えられるような金融のあり方について考えていくのは、当庁としても非常に大事な課題であることは間違いないことと思います。
そして、コロナとの戦いの今ご紹介したところは、どうしても間接金融というか、いわゆる銀行、預金取扱金融機関が資金繰りをつけて事業再生に努めていくということでありまして、新しい産業構造への転換をやっていく際は、当然そういう銀行の役割は重要なので、銀行法の改正も検討するということだと思いますが、同時にやはり事業再生みたいなことを本格的に手がけていく上では、負債サイドだけでなくて、エクイティーのほうの役割も非常に重要だと思いますので、その意味ではこの課題というのは、全体の2つ目の「高い機能を有し魅力のある金融資本市場を築く」という、直接金融のほうの課題にも当然つながっていくことだと理解しております。
そのほか、デジタル技術によって利用者の課題を解決し、付加価値を創出できるよう、規制上の制約の解消等に取り組むであるとか、書面・押印・対面を前提とした業界慣行の見直し、決済インフラの高度化・効率化の推進、それから、先ほど「市場ワーキング・グループ」の報告書を神田先生からご紹介頂きましたけれど、コロナ後の社会にふさわしい顧客本位の業務運営の更なる進展を目指していく。それから、サステナブル・ファイナンスに関する考え方、これは金融面で開示の世界、それから金融機関のリスク管理の世界等、いろんな課題があると思いますが、そういったものについての考え方の検討を進めていくといったところが、このコロナ後の新しい社会で現時点で見えている課題だということで記述しております。
それから右側に参りまして、この金融資本市場の課題でございますが、まず、足もとでは昨今のアジアの地政学的状況変化というのを受けまして、そうした中で日本の金融資本市場が、国際的なリスク分散の観点からどのように貢献できるのか、そのためには、政策対応でどういったことをやっていかなきゃいけないのかということを最初に掲げてございます。
もちろん金融事業者とか金融人材を日本に誘致していくということ、それ自体は大変重要な課題だと思っておりますが、併せてこのことをきっかけとして、我が国の金融行政とか金融ビジネス自体が外に対して開かれたもの、グローバルで行われて当たり前な話で、よいものについては取り入れていくといったことに取り組んでいく、例えばほんの一例ですけれど、金融行政のプロセスの英語化とか、登録手続の迅速化とか、そういったことを検討していくというようなことが記述されております。
そのほか、この章では、先ほどのコロナ後の経済社会の構造変化に関係するものですが、企業のコーポレートガバナンス・コードの見直し、それから先ほど頂いた諮問のもう1つの部分、市場関係に関連しますが、成長資金の円滑な供給の観点から、取引所における市場構造改革と併せて取引所外の資金の流れの多様化に向けた施策など、そういったものについても取り組んでいくというのを課題として記述してございます。
最後のこの3番目の「金融庁の改革を進める」というところでは、引き続き金融育成庁として力を発揮できるよう、今申し上げたような第1、第2の課題をしっかり取り組んでいくために、金融庁自体の改革を進めるということでございまして、ここにありますとおり、コロナを契機とした働き方改革を更に進化・定着させる、自由濶達な議論、イニシアティブを発揮できる組織の風土をつくる。そのことによって実態把握力とか政策的な構想力の水準を高めていくということですが、とりわけ行政手続の電子化、それからデータ分析力の向上、データ活用の推進、そういったものに取り組んでいきたいということを課題として掲げております。
金融行政方針の概要については以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、以上で一通りの説明が終わりましたので、残りの時間、皆様方から討議をお願いしたいと思います。先ほどの大臣からの諮問事項に関する補足説明、それから「市場ワーキング・グループ」の報告書、それから、今ご説明頂きました金融行政方針、これらにつきまして、ご質問、ご意見等、どなたからでも結構ですので、お出して頂ければ有り難く存じます。いかがでしょうか。
それでは、岩下委員、どうぞ。
○岩下委員
京都大学の岩下でございます。発言をお認め頂きどうもありがとうございます。私からは、冒頭ございました大臣からの諮問のうちの銀行の業務範囲の見直しに関する諮問、それからもう1つ、論点として、今の金融行政方針とも若干関わりますが、一昨日ぐらいからニュースで大きく報道されています、ドコモ口座問題の2点についてお話を申し上げたいと思います。
まず、銀行の業務範囲規制をどのように見直すかという観点について、これはやはりこの金融審議会の下に設置されておりました「金融制度スタディ・グループ」が、2019年1月に、「金融機関による情報の利活用に係る制度整備についての報告」という報告を出していることを、皆さんご存知だと思います。こちらの報告の中で、これからの情報社会において、銀行であれ、あるいはフィンテック業者であれ、そうした金融に関わる者が情報の利活用に取り組むことが自然の流れであるけれども、そのためには情報に関連するルールのあり方と、そのための業務範囲規制のあり方、この2点の見直しが必要であるという議論がございました。
この1年半前の報告があってから、今年に入ってコロナの問題が発生し、世の中のデジタル化、オンライン化というものが一層進んだわけであります。従来対面で行われていた銀行、金融、あるいは証券、保険等の取引が大きくオンラインに移行したということは、ご存知のとおりだと思います。そうなりますと必然的に、どのように情報を活用するかということの重要性がより増していると理解しております。その意味からも、この1年半前に議論された金融機関の業務範囲規制の問題というのが、一層クローズアップされてくるものと思います。
地方再生等様々な課題もありますが、やはりこのデジタル化に対応して、金融機関が情報を上手に活用できるようになるためには、現在の金融機関に認められている範囲の業務だけでは、実は十分ではないと常々考えております。私のところに、私が利用しております幾つかの銀行から送られてくる電子メールのダイレクトメールがよくあるわけです。これがいつもカードローンを借りませんかという、私にはあまり必要のない電子メールが送られてくるわけですが、それは多分顧客のことをちゃんと見ていないからです。私がカードローンを必要としているか、必要としていないかということは、多分銀行であれば、情報を見ていればちゃんと本当は分かるはずなのに、そういうことをやらずに、全員にカードローンを借りませんかという電子メールを送っているのは、あまり情報を利活用しているとは言えないわけであります。
その意味では、そういうものを上手に活用できるようになることが必要ですし、あとは銀行の立場からしてみると、結局できることといえば、カードローンを借りませんか、あとは投信を買いませんか、保険に入りませんかぐらいのことしかありませんということになってしまうと、それは情報の活用も何もあったものではないわけであります。
それよりももうちょっと幅広い分野について、様々な業務の可能性を金融機関に認めてあげたほうが、これからの情報を利活用した新しい時代の金融、これまでの金融審議会の下で進められてきたフィンテック振興というものの実を上げるという観点からも、銀行そのものについての業務が、きちっと広い範囲で拡張されていることが望ましいと思われますし、もちろん現在の専業義務を前提とすれば、野放図に拡大するわけにいかないという議論が1年半前も相当ございましたが、とはいえ、例えば現時点で既に事業会社が銀行を保有している事例というのは日本国内でもたくさんありまして、そういったところにおいて大きな問題を起こしていないことを考えれば、銀行がコマースの分野についてある程度進出していく、あるいは特に地方において、地方商社であるとか様々な新しい取組を地方の金融機関がやるときに、例えば5%規制であるとか、専業義務等が色々な桎梏となっていることを考えると、この問題について諮問頂いたのは大変時宜を得たものであり、これについて検討を深めていくことは非常に大切なことだと考えております。
2点目をごく簡単に、ドコモ口座問題についてお話をしたいわけですが、実はドコモ口座問題がニュースでたくさん取り上げられるようになってから、私が思い出したのは、2008年にウェブ口座振替受付ゲートウェイというシステムが実はスタートしています。
今我々は、口座振替を便利に使っています。かつてはこの口座振替というのは全て押印によって、3連紙、4連紙の複写の紙に判子を押して、書類で持ち込んで、それを銀行の届出印と確認して、口座振替を認める、認めないということをやっていたわけですが、それが、今回の金融行政方針にも書いてあるデジタル化技術を活用した押印の見直しの一環とも言えるわけですが、2008年に始まったこのウェブ口座振替受付ゲートウェイによって、その書面の統合印が不要になったというのは、一見非常に良いことのように見えます。
しかし、それは同時に、今回のドコモ口座問題の原因となってしまった。しかもドコモ口座問題というのが大変深刻なのは、被害を受けている人はドコモ口座を使っている、あるいはインターネットバンキングを使っている人では全くない、そういうこととは全く関係ない人の口座から不正な資金の送金が行われていることが大きな問題でありまして、これは誰もが被害者になり得るという意味では、あとは2005年に「偽造キャッシュカード問題に関するスタディグループ」というのがございましたが、あの時の問題の再燃を懸念されるような、大変深刻な事態であろうと私は考えております。
その意味では、この現在のウェブ口座振替の仕組みというものが、実は4桁の暗証番号と口座番号、誕生日等だけで認証できてしまうという、インターネット上での認証システムとしてはおよそ考えられない仕組みになっています。インターネットバンキングに関する議論を随分深めてきた割には、こういったものが残ってしまっていること自体、銀行側の問題です。もちろんドコモ口座の問題はドコモ側にも大きな問題があったというのは、昨日の記者会見でも明らかにされたわけですが、それと同時に、銀行側にも十分考えるべきことがあったのではないかということで、この問題について、ぜひ金融庁当局におかれましては、十分な検討を進めて頂きたいということを申し上げたいと思います。
私からは以上であります。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、志賀委員、よろしくお願いします。
○志賀委員
ありがとうございます。私からも2点お話をと思います。まず1点目は、諮問された銀行の業務範囲等の見直しについてです。
たしか前回の金融審議会だったと思いますけれども、金融庁はこれまで、新興のフィンテック企業であったりベンチャー企業に対して、応援する規制緩和を積極的に行ってくれたということについて、賛辞を述べた記憶がありますけれども、今回の業務見直しがイコールフッティングの観点から、金融の銀行が同じ土俵で戦えるようにしていくということで、業務見直しをするというのは、それなりに意義があろうかと思うんですけれども、新興勢力のベンチャー企業にはそれなりの強みもありますし、銀行にも強みがあるということで、お互いにやはり切磋琢磨して、共に成長するようなやり方をぜひ検討して頂きたい。銀行側が当然大企業になるわけですが、そちらの業務見直しによって、新興勢力の勢いが止まることのないようにお願いをしたいなというのが1点目であります。
2点目は、コロナの危機の中で、私はリーマンショックの時に流動性の確保で大変な苦労したわけですけれども、それと比べますと今回はやはり金融機関の動きであったりということで、残念ながら観光業だとか、それから飲食業、外食、旅行業者等、直撃を受けているところにつきましては、当然そんなことは言っていられないんですが、総じて言えば、流動性の確保についてはうまくいったのではないのかなと。
その1つの原因としては、リーマンショックの時と比べて、やはり各企業が比較的内部留保を厚めに持っていたということではないかと思います。今回内部留保が厚かったおかげで、すぐに資金繰り危機に陥らなかったという教訓が、またコロナの危機の後にもっともっと内部留保をためておくという企業構造にならないか、若干私自身懸念しています。本来経済は、レバレッジを利かせて投資をして成長するというのが、全体への貢献度が大きいわけです。
その内部留保をして、それで危機に対応する。危機のときも十分に金融の銀行システムが機能していく、困ったときもちゃんと銀行が支えてくれるという安心感があれば、企業の内部留保を厚くして危機に備えるということにはならないんではないかなと。そういう意味でいくと、こういう危機に陥ったときに、本当に銀行が融資先さんと一緒になってハンズオンで危機を乗り越える、そういう対応をされているのかどうかということについて、考えざるを得ないなと思っております。
私からは以上です。
○神田会長
ありがとうございました。
それでは続きまして、佐々木委員、いらっしゃいましたらどうぞお願いします。
○佐々木委員
ありがとうございます。私のほうからは、あえて言うと金融行政方針なのかなと思いますが、コロナに関係することで、小さい質問と大きい希望ですが、この行政方針の中に、コロナの時に取られた色々な対応が書いてありまして、非常に迅速に様々な対応を取られていて、非常に大変でいらしたし、良い対応ができたんだろうというふうに思いました。
ただその時に思ったのが、やはりコロナみたいなことが起こったときに、ほかの省庁とか機関、例えば融資という意味で言っても、経産省とか、中小企業庁とか、あとは日銀や政治、いろんなところとの協調とか連携というのが非常に重要であると思います。この中で私が1つ取り上げたいと思ったのは、実は金融行政方針のコロナ対策のところには書いていなかったのですけれど、日銀、財務省との連携ということで、レバレッジ比率規制に関する告示があったのですが、それについて質問したいと思います。
4月17日に「レバレッジ比率規制に関する告示の一部改正(案)」についての公表があったのですが、これを読んでみますと、日銀による金融政策と銀行等への健全性規制との調和のために、日銀の要望に従い、レバレッジ比率を算定するに当たって日銀の預け金を除外するような改正を行うということだったのです。まず、質問ですけど、これは要するに、日銀の国債の買いオペに応じると金融機関のレバレッジ比率の分母から国債が引かれているということで、比率が上昇するということなのかなと読めるのです。
つまり国債を日銀のほうに渡して、お金をもらって日銀の当座預金の方にお金が移ると、その分はレバレッジ比率に算定しないというふうに書いてあるので、これは分母が小さくなってレバレッジ比率が自動的に上がるのかなと思ったのですけど、その理解が正しいのかというのは1つ確認したいと思います。
これは日銀の要請によるというふうに書いてあるのですが、このような協調はもちろん、コロナに対応して必要ということで行われたと思いますが、やはり金融政策、あるいは国債という意味で言うと、財政政策にも関わる非常に大きなことではないかなと感じました。例えば金融政策という意味では、レバレッジ比率規制に関係ないのであれば、積極的にオペに応じるようになるかもしれないわけですし、財政政策という意味では、国債の消化というのを間接的に助けるような形になるのかなというふうに思います。
ですので、今回コロナの対応として必要だったのかなというのはもちろん金融庁で判断でされていると思いますが、こういった危機とかが起きたときに、どういった形で協調していくのかといった方針とかをなるべく議論して頂きたいし、その議論がどういう根拠に基づくのかというのを明らかにして頂くことで、後々長期的に見たときに、いろんな影響とかを考える上で重要になってくるのかなと感じました。
ですので、直接的な質問としては、今回のコロナ対応、これは今年度のみということは書いてあるのですけれど、このレバレッジ比率規制は、そのオペに応じやすくするために緩和しているという理解で正しいかどうかを教えて頂きたいと思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。ご質問につきましては、どなたか金融庁の方から。
○森田金融国際審議官
私からご質問にお答えさせて頂きます。佐々木先生からご質問のありましたレバレッジ比率と金融政策との関係でございますけれども、基本的にはそういった効果もあるというご理解でよろしいのではないかというふうに思います。これにつきましては、全く我が国独自で勝手なことをやっているということでもございません。レバレッジ比率規制を入れる際には金融政策との関係というのが相当議論の争点になりまして、今回我が国で取りましたようなことにつきましても、一定の条件を満たせば各国とも、中銀預金をレバレッジ比率の分母から控除する措置を取っても良いという仕組みになっております。それを踏まえまして日本銀行と相談をして、こういう措置を取らせて頂くことになったというふうにご理解を賜れればと思います。
○佐々木委員
分かりました。ありがとうございます。
○神田会長
よろしゅうございましょうか。どうもありがとうございました。
それは続きまして、家森委員、お願いいたします。
○家森委員
ありがとうございます。神戸大学の家森です。2点ございます。
まず最初は金融行政方針にも書いてありますけれども、顧客や地域の再生に必要な業務ということで、金融機関は、特に銀行の業務規制範囲を見直して頂けるというのは、地方創生を一生懸命考えている人間にとってはありがたいことで、ぜひここを進めて頂きたいなというふうに思っております。こちらの諮問には、銀行の業務範囲と書いていますが、当然協同組織の金融機関についてもカバーするものだと思っておりますけれども、念のためにそれを教えてくださいというのが1つ目です。
2つ目が、先ほど志賀先生のほうからありましたように、今回いわゆるゼロゼロ融資が始まって、中小企業の方々の資金繰りは比較的うまくついてきているというふうに認識をしております。他方で新聞報道などによると、金融庁は5月から6月頃に、民間金融機関があまりにも信用保証に依存し過ぎていて、しっかりと貸していないのではないかというので、プロパーの貸付けの状況について検証するというような報道がございました。その結果、行儀の悪いような金融機関というか、困ったような事例が出てきているのかという点を少し教えて頂きたいと思っております。
更に、取りあえず資金繰りがついたわけですけれども、今後やはりこのお金は企業から見れば返していかないといけないお金でして、そこの部分で本当に金融機関の実力が問われると思いますので、先ほどの業務範囲規制ともここは重なってくると思いますが、企業の方々は待っていられませんので、ぜひ早め早めに金融機関ができることを拡大していって頂ければというふうに思っております。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。ご質問があったかと思いますが、これは端本さん。
○端本信用制度参事官
協金も当然検討の対象になります。銀行だけということではございません。
○神田会長
それからもう1点の昨今の金融機関のビヘイビアは。
○栗田監督局長
我々の問題意識は、中小企業を支援するに当たっては、もちろん無利子・無保証融資というのは重要なツールなので、それを大いに使ってもらえば良いのですけれども、それだけではなくて、プロパー融資ですとか、既存の貸出しの条件変更ですとか、その他のいろんな本業支援みたいなもの、そういうものを組み合わせてそれぞれの中小企業に最適な支援をすることが望ましいと考えております。その中で一部、ゼロゼロ融資はたくさん出しているのだけど、プロパー融資は実はほとんどやってないのではないかという話もありまして、そういうことを検証するために、今、各金融機関から数字をもらってそれを分析しております。
数字だけを表面的に見てもよろしくないと思っておりまして、その背景にはそれぞれの金融機関のどういうポリシーがあったのかということを、きちんとお伺いする必要があると考えております。今そういう観点から各金融機関にお話を伺っている状況でございまして、今のところ何か非常におかしなことをやっている事例があったというふうには承知しておりませんけれども、もう少し話を聞いていきたいと考えております。
○神田会長
よろしゅうございますでしょうか。
○家森委員
どうもありがとうございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、川口委員、どうぞお願いいたします。
○川口委員
ありがとうございます。私からは、報告書について1点と諮問について1点コメントがございます。
まず、報告書の不適切な販売事例に関する監督上の対応の強化についてですけど、そこでは、適合性の原則とか、誠実公正義務を強化していくという方向性が出されています。これらの規定は金商法上、投資者保護のために重要だと言われてまいりました。このことは今回の報告書のテーマである高齢の投資者保護にも当てはまることかと思います。
ただし、実際この規定のみを使って、従来行政処分がなされた例というのは本当に少ない、ほとんどないと承知しております。その理由の1つとして、適合性の原則については、顧客の属性である例えば知識、経験、財産の状況とか、投資目的というのは非常に多岐にわたりまして、それに不適合との判断をするのはなかなか難しいという事情があるように思います。また、誠実公正義務に至っては、抽象的な規定でありまして、これも行政処分という不利益処分を行うにはハードルが高いという理由があるのかもしれません。
この点、監督指針で、今回違反行為の具体例を示すということは、不利益処分の予見可能性を高めるという点で、方向性としては妥当なものではないかと思います。もっとも、この報告書において、不適当な行為の類型が書かれていますが、例えばその中の高頻度の勧誘や過度の手数料などというのは、またこれも幅のある概念でして、結局ケース・バイ・ケースで判断せざるを得ないことになるのかなとも思います。
そうすると、先ほど申し上げたような問題がやっぱり残されているようにも思います。プリンシプルベースの規定として、このような内容にならざるを得ないということかと思いますが、今後これらの規制の適用を積極的に行っていくのであれば、この類型ごとの処分事例を公表していくなど、予見可能性を高める工夫が必要ではないかと思った次第です。
2点目、今回の諮問についてですが、銀行制度等のあり方に関する検討として、地域社会や経済の活性化が必要で、地域創生に資する銀行の取組を後押しする観点から、是正のあり方を検討するという説明がありました。地方が疲弊し、またそれが地方銀行の経営悪化に拍車をかけているということは十分理解ができます。他方で、見直しの方向性として示されている項目は、この地方再生を超えて、日本の銀行制度の根幹に関わるものも含まれています。
地方再生が重要であるということは当然でありますし、またコロナ対策も必要だということは十分に承知していますが、言葉は適切ではないかもしれませんが、それを錦の御旗として規制緩和をなし崩し的に行うのではなく、銀行、商業の分離政策という銀行規制の根幹に関わるような問題については、それ自体の妥当性や弊害などを十分に検討して頂きたいと思います。例えば、先ほどもありましたように、事業会社から銀行業に参入できるけれども、銀行は事業会社を持てないのはおかしいという議論があります。これについては、一部の事業会社が小規模な銀行を所有するのと、大銀行が事業会社に大挙して参入するのとでは、大きな違いがあるようにも思います。
いずれにせよ、規制の沿革とか、諸外国の状況、あるいは日本固有の事情などを含めて、総合的に検討がなされることを期待しております。
以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、福田委員、よろしくお願いいたします。
○福田委員
福田でございます。2点、金融行政方針に関することと銀行制度等のあり方に関する検討に関してコメントさせて頂きたいと思います。
まず金融行政方針は、事務局の方から非常に重要な3つの論点、柱をご提示頂いて、私もこれは非常に重要ですし、ぜひ進めて頂きたい方針を提示して頂いていると思います。ただ、私がこれを見て思ったのは、この3つは独立なものではなくて、非常に関連しているものだと思います。独立にそれを追求するというよりは、それぞれが一体となることでシナジー効果が発揮できるものなんじゃないかなとは思っています。
そこでの大きな柱というのは、やっぱり基本的にはデジタル化とかそういう新しい時代への対応ということであって、コロナ後の社会に、新しい時代の中で、書面、押印、対面を廃した新しい金融取引を進めていくことが大事です。そういうものを進めていなければグローバル化にも対応できず、当然海外の金融機関からも相手にされないということになるでしょう。またそれを監督する金融庁自体もデジタル化に対応できていなければ、コロナ後の社会には対応できないと思います。ですので、この金融行政方針に示された3つの柱というのは、まさに一体となってやっていって頂くことが大事なんじゃないかなとは思います。
ただ1点だけ、金融に関してのデジタル化には注意が必要です。いま日本全体としてデジタル庁をつくるとかという形で、デジタル化には非常に前向きになってはいるのですけれども、やはり金融分野に関しては、通常のデジタル化の分野とは違う問題がある点が大事な問題です。デジタル化はあくまでも安全性があっての利便性だというのが金融の分野であることは言うまでもないわけで、これはほかの分野以上に重要な問題であるわけです。これは当然のことではありますけれども、そういう点には十分留意しながら、デジタル化の問題は進めて頂くことが大事なんだろうとは思います。
銀行制度等のあり方に関する検討も非常に適切に取り組むという形で、私もぜひ推進して頂きたいというふうに考えています。これまでの銀行制度のあり方というのは、ある意味で時代遅れになっているところは非常にたくさんありますし、また金融をめぐる動向は非常に急激に変化していますので、そういった面に対応するような見直しというのは、ぜひ喫緊の課題としてやっていきたいということであります。
ただ私も、先ほど川口委員がおっしゃられたこととも少し共通の問題意識がありまして、もともとあった規制自体が全く無意味な形であったわけではないという問題意識は重要です。なぜそういう規制があったのか、規制のルール自体は時代遅れになったとしても、その規制をつくった当時の趣旨ということ自体は、いろんな意味で金融の基本的な考え方から、意味のあるものは非常にたくさんあるわけです。そういう意味ではそれをいろんな形で当時の趣旨を踏まえながら、制度の見直しというのをぜひともやって頂きたいというふうに考えております。
私からは以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、小林委員、どうぞよろしくお願いします。
○小林委員
小林です。私からは、高い機能を有し魅力のある金融資本市場を築くという、金融市場の国際化に関して意見を述べさせて頂きたいと思います。
このペーパーは、「コロナと戦い、コロナ後の新しい社会を築く」というふうになっていますが、必ずしもコロナの有無とは関係なく金融市場の変化は非常に大きいと思います。特に東アジアで中心となる金融都市をどこが担うのかは、単に手を挙げるだけではなく、市場から求められる存在である必要があります。日本が国際金融機能をしっかりと提供できることが、手を挙げる上で重要な要素であると考えます。
もちろん今ほかの委員の方々がおっしゃられましたように、過去の経緯、何でそういった制度になっているのかという問題もありますけれども、今回本当に日本が国際金融市場になるんだということを外に向かって表明し、そして海外の投資家を呼び込んでいこうと思うのであれば、単純に海外の投資家を意識した英語化ですとかデジタル化だけではなくて、日本の市場の厚みというものが重要と考えます。
単に外国人を例外的に現状の規制から除外するということだけではなくて、これから日本の市場のあり方をしっかりと本質に立ち返ってもう一度検証して、小手先のこれを変えます、あれを変えますではなくて、本当に日本の市場が変わったんだ、変わるんだということを、大きな視点、高い視座から外に対して発信できるような議論をしていくべきであると思います。
またこれについては、今の状況を考えますと、相当なスピード感を持って議論し、そして形をつくっていくときであると思います。この点については色々な調整も必要かとは思いますが、あまり過去にとらわれずに、しっかりと現在置かれている問題、そして、これからどうなるのかという将来を見据えた議論をして、形をつくって頂きたいと思います。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、翁委員、どうぞよろしくお願いいたします。
○翁委員
翁でございます。私からも2点申し上げたいと思います。
1つは金融行政方針に関することですが、今までもコロナの対応は、守りというところからどうやってアフターコロナへの対応、攻めに展開していくか、資料4-1の上の部分と下の部分をどういうふうにスムーズにスイッチングしていくかということが非常に大事だと思っております。
今まで金融機関は資金繰り支援をして、多くの企業を支えてきていると思っております。ただ、ウィズコロナ、アフターコロナの世界では、今までのビジネスモデルを相当程度工夫したり転換しないと生き残れない企業も多いと思っております。したがってこの金融行政方針にあるように、今後は新しい産業構造への転換、そして日本全体のそれぞれの企業の付加価値生産性の向上の取組を支えられる金融に変化していかなければならないと思っておりまして、この検討はとても大事だと思っております。
特に金融面から大事なことは、やはりキャッシュフローを増大させる事業構造改革や産業再編を見据えて対応を考えていくということだと思っております。成長戦略では、資本注入とかそういったのも入ってきておりますが、その裏側にしっかりとした事業の見直しといったことが必要になります。やはり非常に対象企業も多いので、人材もしっかり確保して、こういったことに取り組んでいく必要があると思っております。
また事業再生となりますと、スムーズな債務調整ということも必要になってくると思います。非常にこれから大変だとは思いますけれども、金融庁としてもしっかり検討し、環境整備をしていって頂きたいというふうに思っております。
2つ目は、銀行の業務範囲規制でございますが、こちらもコロナ後の新しい社会を築く、顧客・地域の再生の視点からの枠組みを中心に、金融行政方針などでは書かれています。このこと自体は非常に大事だと思っておりますが、もう1つやはりオープンバンキングの時代に入っているという視点からも考えていくことが重要だと思っております。オープンAPIを通じてやり取りされる様々なデータをどのように利活用して、新しい付加価値の高いサービスを、銀行も色々な企業との取組を一緒に、システムの一員としてどうやって社会に貢献できるか、そういった視点からも業務範囲規制のあり方を考えていってはどうかというふうに考えております。
以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、原田委員、よろしくお願いします。
○原田委員
原田でございます。1点申し上げます。基本事項の1つ、「銀行制度等のあり方に関する検討」に関しまして、新しいワーキング・グループが立ち上がることになっていますけれども、検討課題に関連したことについて申し上げます。
金融機関は銀行を中心として重要な役割を果たすことが引き続き求められていることはもちろんそうでありまして、その一方で、見直しを進めることも必要、という方向性については何も疑問がないところであります。
ただ1点、大事な視点と言いますか、「銀行制度等のあり方に関する検討」には明示的には書かれていないことですけれども、金融機関自らの健全性の維持ということと、それをいかに透明性を維持した形で行うかということについても忘れずに制度の検討をして頂きたいと思います。振り返ってみましても、90年代後半、不良債権の開示の情報が不正確な時代がありまして、不良債権の実態が見えないという問題がありました。その後2000年に入った頃は、繰延税金資金に頼り過ぎていた頃もありました。自己資本比率が実態を表していないじゃないかといったような議論も当時あり、銀行の健全性に疑心暗鬼がありました。
こういったことはその後改善されてはきましたけれども、今、足もとで何も問題がないかというと、そうではありません。例えば今ですと金融円滑法は終わりましたが、条件変更を申し出た企業の破綻がじわじわ増えているといったことがメディアでも出ますし、このコロナ禍で資金繰り支援策として条件変更はまた実施されてもいます。条件変更に応じた融資は金額や件数が公表される情報になっていますが、こういったことに関しても債権の区分は金融機関の判断を尊重するといったような方針が取られておりまして、そうするとまた実態が見えにくい面というのが増えてきているんじゃないかなと考えています。
あと、金融機能強化法の特例で、公的資金が入るということも検討されていますけれども、その他にはバーゼルⅢ規制の本格的実施の延期ですとか、色々あります。総じて言えば、実態が見えにくくなっているというのが、いつか来た道のように思われます。見えにくくなっていることで金融機関の健全性に疑問を持たれないように、「銀行制度等のあり方に関する検討」について検討を重ねていくといったことを、新しいワーキングの方々にお願いさせて頂きたいと思います。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、山本委員、よろしくお願いいたします。
○山本(眞)委員
弁護士の山本です。報告書について若干お願いというか、意見を述べさせて頂きます。
いつも同じようなことを申し上げて恐縮ですけど、この超高齢社会における金融業務のあり方の点を読ませて頂きました。どうしても窓口は仕方なくて画一的対応になるところを、柔軟な対応ができるようにという意図で進めて頂いていると理解しております。その反面、柔軟にすると今度は不正のおそれがあるということで、本当に多分窓口の方は苦労されていると思いますので、この最後のまとめによると、実現可能なものから適切な対応をしつつ、そのフォローアップを行うというふうになっておりますので、ぜひこの点についてのフォローアップをして頂いて、現場の人たちの苦労とアイデアを吸い取って、施策に生かしていって頂いたらなと思っています。
やっぱりこれから多分認知判断能力が低下するんじゃないかと不安に思う人はたくさんいるでしょうし、そういう意味で銀行ってすごく相談先みたいになる部分もあると思いますので、そこら辺柔軟に対応できるように、かつ不正を見逃さないようにという対応をぜひ進めていって頂きたいと思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
10人の委員の方々からご質問やご意見を頂きまして、あと、本日オンラインで参加頂いておられる委員でご発言がない方は、名簿順で申しますと、伊藤委員、沖野委員、神作委員のお三方になりますが、もし何かあればご発言頂ければと思います。
○伊藤委員
よろしいですか。
○神田会長
どうぞ、伊藤先生。
○伊藤委員
伊藤です。ちょっとチャットで出しましたが、出し方が間違ったらしくてすみません。
○神田会長
お願いします。
○伊藤委員
金融行政方針のメモのところで2点、これは意見なのか感想なのか分かりませんけど、ちょっと感じたことを申し上げたいと思います。
1つは1.の「コロナとの戦い、コロナ後の新しい社会を築く」というところですけれども、簡単に言うとウィズコロナということで、今一生懸命やっていると。そしてその後半の部分で、アフターコロナでこういう取組をすれば社会は変わっていくし、よくなるだろうという話ですけれども、ちょっと話が、こういうふうにいけば良いのですけど、簡単かなと思います。ちょっと単純化して申しますと、ここにある図というのは、今、金融危機が起きていないということが前提です。多分そうだと思うのです。
そういう意味では非常に政策でうまく乗り越えていますから良いのですけれども、ただ、例えばコロナが長引くとかいろんなことが起こると、金融に問題が起きる可能性は非常に高いと思うのです。例えば企業が大変だから銀行が融資するということを取りあえずやるわけですけれども、時間が長くなれば当然不良債権化していくかもしれない。
あとは、今、実態経済が非常悪いのに、株式市場が非常に高い価格をつけているわけですけれども、これも実態経済が非常に悪い中でずっとこのまま行くのかどうかということで、そういう意味では、金融危機が起こらなくて今のままで何とかコロナを封じ込んだ上で、次の時代に行けば良いのでしょうけれども、そうならないケースもあるかもしれないということで、このコロナとの戦いというのは、コロナそのものの戦いだけじゃなくて、コロナによってやっぱり金融に大きな不安が起きない、あるいは混乱が起きないようなことをどう考えるかということだろうと思うのです。
たまたま先日読んだのですが、世銀のチーフエコノミストになったラインハートという人が、どこかで言っていましたけれども、19世紀以降大きな金融危機が起きてしまうと、1人当たりのGDPが元の数字に戻るのに7年から8年かかるということで、今そういうことが起きてほしくないわけですから、ウィズコロナとアフターコロナという簡単な2分法では、ちょっと議論は単純かなという印象を持ちました。
それからもう1つは、「2.高い機能を有し魅力のある金融資本市場を築く」という項目で、そのとおりです。これはもうずっとこれまでも言ってきて、成果が出ている部分もあると思うのですけど、なかなか難しい部分がある。そういう観点で今回のこの部分について、この数年で何か新しいことがあるかどうかということをちょっと気をつけて読んでみると、恐らく2行目の最後のところの「地政学的なリスクなどが強まる中で」というのは比較的最近大きいだろうと思います。
ただその帰結が、「日本市場は国際的なリスク分散にも貢献できる」と。これはもちろんそうですけど、だけであるのかなと思います。もうちょっと具体的に申しますと、今起きている中で、日本の金融市場としての地位に関係がありそうなもの、例えば1つは香港の問題があって、香港はもちろんアジアで非常に重要な金融市場ですけど、これがどういう方向に行くのか。それから2つ目は、いわゆるデジタル人民元に象徴されるような、米国と中国の間でのいわゆる覇権が金融市場にも波及する可能性があるということ。
このような問題を別に逆手に取って、東京の市場の活性化に資するということを申し上げるつもりはありませんけれども、やはり今起きているグローバルの大きな、特にアジアを中心に起きているこの流れというのは、金融市場をどういうふうに打ち立てていくかということで、非常に大きな影響があると思いますので、どこまで具体的に議論するかは別として、そういう今の新しい流れの中でどういう論点があるかというのを、もう一回整理する必要があるのかなと思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、神作委員、どうぞお願いいたします。
○神作委員
ありがとうございます。諮問事項について、意見を申し上げさせて頂きます。
2つ諮問を頂いたと思います。1つ目が「銀行制度等のあり方に関する検討」でございますけれども、銀行の業務範囲規制を中心に検討するということでございます。2つ目が、「市場制度のあり方に関する検討」ということでございまして、その一番最後に、「金融商品取引業者と銀行との顧客情報の共有等について検討を行う」という諮問事項がございます。この2つ、すなわち銀行の業務範囲のあり方と、それから銀行と金融商品取引業者との顧客情報の共有等についてのルールのあり方とは、大変密接に関連していると考えます。
したがいまして、これら2つの諮問事項について、諮問事項ごとに分けて検討するといたしましても、特に密接に関係する部分につきましては、相互に情報を共有しながら議論を進めていく必要があると考えます。
以上でございます。どうもありがとうございました。
○神田会長
どうもありがとうございました。
そういたしますと、沖野委員、もし何かございましたらご発言頂ければと思います。
○沖野委員
ありがとうございます。私は2点だけ述べたいと思います。
1つは銀行のあり方の検討についてです。この問題自体は、銀行制度のあり方に軸足を置いておりますけれども、他方で機能面からの金融という視点が一方であり、また以前も、銀行制度等のあり方に関しての幾つかの問題が出てきたときに、他の業態について、機能的に、あるいは規制のあり方として並行して考える必要がないのかという問題や関心が出てきていたと思います。
具体的には例えば保険の場合はどうかということがありまして、銀行だけに特化したことだけではなく、銀行制度等のあり方を検討する際には、他の業態についてどうなのかということについても併せて検討する必要があるのではないかと感じております。それが、1点目です。
もう1つは、幾つか本日説明された中で、それぞれのテーマとして説明されているのですけれども、それがやはり相互に関連するのではないかと考えております。顧客本位の業務運営のあり方という点についてですけれども、今回報告がされまして、これ自体は不断に見直していく必要があると思いますが、もともとの業規定のあり方などが変わりますと、こちらのほうもやはり再度見直しと言いますか、それ自体は常に見直しだと思いますけれども、必要なのではないかと思います。更に、顧客本位の業務運営のあり方自体は、基本はベストプラクティスということだと思いますが、一方で最低ラインということももちろん非常に重要ですので、その最低ラインなりベストプラクティス自体が、土台が動くことによって変わってくる面があるかと思います。情報に関するものなど規制で担っている部分というものもあると思いますので、相互に考えていく必要があるのではないかと感じているところです。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
これで本日ご出席の委員の皆様方からはご発言は頂いたということですけれども、時間もそろそろではあるのですが、若干余裕はあるかと思いますので、もし追加でのご発言がありましたら手短にお願いできればと思います。どなたかいかがでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。
どうもありがとうございます。本日もいつものように大変多くの貴重なご意見を頂きまして、誠にありがとうございました。
それでは、大臣から本日頂戴いたしました2つの諮問についてですけれども、具体的な検討を進めていくために、それぞれワーキング・グループを設置したいと思います。銀行制度等のあり方に関する検討を行うワーキング・グループの座長につきましては、神作委員にお願いできればと存じます。また、市場制度のあり方に関する検討を行うワーキング・グループの座長につきましては、大変僭越でございますけれども、私が務めさせて頂ければと存じます。それぞれのワーキング・グループの名称ですとか、ワーキング・グループのメンバーの決定につきましては、大変恐縮ですが、私にご一任を頂ければ有り難く存じます。
以上のような形で進めさせて頂きたいと思いますけれども、ご承認頂けますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○神田会長
どうもありがとうございました。
それから、「市場ワーキング・グループ」の報告書につきましては、これを金融審議会としてご了承頂きたいと存じますが、ご了承頂けますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、以上で予定の議事は終了したことになりますが、宮下副大臣、何かございますか。
○宮下内閣府副大臣
いえ、ございません。ありがとうございました。
○神田会長
長官、何かございますか。
○氷見野長官
本日も様々な視点からご意見を頂戴いたしまして、ぜひ私どもも行政に反映させて頂きたいと思います。色々ご審議をお願いしている背景について若干申し上げますと、コロナでどんな影響が出るかというのはなかなか見通せませんので、まずは見通せない状況の中で借手さんを支えていくというところが必要になるわけですけれども、そこのところはかなり日本もほかの国に劣らない結果を出せているのではないかと思っておりますが、一番気にしておりますのは、コロナの後、社会構造、経済構造、産業構造を大きく変えて、新しい成長の道を見いだしていくときに、日本が本当に柔軟な転換を実現して、新しい成長を見いだせる国々の1つとなるのか、それともコロナ時代の遺産の後始末で停滞を続ける国になるのかというところは、かなり気をつけていかなければならないと思います。
これは金融だけの問題ではないわけですけれども、日本の金融のこれまでの歴史を考えてみますと、高度成長の時代には銀行システムが、利ざやであれ、含み益であれ、更には借手企業の成長力など当時あった諸条件の下で、リスクを取って、うまくいかなかったところは支えていくといった力を持っていて、それが新しい分野に企業がチャレンジしていくことを支える基盤になっていた面があると思うのですけれども、それが金融危機のときにある意味壊れてしまった。壊れてしまった後、誰がリスクを分担する仕組みになったかというと、結局企業が自分で内部留保をためて、現金をためて、自分で自己保険でリスクを取る仕組みに変わってきた20年だったというふうにも見ることができるのではないかと思います。
そのままの状態でコロナ後の転換が本当にできるかというと、やっぱり内部留保をためて投資しなかったからうまくいったんだという経験だけが残りかねないということで、今回事務局からご説明申し上げた事項も、具体的な対策のほうに着目して個別の項目を並べておりますけれども、資本市場の機能が高くなる、あるいは銀行システムが企業を支えられるということを、コロナ後の時代に間に合うまでの間に整備していきたいということでありますので、ぜひ先生方から様々な視点から知恵を出して頂いて、改革を進めていければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、本日の金融審議会総会・金融分科会合同会合を終了させて頂きます。
なお、本日の議事の模様につきましては、事務局から後ほど記者レクを行いますので、ご承知おき頂ければと存じます。
今後の日程などに関しましては、事務局から後日改めてご連絡をさせて頂きますのでよろしくお願いいたします。
皆様方には、本日も、大変お忙しい中、長時間にわたり、ウェブ参加というのでしょうか、ウェブ会議形式での出席を頂きまして、また多くの貴重なご指摘を賜りましてありがとうございました。
以上で散会させて頂きます。どうもありがとうございました。
以上
お問い合わせ先
金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課
(内線3645、3520)