金融審議会「顧客本位タスクフォース」(第1回) 
議事録

  • 1.日時:

    令和4年9月26日(月曜)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室
     

金融審議会「顧客本位タスクフォース」(第1回)
令和4年9月26日


【神作座長】  おはようございます。定刻になりましたので、ただいまより、顧客本位タスクフォース第1回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところ誠にありがとうございます。
 
 私は、当タスクフォースの座長を務めさせていただきます東京大学の神作でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
 初めに、当タスクフォースについて御説明申し上げます。本年9月12日に開催されました市場制度ワーキング・グループにおいて、資産形成の促進に資する顧客本位の業務運営の確保及び金融リテラシーの向上について、具体策を専門的に検討するため、市場制度ワーキング・グループの下に当タスクフォースが設置されました。そして、当タスクフォースの委員の選任は、市場制度ワーキング・グループの座長である神田委員に一任されております。
 
 本日は、第1回会合でございますので、初めに、当タスクフォースに御参加いただく委員の皆様を御紹介したいと存じますけれども、お手元に資料1として名簿がございますので、そちらを御覧いただければと存じます。また、オブザーバーの皆様につきましても、同様に資料1に記載しております。事務局につきましても、お手元の座席表をもって御紹介に代えさせていただきます。
 
 次に、会議の運営について、市場制度ワーキング・グループと同様にさせていただくことを御了承、御承認いただきたいと存じます。
 
 それでは、早速議事に移らせていただきます。本日は、顧客本位の業務運営の確保をめぐるこれまでの取組と課題を踏まえ、今後検討すべき課題について、幅広く御議論いただきたいと存じます。
 
 まず、事務局説明資料に関しまして、事務局より御説明をいただきます。その後、皆様から御意見を頂戴したいと存じます。
 
 それでは、事務局説明資料につきまして、事務局より御説明をお願いいたします。
 
【桑田市場企画管理官】  それでは、お配りしている事務局資料2について御説明いたします。本日の主題は、金融事業者による顧客本位の業務運営の進捗状況を御確認いただくことにありますが、金融リテラシーに関する事項も含めまして、幅広く御意見いただければと思います。
 
 3ページ目から4ページ目では、本年6月に市場制度ワーキング・グループにおまとめいただいた中間整理の抜粋を掲載しております。
 
 5ページ目には、その関連部分を俯瞰する形で図示しております。中ほどに金融商品の販売者に関する論点として、適切な勧誘・助言、顧客への情報提供の充実、右側が金融商品の組成者に関する論点として、プロダクトガバナンスの確保、資産運用業の高度化、また左側に家計の金融リテラシーの向上等記載しております。
 
 6ページ目は、家計の資産形成に関する近年の変化についてです。
 
 左側の棒グラフにありますとおり、つみたてNISAの口座数は順調に伸びてきております。
 
 また、右側の図は、家計金融資産に占める有価証券保有割合ですが、年齢別、収入別に分けております。それぞれのカテゴリーごとに8本の棒グラフで示されておりますが、これは顧客本位の業務運営の原則が策定されました2017年を境に、それまでの4年間と、それ以後の4年間で、変化があったか否かを見るために分けております。
 
 年齢階級別におきまして、若年層において増加している等の動きも見られますが、左側の平均を御覧いただきますと、全体としては、ほぼ横ばいの状況になっております。
 
 7ページ目は、金融リテラシーの要素も交えて図示したものになります。
 
 右側の国旗が描かれている図は、縦軸に現預金保有割合、横軸に金融リテラシーを取っております。日本は左上、すなわち金融リテラシーが低く、現預金保有割合が高い位置にいますが、その他G7諸国は日本よりも右下に位置しております。全体として、金融リテラシーと現預金保有割合の関係は右下へ遷移するという相関関係が見てとれます。
 
 ただし、金融リテラシーが高いから投資をしているのか、投資をしていることによって金融リテラシーが高くなったのかという因果関係までは読み取れませんので、あくまで相関関係が見られるということを御参考情報としてお示ししたものとお考えください。
 
 8ページ目ですが、家計の安定的な資産形成を支えるためには、インベストメントチェーンの各参加者が期待される機能を十二分に発揮することが重要であるということを示しております。
 
 左上から販売会社による顧客本位の業務運営、右に移りまして企業年金等のアセットオーナーによる機能発揮、さらに資産運用業の高度化、左下に移りまして家計における金融リテラシー向上などを挙げております。
 
 9ページ目以降は、顧客本位の業務運営の進捗状況についてです。
 
 13ページ目は、本年6月に金融庁において公表いたしました顧客本位の業務運営に関するモニタリングレポートの内容ですが、こちらでは、重要情報シートによる商品比較が始まるなどの動きもある一方、商品選定や説明の在り方、提案方法等に課題がある旨、指摘されております。
 
 また下のほうで、個別商品として仕組債、ファンドラップ、外貨建一時払い保険についての課題も指摘されておりますが、次のページで、それぞれ御紹介いたします。
 
 14ページ目は仕組債についてです。
 
 左下の折れ線グラフにありますとおり、2017年から18年にかけて販売額は一旦下がりましたが、その後も引き続き広く販売されている状況にあります。
 
 中ほどのグラフは、仕組債のリターン分布を示しております。こちらは金融庁におきまして約800本の仕組債についてサンプル調査をした結果でありまして、最終的に益が出たものも多くありますが、左側にかけて、損失が発生したものも少なからず存在しております。また、この損失率の裾野が広いということも特徴でありまして、最大約84%の損が発生したものもありました。
 
 また、商品性上、連動する株価が一定値を超えた場合にノックアウトしたということで早期償還となるわけですけれども、その際にたまたま益が出ていたとしても、その後、同じような仕組債を購入した結果、次回は多額の損失が発生したという事例も聞こえてくるところです。
 
 こうした回転売買類似の状況が起こり得ることや、また仕組債を提案すべき顧客層が極めて限られるにもかかわらず、こうした顧客に絞って販売する体制が構築できていない事例なども指摘されております。
 
 15ページ目はファンドラップですが、左の折れ線グラフにありますとおり、預り資産残高は、青の地域銀行において取り扱う銀行が増えているということもあり、伸び率が大きくなっております。
 
 右のグラフは、ファンドラップのコストやシャープレシオを示しております。オレンジの棒グラフで、右側のほうでは青の棒グラフで示しておりますバランス型ファンドよりもシャープレシオは低い結果となっており、提供されるサービスにコストが見合っているかが課題として指摘されております。
 
 16ページ目は外貨建一時払い保険についてですが、右の折れ線グラフにありますとおり、残高は、地域銀行を中心に上昇傾向にあります。
 
 ここでは顧客への提案方法についての論点が指摘されておりますが、例えば類似する運用効果を持つ外貨建債券も扱っているような場合に、両者を比較する形で顧客に説明しているかどうか、顧客に対する丁寧な情報提供を目指して創意工夫することが期待されております。
 
 17ページ目は、これら仕組債、ファンドラップ、外貨建一時払い保険等に関する苦情の状況を示しております。金融庁の利用者相談室にも多くの苦情が寄せられておりますが、左下に苦情例を記載しております。
 
 例えば上から2つ目ですと、仕組債について、老後の資金なので安定したものでお願いしたところ、安全性の高いものとして仕組債を強く勧められたという声が寄せられております。
 
 18ページ目も苦情でして、左下の棒グラフは商品別に分類しております。下から青の株式、赤の債券、緑の投信とあります。赤色の債券の中には、内数として括弧書きで数字を記載しておりますが、これは債券の中でも仕組債に関する苦情件数を示しており、債券のうち約6割から7割を占めております。
 
 苦情例としては、右上にありますとおり、リスクを理解できるような説明はなかった、担当者からは元本保証であると言われて買ったがリスクがあることの説明は受けていないなど、勧誘・売買取引に関するものが寄せられております。
 
 19ページ目は視点を変えまして、金融機関の対応について、顧客にアンケートを取った結果を整理しております。
 
 左上の棒グラフは、金融機関よりニーズに合った金融商品を提案されましたかという質問ですが、左側の青い箇所の十分受けたという割合が、2019年14%、2021年9.7%と減少しております。
 
 一方、このフォローアップの有益性については、有益と回答した方の割合が約9割に達しており、高評価であったことを示しております。
 
 右側に移りまして、他の商品との比較説明ですが、「受けたことがある」が、2019年33%、2021年22.3%と減少しております。
 
 一方、説明内容の理解度については、約9割が理解できた、さらにその比較説明の有益性についても約9割が有益だったと回答しており、顧客の受け止めは非常によいという結果になりましたので、こうした取組が顧客から望まれているということを示唆しているものと思われます。
 
 20ページ目は、顧客が負担するコストについてですが、右側の投信の販売手数料について御紹介いたします。
 
 赤色の棒グラフが主要行でありまして、平均の販売手数料は、ここ5年間で低下傾向、また青色の地域銀行においても同様に低下傾向にあります。
 
 一方、下の大手証券につきましては、紫の折れ線グラフにありますとおり、横ばい。縦の棒グラフは、販売額の多かった商品の平均販売手数料を示しているわけですが、いずれの年においても、全体平均よりも高かったということで、販売手数料の高い商品ほど売れた、買われたという事実を示しているということかと思います。
 
 21ページは再び顧客へのアンケート結果でありまして、左側は、金融機関のサービスに満足しているかという問いに対して、満足しているとしたのは約4割程度でした。
 
 右側は、ここ二、三年における金融機関の対応の変化についてですが、71.9%の方は「変わらない」と回答しておりますので、顧客目線から顧客本位の業務運営が着実に浸透しているとは認めにくい状況にあるかと考えられます。
 
 22ページは、顧客の側に立ったアドバイスについてです。顧客の主体的な行動をサポートする存在として、顧客の側に立ったアドバイザーの役割が重要であると考えております。
 
 ここで言うアドバイザーとは、投資助言業者、金融商品仲介業者、ファイナンシャルプランナーなど広く含めて捉えておりますが、こうしたアドバイザーが金融商品取引業者から受け取る手数料は、独立の立場で商品を提案しているか否かを判断するための重要な情報となります。
 
 この点、顧客本位の業務運営の原則におきましては、利益相反の可能性を正確に判断し適切に管理すること、また重要情報シートには利益相反になる可能性の内容を記載する欄を設けており、例といたしまして、販売仲介の対価、商品の組成会社との関係、営業職員に対する業績評価上の位置づけなどを示しております。
 
 しかしながら、下の円グラフを御覧いただきますと、足元で顧客本位の業務運営の原則を採択し、その趣旨や精神を咀嚼した取組方針を公表している金融事業者数は少数にとどまっている状況にあることが分かります。
 
 なお、自社ホームページ等で公表している事業者自体の数は、実際もう少し多いわけですけれども、金融庁として報告を受け、中身を確認させていただき、記載事項が揃っている数を、この円グラフではお示ししている点につきまして、御留意ください。
 
 24ページ目以降は、資産運用会社についてになります。
 
 とりわけ重要な論点として、25ページ目ですけれども、プロダクトガバナンスについて御紹介いたします。資産運用会社においては、顧客の利益最優先の考え方に基づき、商品組成、その後のパフォーマンスやコストの検証を適切に行う必要があると考えております。
 
 例えば中ほどにお示ししております長期低迷ファンドのイメージ図のとおり、短期的なパフォーマンスの改善を受けて抜本的な見直しの対象から外してしまうなど、長期視点での検証が行われていないケースも見られるところです。
 
 26ページには、資産運用会社のガバナンス強化の重要性について記載しております。日系の大手資産運用会社の取締役会では、依然としてグループ販売会社出身の人材が多くを占める傾向にあり、親会社や販売会社からの独立性が不十分と指摘されております。
 
 左の円グラフにありますとおり、グループ販売会社出身者が占める割合は、2016年72%に対して2022年は64%となっており、低下してはいますが、引き続き高水準の状況にあります。
 
 最後に金融リテラシーについて、28ページです。現在、日本銀行の金融広報中央委員会、全銀協、日証協、投信協などのほか、我々金融庁・財務局も含めまして、様々なプレーヤーが教材作成、出張講座、ホームページ上での情報発信などを通じて金融経済教育を推進しております。
 
 そうした中、29ページを御覧いただきますと、金融リテラシーに関する調査結果におきまして、金融教育を受けたことがあると回答した方が約8%にとどまるなど、改善の余地が大きい状況にあると考えております。
 
 以上を踏まえまして、31ページ目には、本日御議論いただきたい事項を記載しております。
 
 まず、「原則」策定以降の顧客本位の進捗状況をどのように評価すべきか。
 
 次に、その進捗が芳しくないとすれば、原因は何か。また、優先課題や具体的方策として考えられるものは何か。
 
 3つ目は、「原則」を採択し、取組方針を公表している金融事業者数が少数にとどまっている中、有益な形で顧客に対して「見える化」を進めていくためには、どのような取組が必要か。
 
 4点目ですが、本日は、進捗状況を、もろもろのデータも活用しながらお示ししてきたわけですけれども、今後も引き続き進捗状況のフォローアップをしていく中で、判断基準や参考指標として追加すべきものがあれば御提案いただけますと幸いです。
 
 最後に金融リテラシー向上に向けてですが、各団体によって推進されている取組をどのように評価するかということになります。
 
 事務局からの説明は以上です。
 
【神作座長】  御説明どうもありがとうございました。
 
 それでは、ただいまの御説明を踏まえて、今後検討していく事項について、論点や、それに関する御意見をいただければと存じます。今回、多くの委員に御発言いただく機会を確保する観点から、御発言のお時間といたしましては、4分から5分を目安としていただければと思います。4分を過ぎますと、事務局から発言時間の残りがあと1分である旨のチャットが、発言されている委員のみに御送付されますので、発言時間の御参考にしていただければと存じます。
 
 それでは、御議論をお願いしたいと存じますが、いかがでしょうか。岩城委員、どうぞ。
 
【岩城委員】  ありがとうございます。NPOみんなのお金のアドバイザー協会の岩城でございます。よろしくお願いします。5分いただきます。
 
 8ページのインベストメントチェーンについて、ぜひお考えいただきたい点がございます。私は2009年から、金融商品を販売せずにコンサルティングフィーだけを頂いて家計の相談に応じてまいりました。そこで強く感じているのは、家計と販売会社の情報格差です。家計、すなわち消費者は、金融知識がそれほど高くない人も多いです。人、物、金、全てにおいて圧倒的な勢力を持つ販売会社に比べれば、非常に弱い立場です。そして明確なのは、販売会社と家計の間には利益相反があるということです。これを加味した上でインベストメントチェーンを再考する必要があると思います。
 
 それは、家計と販売者の間にフィデューシャリー・デューティー宣言を金融庁に提出した顧客ファーストのアドバイザーが入ることです。金融機関から独立し、商品販売による手数料を得ない独立したアドバイサーが、家計の側に立って家計の資産形成を助ける、正しく合理的なアドバイスをすることです。つまり、英米のように販売者とアドバイザーを明確に分け、それぞれが顧客の利益に忠実に仕事をするという忠実義務を守るべきだと思います。
 
 不適切な推奨に基づく商品の購入や資産運用は、長期的には家計資産に大きな損失をもたらします。こつこつと積立投資をしていっても、無駄なコストとして資産が流出していると資産は増えていきません。流出しているのは、まさに家計の将来の資金です。
 
 ここまで、これまで相談業務でも無駄の多いアセットアロケーション、アセットロケーションをたくさん見てきました。リスク許容度を超えた投資対象を保有している例、長期投資に不当な銘柄選択、リターンに対して高過ぎる手数料、不必要な回転売買や銘柄入替え、いつまでこんなことが続くのでしょうか。これを続けた結果が、日本に投資がなかなか根づかない、多くの家計が資産運用をしていこうという気持ちにならないということではないでしょうか。
 
 鍵になるのは、顧客ファーストの質の高いアドバイザーを増やしていくことです。家計が月々の生活費の中から資産運用のために資金を拠出し、実際に成長の果実という分配を受けるまでには、数十年の長い期間がかかります。長期にわたる資産形成を確実に支えるためには、インベストメントチェーンにアドバイザーの存在が必要です。英国のRDRのようなルールを含めて、適切な制度設計を御検討していただきたいと要望いたします。
 
 それから、資産運用業の高度化についてですが、御指摘のように、資産運用会社のガバナンス強化も必要だと思います。
 
 少し飛躍した話で恐縮ですけれども、2016年のDC法改正で、企業型確定拠出年金の事業主による運営管理機関の定期的な評価が努力義務化されました。具体的には、選択している商品の手数料面で、加入者に割高な負担を強いていないか、運用成績が同一カテゴリーの商品と比べて劣っていないかなどを5年に一度評価するというものです。
 
 企業型DCでは、従業員は決められた運用商品のラインアップの中からしか商品を選択することができません。厚生労働省は、2019年の7月から運管、各社に運用商品リストを公開することを義務づけています。これを見て、自社製品、自社商品ラインナップと比較することができるわけです。
 
 今年は施行から5年目に当たりますし、10月からは企業型DCとiDeCoの併用も可能になりますので、今後一層、「専ら加入者の利益のみを考慮する」ということが進んでいくものと期待しています。
 
 顧客の利益を最優先した商品組成や提供、管理をしていただくのは当然ですし、さらに金融事業者には誰が見ても分かりやすいように運用実績、コストなどを一覧表で開示していただくとよいのではないかと思っております。
 
 以上です。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、佐々木委員、御発言ください。
 
【佐々木委員】  ありがとうございます。では、私から意見と質問を述べさせていただきます。
 
 まず、今回の御説明ありがとうございました。データに基づいた評価がたくさんされており、とても読み応えのある資料だったと思います。私も何度か、いろんなところで申し上げていましたように、年齢別や所得別の分析というのは少なくとも必要だと思っておりましたので、今回そういうものもお示しいただき、大変意味があると思いました。
 
 ただ一方で、細かいところで多少疑問もありまして、例えば、質問ですが、年齢別、所得別のところで割合とされているのは、何の割合でしょうか。金額の割合かと思いますけど、説明を読んでも分からないところがあったので、教えていただければと思いました。
 
 さらに、例えばこちらの年齢別、所得別のデータを見ていますと、当然ですが、やはり年代別での資金需要の動向など様々な要素が含まれているデータになっています。ですので、やはりフィデューシャリー・デューティーの影響があるかどうかをみるためには、さらに詳しい分析が必要になってくるかと思います。今後研究者とタッグを組んで分析していければいいのではないかと思っています。
 
 それから、データもいろいろありますが、仕組債のEB債のリターンのところのグラフなどもあって、これは一つの例として非常に貴重なものですけれど、これは例えば、あくまでも限られた一例ですので、見る側があまり誤解しないように、仕組債はこのようなリターンがいつもあると思ってしまわないとよいかと感じました。
 
 広く、この顧客本位の業務運営について考えますと、やはり回転売買などの影響というのはもうなくなって、非常に意味があったと思います。
 
 ただ一方で、仕組債、ファンドラップなどが増えているということは問題です。仕組債やファンドラップも、別に商品として問題があるわけではなく、ある意味、助言、勧誘といった議論にも関係がありますが、お任せして運用してもらうということを必要とされている方ももちろんいます。ですので、それ自体が問題ということではありませんが、やはりその回転売買などがなくなった一方で、仕組債やファンドラップの額が増加してきているというのが気になるところです。
 
次に、先ほども御紹介がありましたが、苦情のところを見てみると、FINMACなどにも、銀行で買った商品なのに、元本がこんなに下がるとは思っていなかったといったような苦情などが寄せられています。この議論というのは、広い意味では、ファイアーウォール規制の緩和で今後、銀証がグループ化していくという話を議論していることにも関係していて、やはり今後の影響も考えながら、やっていかなければならないことだと思います。
 
 また、説明不足やニーズに合っていないなど、販売先の対象の問題もありますが、それ以外に、ファンドラップなどの投資一任契約で、適切な運用がなされているかというのを、情報の非対称性があるなか、顧客がチェックできないという側面もあると思います。そういったモニタリングはどのようにしていくべきなのかといった、色々なデータを金融庁で公表されているのは意味があると思いますが、今後もそういうことを、しっかりやっていかなければならないのではないかと思いました。
 
 私から質問ということで、所得別や年代別ということと関係ありますが、資産倍増計画の目的やターゲットなどの明確化がある程度必要と思います。全部の所得、全部の年代の人に、とにかく増やしてほしいと思っているのか、それとも、これまで投資に縁がなかった人たちに、なるべく持ってほしいと思っているのかといったことです。そういった意味で、対象の年齢や所得層など、そういったものを考えておられるのであれば、この機会に教えていただければと思いました。
 
 やはり金融リテラシーのことを考えるに当たっても、そのターゲットを明確化しておくことが重要だと思いますので、そういった意味でも、この点、お考えがあるようでしたら教えていただきたいと思います。実際には、NISAとiDeCoの違いもよく分からないというような方ももちろんいらっしゃいますし、今後数年間のなかで日本の株式市場も乱高下する可能性が高いので、無理にリスクを取るのはよくない、ちゃんと理解した上で取らせていかなければならないということもあります。先ほどのアメリカのリテラシーのデータは少しソースが違うので、アメリカだけ突出した形になっていましたけど、アメリカなども、やはり年金などに合わせて、必要に駆られてリテラシーが上がったというところもありますので、そういったことも考慮して進めていただければと思います。
 
 また、狭くはファイアーウォール、広くはやはり利益相反の問題も関係ありますので、そういったことにも触れていただければと思いました。
 
 以上です。どうもありがとうございます。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。御質問をいただいていると思います。スライドの6ページでしょうか。世帯主年齢階級別、年間収入階級別の表の縦軸は、何の割合を示しているかという御質問があったと思います。よろしくお願いいたします。
 
【桑田市場企画管理官】  冒頭の質問につきましては、家計金融資産に占める有価証券保有割合ですけれども、金額ベースで取っております。
 
【佐々木委員】  では、資産のうちの割合ということでしょうか。
 
【桑田市場企画管理官】  おっしゃるとおりです。
 
【佐々木委員】  資産全体に占める割合。
 
【桑田市場企画管理官】  そうです。家計金融資産に占めるストックベースの。
 
【佐々木委員】  金額の割合ですね。
 
【桑田市場企画管理官】  はい、そうです。
 
【佐々木委員】  分かりました。ありがとうございます。
 
【神作座長】  それでは、佐々木委員から2つ目の御質問もあったかと思います。ただいまのスライド6ページにも関連すると思いますけれども、目標やターゲットというのは想定しているものがあるのでしょうかという御質問であったと思いますが、これについても事務局からお答えいただけますでしょうか。
 
【井藤企画市場局長】  企画市場局長の井藤でございます。そこはまさに、このタスクフォースでも御議論いただきたい点でもありますけれども、家計や、まさに所得の状況、あるいはライフステージの状況によって様々だと思います。やはり若い世代は、まず資産形成で、こつこつ積み立てていくものです。そのときに必要な、いわゆるインベストメントチェーンの役割であったり、金融知識というのは何だろうか、あるいは多くの世代は、私ぐらいの世代になると、若い頃はなかなかいい投資商品も、知識もなかったということかもしれませんけど、かなりもう現金で貯蓄をしてきています。こういったものをどのようにしていけばいいのでしょうか。
 
 ただ、そこは、まさにライフマネジメント的な側面も必要だというようには考えていまして、このデータも出てきていますけれども、もちろん相続を考えられるような人たちもいらっしゃいますけど、やはり運用というよりも、ある程度高齢化していくと、いわゆるキャッシュも必要となってきて、その辺りのマネジメントも必要だと思います。
 
 そのため、おっしゃるとおり、金融機関はその辺りのターゲットの状況に応じた提案をし、必要な知識も金融教育の形でつけていただくということだと思います。
 
 それで、どの層だけに絞ったかということではないですけれども、そういった先生の御指摘のようなターゲット、このレイヤーの人、こういったカテゴリーの人にはこういうことであり、ある程度こういう人にはこうだというような、そういう分けた議論はおっしゃるとおりでありますし、今後の具体的な金融教育の在り方とか商品提案の在り方についても、そういう視点は十分に持ってやっていくべきことだと考えてございます。ありがとうございます。
 
【神作座長】  佐々木委員、よろしいでしょうか。
 
【佐々木委員】  ありがとうございました。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 それでは、続きまして有吉委員、御発言ください。
 
【有吉委員】  有吉でございます。非常に考えさせられるような御説明をどうもありがとうございました。
 
 私からは、顧客本位の業務運営の関連で各論的なコメントを4点ほど、それから金融リテラシーの関連についても若干のコメントを述べさせていただきたいと思います。
 
 事務局説明資料31ページの項目とはうまく対応していないコメントになろうかと思いますが、御容赦いただければと思います。
 
 まず1点目は、先日の市場制度ワーキング・グループでも同旨のコメントをさせていただいた点ではございますが、事務局説明資料8ページにもございますとおり、成長の果実を家計に還元するためには、家計による直接的な投資活動だけではなくて、企業年金等の機能の発揮による間接的な還元ということも非常に重要であると感じます。そういった意味で、年金基金の運営がどうあるべきか、といったようなことも、このタスクフォースなのか、市場制度ワーキング・グループなのか分かりませんが、議論していくべきではないかと感じております。
 
 それから2点目ですが、個別商品の中で、仕組債の問題につきましては、今日の御説明も伺っていると、他の商品とは性質がやや異なるように感じております。そういった中で顧客本位の業務運営を推進するという議論が、仕組債に関する問題に引きずられて拡散してしまうような懸念を持っておりまして、適合性の観点から仕組債を一般投資家に販売することの当否については個別の問題として取り扱うほうが、全体の議論が進めやすいのではないかと感じました。
 
 それから3点目でございますけど、事務局説明資料16ページに、外貨建一時払い保険につきまして、外貨建債券等と比較して説明をすべきであるといった記述がございます。この点は顧客本位の対応であって、そういった対応が好事例であるということはもちろん疑いないところだと思いますが、販売業者が取り扱うことができないような商品との比較説明まで求められてしまうというのは、少々無茶ぶりのように感じるところがございます。
 
 本日の御説明の中では、あくまでも債券と保険を両方とも取り扱うという場面での考え方であるというお話があったように伺いましたが、そういった場面において比較説明すべきというのは理解できるところでございますが、保険商品だけを取り扱う販売業者との関係で、ここまで求めるというのは、なかなか難しいのではないかと思います。
 
 そういった意味で、このような点については、アドバイザーの活用、それから金融リテラシーの向上の取組といったものによって対処すべきものであって、何もかも販売業者の説明に寄せて対処していこうという考え方は必ずしも効率的ではないのではないかと感じました。
 
 それから4点目でございますが、事務局説明資料22ページでデータとしてお示しいただきました、十分な取組方針等を公表している業者の比率につきまして、それが非常に低いということは、私自身の肌感覚とも大分違うところがありまして、驚いたという感想でございます。
 
 第一種金融商品取引業者あるいは投資助言・代理業者の中でも、規模や業態によって、こういった取組方針の公表率には偏りがあるのではないのかと想像するところでございますが、特に「顧客本位の業務運営に関する原則」を採択している比率が低い業態については、重点的に採択を促す取組が求められるのではないかと思います。
 
 また同時に、特に金融商品仲介業者を含め、これだけこの原則を採択した業者の比率が低いということになりますと、この原則に従った説明責任等だけで対応していくということには限界があると言わざるを得ないように思いますので、例えば利益相反状況などの情報開示については、この原則だけに頼るのではなくて、法令上の義務として充実させていくといったことも考えていく必要があるのではないかと思います。
 
 それから、金融リテラシーの向上の関係について、若干言い方が稚拙で恐縮でございますが、この問題については、真面目に勉強する人をどうブラッシュアップしていくかという観点と、それから真面目に勉強しない人にどう関心を持たせるかという観点、この2つの異なる課題に取り組む必要があると思います。そして、そのうち、私としては特に後者の問題のほうが非常に重要ではないかと考えております。
 
 しかしながら、これまでのお取組というのは前者の観点を中心としているように思えまして、それはそれで必要な取組であるということはもちろん否定するものではないのですが、力点の置き方が間違っていたのではないかと感じます。
 
 その上で、無駄を省くという意味と、それから総合的に金融分野のリテラシーを高めるという観点から、個社あるいは各業界が個別に啓発活動を行うのではなくて、業界横断的に対応していくということが非常に重要だと思いますので、ぜひそのような方向で、お取組は進めていただきたいと思っております。
 
 私からは以上でございます。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、野尻委員、御発言ください。
 
【野尻委員】  ありがとうございます。フィンウェル研究所の野尻と言います。どうぞよろしくお願いします。
 
 私のほうも顧客本位の業務運営と、それから金融リテラシー、それぞれに分けて意見を述べさせていただこうと思います。
 
 今、有吉委員のお話にもありましたように、幾つかの資料について気になる点を話させていただこうと思います。
 
 まず、今回の説明、大変ありがとうございました。アンケート調査が着実に進展をしながら、いい分析ができるようになっていて、これが続いていくとよいということを思って資料を読ませていただきました。
 
 今回の資料の中で、やはり一番気になったのは22ページです。有吉委員も御指摘になられましたが、原則などに基づく取組方針、これを公表した事業者数、金融事業者の割合が非常に少ないという印象を受けました。驚いたというのが正直なところであります。
 
 特に金融商品仲介業の中では、IFAという名前で独立的なアドバイザーだと標榜されている方が多くいらっしゃると聞いていましたが、わずか1.8%が取組方針を標榜しているにすぎなかったということには驚いています。
 
 そこで、2つ質問ですが、1つは、ここに挙げていらっしゃる第一種や商品仲介業といったところ以外の金融業者についての採用状況については確認をされているのでしょうかというのが1点目です。
 
 それから、金融庁としては、この公表していない大多数の方々に、その理由等をヒアリングされていらっしゃるのでしょうか。もしそれがあれば、どういったところが、この比率を上げていくかについての大きな示唆を与えてくれるのではないかと思いました。
 
 この質問も含めてということになりますが、3つほど深掘りの要素があるのではないかと思います。
 
 特に、まず22ページのこのグラフの中で、第一種ですと16%ぐらい、金融商品仲介業ですと1.8%ぐらいが公表されているだけにとどまっています。業態によって、もし違いがあるということであれば、他の業態も含めて、その要因も確認をしていく、検討しておく必要があるのではないかと思いました。
 
 それから、個別の商品について、今回は仕組債など幾つか御提示をいただいていますが、一つ一つの商品についていい悪いという議論を一つずつ潰すような形でやるのは、とても効果が悪いのではないかと懸念しています。
 
 例えば、15ページの右下のグラフですが、注にあるように、コストの定義が各社ばらばらになっているというようなことが、非常に分かりにくくさせているのではないかと思っています。お客様にとってコストというのは、この定義の下に、これとこれが含まれていますというようなものが一元化されていくことが大事ではないかと思います。それによって、コストとリターンの明確化ができますし、海外との比較もできるようになる、もちろん商品間の比較もできるようになるということではないかと思っています。
 
 それから3つ目ですが、やはり重要情報シートで、その項目や内容などの中で、利益相反やこのコストについて、もう少し充実させる必要が出てきているのではないでしょうか。これは改めて議論をすべきではないだろうかと考えています。
 
 最後に金融リテラシーですが、やはり金融リテラシーを推進する推進母体を常設化したほうがいいのではないかと考えています。その常設化された委員・母体の中で、具体的な数値目標を出すということが、これからは望まれるのではないかと思います。その数値目標に対して各年のレビューを行うことでPDCAを回していくことができる、これが大事ではないかと思います。いわゆるバックキャスティングということになると思いますが、こうした活動が今後は求められるのではないだろうかと考えています。
 
 以上です。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。スライドの22ページに関連して、2つ御質問があったと思います。事務局より御回答をお願いできますでしょうか。
 
【桑田市場企画管理官】  こちらの22ページに載せていない、例えば投資運用業者でありますとか二種業者、そういったところに関しても、この取組方針の状況を報告していただいておりますので、その結果はリストとして公表させていただいているところです。この22ページは、アドバイザーに関するページでしたので、この3つに絞って御紹介させていただきました。
 
 それから、公表しているところでも公表していないところでも、この業者とのコミュニケーションは取っておりまして、やはり充実した取組方針の公表に向けて双方向の議論が必要だと思っていますので、そういったところと会話しているところではありますけれども、やはり事業者によっては個人でやられている方も多数、特に金融商品仲介業者などにはありますので、そういったところにはなかなか考えが浸透していないのかというところもありますが、委員御指摘のとおり、なぜこういったところの取組の充実につながらないのかといった点は、引き続きフォローアップ、対話して、原因の解明などにもつなげていきたいと思います。御意見ありがとうございます。
 
【神作座長】  野尻委員、よろしいでしょうか。
 
【野尻委員】  はい。ありがとうございます。
 
【神作座長】  それでは、続きまして永沢委員、御発言ください。
 
【永沢委員】  Foster Forum良質な金融商品を育てる会の永沢でございます。ありがとうございます。
 
 最初に、事務局の皆様には多くのデータ分析をしていただき、顧客本位の業務運営の浸透度や課題が見える化してきたと思います。どうもありがとうございます。
 
 本日は時間も限られておりますので、金融機関の取組と金融リテラシーの2か所について意見を述べさせていただきたいと思います。実は手数料とサービスの関係や、投資信託におけるプロダクトガバナンスについても意見を申したかったのですが、これらは次回以降に発言させていただきます。
 
 まず全体としては、佐々木先生からも御指摘がありましたけれども、手数料稼ぎの回転売買は抑えられてきており、顧客本位の業務運営の浸透に進捗はあったと評価できると思っております。
 
 しかしながら、仕組商品の販売が復活しているという報告は、とても残念に思っております。といいますのも、2009年に国民生活センターが、いわゆるノックイン型投資信託に関する注意喚起を行い、その後、社会問題化して、そこで2013年頃から金融審議会で、デリバティブ取引を組み込むような複雑な投資信託の販売の在り方について議論が行われ、それでも収まらないため、2016年から顧客本位の業務運営の議論が始まったと私は認識しておりまして、このような複雑な商品を一般消費者に売るのはやめましょうというのが顧客本位の業務運営の出発点であったと私は理解しております。
 
 規制が厳しくなった投資信託では作れなくなったから、規制の緩い債券を使っているようにも思えまして、この状況はとても残念に思っております。金融機関の収益環境が厳しい事情を理解できないわけではありませんが、金融機関の経営者御自身や御家族のために買いたくなるような商品を顧客に売るようにしていただきたい、仕組商品はそのような商品ではないはずです。そこが顧客本位の業務運営の出発点ではないかと思うということを、まず申し上げたいと思います。
 
 それから、優先的に取り組む課題や具体的な方策についてということですが、販売金融機関の重要情報シートを幾つか見ての感想ですが、押し並べて同じようなことが書いてあって、現状は、このシートの導入の狙い通りには必ずしもなっていないように思います。
 
 これは御提案でございますけれども、例えば高齢者への対応とか、若い資産形成がこれからという世代に対する営業方針などを書いていただけると、顧客側には会社の姿勢が分かりやすいと思います。もちろん比較可能性は必要ですけれども、こういった伝える工夫もしていただきたいと思います。
 
 それから、販売金融機関の中には、系列に金融商品を組成する会社をお持ちのところも多いわけで、これは利益相反に関する開示というところになりますけれども、自社グループが組成している商品の販売額の全体の販売額に占める比率などが開示されるべきだと思っております。また行政処分歴なども、取引金融機関の選択の上で重要な情報であり、開示されてしかるべきではないかと考えます。これは私の個人的感想にとどまりますが、金融庁として、利用者がどのような情報を求めているのかを、一般消費者を対象に調査をされてみてもいいのではないかと感じているところです。
 
 それから、進捗状況につきまして、取組を公表できていない販売金融機関が、地方の金融機関において少なくない点が気になりました。これは経営トップの意識の問題だろうと思います。自主的にということが難しいのならばルールで義務付けという話も出ておりますが、いまだに公表ができていない地方の販売金融機関には、まず金融庁から発破をかけていただく必要があると私は思っております。
 
 といいますのも、地方においては、消費者の高齢化が進んでおり、全国展開しているようなオンラインバンキングにはアクセスすることは難しく、元からある地元の販売金融機関とのお付き合いになるわけで、都市部や若い世代のように取引金融機関を選ぶことができないのが実情です。そのため、地方の高齢利用者の保護の観点からは、地方の金融機関の顧客本位の業務運営のレベルを底上げしていくことが必要だと思います。奮起いただくためには、小学生のようですが、顧客本位の業務運営の取組を公表している金融機関には、公表しているということを示すマークを差し上げるといった試みなどをしてはどうでしょうか。そういうことでもしていただかないと動きが出てこないのではないかと思います。
 
 金融庁が顧客本位の業務運営に取り組んでいる金融事業者リストを公表されていますが、これは消費者向けのものではありません。消費者にもっと見えるように、わかりやすくするようにすることが必要であり、顧客本位の業務運営の取組の見える化を進めるには、例えば、金融機関においてQRコードを用いたデジタル化を進めていただいて、QRコードをかざすと各社の取組状況が表示されるといったことを、金融機関のどこかが始めてくれることを期待しております。
 
 読み手は金融庁ではなく顧客ですので、自分のターゲットとする顧客が読んで分かりやすいものかという視点から、発信の工夫をしていただきたいと思っておりますし、その意味では、全体に文字が多過ぎますし、漢字も多いです。また、コンサルティングという文言が並んでいますが、何をコンサルティングされるのか、具体的な項目などを示していただくことが、顧客にとっては利用の手がかりになると思います。
 
 金融リテラシーにつきまして2点申し上げたいと思います。
 
 私はFoster Forum以外に消費者団体の代表理事を務めており、会員が消費生活センターで相談員として活躍しております。そちらから最近、若い人の財産被害の相談が大変増えているという情報が入ってきております。それも将来不安を感じて真面目に資産形成に取り組もうとして勉強しようとして、何十万もする教材を買ってしまったという相談が増えています。これを情報商材と呼んでいますが、こうした人たちは、無登録の業者と取引したりしている人も多く、資産形成や投資を始める以前のところでつまずいています。
 
 業界団体の皆様には、金融広報中央委員会を中心にして、金融リテラシーの普及に熱心に取り組んでいただいておりますが、リスク・リターンや金融商品の話に入る前に、金融商品というものはどこで買うものなのかといったことや、一般人は手を出していけない分野があるといったことから教えていただきたいと感じております。個人的には、暗号資産はもちろん、投機であるFXや情報開示が不十分な第二種金融商品などは、一般人は手を出すべきではないと思っており、これはあくまでも私の個人の意見でございますが、そういったことを、若い人を対象とした金融教育の中に入れていただく必要があると思います。
 
 金融庁が中心となって策定した「国民が身につけるべき金融リテラシー4分野15項目」については、これは見直す必要はないと思うのですが、これらの項目を教える順番、それからどのようなウエートがけをして教えるのかという点は再検討していいのではないでしょうか。
 
 もう一点、本日の事務局資料中に、金融リテラシーの水準が高い家計ほど投資比率が高いというような記述がありましたが、私は、金融リテラシーが高いから投資をするということもあるのかもしれませんが、投資をするから金融リテラシーが高くなるという側面もあると思っております。卵が先か鶏が先かの議論になってしまいますが、実践してこそ身につくのが金融リテラシーです。今の金融経済教育が、まずは勉強ということになっていないかが気になっておりまして、金融リテラシーを育む取組とともに、資産形成に着手する、投資を始めるということを促すことも重要であり、この両輪をどううまくかみ合わせていくのかについても議論してはどうかと思っております。
 
 私からは以上となります。どうもありがとうございました。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。永沢さん、一部に少し聞き取りづらいところがございましたので、議事録の御確認の際に補充等をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【永沢委員】  はい。ありがとうございます。
 
【神作座長】  それでは、続きまして松元委員、御発言ください。
 
【松元委員】  慶應義塾大学の松元でございます。御発言の機会をいただきましてありがとうございます。
 
 今日の事務局の資料の「御議論いただきたい事項」ですと、2点目、3点目、5点目辺りに関連するかと思いますが、顧客が、自分が話を聞いている人が独立しているかどうかということを分かるようにするということが、やはり極めて重要なのではないかという点を改めて指摘させていただければと思います。
 
 もし可能であれば事務局資料の22ページをお示しいただければありがたいのですけれども、私の発言の趣旨は、例えばアメリカでレギュレーション・ベスト・インタレストのルールがつくられましたけれども、その背景にあったのは、アメリカで国民の間に、自分が話を聞いている人がどういう義務を負っている人なのかについて混乱があったということです。ブローカー・ディーラーの場合と、投資アドバイザーの場合とで、負っている義務が違うのかどうか、どのぐらい違うのか、自分が話を聞いている人が利益相反についてどういう義務を負っているのかということが分かりにくいということが背景にあって、レギュレーション・ベスト・インタレストができたと理解しています。
 
 その状況というのは、日本でも変わらず、むしろ日本の場合は、まだ個人投資家の投資の市場というのがアメリカほどは発達していないので、より混乱しやすい、分かりにくい状況にあります。しかも、22ページで、「市場ワーキング・グループ報告書」ではアドバイザーとなり得る主体として色々なものが想定されていると指摘されていることが紹介されていますが、証券会社があり、投資助言業者があり、金融商品の仲介業者がいて、ファイナンシャルプランナーもいて、さらに、さきほど無登録業者といった話も出ましたが、どれにも登録していないような業者というのもいます。自分が投資をしたいと思ったときに、どこに行けば信頼できる相談先が見つけられるのか、どういう人に相談すれば、どの程度信頼できるのかということを分かるようにするというのが、とても大事だと思っています。というのは、金融リテラシーの話がありましたけれども、金融リテラシーについての授業を、国民が学校にいる間から死ぬまでずっとし続けるわけにはいかないわけです。そうすると、国民が投資をするときに、どこに相談しようと思ったときに、例えばこの業者は忠実義務を負っているから利益相反は規制されていますとか、この業者は忠実義務までは負っていないのだけれども、顧客本位の業務運営の原則については採択して公表をしていますとか、そもそも顧客本位の業務運営の原則というのは何なのかといったように、どういう主体がアドバイザーになり得て、どの人がどういう義務を負っていて、その人は販売業者から手数料をもらっているのか、自分のためだけにアドバイスをしてくれているのかということが判断できるようにする、そういったことが分かりやすいような見える化というのが必要なのではないかと思います。
 
 なので、例えば、一般の方でも分かるように分かりやすい一覧表を作って金融庁のウェブサイトに載せてみるといったことが実はとても重要なのではないかと思っております。
 
 私からは以上です。よろしくお願いいたします。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、沼田委員、御発言ください。
 
【沼田委員】  沼田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。本日は詳細なデータをお示しいただきましてありがとうございました。
 
 私のほうからは、この優先的な課題及び具体的な施策というところと、金融リテラシーの向上の両方に絡めて、お話し申し上げたく思います。
 
 米国の状況について、先ほど御説明がありましたけれども、私も同じように考えております。投資家の裾野が広がっていくアメリカの30年近い過程を見て感じるのは、個人の人たちは販売人、営業担当者たちの選び方をそもそも知らないことが我が国の課題なのではないかということです。営業担当者を目利きできないと、個人はアドバイスを適切な形で受けることができません。専門性があるのか、顧客本位な行動を取るのか、それに加えて自分と相性がいいかどうか、このようなことを見極める必要があります。
 
 と申しますのも、米国の場合ですと、個人が営業担当者をどうやって選ぶのかということに関しましては、証券当局はもちろんですけれども、自分たちこそ顧客本位だと自負する証券会社が率先して顧客に伝授をしていると感じています。そうしないと、せっかく顧客本位な行動を取ったところで、差別化できないからです。
 
 ある業者は、24ページの指南書を作っておりますけれども、先ほどのお話にもありましたように、やはりチェックリストがあって、一つ一つ確認することができるようになっております。この人に任せられるかどうかを確認するための営業担当者との面談のときに、資格とか専門性、経験を聞きなさいとか、自分と同じようなお客さんをその人は抱えているかどうか、もし抱えているとすると、そのお客様にはどのようなアドバイスをしているか、どのような頻度で自分とのコミュニケーションを取ってくれるのか、どのようなコミュニケーション手段を使うのかといったことを、全部聞きましょうと書いています。手数料はもちろんですけれども、販売人や証券業者がどのような形で報いられているかも重要かと思います。
 
 もちろん、この指南書には、どのような答えが望ましいかということも、営業担当者の答えが何を意味するのかということも書いてあります。我が国の場合は、なかなかこういった会話ができる状態にないことが課題だと感じました。今日お示しいただいた資料を拝見しておりますと、望ましい姿は大分見えていると思いましたので、これを頭に描いた会話がお互いにできるようにする投資教育がなされれば、資本市場がより発展していくように思います。
 
 もう一点お話し申し上げたいのは、このような会話をしていく上で今後必要なのは、望ましい投資アドバイスとは具体的にどのようなものかというイメージを、顧客と販売人の両方が共有することではないかと思います。ですけれども、我が国の場合は、まだその投資アドバイスが何なのかという議論があまりされていないことも課題かと思います。
 
 このような議論がないと、アドバイスのように目に見えないものは、空気と同じように、見えないからタダと捉えられてしまいかねません。そうしますと、繰り返しですけれども、良質なアドバイスを提供しても差別化できなくなります。
 
 アメリカの場合ですと、営業トークの因数分解がなされていて、どこまでが情報提供で、どこからがアドバイスか、アドバイスと呼ぶにはどんな要素が入るべきなのか、顧客がそもそも求めているのは、満足度が高いのはどんな要素なのか、その要素の中で実際にパフォーマンスに貢献しているのはどの部分なのか、といったことが見える化されております。こういったことが分かりますと、アドバイスに何を盛り込むべきなのかも分かると思います。
 
 そういう意味で、今回、フォローアップという部分が切り出されて、その満足度が高いことが分かったのは大きな前進だと考えました。
 
 以上でございます。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、松尾委員、御発言ください。
 
【松尾委員】  ありがとうございます。大阪大学の松尾でございます。31ページにお示しのところに沿って申し上げます。
 
 まず、顧客本位の業務運営の進捗についてですけれども、これは一定の改善、進捗は見られるものの、なお不十分であると評価せざるを得ないかと思います。
 
 それを踏まえて、2つ目のところで、今後優先的に取り組むべき課題、具体的な方策ということですけれども、やはり私は、この顧客本位の業務運営の原則というのを法令上の義務として定めるということが不可欠ではないかと考えております。現在も法令上の義務、ルールベースの規律としては適合性の原則というものがございますけれども、本日の資料、それに基づく御説明を聞いておりますと、適合性原則だけでは、やはり限界があるのではないかと感じました。
 
 例えば顧客に対して金融商品を勧める際に、他の商品と比較した上で最善のものを勧めることが求められているということでしたけれども、適合性原則というのは、業者が勧めた、勧誘した商品がその人に適合しているかどうかというのが問題であって、他の商品との比較というような視点はどうしても入ってきにくいというところがあるように思います。
 
 それから2つ目としては、フォローアップについてですけれども、これも顧客の側から非常に望まれているということが示されていたかと思います。これについても適合性原則というのは基本的に販売、勧誘に関するルールというように理解されてきたことから、勧誘の時点で買ってもらったら終わりというようなことにどうしてもなりがちで、顧客の望むところに十分に届かないのではないかというように感じました。
 
 さらに、対象という意味では、やはりこれも適合性の原則というのは販売、勧誘のルールですので、販売業者が対象ということにならざるを得ない。そうしますと、組成のところ、これはまさにプロダクトガバナンスのところですけれども、組成の際に具体的な顧客を想定して、どういうニーズに応えるための商品なのかということを意識せよということまでは、やはり適合性の原則からは出てこないということで、何かしらそれに代わるものを法令上の義務として課す必要があるのではないかと感じております。
 
 もう一つは、年金基金の運用委託先を選択するというようなシチュエーションでも同じようなことが言えるのではないかと考えました。
 
 ということで、やはり優先的に取り組む課題としましては、顧客本位の原則のルール化ということが必要かと思います。
 
 それから、追加的な調査項目ですけれども、これはかなり個人的な関心も含むものですが、若年層で投資の割合が増えています。これはまさに資産形成層で、これから議論のターゲットにしていくべきところの一つかと思いますけれども、そのこととの関係で、ロボアドバイザーの利用が若年層では割合進んでいるというようなニュースを耳にしました。その関係で、そのロボアドバイザーの利用の実態ですとか、それから動機、なぜロボアドを選んだのかというようなことですとか、そのロボアド経由で選択した投資商品の解約率などが他の販売チャネル経由の場合と違うのかとか、何かそういったところで意味のあるデータが取れるようでしたら、ぜひお示しいただきたいというように感じました。
 
 以上です。ありがとうございます。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、島田委員、御発言お願いいたします。
 
【島田委員】  島田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
 10ページにあります原則に基づいて少しお話をさせていただきたいと思いますが、その中で原則がうまくいっているかどうかということに関しては、4番の手数料水準などについて、これは非常によくなっていると私は思います。よくなっているのは品ぞろえの面です。ただし売れ筋は、投資信託においては、あまり変わっていないというところがあると思います。
 
 もう一つ大きく評価できるのは、不適切な販売、これに関しての状況はかなり改善していると思います。ただ、これを進捗と言うのかどうかというと、マイナスからの出発という感じがしないでもないですけれども、評価をしてよい部分だとは思います。
 
 ただし一方で、保険とかラップ、あるいは仕組債などについての状況は、不適切な販売、あるいは適合性の原則に合っていないような販売がされていることについて、あまり状況は変わっていないのではないかと思います。金融機関によっては、そういう状況が見られるところがあると思います。
 
 全体を見まして、非常に取組が進んでいる金融機関と、そうではない金融機関というところの差が、どんどん開いていっているのではないかと思われます。
 
 次に、若い方たちにおいての資産の形成が進んでいるということが、例えばつみたてNISAの口座数などを拝見していると、非常にはっきりと出てきていますが、ここで問題になると思ったのが現役世代、30代から50歳ぐらいまでの人たちについて、取組がなかなか進んでいないことです。特に資産が少ない方たちに対して、もう少し資産形成もてこ入れを何か考えていってほしいと思います。
 
 あちこち話が散漫になって申し訳ないですけれども、運用商品の、投資信託の運用の高度化ということをよく言われていると思いますが、ここでバランス型投信に注目したいと思います。一時期は非常にコストの安いインデックス投資を組み合わせたバランス型が大変ポピュラーになってきて、現在でもそういったものは、積立を中心に残高が増えています。
 
 ただ一方で、新商品を中心とした回転売買は見られなくなったとはいえ、やはり新商品の構造は、いろいろな意味で当局のモニタリングが厳しくなった部分はへこんでくるけれども、そうでないところが伸びてくる。その中で、近年、バランス型のアクティブ運用化、特にデリバティブを使った分かりにくいバランス型も比較的、以前に比べればコストも安くはなっていますが、販売手数料、運用報酬等を取りやすい、そういったアクティブ型のバランス型の新設は増えているように思います。
 
 投資信託個別の売り方について非常によくなってきたという一方で、ラップの販売、ここはまだまだ問題があるのではないかと思います。
 
 特に、今、表示いただいているところですけれども、一般的なコストの安いバランス型よりも低コストを払ってラップで運用してもらったほうが駄目だったというような状況であるならば、ラップといったものの存在意義が根底から疑われてしまうと思います。
 
 御覧のとおり、非常によい状況を見せているところも上位何社かはあるわけですから、この辺については、実は投資家はラップを選ぶときに自分でどこのラップを開こうということを選べないということもありますので、せっかくここまでやっていただいたら、恐れることなく、投資家のためにも、少なくともよいところ3社ぐらいは社名を出していただいても構わないのではないかと思います。
 
 次に駄目な部分について、ミニマムスタンダードというマインドセットが、やはり大方の金融業者の中で、まだまだ根づいているのではないかということ、それとビジネス自体が顧客との情報格差の上で成立しているということについて、そこに安住しているといった根本的な状況があると思います。
 
 その中で申し上げますと、2番の顧客の最善の利益、それから3番の利益相反の適切な管理、4番の手数料の明確化といったものは、運用業者あるいは販売業者任せにするのではなくて、最低限のルールのようなものを、もう作っていかないと駄目なのではないかという感じがしております。
 
 それは単に開示をすればいいということではなくて、よいところの事例をどんどん発表していくとか、最低限のルールに基づいてやっていただきたいということです。それが状況の底上げになっていくのではないかと思います。
 
 一方で、5番、6番、7番については、進捗状況の報告を中心に評価していってあげる、従来どおり、ベストプラクティスについてどんどん紹介していくということが重要だと思います。
 
 それから、ちょっと後で述べたいと思うのですが、これらについては情報開示、特に重要な情報や手数料の明確化については情報公開の充実化というのを、電子化を中心に、もっと進めていっていただきたいと思っております。
 
 全体においては、金融庁のモニタリングが非常に効果を発揮していて、状況が素早く改善される非常に有効な手段になっていると思います。
 
 もう一つ駄目な原因の中で取り上げたいのがアドバイザーの位置づけです。何人もの委員の方もおっしゃっていらっしゃいますけれども、これは第一種の金融業者であるか、金融仲介業であるか、ファイナンシャルプランナーであるかといった違いは、お客さんにとってはほとんど分からないものです。お客さんにとって分かるのは、アドバイザーという名前を使っている人だということだけで、ここについて、例えば利益相反であるとか、あるいはこの人は適合性の原則をきちんと見ているのか、あるいは最善利益の追求を見なければいけない人なのかなどは全然分かりません。こういった難しい言葉ではなくて、売る人か、助言する人か。この売る人かといったときには、直接にアドバイスに対して手数料を取っている、販売に対して手数料・キックバックをもらっているということだけではなくて、その人の収益構造をしっかり開示していくということが一番重要なのではないか、あるいは投資家にとって分かる、目に見える状態になるのではないかと感じております。
 
 ですから、アドバイザーの位置づけについては、今後もう少し丁寧に、ルール等の一元化も含めて議論をしていただければと思っております。
 
 3番目にモニタリング、このお話についてですけれども、ここでのモニタリング、先ほども申し上げましたが、ラップは非常に重要な状況、局面にあると思いますので、ここについては、もう少し販社の特徴が投資家に分かるような比較可能な情報開示になるか、あるいは当局のモニタリングの中で、そのよい結果が見られるようにしていただくということが大事だと思っております。
 
 モニタリングの結果について、4番目の問題、リテラシー向上にも関わってくるのですが、現状の金融庁の御報告というのは、やはりある程度のリテラシーのある人が読まないと、ボリュームも大きいですし、グラフもいろいろ複雑ですので、見ることができませんけれども、これについて投資家が見る前提でのダイジェスト版のようなものを作っていただいて、投資家のリテラシー向上にも資するようなものとして使っていただけたらと思います。
 
 電子化について少し申し上げたいと思いますのは、現状で電子化が進んでいるといっても、紙をPDFにしたような状態のものがたくさんございます。これはスマホでも非常に見にくいですし、比較可能かどうかということにおいても、たくさんPDFを開いて、それを見比べろということになると、実効性のないものだと思います。
 
 そういった意味で、もう少し情報について電子化を、PDFではなくて、データ化をして開示をしていただくといったことが重要なのではないかと思います。
 
 特に投資信託について言いますと、これだけインデックスファンドが安くなって、皆さんが活用されるようになったときに、コストの高いアクティブファンドを一生懸命、窓口でお売りになるとするならば、そのアクティブファンドがインデックスとどう違うのかを、例えばですけれども、時間差はあっても構いません、少し遅くなっても構わないので、保有銘柄をきっちりと時系列で追えるように定期的に出していただくなどです。そうすることによって、これは一般の投資家ではないですけれども、投資家の中でもソートリーダーになっているような方たちは、そういったものを非常に熱心に御覧になりますし、評価会社等においても、ウオッチングをするのに非常に便利になってくると思います。
 
 ですから、保有銘柄の電子的なデータとしての開示というのは、私は一つのアクティブファンドのこれからの活路を見いだす中でも重要なポイントではないかと思います。
 
 一方で、これに対して非常にシステムの費用がかかるということもあります。現在、金融機関がPDFでしか出していないというのは、恐らくシステム費用がかかるからということが大きいと思うので、できることであれば、これは金融のデジタル化、あるいはグローバルの中での競争力を上げていくという意味では、デジタル化の補助金のようなものも考えていく必要があるかと思っております。
 
 リテラシーを上げていくこと自体も非常に重要ですけれども、その中で、良質なアドバイスを手軽に受けられる仕組み、例えば先ほどもお話に挙がりましたロボアドバイザーなどもそうですが、30代、40代、50代までの方たち、現役世代向けに手軽に使えるような、アドバイスを手軽に受けられる仕組みというのが重要になってくると思いました。
 
 ただ、これが先ほど申しました、誰がアドバイザーなのかという問題もあると思います。例えば現在あまり活用されていないのがファイナンシャルプランナーではないかと思います。ファイナンシャルプランナーの使い勝手が悪いというのは、アセットクラスまでは相談できますけれども、それ以上のことができないので、実際に相談した後で一歩踏み出せないから、あまり実用的ではないといった話も聞きます。そうであるなら、せめてファイナンシャルプランナーにおいても、つみたてNISAの対象商品ぐらいについては言及してもよいといったように、アドバイスの範囲を若干広げてさしあげる必要があるのではないかと考えております。
 
 以上です。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、竹川委員、御発言ください。
 
【竹川委員】  説明ありがとうございました。私からは顧客本位の業務運営についてと、後半、金融リテラシーについて発言をしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
 
 まず前半の顧客本位の業務運営についてですが、全部で5点あります。
 
 まず1点目は、22ページです。取組方針を公表した金融事業者が非常に少ないということには私も驚きました。この件に関しては、先ほど野尻委員から詳しく御意見が出ましたので、ここでは省略したいと思います。
 
 2点目は、取組状況の公表についてです。現状では好事例など取組状況の公表にとどまっているので、そこから一歩進んで、それによって何が変わったのかという成果まで含めて公表していく必要があると考えます。
 
 3点目は、資産運用会社のプロダクトガバナンスについてです。運用会社自体の商品の組成やその後の運用実績等についての検証は必要であると考えますが、よい成果を得るためには、運用会社だけでなく、よい売り手、よい受益者の3者がそろわないと難しいのではないでしょうか。
 
 現状を見ますと、(販売金融機関が)新規設定の投信を最初だけ一気に販売して、二、三年で流出に転じるケースも非常に多いです。これでは運用会社も疲弊しますし、受益者のためにもならないと考えます。
 
 そこで、指標として、例えば販売会社には商品ごとの投信の資金の流出入のデータや、(投資信託の販売額に対する)歩留り率なども併せて公表していただくと、顧客本位という点で分かりやすいのではないかと思います。
 
 また、運用会社に関してですが、先ほど島田委員からもありましたが、低コストのインデックスファンドに関してはかなり普及してきています。一方で、アクティブファンドについては、(各投信の)アクティブ・シェアを公表していただけないでしょうか。アクティブ・シェア(の数値)が高いから、必ずしもいいファンドというわけではないですが、少なくとも疑似インデックスファンド(クローゼット・トラッカー)をはじく目安にはなると思います。
 
 現金の取扱いや対象とする指数といったルールを決めていただいて、各社が公表するか、投資信託協会、第三者機関が公表することもご検討いただけるとありがたいです。
 
 4点目は、投資信託に関してですが、公募だけではなく、確定拠出年金と一体で顧客本位の業務運営や情報開示について議論していただきたいです。
 
 インベストメントチェーンに関しては、アセットオーナー、事業会社や確定拠出年金の運営管理機関などの役割は大きくなってきています。企業型確定拠出年金については、加入者が780万人程になっていて、若い方に関しては、投資信託と初めて出会う場が銀行や証券会社ではなく、会社というケースも増えてきているためです。
 
 また、2019年7月から運営管理機関が企業型DCに提供する運用商品の一覧はホームページ上で公表されています。しかし、発見されにくい場所にあったり、資産クラス別になっていない、手数料順に並べ替えができない等、全体像が見えにくく、商品比較もしにくいのが現状です(取り扱う商品の見える化、比較可能な開示が行われていないため)。パッシブ投信の一物多価問題に関しては、公募よりも企業型確定拠出年金の対象商品のほうが根は深いと思います。各運営管理機関の提供する投資信託については統一基準・フォーマットを作り、第三者機関のサイトで開示してはどうでしょうか。自社の商品に目を向ける企業の担当者や従業員も増えると思います。所管や法律が異なるところもありますが、改善に向かうことを期待しています。
 
 また、投資信託については公募、確定拠出年金専用、兼用、それぞれの商品がありますが、一般の消費者から見たときに、どの商品がどれに当たるのかが分かりにくいです。その辺も含め、情報開示資料の統一を望みます。
 
 そして5点目、何人かの委員の方から御意見ありましたけれども、アドバイザーについてです。
 
 22ページの注に、どういう人たちがアドバイザーにあたるのかが書いてありますが、この方たちを全てアドバイザーで一括りにするのは無理があると思います。
 
 日本ではアドバイザーの定義が不明確ですし、独立の定義もはっきりしていません。そろそろ日本でもアドバイザーや独立の定義を行う必要があるのではないでしょうか。
 
 例えば(22ページ注に記載の)金融商品仲介業者やファイナンシャルプランナーなどは、それぞれ何ができて何ができないのか、何を遵守しないといけないのか、収益構造はどうなっているのかなどを開示することが必要だと考えます。
 
 一方、金融商品を販売しなければよいかというと必ずしもそうとは言えません。例えばファイナンシャルプランナーで投資助言・代理業の登録をしている人は少数ですし、(FP資格単独では)個別商品の提案はできませんが、一部法令違反も見受けられます。それぞれの現状の課題を一度整理して、(必要なら)制度を整備して、一般生活者の人たちが相談できる環境を整えていくということが非常に大事だと考えます。
 
 そして、金融教育についてです。1点目は公的なプラットフォームを1つ作ってはどうかということです。金融教育の入り口として「ここに行くといいよ」というようなものを1つつくるのが先決ではないかと思います。現状、個別に各関係団体が様々なサイトを作っていて、たくさんあり過ぎて、逆に何を見たらいいのか分からない状況ですし、内容の重複も目立ちます。
 
 2点目は内容についてです。金融リテラシーの向上といったときに、最近は特に投資にフォーカスされがちですが、ライフプランニングや社会保障、税なども含めて、広い意味での金融知識を体系的に獲得するということが必要だと思います。
 
 金融経済教育推進会議が金融リテラシー・マップを既に作成しています。これをアップデートし体系的なコンテンツを作っていくことが必要ですし、金融経済教育推進会議といったものは、野尻委員のご発言にもありましたが、常設して、具体的に進捗状況を確認していくことも必要だと思います。
 
 3点目は、投資については、うまい話はないということは真っ先に伝えるべきで、何かトラブルがあったときの相談窓口の告知については、より目立つところに記載すべきだと考えます。
 
 4点目は、金融経済教育という時に「職域」を中心にという話が出てきます。たしかに継続的に社員向けの金融経済教育ができればよいとは思いますが、若い方を中心に離職や転職なども増えています。そういった方たちが取り残されないように、また中小・ベンチャー企業に勤務する人や、フリーランス・自営業の人たちに対して、どのように金融経済教育を提供していくのかが重要だと考えます。
 
 そして、5点目です。金融リテラシーの向上や金融経済教育は大事ですが、海外の事例を見ても、(教育には)限界があるというのも事実です。そう考えると、例えば、確定拠出年金の指定運用方法で投資信託を設定しやすいようにするなど、法的な整備も含めて考えていく必要があるのではないでしょうか。
 
 以上です。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、渡辺委員、御発言ください。
 
【渡辺委員】  東京大学、渡辺でございます。よろしくお願いいたします。
 
 感想と、それからちょっとした意見ですけれども、事務局のほうから作っていただいた資料を読むと、いろんな利用可能な集計データを使って、割と説得的に議論されていて、全体像が非常によく理解できたと思いました。
 
 ただ、中身を見ると、全体的には顧客本位の業務運営の進捗状況と考えると、必ずしも大きく改善しているとは言いにくいのかなというような印象を持ちました。原則の策定から一定の時間経過しているわけですけれども、もしこういう、これまでのプリンシプルベースの行政対応というのが必ずしも成果が見えてこない、もう5年ぐらいたっているわけですけれども、それで成果が見えていないということであれば、規制のやり方としては、ルールベースのものとして、しっかりと方向性を示すということも必要なのではないかと印象を持ちました。
 
 そういうような方向性を考えるときに、特に規制については、より詳細なミクロデータに基づいて行うということが、規制のモニタリングという観点からは有用なのではないかというように私自身は思っています。
 
 そういう意味では、今回、事務局資料のデータ、多くは最近、金融庁さんが蓄積し始めたものだと聞いていますけれども、割とアドホックに集められているものだという印象を持っています。
 
 集計データは集計データで、全体像を示す上ではいいわけですけれども、20年前や30年前と比べると、細かいデータを集めてデータベースを作っていくということに対する技術的な難しさとか、先ほどの委員からもありましたけど、コスト面の話はもちろんかかるところはあるとは思いますが、一方で、そういうことは技術的に可能になってきているので、より統一的で詳細なミクロレベルのデータベースを作っていく方向を目指すというのが、中長期的にはいいかと思いました。
 
 例えば具体的にはどんなイメージかというと、商品の個々の販売について、何を、いつ、どのような金額で、どの販売員の方が、どの顧客に売ったのかというのを、そういうレベルの個別の、本当の個別の取引のデータを蓄積するような方向というのはあるのではないかと思っています。
 
 そうすると、何か特定の集計データ作成のために集めているものではないので、新しい問題が出てくれば、それを見つけることもできますし、それを分析することもできます。それから、従来の問題についても常時モニタリングができるという意味で、有用なのではないかと思っています。
 
 そういった個別のミクロレベルのモニタリング用のデータというのを作っていく方法を考える上では、もちろん金融機関の協力も必要になると思います。モニタリング用のデータもそうですが、それ以外にも、顧客にとっての見える化など、よりよい選択につながるようなデータの提供も含めて、金融機関側にデータの提供や公表に応じていただく体制をつくっていくことが重要だと考えます。おそらくコストだけがかかるというと協力しにくい面もあると思うので、そのあたりも考えながら仕組みをつくっていくということが大事なのではないかと思います。
 
 それから、ルールに基づく規制の実効性という意味では、場合によってはランダムな検査みたいなものというのも必要かと思っています。
 
 ただ、このランダムな検査のようなのも、ただランダムにやっても実効性が低かったりする可能性もあるので、そういう意味でも、今申し上げたようなモニタリングデータのようなものをうまく運用できるようになってくると、検査対象をランダムに選定する際も、ある程度ターゲティングした上でランダムに選定することによって、より高い確率で問題を見つけやすくなるということもあると思います。すぐに来年からということは難しいとは思いますけれども、ロードマップみたいなものを考えながら、中長期的には個別のミクロレベルのデータを蓄積していく方向を目指して、それに基づいて規制をしていくという方向は一つありかと思います。
 
 私からは以上です。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 続きまして、佃委員、御発言ください。
 
【佃委員】  佃です。よろしくお願いします。
 
 印象を1つと、それからコメントを幾つかということでお話ししたいと思いますが、まず、22ページ。皆さん御指摘のとおり、私の印象とは違って、公表している数が相当少なくて、正直驚いております。そうした中で、今までの取組、プリンシプルベースというのをルール化しなくていいのかという議論があると思います。それを考える上では、現段階で、私としては、当然ながら必要であればルール化することもありと考えます。
 
 一方で、プリンシプルの細則化というのも、方向性としてあると思うので、その辺りは、よく検討されることがいいのではないかとの印象を持ちました。
 
 それから、コメントですが、顧客本位の業務運営を考える上で、販売会社の業務運営の改善だけでは不十分で、運用会社の対応も必要だと考えております。今日は運用会社に絞ってコメントを幾つかさせていただきたいと思います。
 
 現状、24ページの運用会社による顧客本位の業務運営の状況にもまとめてありますけれども、資産運用業の課題の背景として、私は2つ課題があると思います。
 
 まず第一に、規模の利益が働いていません。資産運用会社が大手金融グループの枠を越えて発展できていません。加えて、金融グループ内で資産運用会社の位置づけが、銀行あるいは証券会社と比較して、規模の面、収益貢献の面、共にマージナルな存在です。それゆえ、リソースアロケーションが不十分との懸念があります。資産運用会社が金融グループの枠を越えていけていない中で、規模の利益が享受できていないという課題があります。
 
 それから2番目に、やはり収益性が高くないという現実があると思います。世界的な潮流で、パッシブ化が進む中、そもそも運用収益がなかなか取れない中で、一方で、日本の運用会社のグローバル化が進んでいないという現実があって、そうすると海外の運用会社からプロダクトを引っ張ってくる必要が生じて、海外の金融機関に収益が落ちてしまうという現実があります。
 
 そうすると、資産運用会社の経営の観点からすると、収益性がなかなか確保されない中で、「資産運用会社にとっての顧客は、販売を委託する先ではなく、投資家であることを改めて認識することが重要」と記載されていますけれども、果たして本当にそれが実現できるのか疑問です。
 
 やはり、金融グループの枠を越える動きや、日本の資産運用会社のグローバル化の動きが実現していかないと、現状を大きく変えることは難しいのではないかと考えています。
 
 したがって、資産運用会社の経営の革新が必要です。25ページにプロダクトガバナンスの確保と書かれていますけれども、資産運用会社の収益性の向上なくしてプロダクトガバナンスを確保しようとすると、ますます資産運用会社の経営が厳しくなるわけですから、収益増がコスト増を上回る方向に持っていく必要があると思います。
 
 このことに関して2点コメントさせていただきますと、まず1点目、具体的には、26ページにありますけれども、資産運用会社のガバナンスの強化が求められる中で、社外取締役の機能の強化が重要です。資産運用会社の経営に外部目線の導入を強化していく必要があります。
 
 26ページには、運用関連業務の経験者が少ないという御指摘があって、これはもうこのとおりだと思います。
 
 一方で、運用関連業務の経験者を社外取締役として増やせば資産運用会社の経営が改善するかというと、必ずしもそうでなくて、やはり本質は、資産運用業の経営をちゃんとモニタリングできる人が社外取締役になる、これがやはり本筋だと思います。そういった意味では、運用業務経験があろうがなかろうが、資産運用会社の経営をモニタリングできる人を、外部目線として入れていく必要があると思います。
 
 例えば、社外取締役が経営陣に対して取締役会の場で、例えばファンドの本数が多過ぎないか、これについて費用対効果をどう考えているのか、あるいは25ページにありますように、コスト控除後のアルファの推計値はどうなっているのかという質問をしていくことで、資産運用会社の経営の高度化に社外取締役が貢献していくことが求められると思います。
 
 2点目に、資産運用会社自らが取締役会の実効性評価を実施して公表することが期待されます。その資産運用会社の経営がきっちりと高度化しているかどうかというのは、やはり取締役会の実効性評価で担保していくことが求められると思います。
 
 最後に、やはり大事なポイントは、プロダクトガバナンスの確保だとか資産運用会社のガバナンス強化は、それ自体が目的ではなくて、資産運用業が発展し、資産運用会社の経営がますますよくなることが目的だと思います。資産運用会社の収益性が上がり、金融グループ全体にとってもプラスになっていくという方向性を前提とすべきと考えます。
 
 私からは以上です。ありがとうございました。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 それでは、神田先生、御発言をお願いいたします。
 
【神田委員】  神田です。どうもありがとうございます。このタスクフォースで御審議をお願いしているテーマというのは、言うまでもなく日本にとって非常に重要なテーマであります。しかし、課題も非常に多く、難問も多いということでして、ぜひ皆様方には存分な御議論をお願いできれば大変ありがたく思います。それを申し上げた上で2点ほど、感想めいたことを申し上げたいと思います。
 
 1つは顧客本位について2つほど感想と、もう一つは、より漠然とした感想を1つ申し上げます。
 
 顧客本位の業務運営ですけれども、皆様方御承知のように、2017年に原則を策定したときに、かなりの時間を割いて議論をしまして、その結果、プリンシプルベースでいきましょうということになってスタートしたわけです。今から二、三年前に、ワーキングのほうで、整理、検証したところ、その答えは一言で、当時の言葉で道半ば、進捗はしているけれども道半ばという、こういうまとめでした。
 
 今日、先ほどから皆様方から御指摘の多い22ページ、13ページ以下の資料ですけれども、22ページ辺りを特に御覧いただきますと、やはり道半ばの域を脱していません。22ページは、確かにアドバイスに関するものであって、かつ金融庁の確認をパスした、そういう取組方針、これを公表されているところが非常に少ないという現実を示しているわけです。
 
 ではどうするかということに結局なるわけですけれども、2点ほど感想がありまして、1つは、二、三年前に道半ばという整理をした後で、昨年の1月だったと思いますけれども、一部原則の改訂をし、一部法令とリンクをさせ、かつ重要情報シートを導入するということをしたわけで、重要情報シートの実務も始まって、それほど日がたっているわけではありません。
 
 そこで、この2021年の改訂後の状況、特に重要情報シートの使われ方、これが顧客にどのように受け止められているのか、あるいはあまり役に立っていないのかという辺りを少し検証していただけるとありがたいと思います。
 
 この点で、先ほど渡辺先生が御指摘になったことですけれども、ミクロベースのデータの収集をもう少し心がけますと、そのデータ分析の技法というのも近年は高まっていますので、もう少し何か見えてくるように思います。その上で、ルール化ということも当然視野に入ってくると思いますけれども、どこの部分をルール化すると、そのルール化することによって、どこがどう変わるのかということについて、ぜひ御議論をいただければありがたいと思います。少しずつ進捗はしているということでしょうけれども、やはり、なかなか今のままでいいとは言えそうにないということではないかと思います。
 
 もう一点、これに関連して、22ページに関連しますが、既に御発言がありましたように、アドバイザーというか、やはり助言業というのを今後日本で育てていくという、そういうかじ取りが必要に思います。顧客の側に立った助言をする人といった、具体的には制度設計ということもありますけれども、どういう方々が、誰がそれをやるのか、何をアドバイスするのかという辺りすら明らかでない、これは非常に大きな課題であり、日本から見ると、日本は欧米の状況から非常に遠いといった課題だと思いますので、ぜひ本格的な詰めをして、助言業を育てていくという道筋を立てていただけるとありがたく思います。
 
 もう一点だけ、違う話で、より一般的なことですけれども、8ページ辺りを見ますと、そこに書いてあるとおりなのですが、先ほどから少し御指摘もありました企業年金のところも非常に重要なので、こういう企業年金を含めての、横串というか、ルールの横断化ということを、ぜひ目指してはどうかと個人的には感じます。こういった点につきましても、皆様方に御議論と知見をいただければありがたく思います。
 
 以上です。ありがとうございます。
 
【神作座長】  大変ありがとうございました。
 
 それでは続きまして、オブザーバーの方々から御意見があれば御発言をお願いしたいと存じます。チャットでお知らせいただければ幸いです。オブザーバーの方から、もし御意見がありましたら御発言ください。
 
 日証協の森本様、よろしくお願いいたします。
 
【日本証券業協会】  日本証券業協会の森本でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。本日の議論を踏まえ、幾つかコメントをさせていただければと思います。
 
 まず、御指摘いただいております仕組債に関して、仕組債に係る販売態勢等に関する問題点につきましては、本協会としましても真摯に受け止めており、個社における顧客本位の業務運営の取組みに加えまして、業界全体での取組みが必要であるとの認識から、既に関連するワーキング・グループにおきまして検討に着手しているところでございます。
 
 現在のところ、自社の取扱商品として相応しいかどうかの検証の在り方、顧客選別や勧誘、販売における適切性の確保、さらには販売後のモニタリング等の様々な論点につきまして、課題の整理を行っているところでございます。
 
 今後、本タスクフォースにおける議論や、金融庁からの御指摘を踏まえながら、本協会ガイドラインの改訂等につきまして、より具体的な検討を進めていく予定でございますので、引き続き御理解、御協力をいただければ幸いでございます。
 
 なお、仕組債のコスト開示につきましては、本年6月の市場制度ワーキング・グループ中間整理にもございますとおり、プロダクトガバナンスの観点から、アメリカや欧州の制度や実態も踏まえながら、組成者における対応として検討していくことが適当であると考えております。また、比較可能性の観点からは、預金・保険商品など、他の仕組商品と横並びで検討する必要があると考えております。
 
 次に、本日も指摘いただいておりました資料22ページの「顧客本位の業務運営に関する原則」への取組みに関する「金融事業者リストに掲載されている者は少数である」という御指摘について、こちらも業界として真摯に受け止めており、一層の取組み促進に向けて努力したいと思っております。
 
 なお、資料中では、多様な主体の例として、第一種金商業者、投資助言・代理業者、金融商品仲介業者が取り上げられていると思いますが、同じ第一種金商業者の中におきましても、リテール向けのビジネスを行っていない社も含まれているのではないかと思われます。その規模や態様は様々である点には御留意いただければと思います。
 
 また、第一種金商業者の50社が公表と資料に示されていますが、こちらは自社の取組方針等を公表しただけではなく、一定基準を満たしたとして当局の確認を経た事業者の数であると認識をしております。
 
 ただ、基準を満たしたとは認められなかった社の中には、原則を咀嚼して、自社なりによく考えて、決して原則の文言を形式的になぞっただけではない取組方針を策定したのに、なぜ基準を満たしていないと評価されるのか、その理由が分からないという社もあるところでございます。
 
 現行の形式によるリスト化は、各事業者の取組みを比較可能な形で「見える化」するための取組みとして重要なものであると理解しております。その上で、評価・選別の基準を明らかにするとともに、選ばれなかった社に対して、その理由等について丁寧に御説明いただき、コミュニケーションを図っていただければ、各社においてさらなる顧客本位に向けた取組みにつなげていけるのではないかと思っております。
 
 それから、顧客本位の業務運営全般に関してですけれども、今後、具体的な規制の枠組みの議論が行われる際には、証券会社をはじめ販売会社各社のビジネスモデルや歴史はそれぞれ異なり、それに伴って各社の顧客の属性・特徴も異なっているという点、その上で、同じ金融商品でも、例えば今まで証券会社との取引があった顧客と取引がなかった顧客とでは、金融・証券知識の理解度、また投資や資産形成に対する姿勢や考え方には差があると考えられます。このような顧客に一律に金融商品を同じように販売してよいのかというような指摘もあろうかと思います。
 
 販売・勧誘を顧客のニーズや状況に応じて適切なものにしていくためには、ルールにより一律の対応を義務づけていくよりは、「顧客本位の業務運営に関する原則」が定められ、その下で各社が取組方針を定めて個々の顧客にふさわしい金融商品やサービスを提供していく、今のアプローチを発展・高度化していくことが望ましいと考えます。
 
 販売会社各社のビジネスモデルの多様性が保たれることにより、顧客に幅広い商品・サービスの選択肢を提供できることになるかと思います。顧客にとっての選択肢を狭めることにつながることがないよう留意する必要があるのではないかと思います。
 
 最後にリテラシーの関係について、本日も投資家・顧客からの相談先があるべきとの御指摘があったとおり、我が国の金融リテラシーの現状を踏まえると、中間層の資産所得倍増のためには、国家戦略として公的な資産形成教育・相談機能の拡充が必要であると考えております。
 
 この点につきましては、本業界でも本年7月に資産所得倍増プランへの提言で打ち出しており、また、8月31日に公表されております「金融行政方針」におきましても、「国全体として、中立的立場から、資産形成に関する金融経済教育の機会提供に向けた取組みを推進するための体制を検討する」との方針が示されております。この方向性につきまして、私どもとして大いに歓迎し、評価したいと思っております。本タスクフォースにおきましても、我が国の金融リテラシー戦略の検討を進めるに当たっては、こうした方向性と軌を一にして、中間層の資産所得倍増のため、集中的、精力的な検討をお願いしたいと思います。
 
 私からは以上でございます。ありがとうございました。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。一部発言が途切れた部分がございますので、議事録を作成する際に補っていただければと思います。
 
【日本証券業協会】  はい。かしこまりました。よろしくお願いします。
 
【神作座長】  お願いいたします。
 
 続きまして、投信協会の杉江様、御発言ください。
 
【投資信託協会】  投資信託協会の杉江でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。私からは金融リテラシーの向上に限定して発言をさせていただきます。
 
 投資信託協会としましては、金融経済教育を通じた国民の金融リテラシーの向上は大変重要な課題と考えておりまして、本年7月に投資信託協会で取りまとめました「新しい資本主義の実現に向けた資産運用業界からの提言」におきまして、2つの提言をしております。政府に対しましては、実践的な金融経済教育の推進を提言しておりますが、2つの点を要望しておりまして、1つが、子供から社会人に至るまで全世代への金融経済教育の実施といたしまして、金融経済教育を職場、国、地方公共団体、金融機関が一体となって推進するための根拠となる法制度を整備すること、もう一点は、誰もが気軽に相談できる公的窓口の設置等、資産形成の実行支援のための機能・体制の整備を提言しております。
 
 私どもは、このように金融経済教育につきましては諸外国、特に英国で実施されておりますマネー・アンド・ペンション・サービス、MaPSというように呼んでおりますが、このMaPSを参考にしつつ、国家戦略の一つとして、官民一体の金融経済教育の推進を位置づけ、そのための根拠となる法令の整備をぜひお願いしたいと考えております。引き続き、このタスクフォースにおいて、様々な見地から御意見をいただければ幸いです。ありがとうございました。
 
 以上です。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 それでは、全銀協の宮下様、御発言ください。
 
【全国銀行協会】  全国銀行協会の宮下でございます。本日は発言の機会を頂戴しまして大変ありがとうございます。
 
 5ページの資料にありました総合的アプローチに示されているとおり、顧客本位の業務運営確保並びに金融リテラシーの向上という2つのテーマは、全銀協にとっても非常に大事なものです。銀行業界として、しっかり責任を果たしていく必要があると考えております。
 
 資料31ページの御議論いただきたい事項を中心に意見を申し上げますが、まず、今日の議論でも出ました22ページの顧客本位の業務運営の進捗の評価という観点での取組の公表についてです。このデータの中には私どもの会員の数字は入っていないと認識しておりますが、御参考までに申し上げますと、6月末時点では、正会員全114行の中で53行となっております。ただ、やや形式的なところで金融庁様とのやり取りをしている会社も複数あると聞いております。
 
 ちなみに3月末時点では、基準が若干違っておりますが、114行中107でしたので、このような状況に早期に復していくものと思っております。
 
 いずれにしても、顧客本位の業務運営につきましては、これまでプリンシプルベースで会員各行が創意工夫によって継続的に取組を高度化すべく努力してまいったと自認しております。
 
 この顧客本位の業務運営をさらに進めていくに当たっては、原則にのっとり、お客様の投資経験やリスク許容度などを踏まえた適切な適合性の判断と、そのニーズに応じた最適な提案を行うことが、当然のことながら大変重要と考えております。
 
 特に、本日、具体的に示されましたEB債を中心とした仕組債、あるいはファンドラップ、外貨建一時払い保険といった商品については、各販売会社が組成会社などの関係者とも連携をしながら、しっかりと現状について検証していく必要があると認識しております。
 
 一方で、一律の過度な規制強化によって、金融機関と運用するお客様が必要以上にリスク性資産を避けてしまうことも本意ではないと考えております。まずは、私どもとしては、各行の販売状況、また販売体制を把握した上で、お客様選定における各行の検討、検証プロセスの高度化を模索してまいりたいと考えております。
 
 次に、取組状況の見える化という視点もありました。分かりやすい情報開示が最も重要な要素の一つと考えます。開示の充実と分かりやすさの両立を実現することが必要で、この点についても、このタスクフォースでの御議論を踏まえて、しっかりと対応してまいりたいと思っております。
 
 また、フォローアップについては、顧客本位の業務運営自体が各事業者の不断の検証、改善が必要なテーマである以上、必須の対応と考えられます。原則に基づいた自主的な取組が進められているか、各事業者が説明、公表できることが必要と考えます。
 
 ただ一方で、フォローアップの項目を詳細に決めてしまうと、各事業者の対応が、その項目の達成のみに集中してしまう可能性もあるのではないかと思っております。必要最低限のフォローアップは必要な一方で、かえって各事業者の創意工夫を妨げる結果とならないよう注意が必要と考えております。
 
 最後に、金融リテラシーの向上について、現状、民間企業や各団体が独自で金融経済教育の取組を行っております。先日の市場制度ワーキング・グループのメンバーの方々からも御発言があったと記憶をしておりますが、その取組に重複もあるのではないかと思います。政府の旗振りの下で、これらの取組が連携されていけば、効率的な対応につながるものと思いますので、当協会としても、しっかり貢献をしてまいりたいと思います。
 
 なお、実際の投資促進につなげていくためには、インプット中心の投資教育のみならず、学んだことを生かすことができるような投資体験など、アウトプットを意識した実践的な取組を行うことも重要と考えております。
 
 以上、意見を申し上げました。ありがとうございました。
 
【神作座長】  どうもありがとうございました。
 
 それでは、本日いただきました御説明や、それから委員のメンバーからの大変貴重な多くの御意見を踏まえて、事務局において、今後検討すべき課題について整理をしていただきたいと存じます。
 
 時間を若干超過いたしましたけれども、以上をもちまして本日の会議は終了とさせていただきます。お忙しいところ誠にありがとうございました。
 
                                             ―― 了 ――
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