第42回金融審議会総会・第30回金融分科会合同会合議事録
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1.日時:
令和元年9月25日(水)9時30分~11時00分
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2.場所:
中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第1特別会議室
○神田会長
それでは、定刻になりましたので、始めさせて頂きます。
ただ今から、第42回金融審議会総会・第30回金融分科会合同会合を開催させて頂きます。
本日、皆様方には大変お忙しいところお集まり頂きまして、誠にありがとうございます。
本日の議事は公開の形で行わせて頂いておりますので、よろしくお願い申し上げます。
本日は、神田内閣府大臣政務官にお越し頂いております。
最初に、開会にあたりまして、神田政務官よりご挨拶を頂きたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
○神田政務官
皆様、おはようございます。本日は大変お忙しい中、金融審議会総会にご出席頂き、誠にありがとうございます。このたび内閣府政務官を拝命いたしました神田憲次でございます。どうぞ皆様方、よろしくお願い申し上げます。
まず冒頭、先日の台風第15号により被害を受けた皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
今般の災害を受け、被災者支援のため、9月12日に関東財務局と日本銀行の連名で、千葉県内の金融機関等に対して金融上の措置要請を発出したところでございますが、金融庁といたしまして、引き続き被災者の皆様に寄り添ってまいります。
さて、足元の我が国の経済ですが、海外発の下方リスクによる影響に留意する必要はございますが、安倍内閣の政策の効果によりまして、雇用・所得環境の着実な改善が続く中で、経済の好循環は維持されていると考えております。
政府といたしましては、この経済の好循環を持続的な経済成長につなげていくために、6月に閣議決定いたしました「成長戦略実行計画」に基づき、新しい挑戦といたしまして、「Society5.0」の実現に力を尽くし、経済社会の構造改革を強力に進めてまいります。
なお、金融庁といたしましても、金融育成庁として、金融サービスの多様な利用者の視点に立ちまして、デジタライゼーションへの対応などを通じて、金融行政の目標である企業・経済の持続的な成長と安定的な資産形成等による豊かな国民生活を実現できるよう努めてまいります。
本日の総会は、「令和」となって初めての開催でございます。振り返ってみますと、平成10年8月6日に第1回目の総会が行われた後、「平成」の間にこれまで41回の総会が開催されております。この間、我が国においては、不良債権問題の深刻化やグローバルにはリーマンショックの発生など、困難な課題と対峙する中で、金融審議会の委員の皆様には、我が国の金融行政の「羅針盤」として大変重要な役割を担って頂きました。
本日の総会におきましても、情報通信技術の飛躍的な発展により、金融を取り巻く環境に変化が見られる中で、委員の皆様方には新しい時代に即した金融制度の在り方について、大所高所から幅広くご審議頂きたいと考えております。
本日は、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
なお、神田政務官は公務のため、ここでご退席されます。政務官、どうもありがとうございました。
○神田政務官
よろしくお願い申し上げます。
○神田会長
それでは、カメラの方、恐縮ですが、ここでご退室をお願い申し上げます。
(報道関係者退室)
○神田会長
それでは、議事に移らせて頂きたいと思います。
本日は、お手元の議事次第にありますとおり、「諮問事項にかかる報告等」及び「金融行政のこれまでの実践と今後の方針」について説明頂いた後で、まとめて委員の皆様方に討議をお願いしたいと思います。
なお、本日は、「金融制度スタディ・グループ」の座長でいらっしゃいます岩原先生にもご出席頂いております。どうもありがとうございます。
それでは、まず、「市場ワーキング・グループ」の今後の運営案につきまして、事務局より説明をお願いしたいと思います。中島企画市場局長、どうぞよろしくお願いいたします。
○中島市場局長
7月に企画市場局長に着任いたしました中島でございます。よろしくお願いいたします。
皆様、既にご案内のとおり、金融審議会「市場ワーキング・グループ」におきましては、高齢社会の金融サービスはどうあるべきか、個々人において人生100年時代に備えてどのような資産形成及び管理を行っていくべきか、といった視点で、昨年9月以降議論が行われまして、本年6月3日に報告書が取りまとめられ、公表されたところであります。
この報告書では、人生100年時代においては、リタイア後の人生が長期化することから、資産寿命を延ばす行動が必要になってくるという認識の下、個々人の資産形成及び管理の取組、それに対応した金融サービスの在り方、行政機関などによる環境整備といった内容が記載されております。
この報告書をきっかけに、金融サービスの利用者である個々人及び金融サービス提供者をはじめ幅広い関係者の意識が高まり、具体的な行動につながっていくことを期待したものでありましたが、この報告書においては、家計調査における高齢者世帯の平均的な収入と支出の差を比較して、あたかも公的年金だけでは生活費として月5万円足りないかのように、また、老後30年で2,000万円が不足するかのように述べており、世間に著しい誤解や不安を与え、これまでの政府の政策スタンスとも異なることから、6月11日の大臣閣議後記者会見において、麻生大臣より、「担当大臣として正式な報告書としては受け取らないことを決定した」旨の発言があったところであります。審議会の議論をサポートする事務方として、配慮を欠いた対応により、今般このような事態を招いたことを反省しており、深くお詫び申し上げます。
このような経緯を踏まえ、本報告書は、本日の総会において議題とはしておりませんが、一方で、家計の安定的な資産形成の実現に向けて、総合的に環境を整備していくことは引き続き重要な課題であります。
「市場ワーキング・グループ」では、3年前(2016年12月)に、主に投資信託等の販売を行う金融機関を対象として、「顧客本位の業務運営の原則」を策定しましたが、必ずしも営業現場等への浸透は十分ではないと考えております。このため、これまでの進捗を検証しつつ、「顧客本位の業務運営」について、制度対応の適否も含めて、新たに検討を行うべく「市場ワーキング・グループ」を再開し、委員の方々にご議論頂きたいと考えております。
このような取扱いにつきましては、神田会長とも相談したものではありますが、金融審議会の総会委員の皆様におかれましても、ご理解を賜れればと考えております。
それでは、次に、「市場ワーキング・グループ」に属しております「市場構造専門グループ」のこれまでの議論と今後の進め方の概要につきまして、市場課長の太田原より説明いたします。
○太田原市場課長
7月に市場課長に着任いたしました太田原でございます。よろしくお願いいたします。
「市場構造専門グループ」につきましては、お手元の資料1に関連資料がついてございます。
まず、こちらの論点につきましては、東京証券取引所における市場構造の在り方として、2018年11月から東京証券取引所の懇談会で検討が進められ、本年3月に東証で論点整理が公表されたところでございます。
お手元の資料1のメンバー名簿、あるいは開催実績の紙の次に、東証の市場構造の見直しに係る論点整理というタイトルの資料がございます。
そこの左側に市場構造をめぐる課題として、各市場区分のコンセプトが曖昧などの課題が記されております。右側に論点整理といたしまして、一般投資家の投資対象としてふさわしい実績のある企業が対象となる仮称A市場、次に、国際的な機関投資家の投資対象となる要件を備えた企業が対象となる仮称C市場、右側に、高い成長可能性を有する企業が対象となる仮称B市場というコンセプトが示されております。
こういった東証の論点整理の公表の後、本件は我が国の市場そのものの在り方に直結することから、金融審議会においても議論を進めることとし、本年5月に「市場ワーキング・グループ」の下に、「市場構造専門グループ」を設置いたしました。これまでに2回開催いたしまして、機関投資家や市場関係者等からのヒアリングを実施しました。そこでのご意見を一部ご紹介させて頂きます。
まず、議論の方向性に関する意見として、投資家、発行会社、取引所それぞれの立場で意向が異なるので、まずは市場構造の見直しの目的についての共有化を図ることが大事である。基準に達しない企業を降格させるのではなく、引き上げていくという成長戦略につなげる発想が必要といった議論がございました。
次に、市場構造の在り方に関する意見として、時価総額だけではなく、ガバナンス、流動性といった3つの要素を見て基準を考えてはどうか。又は、新興市場は統一して1つの市場にすることが考えられる。上場及び廃止基準の差異の見直しや、上場廃止基準の引上げも必要といった意見が出されております。
次に、株式指数と市場区分との関係に関する意見として、TOPIXの範囲と市場区分の範囲を切り離して議論した方が良いのではないか。TOPIXを急激に変えると、指数自体の有効性、使い方が随分違うことになり影響が大きい。変える場合には、相当時間をかけて軟着陸を試みることは最低限必要といったご意見を頂戴しているところであります。
今後につきましては、10月以降、引き続き地方に拠点を置く企業や新興企業、学識経験者に対するヒアリングを行った上で、その後、それまでのご議論等を踏まえつつ、あるべき市場構造の在り方について検討を行っていく予定でございます。
私からは以上でございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
続きまして、「金融制度スタディ・グループ」の審議の結果及び報告書についてご審議頂きたいと思います。
スタディ・グループの座長でいらっしゃる岩原先生からご説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○岩原SG座長
お手元の資料、「「決済」法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告≪基本的な考え方≫」の主な内容に沿って報告させて頂きます。
「金融制度スタディ・グループ」は、一昨年11月の総会において、『機能別・横断的な金融規制の整備等、情報技術の進展その他の我が国の金融を取り巻く環境変化を踏まえた金融制度の在り方について検討を行うこと』という金融担当大臣からの諮問を受けて設置されました。
「金融制度スタディ・グループ」では、まず、機能別・横断的な金融規制体系の整備にあたっての基本的な考え方などについて審議を行い、昨年6月、金融の「機能」の分類や各「機能」において達成されるべき利益等をまとめた『中間整理』を公表いたしました。
その後、情報の適切な利活用、銀行・銀行グループに対する規制の見直し、決済の横断法制、プラットフォーマーへの対応を当面の検討課題とし、『中間整理』も踏まえつつ、昨年9月から本年6月までの間、12回にわたり更なる審議を行ってまいりました。
その間、「情報の適切な利活用」、「銀行・銀行グループに対する規制の見直し」との関連では、本年1月に「金融機関による情報の利活用に係る制度整備についての報告」を取りまとめました。
本報告は、「決済の横断法制」及び「プラットフォーマーへの対応」に関するこれまでの審議を取りまとめたものでございます。
まず、「決済」法制に関する審議について申し上げます。現行の「決済」に関する規制枠組みについて、今日では、次の3点に対応しきれていないという指摘がございます。
第1に、キャッシュレス化の推進が必要とされる中、キャッシュレス時代の利用者ニーズに応えたり、利便性が高く、安心・安全な送金サービスを実現したりすることが求められている点であります。
第2に、情報通信技術の発展等により、「決済」手段・サービスの提供・利用のされ方が変化していることであります。
第3に、資金決済法の制定から約10年が経過し、各種「決済」手段・サービスの提供・利用の実態や事業者が有しているリスクが具体的に確認されつつあるということであります。
こうしたことも踏まえ、「金融制度スタディ・グループ」で議論を行い、基本的な考え方を取りまとめております。以下、主な内容をご紹介いたします。
資料の左側をご覧ください。まず、資金移動業者が提供する送金サービスについて申し上げます。
現行の送金サービスは100万円の上限が設けられております。しかし、この上限額を超える送金に対するニーズが一定程度存在すると考えられます。他方、現在の資金移動業の実態として、送金の額は件数ベースでは1件あたり数千円以下に集中しているという指摘がございます。
こうしたことを踏まえ、第1に、現行の上限額を超える「高額」送金を取り扱うことができる新類型を設けることを検討し、当該新類型についてそのリスクを踏まえ、追加的に必要となる対応を検討することが考えられます。
第2に、他方数千円、又は数万円以下の「少額」の送金のみを取り扱う送金サービスについて、適用される規制を何ら緩和する余地がないかを検討することも考えられます。
なお、資金移動業者が、具体的な送金指図を伴わない資金を受け入れることは認められないこと、資金移動業者が運用・技術上必要とされる期間を超えて資金を保持しないこととすることも提言しております。
このほか、図の下部に記載のとおり、前払式支払手段、収納代行、ポストペイサービスへの対応の在り方について検討することとされております。以下、この3点に関し申し上げます。
第1は、前払式支払手段についてでございます。前払式支払手段の一部、例えば、第三者型かつIC型やサーバー型などについて、送金サービスに類似した性質を有しているとの指摘があります。しかし、前払式支払手段と資金移動業との間には、利用者資金の保全に関してなど規制の差異が存在いたします。そこで、「送金サービスに類似した性質」を有する前払式支払手段について、利用者資金の保全に関する規制等を見直すことを検討することが適当であると考えられます。なお、見直しの検討にあたっては、利用実態等を踏まえるとともに、「送金サービスに類似した性質」をどのように考えていくかを明らかにする必要があると考えられます。
第2は、「収納代行」についてでございます。現在、「割り勘アプリ」といった形で「収納代行」の形式を取りつつ、実質的に個人間送金を行うサービスが提供されているとの指摘がございます。こうしたサービスについて、利用者資金の適切な保全や「決済」の確実な履行等の必要性は資金移動業者が提供する送金サービスと何ら変わることはありません。そこで、このようなサービスは、資金決済法上の資金移動業にあたることを明らかにした上で、必要な場合については規制を及ぼすことが考えられます。
他方、「収納代行」にも様々な形態のものがあり、一律に規制対象とすることは適当ではなく、今後実態について把握を行い、資金移動業の規制の潜脱と評価されるものはどのようなものかということについてきめ細かに検討していくことが重要であると考えられます。
第3が、ポストペイサービスについてでございます。「決済」手段・サービスには、前払式支払手段や資金移動業のように事業者が事前に利用者から資金を受け入れる類型、すなわちプリペイドのほか、クレジットカードのように事業者が資金を立て替え、事後的に利用者から支払いを受ける類型、すなわちポストペイが存在いたします。今後キャッシュレス化をさらに推進するとともに、利便性の高い送金サービスを実現する観点からは、プリペイド・ポストペイを組み合わせたシームレスなサービスが、多様な主体から提供されていくことが望ましいと考えられます。こうしたことも踏まえ、「少額」での利用に限定されたポストペイサービスを念頭に、過剰与信の防止という規制目的を適切に確保しつつ、リスクに応じた規制の合理化を図ることについて、今後検討することが適当と考えます。
以上が「決済」法制に関する基本的な考え方の主な内容となります。
続いて、金融サービス仲介法制に関する審議について申し上げます。資料の右側の図をご覧ください。
近年、情報通信技術の発展等により、多様な金融商品・サービスをオンラインで円滑に提供することが可能になっております。
一方、現行制度上、利用者と金融機関との間に介在する仲介業者が業種をまたいで商品、サービスを取り扱う場合には、業種に応じた複数の登録等が必要になっております。また、既存の仲介業者の一部は、特定の金融機関に「所属」し、指導を受けることとされております。右側の図の真ん中にあります銀行代理業者等であります。ゆえに、多数の金融機関への仲介を行う場合、それぞれの金融機関からの指導に対応するための負担が大きいとの指摘がございます。
そこで、イノベーションを促進し、利便性のより高い金融仲介サービスを実現していく観点から、多様な金融商品・サービスを業種横断的に提供する仲介業者に適した制度について、具体的に検討を進めていくことが適当であると考えられます。その際、仲介業者の取扱商品・サービスにかかわらず、参入規制の一本化を図ること、他方、行為規制については、利用者保護等の観点から、仲介業者の取扱商品・サービスに応じ、必要なルールが過不足なく適用されることを確保すること、所属制を緩和する場合には、適切な業務運営を確保するための監督の在り方や、利用者保護の観点からの必要な措置を検討すること等に留意する必要があると考えられます。
以上が金融サービス仲介法制に関する基本的な考え方の主な内容でございます。
今後、本報告も踏まえ、「決済」法制及び金融サービス仲介法制に関して、着手が可能な論点から制度整備に向けた具体的な議論が進められることを期待しております。
以上、大変簡単ではございますが、「金融制度スタディ・グループ」の報告の主な内容のご報告とさせて頂きます。ご清聴、ありがとうございます。
○神田会長
どうもありがとうございました。
続きまして、今般、金融庁は「利用者を中心とした新時代の金融サービス~金融行政のこれまでの実践と今後の方針~」を取りまとめて公表しております。金融行政が何を目指すかを明確にした上で、幅広い方々との議論を通じて金融行政を遂行していくものと理解しております。
金融行政の大きな方針が示されたということですので、この機会に事務局からご説明を伺いたいと思います。田原総合政策課長からお願いいたします。
○田原総合政策課長
総合政策課長の田原でございます。よろしくお願いいたします。座って説明させて頂きます。
それでは、スライドに従いまして、10分ちょっとご説明をさせて頂きます。やや駆け足になりますが、ご了承ください。また、お手元に青の冊子がございます方、あるいはタブレットなどでホームページにアクセスできる方は、文書の中に重要施策の概要という詳しいポンチもございますので、本文ともども参照頂きながら聞いて頂ければと存じます。
令和元事務年度の金融行政の実践と方針でございますが、タイトルは「利用者を中心とした新時代の金融サービス」とさせて頂いております。
趣旨でございますけれども、真ん中にございますように、金融育成庁といたしまして、金融サービスに多様な利用者の方、また、受益者の方がいることに十分思いをいたして、そういった方々の視点に立ち取組を推進していく。そして、より豊かな国民生活を実現していくという考え方に立ちまして、こういったタイトルとさせて頂いているものでございます。
取組の主な柱でございますけれども、この事務年度におきましては、上の3つの柱、金融デジタライゼーション戦略の推進、利用者の方々の多様なニーズに応じた金融サービスの提供・そういった金融サービスの向上、金融仲介機能の十分な発揮と金融システムの安定の確保、この3点を柱とさせて頂いております。
また、こうした柱を実現させていく上で、下にございますように、+1とございますけれども、国際的な取組の必要性、また、+2のところに書いてございますけれども、自らの改革ということは欠かせません。したがいまして、この5つ、3+2の取組を推進することが今年度の方針になっているわけでございます。
それぞれの柱についてご説明をさせて頂ければと存じます。
まず、金融デジタライゼーション戦略でございます。昨事務年度、初めて金融デジタライゼーション戦略というものを金融庁において策定させて頂きまして、左上にございますような取組を実施させて頂きました。フィンテック・イノベーション・ハブという組織を立ち上げまして、フィンテック企業など100社以上のヒアリングを行い情報収集する、あるいはこういった方々を中心としてフィンテック・サポート・デスク、フィンテック実証実験ハブというスキームを設けまして、イノベーションの支援を行っていく。また、1万人以上の参加者の方々を集めたフィンテック・サミットというイベントも行っておりますし、先ほど岩原座長からご紹介がありました金融機関による情報の利活用に係る制度整備も行ってきたところでございます。
一方、国内外の情勢を見ますと、こういった取組をはるかに超えるスピードでフィンテックの活用は進んでいると考えております。例えば、アリペイなどは10億人に達する利用者を獲得しておりますし、JPモルガンなどは毎年1兆円以上の情報投資をしていると言われております。また、ここにも書いてございますけれども、暗号資産に関連した新たな構想ということでフェイスブックのリブラ、こちらは数十億人単位のユーザーを持つプラットフォーマーが決済を提供するという構想も発表されている状況にございます。
そういった中で、金融庁といたしましても、金融デジタライゼーション戦略につきまして、さらにこれを推進していく立場に立って今年は取り組んでいきたいと思っておりまして、右側の重点5分野を中心に取組をしていきたいと考えております。
1つ目でございますけれども、先ほどの金融機関による情報の利活用に係る制度整備を踏まえまして、金融機関によるデータの利活用を促進し、利用者の方々により利便性の高いサービスを提供していくことが重要ではないかということが考えられます。その際には、情報銀行というものについても十分活用していくことを考えていくことが必要ではないかということでございます。
2点目は、フィンテック・イノベーション・ハブでございますけれども、昨年は情報収集に注力していたわけですが、先ほど申し上げましたフィンテック・サポート・デスクですとか、サンドボックスでありますフィンテック実証実験ハブと協力しながら、支援機能をさらに発揮していく方向での取組をしていきたいと思っております。また、3つ目の機能別・横断的法制の整備につきましては、先ほどご紹介があったとおりでございます。
4つ目でございますが、金融行政、金融インフラについても、デジタル化は重要であると考えておりまして、データをどういうふうに活用するか、あるいは事業者の方々がどういうふうにレギュレーションに対応されるかということも重要なわけでございますけれども、いまだに紙ベースのやりとりが金融庁と業者の方々の間ではございまして、また、業者の方々から、これを金融庁、日銀だけではなく、多様な業界団体、自主規制団体などにも出すので、取締役が変わっただけで7つも8つも書類を出さないといけないというお話をよく聞くところでございまして、そういったところから、先ほど申し上げたところまで、金融行政のデジタル化について取り組んでいく必要があると考えております。
また、グローバルな取組ということで、先ほどフィンテック・サミットのお話を申し上げましたけれども、国際的にサイバーセキュリティ、ブロックチェーン技術などへの関心が高まる中で、こういったものの発展について今後どう考えていくかということで、金融規制当局だけではなく、技術者なども巻き込んで議論をする場、それをマルチステークホルダー型アプローチと呼んでおりますけれども、そういった議論の場を金融庁として主導して設置することを考えておりまして、現在ガバナンスフォーラムと仮称をつけておりますが、そういった取組もしていきたいと思っておりますし、先ほどご紹介いたしましたリブラのような構想についても、どういった対応をしていくべきかについての検討を進めていきたいと考えているところでございます。
2点目の業者の方々の多様なニーズに応えていくという観点では、大きく2つの柱がございます。
1点目でございますけれども、ご覧のインベストメントチェーンをいかに機能させて利用者、最終受益者の方々の資産形成を促進していくかということでございます。かねてより金融審議会においてもご議論頂いておりますように、日本の個人金融資産は半分以上が預貯金という形で保有されているということでございまして、こういった結果として、日本の金融資産の増え方はアメリカなどと比較すると少ないのではないかというご指摘も頂いているわけでございます。
そういった状況につきましては、知識の問題ですとか、そもそもまとまった資金がないという理由がよく指摘をされているところでございまして、こういったことについてどう取り組んでいったら良いかということで、この20年来、金融・情報リテラシーの向上に取り組んできているところでございます。先立って行われましたG20福岡会合におきましても、G20福岡ポリシー・プライオリティということで、高齢社会を迎える中で、家計の金融・情報リテラシーの重要性、また、生涯にわたるライフプランニングの重要性がうたわれているところでございます。
したがいまして、金融庁といたしましても、家計の金融・情報リテラシーの向上に向けた努力を行っているところでございまして、下にございますように、昨年は職員がボランティアで各地の学校、あるいは母校に行きまして、金融の資産形成、あるいは金融消費者教育などについてご紹介するという取組をしてきたところでございます。
こういった家計を中心とした取組をはじめといたしまして、今後金融審議会でご議論頂きます顧客本位の業務運営の在り方、また、アセットオーナーの方々がスチュワードシップ活動や最終受益者の資産を増やしていくためにどういった機能を果たしていくかということ、あるいは資産運用業がどういった形で運用パフォーマンスを上げていくかという取組、また、金融・資本市場の機能・魅力向上、こちらには、先ほどご紹介させて頂きました証券市場構造の見直しなども含まれてございます。
また、投資、資産形成にあたりましては、国際分散が念頭にあるわけですが、マーケットにおいて、いかに企業が稼ぐ力を発揮して生産性を向上させ、経済を発展させていくかということとともに、その果実がしっかりと家計に戻っていく取組も必要であろうと考えておりまして、引き続きコーポレート・ガバナンス改革にも取り組んでいく必要があろうと考えているところでございます。
また、多様なニーズに応じた金融サービスを提供していく観点から、2点目でございますけれども、多様な金融機関がいろいろな方々にどういうふうに求められるサービスを提供していくかという観点からの取組も深めていく必要があると考えております。こういった観点から、高齢者の方々へのニーズに応えたようなサービスの普及・促進ですとか、あるいは障がい者の方々、被災者の方々、外国人の方々、こういった多様な金融のユーザーの方々の視点に立って、サービスの提供の在り方について考えていく必要があると考えております。また、金融詐欺、例えば振り込め詐欺ですとか、インターネット取引などを活用した不正送金、利用被害の対策、あるいは暗号資産のトラブルなどにも積極的に取り組んでいく必要があると思います。
また、既存の金融機関につきましても、コンプライアンス・リスクなどについてはかねがね問題が起きているところでございます。こういった観点から、苦情などの分析について高度化させていくとともに、金融機関自身の企業価値向上に向けた管理の高度化にも取り組んでいく必要があると考えているところでございます。
3つ目の柱でございます。金融仲介機能の十分な発揮と金融システムの安定の確保ということでございます。もしお手元にありましたら、先ほど紹介いたしました冊子の重点施策の概要の14ページから16ページをご覧頂けたらと存じます。
低金利環境、あるいは人口減による国内市場の縮小、デジタライゼーションの台頭ということで、経営環境は地域金融機関にとって非常に厳しくなっているのではないかと考えております。こういった中で、地域金融機関におきましては、足元の健全性は確保されているわけでございますけれども、業務純益とか当期純利益は低下傾向ということで、非常に厳しい経営環境になってございます。
こういった中で、地域金融機関におきましては、ガバナンス、あるいはマネジメントの能力を発揮し、しっかりとビジネスモデルを見直して頂いて、持続可能性を確保しながら、金融仲介機能を発揮して頂くことが重要だと考えております。こういった観点から、金融庁といたしましては、財務局と一体となって対話、モニタリングを実施していきたいと考えております。
その際、同じような課題を見ながら対応してきたわけでございますけれども、対話をしていく中で、対話の在り方という意味で言うと、経営陣だけではなくて、取締役から現場の営業職員の方々に至るまで、各階層幅広い範囲の方々と対話をする。そのやり方といたしましても、探求型対話で取り組んでいくことが必要であるとしてやってきたわけですけれども、どうしても対話の仕方によっては、金融機関側の対話が形式的なものになってしまうと。その理由を考えますと、地域金融機関が地域で何を実現していくかについての理念がしっかり浸透されていない。そういったことについて根っこから考えていくような、あるいはそういった理念が現場に浸透していく形にしていかないと、どうしても現場の数字合わせのようなことにエネルギーを割くということが起こってしまうことが考えられるわけでございます。そういった観点から、本事務年度の方針におきましては、経営理念というものをベースにいたしまして、そういったものが経営トップから現場に至るまで浸透し、実際に現場でお客様本位の業務運営、あるいはしっかりとした生産性の向上に向けた取組が行われているかということに思いをいたしながら、先ほど申しましたような対話を実施していきたいと考えているわけでございます。
また、その際に、これも本事務年度から出てきたタームでございますけれども、心理的安全性ということでございまして、どうしても金融機関の方々と当局の対話となりますと、監督、被監督ということになる、あるいは過去20年間の様々なやりとりの中で、金融庁にこのことを言うとろくなことにならないのではないかという現場の気持ちがあるのではないかということでございまして、そう思われないように、フラットな対話ができる環境をつくっていきたいということで、心理的安全性、下に※印で書いてございますけれども、一人一人が不安を感じることなく安心して発言・行動できる場の状態や雰囲気をつくりながら対話に取り組んでいきたいと考えているところでございます。
また、地域金融機関の方々にビジネスモデルの確立をお願いするにあたりましては、下の四角にございますけれども、ビジネスモデルを確立をしていく上での環境整備が必要であると考えてございます。そういった観点から、先ほどの重点施策の概要、16ページに詳細がございますけれども、パッケージとしてそういったことを支援していくための施策を取りまとめてございます。この中には、金融機関の業務範囲などに関わる規制緩和のほかに、地域金融機関、先ほど申し上げましたように経営・ガバナンスをしっかりと確立していくことが重要ではないかということを申し上げたわけですが、その際に、コーポレート・ガバナンスコードのように、よすがとなるような論点をまとめましたコア・イシューというものを策定して、これをベースに金融機関の方々が、部内でも議論頂くとともに、私どもとも議論できる、そういったことができる環境整備をしたいと考えてございます。
そのほかにも、パッケージ策の中に重要な施策がございますけれども、時間の関係で割愛をさせて頂きますが、先ほど申し上げました重点施策の概要の16ページをご覧頂ければと存じます。
国際的な取組に関しましては、本事務年度G20の福岡会合におきまして、日本はG20の議長国でございまして、金融分野におきましても、金融市場の分断回避、金融技術革新、それから高齢化と金融包摂といったテーマをプライオリティとして設定いたしまして、リーダーシップを発揮するべく努力しまして成果を上げたものと考えてございます。
こういった点につきまして、それぞれ(1)の右側の今後のフォローアップというところにございますけれども、しっかりフォローアップをしながら引き続き国際的にもリーダーシップを発揮していければと考えているところでございます。
また、国際的には当局間ネットワークの重要性がますます増しているわけでございまして、こちらの真ん中に書いてございますように、中国、ミャンマーなど2国間関係、あるいは金融研究センターに設置しました金融連携センター(GLOPAC)のプログラムを強化することなどを通じて国際的なネットワークの強化に努めるとともに、最後に書かせて頂いておりますけれども、持続可能な開発目標(SDGs)の推進にも引き続き取り組んでいきたいと考えているところでございます。
最後の柱になりますけれども、先ほども申し上げましたように、こういった取組をしていく上で、金融庁、我々自身の改革、それから新しい検査・監督の実践が非常に重要であると考えております。
金融庁の改革につきましては、先ほども申し上げましたような利用者視点に立った金融行政を実現していく上では、金融庁が職員にとってやりがいを感じ、自身の成長を実感できる職場となる必要性があると考えておりまして、私どもが金融機関にお願いしていることを自分たちの中でもしっかりやっていかなければいけないということであろうかと考えております。
こういった観点から、下にございますように、昨年より職員の自主的な政策提案の枠組みであります政策オープンラボという取組ですとか、職員の成長支援や対話力向上のための1on1ミーティングの推進などを行ってきたわけでございます。こういった取組も引き続き続けてまいりたいと考えておりますけれども、上にございますように、今年は局・課室ごとに自ら課題を特定いたしまして、改革目標を設定し取組状況を見える化するですとか、有志職員の中から組織活性化についての提案を頂いて、ボードのようなものを作りまして、幹部と対話するといった取組を行っていきたいと考えております。
また、財務局とのコミュニケーションも非常に重要な課題でございまして、財務局は財務省の地方支分部局ということになっておりまして、私どもは法律上、指揮命令権はあるわけでございますけれども、仕事をお願いする関係ということで、その信頼関係をどう築いていくかということも重要な課題かと考えております。
最後に、右側の新しい検査・監督の実践に向けた取組になりますけれども、昨年6月に新たな検査・監督基本方針を公表させて頂き、その後、対話の材料となる分野ごとの考え方と進め方を順次公表させて頂きました。また、この9月には、融資についての考え方と進め方についてもパブリックコメントに付させて頂いているところでございます。
こういったものをベースにいたしまして、先ほど申し上げたような対話をさせて頂き、そういった金融機関の方々の取組を促すとともに、好事例、取組事例、あるいは課題につきましては、公表するフィードバックをつくることによりまして、新しい検査・監督の実践をより実効性のあるものにしてまいりたいと考えているところでございます。
以上、5つの柱につきまして駆け足でございますけれども、ご説明をさせて頂きました。ご意見を頂ければ幸いでございます。どうもありがとうございました。
○神田会長
どうもありがとうございました。
なお、本日ご欠席の川島委員から意見書の提出を頂いておりますので、委員の皆様方におかれましては、タブレット端末でご覧頂ければと存じます。
それでは、討議に入らせて頂きたいと思います。先ほどご説明のありました「市場ワーキング・グループ」の今後の運営案、「金融制度スタディ・グループ」の報告書、そして、今ご説明頂きました金融行政の実践と方針、これらに関しましてご質問、ご意見等をお出し頂ければありがたく存じます。どなたからでも、どの点についてでも結構でございます。いかがでしょうか。
それでは、佐々木委員、どうぞ。
○佐々木委員
私から質問、意見というより感想になりますが、3点申し上げたいと思います。
1点目は、「市場ワーキング・グループ」の取組で、フィデューシャリー・デューティーの話がありましたが、日証協等に伺いますと、回転売買がなくなったものの、逆に今度は「売りどめ」のような行為が苦情として上がっていることが問題になっている、ということをよく耳にします。今後、本来のフィデューシャリー・デューティーについて検討されていくということですので、是非それをお願いしたいということが1点です。
また、もう1点が、非常に大きな議論ですが、新時代の金融サービスに関するご報告、非常に良いポイントが多くあり、魅力的なお話だと思ったのですが、最近感じていることを1点申し上げます。金融教育ももちろん必要だと感じておりますが、逆に顧客に合わせた、これはフィデューシャリー・デューティーにもつながるかもしれませんが、分かりやすい商品設計をさらに深めていく方向も必要なのかと思います。ETF、iDeCo、NISA等様々ありますが、普段マーケットから遠い方から見ると恐らくハードルが幾つかありまして、例えば、iDeCoで商品を選ぶときによく分からなくなってやめてしまうこともあるのかと思います。教育することも大事ですが、分からない人に非常に分かりやすい環境をつくることも併せて考えて頂けたら良いと感じております。
最後に1点。「市場ワーキング・グループ」の報告書についてですが、私は是非申し上げたいと思っていまして、報告書に私は何も関わっていないので、事情も何も分からないのですが、報告書の内容を見せて頂いた限り、特に間違ったことは何も書いてありませんし、「あくまでも平均的」という、控え目な表現を用いていらっしゃるので何も問題はないのではないかと思いました。むしろ、今度のようなことがありまして、こういった報告書を自由に書けなくなったり、世の中の反応等様々なことを忖度して世の中に出さなくなったり、表現をマイルドにするということをあまり極端にされたりすると、むしろ必要な情報を与えないことになって問題なのではないかと思います。
今回のようなこともときにはあると思います。先ほど国民に不安を与えたのでお詫び申し上げるというお話がありましたが、第三者として私が見た印象からすると、むしろ国民の不安を煽ったのは、報告書そのものではなく、野党の極端な捉え方と、その報道の仕方であったと思いましたし、今までの報告書に比べて、報告書として特別問題があるとは私には思えませんでした。今回のようなことがあっても、過剰な反応に対してはそうではないということを丁寧に説明していくしかないのであり、今後もワーキング・グループなどではあまり忖度し過ぎずに自由に議論していって頂きたいと思いました。これは私の個人的な感想です。
○神田会長
どうもありがとうございました。事務局から何かございますか。よろしゅうございますか。それでは、次に河野委員、お願いします。
○河野委員
金融行政の実践と方針に関するご説明、ご報告、ありがとうございました。消費者の立場から3点、意見と要望をお伝えしたいと思っております。
1点目は、「市場ワーキング・グループ」の報告に関しまして、顧客本位の業務運営の徹底を改めてお願いしたいと考えます。当初は投資信託等の販売を行う金融機関を対象に顧客本位の業務運営に関する原則を打ち出して頂いてはおりますけれども、昨今、消費者をターゲットとして投資信託のようなリスクの高い商品だけではなく、医療保険、生命保険等、暮らしに必要と思われる商品の販売においても消費者から見ると不適切と思える事例が相次いで報道されておりまして、私たち消費者としては金融機関に対する不信感を拭い去ることができない状況にあります。従来のビジネスモデルが崩壊して、収益確保が困難な状況になっていることは消費者も理解はしておりますけれども、だからといってコンプライアンス、ガバナンスが蔑ろにされることは許されないと思っております。併せて、デジタル化の浸透によって避けがたい構造上の課題に対しても、スピード感を持って適切な対応をお願いしたいと思います。それが1点目です。
2点目は、金融リテラシーの向上と金融経済教育に関するお願いです。文科省では、学習指導要領を改訂して金融経済教育に取り組んでいて、実際、小学校・中学校・高校では、既に消費者教育の視点でカリキュラムが組まれていることは存じております。本来のマネー教育は、お金に関する制度をしっかりと理解し、お金で騙されたり、生活に困ったりしないように最低限の知識を身に付けるものだと思いますけれども、今の若い人たちは、お金についてそもそも何から考えて良いのか分からないという人が多いと思います。これから自分が希望する人生にはどのくらいお金がかかるのか、どのくらい過不足があるのかなど、将来に対する不安感が強い状況に置かれていると思います。今、最も重要なキーワードは、先ほどもご報告がありましたが、人生100年時代であって、その100年時代をどう生きるかにおいて、自分の人生設計にどれだけお金が必要か、投資も1つの手段であり、それも含めてどのような方法があるのか、という時代の変化を見通したお金とうまく付き合っていく方法を教える金融教育を、行政、企業、教育機関、私たち消費者団体など、社会にいる者皆が連携・協働して進めていく時期に来ているのではないか、そのようなメッセージを是非この金融審議会から強く世の中に発して頂きたいと思いました。
最後、3点目です。ご報告にもありましたとおり、決済手段の多様化に伴いまして、金融サービスへの円滑なアクセシビリティの確保と安全性の担保を強くお願いしたいと思っています。特に現金中心のアナログ方式による決済になじんだ高齢世代、一方では、マネー教育が不十分ながらキャッシュレス決済中心の若年世代、さらには障がいを持っている方々、それから、これからどんどん増えていくであろう外国人の旅行者の方とか労働者の方、そういったすべての方々を一人も取り残すことのないように、是非きめ細かな施策をお願いしたいと思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。それでは、川口委員、家森委員の順で。川口委員、どうぞ。
○川口委員
ありがとうございます。「市場ワーキング・グループ」の報告書の取扱いについてのコメントがあります。まず、形式面の話で、金融審議会を経由してワーキング・グループに検討を依頼したという経緯から考えると、その結果がこの審議会に上がってこないのは残念といいますか、違和感があるということです。
他方で、実質面として、大臣が受け取らないということですので、政策に反映しないものであれば、そういうものをあえてここで議論するのは無駄ということかもしれません。
高齢化社会と金融サービスの在り方というのは非常に重要な課題だと私は思います。そういう意味で、ワーキング・グループがこれに正面から取り組まれて、報告書を出されたのは意味があったのではないかと思います。形はどうであれ、マスコミが色々と取り上げたことによりまして、報告書の中身が国民の間に知れ渡りました。自分の資産のことは自分で考えなさい、これが報告書が言いたかったことの1つだと思うのですが、そういう認識が国民に広がったという点で、ワーキング・グループの報告は一定の効果があったのではないかと思っております。
とはいえ、一部の記述のせいで、長時間かけて議論された報告書の内容が政策に反映されないというのは、いかにも残念な気がいたします。今後ワーキング・グループなどで顧客本位の経営を含めた様々な議論がなされるようです。先の報告書で色々検討されましたもので参考になるものもあるのではないでしょうか。これがまさしく利活用ではないかと思いますので、視点が変わるかもしれませんが、次は、そのような新たな提案を審議会に上げて頂ければと思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
では、家森委員、どうぞ。
○家森委員
ありがとうございます。私も金融リテラシーについてコメントしたいと思います。
今年G20福岡ポリシー・プライオリティで、高齢化と金融包摂について8つのポリシー・プライオリティを定められるにあたり、金融庁は非常に努力をされた。大変適切な対応だったと私は思っております。その中で特にデジタルと金融のリテラシーの強化や生涯にわたるファイナンシャル・プランニングのサポートについて指摘されていますが、先ほどのご説明にもありましたように、今年度一生懸命やっていかれるということでありまして、そのアプローチの方法の1つが金融機関に努力して頂くということであり、顧客本位の業務運営の観点でも、この点を金融行政として進めていくことで効果が期待できるのではないかと思っております。ただ、これは、短期で、例えば来年には成果が出てくるという類いのものではなく、また、成果を測るのも非常に難しいものでございますので、是非1年だけのものでなく、持続的に体制をしっかりつくって取り組んで頂きたいと思います。
併せて金融リテラシー関係の問題というのは、行政方針の中でも金融庁の職員の方が出前授業をされる等、色々な取組をされているということですが、金融庁だけでも、金融業者だけでも難しい点で、先ほどご指摘がありましたように、学校であるとか、金融庁から免許を受けていないような金融の専門家、アドバイザー、税理士の先生も含めたアドバイザー、ファイナンシャル・プランナー等との幅広い協力が必要になってきますので、今後もそちらとの協力も進めて頂きたいと思います。特に学校においては文部科学省との協力が非常に重要になりますし、地域に行きますと教育委員会との連携が非常に重要になってくるということで、幅広い連携をお願いしたいと思います。
それから、先日、金融広報中央委員会で行われている金融リテラシー調査の2度目の結果が公表され、そこにも全国の地域による金融リテラシーの格差等が見られます。先ほど財務局のお話もありましたように、地方における金融リテラシーの教育効果が全国一斉に上がっていくようにご努力頂きたいと思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、岩下委員、福田委員、小林委員の順でお願いできればと思います。岩下委員、どうぞ。
○岩下委員
どうもありがとうございます。今日の3つのトピックを拝見させて頂きまして、若干気になったことで、大きく言うと1つの点だけですが、申し上げたいと思います。
この8月に取りまとめられた「利用者を中心とした新時代の金融サービス~金融行政のこれまでの実践と今後の方針~」に書かれている内容は大変望ましいことだと思うのですが、気になったのは、このタイトルに、「利用者を中心とした」と書いてある割に、中にはあまり利用者のことが書かれていないように思うのですね。ここで言う利用者とはどういう人なのだろうかと。確かに、部分的には、例えば金融リテラシー教育の向上という、これまでもご発言があったようなことについての指摘があったわけですが、まさに多種多様な利用者の方がいらっしゃいます。その一方で、今回の「金融制度スタディ・グループ」の報告書の中では、例えば、金融技術革新を前提としたデジタルで一元的な様々なサービスを提供する業者がいて、それを利用する利用者がいてという状況を想定した形でルール整備を行っていこうという話をしているわけです。そう考えると、どうも実際のこれまでどおりの紙とペンでやってきた金融の世界とは別の新しい金融の世界が大きく広がっているのだろうし、これはまさにSociety5.0等で言われる金融のこれからの伸びしろの部分にあたると思うのですが、そのような部分についての利用者をあまり積極的には想定せずに、ともすれば弱者というか、これは業者だから当然仕方がないと思いますけれども、デジタルデバイドをされてしまっている方々に配慮した形になってしまう。もちろんそのような方々に配慮するのは当然ですが、アドバンストなことをやっていらっしゃる方々にも配慮した、活用される彼らに自由に様々なことをやってもらうためにはどうあるべきなのかという視点が、このような議論のときにはどうしても欠けてしまう感じがいたします。
例えば、典型的には、「市場構造専門グループ」の中で今後議論することになっております東京証券取引所の一部、二部、ジャスダック、マザーズ等の統合という話がございます。ただ、今どきの株式投資を行っている個人であれば、多くの場合はネット取引が中心ですし、そのような場合は自由に自分たちでスクリーニングをして、時価総額、配当利回り、PER、PBRなどを自由に選択しながら、そのグループの中で投資を決めるということは割と当たり前に行われていることであります。そうすると、多分英語で開示しなくてはいけないといった問題がまた別の議論としてありますが、どのグループに入りますかということは、供給者側の論理であって、需要者側はあまり気にしていないような気がします。そう考えると、実際に金融サービスを利用している利用者が、多様にはなってきていますが、多様になってきているうちの従来型の利用者の姿は非常によく見えているけれども、新しい形での利用者の姿があまり意識されていないのは、もしかしたら今後の課題なのではないかと考えた次第です。その意味では、この資料の中、あるいは今後の議論の中で、是非そういう視点も入れて頂いて、せっかく新しい技術を利用した形での様々な制度の整備を行うわけですから、それを積極的に利用してくださる方々にも目を向けるべきではないかということを指摘させて頂きたいと思います。
○神田会長
どうもありがとうございました。
では、福田先生、どうぞ。
○福田委員
ありがとうございます。報告書等に関してはご意見あったと思いますが、金融庁の世の中に問題意識を問う方法は様々なものがあって、金融行政の実践と方針の主なポイントの一番最後に政策オープンラボ、若手が色々な勉強会をやったり、色々な議論をしたりしたとありますが、そのような議論をもう少し一般に非公式に問うような場があると良いと思います。多分重要な議論を色々とされているのだと思いますが、なかなか我々には伝わってこない状況があります。若手の間で、どういうことが色々な形で議論されていて、そこにどういう新しい視点があるか。そこでの非公式な提案は、場合によっては間違っていても良いと思います。それは変ではないかということであれば様々な形でフィードバックして、色々な新しい問題意識を世間に色々な形で問う場を設けても良いと思います。ラボをやられているのであれば、もう少し幅広く世間に問う仕組み作りもあるということが大事なのではないかと思いました。
もう一点。デジタライゼーションに関する取組という形で色々と取り組まれている姿勢は非常に大事だと思います。ただ、新しい時代になって、新たなリスクも発生する中で、そのようなリスクに対する備えを新たに行うことも同時に大事になってきています。デジタライゼーションに対する最大のリスクは停電とか通信障害で、それが1日、2日ではなくて、かなり広範囲にわたって何日も起こるということを、我々もつい最近経験したわけであります。これは伝統的な金融システムでは大きなリスクにはなかなかならなかったことですが、新しい時代には、これまでになかった金融リスクが様々な形で発生してくるということに関する注意喚起、備えも金融庁におかれまして是非ご検討頂きたいとは思います。
以上です。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、小林委員、どうぞ。
○小林委員
ご報告ありがとうございます。2点申し上げます。1点目は、既に皆さんがおっしゃっているような、利用者、顧客、金融リテラシーで、利用者、顧客というのはどのような人を前提に考えているのかと。これは、1つにまとめてしまうことはできないと思いますが、そのあたりが、個別の報告書で曖昧だと考えております。高齢者や弱者というところもありますし、それから、デジタルをフルに活用するこれからの世代というところもありまして、そこが何となく全体として分断されてしまっているという印象を受けましたので、そこをうまくつなげる総合的な仕組みという観点で、今後進めて頂きたいというのが1点目です。
2点目ですが、今回は金融サービス仲介法制についてかなり時間を使って議論されていますが、金融サービスが社会のインフラと考えますと、金融サービスを行う多様な業者の持続性をしっかりと考えていかなければならないと思います。今回の議論は、仲介業者を中心に考えているわけですが、その裏側にある既存の金融機関も色々なサービスを提供しており、その中の一部が仲介業者が行う事業と重複しています。これは顧客の側から見ますと、チャンネルの多角化ということで非常に有効なことだとは思います。それを前提に両方のサービス提供者が今後もしっかりと生きていけるイコールフッティングの競争ができるような規制、コストシェアをつくっていく必要があるだろうと思いますし、不要なものは排除していく必要があると思います。それから、こういった仲介業者が、これからさらにサービスを拡大していく中で、従来型の金融機関の役割の何が中心になっていくのかということも考えて、そちら側での今後の制度設計、あるいは規制の緩和、新しい規制等も含めた総合的な議論をここから先展開して頂きたいと思います。
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、山本委員、どうそ。
○山本(眞)委員
感想めいたことで恐縮ですが、皆さんがあまりおっしゃらないのですけれども、地域金融機関についての取組を紹介して頂いて、私としてはそれが非常に良いことだと思っています。これからの日本は地域が活性化していかないと全体が上がらないのではないかと思っていて、そのような意味で、地域金融機関の仲介機能を活用することで地域の企業の皆さんが生産性を向上していって、付加価値を提供して、ということでうまく回っていけば、それによって地域金融機関もきっと発展できるでしょうし、そういう意味で、ここでの取組に注目したいと思っております。
ただ、ここで心理的安全性とあえて書かれているように、確かに監督する側とされる側で対話をしようとしても、形式的になるだろうというのは当然予想されますし、仮に地域金融機関が仲介機能を果たそうとして、企業の方と対話をしようとしても多分同じことが起こると思います。融資をする側としてもらう側の壁を超えないといけないと思います。相互信頼をいかに確立するかについて、例えば金融庁の担当の方、それから金融機関の方が、対話や仲介機能について、どのようにスキルアップしていくかということを、後半の金融庁の改革というところで、色々とトライされているのは非常に良いことだと思いますが、様々な対話のスキルを研究して頂くことも今後していって頂ければ、効果のある取組ができるのではないかと思っております。
感想めいたことだけですみません。
○神田会長
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。翁委員、お願いします。
○翁委員
ありがとうございます。デジタルトランスフォーメーションに関して少し意見を申し上げたいと思います。デジタル化や情報利活用が現在どんどん進んでいき、日本全体の企業や金融機関の生産性を上げていく。また、付加価値のあるサービスが提供されていく方向に金融行政も考えていく必要があると思っているのですが、こういったデジタル化になってきますと、利用者がたくさん入ってきて、多くの人が参加することによってよりメリットが出てくるという、ネットワーク外部性等が非常に大きな意味を持ってくると思います。そういう観点から、幾つかの点を申し上げたいのですが、まず1つは、政府部門も一緒にデジタル化をとにかく進めて頂いて、官民で全体としてデジタル化を推し進めることがとても大事だと思います。先ほど紙ベースでの色々な報告が残っている等のご指摘がありましたが、官民一体となってこのデジタル化を進めていくことが大事ではないかと思っております。
2つ目に、インターオペラビリティや標準化等に対して意を払うことも大事かと思っております。先ほどから利用者という視点が出てきていますが、利用者にとっても、例えば、今のキャッシュレスも非常に多くのものが乱立している状況ですが、インターオペラビリティや標準化ということについても意を払えるのは政府等だと思いますので、そういった点にも目を向けて頂くと良いかと思っております。
それから、3つ目。デジタライゼーションは、各国で非常にスピーディーに進んでおりますので、金融機関や新しい事業者にとっても、どのように規制が変わっていくのかについて、半歩先、一歩先でビジョンが見えていると動きやすいのではないかと思います。今まで以上にフォワード・ルッキングな形で規制改革の道筋をビジョナリーに示していくことができると金融機関や多くの事業者にとって非常に動きやすくなってくるのではないかということを感じております。
○神田会長
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。ほかにご発言、よろしゅうございますか。
多くの貴重なご指摘、ご意見を頂きまして大変ありがとうございました。そこで、先ほどご説明頂きました「金融制度スタディ・グループ」の報告書についてでありますが、これを金融審議会としてご了承を頂ければありがたいと思いますけれども、そういうことでご了承頂けますでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
○神田会長
どうもありがとうございました。
次に、「市場ワーキング・グループ」の今後の進め方についてですが、これにつきましては、先ほど事務局からご説明をさせて頂きましたとおりに今後進めていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
若干前後いたしますが、「金融制度スタディ・グループ」の報告書を踏まえて、今後決済法制や金融サービス仲介法制に関する検討をする必要があると思いますが、この制度整備に向けた具体的な議論を進めていくため、スタディ・グループをワーキング・グループへ、と、これまでの金融審の伝統に沿って改組する形にさせて頂ければと存じます。ワーキング・グループの座長やメンバー等につきましては、大変恐縮ですが、私にご一任頂ければと思いますけれども、そのような形で先に進むということにさせて頂いてよろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
○神田会長
どうもありがとうございました。
それでは、以上で本日予定しておりました議事はすべて終了でございます。
以上をもちまして、本日の金融審議会総会・金融分科会合同会合を終了させて頂きたいと思います。
なお、本日の議事の模様につきましては、事務局から後ほど記者レクを行いますので、ご承知置き頂ければと存じます。
また、今後の日程などにつきましては、事務局から後日ご連絡をさせて頂きますので、よろしくお願いいたします。
それでは、皆様方、本日は大変お忙しい中ご出席頂きまして、誠にありがとうございました。これにて散会いたします。
以上
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企画市場局総務課
(内線3645、3520)