金融審議会「顧客本位タスクフォース」(第2回)議事録
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1.日時:
令和4年10月24日(月曜)10時00分~12時00分
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2.場所:
オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室
金融審議会「顧客本位タスクフォース」(第2回)
令和4年10月24日
【神作座長】 おはようございます。定刻より少し早いのですけれども、皆様おそろいということですので、ただいまより顧客本位タスクフォース第2回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ、誠にありがとうございます。
今月より、当タスクフォースの委員として、新たに坂勇一郎委員が御就任されました。また、オブザーバーの方にも変更がございましたところ、資料1に名簿を御用意してございますので、そちらを御覧いただければと存じます。
それでは、早速議事に移らせていただきます。本日は、前回の御議論も踏まえ、家計の資産形成を支えるインベストメント・チェーンの各主体である販売会社やアドバイザー、企業年金等を含むアセットオーナー、資産運用会社、そして家計における金融リテラシーの向上といったテーマについて幅広く御議論をいただきたいと思います。
まず、事務局説明資料に関しまして、事務局より御説明をいただきたいと思います。その後、皆様から御意見をいただきたいと思います。
では、事務局説明資料につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
【桑田市場企画管理官】 それでは、お配りしている事務局説明資料について御説明いたします。前回のタスクフォースでは様々な御意見を頂戴いたしましたが、本日はこうした意見を引用しながら、具体的な対応の方向性について各委員の御意見を頂戴することを意図した形で資料を構成させていただいております。右下3ページ目を御覧ください。前回、各委員より頂戴した意見を整理しております。
1つ目の四角として、顧客本位の業務運営の進捗は道半ばを脱していない。その上で、3つ目の四角のとおり、FD原則を法令上の義務として定めるべきではないか。次のグレーのシャドーに移りまして、企業年金を含めた横串ルールを目指してはどうか。次のグレーが助言・勧誘についてですが、利益相反やコストに関する情報充実が必要だなどの御意見をいただきました。
次の4ページ目ですが、中立的なアドバイザーについては、独立した質の高いアドバイザーの必要性に関する意見、ファイナンシャルプランナーもつみたてNISAの対象商品に限ってアドバイスできるようになれば有益ではないか、「独立」の定義が日本では曖昧といった御意見をいただきました。プロダクトガバナンスについては、ガバナンスの改善の必要性や、金融経済教育については、いかに興味のない人に興味を持たせるか、職域での金融経済教育については、大企業以外も念頭に置く必要があるとの御意見をいただきました。
6ページ目は、改めて本タスクフォースの射程を赤色の点線で囲んでおります。右下の青色の中身として、企業の持続的成長や市場の魅力向上、こちらも重要な課題ではありますが、市場制度WG等で御議論いただくこととしております。
販売会社に関する論点に移ります。8ページ目は、改めてFD原則の俯瞰図を掲載しております。9ページ目は、前回も掲載いたしましたFD原則に基づく取組方針等を公表している事業者数になります。こちらは、あくまで金融庁の金融事業者リストへの掲載を希望する事業者を対象としている数字になりますので、公表しているというグレーの中にカウントされていなくても、自主的に取組方針などを公表している事業者も一定数存在していることには御留意ください。
一方で金融庁においては、全ての原則について必要な取組方針や取組状況、これらを公表しているかというような形式的チェックのみを行ってリストに掲載しておりますので、原則の趣旨や精神を咀嚼した取組方針等を公表している事業者という観点で仮に精査した場合は、その数は絞られる可能性があるとも御理解ください。いずれにしましても、取組方針の書きぶり自体というよりも、実際の業務運営の実態が重要なわけですけれども、この点については前回、様々なデータでお示しして御議論いただきました。そうした中で、顧客本位の業務運営に関して大きく改善しているとは言いづらいとの御意見を頂戴いたしましたけれども、FD原則に掲げる取組の実践を促すためにはどうしたらよいか、こちらは引き続き重要な課題であると考えております。
10ページ目は、6月に公表した金融庁のモニタリングレポートの概要です。商品選定や説明の在り方、提案方法等について課題が指摘されておりますが、前回は法令上の義務として、適合性の原則だけでは限界があるのではないかなどの御意見をいただきました。
11ページ目は利益相反管理についてですが、FD原則の中の個別な論点として、前回、多くの御意見を頂戴いたしました。諸外国の制度を見ますと、手数料や利益相反の状況について顧客への情報提供義務などが定められております。一方、12ページ目ですけれども、日本においては、顧客本位の業務運営に関する原則により、利益相反の可能性を正確に判断し適切に管理すること、また、重要情報シートには、利益相反になる可能性の内容を記載する欄を設けており、例といたしましては、販売仲介の対価、商品の組成会社との関係、営業職員に対する業績評価上の位置づけなどを示すというプリンシプル・ベースの枠組みを採用しております。この点、情報提供の充実に向けてどのような対応が必要かという論点を記載しております。また、顧客が負担するコストについてですが、仕組債の組成コストまで記載している例は限定的である、こういった現状をどのように考えるかという論点も記載しております。
13ページ目は、EUのMiFID Ⅱ、14ページ目はアメリカのベストインタレスト規則の概要を記載しております。いずれも、まず顧客の最善の利益に従って行動する義務を規定した上で、開示義務や利益相反に関する義務などが定められております。
15ページ目からはアドバイザーについてです。前回、良質なアドバイスの担い手についての御意見もいただいたところですが、御覧のとおり、一種業者、助言業者、金融商品仲介業者、ファイナンシャルプランナーについて一覧表として整理しております。ここで中立的な助言が重要な論点となってくるわけですけれども、16ページ目はその中立性や独立性に関する諸外国の制度を並べております。
まず、報酬に関しては、アメリカでは、顧客以外の第三者から得る報酬の開示が求められています。一方、イギリスではそもそも顧客以外からの報酬の受領が禁止、ドイツではアメリカ同様の開示が求められています。その他の説明事項としては、アメリカでは、手数料や提供サービスについて、イギリスでは、提供する助言サービスの範囲によってカテゴリーが分かれております。
具体的には、広く金融商品を対象として助言サービスを提供していれば「独立」と名乗ってもいいわけですけれども、特定の販売会社の商品のみ考慮する場合は、制限された助言者ということで、「独立」と名乗ってはいけないことになっております。この点はドイツにも共通した点がございまして、右下のグレーの箇所ですけれども、独立報酬投資助言業者を名乗るためには、顧客のみから報酬を得ていること、十分に広範な金融商品の品揃えに配慮して助言することが要件として定められています。
少し飛ばして、21ページ目からはアセットオーナーとしての企業年金の課題について少し紹介しております。
まず、DBについては、左上の棒グラフですけれども、運用委託先である金融機関の選定において、運用能力を重視しているのは濃い青で示されているとおり、全体の約3割、その他水色や紫色で示している全体の約7割については、母体企業の取引関係も考慮しているとの調査結果を示しております。また、運用に関する外部専門家の活用状況でありますけれども、右の棒グラフにありますとおり、資産規模によって状況は異なってはおりますが、全体の契約率は約3割という状況になっております。
22ページ目はDCについてです。左上の円グラフは、事業主による運営管理機関の評価状況です。2018年に評価が努力義務の対象になったこともありまして、評価していると回答した青の部分について、2017年の12.8%から、2020年は35.6%へと改善しておりますが、残り約6割は評価を実施していない状況にあります。
次に、右のグラフでありますけれども、評価を実施していない場合の今後の予定ですが、足元では全体の約7割が今後は未定であるとしており、改善の兆しが見えづらい状況となっております。
25ページ目からは、資産運用業の高度化についてです。前回は課題として、グループ会社の枠を超えた発展が進んでいない、重要な情報や手数料に関する開示を進めてほしいといった御意見、また、過去の市場制度WGでは、顧客が販売した商品について適合性を有していたかの検証が重要といった御意見も頂戴いたしました。本年6月の市場制度WG中間整理では、FD原則の見直しや制度化の検討の必要性についても御提言をいただいたところですけれども、具体的な論点としては、販売会社との関係や取締役会の構成に表れるガバナンスの在り方、コストや利益相反に関する情報の充実、プロダクトガバナンスに関するFD原則上の位置づけなどが挙げられます。
29ページには、再びEUのMiFID Ⅱを御紹介しております。資産運用会社と販売会社を明確に区別し、それぞれにおいて、顧客の適合性を販売前、販売後など定期的に検証することや、資産運用会社と販売会社間の情報連携が求められております。
最後の論点になりますけれども、31ページ目以降は家計における金融リテラシーの向上に関してとなります。
32ページ目は、金融庁・財務局による金融経済教育に関する取組、出張授業や教員向けの研修会などを実施しております。
33ページは、日本銀行金融広報中央委員会。右上に「金融広報アドバイザー」とありますけれども、約500名の体制で全国において出張授業などを展開しております。
34ページは、前回もお示しした各業界の取組でありまして、それぞれが教材作成や出張授業などを行っております。
そうした中で、35ページ目ですけれども、それぞれの主体が適切な役割分担の下、より効率的、効果的に金融経済教育を推進することを目的として、2013年に金融経済教育推進会議を設立しております。主な取組としては、身につけるべきリテラシーを年齢層別に体系化した金融リテラシー・マップの策定などをしています。しかしながら、37ページ目ですけれども、金融経済教育を受けたと認識している人は全体の7%程度にとどまっております。
38ページ目は、金融知識に関して自信のある人は、左の円グラフの青の部分ですけれども、全体の約1割、右の円グラフは、長期・積立・分散投資がリスクを減らすのに有効ということを認知している人は全体の約4割にとどまるということを示しております。
一方、39ページですけれども、金融経済教育を行うべきと考えている人が全体の7割を超えておりまして、金融経済教育に対するニーズが存在することを示しております。
40ページ目は、DCにおける継続投資教育についてです。事業主に対して実施状況を質問したところ、実施したことがあるとの回答が約8割でしたけれども、加入者側で継続的に何回か受けたと回答した者は約1割にとどまっており、ギャップが見られます。DC担当者の悩みを右に一覧にしておりますけれども、継続投資教育がその悩みの最も多い結果となっております。具体的には、無関心層への効果的な教育の方法が分からない、そもそも、他の業務と兼務しているので継続教育に時間が割けないといった意見が挙げられております。
さらに、41ページ目の左の円グラフは、DCの運用資産の約45%が元本確保型商品であることを示しております。この点、デフォルト商品を選定している事業主の75.7%が元本確保型商品を選定していることが一因ではないかとも考えられます。
42ページ目は、イギリスにおける金融経済教育体制といたしまして、”The Money and Pensions Service”(MaPS)についてまとめております。公的機関として2019年に設立され、債務者へのアドバイスや金融取引、年金に関する情報提供を行っているほか、ファイナンシャル・ウェルビーイングの実現に向けた国家戦略を策定しております。
次の43ページ目は、アメリカの金融教育リテラシー委員会についてです。こちらも国家戦略の策定のほか、金融教育関連の情報提供をウェブサイト上で行っております。44ページ、45ページは、金融経済教育や金融リテラシーに関する論文、実証研究を幾つかまとめたものになります。内容といたしましては、金融リテラシーが高いほど資産形成や株式市場への参加が進むといった正の相関関係を示した実証研究などが見られるところです。
以上を踏まえまして、48ページ目には、本日御議論いただきたい事項を記載しております。
まず1点目は、顧客ニーズに適さない商品の組成、販売が引き続き行われているのではないかとの懸念が広く指摘されている中、FD原則を法令上の義務として定めるべきではないかとの御意見をいただきましたが、これについて具体的にどのような措置を講じるべきか。
2点目は、家計の安定的な資産形成を実現するためには、金融事業者に加えて、年金等のインベストメント・チェーンへの参加者の役割が重要であると考えられるところ、そうした者の役割発揮を促していく観点から、ルールの横断化を目指すべきではないかとの御意見をいただきましたが、具体的にどう対応すべきか。
3点目といたしましては、利益相反管理の可能性や手数料等についての情報提供の充実あるいはルール化についての御意見をいただきましたが、どのような措置を講じていくべきか。また、顧客に対する法的な立場や負っている義務が顧客に明確になるとよいとの意見もいただきましたが、どう考えるか。
最後の49ページに移りまして、独立した質の高いアドバイザーの役割についてどう考えるか。3つ目の黒四角です。「独立」の定義が日本では明瞭ではないとの御意見も頂戴しましたが、諸外国の中立的なアドバイザーに対する考え方を踏まえ、明確にしていくことについてどう考えるか。アセットオーナーについては、DBやDCに関する課題を幾つか御紹介しましたが、その取組の改善に向けてどのように対応すべきか。さらに、資産運用業については、独立性やプロダクトガバナンスの議論が行われてきたわけですけれども、海外の事例を踏まえつつ、その高度化に向けて具体的にどのような取組を進めるべきか。最後に、金融リテラシーについては、国全体として、中立的な立場から金融経済教育を推進するために具体的にどのような取組を進めるべきか。
以上が御議論いただきたい事項になります。事務局からの説明は以上です。
【神作座長】 御説明、どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明を踏まえて、今後検討していく事項について、論点やそれに関する御意見をいただければと存じます。
今回、多くの委員に御発言いただく機会を確保する観点から、お時間といたしましては、4分ないし5分以内に御発言していただければと存じます。4分を過ぎますと、事務局から発言時間の残りが1分である旨のチャットが、発言されている委員のみに送付されますので、発言時間の御参考にしていただければと思います。
それでは、御議論をお願いできればと思います。チャットをお寄せいただければ幸いです。
岩城委員、お願いいたします。御発言ください。
【岩城委員】 詳細な資料、そして御説明ありがとうございました。岩城でございます。私からは、論点の中の「顧客本位の業務運営に関する原則を法令上の義務として定めるべきでないか」という点についてと、顧客本位のアドバイザーの必要性と求められる質に関してお話をさせていただきます。
日本証券業協会からの御提案だと伺っていますけれど、英国のMaPS構想も参考にして金融経済教育の推進体制の整備が検討されています。これは、各業界団体も協力して行うということですが、中立性を担保するためには、やはり英米のような法規制が必須になってくるのではないかと思います。中立的な立場から金融経済教育の機会を提供していくのならば、まず、公的法人として、独立した顧客本位のアドバイザーとはどういうものなのか、顧客に何をしてくれるのか、その定義を分かりやすい言葉で、利用する顧客、そして家計に伝えていくべきです。
アメリカに、Investor Protection Trust(IPT)という団体があります。投資教育を専門とする非営利団体で、中立公正な立場で投資教育を提供しています。金融機関等の利益相反などの不正行為や、投資詐欺などの罰金の一部を使って設立、運営されています。その団体が作ったポスターには、「お金を運用したいとき、優秀なアドバイザーは大きなアセットになる」とあります。手頃な相談料で、知識が豊富で訓練を受けた信頼できる専門家を見つける必要性を一番に説いています。この専門家というのは、ブローカー・ディーラー(販売員)、RIA(登録投資顧問)、CFP®︎(FPの国際資格)と分かれていて、それぞれができることを列挙し、また、報酬の種類(販売手数料か時間でのアドバイスフィーかなど)を明示すること。相談者はそれを理解した上で、アドバイザーとして誰を採用するのかをまず決めなさいと説いています。
ブローカー・ディーラーにはSuitability Standard(適合性基準)、Regulation Best Interest(最善の利益規制)が課されていて、RIAとCFP®︎にはフィデューシャリー・デューティーが義務づけられています。つまり、それぞれが認定されたサービスを提供するプロフェッショナルであるべきで、そして、それが利用者である家計に分かりやすく示されることがまず大切なのではないかと思います。我が国では重要情報シートを使って、顧客に利益相反の状況を示していくことをプリンシプル・ベースで促している状況ですけれども、釈迦に説法ではございますが、家計の投資によるリターンを関係者が分け合うと、家計の分はそれだけ小さくなります。今回、資産所得倍増計画で目指そうとしているのは、国民の資産所得を増やしていくことです。公的法人設立構想を進めていくならば、顧客本位のアドバイザーの定義を明確にして、法的根拠で担保すべきではないでしょうか。
そして、もう一つ大切なのがアドバイスの質です。人生が、長く多様化している今、資産運用で貯めた自己資金だけでは長生きリスクに対応できるかといえば難しいケースが多いです。私のところに来られる相談者の方々も100歳まで資産をもたせることを希望されますが、実際シミュレーションしてみますと、リタイアメント後も運用しながら取り崩していかなければ、80歳半ばで底をつくケースは多いです。また、インフレでの通貨価値の下落という心配もあります。合理的な資産運用の必要性はもちろんのこと、社会保障、公的年金、私的年金を併せた資産全体で考えていかなければ、なかなか安心な老後を過ごすのは難しいです。公的年金をベースに、合理的な資産運用でプラスアルファの豊かさをつくっていくことが必要です。併せて、人生における心の豊かさ、幸せも重要です。
このようなことをしっかり伝えて、一人一人のライフプランに合ったマネープランを実行支援するために、顧客の人生に伴走できるアドバイザーを認定し、質の高いアドバイザーを育成していくことが大切です。逆に言うと、金融商品を販売しなくても、アドバイザーが食べていけるようでなければ、顧客本位の独立系アドバイザーは増えません。私も、本当は金融商品を売りたくない、でも、生活のためには商品販売のコミッションを得なければやっていけないということをよく聞きます。その理由としては、日本人はアドバイスにお金を払うという意識が低い、相談も無料で受けられるから、と言われます。しかし、そもそもなぜそういう構造になっているのか、いま一度考えるべきだと思います。
公的法人から認定され、そのお墨つきの下で金融教育や相談を行えるようになれば好ましいと思います。でも同時に、中立性をどう担保するのか、アドバイスの質をどう向上させていくのかをしっかり併せて議論していく必要があると思います。また、ぜひ、厚生労働省を含め各省庁の横連携での組織を組成し、団体としてしっかり機能していけるようにさらなる議論をぜひよろしくお願い申し上げます。
以上です。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、永沢委員、御発言ください。
【永沢委員】 永沢でございます。まず、事務局の皆様、ありがとうございます。私からは、3点意見を申し上げたいと思います。
第1に、最初の項目となりますが、私は原則を法令上の義務として定めるべきという意見に賛成する立場ですけれども、特に原則6の顧客にふさわしいサービスの提供の義務づけの具体的な方法として、金融商品の組成事業者に対して、目論見書やそれに準ずる書類に、どのような顧客をターゲットにするのか、対象とするのか、どのようなニーズを想定しているのかを明記することを義務づけること、加えて、プロダクトガバナンスの観点から、組成事業者、具体的には投信会社をイメージしておりますけれども、その取締役会に対して、目論見書に明記された顧客層やニーズから逸脱した商品提供が行われていないかどうか、受益者の利益を損なう状況に放置された状況になっていないかを監視し、執行部門に是正を求めることなどの責務を明文化することを具体的には求めたいと思います。
顧客にふさわしいサービスの提供は、販売会社に適合性の原則を課すだけで達成できるものではありません。適合性の原則は、販売勧誘という時点でしか作用しない規制です。運用商品の場合は、販売された後に様々な問題が生じることが往々にしてあることです。また、これまでも、複雑でリテールのお客様には適さない商品が組成され提供されてきましたし、投資信託においては、残高が非常に少なくなったまま放置されていることがあります。なぜ放置しているのかとお尋ねしたところ、「販売会社様が・・・」という主体性のない説明を聞かされたこともありました。このような経験を踏まえ、私は、商品の組成会社にも、商品組成提供の責務を明文化して課していくことが必要と申し上げたいと思います。
次に、アドバイザーについてです。顧客に対し、自分はどのような法的な立場に立ち、義務を負っているかを明示する義務を課すという提案に賛成いたします。その際、一般消費者には法律用語があふれているペーパーを渡されても理解できるものではありません。解決策としては、例えば、ほかの立場との違いが分かるような比較表を示して、自分はここですと説明することまで具体的に求めることが必要だろうと思います。
販売会社と家計との間に、顧客ファーストの独立した質の高いアドバイザーが入るべきという意見につきましては、そこは顧客が決めることであろうと思いますけれども、金融取引の経験のあまりない一般消費者の多くは、販売会社から商品を勧められた際に迷いますので、安心してセカンドオピニオンを求めることができるアドバイザーを、適正な価格で雇うことができたらと思っていると思います。良質なサービスを確保する観点からは、知識や技能を含む資格試験の実施が必要と考えます。加えて、数が多いアドバイザーを国が監督することは現実的ではないと思われるため、アドバイザー同士で監視し合う仕組みづくりや市場によって評価される仕組みが必要と考えます。例えば利用者評価やサービスを利用した際の価格などの情報を、利用したい人が容易に知ることができる仕組みづくりも必要だろうと思います。一方で、評価情報がどこまで信用できるものとなりうるのか。これも課題となるであろうとも思います。また、自分は独立したアドバイザーであるというセールストークを見聞きすることがありますが、「独立」という意味を法的に定義することは急ぐべきという意見に賛成です。
最後に金融リテラシーです。これまで金融広報中央委員会に設置されている金融経済教育推進会議が中心となりまして、官民協働でコアコンテンツや「マネビタ」といった教材を作ってきました。私も推進会議の委員でございますので、自画自賛のようになってしまいますが、大きな前進だったと評価しておりますが、一方、ターゲットが大学生や金融に関心が高い人になっていたとも言え、ここに書かれているような層を取りこぼしていたとも思っております。教育には様々なリソースが必要でお金もかかることから、引き続き金融広報中央委員会が中心となって推進していくのが私は効率的と考えております。そして、金融広報中央委員会、金融経済教育推進会議は、次の優先的ターゲットを職域とすること、DCプランを提供されている金融事業者や厚生労働省などとも連携をしっかりするということ、それから、職域層に合致したプログラムを開発すること、さらに、各都道府県に金融広報委員会が設置されており、そこから金融広報アドバイザーが派遣されていますが、学校だけではなく、職域への講師派遣を優先的に実施するよう強く求めていくことが次に打つべき手ではないかと考えます。
簡単ではございますが、以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、有吉委員、御発言ください。
【有吉委員】 有吉でございます。御説明どうもありがとうございます。私からは、事務局説明資料48ページ以下の項目のうちの幾つかについてコメントさせていただきたいと思います。
まず、プリンシプル・ベースの顧客本位の業務運営に関する原則の中には、法令で定めてしまうと硬直的となってしまって、萎縮させる効果が高くなってしまうような、そういった法令になじみにくい項目も含まれているものだと思いますので、これを一律に法令上の義務とすることについては反対であります。ただ一方で、金融商品仲介業者を含めて、原則を採択していない業者が非常に多いという状況を踏まえますと、重要情報シートでの開示を求めることなどだけでの対応は限界があると言わざるを得ないと思いますので、例えば利益相反状況に関する開示など、最低限必要な規制であって、かつルールベースの規律になじみやすい事項については、法令化を検討していただきたいと思います。
2点目にアドバイザーの関連でございますが、中立的なアドバイザーの重要性を否定するものではございませんが、ただ、その中立性とか独立性については、これまでの御説明、御議論にありましたとおり、濃淡があることに加えまして、どれだけ中立的なアドバイザーであるとしても、フィービジネスである以上は、顧客との利益相反はゼロにはならないというものだと思います。そのようなことを踏まえて、独立的なアドバイザーの活用を考えていくことが必要だと思います。
その上で、そのアドバイザーがどのような立場にあるか顧客が把握できるようにすることは非常に重要な観点であると思いますので、顧客以外からの報酬の受領状況であるとか、独立性、中立性に関する事項、独立、中立が何を意味しているのか、こういったことについて、定義をするのか情報開示を求めるのか、どういった仕組みがよいか分かりませんが、それが顧客にとって明らかになるような施策を取ることは必要であると思います。
一方で、一般投資家の投資活動を促進する観点からは、やはり顧客との接点が多くて、実際に金融商品、金融取引の知見が豊富であるような証券会社によるアドバイザリー業務の活用も非常に重要な要素だと思います。その際、適切な注意義務を果たすことであるとか、利益相反管理を行うための枠組みといったことは重要であると思いますけど、一方で、利便性やサービスのメニューを制限することにつながるような規制は避けていくことが必要だと考えます。
それから、企業年金の関連でございますが、企業年金の運営主体が受給者に対する受託者責任を負うことを法的にも明確にすべきだと考えます。許認可まで求める必要はないのかもしれませんが、悪質な事例に対して、何らかのサンクションを与えることができるような枠組みを整備することが必要だと思います。本来は民事的な損害賠償による制裁が適切な場面なのかもしれませんが、そういった対応は、裁判例の蓄積といった時間を要するものであると考えますので、少なくとも当面は、行政による監督を及ぼすことができるようにすることで対処していくべきではないかと考えます。
最後に、金融経済教育の関連でございますが、事務局説明資料には一部、ウェブコンテンツとかユーチューブセミナーとか、そういった項目も見受けられるようには思いますけど、基本的にはお堅い取組ばかり並んでいるような印象を受けました。具体的な方策としては、皆様、創意工夫を凝らして、いろいろと取り組まれているのだろうと思いますが、例えば、ゲームとかアニメとか、そういった各種のエンタメを通じて、金融的な分野に触れてもらうといったように、学生、社会人を問わず、一般の方が親しみやすい、あるいは、知らないうちに金融に入り込んでいるような、そういった取組を広げるということについても、重要な課題として検討していっていただきたいと感じました。
私からは以上でございます。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、佐々木委員、どうぞ。
【佐々木委員】 ありがとうございます。かなり重なるところもありましたので、手短に申し上げます。1つは、資料が非常に詳しく、私も含めて皆様の要望に応える形で作っていただいて、ありがとうございました。
初めに、金融リテラシーの部分についてですが、こちらも詳しい情報をありがとうございます。また、論文も御提示いただいて、ありがとうございます。お仕事を増やすつもりはなくて、私は金融庁の研究センターなどをうまく利用して、研究も参考にしていただければという程度に、前に意見を申し上げたつもりでした。リテラシーの研究についてはいろいろありまして、もちろん全般的には、やはりないよりあったほうがいいということではありますけれど、もちろん論文によっては、詳しくなり過ぎるとむしろリスク回避的になるとか、様々な条件によって、色々なケースについての文献がありますので、やはりそういったことも参考にしていくことが重要かと思います。ありがとうございました。
それから、金融リテラシーについて、様々な機関がそれぞれ活動しているのをお示しいただきまして、非常によく分かりました。金融教育を今後やる上で、どこかでこれらを整理して、どういったものが必要かということを考えなければいけなくて、永沢様から、もう既にその点について詳しく御意見がございましたので、私から加えることはあまりありませんが、やはり金融広報中央委員会がこれまでかなり広く活動されてきていますので、今後、金融広報中央委員会をどういう位置づけに持ってきて、このリテラシーについてまとめたり、あるいは母体を作ったりということを考えるかをやっていただく必要があるのではないかなと思いました。
2点目、利益相反についてですが、私自身、法律的なことには詳しくないところもございますが、重要情報シートなどによる見える化はもちろん必要だと思いますが、これも既に永沢先生からも御指摘ありましたけど、顧客にとってそれが理解できるかという問題もあると思います。例えば、重要情報シートだけではなく、金融庁が様々な見える化を行っているのはとてもいい活動だと思いますが、普通の顧客がそれを利用できるかというと、それはかなり難しいということもありますので、やはり顧客にとって分かりやすいという視点も必要かと思います。
もう少し広い話になりますが、3点目として、顧客本位の業務運営全般について、このタスクフォースで考えている上で、最近、個別金融機関に対する顧客情報の扱いに関する行政対応や自主規制機関による対応などがニュースになっておりますので、そういった事例も意識しつつ、実効的な方法を模索する必要があるかということも感じております。
私からは以上です。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、野尻委員、御発言ください。
【野尻委員】 おはようございます。事務局の方、資料をまとめていただきまして、大変ありがとうございます。私からは3点コメントをさせていただきたいと思っています。
まず1つ目ですが、議論にもありましたアドバイスビジネスのところになります。独立系の定義というのはそろそろ考えていく必要があるというのは、何人かの方々から御指摘されていたのではないかと思います。その中で、資料の16ページにイギリスの例を書かれていて、顧客からのみ報酬を得ていること、全ての金融商品を選択の対象にしていること、これらを要件にされていました。ドイツなどでも似たような形だということも紹介されていました。同様のことを日本に求めることになると、例えばですけど、全てではありませんが、投信の代行報酬までゼロにすることが必要になってきます。これはイギリスの移行の経験、従来型から現状の段階に移る、その経験を前提にしますと、同じことを日本でやるのは難しいのではないかと思います。ただ、イギリスのキックバックフィーと言ったらよいのでしょうか、そのフィーを撤廃するという背景の裏側にあったのは、やはり高い手数料の商品を販売しがちになるという手数料バイアスをなくすこと、ここにあったと思います。なので、例えば、日本の場合ですと、代行報酬をゼロにするのは難しいという気がしていますが、例えば一律にするとか上限を設定するということで、手数料バイアスをなくすというのを制度的に担保するのが必要ではないかと思います。
2つ目の、全ての商品をお客様への選考の対象にするというのも、今の段階ですぐ行うのはなかなか難しいかという気がしています。逆に言うと、選定対象が何千、何万という必要はないわけですので、ある程度の最低対象本数みたいなものを決めて、できる限り広い範囲のものにするというような条件をつけていくことができるのではないかと思います。この2つを満たせば、独立系アドバイザーであると言えるのではないか、逆に満たさなければ、制限的とか金融機関系のアドバイザーというような表現もできるのではないかと思います。
2つ目ですが、独立系アドバイザーとなるとすれば、お客様からアドバイスフィーを取ることが前提になるわけですので、顧客との契約と考えると、やはり何らかの資格、もしくは業としての登録が必要ではないかと考えます。その中で、投資助言業というのは一つのアイデアではないかと考えています。特に個人向けのアドバイスビジネスを専門に行う資格枠みたいなものを新設して、より緩和された、登録しやすい要件で登録ができるといったようなことは検討できないだろうかと考えます。
3つ目は、金融経済教育に関してです。この点は、永沢委員や佐々木委員からも御指摘がありました。私もやはり常設の組織を設置すべきだと考えております。一番大変で問題だと思われるのは、37ページにあるような、金融経済教育を受けたと認識している人が約7%、かつそれがずっと変わっていない、増えていないところではないかと思います。その組織がどこになるかは別にして、具体的な数値目標を設定して、個々の金融経済教育活動の全体を引っ張っていくというような、数字を目標にした、それでPDCAが回るような組織にしていくのが大事ではないかと思います。
以上です。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、坂委員、御発言どうぞ。
【坂委員】 坂です。よろしくお願いします。私からは、提示された論点に従いまして、項目的になるかと思いますが、発言させていただければと思います。まず、インベストメント・チェーンの機能発揮について、総論的な観点から3点です。
第1に、家計の資産形成を支えるためにも、企業や経済の成長を促すという視点が重要と思います。販売業者等が情報や専門性の格差に安住できる状況があると、資金の流れやリスクの分担がゆがんで、企業や経済の成長を促す機能が十分果たされないことが懸念されます。企業や経済の成長促進の観点からも、顧客本位の業務運営に関する原則により、販売業者等がより洗練され、金融経済教育により、家計、顧客層のリテラシーと参加意識がより高まることが望まれているところと思います。
第2に、貯蓄から資産形成の流れを促進するという観点からも、金融サービスの高度化を図り、顧客層を拡大するという視点が必要です。
第3に、欧米においても、利益相反や顧客への推奨に関わるルールベースの取組が進められています。国際競争力という観点からも、我が国におけるルールベースの制度整備とサービスの高度化が必要と思います。
次に、顧客本位の業務運営に関する原則についてです。4点申し上げます。
第1に、顧客本位の業務運営に関する原則は、金融事業者が原則への取組を公表し、顧客側がそれを評価し、よりよい金融事業者を選ぶという市場機能の発揮が期待されているところと思います。しかしながら、現状、このような機能が働いているとは評価できません。このような状況を前に進めるためには、適切な形で原則を法令上の義務とすることが必要と思います。
第2に、インベストメント・チェーンにおける各主体の役割をより明確化することが必要だと思います。顧客本位の業務運営に関する原則を適切な形で法的義務とすれば、販売業者等の役割と責任の範囲がより明確化され、顧客は何を信頼して、何を理解し、何を判断すべきかをよりよく知ることができるようになると思います。
第3に、適合性の原則についてです。資産形成を促すには、顧客の資産形成ニーズやリスク許容度に応じた投資商品が推奨され、顧客がそれを信頼できる環境がぜひとも必要です。この観点からも、原則の内容が法的義務とされることが必要と思います。また、ここでは、投資目的とともに顧客のリスク許容度という視点が重要であり、抽象的な言葉ではなく、具体的、数値的な水準の把握と、ポートフォリオ等による適切な管理が求められるところだと思います。
第4に、今日、利益相反の適切な管理は極めて重要です。投資助言業者ではない販売業者による適切な助言が課題となっている我が国の状況は、米国のブローカー・ディーラーの問題に類似するものと思われます。この状況から、販売業者については、米国のベストインタレスト規則等の枠組みを参考に、我が国でも詳細なルールを整備することを検討すべきと思います。
次に資産運用業の高度化ですけれども、ここでも、企業や経済の成長を促すという視点が重要と思います。運用業者が、投資先の選択や投資後の議決権行使等により企業の成長を促すこと、その運用状況を顧客側が適切に判断できる十分な情報が開示されていること、この状況を監督官庁が効率的、実効的にモニタリングできることが必要と思います。こうした状況によって、投資運用業の業務内容自体の競争を促すことも可能となるものと思います。資料25ページに指摘のある情報開示や検証は、いずれも必要と考えられます。
次に、金融リテラシーについてですが、金融リテラシーの向上を図るには、社会経済の中における金融商品の位置づけを実感できることが必要と思います。自らの投資資金、あるいは提供資金が、その先、どのように使われ、どのようにリターンを生み出すのか、あるいは、投資信託や保険が金融機関のどのような役割や仕組みの下で提供されるのか、個々の商品ではなく、社会経済全体から見ることができるような認識の共有が重要ではないかと思います。この点、若い層はESG投資への関心が比較的高いというような指摘もございます。このような意識も踏まえて、金融リテラシーの向上につなげていくことも必要と思います。
最後に、仕組債について一言ですけども、仕組債については、デリバティブによるリスク移転が主要な経済効果であると考えられます。これは、基本的に社債としてではなく、本来デリバティブとして規律すべきで、オプション取引についてリスク判断ができる主体の投資判断によって、適切なリスク移転を実現する観点が必要と思います。少なくとも、適切な投資判断材料の提供のために、組成コストも含めた開示は不可欠と考えます。
以上です。ありがとうございました。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、沼田委員、御発言ください。
【沼田委員】 沼田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。私からは、1つ目の顧客本位の業務運営原則について、販売会社の情報提供について、独立性について、それと金融リテラシーについて、この4点についてお話しさせていただきたいと思います。
まずは、顧客本位の業務運営原則と販売情報開示についてですけれども、顧客の最善の利益に資する行動を取ることは世界的な潮流になっており、一定の成果も出ていると思います。したがいまして、我が国の顧客本位の業務運営原則、それから重要情報シートの情報開示のようなところは法令化されてもよろしいのではないかと考えております。
ただ、法令化するからといって、それが大幅なルール化に戻ることを意味する必要もないと思っております。米国を例に挙げますと、エリサ法、投資顧問法、ベストインタレストルール、これらは、いずれもプリンシプル・ベースになっているかと存じます。その結果、個人に対するアドバイスやサービスは、事業者の創意工夫の下、目覚ましい発展を遂げました。プリンシプル・ベースがうまく機能しているのは、顧客の富の分布が変わっているからだと考えております。昔のような釣鐘型ではなくて、恐竜の尻尾のようなロングテール型になっています。これは日本でも一緒だと考えます。つまり、昔に比べると、個人のニーズや属性がはるかに多様化しておりますので、もはや資産が最も少ない層を除くと、ボリュームゾーンはなくなっております。つまり、一律の規制もそぐわないと考えます。もちろん資産が少ない層が十分に投資家として保護されていないのであれば、ルール化もコンプライもやむを得ないと考えます。ただ、それ以外の層には、できるだけエクスプレインできる機会を残しておいていただきたいと思います。そうしないと、個人の金融リテラシーの度合いにおいても、証券業者のサービスという意味でも進化していかないことが懸念されます。洗練化されていっても、両者ともそれを目指す訳ですが、日本の金融機関からは資産形成層と同じサービスしか受けられない、提供できないとなってしまうからです。
2点目ですけれども、独立の議論ですが、真の独立業者に独立印をつけること、また、それ以外の業者との違いを周知することは必要だと考えます。ただ、彼らのコスト構造上、既に御議論もありましたけれども、富裕層に特化する傾向があります。したがいまして、投資家の裾野を広げようとする段階で、それ以外の半独立業者を排除してしまいますと、アドバイスが受けられないアドバイス難民が出てきてしまうのではないかと危惧します。
と申し上げましたのも、16ページにありますけれども、米国には独立の定義がありません。これは、もちろん紛らわしいですけれども、どこまで独立かという意味で、独立業者のグラデーションが形成された結果、アドバイスが受けられる投資家層がかなり幅広になっていると考えております。独立の度合いですけれども、①社員かどうか、②系列の商品を売っているか、③資本関係があるか、④経営者の帰属意識がどこにあるか、⑤金融機関のブランドを使っているか、などの組み合わせでグラデーションが形成され、最も独立だと思う業者たちは、差別化ができるよう、自分たちで協会を設立いたしました。半独立業者は、収益構造上、その目標値や目標預かり資産を低くできるので、彼らが他の金融機関が周りにいないような郊外にも出ていきました。貯蓄から投資への過渡期においては、多くの個人が身近な証券アドバイスを受けられるよう、アドバイザーが都市部以外でも活躍することが不可欠です。半独立業者のアドバイスを通して、郊外に住む個人の投資のリテラシーが上がっていったということは、十分に評価されるべきだと考えております。
最後の金融リテラシーですが、これを推進する横断的な常設された母体は必要だと考えております。国が用意してもいいのではないかと思いますけれども、それは何よりも業態等の隙間を埋める必要があるからだと考えております。また投資教育とアドバイスは地続きですし、企業年金と個人の資産形成も地続きです。現状の日本には、これらの間にも隙間があります。一方、例えば、アメリカ、英国もですけれども、投資教育とアドバイスの間にはガイダンスという概念を設けて、地続きにしております。
34ページのところですけれども、金融関係団体様の金融教育のリストがございましたが、私、ここの関係者様、全てに授業をお願いしたことがございます。内容についてはもう感謝しかないわけでございますけれども、ただ、教育の現場で言われているのは、学びというのは本来、6段階あります。まず①知識を得て、②理解して、それを③応用して、④分析して、⑤評価して、⑥創造できるようになる、ここまで持っていく必要があるわけでございます。それを考えますと、現在の投資教育のように、中立性を重視した集団の場でできることは限られております。大半は知識を得て理解するところまでで、時々応用に踏み込むコンテンツがあるくらいです。投資判断を行なえるようになるためには、分析、評価、創造の仕方も含めた教育が必要ですが、これらはどうしても個別の内容に踏み込む必要があります。したがって、これらをアドバイザーにバトンタッチできるような仕組みがあればよいと考えている次第でございます。
以上です。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、松尾委員、御発言ください。
【松尾委員】 松尾でございます。48ページのスライドに沿って申し上げます。
まず、顧客本位の業務運営に関する原則の法令上の義務化につきましては、前回も申し上げたとおり、ぜひ進めていただきたいと考えております。また、その際には、2つ目のポツにありますとおり、インベストメント・チェーンに関わる当事者全てについて、その役割を果たしていくように横断的に法令上の義務化を進めていただきたいと考えております。
続いて、利益相反管理の点ですけれども、これも前回も申し上げたことですが、こちらは、手数料・報酬について開示することを通じて、どういった関係にあるのか、商品を売ることによって、誰のところにどのような報酬が入るのかということを開示する、これは最低限必要なことではないか。この点は、法令上の義務として定めていくのがよいのではないかと考えております。
続いてアドバイザーの育成のところですけれども、理想としては、やはり顧客のみから報酬を得ているという意味での独立のアドバイザーを育てることがあるのかなと思います。しかも、そのアドバイスの対象というのが、富裕層に限られず、資産形成層に対して、顧客のみからフィーを得る形でアドバイスをする人たちを育てることが、現在の日本の状況からすると必要なことであろうと考えております。ただ、なかなかこういう方がビジネスとして成り立つのかということが非常に心配もあるところですので、できればそういうビジネスが成り立つような、それを後押しするような制度の整備を進めていくことが必要ではないかと思います。
具体的に申しますと、業者間のイコールフッティングという観点からは、何かしら具体的な金融商品取引の推奨を伴うような情報提供については、どのような名目で誰が行おうと同じ規制をかけていくことが重要かと思います。それから、これは少し政策的な話になるかもしれませんが、中立的な独立のアドバイザーにビジネスチャンスを広げていただく上で、これは金融リテラシー教育ともつながりますけれども、学校や職域での企業年金に関するセミナー等、そういったところで、一定の質を備えた独立のアドバイザーによる教育を義務づけるという形で、そういうところにアドバイザーがビジネスチャンスを見出していくような後押しをできないかということを考えました。
最後に、アドバイザーとの関係で、これも監督の立場から何か言うことではないのかもしれませんが、いわゆる認定協会、自主規制団体として投資顧問業協会様があるかと思いますけれども、それがどうしても従来、投資運用業の方を中心に自主規制も行われてきたようなイメージがありまして、自主規制の内容が、今目指している、例えば投資助言業の在り方等にそぐわないところもあるのではないかという懸念がありまして、そちらも併せて見直していただけるとよいのではないかと考えました。
以上です。ありがとうございました。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、渡辺委員、どうぞ御発言ください。
【渡辺委員】 全部で3点ですけれども、まず1つ目はルールベースにしていくという話について、特に開示に関しては、実際に色々なものが開示されていますけれども、どこにその情報があるか分かりにくいということが実際にあると、いくら開示させてもあまり実効的な意味がないことになると思いますので、実際の規定をつくっていく際には、できる限り分かりやすく、普通の投資家の人が見たときに、簡単に意味が理解できるということを、買うときに、必ずはっきりと分かった形で理解できるような仕組みとしていただくとよいと思っています。
もう一つは、エンフォースメントについてです。ルールベースにするのであれば、やはりエンフォースメントに実効性がなければ絵に描いた餅になってしまうと思いますので、どういう開示などのルールをつくるかという議論に加えて、どういうエンフォースメントにするのか、違反した場合のペナルティーはどうなっているのか、それから、違反しているかしていないかについて、何らかの形で、例えばランダムにオーディットするとか、苦情ベースで意見を聴取するというだけではなくて、積極的に規制する側からルールに基づいて行われているかどうかをチェックするという体制を最初から組み込んでいくことが大事かと思っています。
金融教育については、先ほど他の委員がおっしゃったことと私もかなり近いですけれども、これまで様々な取組がなされていて、様々なコンテンツも色々用意されている一方で、なかなか進まないという話があります。色々なところで金融教育がと言われ色々な取組がたくさんなされているにもかかわらず進んでいないように見えるということであれば、やはりEBPMの観点からも具体的なKPIを設定して、ターゲットごとに、高校生、大学生、社会人、まだ投資したことのない人に対して金融教育を行うといった様々な形があると思いますけれども、普通に何かの商品をマーケティングしていくのと似た形で、ターゲットを具体的に決めてそれぞれのターゲットに対してどういうアプローチをして、どういう施策をしていて、どの施策に効果があってどの施策に効果がなかったのかを検証しながら進めることが必要だと思います。コンテンツも様々なコンテンツがあると思いますけれども、こういうコンテンツで教育した場合は非常に効果的だが、こういうものは効果的でないので、こういうものはより幅広く使っていくけれども、こういうものはもうやめにしましょうといった、そういう取組とすべきかと思います。
ですので、色々な組織をさらにつくるというのは一つの考え方かもしれませんが、これまでも様々な方々が様々な努力をされているにもかかわらずこうした現状だと考えると、具体的な数値目標などもつくりながら、EBPMの観点からも施策を改善していくという、そうしたやり方に進んでいくというのがよいと思います。
私からは以上です。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、島田委員、どうぞ。
【島田委員】 島田でございます。どうもありがとうございます。論点をまとめていただき、大変助かりました。
顧客本位の業務運営全体の話と、それから、アドバイザーについてお話をさせていただきたいと思っております。
まず、顧客本位の業務運営についてですけれども、原則の取扱いについてです。金融サービス業の基本となる原則ですし、今まで時間も十分取ってここまで来たわけですから、その結果、金融機関によって取組に相当な温度差、濃淡が出ている現状を見ると、取組方針の策定、公表を義務化して、それから情報開示、進展状況の報告などに随時取り組んでいくこと、これをルール化していくことに問題はないと思います。
金融取引の現場で顧客が置き去りになっていないかという懸念については、かなり昔に、かつて業界横断的な金融サービス法が議論された時代からの課題であると思います。ですから、現状に即した適用範囲を横断的に広げていくということも非常に重要なことだと思っておりまして、この点において、企業年金等のアセットオーナー等まで含めることも時代に即したものではないかと考えております。法令化に当たっては、原則の2、顧客の最善利益の追求について定義を明確にしていかなければならないと思います。
それから、原則の3です。利益相反の適切な管理について、全ての業者、関係者が遵守すべきものとして定める方向が望ましいと思っております。ですから、厳しく決めるというよりは、なるべく広い範囲の、またミニマムスタンダードに戻ってしまうのかという議論もあるかとは思いますけれども、ルールとして掲げていくことが重要ではないかと思っております。
また、金融商品の組成・販売業者においては、従業員に対する適切な動機づけの枠組みについて指針、あるいはガイドラインのようなものも必要ではないかと考えております。
さらに法令、ルールを考えるに当たっては、今後テクノロジーの進歩や規制緩和等によって、現在想定されていない金融商品や金融商品に準ずる商品、あるいは販売業者が登場してくることも念頭において、それらも包括できるように取り組んでいただきたいと思います。
一方で、手数料の明確化や重要な情報の分かりやすい提供については、重要情報シートの改善で対応できる部分は、せっかくつくったものでありますから、一生懸命カバーしていただきたいです。その上で電子化の推進を図って、比較可能な形で情報・データの提供をルール化し、これによって特に類似商品や同一アセットクラスの商品間での比較が、最終顧客にもウェブなどを通じて簡単にアクセスできるようにすること、こういった改善が必要だと考えております。この二段構えで現状の改善に取り組むことも可能ではないかと思いますので、御検討いただければと思います。
次に、アドバイザーについてです。利益相反の管理において、何よりも個々の販売員の収益構造を顧客に明確に伝え、理解してもらうことが重要だと思っています。何度も申し上げておりますが、これは16ページの各国の対応での最初の項目に当たっておりまして、これがはっきりすることによって、顧客には相手が何者であるかということが明確に分かると思います。アドバイザー本来の役割というのは、個別の金融商品の説明以前の問題として、顧客の状況やニーズを把握した上で、その顧客の資産管理状況、あるいは妥当な金融商品やアセットクラス、それらの資産配分などを顧客が理解できる形で選択肢の提案をし、判断するために必要な重要事項について点検を行う助けをすることだと思います。ですから、これらの行為というのは、実は営業行為の中に含めて十分に手当てをするにはあまりにも広範であり、リテラシーの低い顧客からも話を引き出す技術も必要な業務だと考えます。現状では金融商品販売業者と顧客の間にアドバイザーが存在するケースはまれですから、まず独立か否かという議論以前に、金融販売業者において、アドバイザーと販売員をそれぞれ独立した業務として人員を明確に分けるなどの工夫もお願いできればと思います。
また、金融機関以外の独立・中立な者と金融機関から収益を還元されている、いわば金融機関に半ば所属する者との区別は非常に重要だとは思っております。ただ、だからといってそれぞれが遵守すべきルールが異なっては顧客にとってアドバイザーを信頼しきれない状況は変わりません。経営上の改善については、むしろ個々の販売員に対して所属する企業の枠を超えた顧客本位の業務運営遵守の宣誓といったものを義務化し、これに関する相談窓口を設けるなど、原則を守る個人を育てながら、その個人を様々な圧力や忖度から守る体制も必要ではないかと思います。
もちろん諸外国のように、顧客のみから報酬を得るだけの者をアドバイザーと名乗るように認めることは理想ですけれども、現時点で日本でそれが可能かというとかなり困難であるように見えます。この状況で呼称の問題に矮小化してしまえば、また相談員とかコンシェルジュ、コンサルタントなどの呼称が多様化して、顧客が実態をつかめないで困惑するような状況が常態化する懸念が大きいと思います。その点では、顧客のみから報酬を得る者に対して特定の資格、ライセンスなどを与えて、一目で区別できるようにすることも検討してよいかもしれません。アドバイスの質の管理については、前回の繰り返しになりますが、アドバイザーの機能、能力、規模に応じて業務範囲を定めることも考えるべきだと思います。
以上です。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、竹川委員、御発言どうぞ。
【竹川委員】 詳しく資料をまとめていただきましてありがとうございました。
私のほうからは、顧客本位の業務運営に関する原則についての全般と、アドバイザーについて、そして金融リテラシー教育についての3点、お話を申し上げたいと思います。
まず1点目、顧客本位の業務運営に関する原則についてですが、原則2の顧客の最善の利益の追求及び原則3の利益相反の適切な管理については、一定のルールを設けていくべきだと考えます。
一方で、顧客本位の業務運営に関する原則は、ベストプラクティスを目指して顧客本位の良質な金融商品、サービスの提供を競い合い、よりよい取組を行う金融事業者が顧客から選択されていくメカニズムの実現が望ましいということで、プリンシプル・ベースになった経緯があります。道半ばではありますが、きちんと取り組む金融事業者も一部出てきており、差異も生じてきています。そう考えると、重要なのはより一層の情報開示を行い、消費者が選択しやすい方向に持っていくのが本来あるべき姿ではないかと考えます。
前回、原則に基づく取組方針を公表している金融事業者が非常に少ないという問題を取り上げましたが、金融庁のホームページで、一覧がPDFで公開はされていますが、一般の方が、(自分が利用している)金融事業者が取組方針を公表しているのか否かを調べるのは非常に難しいです。例えば、消費者が検索をしやすいような仕組みをつくるなど、(取組方針の)公表の有無や取組状況について、発見しやすくなる方法をご検討いただきたいです。
また、米国の投信運用会社、最近では一部日本の会社でも経営陣や運用担当者などが自社の投資信託を保有しているか否かを公表しています。受益者と同じボートに乗っているかは(受益者にとっても)知りたいところです。公表していくことも検討していただきたいと思っています。
そして、2点目のアドバイザーについてです。これは島田委員からもありましたが、消費者がアドバイザーに相談をしようと思ったときに、どういう立ち位置の人なのかを知る上では収益構造について開示されていることが非常に重要だと考えます。また、収益構造に加え、(金融商品仲介業者とFPなどが)どう違うのかというところも含めて、統一した開示情報を設けて、それぞれの消費者が選びやすい環境をつくることが大事だと思います。
また、有償のアドバイスが主流になると、(RDR実施後の)イギリスにおけるように、アドバイスギャップが生じる懸念もあります。イギリスのRDRについては、先ほど野尻委員からもありましたが、手数料の高い金融商品を売りがちになる、手数料バイアスをなくすということを優先した一方で、透明性は確保できたけれども、アドバイスギャップが生じてしまったというような課題もあったかと思います。日本でもそうした課題は起こり得るのではないでしょうか。アドバイスなのか、ガイダンスなのか、人が多くのアドバイスを担う状況をつくるのか、ある程度テクノロジーなどを駆使して、ロボなども含めて提案ができる状況にするのか、といった部分は考えておく必要があると感じます。
個人的には現状の資格のまま、ファイナンシャルプランナーが個別商品までアドバイスを行えるようにするのは賛成できません。例えば、商品を限定するにしても、何らかの登録は必要だと思います。簡易にせよ、投資助言業登録などは必要だと考えます。
もう一つ申し上げると、金融事業者の投資助言業の登録の緩和ということが議論されていますが、例えば投資信託の代行手数料等や購入時手数料をすべて残したまま有償の助言をできるようにすることについては若干懸念が残ります。商品に紐付く手数料を残したままでよいのか、残すにしても現状のままでよいのか、投資信託や保険については改めて区分を整理したほうがよいのではないでしょうか。
最後に3点目、金融リテラシーについてです。他の委員からもたくさん御意見が出ましたが、常設の機関を設けて、定期的に進捗状況の確認を行える仕組みをつくったほうがいいと思います。その際、金融庁だけではなくて、厚生労働省など各省庁を含めた横断的な取組が必要だと思います。一般に銀行や証券会社で販売している商品だけではなくて、前回も申し上げましたが、会社員に浸透してきている企業型確定拠出年金についても情報開示の徹底や教育が必要です。横断的な取組が、これからはより一層必要になってくるのではないでしょうか。
また、金融経済教育推進会議に関しては、これまで学生向けに力を入れていた部分もあると思いますので、今後は40代、50代などを含め、全世代に向けて項目やコンテンツのアップデートをしていただければと思います。
私からは以上です。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、神田先生、どうぞよろしくお願いします。
【神田委員】 神田です。どうもありがとうございます。皆さんの御意見と重複する点があるかと思いますけれども、4点ほど述べさせていただきたいと思います。
第1点は、顧客本位の議論ですけれども、抽象的に言えば、2017年から5年経っておりまして、プリンシプルとルールの最適な組合せという観点から、一部法令化ということが十分に検討に値すると思っています。具体的には、諸外国の制度を参考にして、利益相反関連事項の開示というあたりから始めるのがいいかと思います。さらに具体的に言いますと、手数料関連事項、それからプロダクト関連事項、仕組みなどです。そして、利益相反対応についてのガバナンス体制の開示といったことが課題になるのではないかと思います。
2点目です。受託者責任の横断的な整備ということですけれども、これはぜひ法令上、横断的な整備をするという方向を目指していただきたいと思います。その際に基礎概念についての整理をお願いしたいと思いますし、その整理に当たっては、エンフォースメントの観点を重視して整理していただければと思います。
具体的には忠実義務、善管注意義務、それからベストインタレスト義務と呼んでおきますけれども、そして誠実公正義務といった、これらの基礎概念について一度整理をした上で、横断的な法令化を目指していただければと思います。
3点目は、アドバイザーについてです。この点については、今、島田さんと竹川さんがおっしゃったことと私もほぼ同じ感覚を持ちますけれども、一般的なことだけ申させていただきたいのですが、この分野は非常に難問でして、各論に行く前に、基本的な方向感について共通の認識を持つことが重要かと思います。助言業というのは非常に重要だと思いますけれども、日本は遅れているという認識を持った上で、助言業、あるいは、より広くアドバイザーの分野を育てていくという、これが基本観だと思います。そのために具体的にどういうことをしたらいいのかという各論を詰めていくという、そういう順序がいいと思います。
最後に4点目、金融リテラシーの向上です。これは永沢委員とほぼ同意見ですけども、これまで多くの方の努力で学校などでも取り組まれてきていますが、一番重要な方々というのは、やはり学校を出て社会に出られた方、20代から40代あたり、これらの方々に対して金融知識を共有するということが課題だと思います。そういう意味では永沢委員がおっしゃった、職域でのe-ラーニングが重要であって、これを進めていくのが1つ重要なポイントではないかと思います。
私も職場で、e-ラーニングを受講する義務があって受けていますけれども、例えば情報セキュリティーやハラスメント防止など、そういうものはありますが、金融知識の共有というe-ラーニングは受けたことがなくて、年のせいかもしれませんけれども、恐らく若い方も、職域でそういうものはないと思います。これはセキュリティーやハラスメントの場合には、当然起きてはならず、そうした事故の発生を防止するというのが目的ですけれども、金融知識が普及しないということは、資産形成がされないということを意味しているので、事故と同じだというくらいの危機感を持って進める必要があるように思います。
その際、資料にも一部間接的に出ていましたが、教育という言葉は少々上から目線のような気がしまして、私は金融知識の普及、共有といった言葉を使うほうがいいように思いますけれども、いずれにしましても、20代から40代、あるいはもっと上の方も含めてかもしれませんが、職域におけるe-ラーニングということをぜひトライしていただければと思います。
以上です。どうもありがとうございました。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、佃委員、御発言どうぞ。
【佃委員】 佃です。よろしくお願いします。2点のみ、簡潔にコメントさせていただきます。
まず1点目ですが、48ページの下に、販売会社、アドバイザーによる顧客本位の業務運営とありますけれども、こちらについてです。販売会社による利益相反の適切な管理、これが最重要だと考えますけれども、先ほど竹川委員の御発言にもありましたが、各金融機関で相当努力されているといった点というのはやはり重要な点かと思います。一方で、前回もそうですし、今回もそうですけれども、道半ばとされている点について、この後の全銀協、あるいは日証協の皆様等、各協会の皆様が、何が最大課題であると認識されているのか、何に悩んでおられるのか、これらについて、この後、発言の機会がございましたらコメントいただけると助かりますという点が1点目でございます。
相当努力された上で、まだ課題がある点についてどう認識されているか、については非常に大事だと思いますので、ぜひ御意見いただければと思いました。これが1点目です。
それから、2点目が49ページにございます資産運用業の高度化です。資産運用業は日本にとって、戦略的に大変重要な産業であるという認識を持っておりますけれども、その中で、資産運用業の高度化は、インベストメント・チェーンを高度化する上でも大変重要だと理解しております。そして、資産運用業の高度化のためには、ここにも書かれていますように、ガバナンスの強化を起点とした経営力の強化が必須だと考えておりますけれども、資産運用会社のガバナンスを強化する上では、資産運用会社だけではやはり完結できない、親会社との関係性というものがやはり大事になりますので、親会社のグループガバナンスにおける資産運用会社の位置づけをどう考えていくかということが重要であると考えています。今後、金融庁におかれましても、資産運用会社をモニタリングする上で、この点について、御留意いただければと思います。
私からは以上です。ありがとうございます。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、松元委員、御発言ください。
【松元委員】 御発言の機会をいただきましてありがとうございます。私の意見も既に他の委員の方から出たところと重複するところが多いですけれども、主に顧客本位の業務運営に関する原則との関係で発言させていただきます。
まず、顧客本位の業務運営に関する原則をルールベース化していくというところについては、私も賛成です。ただその際に、有吉委員がおっしゃっていたところと似ていますけれども、顧客本位の業務運営に関する原則の中には、あくまでもプリンシプル・ベースであるというルールもたくさん含まれていますので、今の顧客本位の業務運営に関する原則を全体としてルールベース化、あるいは法令化するというのはあまり適さないのではないかと思っております。その中で、ルール化することに適するもの、それを一部ルール化、あるいは法令化していくということが適切ではないかと思っております。
そのときに一体何をルールベース化するかということとの関係で、誰を規制するか、そして何を規制するかという点が問題になってくると思いますが、誰を規制するかということについては、義務や責任の性質上は、主体によって義務の内容は当然異なってき得るわけでして、忠実義務を負うような主体、助言業などは、忠実義務を負わない主体よりは義務の内容が重くなってくるということは当然ですけれども、ただ今回は、分かりやすいルール、分かりやすい規制をつくっていくということが何よりも重要だと思いますので、販売に関わる事業者全体に課しても過度ではないような限度でのルール化をして、全員に適用していくということが1つやり方としてはよいのではないかという感触を持っています。
その場合に、では果たしてどのようなルールをつくるか、何を規制するかという点を考えると、これも先ほど神田委員がおっしゃっていた点とほとんど同じですが、やはり利益相反の部分についてルールベース化していくことが必要ではないかと思っています。
そして、利益相反の中でも何をルール化するかについて具体的に考える必要がこれから先出てくると思いますが、本日の事務局の資料は、大変勉強になりまして、諸外国でどういったことがルールになっているかということがとてもよく分かりました。
義務化する、ルール化する余地がある点が3つあると思いました。1つは先ほどから何度も出ていますように、手数料を顧客からのみもらっているのか、それとも、顧客にこの商品を売ることによって、他のところから手数料をもらうことになるのかどうかということ、それが1点目です。
それからあと2点ありますけれども、アメリカのベストインタレストルールの場合だと、従業員レベルの利益相反という言葉、それから、会社レベルでの利益相反という言葉で表現されているところです。まず、従業員レベルでの利益相反のおそれについては、従業員が特定の金融商品を売ったら、特別に何かボーナスがもらえるということがあるのか、そういうやり方を禁止するのかどうか。さらに従業員の報酬が、特定の商品とは関係なく、どのぐらい売ったかということにどの程度左右されるのかといったことが、従業員レベルの利益相反と言われる部分です。
それから、会社レベルでの利益相反と言われている部分は、その販売会社がどういう商品を取り扱っているかということに注目していて、系列会社の商品ばかり取り扱っているのか、それとも、全ての会社の商品を幅広く取り扱っているのかどうかといったことです。今日の事務局資料を見ますと、ほかの国でも同じようなポイントに注目されているように思います。
ですので、この3点、手数料は誰からもらっているのか、それから従業員の報酬の仕組みが、インセンティブづけとして、特定の金融商品を売ったり、あるいは金融商品をたくさん売ったりすることに過度に影響を与えていないか、それから、販売会社の取扱商品が偏っていないか、限られていないか。そして、その3点について、これを規制するというときには、開示させるだけなのか、それとも、例えば手数料受領を禁止する、従業員にボーナスを出すことを禁止する、あるいは限られた商品だけ扱うことを禁止するといったように、禁止までやるのかといった問題もあると思います。現時点での私の感触としては、この3点について、開示を要求するというところまでルールベース化をするといったことから始めるのが適切ではないかと考えております。
そこまでが私のコメントですが、そこまでお話しした上で、よく考えてみると、今日の事務局資料の12ページをお示しいただくと、現在使われている重要情報シートについて、利益相反に関する記載内容を見てみると、これが3点書かれていまして、1つ目が、当社がほかの会社から、今回の販売に当たって手数料をもらうかどうか。それから、2つ目が、販売している商品の組成会社との間で関係があるか、系列会社の商品を売っているのかどうか。それから3つ目が、従業員がこの商品を売ることで、特別なボーナスを得るのかといったことが入っていまして、既にこうした重要情報シートをつくっていただいていますので、こういった内容をベースに、ここの部分のルールベース化や開示の義務化を検討していただければいいのではないかというのが私の意見になります。
すみません、長くなりました。よろしくお願いいたします。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
他に御意見ございますでしょうか。2回目、3回目でも結構でございますので、これまでの委員の方々の御意見、御発言を伺って、何か追加の御発言ございましたら、ぜひまたチャットでお知らせいただければと思います。特にございませんでしょうか。
それでは、よろしければ次に、オブザーバーの皆様方から御意見があれば、御発言をお願いしたいと存じます。先ほど佃委員からも、本日のテーマに関連して、各業界から、問題点や課題の認識がございましたら、ぜひそれについてもお示し下さいという御要望もございましたので、御発言を、御無理のない範囲でよろしくお願い申し上げます。
それでは、まず初めに、日証協の飯山様、お願いいたします。
【日本証券業協会】 ありがとうございます。日本証券業協会、オブザーバーの飯山でございます。発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。
まず、最初に先ほど佃委員から、顧客本位の業務運営の現状について、「道半ば」という評価があるがいかがかという御質問がございました。色々な観点、論点があるかと思っておりまして、金融事業者としてさらに取組みを進めていかなければならないという思いを抱いているところでございます。まずは金融事業者自身による主体的な気づきと取組みが重要なのは言うまでもありませんけれども、そのためのサポートといいますか、具体的には現状において何が課題なのか、まさに顧客本位の業務運営をさらに進展させていくにはどうすべきなのか、好事例の共有等々も含めて、御当局におかれましても、各金融事業者における顧客本位の業務運営のさらなる進展に向けた取組みにつながるような、丁寧なコミュニケーションをぜひお願いできればと考えているところでございます。色々な観点があるかと思っております。
今回、論点として挙げられておりますけれども、インベストメント・チェーンの各主体について横断的に考えていくこと、これについても1つの方向性として理解できるというところでございます。ただ、その場合は資料の9ページで取り上げられました一部の業態だけではなく、全ての金融事業者について横断的に考えることが前提であると理解しておりまして、これまでも各主体が果たすべき役割に応じて、顧客本位の業務運営に取り組んできているわけでございまして、「顧客以外から手数料を得ているから顧客本位ではない」とか、「利益相反があるから顧客本位ではない」といった一方的な見方が議論の背景になることのないよう、御留意いただければと思っております。
また、今回、海外の規制や制度の事例が紹介されております。我が国への参考としているところですが、それらは、各国ごとに違いがあることからも明らかなように、それぞれの歴史、環境、規制体系、ビジネスモデル、こういったものを基に形成されたものでございますので、日本とは土壌が異なることには十分留意する必要があるかと思います。
なお、金融事業者には現在においても多くの規制が課せられており、その遵守には多大な労力と費用を要しているところでございます。規制や制度を見直すとすれば、金融事業者にとって最小限の負担で、顧客本位の業務運営のさらなる進展を実現できるような規制のスクラップ・アンド・ビルド、とりわけ大胆なスクラップということが必要かと思いますので、そういったことも念頭に置いていただければと思います。
次に、アドバイザーについて発言させていただければと思います。既に御指摘いただいていますとおり、何がアドバイスなのか、誰がアドバイスを提供するのか、その者にはどのような責任や義務を負うのか、明確にして共有することが不可欠と思います。欧州では、「投資アドバイス」の定義を明確に整理して業規制の対象となる行為を特定しておりますし、また、アメリカでは、ブローカーとアドバイザーの規制が重複しないように整理していることがございますので、日本において議論する際も、アドバイスを提供する者と、金商業者のように投資勧誘を行う者との違いを整理することが重要かと考えております。
次に、資料22ページで取り上げられております、DCの運営管理機関に関連して1点申し上げさせていただければと思います。現在、DCの運営管理機関は個別商品についてアドバイスを行うことが禁止されておりますけれども、DC資産を含む包括的なファイナンシャルプランへの策定を支援する観点から、本年7月に本協会が公表しました「資産所得倍増プランの提言」においては、個別の運用商品のガイダンスがしやすくなるような提案も行っております。
最後に、中立的なアドバイザーと金融リテラシーの向上について申し上げたいと思います。政府が年末までに取りまとめる「資産所得倍増プラン」では、中間層の資産所得倍増を図るために、資産所得を得られていない層にも投資の裾野を拡大することが基本的な方向感であると考えております。国民の7割が「投資は必要でない」と考えている現状におきましては、多くの国民の「行動変容」が必要だと思います。国と金融機関等が一体となって積極的に支援していく必要があろうかと思います。金融リテラシーの向上や幅広い層への資産形成支援については、国家戦略として取り組む必要があります。まず、国は自ら資産形成教育や相談を行うための実行計画を策定するとともに、公的な実施機関を設置する等の体制整備を行っていただきたいと考えております。
民間の事業者や学校等と連携して、幅広い国民に対して資産形成に関する金融経済教育の機会を提供するとともに、中立的なアドバイザーによる個別相談等も無料で実施すべきと考えております。
本タスクフォースにおいては審議会の諮問事項にありますとおり、「家計の安定的な資産形成を実現する」観点から、引き続き、丁寧な検討をお願いできればと思います。
長くなりました。以上でございます。ありがとうございます。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、電子決済等代行事業者協会の瀧様、御発言いただけますでしょうか。
【電子決済等代行事業者協会】 電代協の瀧でございます。前回不参加でしたので、今回からの参加となります。よろしくお願いします。当協会には、家計簿を営む事業者が数社おりまして、また金融教育の取組も行っておりますので、そこから手短に3点申し上げます。
まず本日、当協会の会社は特に方針の公表等はする対象ではない業態ではありますけれども、議論を聞きながらずっと気になっている点として、最終的に独立系のフィナンシャルプランナーがいるような業態のエコノミクスがちゃんと成立しているのだろうかという検証を早めに持っておくべきだと思いました。というのも、営業をする人が良い関係を保てる顧客数は150人ほどが上限だとよく言われるわけですけれども、そこから得られる売上に対して、本当にその人たちが食べていけるのだろうかという数字の想定は、あまり内部に考えるべきではないのだという意見がございまして、その検証が常々ちゃんと裏側で回っているかが、そもそもマーケットを成立させるために重要だと考えております。これが1点目です。
2点目ですが、助言の出どころというのがとても大事だと思っていまして、というのは一般的な人は、ある日急に助言が欲しいと思うのではなく、例えば結婚、住宅を持つべきかどうか、介護問題、お葬式、相続など、失敗してしまうと大変になる意思決定が裏側にある意思決定に対してアドバイスを欲していて、ある意味資産運用というものも、その一部に過ぎない部分があると思っています。現状の議論が退職後所得に偏っていると思っていまして、他のライフイベントのお金に対する助言のニーズが生まれるタイミングに注目することというのは、この取組の中でも、議論を建設的に広げられることかと思いましたので、そこは提言させていただければと思います。
3点目、教育についてですけれども、今年から家庭科で投資信託などが出てきましたが、これが基本的に家庭科という範囲で教えられています。一方で、投資というのは、基本的に株式会社という仕組みが分からないと腹落ちがしないものだと思っていまして、これは公民であるとか、総合探求の時間に働きかけていくものだと思います。なので、今々新しいものが出来始めたというタイミングではありますけれども、本当は教育指導要領の他の部分にもちゃんと働きかけが見られていかないと、恐らく投資への腹落ちというのは生まれにくいかと思いますし、また、先生やPTAなど、間接的に教えることになる人たちのリテラシーも上がらないといけませんので、それらが沼田委員の知識の定着のお話に照らしても重要なのではないかと思っております。
以上でございます。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、全国銀行協会の江連様、御発言ください。
【全国銀行協会】 全国銀行協会の江連でございます。発言の機会をいただき、誠にありがとうございます。私からは2点、FD原則の法制化、金融リテラシーの向上について申し上げます。
まず、法制化についてです。FD原則は、法令改正等により、金融事業者による形式的・画一的な対応を助長してきた面を踏まえ、従来型のルールベースでの対応のみを重ねるのではなく、プリンシプル・ベースのアプローチを用いることが有効であるとの考え方に基づき策定されたものと認識しています。
9ページにお示しいただいている円グラフには、当協会の会員行は含まれておりませんが、取組方針を公表していない金融事業者様に対して、原則に沿った対応を促していくために、法令上の義務として定めるということも一案であるとは考えます。一方、全銀協の正会員行114行のうち94行が対応方針等を公表し、金融庁様が公表するリストに掲載されております。FD原則の取組方針、取組状況を公表している事業者については、プリンシプル・ベースのアプローチという当初の考え方も踏まえて、法制化によってどのような影響があるのか、よく見ていく必要があるものと考えております。
次に、金融リテラシーの向上ですが、学校教育に加え、職域の活用が有効と考えられます。国全体として中立的な立場からであれば、より柔軟な職域を活用した教育機会の提供が望めると思われます。一方、職域では対応できない層、あるいは、なかなか金融教育の提供まで手が回らない企業もあろうかと思います。例えば、フリーランスの方、あるいは、中小企業の従業員の方に対しては、個人向けのアプローチも重要であり、興味を引きつけるようなコンテンツを用意していく必要があります。
全銀協では本年1月から3月にかけて若年社会人等に向けて、人気声優を起用し、耳で聞くだけでも理解できる読み聞かせコンテンツ、「マネーの音本」というものを公開し、多くの方に御視聴いただきました。また、個別会社の例になりますが、三菱UFJフィナンシャルグループでは、グループ外の企業様と協力して、STOCKPOINT for MUFGというアプリを提供しています。これは、Pontaポイント等のポイントを使い、日本株、外国株、投資信託などの様々な金融商品とアプリ内のポイントを連動させ、ポイント運用とロールプレイングゲームを掛け合わせた新しい体験を通じて、資産運用の世界を体験してもらうアプリです。これらは一例ですが、教育には特効薬はありません。多くの方に金融教育に触れていただくよう工夫し、草の根活動を続けていくこと、また、その活動を長期的な目線で中立的な組織で支えることが望ましいと考えております。
なお、中立的な組織においては、どういったリソースをもって運営していくのか、中立的な組織が金融リテラシーを推進する母体となった場合に、事業者としての金融機関はどのような役割を果たしていくべきか、海外の事例なども参考に、日本に適した教育提供の体制を検討していく必要があると考えます。
以上です。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、国際銀行協会の中村様、御発言ください。
【国際銀行協会】 国際銀行協会の中村でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。仕組債に関して、一言申し上げたいと思います。
御議論いただきたい事項におきまして、手数料等の情報提供を充実・ルール化すべきとの意見がある旨、記載されております。弊協会会員には、仕組債を組成する、いわゆる組成業務を行う組成者が複数おりますので、この点に関して述べさせていただきます。
組成業務におきましては組成費用が発生しますが、それらを販売手数料と併せて、実務上可能な範囲で開示することは透明性を高めることにつながりますので、最終投資家の方が御納得の上で商品を購入いただける一助になると考えております。なお御案内のとおり、海外では仕組債等の商品の価格等の開示に関する規制が既に導入されております。既存の海外規制を参考にいたしまして、本邦の開示ルールを検討することは有益だと思います。また、グローバルルールと一貫性のあるルールを導入することは、日本の国際金融都市構想の一助になると考えております。
しかし、海外規制に基づく開示ルールにおきましても、OTCという商品性を鑑み、フェアバリューの算出に関する明確な定義がないことには留意が必要かと思います。よって、日本において新しい開示ルールを導入する際は、実務上の問題を踏まえ、一つ一つ論点を検証しながら本邦実務を確立させていくことが現実的であると思います。
以上となります。ありがとうございました。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、生命保険協会、竹内様、どうぞ御発言ください。
【生命保険協会】 生命保険協会の竹内でございます。御発言の機会をくださいましてありがとうございます。私から3点、発言させていただきます。
まず、1点目は、顧客本位の業務運営に関する原則のルール化につきましてでございます。生命保険協会におきましても、全ての生命保険会社が顧客本位の業務運営を宣言しておりまして、各種の取組や不断の努力が極めて重要だと重々承知しております。生保協会におきましても、色々な事例の共有を行ったり、顧客本位というものに着目した常設の会議体を設置したりするなど、一定の取組を推進しているというところでございます。
そして、各委員の皆様からもお話がありましたけれども、やはり従来のルールベースの取組が、そのルールがミニマムスタンダードになってしまって、形式的・画一的な対応を助長してきたということも踏まえて、現行の顧客本位の業務運営のプリンシプル・ベースのものがあるという理解をしておりますので、さらにこの趣旨を踏まえて、顧客本位の実現をするためにどういう方法が有効なのかということについて、よく御検討いただければと考えております。
また、昨年の1月に顧客本位の業務運営に関する原則の改定が行われて、現在は各社における方針と取組状況の原則との対応関係、これをより明確に関連づけて示すといったような運用も始まっているところでありますので、業界としましては、もう少し状況を注視していく必要もあるのではないかと考えております。
それから各論ですけれども、利益相反、そして手数料等の情報提供の充実・ルール化につきまして、これも現行の業法等におきまして、適切な利益相反管理体制の構築やその方針等の公表、そういったものは既に義務づけられていたりもします。手数料関係も同様でございまして、各社におきましては、各種の定量的な開示とともに、定量的な開示が難しいものについては定性的な説明や理由を記載するようにしております。既に現行の法令で手当てがされているところと、各社でルールに基づいてベストプラクティスを追求しているという状況に鑑みまして、引き続きの御検討をお願いしたいと考えております。また協会のほうでも各種ガイドライン等を制定しておりますので、そういったものも尊重していただければと思っています。
2点目ですが、アセットオーナーの関連でございまして、企業年金等の機能発揮という論点についてでございます。現行の法令上、既に企業年金基金等の理事等に対しまして、加入者等に対する忠実義務、注意義務等が定められております。さらなるルール化の御検討に当たりましては、既存の措置の現状や定着の状況について、調査・確認に基づいて具体的な課題を明確にしていただければと考えております。
それと、企業年金は御案内のとおり、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用されております。各種のルール化におきましては、とりわけ中堅・中小企業にも配慮した議論が必要かと考えております。
最後に3点目ですけれども、金融リテラシーの向上につきまして、生保協会といたしましても、各種の取組を進めてまいりました。横断的な取組を推進するということには賛同しております。それに当たってはまず、既存の資源を活用して、各業界の取組をしっかり取りまとめて提供の機会を増やすといったような方向が有益ではないかと考えております。共通のプラットフォームを経由して、生保協会としてもしっかりと各種の社会保障制度等々の関連も含めて、教育の充実に貢献することができると考えておりますので、引き続きの議論をよろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、日本FP協会の上松様、御発言ください。
【日本FP協会】 日本FP協会の上松でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。
御議論の中で、アドバイザーをめぐる課題が挙がっております。その中で、ファイナンシャルプランナー、FPも言及されておりますので、その点に関連してコメントをさせていただければと思います。
まず、FPの資格についてであります。本日の資料15ページにもありますように、日本FP協会はファイナンシャルプランナー、FPの資格認定を行っております。CFPとAFPという2種類のFP資格を認定していますが、CFPは国際標準の上級資格です。このCFPとAFPは、まず国家検定であるFP技能検定に合格しなければなりません。その上でさらに、顧客の最善の利益を追求するという、当協会の会員倫理規程の遵守が課せられていること。また、継続教育を義務として、知識をブラッシュアップし、2年ごとに資格更新するという資格認定の要件があります。FPは個々人のライフプランを踏まえた家計に関する包括的なアドバイスを主眼としていますが、多くのFPの中でも、今申し上げた資格要件を備えたCFP認定者、AFP認定者の中には、このたび求められているアドバイザーの適任者が相当数いらっしゃると考えます。
なお現在、資料のとおり、CFP認定者は約25,000名、AFP認定者は約160,000名ですが、これらの資格認定者は様々な業種の方がいらっしゃいます。中立的という観点から、例えば業種として、FPの実務家及び税理士など士業等と兼務されている実務家として登録されていらっしゃる方は、約12,000名となっております。
もう1点、日本FP協会には、これらのCFP認定者、AFP認定者によるFP普及活動の支部組織が各都道府県にあります。一般生活者を対象に、ライフプランニングに関するセミナーやFP相談会を実施しており、セミナー参加者は、コロナ前で年間約20,000名となっております。また、当協会では、CFP認定者を中心に、各省庁や自治体の事業にセミナー講師や相談員を派遣し、適切に業務を行い、評価されている実績がございます。
このようにCFP認定者、AFP認定者によって、全国的にFPの派遣体制を整えることが可能であります。こうした理由から、中立的なアドバイザーの活用、金融リテラシーの向上に向けて、当協会としましても貢献できるものと考えております。
以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、投信協会の渡部様、御発言ください。
【投資信託協会】 投資信託協会の渡部です。本日は発言の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。私のほうからは49ページ、御議論いただきたい事項に掲げられている中の、資産運用業の高度化についてコメントをさせていただきたいと思います。
投資信託に関わるプロダクトガバナンスにつきましては、業界、協会といたしましても、各々の運用会社において、顧客の利益を最優先に、最善・強化について常に問題意識を持って臨む必要がある、経営課題であると認識しております。この観点から、弊会では、日本投資顧問協会と共同で検討し、2020年11月に、資産運用宣言2020を採択しており、協会員に対してこれを遵守することを求めておりまして、この宣言の中で、顧客利益の最優先をうたっております。
このためにどのような取組が効果的なのかということですが、現在、投資信託の運用会社は100社を超えており、そのバックボーンも証券系、メガバンク系、信託銀行系、地方銀行系、生損保系、系統金融機関系や独立系、また、運用業務専業等様々であります。また、国内系のみならず外資系も多数参入していただいております。さらに、各々の運用会社の提供しているファンドの種類ですとか運用手法、ビジネスモデルも多種多様なものとなっております。以上を踏まえ、今後もまた新たな特色ある運用会社の参入を促す、海外からも新たに参入することを促していくということも併せて考えますと、例えば、社外の独立取締役の選任をすることを一律に法令等で義務づけるのではなく、プログレスレポート等を参考に、各々の運用会社において、自社の業務運営を検証し、課題を洗い出した上で、それに対する解決策を検討・実施し、定期的に効果検証を行うことを求めることが、各々の運用会社に当事者意識を持たせることにつながり、資産運用業界全体の底上げにもつながるのではないかと、当協会では考えております。
以上です。ありがとうございました。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
次に、FINMACの丸野様、御発言ください。
【証券・金融商品あっせん相談センター】 FINMACの丸野でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。私からは、顧客本位の業務運営に関する原則の法令化について、意見を述べさせていただければと思います。
資料にも書かれておりますが、適合性の原則に限界があるのではないかといった御意見があったということでございますけれども、私どもFINMACでは、紛争解決の申立てをしてくる投資家の方から、例えば、自分にこういった仕組債を販売したという行為は適合性の原則から見て問題ではないか、といった内容の申立てが比較的多く寄せられるところでございます。実際、私どものあっせんの場での話合いにおきましても、裁判とは違いまして白黒はっきりつけるわけではございませんが、お互い譲り合いの精神を持って話合いをしていく中において、適合性の原則に反していたといったケースというのはあまりないものの、適合性の原則に照らすと、若干配慮が足りなかったのではないか、あるいは、もう少し注意すればよかったのではないか、といった形で話合いが決着する事案が比較的多くございます。実際我々のところでは、全てが適合性の原則違反だといった訴えがあるわけではないですけれども、全体としては6割程度が和解できているということからすると、適合性の原則というものは現状のままでも一定の使い勝手があると考えております。
仮に顧客本位の業務運営の原則を法令化するといった場合、本日の資料ですと10ページ目のところにフォローアップが出てまいりますが、このフォローアップにつきましても、利用者側、お客さん側からは一切フォローアップがない、また、買ったはいいけれども、売りっ放しで何もアドバイスを受けていないといった苦情申出がございます。これを金融業者に苦情として取り次ぎますと、しっかりフォローアップしていますといった返答が返ってくるケースもございますことから、ここの部分を、法令上の義務といった形にするとなると、具体的にどういう形に落とし込むのかということに難しい部分があるのではないかと感じております。
それから、アドバイザーについて若干述べさせていただきます。アドバイザーの役割が非常に重要だということは、皆様と同じ意見であると思っておりますけれども、仮に投資家がアドバイザーに費用を払うということを前提としつつ、現状でも投資家は販売会社などにコスト、手数料を払っているわけですから、販売会社への支払い額が変わらないとすると、投資家のトータルとしての支払い額が増えて、投資家の支払いコストが高くなることで結局マーケットへのアクセスがしづらくなるといったようなことも考えられるかと思います。
今後の規制の在り方をどう考えるかですが、例えば、アドバイザーがいる場合には、販売会社の法的義務、例えば説明義務の一端が軽減されるといった仕組みで、全体としての市場へアクセスするコストが変わらないような状況、少なくとも市場へのアクセスコストが上昇することを避けられるような状況に持っていっていただければと考えます。
以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
続きまして、信託協会の舟橋様、御発言ください。
【信託協会】 信託協会、舟橋と申します。発言の機会をいただきまして、どうもありがとうございます。信託協会といたしましては、インベストメント・チェーンの機能の発揮ということで、企業年金について少し触れさせていただきたいと存じます。
私ども加盟会社の中では、DCの運営管理機関ということでサービス提供させていただいているところもございますけれども、投資教育における職域の重要性ということで、色々なツールなども御提供させていただいておりますけれども、本日、神田先生からも、e-ラーニングということで具体的にお話もいただきまして、こういったことを非常に参考にして、さらによいサービスを提供してまいりたいということでございます。
それから、DBでございますけれども、こちらは生保協会さんからもございましたが、企業年金を導入されている企業様の規模が非常に幅広くございますので、中堅・中小企業さん、こういったところにつきましても丁寧な御議論をしていただければと考えております。お願いいたします。
以上でございます。
【神作座長】 どうもありがとうございました。
本日、大変貴重な意見を多数いただきまして、誠にありがとうございます。顧客本位の業務運営に関する原則に関する論点につきましては、プリンシプルの部分的なハードロー化というのも考えられるところでございますし、ルール化するとして、どこを法令化するか、そのような観点から具体的な御議論もいただきました。
また、資産運用業についても、横断的な規制の必要性ということを御指摘いただきましたし、特に最後の金融リテラシーの向上の論点では、やはり何か核となる機関が存在して、共通のプラットフォームの下で協力と連携をさらに進めていくべきであるといった御意見が多数示されたように思います。
本日いただきました御説明や御意見等を踏まえ、事務局において、今後検討すべき課題について、さらに整理をしていただきたいと存じます。
それでは、本日は時間を若干超過しておりますが、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。誠にありがとうございました。
―― 了 ――
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金融庁 03-3506-6000(代表)
企画市場局市場課(内線:2356、2355、3628)