金融審議会「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」(第3回) 議事録
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1.日時:
令和3年4月7日(水)16時00分~18時00分
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2.場所:
中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室
令和3年4月7日
【黒沼座長】
定刻になりましたので、ただいまより「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」第3回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。
本日の会合も、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインでの開催とし、一般傍聴はなしとさせていただいております。また、メディアの関係者の方々は金融庁内の別室にて傍聴いただいております。
議事録は通常どおり作成の上、後日、金融庁ウェブサイトに掲載させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
これまでと同様でございますが、2点、注意事項がございます。まず、御発言されない間は必ずミュート設定にしていただくようお願いします。御発言される際にミュートを解除いただき、御発言が終わられましたら、再びミュート設定にしていただくようお願いいたします。
次に、御発言を希望される際は、オンライン会議システム上のチャット上にて、必ず全員宛てにお名前または会社名などの組織名を御入力ください。そちらを確認して、私が指名いたしますので、御自身のお名前を名乗っていただいた上で御発言ください。
それでは、議事に移ろうと思います。本日は「高速取引行為と最良執行のあり方」、「PFOF(Payment for order flow)の取扱い」について御議論いただいた後、「取りまとめの方向性」についても御議論、御審議をお願いしたいと思います。
具体的には、前半は、事務局から資料の説明をした後、お手元の資料25ページの「Ⅳ 検討課題」について議論を行い、後半は、27ページの「Ⅴ 取りまとめの方向性」について事務局から説明をした後、議論を行いたいと思います。
本日は、このような流れで進めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
それでは、事務局より説明をお願いします。
【繁本市場業務監理官】
企画市場局市場課の繁本でございます。それでは、お手元の資料に沿って御説明させていただきます。
まず、資料、1ページから4ページまでは、前回、第2回会合におけるメンバーの主なコメントを整理しております。それぞれ最良執行方針等とSORとの関係、SORに付随する利益相反構造、最良執行方針等とダークプールとの関係、その他ということで整理させていただいています。内容については、ちょっと分量も多いので、本日は説明を割愛させていただきます。
6ページからが、本日のテーマの1つ目「高速取引行為と最良執行のあり方」についてでございます。
まず、6ページ、7ページでは、現行の高速取引行為に関する規制が議論された際の議論、あるいは、それを受けて導入された規制について説明させていただいています。6ページでございますが、当時の議論としましては、高速取引行為については、市場に流動性が供給されている、あるいは流動性が厚くなることでスプレッドが縮まり一般投資家にもその恩恵が及んでいるといった指摘もある一方で、市場でのイベントに加速度的に反応し、市場を混乱させるおそれがある、あるいは不公平感を与え一般の投資家を市場から遠ざけてしまうおそれがある、あるいは高速取引行為が短期的な取引戦略が多いため中長期的な企業の収益性に着眼した価格形成が阻害されるおそれがある等々の懸念も指摘されたところでございます。こうした議論を踏まえて、6ページの下にありますように、高速取引を行う者に対し、登録制を導入した上で、体制整備・リスク管理、当局への情報提供などの枠組みが整備され、2018年から施行されております。7ページは、その具体的な中身でございますが、詳細は省略させていただきます。
8ページ、9ページは、高速取引行為者として登録している者の一覧等でございます。
10ページは、高速取引行為者が取引戦略、どのような戦略を届け出ているのかといったことで紹介しております。
11ページを御覧ください。11ページは、昨年10月に金融庁の金融研究センターがディスカッションペーパーを公表しておりまして、この中でHFTの特性分析といったものをしておりますので、その概要を御紹介させていただきます。まず、全体の調査の中で、注文総数の約70%、売買代金の約45%がHFTによって占められていた。HFTは、幅広い銘柄で取引をしていた。取消し注文を多用する傾向があった等の傾向が指摘されております。また、下のほう、個別の銘柄、トヨタ株でさらなる詳細な分析をした結果でございますが、HFTは相場動向に左右されず、株式市場に流動性を供給している。2つ目のポツですが、最良気配値付近に薄く注文する傾向があった。3つ目のポツですが、最良気配値の約3割はHFTのみで構成されていた。4つ目のポツ、HFTが積極的に株式相場を下落させるような取引行動は観測されなかったといったところが報告されております。
12ページからが本日の議題でありますレイテンシー・アービトラージと、その対応策でございます。
一番上、レイテンシー・アービトラージとはということで、参考文献から引っ張ってきた定義でございますが、市場参加者などの認知・決定・行動の時間差から生じる価格差や需給量変化を狙った取引ということでございます。具体的には、その下でございますが、例えばα投資家、これは一般の投資家ということでございますが、例えば一般の投資家が、まず、あるAという取引施設に発注し、A取引施設において約定しなかったために、その注文を取り消した上で、別のB取引施設に注文を回送するといった場合に、A取引施設の板を見ていたβ投資家、これはHFTなどということですが、こちらにレイテンシー・アービトラージの機会が生じるということで、下の図にありますけれども、A取引施設で一旦、買いの注文を一般の投資家が出していたけれども、A取引施設の中で100円での売り注文が出ていないという場面において、別のB取引施設で100円での売り注文が出たという場合に、このα投資家の注文は、一旦、A取引施設の注文を取り消して、B取引施設に注文を出し直そうとするわけですが、先にβ投資家が100円で買い注文を入れてしまって、100円の売り注文が消えてしまう。α投資家の注文がB取引施設に行った頃には100円の売り注文はなく、逆にβ投資家が101円で売り注文を出しているという状況だと。そこで約定すると、β投資家が差額の1円掛ける1,000株分の利益を得ることができる、そういったものでございます。下にありますように、ただし、必ずしもA取引施設におけるα投資家の注文が取り消された後、必ずB取引施設に回送されるとは限りませんので、β投資家は、予測に基づきリスクを取って、こういったレイテンシー・アービトラージを行っているというものでございます。
13ページでございますが、最良気配のある市場に注文を順次回送するということを徹底すると、注文がどのように回送されるかという予見可能性が高まるため、レイテンシー・アービトラージの機会が生じやすくなるという指摘がございます。実務においては、こうしたレイテンシー・アービトラージに対抗するため、例えばIOC注文、複数の取引施設への同時発注といった対応策がブローカーである証券会社において採られているようでございます。
14ページ、IOC注文、Immediate Or Cancelという注文方法でございますが、こちらは即時に約定可能な注文以外は自動的にキャンセルして、いわゆる板には載せないという注文方法でございます。そのようにいたしますと、α投資家がA取引施設の注文をIOC注文にすれば、A取引施設の板に載りませんので、β投資家によるレイテンシー・アービトラージを回避することができるというものでございます。ただし、下のほうにございますが、α投資家の注文が大口注文である場合、β投資家は、A取引施設において小口の売り注文を出しておけば、そこで小口の売り注文とα投資家の買い注文が約定いたしますので、それによってα投資家の大口の買い注文がその裏にあるということを察知できれば、それが後々B取引施設に回送されるということを予測して、レイテンシー・アービトラージを行うことができる場合もあるということで、IOC注文さえしておけば完全に回避できるというものではないというものでございます。
同様に、15ページ、複数の取引施設への同時発注でございますが、こちらは、α投資家の注文をA取引施設とB取引施設に同時に発注することにより、レイテンシー・アービトラージを回避するというものでございますが、こちらにつきましても、同時に発注してもA取引施設とB取引施設への注文の到着時間に若干のずれがございますので、この若干の時間差を利用して、高速取引ができるβ投資家がレイテンシー・アービトラージを行う場合があるということでございます。これに対して、さらに実務上、これを避けるためにA取引施設に対する注文とB取引施設に対する到着時間が可能な限り同時になるように、若干、発注時間をずらすといった対応策を採用している証券会社もあるというふうに承知しております。
続きまして、PFOF(Payment for order flow)の取扱いでございます。17ページを御覧ください。PFOFとはということで説明しております。下の図を御覧いただきながらお聞きください。まず、投資家、主に個人投資家からの注文がブローカーである証券会社に入りますと、この証券会社がマーケットメイクをしている証券会社に対して委託の取次ぎという形で注文を回送する。それから、マーケットメーカーである証券会社は、自己勘定で対当するか、取引所に取り次ぐかといったことは自分で選択する。委託の取次ぎをしてくれたブローカーに対しては、リベートがマーケットメーカーから支払われる。多くの場合、このリベートを原資にブローカーである証券会社は、一般の投資家からの手数料は無料にしているといったような慣行がアメリカでは広く行われております。
なお、アメリカの場合、ナショナルマーケットシステムで提示される最良気配よりも不利な価格での約定は禁止されておりますので、マーケットメーカーは、自分で対当する場合であってもNMSの最良気配か、それよりも投資家にとって有利な価格を提示するということにはなります。こうした注文執行方法は、アメリカでは以前からあったというものでございます。
このPFOFに対する海外の規制、18ページでございます。アメリカにつきましては、投資家への情報提供を前提に許容されております。例えば口座の開設時ですとか、約定報告書等の中で情報提供を行っているということでございます。アメリカの下のほう、※印でございますが、昨年の12月にSECが、このPFOFを行っているネット証券会社の最大手であるロビンフッド・フィナンシャルに対して、このPFOFに関する情報提供が不適切であったなどとして6,500万ドルの制裁金を課しております。また、ロビンフッド・フィナンシャルにつきましては、本年に入りまして、一部の銘柄について顧客からの注文を制限した点について、様々な問題が指摘され、本年2月、3月にはアメリカの議会で本件に関する公聴会が開催され、SECにおいてもPFOFについて調査を行うといった意向が表明されていると承知しております。
EUにつきましては、顧客の注文を特定の取引施設、あるいはマーケットメーカーなどに回送する場合においては、利益相反又は誘引に関する規定に反してリベートなどをもらってはいけませんよという規則がMiFIDⅡの中で定められております。
それから、オーストラリアにおきましては、PFOFによるマーケットメーカーからのリベートが、投資家がブローカーに対して支払う手数料を上回った場合は駄目ですよといったような規制がかかっているようでございます。
なお、EUの規定について、英国規制当局の運用を見ますと、19ページでございますが、イギリスの規制当局は、2012年に、まずPFOFの問題点等を示したガイダンスというもの、下にございますが、こちらを公表した後、2017年にPFOFはMiFIDⅡの規定に違反するという見解を公表しております。そのガイダンスでございますが、詳細は省略いたしますが、総じて言えば、メリットは非常にあっさりしている一方で、デメリットを強調した、例えば利益相反が生じ得るとか、顧客にとって不利な価格である可能性がある等々のデメリット、ややPFOFに懐疑的なガイダンスのように見られるところでございます。
20ページは、ただいま申し上げた点を一覧にしたものでございます。
21ページでございます。PFOFに関するに日本における取扱い等でございます。一番上の丸ですが、現時点において日本でPFOFを実施している例は認められておりません。これにつきまして、日本で、例えば手数料の値下げ、無料化につながる、東証の最良気配と比べれば価格改善効果がある場合がある、あるいは約定可能性が高い場合があるといった主張も考えられ、だからPFOFをやってもいいんじゃないかという主張も考えられるところではございますが、下の丸にございますように、最良執行の観点から問題が大きいと考えられます。具体的には、まず利益相反でございまして、証券会社が自己の利益のために顧客の利益に反してマーケットメーカーに対して注文を回送し得るという利益相反、さらには、証券会社が顧客の利益よりもマーケットメーカーの利益を優先した行動を取るおそれもあるというところでございます。また、②ですけれども、SOR等で注文執行する場合と比べますと、顧客にとって最良の価格で約定するとは限らないといった点からも問題が考えられるところでございます。
22ページは、PTSも含めてですけれども、参考としてダークプール等との比較ということで、例えば自社の運営するダークプール等において、マーケットメーカーの手数料を高額に設定し、投資家の手数料を無料に設定する場合には、PFOFと類似の利益相反構造があると考えられます。実際、こういった価格設定にしている取引施設もあるというふうに承知しております。2つ目の丸ですが、ただし、ダークプール等の場合、証券会社は顧客であるマーケットメーカーから手数料を受領しているという点が、PFOFの場合、顧客の側である証券会社がマーケットメーカーからリベートを受領しているということで、証券会社とマーケットメーカーの間のサービスの方向が違っているということで、その点が異なっております。また、ここには書いておりませんが、マーケットメーカーがPFOFの場合、基本的に一社がマーケットメーカーということになりますが、ダークプール等の場合は、複数のマーケットメーカーが気配を競い合っているという面も大きく違う点かとは考えられます。なお、ダークプールにつきましては、現在、透明性の確保に向けた規制の導入準備が進められているところでございますので、今後、ダークプールの実態把握の中で、こうしたダークプールの運営の問題があれば、また検討するということかと考えられます。
23ページは、PFOFのまた別の論点でございまして、PFOFというのは、マーケットメーカーが相対取引で約定してしまうことも多いと考えられますが、こうした場合には気配情報が公表されないため、市場における価格発見機能が低下する可能性があるとの指摘がございます。なお、同様の問題点は、ダークプールも気配情報の公表義務がないために指摘されておりますが、若干違いがあるとすれば、ダークプールの主な利用者が機関投資家であるのに対し、アメリカ等の例を見ますと主として個人投資家の注文がPFOFによりマーケットメーカーに回送されているといった違いはあるかと思います。
以上を踏まえて、25ページ、検討課題でございますが、まず1つ目、高速取引行為と最良執行のあり方でございます。高速取引行為者とその他の投資家との間にスピード格差があることを踏まえ、一部の証券会社においてはレイテンシー・アービトラージへの対応策が既に採用されておりますが、こういった取組みをほかの証券会社にも促すということについて、御意見をいただければ。それから、2つ目の矢尻ですが、こういった対応策を採用している場合に、顧客に対してどのように説明すべきか、あるいは最良執行方針等にどのように記載すべきかという点について、御意見をいただければ。
2ポツ、PFOFの取扱いでございますが、ただいま説明した最良執行の観点及び市場における価格発見機能の観点から指摘されている点に加えて、何か検討すべき論点等があれば御指摘いただければと思います。また、PFOFを禁じていないアメリカにおいても、先ほど申し上げたように規制の見直しが進められております。日本においても諸外国における今後の規制動向等を踏まえ、機動的に検討を進めるということも考えられますが、これについても御意見を頂戴できればということでございます。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からの説明を踏まえて、25ページのⅣ、検討課題について御議論いただければと思います。今回も多くの委員に御発言いただく機会を確保する観点から、御発言の時間は3分を目安にしていただければと思います。2分を過ぎますと、事務局から発言時間の残りが1分である旨のチャットが全員宛てに送付されますので、発言時間の参考にしていただければと思います。
それでは、御議論をお願いできればと思います。それでは、大和総研の横山様、早稲田大学の宇野先生、野村證券の辛島様の順で御発言いただきたいと思います。横山様、よろしくお願いします。
【横山委員】
黒沼先生、ありがとうございました。また、事務局の皆様、丁寧な御説明ありがとうございました。大和総研、横山でございます。ちょっと手短にポイントを中心にお話しさせていただきたいと思います。
今回の御指摘いただいた問題というのは、ある意味、現状、1か所に取引が集中している中では顕在化しにくい問題について、今後、市場間競争が活発化していった中で問題が顕在化してくる可能性がある。そうした中での言わばフォワードルッキングな対応ということを考えようということではないかと理解させていただいております。そういった状況ですので、具体的に何が起こるかというのは正直分からない中での議論になってしまいますので、基本的にはプリンシプルベースといいますか、基本的な方向性といいますか、そういったところが中心というふうに考えるべきかというふうに思っております。
高速取引のほうにつきましていただいた検討課題でございますけれども、私は、高速取引行為、即、悪玉というような考え方にはくみしたくないと思っておりますが、ここにあるような問題について、何らかの対応を各会社さんがいろいろ工夫されるということ自体は、それは当然あってもいいことかと思います。ただ、言わば現時点でフォワードルッキングに見ている中で、ある特定の方向性を無理に促していくというのは、やや時期尚早かなというふうに思っております。むしろ、基本的な考え方としては、対高速取引について、こういったサービスをしていますということをお客様がちゃんと認識して、その中で例えば手数料等とかとの兼ね合いで選択ができる、そういった環境を整えることが、まずは第一歩なのかなというふうに考えております。もちろん、その際にあまり詳細な開示をし過ぎると、今度は、逆に裏をかかれることになるかと思いますので、内容的には基本的な方針といいますか、考え方を開示するというところかと思っております。
PFOFのほうにつきましては、もう少し根深い問題かと私は思っておりまして、と申しますのは、言わば表向きの価格と裏の価格が存在する、それを悪用するというふうな懸念を考えたときには、やはりPFOFの透明性の確保というところをしっかり考えていかなければならないのではないか、と考えております。私の考えは、少し行き過ぎかもしれませんが、せめて最少単位の注文・気配につきましては、掛け値なしで提示するのが本来の姿かなというふうに考えております。最低限、やはり最良執行を価格と手数料含めたコスト面でしっかりと実現していただかないと、ここに懸念されているような最良執行や価格発見機能に対する問題点というのは解消されないのではないかというふうに懸念しております。
以上でございます。ありがとうございました。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、宇野先生、お願いします。
【宇野委員】
宇野でございます。それでは申し上げます。
まず、HFTとの共存という観点に関して言いますと、リアルタイムで最良気配がどこにあるかを踏まえて行動しているのはHFTだというふうに考えることができると思います。そして、御紹介にあったようなレイテンシー・アービトラージのような行動を仕掛ける能力を持っているということも事実ですので、今回、個人投資家にSORのような機能を提供するに当たっては、こういった環境、高速取引業者の行動を踏まえた形でSORの機能を提供することを促していくということが重要ではないかと思います。そうでないと、ある意味で高速道路に自転車で入ることを促すようなことになってしまって、かえって、今回やろうとしていることが悪い結果といいますか、いろいろな混乱を招くことにもなりかねない。そういう意味では、SORというもののデザインの中で、こういった高速取引業者と共存していく上でのリスクに対処するということの説明、あるいは機能の提供ということは非常に大事になっていくかなと思っております。個人投資家がHFTの存在に対して不安、あるいは不満を持っているということに関して言いますと、執行におけるスピードにおいて高度なSORが個人投資家にも活用できるようになるということは、その意味でのギャップを少なくする、縮めるという効果もあるわけで、そういう意味では、提供されるサービスの質というのはやはり重要になってきますので、そこに対する注意喚起みたいなものは必要かなと思います。
Payment for order flowに関して言いますと、私は、Payment for order flowというのは、オーダーフローの流れ、オーダーがどこに流れていくかという点に対して、価格以外の要素が導入されるということを意味しているというふうに思うんですね。そういう意味で、今回、市場にある価格を重視して、これに基づいて注文が流れるという方向に今の市場の在り方を変えようとしている中で、それ以外の要因をここで同時に導入するということは非常に混乱を招きかねない。そういう意味では、現状、PFOFは日本では実施されていないということに立つとすると、現状でこのことを同時に認めるとか、拡大するとかいうようなことは混乱を招くのではないか。将来、今回、検討している事項が定着した後で、そういった政策がさらに市場の効率的な機能を高度化することが期待できるということについては、改めて議論したほうがよいのではないかと思っております。
以上です。ありがとうございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。次に辛島様、お願いします。
【辛島委員】
野村證券の辛島でございます。よろしくお願いいたします。
横山委員の御発言とちょっと重なるところもあるのですが、まず、1点目の高速取引につきましては、資料12ページの記載にもございますが、公表情報から得た予測に基づいてリスクを取って行っている行為であるのであれば、善悪論から単純に悪と決めつけるのはあまり冷静な態度ではないとは思っています。ただし、気をつけなければいけないのは、例えばトレーディングベニュー側で予測の精度を上げるための特別な情報を、例えばちょっと早めの気配情報を提供したりとか、あるいは特定のマーケットメーカー、これも気配の質がいいという観点で選んでいるのだったらいいとは思うのですけども、何らか別の要素で特定のマーケットメーカーに優先的に取引できるような仕組みを用意するといったような、レイテンシー・アーブをやりやすくための仕掛けをベニュー側が用意してあげるというようなことがあれば、ここはやはり投資家間の公平性の問題が生じてくるのではないかと思います。これは、どちらかというと、回送側の証券会社の問題というよりも、ベニューをどう監督していくのかという観点から考えていくべきなのかなというふうに思っております。
また、SORの動作につきましては、証券会社は、自社の顧客がレイテンシー・アーブによって不利にならないように努力する、これは当然のことであって、ある意味、売りになるポイントだろうというふうにも思っています。一方で、あまり細かいアルゴリズムを開示するということに関しては、やはりアービトラージャーに対して手の内を明かしてしまうということになりますので、制度として求める範囲としては、SORの動作については概略を開示するということで、詳細なところに関してどこまでを開示するのかということは、各社に委ねていただきたいかなというふうに思っております。
2つ目のPFOFに関してですが、資料は、基本的にマーケットメーカーと証券会社との関係で説明されておりますけれども、やはり気になるのはトレーディングベニューを経由して支払われる形態ということで、日本の場合ですと今現在はPFOFは行われていませんが、多分、トレーディングベニューがセットになった形で何か起きてくる可能性があるなというふうには思っていますので、これをまず考慮しておくべきかなと思います。その場合は、やはり単純にSORを使っていれば最良執行は保たれるという考え方というよりも、証券会社のSORのロジック、それから、回送先のベニューの取引制度、そこに参加するマーケットメーカー、ここをセットで見て、特定のマーケットメーカーに最終的に注文が集中していくような構造になっていないかというのを見ていく必要があるのかなというふうに思っています。
あと、もう一つ、PFOFを前提にして手数料無料、まさにロビンフッドの形態ですけども、手数料無料をうたうというのは投資家を誘引する強い言葉でありますので、実際には裏側でスプレッドの形で支払っているということから、単に手数料無料とうたうだけであれば、有利誤認というふうにもなりかねないかなというふうに思います。
ただ、今の日本では、まだPayment for order flowに関しては始まっていないという状態ですので、今現在から直ちに禁止しますとか、強い規制をかけるというよりは、もしやるのであれば、投資家にきっちりと開示してくれということをまず求めて、その上で弊害が顕在化する兆しが出てきた場合には、次の手を打っていくというような順番でいいのではないかなというふうに思います。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。続いて久保様、清明様、清水先生の順で御発言いただこうと思います。久保様、お願いします。
【久保委員】
ありがとうございます。フィデリティ投信、久保でございます。
早速でございますが、まずは高速取引のほうでございます。レイテンシー・アーブですけれども、HFTにつきましては、私どもも機関投資家として流動性を市場に厚く供給する投資家として、現時点においては欠かすことのできない存在という認識をしております。一方で、レイテンシー・アービトラージということについて言いますと、現場のトレーダーの話では、それほど大きな問題というふうには、今のところ印象としては持っていないということは聞かれたものの、その他ある各種戦略とは少し性格が異なる、これ、アービトラージというんだろうかというような印象も持っているという一方での見方がございます。もちろん、価格をいち早く発見して、それをいち早くアクションに起こせるという能力の力かもしれません。ただし、先ほど説明でもありましたけども、回送の可能性をより強めれば強めるほど、レイテンシー・アーブから見れば、リスクは低下して確実な利益機会、しかも、ほかが追いつけないスピードでの確実性がどんどん高まる利益機会になっていって、事実上、不公平感、あるいは不公正感というようなレベルにもなりかねないということを懸念する部分があろうかと思います。したがいまして、そのものを禁止するということではないんですけども、やはり皆様が仰るようにSORを通じて、ある程度、レイテンシー・アーブに対する対応策というのが取られるということについては一定の必要性はある。それから、そのSORに係る開示につきましては、これも皆さんと同様で、ハイレベルでの開示に現時点ではとどめてよいのではないか。
PFOFについてですけれども、こちらは、正直言いまして、1980年から始まったという時代背景からして、利益誘導が商慣習として、まだ別に一般的に行われていた時代からずっと続くもの。それが、いろいろな問題が指摘されることで、規制が重なっていって現在に至っているというふうに見て取れると思います。我が国においては、まだそういった商慣習がない中で、先ほど辛島さんからもお話があったかと思いますけども、あえて新たな取引の形態として導入する、あるいは進めているという価格発見だとか、手数料無料のメリットとかということ、これ、手数料メリットとは私は全く思いませんけども、そういったことをあえて導入するという考えを現時点で取る必要は、正直、全くないと言ってもいいのではないかというふうに思っております。
以上でございます。ありがとうございました。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、清明様、お願いします。
【清明委員】
マネックス証券の清明でございます。御説明ありがとうございます。私ども個人投資家向けネット証券ですので、今日も個人投資家という点に主眼を置いて発言させていただきます。
まず、1つ目のHFTに関してなんですけれども、IOC注文等を含めた通常のSOR運用を行っている場合においては、個人投資家がレイテンシー・アービトラージの対象になる可能性は少ないのではないのかなというふうに思っております。2つ理由がありまして、1つ目は、そもそも個人投資家の取引は、ルールが非常に少ないために予測することが難しいので、ターゲットになりにくいのではないか。2つ目が、レイテンシー・アービトラージというよりも、HFT自体は、恐らくビッド・オファー・スプレッドなどをターゲットにしていることが多いのではないのかなというふうに考えています。とはいいましても、過去に問題視されたようなタイムインフォース注文など、そういった特殊な仕組みをつくると狙われやすくなりますので、そういったものは避けるべきかと思っております。なお、HFTの収益源につきましては、マーケットメイクをしていることから起因しているものが多いのではないかと思っていまして、そうやって流動性を提供いただいていることは、個人投資家にとってもプラスである点もとても重要ですので、そういった仕組みを理解いただけるような形になりますと個人投資家の不信感や不安感も払拭できるのではないかなというふうに思っております。
2つ目の開示のところについては、先ほど来から出ておりますとおり、ハイレベルな開示がいいかなと思っております。
それから、2つ目、PFOFにつきまして、こちらアメリカで導入されているということですけれども、まず、念頭に置かなければいけないのは、アメリカの市場環境と日本では大きく異なっている点ということかと思います。アメリカにおいては、取引所やPTSも数多く、それぞれ相応に流動性もある中で、日本と異なって分散市場の構造になっています。また、それがゆえにナショナル・ベスト・ビッド・アンド・オファーが提示されていて、その中でブローカーは最良執行義務を負っていて、その行為規範というものが明確になっています。その中でブローカーは、自社で最良執行の考え方、PFOFの相手であるマーケットメーカーの選定理由、ポリシーをしっかりと定め適切に開示するということをしています。かつ、そのポリシーに従ってエグゼキューションなされているかを定期的にチェックし、また、恐らく必要に応じてマーケットメーカーを入れ替えたりとか、さらには、ベストエグゼキューションだったかを評価する第三者機関を活用するなどもしております。そうやってブローカー側の負担といいますか、コストも大きいというような状況になっていますが、先ほど申し上げました米国の市場構造や、それがゆえに板取引も一定割合にとどまっている環境等に鑑みまして、現状のようなPFOFが導入されているという状況に至っているものですから、日本において、今、導入するかという議論をする前に考えなければならないことがまだあるんではないかなというふうに思っております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。では、次に清水先生、御発言お願いします。
【清水委員】
清水です。
まず、高速取引行為とレイテンシー・アーブについてですけれども、これは、冒頭、横山委員もおっしゃっていましたが、仮にもし市場が1つであれば、市場が1つがいいと思って申し上げているわけではないですけれど、市場が1つであればレイテンシー・アーブは起きませんし、HFTは単に早い投資家にすぎないというふうに理解しています。HFTが登場してから、どこの国でも取引のスプレッドはかなり大きく縮まっていますし、市場に対するメリットも大きなものがあると考えています。その一方、HFTが登場した結果、証券市場の取引コストの性質が変わってきているのではないかと考えています。すなわち、昔は広いスプレッド、つまり、高い取引コストだけれども、確実なスプレッドだったと思います。確実なスプレッド、つまり確実な気配ですね。HFTが登場したことで、スプレッドは大きく縮まって、取引コストは小さくなった反面、気配については、キャンセルが増えて気配の不確実性が高まったり、あるいはレイテンシー・アーブのような形で、板に取引が出ているように見えけれども、そちらの市場に回ってみると、1つ繰り上がった気配に切り替わっていて、想定した気配で取引が取れなかったというような不確実な気配という取引コストに変化しており、昔と今とではそこが見合いになっているんじゃないかと考えています。このように市場コストの性質が変わったわけですから、確実で広い気配だったところから、不確実で狭い気配になったこと、どっちが得か損かというのは実証してみないと分かりませんが、これに対して市場参加者が対応していく必要があるんだろうと考えていますので、対応としては、皆様がおっしゃっているように、SORであるとか、いろんな形で対応していただくしかなくて、そのためには、ある程度、時間がかかるのではないかと理解しました。
それから、PFOFについてですが、これは、私も問題があるケースについては少し厳しい見方をしたほうがいいんじゃないかという考えです。手数料は、言わば料金体系ですが、様々なところで料金体系が複雑であったり、いろんな割引をつけたりして、一見、消費者にとって得なように見えて、実は複雑化が進んで消費者に理解されなくなるというような事例が、一般の商取引でもよく見られることだと思います。証券市場は、そうでなくてもかなり複雑なところであって、一般投資家から見て敬遠されがちですが、証券市場が大原則として重視しなければいけないのは、一般投資家の長期投資による資産形成の場として、ある種の分かりやすさのようなものを維持することがかなり重要なんじゃないかと考えています。PFOFは、前回も御指摘があったように、こういうものを幅広く認めていきますと、実質的な手数料水準が分かりにくくなるとか、執行価格が本当に最良気配だったのかどうかが分かりにくくなるとか、あるいは投資家とブローカーの間に利益相反が発生しそうだとか、それから、ベニューと証券会社の間にもある種の内部補助のようなものが出てきてしまっているように見えるとか、そういう意味で、一見、割引のように見えて手数料無料というのが、ロビンフッドの例も出されましたが、必ずしも消費者、投資家にとっていいとは限らないと考えます。
長くなって失礼しました。
【黒沼座長】
ありがとうございました。続きまして、永堀様、内田様、上柳先生の順に御発言いただきます。永堀様、よろしくお願いします。
【永堀委員】
よろしくお願いいたします。モルガン・スタンレー証券、永堀でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。
まず、高速取引行為と最良執行のあり方というところですが、横山委員のほうからもお話しいただきました通り、今回の金融庁におけるタスクフォースでは、コンセプトであったり、ガイドラインといったような大きな命題の部分を、ここで議論させていただいた上で、その詳細については、各々の市場参加者が、それをどう準拠していくかというところなのかなと考えております。そういったことからも、証券会社に対して、その対応を促進していくか否かというところは、各証券会社に委ねるべきではないかと考えております。また、アンチゲーミング機能については、当社もかなり多くの機能を装備しておりますが、証券会社における執行サービスの一つだと考えており、この部分を全ての証券会社に義務化していくというよりは、その証券会社のサービスを投資家側が選択できるようにしていくというのが一つの方法と考えております。
また、レイテンシー・アービトラージの対応策に対するお客様への説明というところですが、こちらは、辛島委員も、また久保委員もおっしゃられたとおり、詳細の部分は、いわゆるリバースエンジニアのリスクもあるということから、やはり概略のところを中心とした記載にとどめるべきと考えております。
また、PFOFの取扱いというところですが、こちらは、今回の資料の21ページにもお話しいただいているところでしっかりとポイントが示されておりますので、私どもも、これがまさに検討すべき点であると考えております。それから、日本における法整備というところも、今、まさに、この資料にも書いていただいているとおり、米国において、規制の見直しが進められているところでございますので、本邦においても海外の状況を鑑みながら、機動的に最終的な結論を出していくというところに相違ございません。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、次に内田様、お願いします。
【内田委員】
ニッセイアセットマネジメントの内田と申します。よろしくお願いいたします。
まず最初に、高速取引行為について申し上げたいと思います。先ほどの辛島さんや、今、永堀さんの言及にもありましたが、証券会社が高速取引行為の当事者として、レイテンシー・アービトラージの対策を取っていただくこと自体は、証券会社が自らのサービスの有効性を高めるという、ある種の自衛手段として評価されるべきことと認識いたしております。従って、これは自社の競争力を確保・向上させるための手段であって、規制にはなかなか馴染まないとも認識しております。機関投資家からしても、やっていただければ有難いのですけれども、ただし、対策は取ったものの常に各社とも試行錯誤の中でやることですし、絶対に正しいというものがない中でやるものですので、規制するのはなかなか難しいと思っております。
それから、レイテンシー・アービトラージの顧客開示についても、2つの観点から難しいと考えています。1つは、詳細な対応策を記述いただく。これ自体は有難いのですが、今、永堀さんがおっしゃられたように、リバース・エンジニアリング合戦のような状況を招いて、変な競争を招くというようなことも考えられますし、後、各社がチューニングを図る中で、仕様等を見直した際の開示が、それまでの開示内容との連続性が途切れてしまうということも起こりうるため、開示が難しいのではないかと思っています。それから、2つ目は、機関投資家の立場からは繰り返しになりますけど、対応していただければ有難いのですが、このタスクフォースの中でずっと議論させていただいている個人投資家へSORとかをいかに分かりやすく伝えるとか、せっかく、そういう議論をしている中で、このリバース・エンジニアリング的なものは、かなり高度・テクニカルな記述になります。そういう点では、常々申し上げているように、関心、興味のある方が、それなりの記述までたどり着けるような、ハイレベルのという言い方もありますけども、開示の仕方がよいのではないかと考えております。
あと、PFOFについては、極めて慎重な対応が必要だと思います。これについて、私は専らダーク・プール・スキームを通じて提供されることになると思っておりますが、これについては、今年9月から適用されますダーク・プール規制が導入されていることが基本的には必要要件ではないかと思っております。その上で、PFOFを使う場合は、トレード・アット・ルールのようなものを追加適用するぐらいの対応が必要ではないか。誰が価格を保証するのかとか、こういった議論が非常に重要だと考えております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。それでは、上柳先生、お願いします。
【上柳委員】
ありがとうございます。
高速取引の関係ですけれども、金融商品取引法の40条の2には、最良執行の方針と方法を開示せよというふうに明示されております。それとの関係で言うと、アービトラージへの対応策というのは、積極的に最良執行していこうということでなくて、防衛的なのかもしれませんけれども、関係するものだというふうに思います。ですので、取組を促すことを強制するということは必要ないのかも分かりませんけれども、対応策を採用しているか、していないかということは開示されてしかるべきだろうというふうに思います。ただ、その程度については、私がよく分かっていないという面もあるのかも分かりませんけれども、やはり個別の事業者の方々に任せる部分が多くなって、それを市場のほうがどう評価するかということで、金商法40条の2の考え方に沿っていくということになるのではないかというふうに思います。
PFOFについても、繰り返しですけど、40条の2が方法、あるいは方針を出せというふうに言っているのは、もともと、やっぱり最良執行をしなければいけないという義務があるということが前提だろうと思いますので、そういう観点から、これによって最良執行ができるのであれば、それはそれで開示していただきたいですし、逆にそれを阻害するということであれば、あるいは、そういうリスクがはっきりしないということであれば、採用されるべきでない手法なのではないかというふうに感じました。
以上です。
【黒沼座長】
ありがとうございます。それでは、最後に藍澤様と梅野様から御発言をいただきたいと思います。まず、藍澤様、よろしくお願いします。
【藍澤委員】
ありがとうございます。藍澤證券の藍澤です。よろしくお願いいたします。
御説明のあった2つのテーマのうち、2つ目のPFOFについて述べさせていただくと、まず、スキームとして非常に考えさせられるといいますか、そもそも我々のような中小の地場証券は、この図で言うところのブローカーが近いと思うのですが、そのブローカーが完全中立でもなく、投資家を見ているわけでもなく、マーケットメーカーを向いている時点で違和感があり、必然的に最良執行もマーケットメーカーにとっての最良執行になってしまうのかなということで、そのように先ほど来御説明があったような懸念が生じてくるのかと思います。手数料無料は、個人投資家にとって大変魅力的だとは思いますが、そのメリットと、今日、御説明があったデメリットを比べると、むしろデメリットのほうが影響が大きいのではないかと思ってしまいます。
御説明の内容以外でも、例えばですが、マーケットメーカーが自己のポジションと対当させて利益を得たいがゆえに、恣意的にそう仕向けるようなリサーチレポートを提供して、その結果、直接、自社の投資家に、そうした商いをさせたらフロントランニングかと思いますが、それが直接顧客ではなくて、このスキームのようにブローカーを通してブローカーの投資家に提供されて、彼らが商いをした場合に、果たしてフロントランニングと認められるのかですとか、また、この図にもありますが、注文を自己と対当させるのではなく、市場に出す場合や、投資家同士の売り買いのポジションを対当させる場合も含まれると思いますが、その際にどちらかに過不足が生じた場合は、やはり市場でその分を調達すると思うのですが、その際、市場が複数あった場合、例えばリベートを出してくれる市場がもしあれば、そこに出してしまうとか、そうなると、さらにその分、価格に転嫁されてしまうのかなと考えると、その辺りの事情に詳しくない個人投資家は、手数料ゼロと引換えに不利な値段で約定してしまうことになるのではないかというようなことも考え、言い出したら切りがないのかもしれませんが、この辺りも、御提示あった内容に加えて利益相反の観点から検証していくべきではないかと考えました。
簡単ですけれども、以上です。
【黒沼座長】
ありがとうございます。それでは、梅野様、お願いいたします。
【梅野委員】
ブラックロックの梅野でございます。
25ページの問題意識のところでございますけれども、金融庁様の資料ですと、1番はHFTとの取引、2番はマーケットメーカーとの取引というふうに、恐らく資料上も整理されていたかと思いますが、経緯を考えますと、HFTが乱立し競争激化していく中で、フィーを払ってでもエクスクルーシブにフロー情報が欲しいと考える一部のHFTがマーケットメーカーになっているという意味では、私から見ますと、HFTもマーケットメーカーも同一主体であるというふうに整理しておりますし、そういった意味では、この25ページの問題意識というのは、取りも直さず、テクノロジー上、優位性を持った一部の投資家、HFTですとかマーケットメーカーに対して、相対的に劣位にあると考えられる個人投資家の利益をどう守るかという一点に尽きるのかなというふうに考えております。
その観点から、1番の高速取引、レイテンシー・アービトラージの対応策の取組を促すことについてはどう考えるかということでございますけれども、これは、もちろん、そのような取組があればよいというふうに考えますが、証券会社ごとに対応能力、あるいは予算といったところの制約もあると思いますので、この辺りは個社対応というところだと思います。一方で、対応策を採用している場合には、なぜこういう対応策が個人投資家にとってメリットがあるのか、そのメリット及びデメリットを個人投資家向けということですから、なるべく分かりやすく、メリットに関しましては価格改善効果を具体的に、デメリットに関しましては、HFTも個人投資家も証券会社にとっては顧客ということですので、潜在的な顧客間の公平性、あるいは利益相反の可能性、こういったものをどう回避しているか、こういったことを分かりやすく説明することが重要だと思います。
2番のほう、PFOFでございますけれども、こちらも、そういった意味では、先ほどと同様、個人投資家にとっての取引相手はマーケットメーカー、HFTですので、投資家にとって、こういったPFOFを導入することのメリット、デメリットを分かりやすく説明するということだと思います。特に、デメリットですね。PFOFを導入することによって手数料が無料、もしくは割引になる代わりに、フィーを払ってでもフローを見たいと思っているHFT、マーケットメーカー、こういったところとの公平性をどう担保しているかということをきちんと分かりやすく説明するということだと思います。個人的には、分かりやすく説明するということが仮に果たされたとしても、やはりデメリットのほうがPFOFに関しては大きいんじゃないかというふうに現状では思っており、導入はまだ時期尚早なのではないかというふうに思っております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。
それでは、委員の間の意見交換を終わらせていただきます。発言時間についても、皆さん御配慮いただきまして、ありがとうございました。
オブザーバーの方から御意見があれば、大変恐縮ですけれども、2分を目安に御発言をお願いしたいと思います。それでは、チャイエックスの色川様から御発言、お願いいたします。
【色川オブザーバー】
チャイエックス、色川でございます。発言の機会をありがとうございます。
SORがIOCで発注することや、順繰りに回るのではなく、一度に複数発注するといったことは、現在の技術環境においては、議論の余地すらないぐらいに私は思っておりまして、ほかの観点を指摘したいと思います。
高速取引行為者と最良執行のあり方という検討課題において、一番問題なのは、成り行きとか、積極的な価格による指し値注文など、即時約定ニーズを持つ注文を処理するに当たって、対当可能な最良気配値を持つ市場を無視して別の市場に指し値を置くことです。これをロックト・マーケットとかクロスト・マーケットとかといいまして、米国では禁止事項に当たります。即時約定という顧客のニーズを無視した極めて問題ある行為といえます。過去、PTSにおいて故意にこの状況をつくり出し、批判された事案がありました。また、そもそも東証のみでの執行が容認されている状況においては、PTSに最良価格があっても、それを無視して東証に積極的な指し値を置くと、当該証券会社とそして東証は、悪気なくロックト・マーケット、クロスト・マーケットをつくり出します。本日の資料12ページの単純な例で言えば、Aの取引施設がPTSで、Bの取引施設が東証や他のPTSといった場合、そもそも、東証や他のPTS、つまりBの施設にAのPTSと対当可能な指し値を置いてロックト・マーケットをつくり出したこと自体の方が問題の発端であります。SORの手法も詳細ももちろん大事なのですが、本来、投資家に帰属すべき価格改善を高速取引行為者に持って行かれないためには、ロックト・マーケット、クロスト・マーケットをつくり出して、非常に簡単なインターマーケット・アービトラージを可能にするような状況をつくり出さない市場構造が最も大事です。そのために、コンプライ・オア・エクスプレインの運用においては、株のブローカレッジを経営の中、商品の中に入れるのであれば、よほどの事情がなければ、ちゃんと複数の市場、複数のPTS、そしてSORを利用することへのコンプライを求められることが最も重要だと、このように考えております。
ありがとうございました。
【黒沼座長】
ありがとうございます。続いて、日本取引所グループの南出様、御発言をお願いします。
【南出オブザーバー】
日本取引所グループの南出でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
PFOFにつきまして、補足的に1点述べさせていただきたいと思います。まず、我々の立場としましては、PFOFについて、これを促進するという観点ではございませんけれども、もし仮にこれを認めるのであれば、アメリカの規制につきまして、情報開示、レギュレーションNMSの606について資料でも触れていただいておりますが、当たり前のことでございますが、情報開示をすれば最良執行義務というのは逃れるものではないというところは、アメリカでも当然そのように認識されております。ロビンフッドにつきまして、SECから昨年末、情報開示について処分をされておりますが、それ以前にも、ベストエグゼキューションについてそれを怠っていたというところで、自主規制のほうで処分されているという事例もございます。もし認めるのであれば、情報開示プラス行為規制のところもしっかり見ていく必要があるのではないかと考えております。
あと、課題2つに共通するのでございますが、何名かの委員の方から、取引ベニューの売買制度が与える影響というところも御指摘いただいております。これにつきましては、私どもも含めて、各取引ベニューが、売買制度の在り方と、それが与える影響というものを慎重に考える、そのような必要があると自戒の念を込めて考えた次第でございます。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、ジャパンネクストの山田様、ご発言をお願いします。
【山田オブザーバー】
発言を希望させていただきたいと思います。すいません、よろしくお願いします。
今回の議論を経まして、執行サービスを行う証券会社は、よりよい価格とか、よりよいコストでの執行の実現に向けて、SORを利用したり、IOC等の注文方法を駆使し、様々な工夫をして、執行サービスの質を競うことになるという話は、先ほどから出ているところだと思います。当然ながら、そのメソッドに関しましては、お客様に、事前に詳細とまではいかなくても、ある程度の説明が必要ですし、事後的な検証も当然必要になってくると考えております。また、何よりも、お客様にとっては、出来あがりの取引結果が一番大切だということは、以前から出ている議論のとおりだと思います。
ただし、IOC等の非開示注文に関しましては、例えば、実際に取引コストの上昇につながっているという研究とかも出ておりますので、いい面ばかりでないという部分あることも考え、この点は今回引用されている辰巳先生の他の論文にも書いてありますが、各社で知恵を絞って、よりよいサービスを利用者に提供するというのが、そもそもの今回のタスクフォースの意義だと考えております。
今回、検討課題になっておりますレイテンシー・アービトラージに関しましては、そもそもアービトラージを戦略とするHFTもたくさん登録されていることもあり、それに対抗するということよりも、そのような市場構造であることを踏まえ、各証券会社がそれをうまく利用した形で、お客様に少しでもベストに近い価格で執行できるような方法を、切磋琢磨して工夫していくことが大事だと考えております。ですから、今回の検討課題にあるように、証券会社にいろいろな取組を促すことについては、当然、必要なことだと考えております。
また、この結果という部分に関して、やはり客観性を持たせるためには、ベンチマークとしての最良気配、いわゆる米国におけるNBBOみたいなものを導入し、そこからの比較を各社が開示するということも必要じゃないかなと考えております。
PFOFに関しましては、我が国の市場構造にどのようなインパクトを与えるかというのは分からないのですが、少なくとも皆様がおっしゃっているように、十分な開示、特に、お客様に対するリスクの開示というのは絶対必要なことだと考えております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。日本証券業協会の松本様からも申出がありましたので、松本様、御発言をお願いいたします。
【松本オブザーバー】
ありがとうございます。日本証券業協会の松本でございます。
レイテンシー・アービトラージの説明について発言させていただきたいと思います。多くの委員の皆様から、ハイレベルでの開示ですとか、プリンシプルでの対応という御意見がございましたが、そちらに賛同いたします。特に今回、例えば、機関投資家は必ずしも価格のみを優先しているわけではないことから、個人と機関投資家では、価格重視について、ちょっと対応を変えるべきではないかというような議論もございますので個人と機関投資家でも説明ぶりが違うでしょうし、また、個人といってもいろいろな投資家の方がいらっしゃいますので、各社で顧客の属性に沿って分かりやすい説明をしていくということを、プリンシプルで各社で決めていただくような対応がよろしいかと思ってございます。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。
それでは、この辺りで次に進ませていただき、27ページの「Ⅴ 取りまとめの方向性」について、事務局より説明をお願いします。
【繁本市場業務監理官】
企画市場局市場課の繁本でございます。
それでは、お手元の資料、27ページを御覧ください。取りまとめの方向性ということで、過去2回の議論を踏まえて事務局で作成したものでございます。
1ポツ、個人投資家にかかる注文執行における価格の重視ということでございます。1つ目、顧客が個人である場合については、最良執行方針等の法定記載事項の中に「主として価格以外を考慮する場合には、その旨、その理由」を追加と。すなわち、価格以外を考慮した最良執行の方針を出す場合には、何でそういった方針になっているのかということを法定記載事項として説明してはどうかというものでございます。
それから、ダークプールを使用する場合にも同様に、その旨、その理由を追加してはどうかということでございます。
2ポツ、市場構造の変化を踏まえた最良執行の在り方とその顧客説明でございます。(1)SORによる注文執行のルール等の透明化につきましては、まず、最良執行方針等の法定記載事項に「SORを使用する場合は、その旨及びSORによる注文執行のルール」というのを追加してはいかがかと思っております。具体的には、その下、※印でありますが、執行先等、基本となる注文執行のルール、同値の場合の処理といった基本的な執行ルールとともに、こうしたルールを採用する理由、例えば執行先が取引所とPTS1社だけですというのであれば、なぜそうなっているのかという説明、同値の場合に例えば自社のダークプールを優先するというのであればなぜそうしているのかといった理由を説明していただくということで、前回御議論いただいた利益相反の開示といった部分も、ここの部分で対応していただくということでいかがかと考えております。
それから、2つ目の矢印ですが、執行結果の法定書面である最良執行説明書でございますが、こちらの法定記載事項にSORを使用する場合には、その価格改善状況も追加してはどうかということで、具体的にはその下、※印にありますように、約定価格、約定日時、執行等がされた取引所・PTS・ダークプールの別、それから、SORの使用に際して比較した取引所・PTSにおける価格ということでございます。ただし、ダークプールの規制でも類似の価格改善の説明義務が今後導入されますが、ダークプールを使っていない証券会社なんかが、こうした説明体制を整えるには一定の時間がかかると考えられますので、施行については、経過期間を設けてはどうかと考えております。
それから、(2)、(3)高速取引行為と最良執行の在り方、PFOFの取扱いでございます。こちらにつきましては、本日の議論を踏まえて、事務局としても整理してまいりたいと思います。先ほどの議論を踏まえますと(2)につきましては、まず、対応策については、各社のプリンシプルベースではあるが、一定の対応策が行われることが望ましく、また、そうした対応策については、詳細なということではなくて、分かりやすい開示をしていってはどうかというような意見が多かったかと思いますが、また改めて整理をしたいと思います。
また、PFOFの取扱いにつきましても、本日の議論の中では、資料の中で説明されていたような最良執行の観点、それから価格形成の観点からの問題点については、多くのメンバーの皆様も共通の問題意識があるという中で、少なくとも、PFOFを日本でも解禁するということについては、かなり慎重な検討が必要なのではないかという御意見が多かったかと思います。この辺りも、また精査して、今後、整理をしてまいりたいと思います。
また、今後、この取りまとめが行われていくわけですけれども、取りまとめが終わった後の話になりますが、現在、日本証券業協会様におかれては、最良執行方針等の参考モデルをつくられているところでございます。新たな最良執行方針のルールの下では、この参考モデルも改定されることが期待されるということかと思いますが、その際には、昨年10月1日に東証においてシステム障害により終日取引が停止されたといった点も踏まえ、取引所がシステム障害により終日取引が停止された場合における証券会社の対応に関する記載ぶりなども、検討事項の一つになるのではないかと考えられます。
事務局からは以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。
それでは、取りまとめの方向性について御意見がございましたら、お一人4分を目安に御発言をお願いします。先ほどと同様に、発言時間が残り1分になりましたら、事務局から、発言時間の残りが1分である旨のチャットを全員宛てに送付させていただきます。それでは、よろしくお願いします。それでは、大和総研の横山様から御発言をお願いします。
【横山委員】
黒沼先生、ありがとうございます。事務局の皆さんも、非常に短期間におまとめいただきまして、ありがとうございました。基本的な方向性については、私自身は異存はございません。
1につきまして、現時点においては、1つの落としどころかなと思っております。
2につきましても、前者は前回お示しいただいた1から5の項目のうち、4の1回で決まらなかった場合にどうするかと、5の開発主体の違いを落とした形かとは考えておりますけれども、基本的には、今必要とされるところは一通りカバーされているのかなと感じております。ただ、当然そこまでお考えの上でのことかとも思うのですが、やはり、重要な事項はこれで尽くされているとは必ずしも言えないところから、その他重要な事項、例えば、特殊な利益相反関係があるとか、そういったところを書くようなところも、項目としてはあってもいいのかなとは思っております。
あと、最良執行説明書につきましても、このいただいた内容で特に違和感はございませんが、すみません、これは今回の射程の範囲の話ではないのかもしれませんが、価格につきましては、どちらかというと、事後的な検証は比較的やりやすい項目だと思うのですが、では、それ以外、価格以外の要素を考慮しましたというときに、これはその事後検証は要らないかというと、私は、やっぱり、そうは言い切れないと考えております。ただ、事後検証を数値とかでするのが難しい面があるのは事実だと思いますので、今回盛り込むのはちょっと難しいかもしれませんけれども、将来的な課題としては、いわゆるエクスプレインの場合の事後検証の在り方、とりわけ、自力で検証することが難しいリテールの投資家の方々のためにはどういう事後検証の在り方が好ましいかというところも含め、今後の課題として指摘させていただければと思っております。大筋において、私自身は異存はございません。
ありがとうございました。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、辛島様、御発言をお願いします。
【辛島委員】
野村證券の辛島でございます。
ちょっと横山さんとかぶるところもありますけれども、1つ目の個人投資家にかかる注文執行における価格の重視という点につきましては、前回も申し上げましたけれども、個人投資家と機関投資家、それぞれのニーズに対して配慮した上で決めていただいていると思いますし、また、コンプライ・オア・エクスプレインということで証券会社ごとの特性の違いも考慮していただいているという点もございますので、私は全く異論はないところでございます。ただ、やはり価格重視をした方針を採用する証券会社をなるべく増やすというのが大事だとは思いますので、これも実施段階の話にはなるとは思うのですが、やはりシステム投資もかなりかかりますし、必然的に開発・テストの時間も必要になってきますので、実施時期に関しましては、十分な準備期間を置いていただくように配慮願えればありがたいかなとは思っております。
それから、2つ目のSORによる注文執行ルール等の透明化のところですけれども、資料の記述に関して、おおむね異論はございません。ただ、最良執行説明書の改善状況のところの「価格」という言葉、SORの使用に際して比較した取引所・PTSにおける価格ですけれども、「価格」は何を指すかというのは、これも実施段階の話なのですけれども、きちっと定義していただきたいなと思います。なぜならば、やはり大きな注文を処理していく際に、例えば3か所の板情報を見ているといったときに、各取引所なりPTSの上下、例えば10本ずつとか20本ずつとかの板の情報を全部合わせて比較して、どこに振り分るか決定しているというケースもありますので、それを全部書けと言われると、見るほうも分からないですし、書くほうも、例えば、説明書を1枚つくって紙にして出しますといったときに、A4で収まらないという感じにはなりますので、その辺は、最低限のところとしては、各ベニューの最良気配を記載するというところでとどめていただいて、その上の説明というのは、そうは言っても最良気配から外れたところで取引ができている場合は、当然、お客様のほうで疑問に思われるわけですから、そのための説明に必要な情報に関しては、各社が個別に追加していくというようなやり方が望ましいのではないかなと思っております。
私からは以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。続きまして宇野先生、御発言をお願いします。
【宇野委員】
早稲田大学の宇野です。ありがとうございます。
取りまとめの方向性として、ここに書かれていることに大きな違和感はございません。今回のこの議論というのは、複数の執行市場が存在している中で、市場における最良気配、最良の価格が重視されない執行状況にあったところが改善されるという点で、非常に画期的な見直しになると私は思っております。そういう意味で、市場に存在している最良の価格における執行を目指していくんだということで、それに対するツールとして、SORであるとか、様々な対応を証券会社としては、これからも迫られていく、一気にそれが実現できるものではないと思いますので、ある程度時間を置いて、段階的に、この精神といいますか、基本的な方針が実際に実行されるようになっていくことを期待したいと思っています。
それから最良気配というのが、東証と比較してよければいいという範囲なのか、市場にある全ての価格を常に比較する必要があるのか、この辺についても、最初の段階からあまりリジットな定義をしても実際に実行できないということになりかねないですので、これはそれぞれの証券会社の考え方の中で対応しながら、それによる効果をきちっとフォローしていく、監視していくということで、これがいい方向に、市場全体の機能が向上する方向に向かうように今後も監視していくことが重要かなと思います。
そういう意味では、最良執行説明書の中で、価格改善状況についての分析結果を証券会社がいろいろ工夫して作成されるということが、第一義的に非常に重要な情報源になるのではないかなと思います。本当は投資家のそれぞれの目的に沿った執行がなされているかというところが最も重要な事項ですけれども、様々な投資目的を持った投資家が存在しているということを考えますと、これを最良執行説明書の中に書くことを求めることは、ちょっと無理があるかなという気がしております。むしろ、インフラとしての市場が最良気配における執行というものをどれだけ達成できているのかということを観察するための情報あるいは投資家が参考にできる情報がこういった形で提示され、証券会社自身も、その辺について、どうやって自社のサービスのよさをアピールしていくかという意識が高まることによって、よい循環になってくれればいいなと期待しております。
以上です。
【黒沼座長】
ありがとうございました。続きまして、上柳先生、御発言をお願いします。
【上柳委員】
ありがとうございます。27ページの取りまとめの方向性について賛成です。
申し上げた上で、さらに考えるべきだという点が2点ございまして、本来は、金商法40条の2に、方針と方法を示さなければいけないということだけではなくて、ストレートに最良執行をしなければいけないという条文を、これは当然の義務と前提されていると私は考えておりますけれども、明示することが適切なのではないかと思います。何人もの委員の方からおっしゃいましたように、開示していればよいということではないというのが、例えば米国でもそのように記載されているということですし、それから、開示というのはなかなか難しくて、きちんと書けば書くほど分厚くなってしまって、かえって分かりにくくなるという問題があります。ですから、分かりやすい開示ということで、それで消費者なり関係者が事業者を選ぶということになるのだろうと思いますので、開示には限界がある。でも、開示をした上で、さらに、きちんと実際にも執行しているとなっていくのが方向性として正しいだろうと思っております。
もう1点は、これもちょっと復活折衝のような言い方で、何度もで恐縮ですけれども、いわゆるダークプールを使う場合について、最低限、トレードアットルール、不利な価格では成立させないと、これは決めてもいいんじゃないかと思っております。
以上、2点でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。続きまして、永堀様、御発言をお願いします。
【永堀委員】
モルガン・スタンレー証券、永堀でございます。
まず、27ページの取りまとめの方向性というところの1番に当たるところですが、個人投資家にかかる注文執行における価格の重視という部分について、こちらは、私ども、機関投資家を顧客にする証券会社ではあるので、客観的な立場ということではあるものの、基本的に、ここに書かれている内容というのは、私の意見とは相違がないと考えております。
また、それに対して、2番目の市場構造の変化を踏まえた最良執行のあり方とその顧客説明というところですが、今回、その前段のところでも申し上げさせていただいたとおり、今回におけるタスクフォースの考え方というのは、基本的にはプリンシプルで、コンセプト、あるいはガイドラインを決めていき、各々の証券会社の記載事項については、その証券会社に委ねていくという部分から考えると、この部分は、確かに情報としては必要不可欠だと思いますが、最良執行の法定記載事項に必ず書かなければいけない事項かどうかというところについて言えば、それは別紙でもいいのかなと感じておった次第でございます。
また、それに対して、最良執行説明書という部分ですが、こちら、お示しいただいた①番と②番というところ、確かに重要な情報だと思っております。ただ、その一方で、機関投資家様における最良執行というのは、各スライスのそれぞれの約定価格というよりは、むしろ全体像としての、親注文の執行価格というところが非常に重要だったりしますので、これをもって一義的に全ての情報を満たしたというのには、少し無理があるのかなというところでございます。そういった意味では、機関投資家を相手にする証券会社に対して、②番のSORにおける市場執行価格というのがどこまで意味をなすのかというところについては、もう少し議論が必要なのかなと感じたところでございました。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。続きまして、久保様、御発言をお願いします。
【久保委員】
ありがとうございます。
まず、取りまとめの方向性、2番の(1)、こちらにつきましては、基本的な方向性としては同意、この方向がよいのではないかと思っております。
先ほど一部の方からお話も出ていますが、利益相反に関してですけれども、前回の会合でも申し上げた点ではありますが、やはり開示と、それから、結果の検証というものは、これは1組、2つで一体のものと考えるべきだと思っております。ただ、結果説明だけがあっても、開示だけがあっても、これ、成り立たないのはそういうことなんですけれども、開示のところは、例えば外形的に資本関係があるとか、その他、取引関係で特別な関係があるとか、外形的な利益相反の可能性があるということについては、これは、その旨がこの開示の中でうたわれるということは、やはり必要なのではないかなと。投信会社のファンドに係る運用報告とかでも、そういったことがなされていることは前回申し上げたとおりでございますが、そこを少し、もう一度検討を、詳細になるかもしれませんけれども、やる必要があるのではないかと思っております。
それから、本日お話ししたところになります。高速取引のところでございますが、先ほどちょっと補足的にといいますか、言いそびれた点がありまして、高速取引について、先ほど議論の視点というのは申し上げたとおりですし、皆さんがおっしゃられていることについては、非常に同意できるところが多数ございます。
一方、その他の視点で、例えば、HFTが入ってくるに当たっても、レイテンシートレードにしてもそうですけれども、あまり簡単なアービトラージという形ではなくて、やっぱり呼び値の問題というのも、今、東証だけではなくて、PTSさんも入ってきております。そういったところで、呼び値の最適化というんですかね、清水先生に御説明いただいた呼び値との関係というのも非常にもう一度考え直す必要がある。東証さんも自戒の念をとおっしゃっていましたけれども、ある価格帯においては、もう少し、この呼び値を刻むというようなことも、やはり、この議論の中でというか、それに付随してと申し上げたほうがいいかもしれませんが、検証されるべきことなのではないかと思っております。
以上でございます。ありがとうございました。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、清水先生、お願いします。
【清水委員】
取りまとめの2点について、私も異存はありません。個人の場合は、価格をやや重視しつつ、そうでない場合に説明するという方向で違和感はありません。
ただ、議論の中でも申し上げましたが、そもそも1か所の市場にしか接続されていない場合、接続先は東証さんかと思いますが、そういう証券会社にとって、全ての市場の価格を参照するという重い責任は、全米最良価格での執行を常に求めているアメリカであってもそこまでは求めていません。アメリカでは、最良執行のための注文回送の責任を、日本ではちょっと考えにくいですが、一定程度、市場側が負わせているということに注意は必要かなと思います。市場1か所にしか接続していない証券会社が全市場の価格を見渡すというほど重い責任を負わせる必要はなく、これは今回の文言には関係ないかもしれませんけれど、そう考えます。
それから、今後、市場間の競争が徐々に本格化してくる可能性がありますので、すぐである必要はないと思いますけれども、PTSと東証との競争条件を徐々にそろえていく必要があるのではないかと思います。今、久保委員が呼び値について御発言になりましたけれども、私も、すぐではなくてもいいかもしれませんけれど、いずれ検討が必要ではないかと思いますので、申し添えます。
それから、SORに関しても、私もこの御方針で異存はありません。SORの注文回送のルールというのが、まさにその証券会社の最良執行の方針をプログラムに落とし込んだものと理解できますので、この中身を一定程度開示することは必要だと思います。これも今、久保委員が言われたとおりですが、もし、優先的に注文回送する先の市場との間に一定の資本関係などがあるような場合には、開示対象にする必要があるかと思います。
以上です。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、清明様、御発言をお願いします。
【清明委員】
マネックス証券の清明でございます。
私も、この27ページに記載されております取りまとめの方向性につきましては、皆様と同様、違和感ございません。弊社はSORを導入している立場でございますけれども、弊社が今行っている環境を踏まえても違和感ございません。
特に2の1の点につきまして、顧客説明のところですけれども、皆様おっしゃるとおり、やはり、個人投資家ですので、分かりやすくルールを説明するということが非常に重要ですし、それから、ルールどおり実際に実行できているのか、価格改善効果はどれぐらいあったのかという結果を併せて御説明するということが非常に重要かと思っておりまして、現に弊社ではそこまでやっておりますので、そういった方向でよろしいかなと思っております。
ただ、こういった形で個人の皆様に価格改善効果というものを取っていただくには、やはり、市場環境が活性化していくということが非常に重要かなと思っております。そうやって、個人投資家の皆様も、さらに資本市場に入っていただくということを、我々としては基本にしていきたいところではあるので、そのためには、先ほど久保委員と清水委員からもありましたとおり、同じになるんですけれども、健全な競争環境というものは非常に重要になってくるかなと思っております。
それから、透明性の高い市場機能というのも併せて必要になってくるかと思っております。その具体的な例としましては、これも先ほど来から出ております呼び値の問題ですとか、あるいは利益相反行為に当たり得るものについての説明、そういったことで競争環境を整えていく中で、この最良執行についても、さらに改善していくことが求められていくのかなと思っております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。次に、梅野様、御発言をお願いします。
【梅野委員】
ブラックロック、梅野でございます。
27ページ目に関しまして、3点、意見を述べさせていただきます。
まず1つ目でございますが、ポツの1、それからポツの2の(1)の最初の矢印のところで、理由を説明せよという箇所が今回3か所入っております。理由を説明するということになった場合に、よくあるのが、メリットの説明のみにとどまるということになります。本来、メリットを説明するのと同時に、例えばダークプール、それからSORもそうですけれども、デメリットがあるはずでして、そのデメリットを軽減するためにどういう策を打っているかという点、すなわちメリット及びデメリットの軽減というところを両方書かなきゃいけない、アップサイドだけ書いちゃ駄目ですよということをきちんと明記すべきであると私は考えております。これの象徴的な出来事として、以前、某ネット証券が、SORのロジックにタイム・イン・フォースというものを実装し、報道によりますと、100ミリから300ミリ秒の間、HFT、マーケットメーカーにだけ注文を開示しているというようなことがあって、報道された翌日に、このタイム・イン・フォースの時間をゼロミリ秒にしましたというようなことをやったことがありました。これは、本来、こういったネット証券がタイム・イン・フォースでその期間注文をさらすということが、個人投資家にとってどういうメリットがあって、例えば市場に先回りされちゃうというようなデメリットを軽減するためにどういう手を打っているかというのを、本来、きちんと説明すべきであった。そういう説明をすっ飛ばして、ゼロ秒にしたからいいでしょうというような開き直りをしている。こういうことでは、個人投資家からの信頼を勝ち得るということは、なかなか難しいのではないかと思っています。その意味で、理由にはアップサイド、それからダウンサイドプロテクション、両方きちんと書きましょうということだと思います。
私の意見の2つ目でございますけれども、ポツの2(1)の2つ目の矢印、最良執行説明書ですね、こちら、価格改善状況というのがございます。私、以前より申しておりますが、価格改善状況、価格改善効果というのは、様々定義があると思いますので、各証券会社がどのような定義の下に測定しているかということは明記すべきですし、できれば、こういった測定というのは、中立的な第三者が行うのが望ましいと思っております。もちろん、この辺り、費用との見合い等もありますので、証券会社様の対応に委ねるということになると思いますし、また、本来、価格改善状況を調べるに当たっては、やはり、統合テープというものが必ず必要になってくると思いますので、統合テープの整備が望まれるということでございます。
最後、3点目でございます。2番の(2)高速取引行為というところと関連してくるんですが、今回、個人的には、ファクトベースの議論というのが少なかったのではないかと考えております。もちろんHFTに関して、いろいろ分析、論文等出ておりますが、国内においては現状、HFTは登録制になっていて、発注時には、取引戦略とフラグを立てて発注している。こういった情報は取引所が持っているということでありますので、こういった取引所が持っている情報を基に、日本におけるHFTはどういう戦略が多いのか、どういう行動を取っているのかというものを分析することによって、よりファクトベースの議論が進んでいくと思うんですが、私、自分が見落としているだけかもしれませんが、こういったものは見たことがないという状況でございますので、今後、ファクトに基づいた議論が進んでいくことを期待します。
以上です。
【黒沼座長】
御指摘ありがとうございました。それでは、内田様、御発言をお願いします。
【内田委員】
ありがとうございます。ニッセイアセットの内田でございます。
これまでの委員の方がおっしゃられたように、27ページに記載いただいております事項につきましては、基本的な方向性は皆、異存があるわけではございません。
最後ですので、ちょっと毛色の変わったというか、別の視点から意見を申し上げさせていただくとすると、1番と2番、大きく項目を分けていただいておりますが、これらは順番をひっくり返したほうがすっきりすると認識しています。要は、まさに資料2番に書いていただいているように、市場構造が変わってきて、これは取引参加者の形態に関係なく、こういう構造変化が見られる、最良執行を検討するに当たって、こういう観点からの検討が求められるという議論をした上で、1番にあるような参加者形態に応じて最良執行の開示の仕方、在り方というのは変わり得る、選択肢が複数あり得るという形にまとめた方がすっきりと着地するかなと感じながら、資料を読ませていただきました。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。貴重なアドバイスとして受け止めさせていただきます。それでは、藍澤様、御発言をお願いします。
【藍澤委員】
ありがとうございます。藍澤證券の藍澤です。
私からは、この設問の1番の個人投資家にかかる注文執行における価格の重視の部分についてだけ述べさせていただければと思います。まず、皆さんの御意見と同様で、コンプライ・オア・エクスプレインの形にしていただけるのは大変ありがたいですし、方向性として、全く異存はございません。そもそも、当然、価格は重視すべき要素で、ただ一方で、先ほどもお話があったように、PTS、それから、SOR導入に際しては、多額の支出のコストが証券会社側にかかってくるので、どうしても証券会社側が提供するサービスの内容によっては優先順位が異なってしまう。そこも配慮いただいた上でのコンプライ・オア・エクスプレインで各社対応に委ねるということなのかなと思っております。ありがとうございます。
あと1点だけあるとすれば、趣旨として全く異論はないのですが、これまでの議論を踏まえると、ここには価格を考慮することの具体的な手段がPTSなりSORの導入であるとすれば、文言の部分ですが、価格以外を考慮する場合という部分を、例えば、PTSやSORを導入しない場合、その旨及び理由ではどうなのかなとも思った次第です。というのが、この「価格」という言葉は、やはり要因要素の中で一番訴求力があり、とりわけ、一般の個人投資家の方にとって、ダイレクトに最終的な投資利益を想起させるかと思っており、「価格以外を考慮する」という文言を一般の方が見た場合、見ればの話ですが、お客様の投資利益以外を考慮すると捉えられないかなということも考えまして、細かい話で恐縮ですが、お客様にとっての投資利益も短期の投資的取引か資産形成かで異なってきますし、資産形成を行う過程においては、1約定当たりの価格が必ずしも最重要要素ではないということは以前申し上げたとおりで、それ自体は必ずしもお客様の利益を最重要視しないことにはつながらないと思うのですが、今申し上げたように、どうしても「価格」という言葉が独り歩きし、お客様の利益とイコールだとお客様に取られないかと、少し心配して申し上げました。ただ、繰り返しになりますが、総論としては、この内容で全く異論はなく、皆様方の御意見ですし、あくまで記載の話ですので、一意見として申し上げさせていただきました。
以上です。
【黒沼座長】
ありがとうございます。本日、神田先生から御発言いただいておりませんけれども、何かございませんでしょうか。
【神田委員】
神田です。どうもいつもありがとうございます。
特にございませんけれども、皆さんの御議論で、顧客本位という観点から物事を考えていただければいいなと思います。
以上です。どうもありがとうございました。
【黒沼座長】
ありがとうございます。
このタスクフォースで取り上げた問題は極めて専門的でして、かつ、アメリカやヨーロッパ等、市場の環境が違う中で、どういったルールが望ましいかというのは、先ほどファクトベースの分析が少なかったという御指摘がありましたけれども、理論ベースといいますか、研究も日本では進んでいないということを私自身実感しまして、研究者ももっとこの分野をきちんと勉強しなければいけないなと思った次第です。しかし、このタスクフォースとしては、方向性を出して、現時点でできることからやっていかなければならないということで、皆様からお知恵をいただいているところです。
それでは、これで委員の間の意見交換を終わらせていただきたいと思います。オブザーバーの方から御意見があれば、やはり2分を目安に御発言をお願いしたいと存じます。ジャパンネクスト証券の山田様、御発言をお願いします。
【山田オブザーバー】
発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
本タスクフォースにおける本件の検討は、まさに顧客本位の業務運営の原則に沿う形で、情報技術の進展、その他市場取引所を取り巻く環境の変化を踏まえ、幅広く検討を行うことという、まさにその目的に沿った形で行われており、非常に意義があるものだと考えております。それを踏まえ、お客様にとって最良執行とは何なのかを、今回の技術の進展を踏まえアップデートして、その実現を目指して、各社がよりよい執行サービスを提供するため努力していく方向性について議論できたと考えております。
この取りまとめの方向性に関しましては、オブザーバーとして、委員ではないので、違和感ある、ないというのは非常に僣越なのですが、最初としては、これでいいのではないかと考えております。「個人投資家にかかる」とありますけど、個人投資家とは、なかなか定義が難しいのですが、機関投資家ではない顧客に対して、価格重視の考え方を取り入れる方向性は賛成でございまして、我々取引施設に関しても、価格重視のお客様のニーズに適切に対応できるよう、今後も努力が必要だと考えております。
ただし、上柳先生がおっしゃられたとおり、価格重視の執行を行う方向性に関しては、きっちり義務化することというのも考える必要があるのではないかと思っております。
あと、最後に1点、梅野委員がおっしゃられているのですが、今回の議論において、委員の皆さんの思いとか、考え方に基づくご発言がちょっと多かったかなと思います。我々もデータ提出等々、積極的にやっていきたいと思いますので、ファクトベースの議論を、次の機会にやらせていただけたらと考えております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。日本取引所グループの南出様、御発言をお願いします。
【南出オブザーバー】
日本取引所グループ、南出でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
取りまとめの方向性自体につきまして、賛成でございます。コンプライ・オア・エクスプレインというところで、最初の会でもいろいろ御発言があったと思いますけれども、証券会社のビジネスの多様性を尊重しながら、顧客本位というところを追求していくということで、プリンシプルベースという方法が非常にマッチしているのではないかと考えております。その辺り、2点ほど述べさせていただきたいと思います。
実際に、いろいろ項目がありまして、書いていくことについて、例えば価格というところ、これまでの議論でも少し御指摘があったと思いますが、何をもって最良価格というのはなかなか難しいと考えておりますし、一意的に決まるものではないと思っております。試みに、ヨーロッパのリテール向けの証券会社のエグゼキューションポリシーを見ましても、最良価格というのを必ずしも定量的に厳密な定義をしているわけでもないと理解しておりますので、そういった各項目の各内容についても、ある程度、プリンシプルベースで何が最良であるか認められるべきだと考えております。
また、利益相反、こちら、PFOFのところでも顧客の利益との相反関係というところが重要視されましたけれども、市場の選択という点につきましても、顧客と利益が相反するというところについてはしっかり開示をしていって、お客様の注文がなぜそのように扱われるかというところを透明性を持って知らしめることが必要であると考えております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。では、日本証券業協会の松本様、御発言をお願いします。
【松本オブザーバー】
ありがとうございます。先ほど、繁本監理官から、日本証券業協会の最良執行方針の参考モデルの改定についてお話をいただきました。日証協といたしましても、こちらにつきましては検討していきたいと思います。
ただ、今回、このルールが変わるということで、その趣旨をきちんと協会員である証券会社に理解していただいて、それに沿った対応をしていただくといったときに、この参考モデルの方式にすると、やや画一的な対応になってしまうようなおそれもございますので、そういったところも含めて検討を行っていきたいと思ってございます。
あと1点、これまで議論にはなっていないところでございますが、今後、このルールが変わったところで、各社、最良執行方針を改定し、今後も段階的に対応するというお話もありましたので、今までよりも頻繁に最良執行方針が変わっていくということが想定されます。そのときに、今、電子交付で最良執行方針を送れるのですけれども、顧客の事前の承諾が必要ということもありますので、今後は、より電子交付を柔軟な形で顧客に交付というか、見ていただくような方向で検討していただき、各社において書面の交付の負担が大きいので最良執行方針を変えないという本末転倒にならないように御配慮いただければと思います。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。では、チャイエックスの色川様、お願いします。
【色川オブザーバー】
チャイエックス、色川でございます。発言の機会をありがとうございます。
取りまとめに向かうに当たり、SORの手法やPTSの利用方法においてぜひ御留意いただきたいのが、レイテンシー・アービトラージ対策としての間違った対応です。本日の資料も含めまして、単純化したレイテンシー・アービトラージ事例をつくりますと、どうしてもPTSに指し値注文を置くところが出発点になります。しかし、本来、PTSに指し値を置くこと自体には何の問題もないですし、また、その後の相場の動き、他の市場の板の状況などにより、必要があれば、そこから引き揚げて、他市場に同じ値段で出し直すといった手法自体は、重要かつ誠実な最良執行努力にもなります。レイテンシー・アービトラージの議論は、様々な類型と専門的な議論があります。しかし、本件で議論の対象になっている類型の本質は、PTSに指し値を置くことや他市場に出し直すことではなく、ロックト・マーケットやクロスト・マーケットが容認される状態であります。万一、まかり間違って、例えばPTSの利用は東証よりも値段がいいときだけIOCで取るということでいいじゃないかとか、あるいはPTSに指し値を置くことは禁じるのが手っ取り早いなといったゆがんだ指導になれば、我が国の本質的な市場間競争は命を絶たれると言って過言ではありません。取りまとめにおかれましては、ぜひ、PTSの柔軟かつ活発な利用を阻害することのないようにしていただけますとありがたいと願う次第であります。
どうもありがとうございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。十分留意して取りまとめたいと思います。
こういうビデオ会議の手法を取りますと、発言のしっ放しになってしまう傾向がどうしても強くなってしまいます。今日せっかく時間を取っていただきましたので、最後に、取りまとめの方向性について、委員の方から、追加で御意見とか、あるいは足りなかった議論の論点等がございましたら、御指摘いただきますようお願いいたします。
よろしいでしょうか。ちょっと前半部分、かなり時間を区切って御発言をお願いしたので、早口で御発言された方も多かったと思います。しかし、内容はきちんとこちらで把握しておりますので、それを総合して取りまとめていきたいと思います。
本日の議論を通じて、取りまとめの方向性がある程度見えてきたと感じております。皆様からいただいた御意見を事務局でさらに整理、調整していただいた上で、次回は報告書の取りまとめの御審議をお願いしたいと考えております。
次回のタスクフォースの日程に関しましては、後日、事務局より御案内させていただきます。
それでは、以上をもちまして本日の会合を終了させていただきます。ありがとうございました。
定刻になりましたので、ただいまより「最良執行のあり方等に関するタスクフォース」第3回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。
本日の会合も、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、オンラインでの開催とし、一般傍聴はなしとさせていただいております。また、メディアの関係者の方々は金融庁内の別室にて傍聴いただいております。
議事録は通常どおり作成の上、後日、金融庁ウェブサイトに掲載させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
これまでと同様でございますが、2点、注意事項がございます。まず、御発言されない間は必ずミュート設定にしていただくようお願いします。御発言される際にミュートを解除いただき、御発言が終わられましたら、再びミュート設定にしていただくようお願いいたします。
次に、御発言を希望される際は、オンライン会議システム上のチャット上にて、必ず全員宛てにお名前または会社名などの組織名を御入力ください。そちらを確認して、私が指名いたしますので、御自身のお名前を名乗っていただいた上で御発言ください。
それでは、議事に移ろうと思います。本日は「高速取引行為と最良執行のあり方」、「PFOF(Payment for order flow)の取扱い」について御議論いただいた後、「取りまとめの方向性」についても御議論、御審議をお願いしたいと思います。
具体的には、前半は、事務局から資料の説明をした後、お手元の資料25ページの「Ⅳ 検討課題」について議論を行い、後半は、27ページの「Ⅴ 取りまとめの方向性」について事務局から説明をした後、議論を行いたいと思います。
本日は、このような流れで進めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
それでは、事務局より説明をお願いします。
【繁本市場業務監理官】
企画市場局市場課の繁本でございます。それでは、お手元の資料に沿って御説明させていただきます。
まず、資料、1ページから4ページまでは、前回、第2回会合におけるメンバーの主なコメントを整理しております。それぞれ最良執行方針等とSORとの関係、SORに付随する利益相反構造、最良執行方針等とダークプールとの関係、その他ということで整理させていただいています。内容については、ちょっと分量も多いので、本日は説明を割愛させていただきます。
6ページからが、本日のテーマの1つ目「高速取引行為と最良執行のあり方」についてでございます。
まず、6ページ、7ページでは、現行の高速取引行為に関する規制が議論された際の議論、あるいは、それを受けて導入された規制について説明させていただいています。6ページでございますが、当時の議論としましては、高速取引行為については、市場に流動性が供給されている、あるいは流動性が厚くなることでスプレッドが縮まり一般投資家にもその恩恵が及んでいるといった指摘もある一方で、市場でのイベントに加速度的に反応し、市場を混乱させるおそれがある、あるいは不公平感を与え一般の投資家を市場から遠ざけてしまうおそれがある、あるいは高速取引行為が短期的な取引戦略が多いため中長期的な企業の収益性に着眼した価格形成が阻害されるおそれがある等々の懸念も指摘されたところでございます。こうした議論を踏まえて、6ページの下にありますように、高速取引を行う者に対し、登録制を導入した上で、体制整備・リスク管理、当局への情報提供などの枠組みが整備され、2018年から施行されております。7ページは、その具体的な中身でございますが、詳細は省略させていただきます。
8ページ、9ページは、高速取引行為者として登録している者の一覧等でございます。
10ページは、高速取引行為者が取引戦略、どのような戦略を届け出ているのかといったことで紹介しております。
11ページを御覧ください。11ページは、昨年10月に金融庁の金融研究センターがディスカッションペーパーを公表しておりまして、この中でHFTの特性分析といったものをしておりますので、その概要を御紹介させていただきます。まず、全体の調査の中で、注文総数の約70%、売買代金の約45%がHFTによって占められていた。HFTは、幅広い銘柄で取引をしていた。取消し注文を多用する傾向があった等の傾向が指摘されております。また、下のほう、個別の銘柄、トヨタ株でさらなる詳細な分析をした結果でございますが、HFTは相場動向に左右されず、株式市場に流動性を供給している。2つ目のポツですが、最良気配値付近に薄く注文する傾向があった。3つ目のポツですが、最良気配値の約3割はHFTのみで構成されていた。4つ目のポツ、HFTが積極的に株式相場を下落させるような取引行動は観測されなかったといったところが報告されております。
12ページからが本日の議題でありますレイテンシー・アービトラージと、その対応策でございます。
一番上、レイテンシー・アービトラージとはということで、参考文献から引っ張ってきた定義でございますが、市場参加者などの認知・決定・行動の時間差から生じる価格差や需給量変化を狙った取引ということでございます。具体的には、その下でございますが、例えばα投資家、これは一般の投資家ということでございますが、例えば一般の投資家が、まず、あるAという取引施設に発注し、A取引施設において約定しなかったために、その注文を取り消した上で、別のB取引施設に注文を回送するといった場合に、A取引施設の板を見ていたβ投資家、これはHFTなどということですが、こちらにレイテンシー・アービトラージの機会が生じるということで、下の図にありますけれども、A取引施設で一旦、買いの注文を一般の投資家が出していたけれども、A取引施設の中で100円での売り注文が出ていないという場面において、別のB取引施設で100円での売り注文が出たという場合に、このα投資家の注文は、一旦、A取引施設の注文を取り消して、B取引施設に注文を出し直そうとするわけですが、先にβ投資家が100円で買い注文を入れてしまって、100円の売り注文が消えてしまう。α投資家の注文がB取引施設に行った頃には100円の売り注文はなく、逆にβ投資家が101円で売り注文を出しているという状況だと。そこで約定すると、β投資家が差額の1円掛ける1,000株分の利益を得ることができる、そういったものでございます。下にありますように、ただし、必ずしもA取引施設におけるα投資家の注文が取り消された後、必ずB取引施設に回送されるとは限りませんので、β投資家は、予測に基づきリスクを取って、こういったレイテンシー・アービトラージを行っているというものでございます。
13ページでございますが、最良気配のある市場に注文を順次回送するということを徹底すると、注文がどのように回送されるかという予見可能性が高まるため、レイテンシー・アービトラージの機会が生じやすくなるという指摘がございます。実務においては、こうしたレイテンシー・アービトラージに対抗するため、例えばIOC注文、複数の取引施設への同時発注といった対応策がブローカーである証券会社において採られているようでございます。
14ページ、IOC注文、Immediate Or Cancelという注文方法でございますが、こちらは即時に約定可能な注文以外は自動的にキャンセルして、いわゆる板には載せないという注文方法でございます。そのようにいたしますと、α投資家がA取引施設の注文をIOC注文にすれば、A取引施設の板に載りませんので、β投資家によるレイテンシー・アービトラージを回避することができるというものでございます。ただし、下のほうにございますが、α投資家の注文が大口注文である場合、β投資家は、A取引施設において小口の売り注文を出しておけば、そこで小口の売り注文とα投資家の買い注文が約定いたしますので、それによってα投資家の大口の買い注文がその裏にあるということを察知できれば、それが後々B取引施設に回送されるということを予測して、レイテンシー・アービトラージを行うことができる場合もあるということで、IOC注文さえしておけば完全に回避できるというものではないというものでございます。
同様に、15ページ、複数の取引施設への同時発注でございますが、こちらは、α投資家の注文をA取引施設とB取引施設に同時に発注することにより、レイテンシー・アービトラージを回避するというものでございますが、こちらにつきましても、同時に発注してもA取引施設とB取引施設への注文の到着時間に若干のずれがございますので、この若干の時間差を利用して、高速取引ができるβ投資家がレイテンシー・アービトラージを行う場合があるということでございます。これに対して、さらに実務上、これを避けるためにA取引施設に対する注文とB取引施設に対する到着時間が可能な限り同時になるように、若干、発注時間をずらすといった対応策を採用している証券会社もあるというふうに承知しております。
続きまして、PFOF(Payment for order flow)の取扱いでございます。17ページを御覧ください。PFOFとはということで説明しております。下の図を御覧いただきながらお聞きください。まず、投資家、主に個人投資家からの注文がブローカーである証券会社に入りますと、この証券会社がマーケットメイクをしている証券会社に対して委託の取次ぎという形で注文を回送する。それから、マーケットメーカーである証券会社は、自己勘定で対当するか、取引所に取り次ぐかといったことは自分で選択する。委託の取次ぎをしてくれたブローカーに対しては、リベートがマーケットメーカーから支払われる。多くの場合、このリベートを原資にブローカーである証券会社は、一般の投資家からの手数料は無料にしているといったような慣行がアメリカでは広く行われております。
なお、アメリカの場合、ナショナルマーケットシステムで提示される最良気配よりも不利な価格での約定は禁止されておりますので、マーケットメーカーは、自分で対当する場合であってもNMSの最良気配か、それよりも投資家にとって有利な価格を提示するということにはなります。こうした注文執行方法は、アメリカでは以前からあったというものでございます。
このPFOFに対する海外の規制、18ページでございます。アメリカにつきましては、投資家への情報提供を前提に許容されております。例えば口座の開設時ですとか、約定報告書等の中で情報提供を行っているということでございます。アメリカの下のほう、※印でございますが、昨年の12月にSECが、このPFOFを行っているネット証券会社の最大手であるロビンフッド・フィナンシャルに対して、このPFOFに関する情報提供が不適切であったなどとして6,500万ドルの制裁金を課しております。また、ロビンフッド・フィナンシャルにつきましては、本年に入りまして、一部の銘柄について顧客からの注文を制限した点について、様々な問題が指摘され、本年2月、3月にはアメリカの議会で本件に関する公聴会が開催され、SECにおいてもPFOFについて調査を行うといった意向が表明されていると承知しております。
EUにつきましては、顧客の注文を特定の取引施設、あるいはマーケットメーカーなどに回送する場合においては、利益相反又は誘引に関する規定に反してリベートなどをもらってはいけませんよという規則がMiFIDⅡの中で定められております。
それから、オーストラリアにおきましては、PFOFによるマーケットメーカーからのリベートが、投資家がブローカーに対して支払う手数料を上回った場合は駄目ですよといったような規制がかかっているようでございます。
なお、EUの規定について、英国規制当局の運用を見ますと、19ページでございますが、イギリスの規制当局は、2012年に、まずPFOFの問題点等を示したガイダンスというもの、下にございますが、こちらを公表した後、2017年にPFOFはMiFIDⅡの規定に違反するという見解を公表しております。そのガイダンスでございますが、詳細は省略いたしますが、総じて言えば、メリットは非常にあっさりしている一方で、デメリットを強調した、例えば利益相反が生じ得るとか、顧客にとって不利な価格である可能性がある等々のデメリット、ややPFOFに懐疑的なガイダンスのように見られるところでございます。
20ページは、ただいま申し上げた点を一覧にしたものでございます。
21ページでございます。PFOFに関するに日本における取扱い等でございます。一番上の丸ですが、現時点において日本でPFOFを実施している例は認められておりません。これにつきまして、日本で、例えば手数料の値下げ、無料化につながる、東証の最良気配と比べれば価格改善効果がある場合がある、あるいは約定可能性が高い場合があるといった主張も考えられ、だからPFOFをやってもいいんじゃないかという主張も考えられるところではございますが、下の丸にございますように、最良執行の観点から問題が大きいと考えられます。具体的には、まず利益相反でございまして、証券会社が自己の利益のために顧客の利益に反してマーケットメーカーに対して注文を回送し得るという利益相反、さらには、証券会社が顧客の利益よりもマーケットメーカーの利益を優先した行動を取るおそれもあるというところでございます。また、②ですけれども、SOR等で注文執行する場合と比べますと、顧客にとって最良の価格で約定するとは限らないといった点からも問題が考えられるところでございます。
22ページは、PTSも含めてですけれども、参考としてダークプール等との比較ということで、例えば自社の運営するダークプール等において、マーケットメーカーの手数料を高額に設定し、投資家の手数料を無料に設定する場合には、PFOFと類似の利益相反構造があると考えられます。実際、こういった価格設定にしている取引施設もあるというふうに承知しております。2つ目の丸ですが、ただし、ダークプール等の場合、証券会社は顧客であるマーケットメーカーから手数料を受領しているという点が、PFOFの場合、顧客の側である証券会社がマーケットメーカーからリベートを受領しているということで、証券会社とマーケットメーカーの間のサービスの方向が違っているということで、その点が異なっております。また、ここには書いておりませんが、マーケットメーカーがPFOFの場合、基本的に一社がマーケットメーカーということになりますが、ダークプール等の場合は、複数のマーケットメーカーが気配を競い合っているという面も大きく違う点かとは考えられます。なお、ダークプールにつきましては、現在、透明性の確保に向けた規制の導入準備が進められているところでございますので、今後、ダークプールの実態把握の中で、こうしたダークプールの運営の問題があれば、また検討するということかと考えられます。
23ページは、PFOFのまた別の論点でございまして、PFOFというのは、マーケットメーカーが相対取引で約定してしまうことも多いと考えられますが、こうした場合には気配情報が公表されないため、市場における価格発見機能が低下する可能性があるとの指摘がございます。なお、同様の問題点は、ダークプールも気配情報の公表義務がないために指摘されておりますが、若干違いがあるとすれば、ダークプールの主な利用者が機関投資家であるのに対し、アメリカ等の例を見ますと主として個人投資家の注文がPFOFによりマーケットメーカーに回送されているといった違いはあるかと思います。
以上を踏まえて、25ページ、検討課題でございますが、まず1つ目、高速取引行為と最良執行のあり方でございます。高速取引行為者とその他の投資家との間にスピード格差があることを踏まえ、一部の証券会社においてはレイテンシー・アービトラージへの対応策が既に採用されておりますが、こういった取組みをほかの証券会社にも促すということについて、御意見をいただければ。それから、2つ目の矢尻ですが、こういった対応策を採用している場合に、顧客に対してどのように説明すべきか、あるいは最良執行方針等にどのように記載すべきかという点について、御意見をいただければ。
2ポツ、PFOFの取扱いでございますが、ただいま説明した最良執行の観点及び市場における価格発見機能の観点から指摘されている点に加えて、何か検討すべき論点等があれば御指摘いただければと思います。また、PFOFを禁じていないアメリカにおいても、先ほど申し上げたように規制の見直しが進められております。日本においても諸外国における今後の規制動向等を踏まえ、機動的に検討を進めるということも考えられますが、これについても御意見を頂戴できればということでございます。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からの説明を踏まえて、25ページのⅣ、検討課題について御議論いただければと思います。今回も多くの委員に御発言いただく機会を確保する観点から、御発言の時間は3分を目安にしていただければと思います。2分を過ぎますと、事務局から発言時間の残りが1分である旨のチャットが全員宛てに送付されますので、発言時間の参考にしていただければと思います。
それでは、御議論をお願いできればと思います。それでは、大和総研の横山様、早稲田大学の宇野先生、野村證券の辛島様の順で御発言いただきたいと思います。横山様、よろしくお願いします。
【横山委員】
黒沼先生、ありがとうございました。また、事務局の皆様、丁寧な御説明ありがとうございました。大和総研、横山でございます。ちょっと手短にポイントを中心にお話しさせていただきたいと思います。
今回の御指摘いただいた問題というのは、ある意味、現状、1か所に取引が集中している中では顕在化しにくい問題について、今後、市場間競争が活発化していった中で問題が顕在化してくる可能性がある。そうした中での言わばフォワードルッキングな対応ということを考えようということではないかと理解させていただいております。そういった状況ですので、具体的に何が起こるかというのは正直分からない中での議論になってしまいますので、基本的にはプリンシプルベースといいますか、基本的な方向性といいますか、そういったところが中心というふうに考えるべきかというふうに思っております。
高速取引のほうにつきましていただいた検討課題でございますけれども、私は、高速取引行為、即、悪玉というような考え方にはくみしたくないと思っておりますが、ここにあるような問題について、何らかの対応を各会社さんがいろいろ工夫されるということ自体は、それは当然あってもいいことかと思います。ただ、言わば現時点でフォワードルッキングに見ている中で、ある特定の方向性を無理に促していくというのは、やや時期尚早かなというふうに思っております。むしろ、基本的な考え方としては、対高速取引について、こういったサービスをしていますということをお客様がちゃんと認識して、その中で例えば手数料等とかとの兼ね合いで選択ができる、そういった環境を整えることが、まずは第一歩なのかなというふうに考えております。もちろん、その際にあまり詳細な開示をし過ぎると、今度は、逆に裏をかかれることになるかと思いますので、内容的には基本的な方針といいますか、考え方を開示するというところかと思っております。
PFOFのほうにつきましては、もう少し根深い問題かと私は思っておりまして、と申しますのは、言わば表向きの価格と裏の価格が存在する、それを悪用するというふうな懸念を考えたときには、やはりPFOFの透明性の確保というところをしっかり考えていかなければならないのではないか、と考えております。私の考えは、少し行き過ぎかもしれませんが、せめて最少単位の注文・気配につきましては、掛け値なしで提示するのが本来の姿かなというふうに考えております。最低限、やはり最良執行を価格と手数料含めたコスト面でしっかりと実現していただかないと、ここに懸念されているような最良執行や価格発見機能に対する問題点というのは解消されないのではないかというふうに懸念しております。
以上でございます。ありがとうございました。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、宇野先生、お願いします。
【宇野委員】
宇野でございます。それでは申し上げます。
まず、HFTとの共存という観点に関して言いますと、リアルタイムで最良気配がどこにあるかを踏まえて行動しているのはHFTだというふうに考えることができると思います。そして、御紹介にあったようなレイテンシー・アービトラージのような行動を仕掛ける能力を持っているということも事実ですので、今回、個人投資家にSORのような機能を提供するに当たっては、こういった環境、高速取引業者の行動を踏まえた形でSORの機能を提供することを促していくということが重要ではないかと思います。そうでないと、ある意味で高速道路に自転車で入ることを促すようなことになってしまって、かえって、今回やろうとしていることが悪い結果といいますか、いろいろな混乱を招くことにもなりかねない。そういう意味では、SORというもののデザインの中で、こういった高速取引業者と共存していく上でのリスクに対処するということの説明、あるいは機能の提供ということは非常に大事になっていくかなと思っております。個人投資家がHFTの存在に対して不安、あるいは不満を持っているということに関して言いますと、執行におけるスピードにおいて高度なSORが個人投資家にも活用できるようになるということは、その意味でのギャップを少なくする、縮めるという効果もあるわけで、そういう意味では、提供されるサービスの質というのはやはり重要になってきますので、そこに対する注意喚起みたいなものは必要かなと思います。
Payment for order flowに関して言いますと、私は、Payment for order flowというのは、オーダーフローの流れ、オーダーがどこに流れていくかという点に対して、価格以外の要素が導入されるということを意味しているというふうに思うんですね。そういう意味で、今回、市場にある価格を重視して、これに基づいて注文が流れるという方向に今の市場の在り方を変えようとしている中で、それ以外の要因をここで同時に導入するということは非常に混乱を招きかねない。そういう意味では、現状、PFOFは日本では実施されていないということに立つとすると、現状でこのことを同時に認めるとか、拡大するとかいうようなことは混乱を招くのではないか。将来、今回、検討している事項が定着した後で、そういった政策がさらに市場の効率的な機能を高度化することが期待できるということについては、改めて議論したほうがよいのではないかと思っております。
以上です。ありがとうございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。次に辛島様、お願いします。
【辛島委員】
野村證券の辛島でございます。よろしくお願いいたします。
横山委員の御発言とちょっと重なるところもあるのですが、まず、1点目の高速取引につきましては、資料12ページの記載にもございますが、公表情報から得た予測に基づいてリスクを取って行っている行為であるのであれば、善悪論から単純に悪と決めつけるのはあまり冷静な態度ではないとは思っています。ただし、気をつけなければいけないのは、例えばトレーディングベニュー側で予測の精度を上げるための特別な情報を、例えばちょっと早めの気配情報を提供したりとか、あるいは特定のマーケットメーカー、これも気配の質がいいという観点で選んでいるのだったらいいとは思うのですけども、何らか別の要素で特定のマーケットメーカーに優先的に取引できるような仕組みを用意するといったような、レイテンシー・アーブをやりやすくための仕掛けをベニュー側が用意してあげるというようなことがあれば、ここはやはり投資家間の公平性の問題が生じてくるのではないかと思います。これは、どちらかというと、回送側の証券会社の問題というよりも、ベニューをどう監督していくのかという観点から考えていくべきなのかなというふうに思っております。
また、SORの動作につきましては、証券会社は、自社の顧客がレイテンシー・アーブによって不利にならないように努力する、これは当然のことであって、ある意味、売りになるポイントだろうというふうにも思っています。一方で、あまり細かいアルゴリズムを開示するということに関しては、やはりアービトラージャーに対して手の内を明かしてしまうということになりますので、制度として求める範囲としては、SORの動作については概略を開示するということで、詳細なところに関してどこまでを開示するのかということは、各社に委ねていただきたいかなというふうに思っております。
2つ目のPFOFに関してですが、資料は、基本的にマーケットメーカーと証券会社との関係で説明されておりますけれども、やはり気になるのはトレーディングベニューを経由して支払われる形態ということで、日本の場合ですと今現在はPFOFは行われていませんが、多分、トレーディングベニューがセットになった形で何か起きてくる可能性があるなというふうには思っていますので、これをまず考慮しておくべきかなと思います。その場合は、やはり単純にSORを使っていれば最良執行は保たれるという考え方というよりも、証券会社のSORのロジック、それから、回送先のベニューの取引制度、そこに参加するマーケットメーカー、ここをセットで見て、特定のマーケットメーカーに最終的に注文が集中していくような構造になっていないかというのを見ていく必要があるのかなというふうに思っています。
あと、もう一つ、PFOFを前提にして手数料無料、まさにロビンフッドの形態ですけども、手数料無料をうたうというのは投資家を誘引する強い言葉でありますので、実際には裏側でスプレッドの形で支払っているということから、単に手数料無料とうたうだけであれば、有利誤認というふうにもなりかねないかなというふうに思います。
ただ、今の日本では、まだPayment for order flowに関しては始まっていないという状態ですので、今現在から直ちに禁止しますとか、強い規制をかけるというよりは、もしやるのであれば、投資家にきっちりと開示してくれということをまず求めて、その上で弊害が顕在化する兆しが出てきた場合には、次の手を打っていくというような順番でいいのではないかなというふうに思います。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。続いて久保様、清明様、清水先生の順で御発言いただこうと思います。久保様、お願いします。
【久保委員】
ありがとうございます。フィデリティ投信、久保でございます。
早速でございますが、まずは高速取引のほうでございます。レイテンシー・アーブですけれども、HFTにつきましては、私どもも機関投資家として流動性を市場に厚く供給する投資家として、現時点においては欠かすことのできない存在という認識をしております。一方で、レイテンシー・アービトラージということについて言いますと、現場のトレーダーの話では、それほど大きな問題というふうには、今のところ印象としては持っていないということは聞かれたものの、その他ある各種戦略とは少し性格が異なる、これ、アービトラージというんだろうかというような印象も持っているという一方での見方がございます。もちろん、価格をいち早く発見して、それをいち早くアクションに起こせるという能力の力かもしれません。ただし、先ほど説明でもありましたけども、回送の可能性をより強めれば強めるほど、レイテンシー・アーブから見れば、リスクは低下して確実な利益機会、しかも、ほかが追いつけないスピードでの確実性がどんどん高まる利益機会になっていって、事実上、不公平感、あるいは不公正感というようなレベルにもなりかねないということを懸念する部分があろうかと思います。したがいまして、そのものを禁止するということではないんですけども、やはり皆様が仰るようにSORを通じて、ある程度、レイテンシー・アーブに対する対応策というのが取られるということについては一定の必要性はある。それから、そのSORに係る開示につきましては、これも皆さんと同様で、ハイレベルでの開示に現時点ではとどめてよいのではないか。
PFOFについてですけれども、こちらは、正直言いまして、1980年から始まったという時代背景からして、利益誘導が商慣習として、まだ別に一般的に行われていた時代からずっと続くもの。それが、いろいろな問題が指摘されることで、規制が重なっていって現在に至っているというふうに見て取れると思います。我が国においては、まだそういった商慣習がない中で、先ほど辛島さんからもお話があったかと思いますけども、あえて新たな取引の形態として導入する、あるいは進めているという価格発見だとか、手数料無料のメリットとかということ、これ、手数料メリットとは私は全く思いませんけども、そういったことをあえて導入するという考えを現時点で取る必要は、正直、全くないと言ってもいいのではないかというふうに思っております。
以上でございます。ありがとうございました。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、清明様、お願いします。
【清明委員】
マネックス証券の清明でございます。御説明ありがとうございます。私ども個人投資家向けネット証券ですので、今日も個人投資家という点に主眼を置いて発言させていただきます。
まず、1つ目のHFTに関してなんですけれども、IOC注文等を含めた通常のSOR運用を行っている場合においては、個人投資家がレイテンシー・アービトラージの対象になる可能性は少ないのではないのかなというふうに思っております。2つ理由がありまして、1つ目は、そもそも個人投資家の取引は、ルールが非常に少ないために予測することが難しいので、ターゲットになりにくいのではないか。2つ目が、レイテンシー・アービトラージというよりも、HFT自体は、恐らくビッド・オファー・スプレッドなどをターゲットにしていることが多いのではないのかなというふうに考えています。とはいいましても、過去に問題視されたようなタイムインフォース注文など、そういった特殊な仕組みをつくると狙われやすくなりますので、そういったものは避けるべきかと思っております。なお、HFTの収益源につきましては、マーケットメイクをしていることから起因しているものが多いのではないかと思っていまして、そうやって流動性を提供いただいていることは、個人投資家にとってもプラスである点もとても重要ですので、そういった仕組みを理解いただけるような形になりますと個人投資家の不信感や不安感も払拭できるのではないかなというふうに思っております。
2つ目の開示のところについては、先ほど来から出ておりますとおり、ハイレベルな開示がいいかなと思っております。
それから、2つ目、PFOFにつきまして、こちらアメリカで導入されているということですけれども、まず、念頭に置かなければいけないのは、アメリカの市場環境と日本では大きく異なっている点ということかと思います。アメリカにおいては、取引所やPTSも数多く、それぞれ相応に流動性もある中で、日本と異なって分散市場の構造になっています。また、それがゆえにナショナル・ベスト・ビッド・アンド・オファーが提示されていて、その中でブローカーは最良執行義務を負っていて、その行為規範というものが明確になっています。その中でブローカーは、自社で最良執行の考え方、PFOFの相手であるマーケットメーカーの選定理由、ポリシーをしっかりと定め適切に開示するということをしています。かつ、そのポリシーに従ってエグゼキューションなされているかを定期的にチェックし、また、恐らく必要に応じてマーケットメーカーを入れ替えたりとか、さらには、ベストエグゼキューションだったかを評価する第三者機関を活用するなどもしております。そうやってブローカー側の負担といいますか、コストも大きいというような状況になっていますが、先ほど申し上げました米国の市場構造や、それがゆえに板取引も一定割合にとどまっている環境等に鑑みまして、現状のようなPFOFが導入されているという状況に至っているものですから、日本において、今、導入するかという議論をする前に考えなければならないことがまだあるんではないかなというふうに思っております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。では、次に清水先生、御発言お願いします。
【清水委員】
清水です。
まず、高速取引行為とレイテンシー・アーブについてですけれども、これは、冒頭、横山委員もおっしゃっていましたが、仮にもし市場が1つであれば、市場が1つがいいと思って申し上げているわけではないですけれど、市場が1つであればレイテンシー・アーブは起きませんし、HFTは単に早い投資家にすぎないというふうに理解しています。HFTが登場してから、どこの国でも取引のスプレッドはかなり大きく縮まっていますし、市場に対するメリットも大きなものがあると考えています。その一方、HFTが登場した結果、証券市場の取引コストの性質が変わってきているのではないかと考えています。すなわち、昔は広いスプレッド、つまり、高い取引コストだけれども、確実なスプレッドだったと思います。確実なスプレッド、つまり確実な気配ですね。HFTが登場したことで、スプレッドは大きく縮まって、取引コストは小さくなった反面、気配については、キャンセルが増えて気配の不確実性が高まったり、あるいはレイテンシー・アーブのような形で、板に取引が出ているように見えけれども、そちらの市場に回ってみると、1つ繰り上がった気配に切り替わっていて、想定した気配で取引が取れなかったというような不確実な気配という取引コストに変化しており、昔と今とではそこが見合いになっているんじゃないかと考えています。このように市場コストの性質が変わったわけですから、確実で広い気配だったところから、不確実で狭い気配になったこと、どっちが得か損かというのは実証してみないと分かりませんが、これに対して市場参加者が対応していく必要があるんだろうと考えていますので、対応としては、皆様がおっしゃっているように、SORであるとか、いろんな形で対応していただくしかなくて、そのためには、ある程度、時間がかかるのではないかと理解しました。
それから、PFOFについてですが、これは、私も問題があるケースについては少し厳しい見方をしたほうがいいんじゃないかという考えです。手数料は、言わば料金体系ですが、様々なところで料金体系が複雑であったり、いろんな割引をつけたりして、一見、消費者にとって得なように見えて、実は複雑化が進んで消費者に理解されなくなるというような事例が、一般の商取引でもよく見られることだと思います。証券市場は、そうでなくてもかなり複雑なところであって、一般投資家から見て敬遠されがちですが、証券市場が大原則として重視しなければいけないのは、一般投資家の長期投資による資産形成の場として、ある種の分かりやすさのようなものを維持することがかなり重要なんじゃないかと考えています。PFOFは、前回も御指摘があったように、こういうものを幅広く認めていきますと、実質的な手数料水準が分かりにくくなるとか、執行価格が本当に最良気配だったのかどうかが分かりにくくなるとか、あるいは投資家とブローカーの間に利益相反が発生しそうだとか、それから、ベニューと証券会社の間にもある種の内部補助のようなものが出てきてしまっているように見えるとか、そういう意味で、一見、割引のように見えて手数料無料というのが、ロビンフッドの例も出されましたが、必ずしも消費者、投資家にとっていいとは限らないと考えます。
長くなって失礼しました。
【黒沼座長】
ありがとうございました。続きまして、永堀様、内田様、上柳先生の順に御発言いただきます。永堀様、よろしくお願いします。
【永堀委員】
よろしくお願いいたします。モルガン・スタンレー証券、永堀でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。
まず、高速取引行為と最良執行のあり方というところですが、横山委員のほうからもお話しいただきました通り、今回の金融庁におけるタスクフォースでは、コンセプトであったり、ガイドラインといったような大きな命題の部分を、ここで議論させていただいた上で、その詳細については、各々の市場参加者が、それをどう準拠していくかというところなのかなと考えております。そういったことからも、証券会社に対して、その対応を促進していくか否かというところは、各証券会社に委ねるべきではないかと考えております。また、アンチゲーミング機能については、当社もかなり多くの機能を装備しておりますが、証券会社における執行サービスの一つだと考えており、この部分を全ての証券会社に義務化していくというよりは、その証券会社のサービスを投資家側が選択できるようにしていくというのが一つの方法と考えております。
また、レイテンシー・アービトラージの対応策に対するお客様への説明というところですが、こちらは、辛島委員も、また久保委員もおっしゃられたとおり、詳細の部分は、いわゆるリバースエンジニアのリスクもあるということから、やはり概略のところを中心とした記載にとどめるべきと考えております。
また、PFOFの取扱いというところですが、こちらは、今回の資料の21ページにもお話しいただいているところでしっかりとポイントが示されておりますので、私どもも、これがまさに検討すべき点であると考えております。それから、日本における法整備というところも、今、まさに、この資料にも書いていただいているとおり、米国において、規制の見直しが進められているところでございますので、本邦においても海外の状況を鑑みながら、機動的に最終的な結論を出していくというところに相違ございません。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、次に内田様、お願いします。
【内田委員】
ニッセイアセットマネジメントの内田と申します。よろしくお願いいたします。
まず最初に、高速取引行為について申し上げたいと思います。先ほどの辛島さんや、今、永堀さんの言及にもありましたが、証券会社が高速取引行為の当事者として、レイテンシー・アービトラージの対策を取っていただくこと自体は、証券会社が自らのサービスの有効性を高めるという、ある種の自衛手段として評価されるべきことと認識いたしております。従って、これは自社の競争力を確保・向上させるための手段であって、規制にはなかなか馴染まないとも認識しております。機関投資家からしても、やっていただければ有難いのですけれども、ただし、対策は取ったものの常に各社とも試行錯誤の中でやることですし、絶対に正しいというものがない中でやるものですので、規制するのはなかなか難しいと思っております。
それから、レイテンシー・アービトラージの顧客開示についても、2つの観点から難しいと考えています。1つは、詳細な対応策を記述いただく。これ自体は有難いのですが、今、永堀さんがおっしゃられたように、リバース・エンジニアリング合戦のような状況を招いて、変な競争を招くというようなことも考えられますし、後、各社がチューニングを図る中で、仕様等を見直した際の開示が、それまでの開示内容との連続性が途切れてしまうということも起こりうるため、開示が難しいのではないかと思っています。それから、2つ目は、機関投資家の立場からは繰り返しになりますけど、対応していただければ有難いのですが、このタスクフォースの中でずっと議論させていただいている個人投資家へSORとかをいかに分かりやすく伝えるとか、せっかく、そういう議論をしている中で、このリバース・エンジニアリング的なものは、かなり高度・テクニカルな記述になります。そういう点では、常々申し上げているように、関心、興味のある方が、それなりの記述までたどり着けるような、ハイレベルのという言い方もありますけども、開示の仕方がよいのではないかと考えております。
あと、PFOFについては、極めて慎重な対応が必要だと思います。これについて、私は専らダーク・プール・スキームを通じて提供されることになると思っておりますが、これについては、今年9月から適用されますダーク・プール規制が導入されていることが基本的には必要要件ではないかと思っております。その上で、PFOFを使う場合は、トレード・アット・ルールのようなものを追加適用するぐらいの対応が必要ではないか。誰が価格を保証するのかとか、こういった議論が非常に重要だと考えております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。それでは、上柳先生、お願いします。
【上柳委員】
ありがとうございます。
高速取引の関係ですけれども、金融商品取引法の40条の2には、最良執行の方針と方法を開示せよというふうに明示されております。それとの関係で言うと、アービトラージへの対応策というのは、積極的に最良執行していこうということでなくて、防衛的なのかもしれませんけれども、関係するものだというふうに思います。ですので、取組を促すことを強制するということは必要ないのかも分かりませんけれども、対応策を採用しているか、していないかということは開示されてしかるべきだろうというふうに思います。ただ、その程度については、私がよく分かっていないという面もあるのかも分かりませんけれども、やはり個別の事業者の方々に任せる部分が多くなって、それを市場のほうがどう評価するかということで、金商法40条の2の考え方に沿っていくということになるのではないかというふうに思います。
PFOFについても、繰り返しですけど、40条の2が方法、あるいは方針を出せというふうに言っているのは、もともと、やっぱり最良執行をしなければいけないという義務があるということが前提だろうと思いますので、そういう観点から、これによって最良執行ができるのであれば、それはそれで開示していただきたいですし、逆にそれを阻害するということであれば、あるいは、そういうリスクがはっきりしないということであれば、採用されるべきでない手法なのではないかというふうに感じました。
以上です。
【黒沼座長】
ありがとうございます。それでは、最後に藍澤様と梅野様から御発言をいただきたいと思います。まず、藍澤様、よろしくお願いします。
【藍澤委員】
ありがとうございます。藍澤證券の藍澤です。よろしくお願いいたします。
御説明のあった2つのテーマのうち、2つ目のPFOFについて述べさせていただくと、まず、スキームとして非常に考えさせられるといいますか、そもそも我々のような中小の地場証券は、この図で言うところのブローカーが近いと思うのですが、そのブローカーが完全中立でもなく、投資家を見ているわけでもなく、マーケットメーカーを向いている時点で違和感があり、必然的に最良執行もマーケットメーカーにとっての最良執行になってしまうのかなということで、そのように先ほど来御説明があったような懸念が生じてくるのかと思います。手数料無料は、個人投資家にとって大変魅力的だとは思いますが、そのメリットと、今日、御説明があったデメリットを比べると、むしろデメリットのほうが影響が大きいのではないかと思ってしまいます。
御説明の内容以外でも、例えばですが、マーケットメーカーが自己のポジションと対当させて利益を得たいがゆえに、恣意的にそう仕向けるようなリサーチレポートを提供して、その結果、直接、自社の投資家に、そうした商いをさせたらフロントランニングかと思いますが、それが直接顧客ではなくて、このスキームのようにブローカーを通してブローカーの投資家に提供されて、彼らが商いをした場合に、果たしてフロントランニングと認められるのかですとか、また、この図にもありますが、注文を自己と対当させるのではなく、市場に出す場合や、投資家同士の売り買いのポジションを対当させる場合も含まれると思いますが、その際にどちらかに過不足が生じた場合は、やはり市場でその分を調達すると思うのですが、その際、市場が複数あった場合、例えばリベートを出してくれる市場がもしあれば、そこに出してしまうとか、そうなると、さらにその分、価格に転嫁されてしまうのかなと考えると、その辺りの事情に詳しくない個人投資家は、手数料ゼロと引換えに不利な値段で約定してしまうことになるのではないかというようなことも考え、言い出したら切りがないのかもしれませんが、この辺りも、御提示あった内容に加えて利益相反の観点から検証していくべきではないかと考えました。
簡単ですけれども、以上です。
【黒沼座長】
ありがとうございます。それでは、梅野様、お願いいたします。
【梅野委員】
ブラックロックの梅野でございます。
25ページの問題意識のところでございますけれども、金融庁様の資料ですと、1番はHFTとの取引、2番はマーケットメーカーとの取引というふうに、恐らく資料上も整理されていたかと思いますが、経緯を考えますと、HFTが乱立し競争激化していく中で、フィーを払ってでもエクスクルーシブにフロー情報が欲しいと考える一部のHFTがマーケットメーカーになっているという意味では、私から見ますと、HFTもマーケットメーカーも同一主体であるというふうに整理しておりますし、そういった意味では、この25ページの問題意識というのは、取りも直さず、テクノロジー上、優位性を持った一部の投資家、HFTですとかマーケットメーカーに対して、相対的に劣位にあると考えられる個人投資家の利益をどう守るかという一点に尽きるのかなというふうに考えております。
その観点から、1番の高速取引、レイテンシー・アービトラージの対応策の取組を促すことについてはどう考えるかということでございますけれども、これは、もちろん、そのような取組があればよいというふうに考えますが、証券会社ごとに対応能力、あるいは予算といったところの制約もあると思いますので、この辺りは個社対応というところだと思います。一方で、対応策を採用している場合には、なぜこういう対応策が個人投資家にとってメリットがあるのか、そのメリット及びデメリットを個人投資家向けということですから、なるべく分かりやすく、メリットに関しましては価格改善効果を具体的に、デメリットに関しましては、HFTも個人投資家も証券会社にとっては顧客ということですので、潜在的な顧客間の公平性、あるいは利益相反の可能性、こういったものをどう回避しているか、こういったことを分かりやすく説明することが重要だと思います。
2番のほう、PFOFでございますけれども、こちらも、そういった意味では、先ほどと同様、個人投資家にとっての取引相手はマーケットメーカー、HFTですので、投資家にとって、こういったPFOFを導入することのメリット、デメリットを分かりやすく説明するということだと思います。特に、デメリットですね。PFOFを導入することによって手数料が無料、もしくは割引になる代わりに、フィーを払ってでもフローを見たいと思っているHFT、マーケットメーカー、こういったところとの公平性をどう担保しているかということをきちんと分かりやすく説明するということだと思います。個人的には、分かりやすく説明するということが仮に果たされたとしても、やはりデメリットのほうがPFOFに関しては大きいんじゃないかというふうに現状では思っており、導入はまだ時期尚早なのではないかというふうに思っております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。
それでは、委員の間の意見交換を終わらせていただきます。発言時間についても、皆さん御配慮いただきまして、ありがとうございました。
オブザーバーの方から御意見があれば、大変恐縮ですけれども、2分を目安に御発言をお願いしたいと思います。それでは、チャイエックスの色川様から御発言、お願いいたします。
【色川オブザーバー】
チャイエックス、色川でございます。発言の機会をありがとうございます。
SORがIOCで発注することや、順繰りに回るのではなく、一度に複数発注するといったことは、現在の技術環境においては、議論の余地すらないぐらいに私は思っておりまして、ほかの観点を指摘したいと思います。
高速取引行為者と最良執行のあり方という検討課題において、一番問題なのは、成り行きとか、積極的な価格による指し値注文など、即時約定ニーズを持つ注文を処理するに当たって、対当可能な最良気配値を持つ市場を無視して別の市場に指し値を置くことです。これをロックト・マーケットとかクロスト・マーケットとかといいまして、米国では禁止事項に当たります。即時約定という顧客のニーズを無視した極めて問題ある行為といえます。過去、PTSにおいて故意にこの状況をつくり出し、批判された事案がありました。また、そもそも東証のみでの執行が容認されている状況においては、PTSに最良価格があっても、それを無視して東証に積極的な指し値を置くと、当該証券会社とそして東証は、悪気なくロックト・マーケット、クロスト・マーケットをつくり出します。本日の資料12ページの単純な例で言えば、Aの取引施設がPTSで、Bの取引施設が東証や他のPTSといった場合、そもそも、東証や他のPTS、つまりBの施設にAのPTSと対当可能な指し値を置いてロックト・マーケットをつくり出したこと自体の方が問題の発端であります。SORの手法も詳細ももちろん大事なのですが、本来、投資家に帰属すべき価格改善を高速取引行為者に持って行かれないためには、ロックト・マーケット、クロスト・マーケットをつくり出して、非常に簡単なインターマーケット・アービトラージを可能にするような状況をつくり出さない市場構造が最も大事です。そのために、コンプライ・オア・エクスプレインの運用においては、株のブローカレッジを経営の中、商品の中に入れるのであれば、よほどの事情がなければ、ちゃんと複数の市場、複数のPTS、そしてSORを利用することへのコンプライを求められることが最も重要だと、このように考えております。
ありがとうございました。
【黒沼座長】
ありがとうございます。続いて、日本取引所グループの南出様、御発言をお願いします。
【南出オブザーバー】
日本取引所グループの南出でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
PFOFにつきまして、補足的に1点述べさせていただきたいと思います。まず、我々の立場としましては、PFOFについて、これを促進するという観点ではございませんけれども、もし仮にこれを認めるのであれば、アメリカの規制につきまして、情報開示、レギュレーションNMSの606について資料でも触れていただいておりますが、当たり前のことでございますが、情報開示をすれば最良執行義務というのは逃れるものではないというところは、アメリカでも当然そのように認識されております。ロビンフッドにつきまして、SECから昨年末、情報開示について処分をされておりますが、それ以前にも、ベストエグゼキューションについてそれを怠っていたというところで、自主規制のほうで処分されているという事例もございます。もし認めるのであれば、情報開示プラス行為規制のところもしっかり見ていく必要があるのではないかと考えております。
あと、課題2つに共通するのでございますが、何名かの委員の方から、取引ベニューの売買制度が与える影響というところも御指摘いただいております。これにつきましては、私どもも含めて、各取引ベニューが、売買制度の在り方と、それが与える影響というものを慎重に考える、そのような必要があると自戒の念を込めて考えた次第でございます。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、ジャパンネクストの山田様、ご発言をお願いします。
【山田オブザーバー】
発言を希望させていただきたいと思います。すいません、よろしくお願いします。
今回の議論を経まして、執行サービスを行う証券会社は、よりよい価格とか、よりよいコストでの執行の実現に向けて、SORを利用したり、IOC等の注文方法を駆使し、様々な工夫をして、執行サービスの質を競うことになるという話は、先ほどから出ているところだと思います。当然ながら、そのメソッドに関しましては、お客様に、事前に詳細とまではいかなくても、ある程度の説明が必要ですし、事後的な検証も当然必要になってくると考えております。また、何よりも、お客様にとっては、出来あがりの取引結果が一番大切だということは、以前から出ている議論のとおりだと思います。
ただし、IOC等の非開示注文に関しましては、例えば、実際に取引コストの上昇につながっているという研究とかも出ておりますので、いい面ばかりでないという部分あることも考え、この点は今回引用されている辰巳先生の他の論文にも書いてありますが、各社で知恵を絞って、よりよいサービスを利用者に提供するというのが、そもそもの今回のタスクフォースの意義だと考えております。
今回、検討課題になっておりますレイテンシー・アービトラージに関しましては、そもそもアービトラージを戦略とするHFTもたくさん登録されていることもあり、それに対抗するということよりも、そのような市場構造であることを踏まえ、各証券会社がそれをうまく利用した形で、お客様に少しでもベストに近い価格で執行できるような方法を、切磋琢磨して工夫していくことが大事だと考えております。ですから、今回の検討課題にあるように、証券会社にいろいろな取組を促すことについては、当然、必要なことだと考えております。
また、この結果という部分に関して、やはり客観性を持たせるためには、ベンチマークとしての最良気配、いわゆる米国におけるNBBOみたいなものを導入し、そこからの比較を各社が開示するということも必要じゃないかなと考えております。
PFOFに関しましては、我が国の市場構造にどのようなインパクトを与えるかというのは分からないのですが、少なくとも皆様がおっしゃっているように、十分な開示、特に、お客様に対するリスクの開示というのは絶対必要なことだと考えております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。日本証券業協会の松本様からも申出がありましたので、松本様、御発言をお願いいたします。
【松本オブザーバー】
ありがとうございます。日本証券業協会の松本でございます。
レイテンシー・アービトラージの説明について発言させていただきたいと思います。多くの委員の皆様から、ハイレベルでの開示ですとか、プリンシプルでの対応という御意見がございましたが、そちらに賛同いたします。特に今回、例えば、機関投資家は必ずしも価格のみを優先しているわけではないことから、個人と機関投資家では、価格重視について、ちょっと対応を変えるべきではないかというような議論もございますので個人と機関投資家でも説明ぶりが違うでしょうし、また、個人といってもいろいろな投資家の方がいらっしゃいますので、各社で顧客の属性に沿って分かりやすい説明をしていくということを、プリンシプルで各社で決めていただくような対応がよろしいかと思ってございます。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。
それでは、この辺りで次に進ませていただき、27ページの「Ⅴ 取りまとめの方向性」について、事務局より説明をお願いします。
【繁本市場業務監理官】
企画市場局市場課の繁本でございます。
それでは、お手元の資料、27ページを御覧ください。取りまとめの方向性ということで、過去2回の議論を踏まえて事務局で作成したものでございます。
1ポツ、個人投資家にかかる注文執行における価格の重視ということでございます。1つ目、顧客が個人である場合については、最良執行方針等の法定記載事項の中に「主として価格以外を考慮する場合には、その旨、その理由」を追加と。すなわち、価格以外を考慮した最良執行の方針を出す場合には、何でそういった方針になっているのかということを法定記載事項として説明してはどうかというものでございます。
それから、ダークプールを使用する場合にも同様に、その旨、その理由を追加してはどうかということでございます。
2ポツ、市場構造の変化を踏まえた最良執行の在り方とその顧客説明でございます。(1)SORによる注文執行のルール等の透明化につきましては、まず、最良執行方針等の法定記載事項に「SORを使用する場合は、その旨及びSORによる注文執行のルール」というのを追加してはいかがかと思っております。具体的には、その下、※印でありますが、執行先等、基本となる注文執行のルール、同値の場合の処理といった基本的な執行ルールとともに、こうしたルールを採用する理由、例えば執行先が取引所とPTS1社だけですというのであれば、なぜそうなっているのかという説明、同値の場合に例えば自社のダークプールを優先するというのであればなぜそうしているのかといった理由を説明していただくということで、前回御議論いただいた利益相反の開示といった部分も、ここの部分で対応していただくということでいかがかと考えております。
それから、2つ目の矢印ですが、執行結果の法定書面である最良執行説明書でございますが、こちらの法定記載事項にSORを使用する場合には、その価格改善状況も追加してはどうかということで、具体的にはその下、※印にありますように、約定価格、約定日時、執行等がされた取引所・PTS・ダークプールの別、それから、SORの使用に際して比較した取引所・PTSにおける価格ということでございます。ただし、ダークプールの規制でも類似の価格改善の説明義務が今後導入されますが、ダークプールを使っていない証券会社なんかが、こうした説明体制を整えるには一定の時間がかかると考えられますので、施行については、経過期間を設けてはどうかと考えております。
それから、(2)、(3)高速取引行為と最良執行の在り方、PFOFの取扱いでございます。こちらにつきましては、本日の議論を踏まえて、事務局としても整理してまいりたいと思います。先ほどの議論を踏まえますと(2)につきましては、まず、対応策については、各社のプリンシプルベースではあるが、一定の対応策が行われることが望ましく、また、そうした対応策については、詳細なということではなくて、分かりやすい開示をしていってはどうかというような意見が多かったかと思いますが、また改めて整理をしたいと思います。
また、PFOFの取扱いにつきましても、本日の議論の中では、資料の中で説明されていたような最良執行の観点、それから価格形成の観点からの問題点については、多くのメンバーの皆様も共通の問題意識があるという中で、少なくとも、PFOFを日本でも解禁するということについては、かなり慎重な検討が必要なのではないかという御意見が多かったかと思います。この辺りも、また精査して、今後、整理をしてまいりたいと思います。
また、今後、この取りまとめが行われていくわけですけれども、取りまとめが終わった後の話になりますが、現在、日本証券業協会様におかれては、最良執行方針等の参考モデルをつくられているところでございます。新たな最良執行方針のルールの下では、この参考モデルも改定されることが期待されるということかと思いますが、その際には、昨年10月1日に東証においてシステム障害により終日取引が停止されたといった点も踏まえ、取引所がシステム障害により終日取引が停止された場合における証券会社の対応に関する記載ぶりなども、検討事項の一つになるのではないかと考えられます。
事務局からは以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。
それでは、取りまとめの方向性について御意見がございましたら、お一人4分を目安に御発言をお願いします。先ほどと同様に、発言時間が残り1分になりましたら、事務局から、発言時間の残りが1分である旨のチャットを全員宛てに送付させていただきます。それでは、よろしくお願いします。それでは、大和総研の横山様から御発言をお願いします。
【横山委員】
黒沼先生、ありがとうございます。事務局の皆さんも、非常に短期間におまとめいただきまして、ありがとうございました。基本的な方向性については、私自身は異存はございません。
1につきまして、現時点においては、1つの落としどころかなと思っております。
2につきましても、前者は前回お示しいただいた1から5の項目のうち、4の1回で決まらなかった場合にどうするかと、5の開発主体の違いを落とした形かとは考えておりますけれども、基本的には、今必要とされるところは一通りカバーされているのかなと感じております。ただ、当然そこまでお考えの上でのことかとも思うのですが、やはり、重要な事項はこれで尽くされているとは必ずしも言えないところから、その他重要な事項、例えば、特殊な利益相反関係があるとか、そういったところを書くようなところも、項目としてはあってもいいのかなとは思っております。
あと、最良執行説明書につきましても、このいただいた内容で特に違和感はございませんが、すみません、これは今回の射程の範囲の話ではないのかもしれませんが、価格につきましては、どちらかというと、事後的な検証は比較的やりやすい項目だと思うのですが、では、それ以外、価格以外の要素を考慮しましたというときに、これはその事後検証は要らないかというと、私は、やっぱり、そうは言い切れないと考えております。ただ、事後検証を数値とかでするのが難しい面があるのは事実だと思いますので、今回盛り込むのはちょっと難しいかもしれませんけれども、将来的な課題としては、いわゆるエクスプレインの場合の事後検証の在り方、とりわけ、自力で検証することが難しいリテールの投資家の方々のためにはどういう事後検証の在り方が好ましいかというところも含め、今後の課題として指摘させていただければと思っております。大筋において、私自身は異存はございません。
ありがとうございました。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、辛島様、御発言をお願いします。
【辛島委員】
野村證券の辛島でございます。
ちょっと横山さんとかぶるところもありますけれども、1つ目の個人投資家にかかる注文執行における価格の重視という点につきましては、前回も申し上げましたけれども、個人投資家と機関投資家、それぞれのニーズに対して配慮した上で決めていただいていると思いますし、また、コンプライ・オア・エクスプレインということで証券会社ごとの特性の違いも考慮していただいているという点もございますので、私は全く異論はないところでございます。ただ、やはり価格重視をした方針を採用する証券会社をなるべく増やすというのが大事だとは思いますので、これも実施段階の話にはなるとは思うのですが、やはりシステム投資もかなりかかりますし、必然的に開発・テストの時間も必要になってきますので、実施時期に関しましては、十分な準備期間を置いていただくように配慮願えればありがたいかなとは思っております。
それから、2つ目のSORによる注文執行ルール等の透明化のところですけれども、資料の記述に関して、おおむね異論はございません。ただ、最良執行説明書の改善状況のところの「価格」という言葉、SORの使用に際して比較した取引所・PTSにおける価格ですけれども、「価格」は何を指すかというのは、これも実施段階の話なのですけれども、きちっと定義していただきたいなと思います。なぜならば、やはり大きな注文を処理していく際に、例えば3か所の板情報を見ているといったときに、各取引所なりPTSの上下、例えば10本ずつとか20本ずつとかの板の情報を全部合わせて比較して、どこに振り分るか決定しているというケースもありますので、それを全部書けと言われると、見るほうも分からないですし、書くほうも、例えば、説明書を1枚つくって紙にして出しますといったときに、A4で収まらないという感じにはなりますので、その辺は、最低限のところとしては、各ベニューの最良気配を記載するというところでとどめていただいて、その上の説明というのは、そうは言っても最良気配から外れたところで取引ができている場合は、当然、お客様のほうで疑問に思われるわけですから、そのための説明に必要な情報に関しては、各社が個別に追加していくというようなやり方が望ましいのではないかなと思っております。
私からは以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。続きまして宇野先生、御発言をお願いします。
【宇野委員】
早稲田大学の宇野です。ありがとうございます。
取りまとめの方向性として、ここに書かれていることに大きな違和感はございません。今回のこの議論というのは、複数の執行市場が存在している中で、市場における最良気配、最良の価格が重視されない執行状況にあったところが改善されるという点で、非常に画期的な見直しになると私は思っております。そういう意味で、市場に存在している最良の価格における執行を目指していくんだということで、それに対するツールとして、SORであるとか、様々な対応を証券会社としては、これからも迫られていく、一気にそれが実現できるものではないと思いますので、ある程度時間を置いて、段階的に、この精神といいますか、基本的な方針が実際に実行されるようになっていくことを期待したいと思っています。
それから最良気配というのが、東証と比較してよければいいという範囲なのか、市場にある全ての価格を常に比較する必要があるのか、この辺についても、最初の段階からあまりリジットな定義をしても実際に実行できないということになりかねないですので、これはそれぞれの証券会社の考え方の中で対応しながら、それによる効果をきちっとフォローしていく、監視していくということで、これがいい方向に、市場全体の機能が向上する方向に向かうように今後も監視していくことが重要かなと思います。
そういう意味では、最良執行説明書の中で、価格改善状況についての分析結果を証券会社がいろいろ工夫して作成されるということが、第一義的に非常に重要な情報源になるのではないかなと思います。本当は投資家のそれぞれの目的に沿った執行がなされているかというところが最も重要な事項ですけれども、様々な投資目的を持った投資家が存在しているということを考えますと、これを最良執行説明書の中に書くことを求めることは、ちょっと無理があるかなという気がしております。むしろ、インフラとしての市場が最良気配における執行というものをどれだけ達成できているのかということを観察するための情報あるいは投資家が参考にできる情報がこういった形で提示され、証券会社自身も、その辺について、どうやって自社のサービスのよさをアピールしていくかという意識が高まることによって、よい循環になってくれればいいなと期待しております。
以上です。
【黒沼座長】
ありがとうございました。続きまして、上柳先生、御発言をお願いします。
【上柳委員】
ありがとうございます。27ページの取りまとめの方向性について賛成です。
申し上げた上で、さらに考えるべきだという点が2点ございまして、本来は、金商法40条の2に、方針と方法を示さなければいけないということだけではなくて、ストレートに最良執行をしなければいけないという条文を、これは当然の義務と前提されていると私は考えておりますけれども、明示することが適切なのではないかと思います。何人もの委員の方からおっしゃいましたように、開示していればよいということではないというのが、例えば米国でもそのように記載されているということですし、それから、開示というのはなかなか難しくて、きちんと書けば書くほど分厚くなってしまって、かえって分かりにくくなるという問題があります。ですから、分かりやすい開示ということで、それで消費者なり関係者が事業者を選ぶということになるのだろうと思いますので、開示には限界がある。でも、開示をした上で、さらに、きちんと実際にも執行しているとなっていくのが方向性として正しいだろうと思っております。
もう1点は、これもちょっと復活折衝のような言い方で、何度もで恐縮ですけれども、いわゆるダークプールを使う場合について、最低限、トレードアットルール、不利な価格では成立させないと、これは決めてもいいんじゃないかと思っております。
以上、2点でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。続きまして、永堀様、御発言をお願いします。
【永堀委員】
モルガン・スタンレー証券、永堀でございます。
まず、27ページの取りまとめの方向性というところの1番に当たるところですが、個人投資家にかかる注文執行における価格の重視という部分について、こちらは、私ども、機関投資家を顧客にする証券会社ではあるので、客観的な立場ということではあるものの、基本的に、ここに書かれている内容というのは、私の意見とは相違がないと考えております。
また、それに対して、2番目の市場構造の変化を踏まえた最良執行のあり方とその顧客説明というところですが、今回、その前段のところでも申し上げさせていただいたとおり、今回におけるタスクフォースの考え方というのは、基本的にはプリンシプルで、コンセプト、あるいはガイドラインを決めていき、各々の証券会社の記載事項については、その証券会社に委ねていくという部分から考えると、この部分は、確かに情報としては必要不可欠だと思いますが、最良執行の法定記載事項に必ず書かなければいけない事項かどうかというところについて言えば、それは別紙でもいいのかなと感じておった次第でございます。
また、それに対して、最良執行説明書という部分ですが、こちら、お示しいただいた①番と②番というところ、確かに重要な情報だと思っております。ただ、その一方で、機関投資家様における最良執行というのは、各スライスのそれぞれの約定価格というよりは、むしろ全体像としての、親注文の執行価格というところが非常に重要だったりしますので、これをもって一義的に全ての情報を満たしたというのには、少し無理があるのかなというところでございます。そういった意味では、機関投資家を相手にする証券会社に対して、②番のSORにおける市場執行価格というのがどこまで意味をなすのかというところについては、もう少し議論が必要なのかなと感じたところでございました。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。続きまして、久保様、御発言をお願いします。
【久保委員】
ありがとうございます。
まず、取りまとめの方向性、2番の(1)、こちらにつきましては、基本的な方向性としては同意、この方向がよいのではないかと思っております。
先ほど一部の方からお話も出ていますが、利益相反に関してですけれども、前回の会合でも申し上げた点ではありますが、やはり開示と、それから、結果の検証というものは、これは1組、2つで一体のものと考えるべきだと思っております。ただ、結果説明だけがあっても、開示だけがあっても、これ、成り立たないのはそういうことなんですけれども、開示のところは、例えば外形的に資本関係があるとか、その他、取引関係で特別な関係があるとか、外形的な利益相反の可能性があるということについては、これは、その旨がこの開示の中でうたわれるということは、やはり必要なのではないかなと。投信会社のファンドに係る運用報告とかでも、そういったことがなされていることは前回申し上げたとおりでございますが、そこを少し、もう一度検討を、詳細になるかもしれませんけれども、やる必要があるのではないかと思っております。
それから、本日お話ししたところになります。高速取引のところでございますが、先ほどちょっと補足的にといいますか、言いそびれた点がありまして、高速取引について、先ほど議論の視点というのは申し上げたとおりですし、皆さんがおっしゃられていることについては、非常に同意できるところが多数ございます。
一方、その他の視点で、例えば、HFTが入ってくるに当たっても、レイテンシートレードにしてもそうですけれども、あまり簡単なアービトラージという形ではなくて、やっぱり呼び値の問題というのも、今、東証だけではなくて、PTSさんも入ってきております。そういったところで、呼び値の最適化というんですかね、清水先生に御説明いただいた呼び値との関係というのも非常にもう一度考え直す必要がある。東証さんも自戒の念をとおっしゃっていましたけれども、ある価格帯においては、もう少し、この呼び値を刻むというようなことも、やはり、この議論の中でというか、それに付随してと申し上げたほうがいいかもしれませんが、検証されるべきことなのではないかと思っております。
以上でございます。ありがとうございました。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、清水先生、お願いします。
【清水委員】
取りまとめの2点について、私も異存はありません。個人の場合は、価格をやや重視しつつ、そうでない場合に説明するという方向で違和感はありません。
ただ、議論の中でも申し上げましたが、そもそも1か所の市場にしか接続されていない場合、接続先は東証さんかと思いますが、そういう証券会社にとって、全ての市場の価格を参照するという重い責任は、全米最良価格での執行を常に求めているアメリカであってもそこまでは求めていません。アメリカでは、最良執行のための注文回送の責任を、日本ではちょっと考えにくいですが、一定程度、市場側が負わせているということに注意は必要かなと思います。市場1か所にしか接続していない証券会社が全市場の価格を見渡すというほど重い責任を負わせる必要はなく、これは今回の文言には関係ないかもしれませんけれど、そう考えます。
それから、今後、市場間の競争が徐々に本格化してくる可能性がありますので、すぐである必要はないと思いますけれども、PTSと東証との競争条件を徐々にそろえていく必要があるのではないかと思います。今、久保委員が呼び値について御発言になりましたけれども、私も、すぐではなくてもいいかもしれませんけれど、いずれ検討が必要ではないかと思いますので、申し添えます。
それから、SORに関しても、私もこの御方針で異存はありません。SORの注文回送のルールというのが、まさにその証券会社の最良執行の方針をプログラムに落とし込んだものと理解できますので、この中身を一定程度開示することは必要だと思います。これも今、久保委員が言われたとおりですが、もし、優先的に注文回送する先の市場との間に一定の資本関係などがあるような場合には、開示対象にする必要があるかと思います。
以上です。
【黒沼座長】
ありがとうございました。それでは、清明様、御発言をお願いします。
【清明委員】
マネックス証券の清明でございます。
私も、この27ページに記載されております取りまとめの方向性につきましては、皆様と同様、違和感ございません。弊社はSORを導入している立場でございますけれども、弊社が今行っている環境を踏まえても違和感ございません。
特に2の1の点につきまして、顧客説明のところですけれども、皆様おっしゃるとおり、やはり、個人投資家ですので、分かりやすくルールを説明するということが非常に重要ですし、それから、ルールどおり実際に実行できているのか、価格改善効果はどれぐらいあったのかという結果を併せて御説明するということが非常に重要かと思っておりまして、現に弊社ではそこまでやっておりますので、そういった方向でよろしいかなと思っております。
ただ、こういった形で個人の皆様に価格改善効果というものを取っていただくには、やはり、市場環境が活性化していくということが非常に重要かなと思っております。そうやって、個人投資家の皆様も、さらに資本市場に入っていただくということを、我々としては基本にしていきたいところではあるので、そのためには、先ほど久保委員と清水委員からもありましたとおり、同じになるんですけれども、健全な競争環境というものは非常に重要になってくるかなと思っております。
それから、透明性の高い市場機能というのも併せて必要になってくるかと思っております。その具体的な例としましては、これも先ほど来から出ております呼び値の問題ですとか、あるいは利益相反行為に当たり得るものについての説明、そういったことで競争環境を整えていく中で、この最良執行についても、さらに改善していくことが求められていくのかなと思っております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。次に、梅野様、御発言をお願いします。
【梅野委員】
ブラックロック、梅野でございます。
27ページ目に関しまして、3点、意見を述べさせていただきます。
まず1つ目でございますが、ポツの1、それからポツの2の(1)の最初の矢印のところで、理由を説明せよという箇所が今回3か所入っております。理由を説明するということになった場合に、よくあるのが、メリットの説明のみにとどまるということになります。本来、メリットを説明するのと同時に、例えばダークプール、それからSORもそうですけれども、デメリットがあるはずでして、そのデメリットを軽減するためにどういう策を打っているかという点、すなわちメリット及びデメリットの軽減というところを両方書かなきゃいけない、アップサイドだけ書いちゃ駄目ですよということをきちんと明記すべきであると私は考えております。これの象徴的な出来事として、以前、某ネット証券が、SORのロジックにタイム・イン・フォースというものを実装し、報道によりますと、100ミリから300ミリ秒の間、HFT、マーケットメーカーにだけ注文を開示しているというようなことがあって、報道された翌日に、このタイム・イン・フォースの時間をゼロミリ秒にしましたというようなことをやったことがありました。これは、本来、こういったネット証券がタイム・イン・フォースでその期間注文をさらすということが、個人投資家にとってどういうメリットがあって、例えば市場に先回りされちゃうというようなデメリットを軽減するためにどういう手を打っているかというのを、本来、きちんと説明すべきであった。そういう説明をすっ飛ばして、ゼロ秒にしたからいいでしょうというような開き直りをしている。こういうことでは、個人投資家からの信頼を勝ち得るということは、なかなか難しいのではないかと思っています。その意味で、理由にはアップサイド、それからダウンサイドプロテクション、両方きちんと書きましょうということだと思います。
私の意見の2つ目でございますけれども、ポツの2(1)の2つ目の矢印、最良執行説明書ですね、こちら、価格改善状況というのがございます。私、以前より申しておりますが、価格改善状況、価格改善効果というのは、様々定義があると思いますので、各証券会社がどのような定義の下に測定しているかということは明記すべきですし、できれば、こういった測定というのは、中立的な第三者が行うのが望ましいと思っております。もちろん、この辺り、費用との見合い等もありますので、証券会社様の対応に委ねるということになると思いますし、また、本来、価格改善状況を調べるに当たっては、やはり、統合テープというものが必ず必要になってくると思いますので、統合テープの整備が望まれるということでございます。
最後、3点目でございます。2番の(2)高速取引行為というところと関連してくるんですが、今回、個人的には、ファクトベースの議論というのが少なかったのではないかと考えております。もちろんHFTに関して、いろいろ分析、論文等出ておりますが、国内においては現状、HFTは登録制になっていて、発注時には、取引戦略とフラグを立てて発注している。こういった情報は取引所が持っているということでありますので、こういった取引所が持っている情報を基に、日本におけるHFTはどういう戦略が多いのか、どういう行動を取っているのかというものを分析することによって、よりファクトベースの議論が進んでいくと思うんですが、私、自分が見落としているだけかもしれませんが、こういったものは見たことがないという状況でございますので、今後、ファクトに基づいた議論が進んでいくことを期待します。
以上です。
【黒沼座長】
御指摘ありがとうございました。それでは、内田様、御発言をお願いします。
【内田委員】
ありがとうございます。ニッセイアセットの内田でございます。
これまでの委員の方がおっしゃられたように、27ページに記載いただいております事項につきましては、基本的な方向性は皆、異存があるわけではございません。
最後ですので、ちょっと毛色の変わったというか、別の視点から意見を申し上げさせていただくとすると、1番と2番、大きく項目を分けていただいておりますが、これらは順番をひっくり返したほうがすっきりすると認識しています。要は、まさに資料2番に書いていただいているように、市場構造が変わってきて、これは取引参加者の形態に関係なく、こういう構造変化が見られる、最良執行を検討するに当たって、こういう観点からの検討が求められるという議論をした上で、1番にあるような参加者形態に応じて最良執行の開示の仕方、在り方というのは変わり得る、選択肢が複数あり得るという形にまとめた方がすっきりと着地するかなと感じながら、資料を読ませていただきました。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。貴重なアドバイスとして受け止めさせていただきます。それでは、藍澤様、御発言をお願いします。
【藍澤委員】
ありがとうございます。藍澤證券の藍澤です。
私からは、この設問の1番の個人投資家にかかる注文執行における価格の重視の部分についてだけ述べさせていただければと思います。まず、皆さんの御意見と同様で、コンプライ・オア・エクスプレインの形にしていただけるのは大変ありがたいですし、方向性として、全く異存はございません。そもそも、当然、価格は重視すべき要素で、ただ一方で、先ほどもお話があったように、PTS、それから、SOR導入に際しては、多額の支出のコストが証券会社側にかかってくるので、どうしても証券会社側が提供するサービスの内容によっては優先順位が異なってしまう。そこも配慮いただいた上でのコンプライ・オア・エクスプレインで各社対応に委ねるということなのかなと思っております。ありがとうございます。
あと1点だけあるとすれば、趣旨として全く異論はないのですが、これまでの議論を踏まえると、ここには価格を考慮することの具体的な手段がPTSなりSORの導入であるとすれば、文言の部分ですが、価格以外を考慮する場合という部分を、例えば、PTSやSORを導入しない場合、その旨及び理由ではどうなのかなとも思った次第です。というのが、この「価格」という言葉は、やはり要因要素の中で一番訴求力があり、とりわけ、一般の個人投資家の方にとって、ダイレクトに最終的な投資利益を想起させるかと思っており、「価格以外を考慮する」という文言を一般の方が見た場合、見ればの話ですが、お客様の投資利益以外を考慮すると捉えられないかなということも考えまして、細かい話で恐縮ですが、お客様にとっての投資利益も短期の投資的取引か資産形成かで異なってきますし、資産形成を行う過程においては、1約定当たりの価格が必ずしも最重要要素ではないということは以前申し上げたとおりで、それ自体は必ずしもお客様の利益を最重要視しないことにはつながらないと思うのですが、今申し上げたように、どうしても「価格」という言葉が独り歩きし、お客様の利益とイコールだとお客様に取られないかと、少し心配して申し上げました。ただ、繰り返しになりますが、総論としては、この内容で全く異論はなく、皆様方の御意見ですし、あくまで記載の話ですので、一意見として申し上げさせていただきました。
以上です。
【黒沼座長】
ありがとうございます。本日、神田先生から御発言いただいておりませんけれども、何かございませんでしょうか。
【神田委員】
神田です。どうもいつもありがとうございます。
特にございませんけれども、皆さんの御議論で、顧客本位という観点から物事を考えていただければいいなと思います。
以上です。どうもありがとうございました。
【黒沼座長】
ありがとうございます。
このタスクフォースで取り上げた問題は極めて専門的でして、かつ、アメリカやヨーロッパ等、市場の環境が違う中で、どういったルールが望ましいかというのは、先ほどファクトベースの分析が少なかったという御指摘がありましたけれども、理論ベースといいますか、研究も日本では進んでいないということを私自身実感しまして、研究者ももっとこの分野をきちんと勉強しなければいけないなと思った次第です。しかし、このタスクフォースとしては、方向性を出して、現時点でできることからやっていかなければならないということで、皆様からお知恵をいただいているところです。
それでは、これで委員の間の意見交換を終わらせていただきたいと思います。オブザーバーの方から御意見があれば、やはり2分を目安に御発言をお願いしたいと存じます。ジャパンネクスト証券の山田様、御発言をお願いします。
【山田オブザーバー】
発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
本タスクフォースにおける本件の検討は、まさに顧客本位の業務運営の原則に沿う形で、情報技術の進展、その他市場取引所を取り巻く環境の変化を踏まえ、幅広く検討を行うことという、まさにその目的に沿った形で行われており、非常に意義があるものだと考えております。それを踏まえ、お客様にとって最良執行とは何なのかを、今回の技術の進展を踏まえアップデートして、その実現を目指して、各社がよりよい執行サービスを提供するため努力していく方向性について議論できたと考えております。
この取りまとめの方向性に関しましては、オブザーバーとして、委員ではないので、違和感ある、ないというのは非常に僣越なのですが、最初としては、これでいいのではないかと考えております。「個人投資家にかかる」とありますけど、個人投資家とは、なかなか定義が難しいのですが、機関投資家ではない顧客に対して、価格重視の考え方を取り入れる方向性は賛成でございまして、我々取引施設に関しても、価格重視のお客様のニーズに適切に対応できるよう、今後も努力が必要だと考えております。
ただし、上柳先生がおっしゃられたとおり、価格重視の執行を行う方向性に関しては、きっちり義務化することというのも考える必要があるのではないかと思っております。
あと、最後に1点、梅野委員がおっしゃられているのですが、今回の議論において、委員の皆さんの思いとか、考え方に基づくご発言がちょっと多かったかなと思います。我々もデータ提出等々、積極的にやっていきたいと思いますので、ファクトベースの議論を、次の機会にやらせていただけたらと考えております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。日本取引所グループの南出様、御発言をお願いします。
【南出オブザーバー】
日本取引所グループ、南出でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
取りまとめの方向性自体につきまして、賛成でございます。コンプライ・オア・エクスプレインというところで、最初の会でもいろいろ御発言があったと思いますけれども、証券会社のビジネスの多様性を尊重しながら、顧客本位というところを追求していくということで、プリンシプルベースという方法が非常にマッチしているのではないかと考えております。その辺り、2点ほど述べさせていただきたいと思います。
実際に、いろいろ項目がありまして、書いていくことについて、例えば価格というところ、これまでの議論でも少し御指摘があったと思いますが、何をもって最良価格というのはなかなか難しいと考えておりますし、一意的に決まるものではないと思っております。試みに、ヨーロッパのリテール向けの証券会社のエグゼキューションポリシーを見ましても、最良価格というのを必ずしも定量的に厳密な定義をしているわけでもないと理解しておりますので、そういった各項目の各内容についても、ある程度、プリンシプルベースで何が最良であるか認められるべきだと考えております。
また、利益相反、こちら、PFOFのところでも顧客の利益との相反関係というところが重要視されましたけれども、市場の選択という点につきましても、顧客と利益が相反するというところについてはしっかり開示をしていって、お客様の注文がなぜそのように扱われるかというところを透明性を持って知らしめることが必要であると考えております。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。では、日本証券業協会の松本様、御発言をお願いします。
【松本オブザーバー】
ありがとうございます。先ほど、繁本監理官から、日本証券業協会の最良執行方針の参考モデルの改定についてお話をいただきました。日証協といたしましても、こちらにつきましては検討していきたいと思います。
ただ、今回、このルールが変わるということで、その趣旨をきちんと協会員である証券会社に理解していただいて、それに沿った対応をしていただくといったときに、この参考モデルの方式にすると、やや画一的な対応になってしまうようなおそれもございますので、そういったところも含めて検討を行っていきたいと思ってございます。
あと1点、これまで議論にはなっていないところでございますが、今後、このルールが変わったところで、各社、最良執行方針を改定し、今後も段階的に対応するというお話もありましたので、今までよりも頻繁に最良執行方針が変わっていくということが想定されます。そのときに、今、電子交付で最良執行方針を送れるのですけれども、顧客の事前の承諾が必要ということもありますので、今後は、より電子交付を柔軟な形で顧客に交付というか、見ていただくような方向で検討していただき、各社において書面の交付の負担が大きいので最良執行方針を変えないという本末転倒にならないように御配慮いただければと思います。
以上でございます。
【黒沼座長】
ありがとうございます。では、チャイエックスの色川様、お願いします。
【色川オブザーバー】
チャイエックス、色川でございます。発言の機会をありがとうございます。
取りまとめに向かうに当たり、SORの手法やPTSの利用方法においてぜひ御留意いただきたいのが、レイテンシー・アービトラージ対策としての間違った対応です。本日の資料も含めまして、単純化したレイテンシー・アービトラージ事例をつくりますと、どうしてもPTSに指し値注文を置くところが出発点になります。しかし、本来、PTSに指し値を置くこと自体には何の問題もないですし、また、その後の相場の動き、他の市場の板の状況などにより、必要があれば、そこから引き揚げて、他市場に同じ値段で出し直すといった手法自体は、重要かつ誠実な最良執行努力にもなります。レイテンシー・アービトラージの議論は、様々な類型と専門的な議論があります。しかし、本件で議論の対象になっている類型の本質は、PTSに指し値を置くことや他市場に出し直すことではなく、ロックト・マーケットやクロスト・マーケットが容認される状態であります。万一、まかり間違って、例えばPTSの利用は東証よりも値段がいいときだけIOCで取るということでいいじゃないかとか、あるいはPTSに指し値を置くことは禁じるのが手っ取り早いなといったゆがんだ指導になれば、我が国の本質的な市場間競争は命を絶たれると言って過言ではありません。取りまとめにおかれましては、ぜひ、PTSの柔軟かつ活発な利用を阻害することのないようにしていただけますとありがたいと願う次第であります。
どうもありがとうございます。
【黒沼座長】
ありがとうございました。十分留意して取りまとめたいと思います。
こういうビデオ会議の手法を取りますと、発言のしっ放しになってしまう傾向がどうしても強くなってしまいます。今日せっかく時間を取っていただきましたので、最後に、取りまとめの方向性について、委員の方から、追加で御意見とか、あるいは足りなかった議論の論点等がございましたら、御指摘いただきますようお願いいたします。
よろしいでしょうか。ちょっと前半部分、かなり時間を区切って御発言をお願いしたので、早口で御発言された方も多かったと思います。しかし、内容はきちんとこちらで把握しておりますので、それを総合して取りまとめていきたいと思います。
本日の議論を通じて、取りまとめの方向性がある程度見えてきたと感じております。皆様からいただいた御意見を事務局でさらに整理、調整していただいた上で、次回は報告書の取りまとめの御審議をお願いしたいと考えております。
次回のタスクフォースの日程に関しましては、後日、事務局より御案内させていただきます。
それでは、以上をもちまして本日の会合を終了させていただきます。ありがとうございました。
―― 了 ――
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企画市場局市場課(内線:3943)