金融審議会「資金決済ワーキング・グループ」(第5回)議事録

  • 1.日時:

    令和3年12月28日(火曜)9時00分~12時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「資金決済ワーキング・グループ」(第5回)
令和3年12月28日
  
【神作座長】

おはようございます。ただいまより資金決済ワーキング・グループの第5回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ御参加いただき、誠にありがとうございます。

本日の会合も、前回に引き続き、オンライン開催とし、一般の傍聴はなしとした上で、メディア関係者の皆様には、金融庁内の別室において傍聴いただくこととしております。

次に、本日の会合もオブザーバーについては、本ワーキング・グループ設置時の各団体のほか、前回同様の皆様に御参加いただいております。

それでは早速、議事に移ります。本日は、まず事務局より、共同機関に対する業規制のあり方、ステーブルコインへの対応について、前回いただいた御意見等を踏まえた報告案の修正や、前払式支払手段に関するAML/CFTの観点からの規律に関する報告案について説明を聴取いたします。その後、報告案に対する御意見について、オブザーバーでいらっしゃる日本資金決済業協会の長楽専務理事、新経済連盟の小木曽様、片岡様、坂本様、日本IT団体連盟の木村様、Fintech協会の落合様より御発表いただいた上で、取りまとめに向けてメンバーの皆様に御討議いただく、このような流れで進めさせていただきます。

それでは、事務局より説明をお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

それではまず、資料2に沿いまして、簡単に御説明させていただきたいと思います。

まず、資料2の7ページです。電子的支払手段に対する制度的対応の方向性ということで、報告案の中にありますけれども、デジタルマネー類似型、暗号資産型ということの2つに分けました。まず左側のデジタルマネー類似型につきましては、赤で囲っております仲介者、今回の法的手当てをするところですけれども、今、制度的な言わば空白のようなものがございますので、それを埋めるということで、今回の法的手当て、利用者保護やマネロン等の対策の観点から必要な対応を行うというのが1点でございます。それから、発行者につきましては、後ほど新経連様からも御説明があると思いますけれども、多様なビジネスモデルがあろうかと思います。そうしたことも踏まえまして、今回の法的手当てといたしまして、信託受益権を使うものを創設するということでございます。それに加えまして、発行者のところですけれども、為替取引は銀行・資金移動業者が行うというのが現行制度でございますが、注の2のところでございます、発行者に係る規制のあり方については引き続き検討ということでございます。

それから、2の暗号資産型でございます。発行者の注の1のところですけれども、EUは、発行者に開示規制等を導入する規制案を公表しておりますけれども、この点につきましては、利用実態や諸外国の動向を踏まえ、日本においても規制のあり方について引き続き検討する、そういう大きな考え方で議論いただいているということでございます。

それから、9ページ、前払式支払手段につきましては、これは前回見ていただいた資料そのままでございますけれども、前払式支払手段の発行者の中で、価値の移転が不可なもの、それから、可能なものがございます。電子的に価値の移転が可能なもので、かつ高額なチャージや移転可能なものについて犯収法等の規律を検討していただいていると、そういうことでございます。

続きまして、報告案の御説明をさせていただきたいと思います。資料1でございます。

まず、目次のところですけれども、第2章といたしまして、1、電子的支払手段に関する規律のあり方、それから、2、前払式支払手段に関するAML/CFTの観点からの規律という二本立てにしております。

それから、報告の中身に入りまして、1ページ、「はじめに」ということで、検討の経緯でございます。まず1つ目のパラグラフで諮問の内容、それから、共同機関に係る検討の経緯、電子的支払手段に係る検討の経緯、デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会における中間論点整理を踏まえた検討だということでございます。それから、高額で電子的に価値の移転が可能な前払式支払手段に関する検討の経緯ということでございます。

続きまして、第1章につきましては、修正点は修字的なものを除いてございませんので、13ページ、第2章から参りたいと思います。前回御指摘いただきました電子的支払手段の定義ということで、まず1.注の41です。電子的支払手段の定義については、参考1-3を参照ということで、後ほど見ていただきたいと思います。

それから、14ページに参りまして、諸外国の動向、注の52のところでございます。アメリカの規制改革案をもう少し詳しく記述すべきだということでございましたので、利用者保護及びいわゆるランリスクに対応するためということで内容を簡単に紹介させていただいております。

それから、参考1-1といたしまして、研究会の中間論点整理の中で、パーミッションレス型の分散台帳に係るメリット、課題、双方について記載した部分がございますので、これを御紹介させていただいております。

続きまして、(2)我が国の現状といたしまして、15ページから16ページに参ります。2つ目のパラグラフのところで、ここは趣旨の明確化ということで、「発行者が責任を負う形でのサービス提供を想定しており」というところは、第三者、代理業あるいは電子決済等代行業を使う場合もございますので、趣旨を明確化させていただいております。

それから、17ページ、ステーブルコインの分類のところです。アとイの下に、これも前回ちょっと分かりにくいという御指摘をいただきましたので、アは通貨建資産、イは暗号資産に該当し得るということで、現行の資金決済法上、通貨建資産は暗号資産の定義から除外されているため、その仲介者には暗号資産交換業の規律が及ばないということを記載させていただいています。

それに伴いまして、その下の注の59から63にかけまして、通貨建資産等に関します注記を整理させていただいております。

それから、次のページ、18ページ、19ページは修正はございません。

20ページ、参考1-3ということで電子的支払手段の定義をここに記載させていただいております。

それから、21ページ以降ですけれども、22ページ、23ページと参りまして、ここは(6)「発行者」及び「仲介者」に求められる規律ということで、①「発行者」ということですが、23ページの2つ目のパラグラフでございます。現行制度の下で発行者と仲介者が分離することを想定して、上記の要請を満たす仕組みとしてア、イ、ウということでございますけれども、これによりまして、現行制度の下において認められている発行者の責任で第三者を活用する仕組み、例えば電子決済等代行業、こうしたものを使うものが否定されるというものではないということを明確化させていただいております。

それから、24ページの下からは、信託受益権を使うスキームに関してということでございますが、25ページでございます。投資者保護・資本市場の健全性確保のための諸規制を適用しないこととする制度改正を行うことが考えられるということで、この部分は制度改正だということを明確にさせていただいております。

それから、25ページの下から仲介者の記述に参りますが、26ページの冒頭でございます。要求払預金を信託財産とする信託受益権等の電子的支払手段ということで、電子的支払手段は信託受益権に限られるわけではないということを明確化させていただいております。

それから、その下、業規制の内容ということで、イの2つ目のパラグラフでございます。仲介者に関する規律を導入することにより、仲介者規制の下で、発行者以外の者が海外に所在する者の発行する電子的支払手段を取り扱うことができるかという論点が生じるということで、ここについての記載を充実させていただいております。

それから、海外発行のものを使えるかどうかということにつきましては、27ページの注の97のところに、いろいろなところに分散して記載されていた注を全てここに統合して、基本的にここを見れば、どういうことを検討すべきか分かるようにさせていただいております。

それから、28ページ、仲介者の業規制の具体的な内容ということで、上から3つ目、利用者から金銭の預託を受けることを原則として禁止するということでございます。この趣旨を明確化させていただいて、注の101ですけれども、仲介者が取り扱う電子的支払手段はそれ自体決済手段であり、投資対象ではないこと等から、別途、利用者の金銭を管理することは通常想定されないということでございます。併せまして、注の102の1行上のところですけれども、この点に関しまして、パーミッションレス型のステーブルコインを取り扱う場合、仲介者として金銭の預託を受けることが実務上必要となるという御意見がありましたので、御紹介させていただいております。

続きまして、29ページ、③「発行者」と「仲介者」の関係等に関する規律ということで、全体としてのガバナンス等の議論となっております。

30ページに参りまして、参考1-4といたしまして、研究会の中間論点整理ということで、パーミッションレス型の分散台帳等を利用した金融サービスにおける課題ということで、複数レイヤーに基づき、その一部のレイヤーについてのみ中央管理者を置く形で提供されているものがあるということで、次のパラグラフに行きます。

31ページですけれども、冒頭、複数レイヤー全体を管理する主体が存在しない場合であっても、システム全体が技術・契約・制度・インセンティブ・信頼等によって規律付けられる必要があり、規制の名宛人として管理責任を果たせる立場にある者がこうした状態を実現する必要があるということで、その際、技術的な対応が可能なものについては、システム仕様等において対応することが重要だということです。この点に関しまして、1つ目のポツですけれども、金融サービスに活用されるシステムに関して、技術中立という観点に配慮しつつ、当局が、求められる機能・水準を示すことが重要等の議論があったということを御紹介させていただいております。

それからまた、その一番下ですけれども、金融分野において新しい技術の活用に適切に対応していくためには、規制当局と技術者コミュニティーを含む関係者間で対話を行い、求められる機能、水準等の共有等に取り組んでいくことが重要と考えられるという議論を紹介させていただいております。

それから、32ページからは、発行者の提供する機能と金融システムへの影響等ということでございます。

34ページまで行っていただきますと、決済用預金に関する議論のところですけれども、2行目辺りからですが、他の主要国の預金保険制度においては、決済用預金のように預金を全額保護する仕組みとなっていないとの指摘や全額保護の仕組みはモラルハザードが生じるとの指摘があるということでございます。この点について、出典等を明確にすべきだという御意見をいただいておりました。注の117のところでございまして、預金保険機構・預金保険研究ということでございますし、2008年の世界金融危機後の米国の動向なども紹介させていただいております。

続きまして、36ページから前払式支払手段に関するAML/CFTの観点からの規律ということでございます。(1)現状といたしまして、これはこれまで見ていただいていたものかと思います。1点、37ページ、注の128といたしまして、資金決済業協会のアンケート調査結果をこちらに御紹介させていただいております。

それから、38ページからは、番号通知型の電子移転可能型前払式支払手段に関する体制整備義務等ということで、これもこれまで御議論いただいたことを整理させていただいております。

39ページ、上から4つ目のパラグラフ辺りからですけれども、番号通知型の前払式支払手段に関しましては、取引時確認なく発行され、発行者が管理する仕組みの外で容易に移転できる仕組みの下でトラブルが生じやすい面もあるのではないかということで、発行者側において利用者が安心して利用できるサービスを提供するとの観点から、商品性の見直し、システム面での対応の可能性等を含め検討すべきと考えられると。

その下でございます。番号通知型においても、残高譲渡型と同様、対象を高額に限るのではなく、少額の取引を含めた上で、リスクベースでの取組みが求められるということで整理させていただいております。

それから、40ページでございます。それを踏まえた(ⅰ)、(ⅱ)として、それぞれの対応案ということでございます。それから、なお書き以下ですけれども、転売サイト等の問題ということで、発行者による買取り等の取組みが有益ではないかということでございますけれども、発行者による買取りを必ずしも推奨する趣旨ではございませんので、まず商品性の見直し等の対応を行った上で、なお問題が残る場合にはということで、趣旨を明確化させていただいております。

それとの関係で、その下の注の136でございます。買取りを資金移動業で行うということに関して、資金移動業のマネロンリスクが低いということを申し上げているわけではございません。注の136につきましては、資金移動業登録を行いつつ、現行の犯収法の規律に基づき、取引時確認等を行いながら、払戻し機能を併せて提供することを検討することが考えられるということで趣旨を明確化させていただいております。

それから、41ページからは、前払式支払手段を巡るAML/CFTに関する環境変化ということでございます。2つ目のパラグラフで、5行目ぐらいからですけれども、国際的にもマネー・ローンダリングを行う者は非常に巧妙に当局の対策を迂回するスキームをつくり出すということ等を踏まえまして、当局といたしまして、包括的かつ十分な権限、それから、柔軟な制度を持つことの重要性が強調されていることを踏まえた検討を行う必要があるということです。

この関係で注の138でございます。前払式支払手段がマネー・ローンダリングに悪用された事例が示されておらず、対策を講じる十分な根拠が示されていないという意見が示されました。一方でマネー・ローンダリングの対応は、悪意ある個人等が犯罪を行うことに対する対応であって、事案発生について一定の予見可能性がある中で、検挙事例が示されないことを理由に対策を講じないことは、金融監督当局として不作為の責任を問われるとも考えられるとの指摘があったことを御紹介させていただいております。

それから、42ページでございます。これも前回の御議論を踏まえまして、国際連合の条約における犯罪収益の定義、それから、この犯罪収益一般に非常に幅広い犯罪が念頭に置かれているということを紹介させていただいた上で、AML/CFTの観点からは、換金できるか否かにかかわらず、幅広く対策を講じることが求められるという整理をさせていただいております。

その下ですけれども、この点、前払式支払手段は払戻しが認められておらず、マネー・ローンダリング等に係るリスクは相対的に限定されているとの考え方は、我が国で幅広く利用され、電子的に譲渡・移転ができず、チャージ上限を少額に設定する小口決済型の前払式支払手段に当てはまるものの、それ以外の前払式支払手段には当てはまらないと考えられる。リスクに応じた対応を検討する必要があるという形で整理させていただいております。

それとの関連で、注の139、条約の具体的内容、それから、注の140、これも前回御意見いただきました、マネー・ローンダリング、典型的には3つの過程だということ等を紹介させていただいております。それから、注の141といたしまして、FATFでの議論も紹介させていただいております。

続きまして、43ページでございます。参考2-3、前払式支払手段とクレジットカード事業に係る危険度の比較ということですけれども、囲みの中の2つ目のパラグラフの最後の2行でございます。国際ブランドの前払式支払手段とクレジットカードの比較ですけれども、少なくとも同じ危険度があるということで、注の144でございますが、クレジットカードと異なり、発行者側が利用者の信用リスクを負わないことから、顧客管理のインセンティブが減るということを踏まえるとむしろ高いのではないかという指摘もFATFからされているということを紹介させていただいております。

それから、44ページに参りまして、参考2-4、本人確認を経ないアカウント等に基づくモニタリングということです。この2つ目のパラグラフですけれども、最後のところ、本人確認等を行うことなく、反社会的勢力に対する前払式支払手段の価値・残高の移転等を防止することには限界があるということに関しまして御意見をいただいておりました。注の145でございます。上記のような事例の数は少なく、また、前払式支払手段のアカウントでは現金化できないからこそ移行したとも考えられ、対策を講じる理由にはならない旨の意見が示された。これに対してということで御意見を紹介させていただいております。

それから、45ページからは、(4)といたしまして、「高額電子移転可能型前払式支払手段」の範囲ということでございます。

46ページに参りまして、10万円・30万円超ということの考え方でございます。この点に関しまして、まず注の149ですけれども、10万円・30万円の敷居値に関しましては、犯罪抑制等の観点から高過ぎるという御意見があった一方で、30万円の敷居値は根拠のない数字であり、反対するとの意見もあったことを御紹介させていただいております。

それから、これも前回の御議論後にいただいた御意見ということですけれども、その下のパラグラフですが、高額電子移転可能型前払式支払手段の具体的な範囲を定めるに当たっては、利用者への分かりやすさということで、仕組みの違いに配慮しつつ、簡素かつ明確で利用者が理解しやすいものとする必要があるということに加えまして、悪用する者の目線に立って犯罪を抑止する観点から検討する必要があり、適用除外要件を増やすほど悪用リスクが高まることにも留意する必要があるという御意見も追記させていただいております。

それとの関係で、注の150、注の151で、いただいた御意見について整理させていただいております。

それから、47ページに参りまして、利用者利便やキャッシュレス推進との政策目的を損ないかねないのではないかという御意見についての考え方ということで、3つのポツで整理させていただいております。キャッシュレスの他のサービスである資金移動業、クレジットカード事業は、送金額・利用可能枠の多寡にかかわらず、本人確認等を行っていただいております。我が国で幅広く利用されている小口決済型は対象外だということでございます。更に移転可能なものにつきましても、10万円超の譲渡・移転を行っている者はかなり限定的なのではないかということでございます。

それから、参考2-6といたしまして、「高額電子移転可能型前払式支払手段」の定義の考え方ということで、これは前回見ていただいたものです。アからオまでということですけれども、エのアカウントは繰り返しのチャージが行えるものに限るということにつきまして、注の156でございます。リチャージができないものについては、実務上、本人確認を求めることが困難となること等も考慮してということで、趣旨を明確化させていただいております。

それから、48ページに参りまして、要件の具体的な中身になります。(c)の「上記(b)に準ずる」、いわゆる国際ブランドのプリペイドカードについてのみ利用額があるということの趣旨でございます。注の159でございます。(c)の形につきましては、(a)、(b)と異なり、前払式支払手段自体を電子的に譲渡するものではないことのほか、クレジットカードの決済基盤を活用していることや、クレジットカードにおいて利用額によるコントロールが行われていること等を踏まえて、要件として考慮することが考えられるのではないかという考え方を整理させていただいております。

続きまして、最後、51ページから、「高額電子移転可能型前払式支払手段」への対応ということで、これはこれまで見ていただいているものでございます。4つ目のパラグラフで、「以上の対応について」というのがございますけれども、これは経過措置の話ですので、現に高額電子移転可能型前払式支払手段の発行を行っている者については、制度の施行後、適切な猶予期間を設ける必要があるということで明確化させていただいております。

これとの関係で、注の163、オンラインで完結する本人確認等について御意見をいただきました。運転免許証等を用いる方法、それから、マイナンバーカードに記録された電子証明書等を用いる方法がございますけれども、現時点において、使いやすさ等について向上の余地があり、高額電子移転可能型前払式支払手段における本人確認手段を円滑に進めていくに当たり、その改善を検討する必要がある旨の意見があったということで紹介させていただいております。

それから、注の165でございます。本人確認の手法ですが、携帯電話不正利用防止法に基づく本人確認等を現在の犯収法で求められる取引時確認に準じたものとして取り扱うべきだという御意見をいただいておりましたので、御紹介させていただいております。

それから、52ページ、今後の課題ということでございます。2つ目のパラグラフでございますけれども、(4)及び(5)で検討した高額電子移転可能型前払式支払手段は、現時点において特にリスクが高いということで切り出したものであって、それに属さない前払式支払手段のマネー・ローンダリング等のリスクが低いことを示すわけではないということで、今後の環境変化等を踏まえまして、不断の制度見直しを機動的かつ柔軟に行っていくことが重要であるということで、注の166、167について、今後考えられる検討課題ということで整理させていただいております。

まず注の166で①といたしまして、敷居値をどう考えるかという御議論がありましたので、これを御紹介させていただいております。それから、②といたしまして、現行の資金決済法の規律、使用期間6か月内の前払式支払手段には適用されません。この点についてどう考えるかという論点が②。それから、先ほど御紹介させていただきました、アカウントにリチャージできないものについての取扱いということで③ということでございます。

最後に、「おわりに」ということで、53ページでございます。読み上げさせていただきます。

「以上が、本ワーキング・グループにおける審議の結果である。銀行等が業界全体としてAML/CFTの底上げに取り組むことは、犯罪の未然防止等に直結するほか、利用者保護の観点からも重要な意義を有する。金融サービスのデジタル化に対応し、電子的支払手段に関する規律を設けることは、利用者保護やAML/CFTの観点から必要な対応を行うとともに、民間事業者による決済の効率化等に向けた創意工夫を促す環境を整備するものである。高額電子移転可能型の前払式支払手段への対応は、前払式支払手段がキャッシュレス化やイノベーションの創出に果たしている役割に配慮しつつ、リスクベース・アプローチの下、必要な規律を導入するものである。

今後、関係者において、本報告に示された方向性を踏まえ、適切な制度整備に向けた対応が図られることを期待する。また、新たな制度の下で、事業者、関係団体、技術者、大学関係者、当局等の多様な関係者が連携・協働し、実効性ある対応に向けて、金融制度を不断に見直していくことが重要である。

当局及び関係者に対しては、このような観点を念頭に置きながら、今後とも、継続的に将来を見据えた対応を図っていくことを望みたい」ということでございます。

以上でございます。

【神作座長】

御説明どうもありがとうございました。続きまして、報告案に対する御意見について、日本資金決済業協会の長楽専務理事より御発言をお願いいたします。

【長楽オブザーバー】

日本資金決済業協会の長楽でございます。協会事務局発言骨子に基づき、協会事務局の意見を申し上げます。

最初に、前払式支払手段の特性を踏まえたマネロンリスク及び論点の進め方について申し上げます。繰り返し申し上げておりますが、前払式支払手段の特性は、あくまで発行者や加盟店から物品の購入やサービスの提供を受けるための前払いであり、その利用範囲もごく限定されており、一部の広範囲に利用できるものであっても、加盟店での利用に範囲が限られるのであって、制度上原則払戻しが禁止されているため現金化できない以上、どこでも利用できるものではなく、現金や送金サービスとは本質的に異なるものと考えております。

このため、2019年7月に公表された金融審議会の報告において、前払式支払手段はマネロン・テロ資金供与リスクが相対的に限定されるとして、取引時確認義務等については引き続き課さないことが考えられるとされたところであり、その後、特段の事情の変更があったとは認められず、8月30日に公表されたFATF対日相互審査結果でも前払式支払手段に関するマネロンリスクへの言及はございません。

こうした中、前払式支払手段に対する本人確認はそのサービスの根幹に関わる改正であるにもかかわらず、発行者への事前の情報提供や意見交換がないまま、11月に金融庁から高額電子移転可能型前払式支払手段への本人確認等の規律の適用が提示されました。未だにその範囲が複雑で必ずしも明確ではなく、各発行者において提供する前払サービスが適用対象となるのかどうかを理解し、その影響を認識しているかどうかが懸念されます。

次に、本人確認等の規律の必要性等について申し上げます。国家公安委員会が公表した犯罪収益移転危険度調査書において、電子マネーがマネロンに悪用された事例として、詐欺により不正に取得した電子マネーの現金化に際し買取業者や仲介業者が介在する事例が記載されておりますが、このような場合に本人確認等の規律を適用したとしても、本人確認の対象となり得る者は一般消費者と考えられ、必ずしもマネロン行為者を特定することにはつながらないのではないかと考えます。この場合、マネロン防止の観点からすると、出口である買取業者等に対して法規制を行うことこそが有効ではないかと考えます。

前払式支払手段発行者においては、不正利用を防止するために積極的な取組みが行われており、詐欺への注意喚起とともに、詐欺被害を速やかに受け付ける体制の整備や詐取等された前払式支払手段を特定し、利用停止の措置を講じ、アカウントの残高がある場合には返金に応じるなどの対応を行っております。また、不正アクセス等を防止するためにセキュリティ管理体制の高度化とともに、敷居値やシナリオを設けてモニタリングを行い、不正利用等の疑いがある場合にはアカウントの利用停止、また、リスクに応じ1回当たりのチャージ上限額や1か月の利用上限を設けるなど工夫し、不正防止のための様々な取組みを行っているところでございます。

本人確認等の規律の影響等について申し上げます。前払式支払手段は、小口決済やギフト用として利用され、原則払戻しが禁止されていること等を背景としまして、利用者の本人確認等を行わずに簡易な手続で発行されております。また、発行者の様々な創意工夫によりいろいろな媒体により利便性が高い決済サービスの提供が行われ、現在、便利でかつ身近な小口決済手段として国民生活に浸透し、キャッシュレス化の進展に寄与しているところであります。本人確認等の規律が適用された場合、当該規制を遵守するために新たなシステム開発や改修等への多額の投資・事務負担の発生によりサービス継続への支障が生じることも予想され、ひいてはキャッシュレス社会の実現にも影響を与えかねないものにもなり得ます。

高額電子移転可能型前払式支払手段への対応について意見を申し上げます。金融庁におかれては、まずは、高額電子移転可能型前払式支払手段がマネロンに悪用された事例を具体的に把握・分析し、どのような方法がマネロンを防止するのに有効かどうか検討を行い、各発行者の不正防止等への取組状況をモニタリング等により把握し、各社のマネロンリスクがどの程度あるのかどうか、その実態を十分把握・分析・評価した上で、本人確認等の規律の必要性について検討をお願いいたします。

最後に、本人確認の規律が適用されることとなった場合には、以下の4点について、慎重な検討・十分な配慮をお願いいたします。

1点目は、1か月当たり30万円という金額基準が示されておりますが、マネロンリスクの観点を踏まえた実態調査等に基づいた数値など、社会的に説得力のある根拠が必要ではないかと考えます。

2点目でございますが、本人確認方法等については、犯収法の取引時確認による方法に限定するのではなく、携帯電話不正利用防止法に基づく本人確認や犯収法の本人確認方法に準じた本人確認を行っている会員も存することから、このような方法も犯収法に準じた本人確認方法として法令上適正な方法として定めることやその他本人確認の規律として求める具体的な事項については、金融庁の事務ガイドライン等で定めるなど柔軟な対応をお願いいたします。

3点目でございますが、本人確認等の規律を遵守するためには、新たなシステム構築・改修、業務プロセス・事務フローの見直し、職員への教育・研修等を行う必要があり、多額の投資・事務負担やシステム構築等のために長期間を要するほか、顧客の理解や周知を行うための期間が必要であり、適正な業務遂行に支障が生じないように法施行後において十分な猶予期間を設けるようお願いいたします。

4点目でございます。政府令、事務ガイドライン案の策定に当たっては、事前に会員や協会との意見交換を行う機会を十分に設けていただくようお願いいたします。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、新経済連盟の小木曽様、片岡様及び坂本様より御発言をお願いいたします。

【坂本オブザーバー】

新経済連盟の坂本です。まず、ステーブルコインにつきまして、報告案を修正いただきまして誠にありがとうございました。その上で、経済団体の立場から、今後の法律の条文、政省令、府令、ガイドライン等でぜひ担保していただきたい点を3点申し上げます。

まず1点目は、海外発行のステーブルコインにつきまして、報告案の22ページの注の75に、海外の発行者が国内で流通させる場合には、国内ランセンス、銀行等の免許が必要になると記載いただいておりますが、現時点で海外の主要国におきまして、Tether(USDT)などに裏付資産の国内保全やライセンスを義務付ける確定的な法律をつくっている国はないと理解しております。

私どもの資料の3ページ目、4ページ目に、アメリカでの議論の状況についてサマリーを提出しております。確かにアメリカの大統領ワーキング・グループからは、ステーブルコインの発行につきまして、銀行その他の被保険預託機関に限定するといった報告書が出ております。これに対して、政府、有識者などから明確な異論が出ている段階でして、国会議員、行政関係者の間でまさに時間をかけて制度設計を議論している段階と認識しております。アメリカにおいてでさえ、クロスボーダー取引が主流のデジタル資産取引における、特にパーミッションレス型のコインの必要性、また、そういった意味でビジネスモデルに最大限配慮して、選択肢を狭めるべきではないという議論が複数、有力者から出ておりますので、先ほどの御説明で、日本において発行者規制は今後検討といったところですが、まずは現時点で報告案でそのように読み得る記載につきまして削除いただければと考えております。

2点目ですが、実務上主流となるパーミッションレス型に十分配慮した制度設計を要望いたします。報告案の31ページで、技術中立の観点に配慮しつつといった点、記載いただいています。ここでパーミッションレス型も読めるのか、念のため確認させていただきたく思います。

3点目は金銭預託の部分です。資料2ページ目を御覧ください。報告案が原則として想定している仲介者は、恐らく銀行等のエージェントといったイメージと理解しております。しかし、ビジネスにおきましては、下のオレンジのモデル、つまり、証券会社、仮想通貨交換業等のブローカーディーラーのようなイメージで仲介者として一定の金銭預託を持ちながらコインを売買・流通させる役割を負うのが主流と考えます。しかし、報告案ですと、このモデルが原則禁止となっておりますのでビジネス上の影響が大変大きく、この例外につきまして、どういった想定をされているのか、また、今後検討に当たって、我々経済団体あるいは業界関係者との密接なコミュニケーションをぜひお願いしたいと思います。

最後に、いずれにつきましても、実際のビジネスには本当に多様なモデルがございますので、必ずしもイノベーション分野、既存の規制の枠組みにとらわれるべきではないと思います。アメリカのように、官民で時間をかけた議論が必要と考えておりますので、今後とも密接な対話を要望します。

次に、前払式支払手段につきまして御説明いたします。

【片岡オブザーバー】

新経済連盟の片岡です。報告案のうち、前払式支払手段関係について意見を申し上げます。

まず冒頭に書いてありますけれども、今回御提案いただいているもののうち、本人確認義務の追加、犯収法の対象というところについては明確に反対をいたします。今の状態はかなり拙速ではないかと思っておりまして、サービスの提供実態とか利用実態をしっかり把握した上で、リスクについて事業者と共通認識を持った上で、リスクに応じた対応のあり方を丁寧に整理・検討していただきたいというところでございます。まずは資金決済法による体制整備やモニタリング強化、こういったところを行った上で、状況を確認して、どういったリスクに対してどういう敷居値でやるべきなのかというところを丁寧に検討・議論いただきたいと思っております。

この話が出たのが10月の下旬ぐらいだったと思うのですけれども、リスクの考え方であったり、あるいは定義、当てはめ、着目点あるいは適用範囲について、この2か月という短い間でかなり揺らいだり、変遷をしてきたりしていると認識しています。11月の段階で資料に出てきていた犯罪収益移転危険度調査書は電子マネーの項目のところが引用されておりまして、昨年の11月に出たその調査書には電子マネーの項目は「引き続き注視」と書いてありました。ところが、そこに書いてあるリスクに対しては、こういうことをすべきなのではないかという意見を申し上げたところ、次の回では一転して、電子マネーの項目ではなくクレジットカードの項目を参照するんだという話が出てきました。そういった着眼点やリスクなども、何に対してどういう対応をすべきか共通認識が持てていないということでございますので、しっかり共通認識をつくった上で対応を考えていただきたいと思っています。

実際にサービスを提供している事業者から見ても不明瞭な部分、あるいは今になってもこれは当てはまるのか、当てはまらないのかといったような混乱する点、まだ納得がいっていない点が複数存在しています。敷居値も今回提示をされていますけれども、前回も申し上げましたが、クレジットカードの与信枠というのは、事業者が貸倒リスクを避けるために設定しているものですので、それと揃えるというのはやはりちょっと違うのではないかと思っています。

今回報告案に追記いただいた2013年のFATFのガイダンスがありましたけれども、基本的にはいろいろなファクターがあって、どれか1つに頼るのはよくないということは理解するんですけれども、であれば、他のところでリスクを低減しているときにどう考えるのかといった点もきちんと考えて整理すべきだと思っております。

それから、1点、払戻しによる買取業者の問題のところで、発行業者による買取りが有効なのではないかという考え方が示されていましたが、いろいろなリスク低減のファクターがある中で、現金化ができない、現金の引き出しができないというのはリスク低減策としてやはり重要だと思っております。買取業者の問題というのは、買い取ってほしいという一般消費者のニーズがあるわけではなくて、犯罪で取得したコードを利用できないので、それを現金化しようというニーズがあって、買取業者、転売サイトという問題がありますので、それをもともとの価格で発行業者が買い取ってしまうと、むしろ犯罪を促進してしまう可能性がありますので、対策としては違うのかなと思っております。

繰り返しになりますけれども、かなり短い時間の中で話し合われてきたところがありまして、まだすごく不透明な部分が多くて、事業者としてはなかなか納得がいかないというのが大きなところでございます。ぜひ実態把握をきちんとした上で丁寧に目的を共通認識を持って議論していただきたいと思っております。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、日本IT団体連盟の木村様より御発言をお願いいたします。

【木村オブザーバー】

日本IT団体連盟、弁護士の木村でございます。報告案につきまして何点か意見を申し上げます。資料1の48ページを投影いただけますでしょうか。前払式支払手段につきまして、本人確認義務を課す、1か月当たりの譲渡額をはじめとした敷居値を30万円と明記しておりますけれども、こちらの明記につきましては反対でございまして、まだ決め打ちをする必要はございません。施行までの間にさらに調査を進めた上で妥当な水準を決めていただければと考えております。

次に、51ページをお願いします。51ページの注の164に具体的な犯収法上の制度設計が書いてあります。ここで「「高額電子移転可能型前払式支払手段」のアカウントの開設を特定取引とし」という書き方がございますけれども、このとおりですと、敷居値を超え得るサービスを提供しているとアカウントを作るときに取引時確認が必要となるということです。もっとも、この報告案の45ページには、「残高譲渡型はチャージしたアカウントから他のアカウントに電子的に残高を移転する行為に着目し、番号通知型は電子的にアカウントにチャージする行為に着目する」と書いてありますので、この着目しているところ、要は、敷居値を超えて残高を移転しようとするときや、敷居値を超えてチャージをするときに取引時確認を行えばよいのであって、アカウント開設時に取引時確認をする必要はないと考えてございます。

同じ51ページの注の163になりますが、前回、私から、本人確認がユーザーにとって負担になっていて、本人確認義務を課すことによって新しいサービスの普及を妨げる行動になりはしないかということ、とりわけマイナンバーカードの証明書を用いた本人確認手続の脱落率が高いということを指摘させていただきました。

このように、国の政策として推進され、また、金融庁の事務ガイドラインにおいても推奨されているマイナンバーカードの証明書を利用した手続の利用しやすさを改善する必要があって、そうでないと、スムーズに今回の規制強化が進むとも思えないところですので、官民協働でこの点に取り組むことがマネロン対策を進めていく上で重要なポイントであるということも報告案の本文に記載いただいてはどうかと考えています。

併せて、犯収法以外の法令、例えば携帯電話不正利用防止法ですが、この法律に基づいて本人確認を経た番号に紐付くサービスについては、追跡可能性があると思料いたしますので、そうした前払式支払手段については発行者によるモニタリング体制が強化されているということを前提として、犯収法上の本人確認義務を課す必要があるのかどうかということも検討し、また、課すということであっても、体制整備がどこまで必要なのかということをしっかり検討いただきたいと考えてございます。

前払式支払手段につきましてもう1点述べますと、番号通知型類似サービス、ブランドプリカを念頭に置いた類型が今回くくられています。ここでは、他者に対して当該残高を容易に利用させることが可能というような定義が記載されてます。容易かどうかというのは、いわゆる規範的要件で、規制範囲が広範にならないような定義を置くことをしっかり考えていただければと思います。

最後、共同機関についてもコメントを申し上げます。12ページの注の40になりますが、ここで、私たちの意見を書いていただいています。諸外国のように共同機関がより実りあるサービスを提供していくというふうになるためには、個人情報の共有を可能にする法的な枠組みを設けることがぜひ必要と考えています。今後の検討につなげていくと。このワーキング・グループが終わった後も今後の検討がもしあるとすれば、そこにつなげていくために本文にこの点を記載いただきたい。

また、共同機関には、今回新たに設けられる高額電子移転可能型前払式支払手段の発行者、こちらもマネロン対策が求められるわけですから、こういった事業者も参加できる者として加えるべきと考えてございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは続きまして、Fintech協会の落合様より御発言をお願いいたします。

【落合オブザーバー】

ありがとうございます。そうしましたら、Fintech協会の常務理事の落合と申します。私のほうから今回の意見について説明をさせていただきます。

では、次のページをお願いいたします。まず全体としては、共同機関、ステーブルコイン、前払式支払手段の各論点について、AML/CFTの高度化とか、金融システムの安定性確保などが非常に重要ということは同意するところでございます。その制度設計に当たっては、利用者にとって適切なサービスが提供されるように利用者保護を図りつつも、競争喚起やイノベーション推進に資する枠組みの整備といった視点で本審議会でも議論していただいていたと思いますが、今後のさらに詳細な制度設計を行う際や、今後の議論に当たってもぜひ御留意いただければと思っております。

では、次のページをお願いいたします。まず共同機関の論点から意見を述べさせていただきます。共同機関については、先ほどIT連盟様のほうからもお話がありましたのと同じ内容になりますが、高額電子移転可能型前払式支払手段が制度整備がされた後に参加できるようにしていくということは重要であろうと思います。ステーブルコインについても、恐らく暗号資産に近いものというだけではなく、一般的な取引用途でも使われる可能性があるだろうということも想定の上で、現在の規制の議論もされていると思っております。そうしますと、ステーブルコインも含めて発行者、仲介者も参加できるような可能性は残していただくことが重要ではないかと考えます。

続きまして、2つ目の点ですが、当協会としては前回の報告案までしか見て意見を提出することしかできませんでしたので、いずれも前回の報告案の注番に従って付させていただいております。この点については御容赦いただければと思います。

全体として、共同機関の整備については、委託スキームによって整備がされたものというふうに理解をしております。一方で、前回の注の39で書いていただいていた中で、オランダとかEUの一部とか、米国、シンガポール、こういった先進主要国において、個人情報の連携の仕組みが整備されていることは、これは報告案でも整理されていると思っております。

実効的な犯罪の不正利用防止の観点でいいますと、やはり匿名化された情報の共有というだけではどうしても現場で不正防止を十分に図れないことはありますので、個人情報の利用も含めた整備が今後必要になるのではないかと考えております。現行の個情法においても、犯収法の4条の取引時確認義務の確認事務の一環の行為を個人情報保護法における法令に基づく場合、第三者提供の例外として該当すると判断したサンドボックス、革新的事業評価委員会の事例もあると認識しております。こういった状況も踏まえて、第三者提供が前回の報告案の注の中では、一切できないのではないかと思われる記載もありましたが、第三者提供が行えるような場合も明確にしていくことは必要と考えております。

ただし、こういった法令の例外で単純に個人情報を使えるようにすることがよいということではないとは思っております。やはり適切なガバナンスがなされた中で、個人情報の利用というのは必要な範囲に限って行われるということが重要であろうと考えております。そういった意味では、AML対策においては、同意を取得するのが難しいことがあろうと思っております。犯罪者から同意を取ってしまうことになると、逆に適切に情報が利用できないような状況になってしまうことがあると思いますので、そういった意味では、同意を得ないで個人情報を使える場合を適切に法整備を行っていく中で整理をしていただくことが重要であろうと考えております。

委託スキームでの整備は過渡的なものとしては理解できます。早期に情報の処理を高度化していく意味で理解できるところではありますが、IT連盟様のほうもおっしゃられていたように、ぜひ今後、個人情報の利用という部分、法整備も含めて取り組むことはぜひ本文に記載していただく等含めて、積極的に御検討いただければと思っております。

では続いて、ステーブルコインについて説明をさせて頂きます。ステーブルコインについては、国際間での取引・技術開発が顕著な分野であることを踏まえて、金融システムの安定性や利用者保護に必要な規律を整備した上で、技術中立性とか国際性を保った制度の整備をお願いしたいと思っております。

基本的な思想としては、主要国に日本の現在の制度整備の議論は先行する可能性がある状況だと認識しております。こういった中で、日本という1か国が突出した制度整備を行った場合に、国際的に日本がパスされる可能性もあるというリスクも踏まえた中で、実務を後押しするような形での過度な負担にならない法制を整備していただき、その上で、見直しを繰り返していくことが重要な論点と思っております。これは今回の議論だけにかかわらず、今後もぜひ素早い見直しをこの分野では続けていただきたいと考えております。この部分での法制度の対応というのは、将来発行があるかもしれない日銀のCBDCとか、日本の金融業界の国際競争力にも重要な影響を及ぼす可能性があると考えますので、ぜひ見直しについては十分行っていただきたいと考えております。

当協会として具体的な論点との関係で申し上げたい点としては、ステーブルコインの海外発行がされている場合と、パブリックチェーン/パーミッションレス型のステーブルコインについて、実務的に取扱いが困難にならないようにしていただきたいというところでございます。前回の報告案をベースに書かせていただいておりますが、やはり海外発行を考えた場合に、仲介者において日本国内の事業者が対応するとしても、発行者側が日本でライセンスを取ることは非常に難しく、そうであれば、日本を回避しようと考える可能性は十分高いのではないかと考えております。

そういった観点で申し上げますと、仲介者において償還請求権の保全が適切にできるような場合とか、それを確認できるような場合については、海外での発行者について、日本での許認可等の取得を求めないことも選択肢として考えていただけないかと考えております。

また、パーミッションレス型の分散台帳の関係で申し上げますと、米国の大統領ワーキング・グループの報告書等の中でも、やはりパーミッションレス型についてはリスクは種々指摘されているところであると承知しております。そういった意味では、そのままクローズドのものと同じ形でとは思っておりません。必要な上乗せ規制を行った上で取扱い可能にしていただくことを今後御検討いただければと思っております。

また、この部分については御修正を既にいただいていたかもしれませんが、前払式支払手段との関係でもパーミッションレス型の分散台帳のものは取扱い不可というふうに書かれている部分がありました。この部分については御調整をお願いしたいということを書かせていただいたところです。

では、次のスライドをお願いいたします。ステーブルコインについて、実際に仲介者についても、業務実施が合理的に可能になるように考慮をしていただきたいと考えております。一つは、新経済連盟様のほうもおっしゃられていた、金銭の預託等に関する一律の禁止に関する部分でございます。この部分については原則というふうに記載していただいたということがありますので、一律に禁止するということではないと考えております。しかし、例えば金融商品取引業者とか、資金移動業者、暗号資産交換業者、こういった事業者が現金の送金や、様々なトークンや金融商品の取扱いに際しての一定の金銭の滞留は想定されているところでして、ステーブルコインについても同様の取扱い実務が利用者にとっても望まれるのではないかと考えております。そういった実際の状況を踏まえて、合理的な範囲で金銭の預託を受けられるような形も整理をしていただきたいと考えます。

また、仲介者の代理店として、既存の銀行、証券分野の代理仲介業者の業務実施も考えられ得るところだと思いますので、こういったところの取扱いの整備についても御検討いただくことは必要であろうと考えております。

さらに、仲介者と発行者の関係については、これは海外発行とかパーミッションレス型を考えたときに、どうしても発行者側のほうで責任を負うというのが難しい部分があると考えます。発行者と仲介者との関係について、代理・委託関係がない場合なども含めて御検討いただければと考えます。この点については既に報告案で一定部分御修正をいただいたものだと認識しております。

最後ですが、既に新経済連盟様からも御紹介がありましたが、大統領ワーキングの報告については米国でも議論があるところですので、競争喚起やイノベーション推進の観点から、発行者規制も含めて慎重に検討する必要があると考えております。

では続いて、前払式支払手段について説明をさせて頂きます。前払式支払手段については、前回意見を提出させていただいておりましたので、定義の整理の必要性等については前回のワーキングで意見提出をさせていただいたとおりでして、その点については引き続き御考慮をいただければと思っております。

また、技術的な事項について2点ほど意見を述べさせていただきたいと思っております。一つが、犯収法の特定事業者の定義の整備に当たってですが、資金決済法4条の中で適用除外事業者が定められておりますので、これら事業者が定義に該当しないように整理していただくことをお願いしたいと考えております。

第2点としては、高額電子移転可能型前払式支払手段の法人顧客との関係での取引時確認は、法人のクレジットカードの場合と同様の手法で実施できるようにしていただくことが重要であろうと考えております。

最後に、報告案の中で今回付け足していただいた部分として、発行者の買取りという部分があったかと思っております。この部分については、本来的には前払式支払手段においては払戻しがされないということで発展してきた部分があると思っておりますし、制度における特殊性としても重要です。その払戻禁止の部分が重要ということで、そもそも資金移動業者と違う立場を与えられていると考えておりますので、買取りを強調するということは適切ではないと考えます。仮に転売対策を実施するのであれば、やはり転売先の事業者の取締りを中心に行えるようにしていただくのが適切と考えております。

長くなりましたが、以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明を踏まえて、メンバーの皆様に御討議いただきたいと存じます。また、メンバーの方々からの御質問、御意見が終わった後、オブザーバーの方々に御発言の機会を提供させていただきたいと思います。それでは、どなたからでも結構でございますので、御発言をお願いいたします。いかがでしょうか。それでは、坂メンバー、お願いします。

【坂委員】

ありがとうございました。非常に短期間ではありますけれども、かなり深掘りの議論ができているという感想を持っております。

私のほうからは、第2章の1と2について意見を述べさせていただければと思います。まず第2章の1のところですけれども、電子的支払手段につきましては、技術の発展を背景に、海外でステーブルコインの価値が維持できなくなるなどの問題が生じていたり、また、より広範に利用され得るステーブルコインの構想が進んでいる中で、今回の報告案は、我が国の法制をこうした課題に適するものに整備することを提案するものであって、的確なお取りまとめをいただいているものと受け止めております。

海外の議論状況を見るべきという御指摘がありますけれども、技術の進展等によって事態は現在進行形で進んでおりまして、新しい事態への対応として制度の具体化を進めていくことは必要であろうと思います。我が国は、暗号資産の制度整備を早くに行い、その後、迅速に見直しを行ってきたという経験もございます。こういった経験を生かして、積極的に制度の具体化と世界への発信を行っていくという視点も重要と思います。

次に、事業者の皆様からの御指摘を受けまして、電子的支払手段に関して4点ほど述べたいと思います。

第1に、ステーブルコインあるいは電子的支払手段は、普及をしますと、一般の送金支払手段あるいは価値の貯蔵手段として用いられる可能性が高く、預金に準ずる使われ方をすることが想定されます。従いまして、相当程度高度の利用者保護が求められるということであり、イノベーションに配慮をするとしても、イノベーションは相当高い利用者保護水準が求められるということを共通の認識にしていく必要があると考えます。

第2に、御指摘もありましたが、ブロックチェーン技術やこれを用いる場合のガバナンスにつきましては、アカデミアの尽力も得ながら、課題解決への努力が重ねられている段階にあります。特にパーミッションレス型については依然課題が多く発展途上にあること、未知のものも含めたリスクがあり得ることを十分に踏まえる必要があると思います。

第3に、ステーブルコイン、電子的支払手段については、利用者の償還請求権が実効的に確保される必要があります。海外発行のものについてはライセンスを求めることは当然と思いますが、現実に利用者が権利行使を行う場合を考えますと、償還請求権が実効的に確保されるという要請を満たすことは容易ではなかろうとも思われます。形式的な要件により利用者保護に欠けるものが持ち込まれることがないように留意が、必要です。

第4に、前払式支払手段型のサービスについて、電子的支払手段としての発行を求める意見がありますけれども、前回も指摘させていただきましたとおり、前払式支払手段が譲渡自由となり、換金・返金が自由に行われる場合には、資金移動サービスに性格を変えるということになります。したがって、前払式支払手段のサービスにより電子的支払手段の発行を認めるのは、難しいと思います。

次に、前払式支払手段への対策に関する論点について述べたいと思います。第2章の2についてです。電子移転可能型については、簡素かつ明確で理解しやすい要件を定立することが大事です。この点については、利用者の分かり易さという要請もありますが、実効的なガバナンスや監督の観点からもこの点は重要だと思います。要件検討の際には、通常の利用者ではなく、悪用する者の目線で検討する必要があるというのも御指摘のとおりで、マネー・ローンダリングを行おうとする者は、電子的に移転が可能な手段の中に規制対象とならないものがあれば、当然そこを狙うということに留意が必要です。電子移転可能型の範囲・定義は、電子的な移転が可能なものを遺漏なく対象とすべきと考えます。

この点、Fintech協会様のほうから、前回幾つかの点について御指摘があったかと思います。前回の資料では資料6の3ページに書かれていたところです。御指摘の点については、いずれも検討が必要とは思いますが、いずれも悪用のリスクを排除することは難しいのではないかと考えておりまして、こういった方向で規制対象から除外することは、基本的に避けるべきと考えます。

例えばID、パスワードなどを家族間や法人内で複数人が保有していく場合を除外しようとすると、かかる枠組みを利用した脱法的な扱いへの対応が難しくなると考えられますし、親アカウントと子アカウントがある場合に、子アカウントの設定と同アカウントによる利用が容易であれば、容易に実質的な価値移転を図ることが可能となります。他の発行者の残高に交換可能な場合にも、他の発行者への残高への移転が容易であることに変わりはないと考えられます。

こうした点を踏まえ、規律の実効性を図るという観点から要件検討が必要と考えます。要件検討に際しましては、事業者の皆様の意見をお伺いすることは大事ですが、他方でマネロン対策の関係官庁、これは国内の機関も海外の機関もあると思いますけれども、こういった関係機関とか、あるいは被害対策に取り組む弁護士などからの実情の把握もぜひお願いしたいと考えております。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続いて、松井メンバー、お願いいたします。

【松井委員】

よろしくお願いいたします。私からは3点ほど申し上げたいと思います。

まず1点目で、AML/CFTの共同機関に関して、ステーブルコイン、前払式支払手段等を含める可能性、将来的にこのような制度をつくるということについて、IT連盟様、それから、Fintech協会様のほうから発言があったかと存じます。報告案でも、注の70、88、95の辺りで発行・流通の実態いかんによっては、前払式支払手段の一部が電子的支払手段としての規制の対象となり得ると触れられており、流通量等の実態が将来的にどうなっていくのかということに応じて、共同機関が取り扱うデータを利用する機関は変化していってしかるべきかと思い、これに応じたデータ管理の方法を考えていただければと思います。これが第1点です。

それから、第2点として、先ほどステーブルコインについての発行体規制として、保全もしくはバンクとしてのライセンスを求めるような国というのは現在ないのだと御指摘をいただいていたかと思います。この規制については、坂委員がおっしゃっておられたように、現に急いでつくらなければいけない場合にどういうふうに対応するのかということと、それから、理論的にどうつくっていくのかという話を2つ分けるべきかと思います。現在、日本ではバンクであるかどうかで保全あるいはライセンスという方法での規制を分けることを考えているわけで、このような手段以外に何か別の枠組みが必要だということを考えていらっしゃるということなのか、まずは禁止ではないというようなことを確保できれば法律としてはスタートできるということなのか、ここら辺の御意見等の交換が将来的に必要になるであろうと感じました。

それから、3点目で、前払式支払手段につきIT連盟様、それから、日本資金決済業協会様の発言の中で、携帯電話不正利用防止法に言及されている部分があったかと存じます。それが本人確認手段として簡便なものであるのでこちらの方がよいという趣旨の御発言ではあったかとは思いますけれども、逆に考えると、スマートフォン、プリペイドスマホといったような数万円デバイスを使ってでも連絡を取りたい、アプリを使いたいという動機がある場合に無視できない不正利用のリスクが見られたという一つの顕著な分野ではないかと思いますので、本人確認をしているような業者様に本人確認の実務の実態や御意見をよく交換した上で、どのような範囲に規制をかけるのかということを考えるというのは有益なことではないかと感じました。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、河野メンバー、お願いいたします。

【河野委員】

日本消費者協会の河野でございます。消費者の立場から受け止めをお伝えしたいと思います。

本ワーキング・グループの審議に基づいてまとめられた報告案の内容に概ね賛同いたします。資金移動に関しては、既に多様な手段があり、今後も利便性やサービス向上を目指した新たな手段が生まれるであろう状況において、銀行をはじめとして資金移動に関わる全ての関係者がAML/CFT対策強化に取り組むことは、犯罪や不正の防止という大きな目的に加えて、善意の利用者の保護という視点からもとても重要だと思います。

電子的支払手段、前払式支払手段に関する規律に関しては、現在、業に携わっている事業者の皆様から多くの御懸念が示されたところですけれども、今回の検討をぜひ前向きに捉えて、さらに技術のブラッシュアップを進め、利便性と安全と不正防止という多様な価値の追求に力を注いでいただければと期待しています。

十分な検討が行われていないという御指摘に対しては、目的を達するために今できる努力をしっかりとすべきであって、大事なのは、適切なフォローアップを実施して、施策を常に見直していくという姿勢ではないでしょうか。今回の報告によって、国当局と関係事業者全てがマネロンやテロ資金対策に一丸となって取り組む方向性を明確に社会に示すことが、AML/CFTへの国民の理解と協力を得る最善の周知・広報になると思いますし、加えて、利用者が利便性を享受する場合においても一定の責任を負うというのが国民として必要なことだと考えます。適切な制度整備が早期に実現するように、ぜひ関係者の皆様の知恵と知見を総動員して連携・協働して取り組んでいただきたいと考えます。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、翁メンバー、御発言ください。

【翁委員】

翁でございます。3点申し上げたいと思います。まずAML/CFTの共同機関につきましては、できるだけ多数の銀行や資金移動業者から委託を受けていくことが望ましいと思っております。本日IT連盟様やFintech協会様のほうから、これから考えられる高額電子移転可能型前払式支払手段の事業者やステーブルコインの事業者なども入っていた方がよいという御提言をいただいております。データも集まり、ネットワークとして捕捉できるという意味で効果的でもあると思っております。そうした多くの事業者が入る方向で検討が進むことがよいのではないかと思っております。

2点目のステーブルコインにつきましては、米国の大統領金融市場ワーキングの記載がこの報告案にはたくさんございますが、オブザーバーの方からも御意見ございましたし、私自身も以前申し上げましたけれども、米国の議論はまだ流動的でございますし、また、海外の動向をしっかり見ながら日本としてどう考えていくかということを議論していくことが大事だと思っています。その際、既存のデジタルマネーや預金の決済システム、今後発行され共存する可能性が高いCBDCなども含めて今後の決済システムのあり方や日本としてのデジタルマネー戦略などの全体像を踏まえ、引き続き議論をしていくことはとても大事だと思っております。全体として利用者の保護を図りながら、利便性や決済システムの効率化・高度化が進んでいく方向を考えていくということが重要だと思っております。

3点目の前払式支払手段のAML/CFTの規律付けのアプローチの方向については賛成しております。前回御報告ございました譲渡額別件数の実態調査、今回の報告案の注にも載っておりますけれども、ほとんどの譲渡額が小さいものとなっております。また、キャッシュレスに非常に貢献している交通系のICカードなどは規制対象となっておりません。その意味で、今回まず考えている高額なものというのは、こういった実態を考え合わせれば非常に小さい割合だと思っております。

この意味では、まずリスクベースの考え方に立ち、高額電子移転可能型の前払式支払手段について一定のAML/CFT対応を求めるというのは、機能に応じて横断的に検討するという趣旨にのっとり、規制の擦り抜けを防止するという意味でも合理的なアプローチであると考えておりますし、今後マネー・ローンダリングのリスクを最小化すべく実効的なものになるように検討を深めていただきたいと思っております。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、井上メンバー、どうぞ御発言ください。

【井上委員】

ありがとうございます。井上です。全体として今回、今まで提出された様々な意見に御配慮いただいているように思います。ありがとうございます。

報告案に従って順番にコメントを申し上げます。最初は、共同システムに関して、既にIT連盟の木村様、あと、Fintech協会の落合様からも御発言がございましたが、私も以前申し上げましたように、現在御提案されているのは、まず第一歩ということだと理解しております。すなわち、現在の個人情報保護法の枠組みの下で行うとすればこういう整理になるということであって、今後は、一定の監督下にある特別な機関が一定のガバナンスの下に出来ることとして、個人情報保護法の一般的な規律の中でしか動けないということではなくて、もう一歩進んでいくことも考えなければいけない話であって、実効性を高め、その機能を向上させるという観点から、今、注の40にございますように、機関の中での共有も考えていくべきだろうと思っております。前回に申し上げるべきだったかもしれませんが、現在、「将来的には」と書いてあるところが、少し間が空いてしまうような印象を与えるのではないかと気になっておりまして、せめて「引き続き」ぐらいの、木村様からは本文に上げてはどうかという御意見がございましたが、表現としては「引き続き検討する」ぐらいにした方がよいのではないかという感じを持ちました。これが第1点目です。

2点目は、これも何人かの方がおっしゃったと思いますけれども、ステーブルコインについて、海外発行のものに関する議論ですけれども、現在、注の97にまとめていただいていると思うのですが、どの程度、国内発行のものと同じだけの安全性を確保するかということで、今提案されているように、国内に拠点を持ち、国内に資産を保全し、といったことを発行者に求めることも考えられるわけですが、それを求めたことによって、実際に世界的に利用されているものが日本ではほとんど流通しなくなるという事態も、それはそれで問題だと思いますので、いろいろな安全の図り方という意味で、もう既に書かれていることではございますけれども、ある程度仲介業者にスクリーニングをお願いしたり、相互性をお互いに認め合って、海外で発行されたものを取り扱うことについて現実的に可能な規制を考えることは引き続き重要ではないかと思っております。

次に、仲介業者の金銭の預託についてです。今の枠組みとしては、仲介業者は銀行あるいは資金移動業者の代理という位置付けに近いものが想定されているわけですが、ビジネスモデルとしては、先ほど御発言ございましたように、ブローカー、すなわち証券会社に近い、ステーブルコインを取り扱う媒介業者のような性格があることから、一定の預り金が必要になる場合があるという御説明だったと思います。確かにそういう面があるかもしれませんので、現在の証券会社に求められている顧客分別金信託のような預り金の保全規制がきちんと適用されるのであれば、金銭の預託の禁止を解除していくことも考えられるのではないかと思いました。

最後に、前払式支払手段についてです。今、翁委員からも御発言がございましたが、報告案では、利用者が現在利用している形態のほとんどに規制がかからないという形で、リスクベースのアプローチが提案されているように思います。その点は賛成するところですが、ただ、規制が導入されるに当たって業界側の御懸念もございますので、先ほどIT連盟の木村様からも御発言がございましたが、全般的に、そういう意味では前払式支払手段に限らないことですけれども、現在犯収法に定められている本人確認の方法をある程度利用しやすく、確認しやすくしていくことは、国の施策として絶対的に必要であろうと思います。あとは、携帯電話を利用した方法についても幾つか御発言がございましたが、どこまで同程度のものとして犯収法上も本人確認方法として認めていけるのかということも引き続き御検討いただければと思います。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、末冨メンバー、どうぞよろしくお願いいたします。

【末冨委員】

ありがとうございます。末冨でございます。高額電子移転可能型前払式支払手段について2点と、ステーブルコインについて1点、簡単に申し述べさせていただければと思います。

まず、高額電子移転可能型前払式支払手段については、基準について様々な御意見、議論があったかと思いますけれども、基準については、犯罪防止の観点と、実務への支障をできるだけ少なくするというところでデータ分析をすれば、適正な値は決まってくる、そういう分析はできるかもしれませんし、それが皆様の御意見を反映するものになるかもしれません。しかしながら、そのためのデータを収集するには時間がかかるかと思います。そういうことを考えますと、基準としてはある程度、今の段階でのベストと考えられるようなものを設定した上で、今後それを修正していくという方法が合理的ではないかと感じました。

それと、本人確認につきましては、本人確認という手段がふさわしくなく、むしろモニタリングとか他の手段のほうが妥当ではないか、それが業務に支障をきたさないのではないかという御意見もございました。他方で、やはり入口で規制をしなければなかなか犯罪防止ということからすると難しいのではないかと考えます。加えて、モニタリング等の問題、その方法を取った場合には、むしろ個人情報保護とか、あるいはプライバシーの観点から問題が生じることもあるかと思いますので、むしろ入り口で端的に確認をするというほうが簡便で、なおかつ支障がないと考えることもできるのではないかと思いました。一旦、入口のところで権利を認めてしまうとなると、後にそれを引き剥がすというのは非常に困難なことかと思いますので、むしろ取引に入る時点での本人確認というのは一番簡単かつ明瞭な方法ではないかと感じました。

続きまして、ステーブルコインにつきましては、多くの方からも御指摘があったような、海外発行のステーブルコインの扱いについて、当初これは想定されているものかと思っておりましたところ、やはりライセンス等で規制する必要があるということで、一旦は納得しておりました。他方、皆様の議論を踏まえ、実務上の要請あるいは需要があるということからすると、この点については、今後、どのような形で認めるのか、あるいは依然としてライセンスを要求するのかということ等についても引き続き検討が必要ではないかと感じました。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、後藤メンバー、御発言ください。

【後藤委員】

後藤です。どうもありがとうございました。何回か発言をさせていただいておりますけれども、主にステーブルコインにつきまして何点か申し上げたいと思います。

本日、新経連様と、あと、Fintech協会様から、アメリカでの議論について、大統領ワーキング・グループの報告書が出たものの、それに対しては連邦議会やFRBの理事などから異論も出ているということを詳しく御紹介をいただきました。こういった議論の動向を正確に認識しておくことは、このワーキング・グループとしても大事であると同時に、この報告案を読まれる方々にとってもきちんとその情報は伝えておくべきではないかと考えております。

そういう観点からは、現在、米国の大統領ワーキング・グループの報告書は例えば注の43とか注の52、あと、注の75辺りで紹介されているのですけれども、そこで、この報告案については、連邦議会議員とかFRBの理事などから反対も出ているということを、可能であればその内容とともに詳しく引用しておくべきではないかなと考えております。ちゃんと両サイドの議論を見た上で我々は報告案を作っているのだということを記録に残しておく必要があるのではないかなということでございます。

その上で、方向性についてどうかということなのですけれども、議論が例えばアメリカで続いているということは、それがどっちに行くかはまだ分かっていないということだと思います。もちろん、アメリカは金融規制について禁止されていなければできるというような基本スタンスを取っているのに対して、日本はどちらかというと認めたことしかできないというのが基本スタンスであるとしますと、日本として現状で特に海外発行のステーブルコインなどを自由に取り扱ってよいということまで積極的に打ち出すことはできないと当局はお考えなのかもしれませんし、それは日本のアプローチを考えると全く理解できないということではないようにも思います。

しかし、アメリカやEUなどの議論が最終的にどういう形になるかはまだ見えていないのですから、その動向次第では、日本の立場も考え直す余地はあると見ておくべきではないかなと思います。既に何人かのメンバーからも御発言がございましたけれども、不断の見直しが必要になってくるのではないかということです。そういう不断の見直しをするのだということは報告案の53ページでお書きいただいているのですけれども、ここの書きぶりに少し修正というか、個人的には違和感を感じるところがないわけではありませんので、その点を次に申し上げたいと思います。

53ページの「おわりに」の2段落目で、様々な関係者が連携・協働して実効性ある対応に向けて金融制度を不断に見直していくことが重要だと記載されています。これは、このとおりでして、そこに異論はないのですけれども、この「実効性ある対応」が何を意味しているのかということがやや不明確であるようにも思います。こういう表現しかないのかもしれませんけれども、その際の観点としてどういうアプローチを取っていくのかということが重要なのかなと思います。今日の議論からしますと、特にイノベーションを阻害することがないように、また、国際的な規制の動向、特に現在まだ流動的な状態にあるアメリカやEUの規制がどうなっていくのか、その動向をきちんと見据えた上でということがここに盛り込まれるべきなのかなと考えております。

そういう意味から、1段落目の、今回追加いただいたところかと思うのですけれども、そこの記載に少し違和感を感じております。特に「金融サービスのデジタル化に対応し」というところなのですけれども、「電子的支払手段に関する規律を設けることは、利用者保護やAML/CFTの観点から必要な対応を行うとともに、民間事業者による決済の効率化等に向けた創意工夫を促す環境を整備するものである」という一文がございます。恐らく、この一文が言わんとすることは、創意工夫を促す前提としては、制度がはっきりとしている必要があって、そのために制度をつくっていくんですということではないかなと思いまして、その意図は非常に結構なことではないかと思うのですけれども、卒然と読むと、今回つくる電子的支払手段に関する規律によって創意工夫が促されていくんだというふうに言っているようにも読めてしまう。

しかし、今回様々な事業者の方から、むしろイノベーションを阻害するおそれがあるという指摘があったわけですので、そういう評価ができるわけではなく、またそういう評価を我々がしていると誤解されてしまうことは避ける必要があるように思います。この点はもう少し自分たちのやっていることを中立的に評価する必要があるのではないかなと思いますので、先ほど読み上げた部分をそのままにするのであれば、2段落目で金融制度を不断に見直していくのだというところに、規制によってイノベーションが過度に阻害されないようにということとか、また、流動的な状態にある国際的な規制の動向をきちんと見極めた上で、ということを盛り込んでいただければと考えております。その点、要望ということでございます。

あと、最後に、報告案に対する意見ということではないのですけれども、先ほど坂メンバー、また、河野メンバーからもあったでしょうか、そこの御発言について、議事録に残すという趣旨で1点申し上げたいと思います。坂メンバーから、イノベーションの促進はそれはそれで大事なのだけれども、利用者保護も大事だという御指摘がございました。そのことには全く異論はなく、両方大事な政策目的であると思うのですけれども、その際に留意すべきなのは、利用者保護と言っても様々な形があるのではないかということです。

仮にステーブルコインが一般の消費者が日常的に使う決済に使われていくようになるとすれば、一般の消費者向けの保護が重要になってくるのかと思いますけれども、まだそこまで行くのかどうかということは見えていない状況でありまして、どちらかというとやはり新しいものでありまして、デジタル取引などに慣れている人が使っているという状況なのではないかなと思います。

問題となるのは、その際に国際的に流通しているステーブルコインはどうしても海外発行のものであるという中で、そこに対して国内での利用には重い規制が課せられてしまうと、日本の個人や事業者がそれを使うことができない。使いたいのに使うことができないというのも潜在的な利用者を保護していないということになるのだという意識はしっかりと持っておくべきではないかということは思っております。

暗号資産については、例えば過去に日本でもマウントゴックス事件などがありました。ああいった消費者被害が発生することは防がなければなりませんし、それへの対処は必要なのかもと思いますけれども、ステーブルコインの状況があの当時の、当時、仮想通貨と呼んでおりましたけれども、仮想通貨の取引と同じなのかというと、そこにはやはり違いがあるのではないかとも思っております。規制の適切なレベルというのは難しいものがあるかもしれませんけれども、パターナリスティックに過ぎるということにはならないように、イノベーションの促進という観点からも、そういうことを留意していくべきではないかなと思いましたので、この点、議事録に残させていただければと思います。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、西川メンバー、御発言ください。

【西川委員】

西川でございます。皆様の御意見を踏まえて、今回の報告案はかなり多種なものを盛り込んだ形で現状の形になっていると認識しておりまして、私としては全体として異論はございません。その上で4点発言させていただきたいと思っています。

1点目ですが、まず今回のこのワーキング・グループが金融審の中で議論される端緒になった話ということで、国際的な要請、国際協調、特にFATFの対日審査の結果が出た直後、本件が議論されて、ワーキング・グループが立ち上がったという、そういう趣旨を考えますと、国際社会が期待するマネー・ローンダリング、テロ資金対策について対応を進めるべきであるということが大きな根底にあったと考えています。

この中で、またFATFの対日審査の結果の中の前文のところに書かれておりました重要なキーワードを今もう一回見直してみますと、国際的な業務を行う金融機関、大規模金融機関、これはG-SIB等と書いていましたけれども、そういうものと一部の資金移動業者を除いて、本邦においてはマネー・ローンダリング、テロ資金対策の理解が十分でないと。正確な表現としては、先ほど申し上げた、一定の事業者は理解をしているということで止まっていまして、それ以外の事業者は理解が十分でないということを明示していると理解をしております。

これはFATFが長い間、1980年代からですけれども、具体的には2000年に入って、多くの資金移動取引を含む金融ビジネスに対して、リスク評価のあり方、リスクの考え方を国家間で合意をして、G7であったり、G20で国として批准している内容をベースにして考えたときに、日本における理解が不十分であるということを今回のFATFの対日審査では明記されたということが非常に大きな端緒になっていると思います。

今回の報告案の中で、その点に関しましては2か所、同じ表現ですけれども、マネー・ローンダリング等を行う者が非常に巧妙に当局の対策を迂回する新しいスキームをつくり出していることを踏まえて対応していくと記載されています。これは継続的にAML/CFTの高度化に対応していくということを意味していると思いますが、それは国際的な期待に対して対応していくんだということを明確に書いたということで、私どもAML/CFTの専門家としては大変評価をしております。

一方、このことがそれぞれの課題の中でどういうことを意味するのかといいますと、まず共同化のところでは、多くの委員からお話がありましたとおり、まずは為替取引という適用されるAML/CFT規律が明確なものから始めて、そこから、共同化に参加する金融機関、事業者もどんどん増やしていくし、共同化の対象にするビジネスタイプも増やしていくという形を議論させていただいたことが記録にも残っておりますので、その方向がまさしく国際的な期待にも合致するということであると認識しております。

3点目でございますが、ステーブルコインの中の議論でありましたとおり、今回は報告案にもしっかり御記載をいただきましたが、ステーブルコイン等で議論していただいているAML/CFTの規律は非常に基本的なものであって、為替取引等で議論しているものとは異なります。ただし、それは先ほど後藤委員からもお話が直接ありましたとおり、ビジネスが拡大する、利用者が拡大する、最終的には多くの参加者が安心安全でこれらに取り組んでいく際には、規律の水準を見直していかないといけないということも国際的な要請であります。

特にここで重要な点としては、AML/CFTに関するビジネスもしくは商品間の規律の差分を利用して、いわゆるアービトラージを行って、隙間を狙って犯罪を起こすということは、金融システムに対する大きなおそれになりますので、これについては本日の報告案にもお示しをしているとおり、継続的に見守りながらしっかり対応していくということが制度設計上の要点であろうと認識をしております。

最後に、前払式支払手段の取引に関しましては、多くの皆様が御議論を既にされているとおり、一部の取引に関してリスクベースで考えた上での対応、制度化をしていくということだと認識しておりますので、特に多くの利用者が安心安全でこの取引を使うためには必要なものではないかなというのがAML/CFTを軸に考えた場合の考えでございます。一方、ここで求められるAML/CFTとは一体何かいうと、今回の報告案中で36ページの注の123から始まり、41、43、45、46ページと具体的なものが脚注の中で詳細に説明されていると認識をしておりまして、今回の議論の中での質疑に対しても多くの答えがここに含まれているとAML/CFTの専門家の観点では考えております。

西川からは以上でございます。ありがとうございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。それでは、メンバーの方から、一通り御発言いただいたかと思いますが、まだ御発言されていないメンバーの方、巽メンバー、森下メンバー、もし御発言ございましたらおっしゃっていただけると幸いですが、よろしゅうございますでしょうか。

【森下委員】

一言よろしいでしょうか。

【神作座長】

はい、御発言ください。

【森下委員】

ありがとうございます。今回いろいろな御意見が示された中で大変難しい問題であったかと思いますけれども、的確におまとめをいただいたのではないかと考えております。報告案の中で、引き続き検討とか、あるいは今後の課題とされている点も多いと思います。政省令とかガイドラインに委ねられた点も結構あるのではないかと思いますけれども、検討がスピード感、あとは、できればできるだけオープンな形で議論が進んでいくということが大事ではないかと思います。その際にはいろいろなメンバーの方から既に御指摘がありましたように、諸外国の動向とか、あるいは技術的な発展というようなことへの対応も考慮しながら、具体的な内容を詰めていくということが重要なのではないかなと思っております。

マネー・ローンダリングにつきましては、今回、共同機関というところに重点を置いて手当てがされましたけれども、利用者の利便を過度に損なうことなく効果的なマネー・ローンダリング対策を目指すという方向で、共同機関以外の部分についてもどんどんこれからやはりマネー・ローンダリングに対する取組を高めていくということが重要なのではないかと感じておりますし、それに当たって、共同機関からの金融機関などへのフィードバックというようなものもすごく重要になってくるのではないのかなと考えております。

ステーブルコインに関してですけれども、何点か感じている点を申し上げたいと思います。先ほど新経連様のほうから、どちらかというと代理人型、ブックキーパー型のような仲介者のイメージが中心で、ブローカー型のようなことが抜け落ちているのでないか、あまり重視されていないのではないかというような御指摘があったかと思います。これは私も似たような印象を抱いております。

この点に関しては、今回、報告案26ページの2行目に「等」を入れていただき、仲介者にはいろいろな種類のものがあり得ると。そして、そういったようなもの、必ずしも代理人型にははまらないようなものについては、暗号資産交換業者と同じような機能を果たす、そういった観点からの枠組みで整理をするというようなことが示されたのかなと理解しておりまして、今回の修正で一定の目配りがされたのではないかと理解をしております。

あと、仲介業に関しては、これが今後出来た後にどのような形で実際に使われていくのかなというようなところが気になるところですけれども、注の100のところにありますように、兼業規制をしないということが書かれております。今後、実際にステーブルコインを使う、仲介するビジネスが単独で行われるようになるのか、あるいはむしろ暗号資産交換業とか、あるいは金融商品取引業とか、そのほかの事業と兼業してデジタルの世界におけるいろいろなサービスを提供できるようなプラットフォームとかサービスを提供するような方々が仲介業をされるようになるのか、どちらかというと後者のほうかなということを想像しているのですけれども、そうだとしますと、今後、兼業するということも含めていろいろなルールのディテールを考えていくということが大事ではないかと考えております。

あと、ステーブルコインについて、海外のものについてはどう考えるかという点についてはいろいろな御意見があるところだと思いますけれども、海外のものを入れなくてもいろいろな種類のものがあるところ、海外のものが入ればなおさら多様なステーブルコインがあることになると思います。償還を約束していたとしても、必ずしも決済性預金と同じようなスピード感で償還が得られないようなものもあるかもしれない。海外ならばなおさらのことで、ホワイトペーパーとかで償還できますと書いてあったとしても、本当に現実に償還を受けられるかどうか、受けられたとしてもどれぐらい時間がかかるのかというようなことがかなり疑問なものも出てくるのではないかと思います。

大事だと思いますのは、今回ステーブルコインについて制度が出来たことで、これで国のお墨つきが出来て、本当にお金の代わりのものとして大変安全なものになったというような例えば報道がされると、これはややミスリーディングなのかなと思います。やはりステーブルコインといっても、仕組みによって様々なものがあると思います。仲介業者の義務として情報提供というようなことが書かれていましたけれども、私はそういった中にリスクの説明というようなものがすごく大事になってくると思いますし、先ほど事務局から御説明の中で、発行者には開示規制が求められるというようなお話があったと思いますけれども、何を開示するかはともかく、リスクということについてはしっかりと発行者及び仲介者が一体となって利用者に説明をしていくということが必要なのではないかと考えております。

海外のステーブルコインにつきましては、注の74のところで、発行者が日本で流通させる場合ということについて書いてありますけれども、発行者が勧誘するようなケースはほとんどないのかなと。海外の発行者がわざわざ日本語でセールスをするということがあまりないのであれば、発行者規制それ自体が問題となるケースはそんなにないのかなというような気がしております。

他方で仲介者につきましては、27ページにありますように、日本国内で資産の保全とかができるようなものということが書かれているわけですが、ただ、それ以外の方策というようなところ、前回も御議論になったと思いますけれども、それ以外の方策ということがあって、どういうようなものを考えるかということ次第なのかなと思っております。

こういった点で、先ほどFintech協会様の御発表の中で、例えば仲介者がプラスアルファの担保をする、仲介者として払戻しについて担保をするというようなことがあればいいのではないかというような御提案がありました。もし日本国内にいる仲介者が発行者に代わって重ねての補償をしてくれる、あるいは担保をしてくれるのであれば、むしろ発行者に対する直接の償還請求よりもよほど、少なくとも利用者保護という観点からは優れていると思いますので、もし実際にそういうことが可能なのであれば、十分それ以外の方策の具体例として考慮されていいのではないかと思います。

最後、前払式支払手段についてです。今回の御提案は、完全ではないにしても、マネー・ローンダリングという非常に重要な問題について対策を少しでも進めるというような観点からの御提案だと理解しております。これが本当に実務に、利用者利便とかイノベーションにすごく大きなダメージを与えるような提案なのであれば、どうなのかなということもあるとは思うのですけれども、少なくとも御説明をいろいろお伺いしているところでは、10万円、そして、30万円という敷居値が99%超、現在の取引をカバーしているというふうにされており、また、恐らくこれぐらい高額の前払式支払手段となると、主な対象は法人の方がお使いになられるのかなというような気もするのですけれども、そういったような前提が誤っていないのであれば、これもFintech協会様のほうから、法人クレカと同じようなレベルの本人確認を求めるということでいいのかというふうなお話がありましたけれども、そうであれば、ものすごく大きなダメージが実務に及ぶというようなこともないのかなというような印象を抱いております。

そういった前提で今回こういったような措置を設けるということは十分あり得るのかなとは考えておりますけれども、もしそういった実務上の障害ということについての理解が正しくないということであれば、具体的に知りたいと感じております。

すみません、長くなりました。以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、巽メンバー、御発言ください。

【巽委員】

巽でございます。私からは、前払式支払手段に関しましてコメントと、あと、今後詰めなければいけないであろうお話をさせていただきます。前々回の会議で、エンフォースメントの実効性を確保するという観点からは、犯収法の話よりも、前提として資金決済法の規制をきちんと詰めなければいけないという話をさせていただいたところでありまして、まずそちらを議論すべきだということに関しては、オブザーバーの方から明確に賛同いただいたところで、資金決済法上のモニタリングを強化するという方向性に関しては、どなたも反対されていないのだろうという点はまず確認しておいたほうがよいのだろうと思っております。

犯収法の適用に関しましては、拙速な導入に反対されるというのはオブザーバーの方が明確におっしゃっていただいているわけですが、内容として詰めていく必要があるという点では見解が一致しているように見受けられますので、そこが意見の一致を見たということも確認していただくのがいいのではないかと思っております。

その上でコメントなんですけれども、資金決済法上のモニタリングについて、事業者も一丸として取り組むという形で話がまとまっていること自体が重要だと思っております。度々話題に出ましたけれども、転売サイトへの対処というのが、事業者の側にとっても規制当局にとっても共通の課題であるということが、資金決済法上の届出義務の履行等を通じて官民共通の課題として打ち出せるような環境が整うというのがまず非常に大事なことであろうと思います。

その中で、例えば今回新経連様が、発行者が自分で買取りをするというのも、結局、犯罪者の現金化ニーズを満たしてしまうのであまり意味がないのではないかということをおっしゃっていたわけですが、その前提としては、発行者の側はもう本人確認をせずに、犯罪者かどうかのスクリーニングをせずに払戻しをするのだということなんだと思うのですけれども、利用実態に鑑みてなお、犯罪者かどうかのスクリーニングもしないで払戻しをするという話になっているということ自体に、当局との議論の擦れ違いがあるように思いますので、そういう辺りを今後、資金決済法のモニタリングの中で一つ一つ解消していっていただければいいのかなと思った次第であります。

もう1つは、買取りサイト、転売サイトに関しては、今回のアジェンダからは外れることになるとは思うのですが、やれることはまだあるのではないかという印象を持っておりました。事業者の方からは、犯罪資金の収益移転のリスクが一番顕在化するのは、買取りサイト、転売サイトであるところ、そこを規制せずに発行者の側に規制をかけるというのはいびつな形ではないかという点を、最初から一貫しておっしゃっていただいていたように思うのですけれども、転売サイトをほったらかしにしていいわけがないというのは恐らくこれも共通認識なのだろうと思っております。

特に番号を買い取るという形で買取りをしているサイトは、古物営業法上の適用関係では、物品を買い取っているわけではないので古物商の許可は要らないと。そうすると、警察庁の古物営業法上のモニタリングは及んでいないということになります。他方で、番号を買い取った後どういう処理をしているかというのは。事業者によっていろいろだとは思うのですが、私が少し見たところでは、チャージ残高というようなものを自社サイトに用意して、そのチャージ残高でほかの番号をさらに買えるようにしたりとか、不要な場合はそれを全額払い戻してあげるというような対応をしている事業者も見受けられるのですけれども、そういう買取りサイトの仕組み自体が資金決済法の適用関係において問題がないのかというのは今後確認していただく必要があるかと思います。現在でも継続的に報告聴取等の措置を行っていただいているというお話は聞いておりますので、転売サイト、買取りサイトの規制を金融庁としても何らかの形で手をつけていただくということは、今回の議論の流れの延長として必要なのではないかと思った次第でございます。

最後、少し抽象的なというか、これも今回のアジェンダから外れるかもしれませんが、私が聞いていて気になったこととしては、恐らく前払式支払手段という資金決済法上のカテゴリーが持つ意味というのが、規制当局の間と事業者との間でかなりずれているのではないかという気がしておりました。資金決済法を立法したときの議論というのは、報告案で申しますと注の130に記載があるところでして、これは前回以来、坂先生が御指摘されているところかと思うのですけれども、もともと比較的少額で特定店舗加盟店のみで利用可能な商品券のようなものを念頭に置いていたカテゴリーであって、実態として資金移動に近くなったものは資金移動業のほうで整理すべきだと。

これは、要するに、そういう事業者は資金移動業のほうへ移れという、そういう積極的な含意を持っている議論のように見受けられるところ、オブザーバーからは、前払式支払手段というのは払戻し禁止が重要なリスクヘッジであって、資金移動業の各種の制約を外した状態で利用可能店舗・サービスを拡大して、残高の制限もなくこれを発行してビジネスを行うことが重要視されているように見受けられるのですけれども、資金決済法の解釈として、今申し上げたような、オブザーバー側が想定している前払式支払手段の使い方というのがどこまで許容されるものなのかということ自体が本来は問題にされてしかるべきなのだろうと思った次第でございます。

これは犯収法の本人確認を適用する、しないという話とは別の問題として、資金決済法の業規制の建前として、前払式支払手段と資金移動業が区別されていて、それぞれ異なる規律が課されていることの意味というところから解釈論を詰めていただくという必要があるのだろうというところであります。その際には、ビジネスの発展を阻害しないという観点、利用者保護の観点、双方をきちんと見据えた上でやっていく必要があるんだと思うのですけれども、本来であれば、資金決済法の大本の建前をきちんと整理して議論をかみ合わせないと、犯収法の話にもなかなか進めないのかなということは思ったところでございます。コメント、雑駁なものにとどまりましたけれども、以上のようなことを考えた次第でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。それでは、全てのメンバーの方から御発言をいただきましたので、ここからオブザーバーの方に御発言をしていただきたいと思います。最初に御発言を希望していただきましたのは、日本銀行の須合課長でしょうか。よろしくお願いいたします。御発言ください。

【須合オブザーバー】

日本銀行の須合でございます。オブザーバーではございますが、発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。

ステーブルコインを含むデジタルマネー、デジタル金融については、今後も国際的議論がさらに深められていくと思いますので、本行といたしましても、金融庁と連携しつつ、国際会議での展開なども踏まえながら議論に貢献していきたいと思っております。

私からは以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。それでは続きまして、国際銀行協会の鳥海次長、どうぞ御発言ください。

【鳥海オブザーバー】

ありがとうございます。国際銀行協会の鳥海でございます。私からは、共同機関について3点御質問をさせていただければと思います。

まず1点目ですけれども、共同機関になられる機関は、今後、金融庁から認可を取得する、あるいは認定をしていただくという制度設計がなされるのではないかと察するのですけれども、現時点で共同機関の対象として想定されているのは、全国銀行協会様が中心となって検討を進めておられる取組だけなのでしょうか。つまり、既に存在する類似した取組は対象になるのか、ならないのかというポイントです。

2つ具体例を申しますと、まず1つ目は、公益財団法人の国際金融情報センター、JCIF様がございますけれども、こちらが海外テロリスト検索システムをインターネット上で提供なさっておられます。ホームページによりますと、190を超える金融機関が利用していると。実は私どもの協会の会員の外銀支店でも利用している者がおります。それからもう1つ例を挙げますと、全国信用金庫協会様もたしか共同化の取組をしておられたと記憶しておりますけれども、これらの具体例は共同機関に当たるのかどうかというのが1つ目の質問でございます。

2つ目の御質問は、報告案の5ページに参入要件が記されているのですけれども、ここに株式会社形態とすることが基本と考えられるという記載がございます。株式会社の場合に、政府による出資が想定されているのかどうか、現時点では想定されていないという理解でよろしいのかどうか、これが2つ目のポイントでございます。

3つ目の御質問、これが最後ですけれども、株式会社形態を基本としつつも、その他の法人形態であってもあながち排除されないのか、あるいはどうしても株式会社でなければならないのか、いずれなのかという点であります。背景として念頭にございますのは、全国銀行協会様の関連組織でございますけれども、全銀ネットとでんさいネットがございまして、全銀ネット様は一般社団法人で、資金決済法における資金清算業の免許を頂いておられます。他方ででんさいネット様は株式会社でございまして、全銀協様の100%子会社で、電子記録債権法における電子債権記録機関としての指定をいただいているものと存じます。こうした先例を拝見しますと、株式会社ではなくてもその他の形態でも容認されるのではないかなとも思われるのですけれども、いかがでしょうか。

この以上3点でございます。お願いいたします。

【神作座長】

ありがとうございました。ただいま鳥海次長から3点御質問がございましたが、事務局から御回答いただけますでしょうか。

【端本信用制度参事官】

ありがとうございます。お答えしたいと思います。

まず1点目でございますけれども、そこにつきましては、報告案ですと、(1)、4ページから5ページ、共同機関が多数の銀行等から委託を受け、その業務の規模が大きくなる場合に業規制の対象になるということですし、その具体的な内容につきましては3ページから4ページにかけてということで、為替取引に関しましてアとイの業務を行うということでございます。御質問いただいた件は個別の話になりますので、個別に確認させていただく必要があると思いますけれども、法令上は、法令に規定する要件に該当するということであれば、この業規制が必要になるということでございます。

それから、2点目でございますが、株式会社形態で政府出資を想定しているのかということですけれども、この点につきましては、政府出資について現時点で議論しているということはございません。

それから、3点目ですが、他の法人形態、これは御指摘のとおり、株式会社形態を基本とするということですので、その他の形態の場合どのような要件があるのか等を含めまして今後検討させていただきたいと思っております。ありがとうございます。

【神作座長】

ありがとうございます。鳥海次長、よろしゅうございますか。

【鳥海オブザーバー】

かしこまりました。ありがとうございます。

【神作座長】

それでは続きまして、新経連の片岡様、御発言ください。

【片岡オブザーバー】

片岡です。ありがとうございます。1点補足をさせていただきますと、前払式支払手段について10万円・30万円という敷居値はほとんど影響がないのではないかという御発言が幾つかありましたけれども、今、報告案で紹介されている、金融庁が行った実態調査については残高譲渡型の4つのみ行われているということ、それから、資金決済業協会の調査についても、2か月前の段階でアンケートを取って一部の事業者から回答があったものであるということ、それから、チャージ枠の分布になってしまいますと、瞬間的なチャージというのは読めないところがありまして、平均的にずっと低い金額であるとしても、一時的にその残高が超えるというところを調査する必要があるのかなと思っていますので、必ずしもこの99%というのが正しい数字だとは思っていないです。

例えば最近でいうと、自治体の税金の支払いなんかはスマホ決済でできるようになったりしているのですけれども、そこでいうと、1請求書当たり30万円までの税金の支払いができたりします。そういったときに、一月に30万円までしかチャージできないということが果たして影響がないのかといったところも考える必要がありまして、丁寧に実態調査をした上で影響を確認する必要があると思っています。

それから、巽先生からいろいろ御発言いただいておりましたけれども、まさしく同じようなことを考えております。やはり前払式支払手段、電子マネーの利用をどういったところまでどういう形で認めるべきなのかといったような価値観の擦り合わせを丁寧にしていった上で、同じ方向を向いて対応ができるような環境を望んでおります。その観点からいくと、やはり今回はかなり急ですし、価値観のずれが大きい中でいきなり敷居値を設定されて、それ以上のサービスには本人確認が必要ですと一律にされてしまうことに今後のことを考えてもかなり懸念を有しているということでございます。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。続きまして、暗号資産取引業協会の千野様、御発言いただけますでしょうか。

【千野オブザーバー】

暗号資産取引業協会の千野でございます。もう既に新経連様、そして、Fintech協会様、あとは、メンバーの先生方からいろいろな御発言がありまして、その内容と一部重複するところもあろうかと思いますけれども、暗号資産取引業協会といたしまして、報告案の内容についてコメントをさせていただきたいと思います。

まずデジタル資産市場、暗号資産市場におきましてステーブルコインがどのように使われているかという実態について、一言コメントをさせていただきます。現在、世界的にはFintech、そして、NFT、DeFi、分散型金融といったブロックチェーンを利用した新形態のビジネスが勃興しております。こうした新しい業態におきまして、アメリカのドル建てのTetherやUSDCといったパーミッションレス型の分散台帳に記録されているステーブルコインがこのブロックチェーン経済圏における決済手段として広く流通してございます。

しかしながら、こうしたパーミッションレス型のブロックチェーンにおきまして発行されるステーブルコイン、国内におきましては、資金決済法上の通貨建資産に該当する可能性が高いということから、現在のところ、暗号資産交換業がこれらのステーブルコインを扱うということにつきまして、必ずしも明確な整理がなされてこなかったというところがございました。そうした観点につきまして、今回の報告案におきましては、ステーブルコインの流通という観点におきまして、法的な枠組みが提示されているというところにございまして、こちらにつきましては当協会としても評価をしているというところでございます。

しかしながら、流通業に関する規制の内容いかんによっては、海外発行のステーブルコインあるいはパーミッションレス型のステーブルコインの取扱いというのが事実上不可能になってしまうというような可能性もあり、そうしたことが顕在化すると、本邦の市場が海外の市場と断絶されてしまう、あるいはガラパゴス化してしまうといったような懸念があるのではないかというところで、こちらにつきましては、他のメンバーの方からもいろいろな言及があったと承知してございます。

また、米国や欧州で現在、ステーブルコインに関する規制の議論がもう既に進んでいるという状況でございまして、こうした議論を注視して、本邦の規制がイノベーションを阻害しない、あるいは本邦の有能なブロックチェーン技術者が海外に拠点を移す、こういったことによって国内産業の空洞化が発生しないようなエコシステムを国内につくっていくという発想が必要不可欠ではないかと考えます。

続きまして、仲介業の業規制の内容について、こちらも一部のメンバーの方から既に御指摘がありましたが、改めて実務を見ている者としてコメントをさせていただきたいと思います。具体的には、仲介業に対する業規制の内容でございまして、28ページに書かれております、利用者からの金銭の預託を受けることを原則として禁止するというところでございます。こちら、注の101で「仲介者が取り扱う電子的支払手段はそれ自体決済手段であり、投資対象ではないこと等から、(暗号資産交換業等と異なり、利用者による機動的な売買を可能とするために)仲介者が別途利用者の金銭を管理することは通常想定されない」というような記載があるその一方で、最後に、「この点に関し、パーミッションレス型のステーブルコインを取り扱う場合、仲介者として金銭の預託を受けることが実務上必要となるとの意見があった」というようなところで、私ども、暗号資産取引を行う者の立場から、最後、こういった言及をいただいているというところについては感謝を申し上げます。

この点につきまして、実際に海外で行われている取引を考えますと、まずもって海外で広く流通しているステーブルコインにつきましては、1対1の価格対応で取引がされているわけではなく、基本的にはステーブルコインであったとしても、価格の変動が見られます。また、海外で広く流通しておるものは米ドル建てのものでございますので、本邦の利用者が取り扱う際におきましては、常に価格変動リスクにさらされるということになります。こうしたことから、本邦の利用者が利用する際には、相場の動向を見ながら、いつ交換するのかというタイミングを見計らって取引を行うということが恐らく一般化するのではないかなと思いますので、あらかじめ入金をいただいて、タイミングを見計らうことができるというような制度設計が必要ではないかと考えるところでございます。

最後に、今後、規制の細部を詰めるに当たっての方法論についてコメントを申し上げます。ステーブルコインにつきましては、海外では暗号資産の一部として位置付けられ、一般的に流通をしております。そのため、暗号資産交換業がその取扱いにつきましては、知見や経験を有しているというふうに考えます。実務的な取扱いにつきましては、今後、政省令あるいはガイドライン等におきまして議論を行うということと承知しておりますけれども、こうした下部法令等の検討に際しては、暗号資産交換業者を含めて技術的にも精通した人材から意見を幅広く聴取するような機会をぜひとも設けていただきたいと考えます。

コメントは以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。ほかにオブザーバーの方から御発言の御希望はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、メンバーの方も、2度目の御発言になりましても、今日時間がまだございますので、御発言いただければと思いますけれども、メンバーまたはオブザーバーの方で御発言の御希望ございますでしょうか。坂メンバー、御発言ください。

【坂委員】

ありがとうございました。御議論をお聞きしておりまして、何点かコメントを補足させていただければと思います。

まずステーブルコインに関して、発行者規制について少し御議論がございました。発行者規制の必要について検討する際には、一つは、暗号資産の分野において、かなり海外由来のものが詐欺に使われているという実態があるということ、また、かつて、今もそうなのかもしれませんけれども、海外発行のICO等についても多く問題があったことについて、きちんと振り返って、よく押さえて検討すべきと思います。

それから、仲介者が担保を行う場合に海外の発行者に日本の許認可取得を求めないこととしてはどうかという御議論もあったかと思いますが、仲介者が担保を行う枠組みを考えるときには、仲介者の資産保全が問題になると思いますし、そこで資産保全等が緩やかなものを認めるわけにもいかないと思います。仲介者の担保によるご議論の方向は難しいと考えます。

それから、前払式支払手段の払戻しについて御議論がありました。前払式支払手段について、転売防止のために払戻しを認めるという考え方はあり得ると思いますが、その際には例外的に払戻しをするということになるわけですから、そこで本人確認を求めるというのが、一つのあり方なのではないかと思います。

それから、御指摘ありました、利用者保護の形といいますか、要するに、使いたい者が使えないということについての配慮が必要だという御指摘をいただきました。これは確かに大事な視点かと思っておりますし、そういった視点も含めたバランスの取れた規律を考える必要があると思います。この点は、使いたい対象がどういったものであるのか、あるいは使いたいというニーズといいますか、姿といいますか、そういったものがどういったところにあるのかということを勘案しながら考えていくべき問題と考えます。

それから、最後に1点、イノベーションと規制ということについて。基本的にはこの2つを対立的なものとして捉える考え方があり、あるいはそういう側面も否定できないところはあろうかと思いますが、これとやや異なる視点として、イノベーションを促進する観点から規制を使っていくといいますか、位置付けるということも大事なところと考えます。規制の枠組みというのは、基本的には何らかの社会的課題あるいは金融分野においては金融制度上の課題があって、それに対応するものとして出てきているわけですから、そういった課題に対してどういった対応ができるのかということを法律的な観点からとともに、技術的な観点からもいろいろな開発をしていただくということが非常に大事なのではないかと考えております。

例えば一例ですけれども、今回、犯罪収益移転防止法上の本人確認が前払式支払手段で議論になっておりますけれども、基本的には必要があってこういった議論がされているわけで、これまでの議論をお聞きしておりましても、やはり本人確認を求めていくということがある意味、実効的な対策としては重要な点と考えられますし、これを法制という観点からだけではなくて、技術的にどれだけユーザーインターフェースのよい本人確認手段を開発していただけるのかということも大事な観点かと思います。そういった方向でのイノベーションの発揮をぜひ期待したいと考えます。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。ほかに御発言の御希望はございますでしょうか。

【端本信用制度参事官】

神作先生、1点補足よろしいですか。

【神作座長】

それでは、事務局から御発言、補足がございます。よろしくお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

1点、先ほど巽メンバーから御指摘があった、転売サイトのチャージの話なのですけれども、これは新たに出てきた論点ですので、若干捕捉させていただきます。今、自家発行型の前払式支払手段につきましては、チャージ残高が1,000万円以下の場合は資金決済法が適用されないということで資金決済法の規律は適用されません。この辺りについてどう考えるかという御指摘かなと受け止めましたので、御紹介させていただきたいと思います。ありがとうございます。

【神作座長】

どうも御補足ありがとうございました。それでは、IT連盟の木村様、御発言ください。

【木村オブザーバー】

発言をお許しいただきありがとうございます。先ほど本人確認についての発言をいたしました。今回の議論の流れを踏まえると、ユーザー、国民に本人確認手続をするということの促しをしていく必要もありますし、そのインセンティブの付与もまた必要なのではないか。そうしないと、AML/CFT対策の強化とキャッシュレス化の推進は両立しにくいのではないかと考えています。

一つの提案ですが、この報告案にも出てきていますように、前払式支払手段と資金移動業を同一のアプリ等でシームレスに運用している事業者は複数ございます。こうしたサービスの場合、例えば金融庁の事務ガイドライン等におきまして「資金移動ユーザーについては送金上限額を一律に設ける必要はなく、固有のリスクに応じて資金移動業者の裁量で対策とかモニタリングを行えばいい」といった書きぶりにすることで、例えば、本人確認をしてもらえれば、今までの前払式支払手段を使っているよりは、はるかに便利になるのだということを、業規制上も確認していくというようなこともあってもいいのではないかと考えます。

【神作座長】

御意見ありがとうございます。ほかに御発言ございますでしょうか。

尾崎室長、どうぞ御発言ください。

【尾崎マネーローンダリング・テロ資金供与対策企画課長】

すみません、1点。金融庁総合政策部のマネーローンダリング対策企画室長の尾崎でございます。

共同化に関して1点コメントを申し上げます。委員の先生方やオブザーバーの方から、共同化のサービスについても、高額電子移転可能型前払式支払手段の事業者も加えたほうがよろしいのではないかという御意見をいただきました。ありがとうございます。大変貴重なコメントだと思います。その点に関しまして1点、私のほうから。報告案の4ページにございますように、共同化の主な業務内容が2つございます。ア、制裁対象者とのリスト照合、イ、その結果を銀行に通知するということでございます。これは国連安保理制裁決議に基づきまして、我が国関係法令等で制裁対象者に該当している者、この制裁対象者とのリスト照合においては本人確認をしないとリスト照合はできないという点、これを1点コメントさせていただきたいと思います。

それから、2点目、疑わしい取引かどうかを分析し、その結果を銀行等に通知するという取引モニタリング業務もございます。これは当然、本人の過去の取引との比較もございますし、これがさらにこの後工程として、当局に対して疑わしい取引の届出の判断をするということになります。当局に対して疑わしい取引の届出を提出するには、やはりこれは本人確認済みの情報である必要があるという2点につきましてコメントをさせていただきます。

ありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。ほかに御発言の御希望はございますでしょうか。よろしゅうございますか。メンバーの方々からは、基本的に報告案に御賛同の御意見をいただいたものと存じますけれども、何点か具体的な修正の御提案等もいただいておりますので、少し時間をいただいて確認をさせていただきたいと思います。

まず第1に、12ページの注の40に関連いたしまして、この部分は、非常に重要で、本文に掲げるべきだという御意見のほか、注にとどめたままで、「将来的には」という文言を「引き続き」という文言に変えたらいかがかという御提案があったと思います。この点につきまして、事務局からコメントをいただけますか。そのような方向で修正することでよろしいでしょうか。

【端本信用制度参事官】

はい。

【神作座長】

それでは、「将来的には」という文言は「引き続き」という文言に改めるということとしてはいかがかと存じますが、御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。もし御発言ございましたら、ぜひ。

それから、2番目につきまして、国際的なステーブルコインについて何点か御指摘をいただいたと思います。報告案には注の何か所かに言及がございますけれども、米国の大統領金融市場ワーキング・グループの報告書について、それに対する批判的な意見もあるというような議論の状況についても注の中で記載してはどうかということでございます。31ページの注の43でしょうか、ここにそのような議論の状況についても記載をして、できる限り、客観的・中立的に米国の大統領金融市場ワーキング・グループ報告書を捉えているということを報告で示すということとさせていただきたいと存じますが、この点につきましても何か御意見ございましたら、おっしゃっていただければと思います。よろしゅうございますか。

それからあと、最後のところ、「おわりに」というところで具体的な御提案をいただいたかと思います。「おわりに」の2段落目、「今後」というところの第2文目でございますけれども、「実効性ある対応に向けて」というのをもう少し具体的に考慮すべき要素を明らかにしてはどうかという御提言をいただいたと思います。この点、イノベーションを阻害しないということと、それから、国際的な規制の動向に十分注意するということを具体的に書き加えてはいかがかという具体的な御修正の提案をいただいておりますが、この点につきましていかがでしょうか。

事務局から今の点についてコメントございますか。

【端本信用制度参事官】

例えばですけれども、「新たな制度の下で……協働し」の後に、「国際的な動向等も踏まえつつ、利用者保護を図りつつ、民間のイノベーションを促進する観点から」という、観点を明確にさせていただいてはどうかなと思いましたが、いかがでしょう。

【神作座長】

ただいま事務局から具体的な文言の修正提案がございました。メンバーの皆様、よろしゅうございますか。何か御意見ございましたら、ぜひ御発言ください。

【後藤委員】

すみません、後藤です。

【神作座長】

後藤メンバー、どうぞ。

【後藤委員】

ありがとうございます。今御提案いただいたとおりで結構でございますので、よろしくお願いいたします。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それから、ちょっと戻って恐縮ですけれども、注の40につきまして、IT連盟の木村様から御発言の御希望が出されておりますので、木村様、どうぞ御発言ください。

【木村オブザーバー】

ありがとうございます。注の40につきまして、井上先生から、注書きにおいて「将来的」ではなくより積極的な記載にということをお話しいただいていますが、ぜひ本文に載せていただいてはどうかと思います。私ども以外にもFintech協会様からも同じ意見がございましたし、井上先生はじめ委員の先生方からもそれを支持する意見があったと認識しています。今後の議論と、それを継続的に行っていくという観点からも、本文に書いてあるほうが意味合いとしてはより深いのではないかと思いますので、御検討よろしくお願いいたします。

【神作座長】

御意見どうもありがとうございます。井上メンバー、この点について何か御発言いただけますでしょうか。

【井上委員】

ありがとうございます。私は、この点については、もう少し前向きに述べてもいいのではないかとコメント差し上げましたので、本文に書くことについて賛成いたします。ただ、いろいろな意見がある中で御苦労されて調整したものかと思いますので、むしろほかの委員の方から御意見をいただきたいと思います。私自身は本文に上げることには賛成いたします。よろしくお願いします。

【神作座長】

ありがとうございました。どうかほかのメンバーの方からもぜひ御意見を頂戴できればと存じますが、いかがでしょうか。

一般的に申しますと、情報の有効利用のためには、注の40のような課題というのは、まさに今後の問題として取り組むべきではないかと思いますけれども、事務局からコメントございましたらお願いします。

【端本信用制度参事官】

この点なのですけれども、今、注の40ですと、引き続き検討することが考えられるのではないかとの指摘があったということで、御指摘は確かにいただいたのですけれども、他方でもう少し慎重に検討すべきだという御意見もこの審議の過程ではいただいていたと思いますので、そういう意味で注にさせていただいているということではあります。

【神作座長】
 メンバーの方から御意見がありましたら、御発言いただければと思います。特に御発言がないということは、現在の注のままでよろしいというご意見と受け取ってよろしいでしょうか。皆さんオンラインでお顔が拝見できず、皆さんの御意見の様子がちょっと分からないところがあるのですが、ぜひ御発言いただけると大変ありがたく存じます。森下メンバー、お願いいたします。

【森下委員】

私も注の40で示されたようなことというのは今後さらに高度化をしていく一つの可能性だとは思いますけれども、重要性は認識しつつ、報告案全体を取りまとめていくという観点から注にとどめておき、かつ引き続き検討するというような、事務局御提案の方向で私は十分いろいろな意義が達せられるのかなと考えておりますので、事務局の御提案に賛成いたしたいと思います。

【神作座長】

御意見どうもありがとうございました。ほかに御意見ございますでしょうか。

【河野委員】

恐れ入ります。河野です。意見をということなので、発言させてください。

【神作座長】

河野メンバー、どうぞ御発言ください。

【河野委員】

私も、事務局取りまとめのとおり、注にとどめておいていただければと思います。先ほども発言させていただきましたけれども、今後に向けて制度を本当に実行していくためにはまだまだ検討が必要であって、あくまでも検討課題の中の一つであるという、そこでさらに今後に向けてどういう形がいいのかというところで今回注にとどまっているというふうに思っておりますので、私は事務局提案に賛同いたします。

【神作座長】

どうも御意見ありがとうございました。末冨メンバー、どうぞ御発言ください。

【末冨委員】

ありがとうございました。末冨でございます。今御指摘がありました注の40について、私自身は将来的にこの注に書いてあるようなことについても共有できるような形になれば、より犯罪防止につながるのではないかという意見を申し述べさせていただいておりましたので、本文に上げることについて私自身は賛同いたします。しかしながら、全体的な議論を見ますと、やはり金融機関のほうではなかなか情報を保護するという、特にお客様の情報を保護するということから、この点についてはまだハードルが高い部分があるように承っておりますので、議論全体を見た上での結論ということで、それが本文に上がらなかったからといって異議を差し挟むものではございません。

中途半端な意見になってしまいましたが、以上でございます。

【神作座長】

貴重な御意見ありがとうございました。ほかに御意見ございますでしょうか。

【西川委員】

西川でございますが、意見を申し上げてよろしいでしょうか。

【神作座長】

西川メンバー、どうぞ。

【西川委員】

まずAML/CFTの観点からすると、個人情報もしくは特定の情報を共有した上で、犯罪者もしくは不適切な取引を抽出するというのは非常に有効な手段であることは、論を待たないと考えております。一方で、今回の審議会の議論の中では、それは前提としながらも、日本の金融の文化とか社会的習慣の観点からは段階的でないといけない、つまり、強制的に個人情報を吸い上げて管理するような社会風土にいきなり移行するということを是としない、非常にモデレートな対応を行うということで議論を行ったと認識しており、それらを非常に有効な手段ということを認識しつつも、今の時点では事務局案のとおり、報告案の注に記録しておいて、リスクに応じて適切なタイミングで対応を検討するというのが現実的だと考えております。

西川からは以上です。

【神作座長】

貴重な御意見、どうもありがとうございました。ほかに御意見ございますでしょうか。

それでは、ただいまいろいろと貴重な御発言、御意見をいただきましたけれども、注の40につきましては、注のままにとどめておき、恐らく注のままとどめておいても意図は十分に通じると思いますが、ただ、「将来的には」という文言はもう少し接近した将来を示すという意味で「引き続き」という言葉に改めるということとさせていただきたいと存じます。

それから、オブザーバーの方々からは、本日も報告案の御提案に対して御批判、反対の御意見等をいただいたかと思います。この報告案では、そういった御意見についても注で記載させていただいていると存じます。金銭の預託等については、例えば28ページの注の101の最後の1文でこのような御意見もあったと記載されています。また、敷居値等につきましても、例えば46ページの注の149でこのような御意見があったということを記載していただいております。他方、先ほど御承認いただいた修正を施した上で、原案の形で取りまとめることにつきまして、メンバーの皆様からは、基本的に御了承いただいたと思います。

先ほどの2点の修正点を含む報告の原案について、メンバーの皆様からはコンセンサスが得られたと考えております。もちろん、これから細かい表現や記載の最終的な調整がなされると思いますけれども、基本的には先ほどの2点の修正を加えて、本報告に、表現や記載の最終的な調整をした上でメンバーの皆様に個別に御確認いただきたいと思います。最終的な調整については、私に御一任いただき、公表させていただきたいと存じます。このような方法でこの報告を確定するということについて御異論ございませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)
【神作座長】

どうもありがとうございます。それでは、本日いただいた御意見もできる限り、最終的な調整の中で反映し、それで、メンバーの皆様には個別に御確認いただくということとさせていただきます。本当にありがとうございました。そのように進めさせていただきたく存じます。

それでは最後に、古澤企画市場局長より一言お願いいたします。

【古澤企画市場局長】

古澤でございます。本ワーキング・グループにおきましては、5回にわたりまして、報告のニュアンスも含めて丁寧に御議論いただきまして、本当にありがとうございました。座長をはじめまして皆様方の御協力、御検討をいただきましたことに厚く御礼を申し上げます。

本日御議論いただきました報告案を踏まえまして、事務局といたしましては、早急に法律改正を含めた制度整備に取り組んでまいりたいと考えてございます。併せまして、本日様々多岐にわたる実務面、それから、概念整理を含めまして大きな宿題をいただいていると思います。海外の動向も見てまいりたいと思います。引き続き皆様方に御指導いただきながら議論を進めてまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日のワーキング・グループを終了いたします。誠にありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室(内線3572、3556)

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