決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ(第2回)議事録
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1.日時:
令和元年10月24日(木)14時00分~16時00分
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2.場所:
中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室
【神作座長】
それでは、予定の時刻になりましたので、ただいまより「決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ」第2回会合を開催いたします。皆様、ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、決済法制に関するテーマのうち、前払式支払手段及び収納代行に係る論点についてご議論いただきたいと存じます。
なお、収納代行に係る論点に関しまして、参考人にご出席をいただいておりますので、事務局よりそのご紹介をお願いいたします。
【守屋横断法制室長】
決済法制担当の守屋でございます。本日は参考人として、日本代理収納サービス協会の辻本治様にご出席をいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
【辻本参考人】
辻本です。よろしくお願いいたします。
【神作座長】
どうぞよろしくお願いいたします。
それでは早速議事に入らせていただきます。本日はまず、事務局から、資料1及び資料2についてご説明いただきます。次に、参考人の方からご説明をいただき、その後に一括して討議を行います。
それでは、事務局からご説明をお願いいたします。
【守屋横断法制室長】
それでは引き続き私のほうからご説明させていただきます。お手元に事務局資料を2種類ご用意しております。前回と同様でございますが、縦の資料1が討議資料、横の資料2がそれに対応した参考資料となっております。基本的には討議資料に沿って、必要に応じて参考資料を使用したいと思います。
先ほど座長からご紹介いただきましたとおり、本日は前払式支払手段と収納代行についてご議論をお願いしたいと考えております。討議資料の構成でございますが、これも前回と同様でございますが、論点ごとに現状に触れた後に、本日のご議論の土台として検討の方向性の案をお示ししております。
それでは、1つ目の前払式支払手段から順にご説明をさせていただきます。
まず、現状のところでございますが、前払式支払手段の発行者と資金移動業者を比較しますと、例えば、前払式の方は原則として現金化が認められておらず、犯収法上の取引時確認が課されていない、利用者資金に関しまして、前払式の方は半額の保全が求められている一方で、移動業者の方は全額の保全が求められている、といった規制の差異がございます。
また、前払式の中でも第三者型に特有の規制でございますが、前払式支払手段の使用により販売される商品などが公序良俗を害するものでないことを確保するために必要な措置、こういったものを講じることが求められております。このあたりが規制の関係でございまして、こうした中で、前払式支払手段のうち、第三者型で、IC型やサーバー型と呼ばれているものの中には、発行者が提供する仕組みを通じまして他人に譲渡可能な前払式支払手段が存在しているところでございます。
参考資料の4ページのほうに具体的なイメージを表記させていただいております。大きく2つのタイプがございまして、まず左側、サービスの「例①」と書いてあるものでございます。こちらについては、発行者が提供する仕組みの中で、利用者ごとのアカウント間をチャージ残高が転々流通するもタイプでございまして、資金移動業者と比べますと、移転するものがお金ではなくて、あくまでプリペイドカードの残高が譲渡されているといったようなイメージのものでございます。
右側、もう一つ「例②」とございますけども、カードに番号などが記載されていまして、コンビニなどでも販売されておりますけども、こういったカード番号をメールなどで相手方に送り、相手方がその番号を自分のアカウントに入力しますと、チャージが完了するといったようなタイプのものでございます。
こういったものが現状サービスとして出てきているということでございまして、こうした状況を踏まえまして、スタディ・グループの報告書におきましては、この第三者型の前払式支払支段のうち、IC型やサーバー型に該当するものについて、送金サービスに類似した性質を有している、利用者資金の保全に関する規制等を見直すことを検討することが適当であると考えられるというふうにご提言をいただいておるところでございます。
これを踏まえまして、検討の方向性(案)でございますけども、大きく3つの項目に分けて記載をしております。
まずは、「不適切な取引への対応」でございます。情報通信技術の発展に伴いまして、先ほども申し上げたような発行者が提供する仕組みの中で他者に譲渡することが可能な前払式支払手段が登場している。こうした現状に適切に対応し、業務の健全かつ適切な運営を確保する観点から、現行規制の趣旨も踏まえまして、発行者に対して譲渡可能な前払式支払手段が公序良俗を害するような不適切な取引に使用されることがないようにするための、一定の対応を求める必要があるのではないか、こういった問題意識でございます。その場合、他者に譲渡することが可能な前払式支払手段のうち、先ほどの図で申し上げますと左側の①のタイプのような、チャージ残高の譲渡が繰り返されることで発行者が提供する仕組みの中で転々流通する可能性があるものについては、不適切な取引に使用されることを防止する必要性が高いと考えられるのではないか、このように考えておるところでございます。
もう一つの②のタイプでございますが、こちらについては、基本的には、ギフトや返礼目的での利用を念頭に、1回限りで他者へ譲渡することを目的としておりまして、チャージが行われた後は、再譲渡できない仕組みとなっております。このように発行者が提供する仕組みの中で転々流通することがない限り、不適切な取引に使用されるリスクは限定的であり、特別の規制を設ける必要性は乏しいとも考えられるのではないか、このように考えております。
注のところで明朝体で示させていただいておりますけども、商品券などの紙型の前払式支払手段でも、利用者が他者に譲渡することは可能となっておりまして、こういったところとのバランスも考慮する必要があるのではないか、こういった問題意識でございます。
その上で、仮に左側の①のタイプのような前払式支払手段について、発行者に対して対応を求める場合、具体的にどのような対応が考えられるかということでございまして、例えば、譲渡可能なチャージ残高の額の上限の設定でありますとか、繰り返し譲渡を受けている者の特定など、不自然な取引を検知する体制整備、こういったことが考えられるのではないかと。こうした対応が図られることで一定の抑止力が期待できるのではないか、こういった問題意識でございます。
ご参考までに、参考資料の5ページのほうで、実際にこの①の転々流通するタイプ、右側の円グラフでございますけども、まだサービス提供されている会社は数社でございますけども、実態としてどれくらいの額が譲渡されているかというものでございます。1件当たり1万円未満のものが9割弱となっております。また、各社ともに自主的な対応といたしまして、譲渡の上限額というのが10万円以下に設定されておるといった実態にございます。
続きまして2つ目の項目の、「利用者資金の保全のあり方」に関してでございます。先ほどの転々流通するタイプの前払式支払手段を念頭に置いておりますけども、こういったタイプの利用者資金の保全についてどう考えていくか、2つの考え方を併記させていただいております。
1つ目でございますけども、送金サービスに類似した性質を有しているとの指摘も踏まえまして、譲渡されるチャージ残高と等価の価値が当事者としては確実に届けられるとの期待、3,000円分を送ったら3,000円分の価値が確実に届けられるだろうという当事者の期待を保護するという観点からは、資金移動業者と同様に、利用者資金の全額の保全を義務づける必要があるのではないか、こういう考え方でございます。
明朝体のところで、保全割合だけではなく、保全すべき額の算定頻度も、現状、前払式支払手段については年2回となっておりますけども、資金移動業者の方は、現状でありますと原則週1回ということでございますので、頻度についても同様にしていく必要があるのではないかというふうに考えております。
もう一つの考え方でございますけども、あくまでも前払式支払手段のチャージ残高というのは、現金化不可であって、使途が限定された、半額保全を前提とするものであり、譲渡後もその性質に変わりはないということから、必ずしも資金移動業者と同様の規制を課す必要はないとも考えられるかということでございまして、このあたりについてどのように考えていくべきか、ご議論いただければと存じます。
3つ目の論点、「その他の論点」とさせていただいておりますけども、1つ目のほうは、チャージ残高の額に応じて規制のメリハリづけができるかどうかという問題意識でございまして、資金移動業者につきましては、前回ご議論いただきましたとおり、利用者1人当たりの受入額を少額に限定することを前提とした規制緩和を今ご議論いただいておるところでございます。
一方で、前払式支払手段の発行者については、本人確認義務が課されておりませんので、発行者が利用者1人あたりの保有額を把握することは難しいのではないか、こういったことから、同様の規制緩和は困難ではないか、このような問題意識でございます。
その他、前払式支払手段に関して検討すべき事項があればご指摘をいただければと存じます。
続きまして、討議資料4ページをおめくりいただきまして、収納代行についての論点でございます。論点を大きく4つに分けさせていただいております。
(1)は「これまでの議論」ということでございまして、まず「現状」の部分、資金決済法制定時、10年前のご議論でございますけども、コンビニエンスストアによる収納代行や、運送業者による代金引換などについては、為替取引に該当する疑義があるなどの意見がありました一方で、支払人に二重支払の危険はないなどの意見もありまして、性急に制度整備を図ることなく、将来の課題とすることが適当と考えられるとされたところでございます。その後、例えば、割り勘アプリといったような形で、収納代行の形はとっているのですけれども、実質的に個人間送金を行う新たなサービスが提供されているなど、収納代行を取り巻く状況が変化しておるところでございます。
こうした状況を踏まえまして、スタディ・グループの報告書におきましては、こうした収納代行の形式をとった新たなサービスを念頭に、必要な場合については規制を及ぼすことが考えられる、こういったご提言をいただいておるところでございます。
検討の方向性の案でございますけども、まずここでは、本日ご議論の前提として、代金引換とかあるいは収納代行といったものは無定義でございますので、議論の射程を明確にする観点から、例えば以下のような2つの要件を満たすものについては収納代行あるいは代金引換ということでご議論いただいてはどうかという観点でお示ししておるものでございます。
参考資料の8ページのほうにイメージ図をご用意しております。黒い矢印が法律関係を示すものでありまして、青い矢印が資金の流れを示しておるものでございます。要件の1つ目は、金銭債権を有する者、債権者の委託を受けて債務者から資金を収受すること。2つ目は、収受した資金を直接輸送することなく、金銭債権を有する者に移転させること、こうしたものを収納代行と考えてよいのではないかと考えております。その他考慮すべき要素があれば、ご指摘をいただければと存じます。
明朝体のところで、少し細かいのですけれども、委託で代理受領権を与えるという構成をとらずに、債権者が業者に対して一旦債権を譲渡して、業者が債務者から債権を回収した後に、債権譲渡の対価を支払う、このようなことも実務の中では行われておるということでございますけれども、経済的な効果は代理受領権を与える場合と同じと考えられますので、こういったことも考慮してご議論いただく必要があるのではないかという観点で明朝体の部分を書かせていただいております。
5ページをおめくりいただきまして、ここからが各論でございまして、「債権者が事業者である収納代行」ということでございます。こちらにつきましては、スタディ・グループの報告書でかなり方向性をお示しいただいておるところでございます。具体的には、債権者が事業者であり、かつ、支払人が収納代行業者に支払いをした時点で債務の弁済が終了し、その後の収納代行業者の信用リスクは債権者である事業者が負担する、こういったことが確保されている場合には、既に一定の利用者保護が図られていると考えられる、このような適切な対応が図られているといえる収納代行については、これまでと同様の扱いとすることが適当であると考えられる、こういったご提言をいただいておるところでございます。
検討の方向性(案)でございますが、こういったスタディ・グループの報告書を踏まえまして、以下の2つの要件を満たす収納代行については、為替取引に関する規制を適用する必要性は必ずしも高くないと言えるのではないか、こういったご提案になっております。
1つ目の要件が、債権者が事業者であること。明朝体の部分でございますが、国や地公体が債権者である場合も同様に考えてよいのではないかと考えております。
2つ目の要件でございますけども、債務者から資金を収受したときに債務が消滅することが契約上明らかであること、この2つの要件を満たすものについて規制を適用する必要性は必ずしも高くないのではないかということでございます。
一番下の丸でございますが、事業者の定義に関するものでございまして、債権者が一般消費者である場合に保護の必要性が高まるというふうに考えますと、事業者の定義につきましては、消費者契約法上の定義を踏襲することが考えられるのではないか、こういったご提案でございます。
6ページをおめくりください。3つ目の論点、「個人間の収納代行」に関してでございます。スタディ・グループの報告書におきましては、実質的に個人間送金に該当するようなものは規制対象とすることが適当とされております一方で、その他の個人間の収納代行については、今後、実態について把握を行い、規制の潜脱と評価されるものはどのようなものかについて、きめ細かに検討していくことが重要、とりわけ、エスクローサービスのように、利用者保護上重要な役割を果たしているものについては、そのエコシステムに支障が生じることのないよう特に留意すべき、といったようなご提言をいただいておるところでございます。
ここで参考資料の9ページおめくりください。個人間の収納代行サービスに関して典型的な2つのサービスのイメージ、割り勘アプリのイメージとエスクローサービスのイメージを併記しております。黒い矢印の法律関係、青い矢印のお金の流れ、こちらについては典型的な収納代行と同じになっております。赤い矢印で当事者の行為、緑色の矢印で物の流れをお示ししております。
まず、割り勘アプリのイメージの方でございますけども、宴会の幹事さんが居酒屋でお金を払った絵が出ておりますけれども、その後、債権者であるこの宴会幹事さんが、居酒屋のレシートと一緒に、原因取引の通知とあわせて、誰々さんから幾らずつ請求してくださいという依頼を割り勘アプリの事業者に送ります。アプリを通じて債務者の方に代金の請求が行きまして、お金が事業者を通じて支払われる、こういった仕組みになってございます。
右側のエスクローサービスのほうでございますけども、フリマアプリの事業者のインターネット上のマーケットプレイスの中で、個人間で物の売買をするようなイメージでございますけれども、そういったフリマアプリなどで当事者間で売買契約が成立しますと、自動的にフリマアプリの事業者がその原因取引を確認できる仕組みになってございます。買主である債務者が一旦事業者に代金を支払いますと、事業者から売主の方に代金を入金しましたという通知が行く仕組みになっておりまして、それを受けた売主は、直接買主の方に商品を発送する。買主が商品が到着しましたということを事業者に通知をいたしますと、あらかじめ受け入れていた代金を売主の方に支払う、こういった流れになってございます。
こういった割り勘アプリでありますとかエスクローサービスについて、幾つかの指摘がなされているところでございまして、討議資料にお戻りいただいて6ページの真ん中以降にそれらを記載してございます。まず、割り勘アプリのようなサービスにつきまして、収納代行の形はとってはいるんですけども、サービス提供者は個人間の債権債務関係の発生事由に関与しておらず、単に資金のやりとりを仲介しているだけであって、その経済的な効果は債権者がサービス提供者に対して逆為替の依頼を行っている場合と同視し得る。もう一つの指摘は、一般消費者である債権者・債務者双方が、サービス提供者に対して信用リスクを抱えるおそれがあり、利用者保護を確保する必要性は高い、こういった指摘がなされておるところでございます。
エスクローサービスにつきましても幾つか指摘がございまして、1つ目でございますが、個人間の物品の売買などの取引に際し、当事者双方の債務の同時履行を図ることにより、トラブルの未然防止機能があり、債権者・債務者双方がその利点を享受している。仮に規制対象とすれば、サービス提供者の規制遵守コストが利用者にも転嫁され、利用者利便を損なうおそれがあることから、規制の適用の要否を検討するに当たっては政策的な判断が求められる。物品の給付などがなされたことが確認され次第、債権者に対する支払いが行われる仕組みとなっており、債権者自身がサービス提供者に対して信用リスクを抱える期間を一定程度コントロールすることが可能である、先ほどの絵で申し上げますと、商品の発送を債権者自らが早く行えば、信用リスクを抱える期間を一定程度短くできる、といったような指摘でございます。4つ目の指摘は、社会的・経済的に重大な被害は発生していない、こういった指摘がございます。
その一方で、仮にサービス提供者が破綻した場合は、債権者である一般消費者の資金が保全されない場合もあるが、これは資金決済法が防ごうとした事態であるといったようなご指摘でありますとか、エコシステムへの留意といったものはあくまでも利用者保護に懸念を生じさせない範囲で考慮すべきである、このような指摘もあるところでございます。
これらを踏まえまして、検討の方向性(案)でございますけども、割り勘アプリのようなサービスにつきましては、収納代行の形はとっておりますけども、為替取引に関する規制を適用する必要性が高いと考えられるのではないかと考えております。
他方で、エスクローサービスにつきましては、これらの指摘を踏まえまして、為替取引に関する規制を適用する必要性についてどのように考えるべきか、このあたりについてご議論をいただければと思います。
事務局の提案といたしましては、例えばですけども、以下のような3つの要件を満たすものについては、少なくとも現状において規制を適用する必要性は必ずしも高くないと考えられるのではないかということでございます。
1つ目の要件が、物品の販売などに係る金銭債権を有する者の委託を受け、債務者から資金を収受すること。資金の流れの原因となる取引が物の売買などによって生じた金銭債権であるということを求める趣旨でございます。
2つ目の要件は、先ほどの債権者が事業者である場合と同じでございますけども、債務者から資金を収受したときに債務が消滅することが契約上明らかであること。
3つ目の要件でございますが、以下の2つの行為が履行されることが契約上明らかであること。1つ目が、債務者に対する物品の給付に先立ちまして、金銭債権を有する者に対して債務者から資金を収受した旨の通知がなされること。先ほどの絵で言いますと、③の赤い矢印、代金入金の通知がなされるということを求めるものでございます。2つ目が、債務者に対する物品の給付の後に、金銭債権を有する者に資金が移転されるということ。先ほどの図で申し上げますと、⑤の商品到着の通知の後に⑥の代金受渡が行われるといった仕組みが確保されているということを求める要件でございます。
以上が「個人間の収納代行」の関係でございまして、討議資料8ページ、最後に「収納代行に対する規制のあり方」ということで3点ほど記載させていただいております。
以上を踏まえまして、現時点においては、収納代行の形式をとったサービスのうち、少なくとも割り勘アプリのようなサービスについては、為替取引に関する規制の適用対象となることを明確化する必要があると考えられるのではないかということでございます。
このほか、収納代行の形式をとったサービスで、為替取引に関する規制の適用の要否を検討しておくべきものでありますとか、収納代行全般に関して検討すべき事項がございましたら、ご指摘をいただければと存じます。
事務局からは以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
続きまして、日本代理収納サービス協会の辻本様、5分程度でご説明をお願いいたします。
【辻本参考人】
日本代理収納サービス協会の理事を務めております株式会社電算システムの辻本でございます。まず、日本代理収納サービス協会の概要についてご説明申し上げます。配付いただいています当協会のガイドブックに沿ってご説明をさせていただきます。
このガイドブックには記載はしてないですが、設立は平成22年の9月でございます。まさに21年1月に金融審議会金融分科会第二部会で資金決済に関する制度整備についてという議論があったところから、我々のほうでも業界内できちんと健全な業界にしなければいけないということで会の設立の準備をして、22年9月に設立した、そういう経緯になります。
会員の構成につきましては、我々収納代行会社を正会員と呼びまして、正会員は32社でございます。リテール会員は、いわゆるコンビニ本部が9社、グループ会員が34社で、グループ会員というのは、コンビニ本部と直接契約はないものの、こういう収納代行の業務をしている企業になります。あとオブザーバー会員としまして流通システム開発センターが1社ありまして、計76社の構成となっております。
代理収納サービスの仕組みに関しては、こちらは先ほどからも何度も出ておりますので省略させていただきます。
続きまして、協会の設立目的ですが、最近ではコンビニエンスストアだけではなく、スーパーであったり、ドラッグストアであったり、そういったところを拠点とした代理収納サービスというのは身近な収納サービスで、多くの消費者にご利用いただいているという状況でございます。利用の中身なのですが、従来の電気料金等の公共料金に加えて、ネットショッピングであったり、あと自動車税等の税金等で重要な社会のインフラになっております。そういった代理収納サービスというのは重要な社会インフラであるという認識のもと、適正な取引の確保を図るとことにより、第一に消費者利益の保護・安全性の確保と利便性の向上を図るとともに、公共の利益に反する利用を排除し、業界の健全な成長・発展を促進することが当協会の目的です。
我々の活動の柱が2つございまして、4ページをご参照いただくと、行動指針ということで2つの柱を掲げています。
1つは、二重弁済の防止ということで、先ほど二重弁済の可能性等で消費者、支払者に不利にならないように、安全なサービスを阻害されないようにというところで、収納代行契約が代理受領であることの徹底ということになります。ここでの登場人物であります、利用企業、収納代行会社、コンビニ本部との間で料金代理収納契約の内容を確認し、きちんと内容が契約に盛り込まれているかというところの確認及び推進を行っています。ちなみに、今はいろんなタイプのコンビニ収納、払込票のコンビニ収納であったり、コンビニの店頭から端末で払われるコンビニ収納あったり、最近ではスマホに直接バーコードを送って、それを持ってコンビニで払うというような、さまざまな形のコンビニ収納というのが登場はしているのですが、いずれの形にしろ、きちんと代理受領であるということを消費者、関係者にわかるような形で、そこでの表記を徹底するということも確認の一つとしております。
2のほうで、代理受領を行うに当たり領収書を交付することということで、債務が履行済みとなっている状況での二重弁済を防止するために、支払いを証明するための領収書及びレシートの交付を徹底する、こういった形での二重弁済の防止というところの取り組みを進めています。
ページをめくっていただきまして、2つ目の柱としまして、不正請求の防止ということで、委託事業者の審査において悪質事業者の排除を図ります。消費者からの相談、クレーム等に応じる統一的な窓口を設けまして、一元的な対応を行っています。こういう形で、利用者にとって安全・安心な環境を整えるために、我々協会として、それに携わられるコンビニ収納代行会社及びコンビニ本部がきちんと情報連携をしながら活動を行っているというところでございます。
あとは、ガイドラインであったりとか、不正請求防止の運用フローであったりとか、細かな規定に関しては記載しておりますが、取り組みとしてはそういう形で、今年の5月、第10回目の総会がありまして、我々の協会としては11期目に入りまして活動しているのですが、そういう活動の中で、消費者の安全・安心が確保できるかというところに関しては、きちんと我々のほうで把握をしながら業界の健全化に努めているという次第でございます。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは、討議に移りたいと存じます。どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いしたいと存じます。いかがでしょうか。小木曽メンバー、お願いします。
【小木曽委員】
新経済連盟の小木曽です。今日は、前払式支払手段と収納代行、これから2つそれぞれ意見を言いますが、大前提として、1回目のときにも言いましたが、我々の基本スタンスをもう一度明確にしたいと思います。
オブザーバーという形でスタディ・グループに参加をさせていただきまして、要望事項ということを説明させていただきました。そこで懸念事項を示しておりますので、それに対して懸念事項が払拭されているかどうか、ここが一番、最大の我々の関心事項でございます。
それから、規制制度のあり方のコンセプトを議論する中で申し上げましたのは、多様性あるサービス供給というものがゴールであると。規制の仕方ということについては極小化されるべきであり、要するに必要なものに限定して、そこに必要な規制をかける。当たり前のことだと思いますけれども、ほんとうにそういう仕組みになっているのかどうか。
それから、これだけ時代が促進をしている中で、その規制のあり方あるいは監督のあり方というものは、自主的なやり方を尊重しながら、画一的ではない形でやる、ということでございます。
今日これから述べるところは、全体を通じて安心・安全の自主的な取り組みをやっていることの歴史がある中で、今回の規制のかけ方というのが真逆な方向にむしろ走ってしまう可能性があるという懸念を述べることになります。そういう前提でお聞きいただければと思います。
引き続きまして各論を述べさせていただきます。
まず前払式支払手段です。これはサービスの性格をもう一度説明をするとともに、今日2つ前払式支払手段のサービスの事例が①、②ということで出てきましたが、この①、②が出てきた歴史的な背景みたいなものもあわせてご紹介をすると、私がこれから申し上げることがよくわかると思いますので、個別の意見を言う前に、その前提としての話をまずさせていただいて意見を言います。
現状の中で、前払式支払手段の発行業者と資金移動業者を比較すると規制の差異があるというふうに記述上あるのですけれども、我々としては、当然、両者は異なる業種なので、規制に差異があるというのは当たり前といえば当たり前の話だと考えております。なので、我々として、「違う業種の規制について厳しいところにそろえよう」という発想であるのであれば、そもそも多様な商品の提供を促していくという中で、金融のイノベーションをどう進めていくかということとは話が違うだろうと思っています。
前払式支払手段の譲渡というもののそもそもの性格論を考えてみますと、商品券であっても、あるいは電子マネーということであっても、利用方向として、他人への譲渡、これは従来からあります。別に新しい事象ではございません。今日紹介された①という方法、それから②という方法、これから歴史を言いますけれども、実は②が最初に発生して、②を受けて①が発生しております。①について、発行者が提供する仕組みの中で転々流通するというふうに記述があるんですが、これの性格をもう一度よくよく考えてみますと、あくまで事業者が提供する仕組みの中でしか譲渡できず、要するに一般的に何でもかんでも譲渡できるということではなく、加盟店でしか利用できない、それから現金化ができない、利用状況も捕捉できる、このように制限されています。そういう中で利用状況を追うことができない「現金の流通」というものとは、根本的に性格が異なると考えます。
また、事業者が提供する仕組みの中でしか譲渡できないと今私は申し上げましたけれども、発行者と無関係の売買サイトなどで取引されることを防止できるという強みはそこにはあります。その意味合いというのは、実は従来②のほうが先に歴史的にあった――参考資料の4ページでいうと、歴史的には②があって①が発生しているんですけれども、要するに②は、その発行者と無関係の売買サイト等で取引されてしまうという可能性があるので、それを踏まえて②のイノベーションとして①が発生をしている、というのが歴史的な流れになっています。だとすると、ではここに規制を強化するということは、安心・安全な取り組みを行うということとはちょっと真逆な話になってくるのではないでしょうか。後で述べるエスクローの話もそうなんですけれども、別の政策目的でこういうものをやってきたということを今回の金融の規制で再整理したときに、かえって何か逆になっちゃうという、共通する視点かなと思いますが、経済界から見ると、それはちょっとあり得ないと思っています。それが大前提です。
今言ったような歴史的経緯、それからそもそものサービスの性格論を踏まえますと、どういう結論を我々は言いたいかというと、ここの体制整備のところで、規制強化というところが示されておりますが、これには全く賛同ができないということが我々の意見でございます。
参考資料4ページの①と言っているのが、今申し上げました課題解決のために登場した新しいイノベーティブな方法です。この点に着目してどのように監督していくかというのは、これまで議論されてこなかったとは認識しています。イノベーションを促進して新しいビジネスモデルの健全な発展のために不自然な取引等検知のための体制整備が求められると、文章でそういうふうにしてはどうかと書いてありますけれども、それについては、実は事業者が自主的にさまざま活動を行っております。なので、これについて新たな法規制という形までする必要はなくて、事務ガイドライン等に監督方針で書くなどで足りるのではないかと思っております。
ここが、私が最初に言った規制制度のつくり方のところで、非画一性、非一律といったことと重なる部分あるいは自主性に委ねるといったことと重なる部分でございます。今までのが、前払式支払手段の話でございます。
次の論点、収納代行の論点です。これも収納代行の性格分け、それから規制手法のあり方をまず1点目として述べさせていただきます。それから、エスクローが例示として出されていますので、エスクローについての考え方あるいは歴史的背景ということをもう一度我々から述べさせていただいて、締めの言葉を言いたいと思います。
まず1点目、そもそもの性格論あるいは規制手法のあり方ということでございますが、まず大前提として、我々としては収納代行イコール為替取引だとは思っておりません。代理収納業者に支払った時点で原因取引の債務の弁済が終わるため、送金とは根本的に異なる、ここはいずれにしても一番重要な視点ですので、ここをもとに議論をしていくべきだと思っております。クレジットカード払いの場合など、そもそも代理収納した代金を受け取るよりも先に売主に支払うことがあるのも、またこれは実情でございます。為替取引との関係で問題視されていることについて、この前オブザーバーという形で私は出させていただきましたけれども、収納代行のところにもいろんな性格論があるだろうということがあって、それを踏まえて多分いろんな性格づけがあるねということで、多分金融庁で分類していただいたのかなと受けとめております。それを見せていただいて、原因取引と連動せず、原因取引と関係のないところで送金機能に特化したサービスを収納代行の形で行っている、いわゆる割り勘アプリというものが例示をされました。スタディ・グループの報告書でも、「こうしたサービスの「機能」が「決済」に該当することは明らか」となっています。よって、割り勘アプリのような原因取引と切り離されて、そして金銭の収受のみの収納代行というものを取り出して、そこを明確に対象として為替取引だということで規制をするというところは、仕分けとしてあると思います。ただ、そういう仕分けなので、先ほど言った規制を最小化する、あるいは極小化するというか、規制することに合理的な理由がないときに規制していいわけが行政法上ないので、当然だと思いますが、規制のやり方としては、まず規制すべきところの論点というのは、その今ご提示いただいた割り勘アプリのところというのが規制をすべき対象だろうと。なので、そこを特定する形で、表から書く形で規制することが、一番イノベーションにも沿うと思います。
エスクローだけ今例示をされましたが、エスクロー以外にもいろんな方法がこれから現実にあるかもしれないし、それからこれから起こるかもしれないということにおいて、やはり収納代行という形で全部規制をして、後で適用除外で抜けばいいという形だと、取りこぼしというか規制のし過ぎということが、仮に意図してなかったとしても規制対象になってしまう可能性があるかもしれないということです。なので、対象を明確にして規制をすべきであるというところが結論でございます。
最後に、エスクローサービスのところをお話して閉じさせていただきます。エスクローサービスは、今言ったような割り勘アプリのような特徴を持っておりません。原因取引とも連動した形でサービス提供されております。なので、為替取引ではないというふうに認識をしております。実質的に個人間送金に該当するようなものでも資金移動業の規制の潜脱と評価されるものという表現が書いてあったと思いますが、そういうものには当たらないと私は考えております。
為替取引がどうかという話とは別に、前回もそうでしたが、あるいは前のこの会議のときも議論があったと思いますが、売主が信用リスクを抱えるのではないかというご懸念については、例えば定期的に払い出しを行ったりとか、いつでも払い出しを申請できるようにしたりだとか、あるいは事業者の保持期間、事業者が持っている期間に期限を設けるなど、こういったような自主的ないろんな取り組みというのが既に行われているところでございます。もともとプラットフォーム上で取引をする消費者の保護や、安心・安全な取引をしていただくためにエスクローサービスを入れたものですから、当然こういうものでの自主的な取り組みもしながら、消費者保護のために何ができるかということをやってきたことだというふうに思います。なので、ここに過重な規制がかかった場合については、反作用というものがものすごい大きいということは繰り返し述べさせていただきたいと思います。
長々となりましたが、意見は以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして永沢委員、お願いいたします。
【永沢委員】
辻本参考人に質問させていただきたいことがございまして、挙手をさせていただきました。
本日、日本代行収納サービス協会という協会があるということを教えていただきましたが、コンビニエンスストアを中心とした協会ということですが、このような協会は、コンビニエンスストア業界以外に組織されているのでしょうか。
それが1点目でして、この日本代行収納サービス協会がほかの業界がなさっている収納代行サービスに関して、利用者保護関係の対応をしていただくことができるような可能性があるのかということが2点目の質問となります。
それから、利用者保護のための消費者相談窓口を開設されているということでしたが、先ほどのお話では、あまりトラブルがないというお話ではありましたけども、どのようなご相談、件数となっているかについてもお話を伺わせていただけたらと思っております。
それから、事務局のほうに質問なのでございますけれども、今、いろんな業態のご紹介をいただいているわけですけれども、それぞれの業態における事業者数とか、今後の事業者数の見込みといいますかを把握されているのでしょうか。何社ぐらいこういうサービス分野に存在しているのかとか、今後の、このサービス分野への参入予想などについても、もし当局のほうで見込み等をお持ちでしたらお話を伺わせていただけたらと思っております。意見は最後に、もしありましたら申し上げさせていただきたいと思います。
【神作座長】
それでは、辻本参考人、ただいま永沢委員から3つご質問がございましたけれども、お答えいただけますでしょうか。
【辻本参考人】
まず1点目のコンビニエンスストア等を中心としたというところで、先ほどの私の説明の中で、スーパーであったりドラッグストアであったりとかという拠点も広がりとしてそういう拠点の一つとなってきたという説明を申し上げたところで、ただその中で、やはりコンビニエンスストアが大部分を占めており、そこを中心とした代理収納サービスについての協会というのが、我々が今行っていることの範疇になります。ただ、いろんな広がりということで、最近のITの技術によって、ちょっと先ほども述べさせていただきましたが、ほとんどが払込票という紙にバーコードを印字して、それを消費者が持っていって払うというのがコンビニ収納における大部分にはなっているのですが、最近はスマホの普及等によって、スマホにバーコードを表示する形は、技術としては新しいものの、結局持っていく拠点としては、やはりコンビニエンスストアが中心となっているというところで、我々の協会は、コンビニエンスストア等を中心とした代理収納サービスに関しての協会ですということになります。ですから、例えば代引きであったり、そういったものとはちょっと別の協会になりますというのが1点目の回答になります。
2点目は、それを広くカバーしていく方向性があるのかというところに関しては、現状、今申し上げたとおりコンビニエンスストア等を中心とした代理収納サービスに関しての協会ということになります。
3点目の相談窓口の件数等、どれぐらいの件数が入っているかというところに関しては、月間5件未満というところで、実際、トラブルが多数起こっているというような業界ではございませんので、その問い合わせに関しても、実際の消費者の問い合わせが5件あるのでではなく、一般的な質問や、例えば事業者のほうで利用したいのだけどもどうしたらよいかというようなものも含めての5件になりますので、今回問題になっている、消費者がトラブルに巻き込まれたとかというものが5件であるというものではありません。感覚としてはごくごく少ない問い合わせだというふうに理解はしております。
以上です。
【神作座長】
永沢委員、よろしゅうございますか。
【永沢委員】
はい、この分野の業界協会は日本代行収納サービス協会以外にはないという理解でよろしいのでしょうか。業界全体を見回して、この業界の健全な取引と利用者保護を促すような、そういう全体を見て、会社同士が手を携えて動かれているような民の動きがあるのかどうか、そこら辺が知りたかっただけなのですけれども。
【守屋横断法制室長】
先ほど事務局に対してご質問いただきました収納代行の形式を利用したサービスの事業者数ということでございますけれども、申し訳ございません、現状、収納代行の形をとっておりますと、必ずしもこの資金決済法の適用を受けていないということになっておりまして、私どもも正確な事業者数というところは把握をしていないということでございます。
それともう1点、日本代理収納サービス協会のような協会がほかにはあるかということでございますが、私どもが把握している限り、こういった形で自主的にトラブルの受付でありますとか、代理受領権をしっかりと規約に明記するといったような対応をされているところは、こちらの協会さんだけであるというふうに私どもは今認識しておるということでございます。
【永沢委員】
ありがとうございます。
【神作座長】
よろしゅうございますか。それでは長楽委員、お願いいたします。
【長楽委員】
日本資金決済業協会の長楽でございます。討議資料について、丁寧にご説明いただきましてまことにありがとうございました。この討議資料の論点につきまして、2点程、協会事務局として、ご意見、ご要望を申し述べさせていただきます。
1点目でございますが、討議資料の3ページの「(2)利用者資金の保全のあり方」についてでございます。検討の方向性(案)では両論併記されておりますが、1番目のポツにおきましては、利用者が他者に前払式支払手段のチャージ残高を譲渡することで、個人間で支払手段の移転を行うような前払式支払手段については、「送金サービスに類似した性質を有している/有しつつある」との指摘も踏まえ、利用者資金の保全に関し、資金移動業者と同様に、利用者資金の「全額」の保全を義務づける必要があると考えられるとされ、また、その場合、保全割合だけでなく、保全すべき額の算定頻度についても、資金移動業者と同様の頻度とする必要があると考えられるとされています。このように利用者資金の保全義務に関し半額保全から全額保全に引き上げることや、保全すべき額の算定頻度――今は原則年2回でございますが――を資金移動業者と同様の頻度とすることは、前払式支払手段発行者にとってその事業継続に重大な影響を与える規制強化であり、以下の理由により強く反対いたします。
金融制度スタディ・グループでもオブザーバーとして申し上げましたが、前払式支払手段の利用実態は、他の決済手段と比べてその利用が少額であり、リスクの程度も小さいと考えられます。また、あくまで物品の購入やサービスの提供を受けるための前払いであり、ほとんどの前払式支払手段は利用範囲がごく限定されており、一部の広範囲に利用できるものであっても、加盟店での利用に範囲が限られております。また、ご指摘のチャージ残高の譲渡ができる前払式支払手段であっても、制度上、原則払戻し禁止のため、現金化できない以上、どこでも利用できるものではなく、送金サービスとは本質的に異なるものと考えております。
これも金融制度スタディ・グループでオブザーバーとして申し上げたことでございますが、協会の緊急アンケート結果によりますと、供託等保全義務の強化は、発行者の資金繰りを悪化させるとともに、資金調達コストの増加に伴う収益悪化などによりまして、発行者の事業継続の見直しや事業継続を困難にさせる事態を招きかねないとの意見が少なからず寄せられております。さらに、保全すべき額の算定頻度、言いかえれば未使用残高を算定すべき基準期間を、現在の原則6か月から、資金移動業と平仄がとれるように短期化した場合の発行事業に与える影響についても、協会において緊急アンケートを行っております。その結果によりますと、前払式支払手段発行者は、これまで基準期間6か月を前提に事業展開している中、仮に基準期間を短期化することとした場合、次のような点で事業に支障が生じるとの声が上がっております。例えば、前払式支払手段は、コンビニエンスストア等多数の販売代理店で販売されているところ、販売代理店経由でチャージ、有効化されたものを集計するには一定の日数を要します。また、加盟店での利用についても、特にIC型の場合、売上データが加盟店の端末に移転する仕組みとなっているところ、当該売上データの締め、算出、報告等を例えば月次から週次等にした場合、当該やりとり、数字の補正等も含めた正確性の確保には、やはり一定の日数を要するとのことです。これを短期間で行うとなると、多数の販売代理店、加盟店の事務処理やシステム対応などの負担が極めて重くなること、発行者においても大幅なシステム改修や事務処理負担が極めて増大すると言われております。さらに、供託額が多額であるため、多数の金融機関と発行保証金保全契約を締結している発行者においては、金融機関における事務負担もあり、短期間では到底対応できないとの声も聞かれます。このように加盟店、販売代理店や発行者のシステムの大幅な変更や事務処理等の大幅増加によるコスト負担増により事業継続を見直さざるを得ない、または事業として成り立たず事業継続が困難となるという意見が数多く寄せられております。
また、前払式支払手段に関する制度は、1932年施行の商品券取締法に始まり、1990年施行の前払式証票規制法、サーバー型を規制対象等とした2010年施行の資金決済法と2回の大きな改正がございましたが、半額の保全義務についてはそのままであり、発行者はこれまで半額の保全義務を前提に、利用者ニーズを踏まえ、創意工夫により多種・多様なビジネスモデルを設計し、少額で身近な決済手段として消費者の利便性の向上等に努めてきております。
こうした中、供託等保全義務の半額保全から全額保全への引上げや基準期間の短期化は、発行コストの増加を招き、利用者の利便性を損なわせるおそれがあり、また、イノベーションの促進も阻害しかねず、ひいては少額決済の担い手である前払式支払手段発行者の新規参入や既存発行者の事業継続が困難となり、これまで拡大してきた便利な少額決済サービスの発展が阻害されかねないことにもなり得ると考えます。
こうしたことを踏まえますと、供託等保全義務の強化及び基準期間の短期化は、政府が強力に推し進めているキャッシュレス社会の実現にも支障を与えかねないものにもなり得ると考えます。
次に、2点目でございますが、討議資料2ページから3ページの「(1)前払式支払手段を対価とする不適切な取引への対応」についてでございます。検討の方向性(案)では、例えば、発行者が提供する仕組みを通じて、他者に前払式支払手段のチャージ残高を譲渡することにより、個人間で支払手段の移転を行うようなものについては、発行者に対し、公序良俗を害するような不適切な取引に使用されることのないようにするための対応を求める場合の具体的な対応として、例えば、譲渡可能なチャージ残高の上限設定や、繰り返し譲渡を受けている者の特定など、不自然な取引を検知する体制整備が考えられるとされています。
第三者型の前払式手段発行者に対しましては、資金決済法第10条第1項第3号において、前払式支払手段の使用により販売、提供される物品・サービスが公序良俗を害しまたは害するおそれがあるものでないことを確保するために、必要な措置を講じることとされ、事務ガイドラインにおいても、加盟店の審査・管理に当たっての主な着眼点が示され、加盟店管理体制を整備することが求められております。
一方、検討の方向性(案)においては、個人間で前払式支払手段を対価として禁制品を引き渡すという不適切な取引に使用される例が示されていますが、発行者は、前払式支払手段が加盟店の中で使用される場合には、当該加盟店が公序良俗に照らし問題のある業務を営んでいないか確認を行い、問題があることが判明した場合には契約を解除するなどの適切な措置を講じることができますが、当該前払式支払手段が発行者の審査・管理が及ばない加盟店の外、例えば個人間で取引される場合にまで、発行者に対し不適切な取引に使用されないような対応を求めることは難しい面があるものと考えます。前払式支払手段が不適切な取引に使用されないようにするため、例示されている譲渡可能なチャージ残高の上限設定等を求める必要性があるかどうかについて議論をするに当たっては、規制等の必要性を根拠づける具体的な立法事実があることが前提であり、具体的な立法事実を明らかにする必要があるのではないかと考えます。
現在、複数の発行者において、利用者のニーズを踏まえた上で、チャージ残高の譲渡ができる前払式支払手段を提供しており、チャージ残高を譲渡するタイプのものは、無作為に転々流通するものではなく、アカウント保有者の間でしか譲渡されないものであり、かつ、譲渡の履歴を捕捉しやすいという特徴があり、不適切な利用がしにくいように工夫された仕組みとなっていると聞いております。それにもかかわらず、具体的な立法事実が明らかでない中、例えば、チャージ残高の上限設定を行う等の法規制を設けることは、当該前払式支払手段の特性や、利用者にとっての利便性を損なうおそれがあるほか、イノベーションの促進を阻害しかねないことにもなりかねず、慎重な検討をお願いいたします。
以上でございます。ありがとうございました。
【神作座長】
どうもありがとうございます。それでは、坂委員、どうぞ。
【坂委員】
ありがとうございます。なかなかいろいろ厳しい意見が出ているという印象ではございますけども、忘れないうちに1点。先ほどの辻本参考人のご指摘の中で、相談案件が5件というお話がございました。これはおそらく、いろんな問題が生じたときに、決済手段のところに相談が行くかどうかという問題があって、原因関係にいろんな問題がある場合には、そちらのほうの苦情の窓口に行く場合が多いんじゃないかと思います。検討の必要があると思うのは、規制が薄い決済手段がそういったものに使われやすいというところがあるので、そういったところで問題が生じていないかどうかについては慎重に検討する必要があると思います。これが1点です。
以下、この討議資料に基づく形で順番に意見を申し上げたいんですけども、まず、討議資料2ページの前払式支払手段を対価とする不適切な取引への対応というところです。これについては、基本的には、技術の発展によって利用者の利便性が高まる反面で、前払式支払手段の譲渡によって公序良俗を害する不適切な取引を行うことが容易になっている、そういったリスクが高まっている状況にあるということを踏まえる必要があると思います。利便性の反面で、拡大するリスクに対応することは制度上の重要な課題であって、転々流通する前払式支払手段について不適切な取引に使用されない対応を求めるということは、これはぜひとも必要だというふうに思っております。特に今後、不適切な取引への悪用の手口が高度化していくであろうということからも、不自然な取引を検知する体制整備は、継続的な発展、イノベーティブな取り組みを期待したいというふうに思うところです。
先ほどのお話ですと、各社でいろいろな対応をされているということがあるようですので、そういったことも踏まえて、できるだけ実情を踏まえた規制枠組みをつくっていく必要があるのではないかと思います。規制の必要性については、これは対応している事業者さんのほうはそれでやっていただけていると思うのですけれども、心配なのは、対応をしていただけない事業者が出てくると、そこで問題が生じるということですので、そういった観点からも、ぜひとも規律が必要ではないかと思います。
この点については、おそらくマネーローンダリングの対策の観点からも対策の必要性があるのではないかという議論もあろうかと思います。そういった観点からも検討が必要かと思います。
それから次に、3ページの利用者資金の保全のあり方ですけども、ここは私は基本的には、全額の保全を義務づけるべきであると考えておりますけども、保全制度のあり方ですとか、あるいはその適用範囲については、これは検討が必要と思っております。
保全の制度については、現行の制度枠組みだけではなくて、できるだけ事業者及び利用者双方にとって利用しやすい保全制度、できるだけ事業者に負担の少ない形で、確実に利用者の資金が保全される、こういった制度を検討するという視点も必要かというふうに思います。
例えば、分別管理預金に利用者の優先弁済権を認めて、監査や報告制度による第三者監視機能を組み合わせることもその一手法ではないかと思いますし、このほか、事業者が分別管理預金を自己信託して分別管理自己信託預金とすることによって、他の債権者から保全するという方法も考えられるのではないかと思います。信託業法との関係の整理が必要ですけども、前払式支払手段の登録業者による分別管理目的の自己信託に限定して許容するということは、検討されていいのではないかと思います。ただし、優先弁済権や自己信託も、事業者による流用を防止する観点からは十分ではないので、第三者の監視機能を確保することが重要であって、監査や報告制度が効率的かつ実効的に確保されることは必須というふうに思います。こうした制度のあり方についても、イノベーティブな観点からの検討が求められているように思います。
次に、全額保全の対象範囲なんですけども、第三者型でIC型、サーバー型に該当するものについては、転々流通しないものも含めて全額保全を検討すべきなのではないかと思います。第三者型では、基本的に発行者は利用者から前払いの資金を受け入れて、その資金をそのまま加盟店に払うといった経済的な仕組みになっていると思います。利用者は、基本的に自ら預け入れた資金が発行者において適切に管理をされ、自らの使用に伴って加盟店に支払われるということを期待している。その資金が事業者の運転資金等に使用されることは通常想定していないと思います。このあり方は、転々流通しないものにも共通であって、転々流通しないものも含めた保全というものが検討されるべきと思います。
次に収納代行です。収納代行については、4ページの中で、対象を、債権者からの委託を受けて債務者から資金を収受すること、それから資金を債権者に移転することというふうに限定をしておりますけども、これ自体は理解できるところであります。また、収納代行業者が債権譲渡を受ける形で債務者からの資金を債権者に移転する場合、これも経済的な効果は同じですので、法形式ではなくて経済的な機能に即して制度枠組みを検討すべきという観点からは、この場合も収納代行として捉えるべきと思います。
5ページの債権者が事業者である収納代行についてですけども、これについては、基本的に資金決済法上の適用を行う必要性は必ずしも高くないという指摘がされておりますけども、ここは慎重に検討すべきところはあるかとは思いますけども、検討の方向性としては理解できないわけではございません。また、できるだけ法概念の横断化を図っていくという観点から、事業者の定義について消費者契約法の定義によるという方向性も理解できるところではあります。ただ、中小零細事業者が保護されなくてよいかどうかという点については、少々引っかかるところでございます。
それから次に、6ページの個人間の収納代行で、これはご議論のあるところかと思いますけども、先ほどもありましたとおり、割り勘アプリについては、これは基本的に資金の移動以外の何物でもないと思いますので、為替取引に関する規制の対象というふうに明確化することは必須かというふうに思います。
問題は、エスクローでございますけども、6ページの下のところから紹介されている意見について幾つか申し上げたいと思います。
まず、6ページ下から2つ目のポツのところで、政策判断が必要というご指摘がございます。政策判断が必要な面はあると思いますけども、利用者が求めているのは、不安のある利便性ではなくて、あくまでも安全・安心が満たされた利便性やサービスであるという点は、これは重ねて強調しておきたいというふうに思います。
それから7ページの3行目、この間重大な被害は生じていないという指摘がございます。この点は慎重な検証が必要であるというふうに思いますけども、少なくともこの10年ぐらいの間に、デジタル化の進展によって重大な被害が生じるリスクというのは高まっているということも見る必要があるかと思います。10年前は、コンビニ収納代行にしても運送業者による代引きにしても、それなりの体制や設備を伴うサービスでありましたけども、デジタル化によって、より容易に収納代行サービスを提供することができるようになってきています。必ずしも体制が十分でない事業者がサービスを拡大して、広範な被害を招来させるというリスクは高まっているように思われます。先ほどのお話もありましたけども、業界団体として自主規制がどの程度効きやすいかどうかというところも気になるところでございます。
こうした観点からしますと、エスクローサービスについて、エコシステムへの配慮というのは必要かと思いますけども、この7ページの3つ目のポツにありますとおり、あくまでも利用者の保護が適切に図られることが前提とされるべきというふうに思います。
このことを申し上げた上で、検討の方向性ですけども、7ページの2つ目の丸について、方向感覚としては基本的には理解できるところではありますけども、1点気になる点がございます。エスクローサービスにおいても、重要なのは利用者資金の保全であって、問題は、収納代行業者のもとで債権者の資金が適切に保全されるかどうかではないかというふうに思います。収納代行業者において債権者資金が適切に保全されれば、規制の必要性は高くないというふうに言っていいと思いますけども、保全措置が不十分な場合に、規制の必要性が高くないと言えるかどうかは相当疑問のあるところでございます。
そこで、この③の項目については、利用者資金を適切に保全する措置がとられているという点を加えることを検討すべきではないかというふうに思います。そうでなければ、保全に懸念がないということを何らかの形で確認をすることが必要なのではないかと思います。
それから、規制の枠組みのあり方についてなんですけども、エスクローであっても、資金の受け手である債権者にとっては資金が確実に手元に届くことはサービス契約関係の重要な要素であろうかというふうに思います。送金サービスについて、純粋な送金と、物品や役務の対価としての送金を別の法体系とするという考え方というのも、あり得なくはないかもしれませんけども、少なくとも、現行の資金決済法は、資金の出し手の依頼による送金サービスについては両者を区別していない体系となっていると思います。確実な送金や利用者資金の保全等が両者に共通することによるものであるというふうに思います。
とすれば、そういった枠組みを前提とした形で適用対象になるものと、それから適用対象から外すべきものを切り分けていくということが必要であって、その明確化というのが求められているのではないかと思います。
最後に、8ページのその他検討すべき点ですけども、気になっている点が2つございます。
1つは、収納代行について、債権者のアカウントで資金が滞留するようなことが生じるようなときには、これは出資法との抵触の問題が出てくるだろうと思います。これが1点。
それからもう一点、資金決済法の規制対象とするかどうかとは別に、犯罪収益移転防止法の対応をどうするかというのは、これは別の観点から検討すべきではないかと思います。マネロンリスクの有無や程度の観点から、慎重な検討がここでは必要かと思います。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは続きまして、加毛委員、お願いいたします。
【加毛委員】
ありがとうございます。資料1について幾つか申し上げたいことがあります。それに関連して、辻本参考人、小木曽委員、長楽委員のご発言の関係について、お伺いしたいこともあります。
まず、「前払式支払手段を対価とする不適切な取引への対応」についてです。資料1の2ページでは、前払式支払手段に対する規制の要否について、チャージ残高の再譲渡が予定されているか否かに基づいた区別が提案されています。しかし、チャージ残高の再譲渡の可否が規制の要否を考える切り口として適切であるかには疑問があります。おそらく小木曽委員とは異なる方向性の発言になると思いますが、規制の要否を考えるうえでは、当該前払式支払手段がどの程度広範囲の取引に受容されるものであるかを考慮すべきように思います。広範囲の取引に受容されるものであるほど、利用者にとっての利便性が高まり、それゆえに不適切な取引への対処が必要になると考えられます。資料1の2ページのような切り口に基づいて規制対象を区別することには疑問を感じるところです。
次に、前払式支払手段に関する規制が必要であるとされた場合について、資料1の2ページから3ページ目では、不自然な取引を検知する体制整備の必要性が指摘されています。先ほど、小木曽委員からは、前払式支払手段は事業者の提供する仕組みの中でしか利用することができず、事業者が利用者の用途を把握できることが指摘されました。長楽委員も同様のことを指摘され、前払式支払手段が不正利用されにくい仕組みを有することを強調されました。その一方で、長楽委員からは、不自然な取引を検知する体制整備に関して消極的な発言もございました。しかし、利用者や用途を適切に管理できるから規制は不要であると主張される一方で、適切な管理に必要とされる体制整備についてコスト面での問題から導入に反対されるというのは、矛盾しているように思われます。坂先生のご指摘にも関連するかもしれませんが、実現すべき目的は適切な取引の確保であるわけで、技術の進展に伴い、その目的を技術面での対応で達成できるのであれば、法的規制というより、技術面での対応を重視するという考え方はあり得ると思います。しかし、この間の事業者サイドの委員のご発言を伺っていると、そのような技術利用について、どの程度積極的に考えていらっしゃるのかに疑問を感じた次第です。
なお、体制整備の問題に関しては、事務局に対する質問があります。仮に技術的にみて事業者が不自然な取引を検知できるとして、不自然な取引が検知した事業者はどのような対処を採ることが想定されているのでしょうか。先ほども話題になりましたが、事業者と加盟店との関係では、加盟店契約を解除するという対応が予定されていると思います。他方、事業者と利用者の関係については、前払式支払手段に本人確認が要求されないこととの関係で、不正な取引を検知できても、利用者個人を特定することはできないのではないでしょうか。不正な取引が検知された場合の事業者の対応について教えていただければ幸いです。
続いて、「利用者資金の保全のあり方」についてです。資料1の3ページでは、前払式支払手段について資金移動業の場合と同様の規制を課さない根拠として、「(ⅰ)現金化不可で、(ⅱ)使途が限定された、(ⅲ)半額保全を前提とするもの」であること、という3点が挙げられています。しかし、3点目は、規制を課さない根拠として挙げるには不適切だと思います。これは、現在規制が課されてないので、今後も規制を課さない、というようなものであり、規制の要否を検討する際に採るべきロジックではないと思います。
そうすると、根拠となり得るのは、現金化ができないことと使途が限定されていることになりますが、先ほど申し上げたように、前払式支払手段がどの程度の範囲の取引に受容されるかという点が重要だと思います。たとえ現金化ができないとしても、広い範囲の取引に受容される前払式支払手段であれば、換金性の高いものを買ってそれを売るという方法や、前払式支払手段のアカウント自体を売却するという方法によって、実質的には現金化が可能であるといえます。それゆえ、資料1の3ページに挙げられている根拠に基づいて規制の要否を考えることが妥当であるかに疑問を感じます。紙型の前払式支払手段や自家型の前払式手段については、現行の規制を維持することは考えられますが、「第三者型」で「IC型」や「サーバー型」の前払式支払手段についてまで、ここに挙げられた根拠に基づいて現行規制の維持を正当化できるかは疑わしいと思います。
最後に、収納代行のエスクローサービスについてです。本日の事務局説明や小木曽委員のご発言では、原因関係との関連を根拠として規制の必要性が否定されるとの指摘がありました。しかし、はたしてそのように言えるのかには疑問があります。むしろ、原因関係の存在によって、単なる決済サービスとは異なる利用者保護の要請が生じるとも考えられます。例えば、資料2の9ページの右側の図の「④商品発送」について、仮に発送された商品に問題があったとすると、売主・買主の売買契約は解除されたり、取り消されたりすることになると思います。その場合、「②代金支払」として、買主が既に事業者に支払った代金に関して、事業者は買主に対して代金相当額の返還義務を負うことになります。その結果、買主は事業者に対して債権を有することになり、事業者の倒産リスクを負担することになります。このことは、たとえ事業者が弁済受領権限を有していたとしても変わりません。それゆえ、資料1の7ページでは、エスクローサービスに関する規制を不要とする要件として「② 債務者から資金を収受したときに当該債務者の債務が消滅することが契約上明らかであること」が挙げられていますが、買主が事業者の倒産リスクを負わないという観点からは、この要件が充足されるだけでは十分でないことになります。つまり、原因関係との関連性を強調することは、規制を軽くする方向ではなく、むしろ買主保護のために規制を重くする方向に作用しうるわけです。
もっとも、このような観点からは、辻本参考人が紹介された不正請求に対する取り組みが一定の意義を有すると考えられます。不正請求への対処は、買主が不正な取引に巻き込まれないようにする目的で行われているのだと思いますが、契約が事後的に効力を失うことによって、買主が事業者の倒産リスクを負担するという事態を避けるという意味をも有すると考えられるからです。
こうして、買主保護について一定の措置が採られていることを前提とすれば、最終的に問題となるのは、事業者が受け入れた資金をどれだけ早く利用者に払い出すか、という点になるように思います。売主による事業者の倒産リスクの負担との関係では、資料2の9ページの右側の図の「⑤商品到着の通知」と「⑥代金受渡」の間の期間を、どれだけ短くできるかが問題となります。買主による倒産リスクとの関係では、契約が解除されてから、代金相当額の金銭が返還されるまでの期間を、どれだけ短くできるかが問題となります。エスクローサービスが利用者に利便性を提供するものであることに疑いはありませんし、そのような利便性を享受する利用者が一定のリスクをとるという議論も理解できます。しかし、それと同時に、事業者の倒産リスクを極小化するような取り組みが、どの程度可能であるかを確認する必要があると考えます。事業者が受け入れた資金を利用者に払い戻すのにどの程度の時間が必要とされるのか、また利用者になるべく早く事業者からの払戻しを受けるようにさせるためにどうすればよいのかなど、実態にかかわる問題といえます。これらの点を議論したうえで、エスクローサービスの規制の要否を検討すべきものと思います。
【神作座長】
ありがとうございました。1点事務局に対するご質問があったと思います。不自然な取引を検知した後にどうするのかということでございますけれども、お答えいただけますでしょうか。
【守屋横断法制室長】
ご質問いただきました不自然な取引を検知した後の対応でございますけれども、例えばでございますけれども、その不自然な取引をした当事者のアカウントを停止するとか、そういったものをイメージして記載しておるということでございます。
【加毛委員】
坂先生が指摘されたマネーローンダリング対策にも関連しますが、前払式支払手段では本人確認が前提とされないため、誰がアカウントの保有者であるかを特定できないのではないでしょうか。保有者が誰であるかが明らかでないとしても、不正取引に利用されたアカウントは凍結するという対応を想定されているということなのでしょうか。
【守屋横断法制室長】
ご質問の点ですけれども、「繰り返し譲渡を受けている者の特定など」というふうに表記させていただいていますが、この「特定」の部分で、例えばですけども、アカウントにチャージをする銀行口座でありますとかクレジットカード、あるいは携帯番号のようなものが紐づいている場合には、その段階で本人確認がなされているということで、そういった形で特定できるのではないか、そういったことをイメージしておるということでございます。
【神作座長】
よろしいでしょうか。それでは後藤委員、お願いいたします。
【後藤委員】
どうもありがとうございます。また前回欠席をいたしまして申し訳ありませんでした。前払式支払手段と収納代行についてそれぞれ幾つかコメントさせていただきたいと思います。
まず、前払式支払手段の今の不適切な取引というところですけれども、私も加毛さんと同感でして、再譲渡できるかどうかということがどれほど意味を持っているのだろうかという疑問を持っております。例えば振り込め詐欺などでギフトカードの番号をメールで送れというような形があるというふうに聞いておりますので、むしろ①よりも②のほうが不適切な取引に利用されるリスク、不適切な取引というより詐欺そのものですけれども、リスクが高いのではないかと思います。それはなぜかというと、番号のやりとりを匿名性が高い状態で行うことができるからでして、これに対して①は、最初に小木曽さんからご指摘がありましたように、誰が取引したのかわかる訳ですので、そんなところで危ないことをする人はあまりいないだろうと思われます。そうすると、①を規制して②を規制しないというのは非常にアンバランスではないかというように思っております。もちろん、一番匿名性が高い取引手段は現金ですけれども、それを受け渡すためには物理的に誰かが受けとらなければいけないという点に不正行為をしようとする人にとって大きなリスクがあるわけですので、そういう意味では、番号の情報だけ電子的にやりとりするという形で、それも偽名でのメールアカウントでできるんだとすると、②が一番不正行為に使われる危険性が高いと思われます。
そうしますと、もちろん①についてもリスクがゼロではないとすると、何らかの体制整備を要求するということは、それはそれで結構なことかと思いますが、②についても同じく何か考えたほうがよいのではないかと思います。例えばギフトカードをコンビニで買ってそれを送れということを繰り返していると、そのギフトカードをどこかのアカウントに最終的にチャージをするわけですけれども、そうすると、短期間でやたらとチャージを繰り返しているアカウントについては、①について挙げられているのと同じような仕組みを考えることができるように思います。もちろん、そういうことをやると受領側のアカウントを分散するとかいろいろやるのかもしれませんが。
次に、利用者資金の保全のあり方のところですけれども、これも先ほど加毛さんがおっしゃっていたことに全く同感でして、半額保全を前提とするかどうかを今議論しているときに前提となっているからというのはトートロジーにすぎないような気がしております。現金化の範囲や、また長楽委員からご指摘がありましたけれども、これからキャッシュレス社会が進むとすると、ますますその利用可能範囲も広がっていくことが考えられるわけでして、キャッシュレス社会が進むからこそ、その保護をどうするかということは真剣に考える必要があるのかなという気がしております。
その一方で、この2つ目の「他方」というところで書いてあるお話は、表現はあまりよろしくないかもしれませんけれども、業者の既得権益があるんだから守ってくれということですが、今まで事業を拡大してきて国民に利便性を提供してきたわけですから、こういう意見も軽々しく無視すべきではないだろうとも考えております。これまでの歴史的経緯があり、また今まで社会的に問題となるレベルの大きな弊害は起きていないとしますと、そのような形で事業、サービスを提供してくれていた事業者の利益と、利用者の利益、特に事業者の倒産リスクから利用者の資金をどう守るかということとのバランスをどうとるかという問題になってくるのかと思います。
この点につきましては、先月欠席をしてしまいましたけれども、資金移動業者についても同じような問題があるわけでして、そちらでは受入額を少額に限るという形で限定することによって、その範囲では利便性をむしろ重視して、利用者にはむしろ自己責任で限定された額での利用をするという第3類型を認めることが提案されていたところでございます。3ページの下のほうでは、前払式支払手段については本人確認義務がないので名寄せができないから、そういうことはできないのではないかということが書かれているわけですけれども、例えば交通系のICカードで無記名のものを複数枚持っている人は、それも自己責任でやっているのだというような評価も十分可能であろうと思いますので、一種の割り切りとしまして、1枚当たりの限度額が設定されるような少額類型を設けて、それを複数個持つ場合には、それはもうその人の自己責任として処理してもよいのではないかなというような気が私はしているところでございます。完全にネット上のアカウントで行われる場合にも、アカウントをつくるためにはおそらく携帯の番号かメールアドレスが必要になってくると思いますが、これをわざわざ用意してまでアカウントを複数個持つ人についても同様の評価が可能だと思います。このような少額類型について緩和ができるのであれば、それを超えて規模が大きいものについては、規制をもう少ししっかりとかけていくという形を前払式支払手段についても導入することをもう少し考えてもいいのではないかなと思っている次第でございます。
次に、収納代行ですけれども、エスクローについて議論がいろいろありましたが、ここもほとんど加毛さんと同じ意見なんですけれども、物品の売買とリンクしているからということは、ここでの問題の本質ではないだろうと考えています。物品の売買とリンクさせることによって、同時履行が事実上可能になるというのは、エスクローがそういう場合に便利で社会的に意味のあるサービスであるということを言っているにすぎないと思います。②で書かれているように支払側の債務が代行者にお金を渡したときに消えるとすると、トラブルがないことを前提とすると、支払い側のリスクはないと。そうすると問題は、受け取り側の事業者に対する倒産リスクですが、いくらこのサービスが有用であるということを言ったとしても、この倒産リスクは消えないわけです。そうすると、資料1の7頁の①、②は重要なんですけど、③があったところで事業者の倒産リスクからは守られませんので、そこについて何かの保全を要求すべきであるという坂先生のご指摘は非常にもっともなものであるというように思っております。
問題は、その保全をどうやって確保するかというところでして、まず分別管理をしてくださいということは当然なのだろうと思っておりますけれども、ただ、それではいざ倒産した場合には十分な保護は受けられなくなります。他方で、受け取った資金とは別に営業保証金などを積むことを要求したりすると、非常に負担が重くなるという事業者の懸念も非常に理解できるものがあります。これは基本的には、受け取った資金を短期間で債権者側に渡すという取引だとすると、その短期間を保全するというときに、私が思いつく限りで一番コストが低くできるのは、受け取った資金を債権者のために事業者が自己信託をするというものです。自己信託については、坂先生がどこかの文脈でおっしゃっていたような気がするのですが、それをすることができれば、そこで少なくとも信託法上の倒産隔離が働きますので、もちろん受益者をちゃんと設定するとかということは必要になってくるかと思いますが、私法上の問題はないだろうと思います。
ただこの場合、信託を業としてやるということになりますので、信託業法との関係が問題になってくるわけですが、おそらく管理型信託業ということになるでしょうし、また、自己信託については、信託業法で緩和の措置がとられていたかと思います。先ほど確認したところですと、委任で受領したものを保全するためのものについては、さらにそこからも適用除外が信託業法の施行令でとられているようですので、その意味では、業法上の問題はあまり起きないのではないかというようにも思っております。
問題となるとすると、信託法で自己信託をするためには、公正証書を取るか、それかその他の書面でやった上で、その効力を発生させるためには、こういう自己信託しましたよということを受益者に対して確定日付のある通知をしなければいけない、多分ここが一番コストになってくるだろうなという気がします。せめてそれぐらいやってくれというふうにも思えるかもしれませんし、全て電子的にやりとりしている中で確定日付のある証書というのは大分違和感があるような気もしますので、そこについて何らかの手当てをするということは考えてもいいのかなという気がしているところでございます。
このような措置をとれば、エスクローでも全く問題はないので、規制をかける必要はないと思いますが、そうしますと、エスクロー以外の、例えば割り勘アプリであったとしても、結局問題は事業者の倒産から債権者をどう守るかということだとしますと、ここでも同じ手法がとれるように思います。飲み会の割り勘について確定日付のある通知で自己信託というのは重過ぎる感じがしないでもありませんが、このように自己信託による対処ができるのであれば、ここで資金移動業と同じ規制をかける必要はないはずですので、どれが一番事業者にとってコストの負担が小さく、かつ意味のある規制になるかということを考えていくべきではないかと思っております。
また、小木曽委員からエスクロー以外にも将来もっといろいろな収納代行が出てくるかもしれないというご指摘がありました。こういう仕組みは各種のプラットフォームサービスで、例えばクラウドファンディングなどもお金の移動がついてくるわけですので、その中で渡したお金がちゃんと行くということを確保するために使われるものと思います。このときに、先ほど申し上げた点ですけれども、物の売買にリンクしていない、もしくは同時履行でないからということは、事業者の倒産リスクからの利用者資金の保全というここでの問題の本質ではありませんので、信託だけではないかもしれませんけれども、資金の保全措置がとられていることを前提に、むしろ広く規制から外すということを考えてもいいのではないかなと思っております。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは次に、中谷委員、お願いいたします。
【中谷委員】
座長、どうもありがとうございます。IT団体連盟の中谷です。まず、収納代行に関し意見を述べさせていただきます。まず重要な事実として、インターネットオークションやフリマの運営事業者では、取引状況を常にモニタリングし、問題利用者を発見して、アカウントの利用を停止するということなどを行っております。また、評価システムというものがあり、これを通じて利用者の信用力というのを見える化、可視化しておりますが、これも安全・安心なプラットフォームをつくる基礎的な方法のひとつとしてやっております。加えて、出品者・購入者双方が住所を知らずに目的物を運送するシステムと、エスクローという決済システムをリンクさせて提供することで、さらなる安全・安心と利便性を向上してきました。エスクローにつきましては、既に小木曽委員が触れましたので、繰り返し説明はいたしませんけれども、資料1の6ページに記載されていますように、当事者間のトラブルの未然防止機能があり、債権者、債務者双方がその利点を享受している、まさにそのとおりでございますので、改めて強調しておきたいと思います。
また、過去の経緯について少し触れますと、例えば本年4月、内閣府の消費者委員会が公表した「オンラインプラットフォームにおける取引の在り方に関する専門調査会報告書」では、消費者トラブル防止のためにエスクロー決済の導入が求められているという記述がございます。さらにさかのぼりますと、警察庁が2010年に公表した「サイバー犯罪の検挙件数等について」という資料ですが、ここでは、大手事業者がエスクローを導入したことにより、2009年にインターネットオークションを利用した詐欺の件数が前年に比べて54.2%減少したという記述がございます。このようにエスクローはCtoC取引あるいはシェアリング・エコノミーを推進するに当たりまして、消費者の安全・安心を担保するという重要な役割がある、それは明らかです。先ほど他の委員から、消費者が求めているのは安全・安心のある利便性である、という意見がございましたけれども、まさにそれと一致するものであると思います。
決済サービスとしてのエスクローを原因とする重大な問題は発生していない現状において、エスクローの提供を困難にするような規制、すなわち未達債務の全額保全などの規制を課しますと、安全・安心と利便性とのバランスがとれた現在のエスクローが使えない取引が多くなってしまい、結果として消費者の安全・安心と利便性を損なう可能性が出てくることを懸念しています。
一方、今回の会議資料に掲載されている割り勘アプリについては、前身のスタディ・グループである程度の方向性が出ております。これが為替取引にあたる、という解釈を明確にする意義はあるのだろうと思います。
また、利用者の資金の保全についてのご意見がいろいろとございました。現状では、スタートアップ企業が運営するプラットフォームにおいても、収納代行やエスクローが提供されております。保全の初期費用やランニングコストが高く、あるいは手続や規制対応が煩雑ということになり、スタートアップ企業が収納代行やエスクローを提供できなくなるのではないかということを危惧しています。そうなりますと、結局、スタートアップ企業が提供するプラットフォームの安全性、安全・安心を阻害する可能性というのも否定できません。現在、収納代行業者の破綻により大きな被害が生じた事例というのはないわけですので、利用者あるいは事業者の双方に負担がかかるような規制を導入する必要があるのかどうか、慎重な検討をする必要があると考えます。
2つ目、前払式支払手段についての意見でございます。これについては、3つの点から意見を述べたいと思います。
1点目は、資金移動業者との違いでございます。これは資料1の3ページに記載がありますとおり、前払式というのは、一旦チャージされますと、加盟店でしか使うことはできません。しかも、払い戻し、現金化ができませんので、資金移動業とは大きく性質が異なります。
2点目ですが、前払式の存在意義です。現在、日本のキャッシュレス比率というのは約20%前後と、各国と比べて非常に低い状況にある中で、個人情報漏えいの不安をあまり感じずに手軽に利用できる前払式は、キャッシュレス推進に大きく貢献するものと考えています。また、クレジットカードからは、与信枠の現金化を防ぐという理由から、資金移動マネーへのチャージはできない現状にありますので、資金移動の登録をした事業者にあっても前払式マネーを残す必要がある現状にあります。そういう意味で、前払式の譲渡の存在意義というのは大きいと思っています。
最後、3点目ですが、経済的なインパクトでございます。保全額を半額から全額にするということは、事業者にとって非常に大きな影響があります。現状では前払式支払手段事業者の破綻を原因とする社会的な問題がないという状況の中で、従来の倍のお金を眠らせるということを義務づける、経済的なインパクトのある規制は、やや規制の合理性を越えるものではないかと思います。現時点におきましては、性急に制度整備を図ることなく、将来の課題として考えておくことが重要と思います。
以上です。
【神作座長】
ありがとうございます。それでは萩原委員、お願いします。
【萩原委員】
ありがとうございます。全銀協の萩原でございます。
まず、前払式支払手段も収納代行も決済手段だということが前提にありまして、利用者にとって決済というのは目的ではなくて手段である。やはりできるだけリスクを意識せずにご利用いただけるよう、安心・安全な環境を整備することが不可欠で、それを前提にイノベーションをどう促進していくかという視点が必要ではないかと考えております。この観点から、コメントさせていただきます。
まず、前払式支払手段につきましては3点コメントさせていただきます。
1点目は保全でございます。この点については既に何人もの委員の方からもご指摘がございましたが、保全というのは、手段を提供している事業者の破綻時に生じ得る利用者への影響という観点で検討すべきだと思います。討議資料にございます送金サービスに類似した性質を有している/有しつつあるものについて、資金移動業との整合性を考えて全額保全とするという考え方もあるとは思いますが、本来は同一リスクに対して同一規制を考えるということがあるべき姿だと考えております。したがいまして、送金類似サービスというものに限らず、第三者型のIC型・サーバー型の電子マネー全体に共通して、破綻時に生じ得る利用者への影響という観点で検討すべきではないかと思います。そのように考えた場合、前回、資金移動業の第三類型、小口送金の際にも申し上げましたけれども、前払式支払手段のような、小口であっても大規模に業務を営んでいるような場合には全額保全すべきだと考えております。
2点目は表示義務の点でございます。現行事業者への影響を勘案しまして2分の1保全が残るということも、政策判断としてあり得ると思いますが、その場合は、全額保全ではないということを分かりやすく表示する義務を課すべきだと考えております。この点については、銀行界として自省も込めてコメントさせていただきますが、私ども銀行でもリスク性商品を販売する際、元本保証ではないということについて説明を尽くしたつもりであったとしても、損失発生時に元本保証と誤認していたというご意見をいただくことがゼロではございません。もちろん、その理由の大宗は、私どもの説明が不十分だったということだと思いますが、そもそも銀行が販売している商品は元本保証だということが念頭にある方が少なからずいらっしゃるということもあると思っております。
冒頭申し上げましたとおり、利用者にとって決済は目的ではなく、手段でございますので、決済手続で損害を被ることがあると認識している個人はほとんどいないと思っております。したがいまして、表示義務というのは極めて重要な論点だと認識しております。
表示義務という点で付言させていただきますと、現行法上、利用者資金の保全範囲や保全のラグ、保全方法などが表示義務の対象となっておりませんので、これを機に、前払式支払手段について資金移動業とともに情報提供義務の導入・充実ということを検討すべきではないかと考えております。
3点目、こちらは利用者資金の転用・流用のリスクでございます。これは金融制度スタディ・グループ第11回の時だったと思いますが、前払式支払手段について一部委員の方から、「2分の1しか保全していないとすると、残りは分別管理されているのか」や、「流用してもいいという形になっているとすると問題ではないか」という意見があったと認識しております。こちらについては、一度、実態を調査していただいた上で、破綻時の利用者資金の保全が徹底されていないという事態を未然に防止する観点から、利用者資金の流用の制限についても検討いただければと思います。
前回のワーキング・グループで資金移動業と貸金業の兼営における資金流用懸念について申し上げましたけれども、こちらについては前払式支払手段も同様でございます。諸外国の例を見ますと、アクティビティーベースのレギュレーションを導入したシンガポールでは、資金滞留が認められる電子マネー発行業には貸出業務に従事することを禁止し、また、利用者資金を自社の事業資金として流用することも制限していると承知しております。
最後に、収納代行について1点だけコメントさせていただきます。既に倒産リスクについて多くの委員の方からコメントがございましたので、私からは1点だけ、それ以外のことでコメントさせていただきます。先ほど小木曽委員からもお話があったと思いますが、収納代行では今後も、本日取り上げられた類型以外にも様々な新しい商品・サービスが出てくると考えられます。収納代行業者は、現在、登録制などの規制が掛かっていないこともありまして、その動向は非常に掴みにくい状況にあると思います。したがいまして、少なくとも今回の報告書には、「引き続き動向を注視し、必要に応じて対処していく」というような文言を明記することが必要ではないかと思っております。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。それでは続きまして舩津委員、どうぞ。
【舩津委員】
ありがとうございます。後藤委員、それから加毛委員とほぼ同じような考えを持っているわけですけれども、少し違う観点から申し上げたいと思います。もしかしたら同じことを言っているのかもしれませんが。
討議資料2ページに示されておりますように、前払式支払手段の第三者型でIC・サーバー型というものについては、チャージ残高を譲渡するということで個人間の支払いの移転ができるということで、①という類型が挙げられていますけども、この①類型というのは、やっぱり経済機能としては、とりわけキャッシュレス決済が進むことを想定した場合には汎用性が高い決済手段という意味で現金に極めて近い価値が移転しているということになって、為替取引と評価して差し支えないと思われます。そうすると、前払式支払手段のうち、そういった性質のものと資金移動のすみ分けというのが問題になるのではないかと思います。
前払式支払手段については歴史的経緯もありまして、資金移動業と比較してかなり規制のばらつきがありますので、これをどこまでそろえるべきか、また、差異を残すとしたら、それはどこまで、どういう理由で正当化できるかというのが問題になるかと思います。
大きな話になりますけども、スタディ・グループの基本方針というのは、同一機能には同一の規律ということかと思いますけども、そこでの機能を抽象的な経済的効果だけを見てしまうと、結局のところ全て銀行免許が必要だというふうな誰も望まない規律になってしまいますので、したがって、同一機能という場合には、特定の規制は所与とした上でその機能を考える必要があるかと思います。
前払式支払手段と資金移動業という二類型を今後も維持するということを前提といたしまして、では、この両者の差異のうち、どのあたりが動かせない規制の違いなのか、要するに譲れない規制の違いなのかという点を明確にした上で議論したほうがよいように思われます。討議資料の3ページでは、(ⅰ)、(ⅱ)、(ⅲ)ということで、あまり理由になっていないというような委員の指摘がありましたけども、現金化の可否とか、使途の限定とか、半額保全といったものが資金移動業との違いということで並立して挙げられていますけども、これらの優先順位を明確にしておく必要があるように思われます。
まず、使途が限定されているという点については、事実上そうなのかもしれませんけれども、汎用性をどんどん拡大していっている現状にあって、使途が限定されている前払式を絶対に発行したいんだというような強い意思を持っておられる業者さんは、それほどたくさんいないのではないかと思います。では、現金化できるかどうかという点はどうかということになるわけですけども、これもまた顧客利便という観点からは現金化できないことが絶対に譲れない特性ではないと思われます。むしろ、先ほどお話ありましたけども、業者それから顧客両方の利便という観点から、現金化に伴う本人確認義務というのが第三者型前払式支払手段ではないということなので、それが第三者型前払式支払手段としての製品特性ということになるように思われます。その当否はともかくとしまして、仮にそういったニーズを酌むとした場合には、本人確認義務が現金化と結びついている現状が適切であるのかという点がやっぱり問題となると思います。
先ほど後藤委員からもありましたけども、今後キャッシュレス化が一層進展した後の状況を考えれば、出口に現金が用意されているかどうかというのは、もはや関係がないということかと思います。そうであれば、汎用性のある価値の移転については、資金移動業の規制に収れんさせていくというのが中期的な規制スタンスであるべきだと思います。
ただ、そうはいいましても、②類型というものにつきましては、今後キャッシュレス社会が進んでいくと、今まで紙型でやっていたような贈答について電子マネーでやるんだということぐらいはいいのかなというふうに考えれば、②類型というものぐらいは許されてもいいのかなと個人的には思うところではございます。
他方で、現在、キャッシュレス化の途上であって、なお一層キャッシュレス化を進める必要があるんだというふうに考えた場合には、業者の資金的な意味での発行のしやすさといった観点から、資金移動よりも軽い保全方法で足りるというような形が第三者型前払式支払手段の特性なのだと正面から位置づけるという考え方もないわけではないと思います。ただ、このような設計思想にした場合には、先ほど萩原委員からもありましたけども、保全方法が全く異なるのだということを利用者にわかりやすく積極的に説明するような仕組みを構築する必要があるかと思います。
保全方法に限らず、現金化の可否の違いについても、資金移動と前払式支払手段の価値の違いがあまり利用者に伝わっていないのではないかという印象を持っております。両方の支払手段を発行している業者さんはおそらく導入されていると思うんですけども、例えば前払式については、現金化を想像させるような名称は名乗れないといった表示規制といったものも考えてもいいのかもしれません。ただこれは、法制の問題ではなくて自主規制でいいのかもしれないという、そのあたりはなかなか難しいかと思います。
それから、後藤委員からもありましたけども、少額類型について、前払式支払手段の少額類型はできるのではないかということは、私も全く同感でございます。
それから収納代行についてですが、これも加毛委員、後藤委員からお話があったかと思いますけれども、原因関係から切り離されているかどうかというのは、坂委員もおっしゃっておられましたけども、資金移動ではそういったことはメルクマールとしていないということになりますので、やはり収納代行は為替取引に当たると言わざるを得ないのではないかと思います。
ただ、エスクローにしてもそうなのかもしれませんけれども、やはりそうだとしても、規制の網のかけ方として、資金移動に該当するとした上で、少額免除といいますか、少額の軽い規律で済むというような形をとるということも一つの方法ではあると思います。その点について、規制をかけるかどうか自体が討議資料の内容になっていますので、少額免除のことは書かれていませんけれども、資金移動に該当するとしても少額免除をうまく使いやすくすればいいのかなという印象を持っております。
それから最後になりますけども、一番初めに小木曽委員がおっしゃっていたことなんですけども、収納代行について、立法技術的にどういうふうに対応するのかということによってかなり規制が変わってくると思います。収納代行は基本的には為替取引だから、原則として銀行免許か資金移動業の認可が必要だとした上で、問題のない収納代行は基本的には為替取引だとしておいて、問題のない種類の取引については、BtoCの収納代行とかエスクローといったものが問題ないとすれば、それを定義してそれを適用除外にするという方法と、収納代行全般はブランクにしておいて、問題がありそうな行為類型に規制をかけるんだというふうにするのと、その二通りがあるかと思いますが、これはいずれによるかによって全く効果が異なってくると思います。よく言えば新しいタイプのサービスの出現の可能性、悪く言えば脱法行為の発生の可能性というのがかなり変わってきますので、そのあたりはかなり慎重に議論したほうがいいのかなと思っております。
ちなみに、EUはマネーレミッタンスというかなり一般条項に近い行為類型を定義して、認可対象とした上で、代理人による受領等の個別行為を適用除外にするという形をとっているということで理解をしております。
以上です。
【神作座長】
ありがとうございます。それでは次に、丸山委員、お願いいたします。
【丸山委員】
Fintech協会の丸山でございます。ありがとうございます。
本日のテーマは、前払式支払手段の譲渡や主にCtoCプラットフォームを意識した部分等のお話で、まさにイノベーションが進んできた領域のお話が論点かと思っております。このイノベーション領域は、これまでなかなかサービスがなかったものが、ここ数年、いろんなFintech等の動きもありまして、特に利便性や利得性があるサービスが広がったことで利用者が多く増えてきているというものでもあります。当然、より安全だけれども比較的コストが高いというものもあってもいいと思いますが、あくまで多様性があるということが非常に重要かと思っております。その観点から、少し前払式支払手段と収納代行、それぞれ意見を述べさせていただきます。
まず、前払式に関しまして、各委員のご意見のとおり、番号送付型のほうが実は悪用なりも起こり得る中、チャージ残高送付型はトレーサビリティーもあるということだと思っております。各社それぞれ自助努力をしておりますし、各社のサービス内容によってどういうモニタリングができるのか、どういうデータを得るのかが違いがありますので、体制整備をすべきなのは間違いありませんが、規制で硬直的にというよりは、ガイドライン等で各サービスごとに自由度を持てるというほうがより実効性があるんじゃなかろうかというふうには思います。
それから、前払式に関しまして資金の保全の件が挙がっております。まず、本日の論点である譲渡式の保全に関しましては、これは送る側も受け取る側も合意がないとアカウントを開設いたしませんので、どういうサービスか理解・合意の上で、双方が利用しているのが実態かと思います。要は電子マネーでお金を渡すのか、資金移動型のほうで渡すのかは、利用者同士理解した上でやっているというふうに理解しております。そういう意味では、電子マネーで渡されたという場合、もらう前ももらう後も電子マネーの性格は変わらないというところからしますと、現金化ができない、加盟店での利用しかできないものであるということの性質は変わらないので、ここに関して保全等の義務が強化されるというのは反対かと思っております。
あと、譲渡にかかわらず、前払式全ての保全というところでありますけども、以前も申し上げたとおり、ここは利用者の利便性、利得性の観点から、これまでのサービスの発展を阻害する部分がありますので、基本的には現状維持かと思っております。加盟店側も支払いの期待があるという中で、そこのリスクというお話がありましたが、私も加盟店に営業に行ったこともあるのですが、一言で言えば加盟店側がその電子マネー等に加盟するかどうかはシビアに判断をしていると思います。要するに、集客が期待される電子マネーなのか、信用できる電子マネーなのか、それは加盟店側がリスクという観点においても、発行体を見て判断していると思いますので、特段の規制の強化は不要ではないかなというふうには考えてございます。
続いて、収納代行の点でございます。本日の討議資料5ページに、基本的な考え方にもありますとおり、利用者保護の観点から適切な対応ができている場合は、これまでと同様の扱いとすることが適当であるという基本的な考え方があったと思いますので、我々としては収納代行はこれまでどおりの扱いと理解しております。
その中で、中間とりまとめの基本的な考え方に記載されたとおり、やはり一部資金移動の潜脱的な部分に関しては、これは明確に定義をしていくという、最後8ページ目の方向性としては、我々としては賛同させていただきたいと思っております。
一部、エスクローのような部分に言及いただいたのは大変ありがたいと思ってございます。ただ、エスクローに関しましても、これはいろいろな形態があります。必ずしもエスクロー単独という方式じゃなく、例えばマーケットプレイスとセットで提供している業態が大半ですので、そもそも出店・販売の審査をちゃんとしているですとか、総合的なリスクの押さえ方、利用者の保護の仕方をしている事業者は非常に多くあるかと思っておりますし、今後、新たなマーケットプレイスの類型も出てくる期待があるかというふうに思っております。
そういう意味におきましては、必ずしも過度な金融規制をかけてイノベーションの促進を阻害するようなことがないようにご配慮いただければというふうに考えてございます。
また、先ほど中谷委員からもありましたとおり、内閣府のオンラインプラットフォームの報告書に関しましては、むしろこういったサービスが消費者の安心・安全にもつながるという部分もございますので、特にこういったところをご配慮いただいて、過剰な規制がないようにご検討いただければと思ってございます。
私からは以上です。
【神作座長】
ありがとうございました。それでは続きまして森下委員、お願いいたします。
【森下委員】
あと5分ぐらいだと思いますから、ちょっと手短に申し上げます。
要は、ちょっとなかなか話がかみ合ってないように思うのですけれども、事業者の方は、要は今のフルスケールの規制を前提に、これがかかると大変だというような話をし、研究者のほうはどちらかというと一貫してリスクに応じたいろいろな規制の仕方があると思うので、知恵を出し合おうというふうに言っていると思うんですね。前払式支払手段にしても、紙のものからもう全然違うものまでありますし、エスクローにしてもほんとうに多様なものがあるところ、既存の非常に大ざっぱな分け方をしているルールを、そこを全く動かさないまま、それを丸ごと適用するかしないか、それを規制するかしないかというような議論を続けていたのでは、なかなかあまりいい知恵が出てこないのではないかというような気がいたします。
例えば、保全の方法をどうするかということにつきましても、例えば必ずしも伝統的な信託に限らず、まさに保全の方法がネックで、そこが変わるだけで全然変わってくるわけですから、技術ですとかあるいは多少ほかの工夫をするというような形で、何か前に踏み出していかないと、結局話がかみ合わないままの議論が続くのではないかというような懸念を持っております。
あとは、法律の研究者は大体みんな同じことを言っておりますので、繰り返すことはしないようにしたいと思います。
【神作座長】
貴重なご指摘ありがとうございました。それでは福田委員、お願いいたします。
【福田委員】
時間も限られておりますので、手短に。なかなか難しい問題は、やはりイノベーションとか利便性を促進しながらリスクをどう抑えるかという問題です。やはり既存の事業者、少なくとも厳しい規制にある業者というのは、なかなかイノベーションを起こし切れていないという現実はあって、そのなかで新しい業者がイノベーションを起こす担い手だという現状はあるという点は、認めてもいいんだろうとは思います。
ただ、今日出していただいた図も、どういうふうに見るかということで多分違ってきます。例えば最後にあるエスクローとか収納代行でも、どういう金額を念頭に置くか、金額の多寡ということをご指摘になった委員もありましたけれども、1,000円レベルの送金でこの図を見るのか、例えば何百万のような送金で見るのかで、やはり全然イメージは違うと思います。いろいろなリスクはあって、こういう仕組みをとることでほかのリスクは減っている面等もいろいろありますので、金額の多寡等を勘案してそのリスクを考える必要があるという視点には私も賛同します。
それから前払式に関する譲渡可能性等に関しても、委員からも多くご指摘があったように、どれぐらいの汎用性があるのかということはやはり大事です。これまでは日本の場合には業者が乱立しているとか、現金が依然として通用しているという現実はあるわけで、その意味で汎用性は限定的でした。けれども、これからどんどん変わっていく可能性はあります。そもそも現金化が不可だという考え方は、現金というのは法定通貨で、強制通用力があることが前提になっているんだとは思いますけれども、キャッシュレス化が極端に進んでいるような国では、むしろ現金を拒否するというようなお店も出てきたりするという国もあります。そういう世界になると、現金の汎用性もなくなって、またいろいろと議論は変わってくるということになると思います。やはり現状問題ないかもしれませんが、これからどんどん世の中が変わっていくという中で、どういうふうに問題を見ていくかという点で、将来を見据えた制度設計はそれなりには必要なんじゃないかとは思います。
以上です。
【神作座長】
ありがとうございました。続きまして加藤委員、お願いいたします。
【加藤委員】
ありがとうございます。
舩津委員のご意見に非常に共感を覚えます。本日の事務局のご提案は、資金移動業という仕組みと前払式支払手段の発行という仕組みを維持することを前提としたものと理解しています。すなわち、2つの異なった仕組みの境界にチャージ残高を譲渡可能な前払式支払手段という形態が生じたため、基本的な規制枠組みを維持するためには何らかの対応が必要となる、ということです。個人的には、前払式支払手段のチャージ残高の譲渡ができたら便利なのにと思ったことはありますが、そういった仕組みが存在することによって、我々利用者にとっても、新しいリスクが生じる可能性があるように思います。
例えば最近、セブンペイの事件がありましたけれども、不正使用として問題になったのは、第三者が正規の利用者のIDとパスワードを何らかの方法で入手して別のスマートフォンでログインし、例えばコンビニエンスストアでたばこ等の換金性が高い商品を購入する、という形であったと思います。これに対して、チャージ残高の譲渡が可能な仕組みでは、コンビニエンスストアでたばこを買う必要はなく、匿名のアカウントへのチャージ残高の移転という形で不正使用が行われるリスクが生じることになります。
また、前払式支払手段の発行者が利用者間でチャージ残高の譲渡が可能な仕組みを用意することによって、発行者が管理するシステム上で不正な譲渡が行われる可能性が生じるようにも思います。例えば、ハッカーは、前払式支払手段の発行者が管理しているシステムに侵入することによって、AというアカウントからBというアカウントにチャージ残高を移すことが考えられます。発行者に対するサイバー攻撃のリスクは現在も存在すると思いますが、チャージ残高の譲渡が可能な仕組みが採用されることによって、そのリスクがどの程度変化するのかにも注意を払う必要があるということです。
今回の事務局のご提案は、仮にそのような仕組みを採用するのであれば、発行者は、そういった仕組みに関連して生じる新たなリスクに十分な対応をして欲しい、そういった趣旨だと理解しました。別の言い方をすれば、前払式支払手段の発行を対象とする規制の内容を、チャージ残高の譲渡ができる仕組みを発行者が自主的に採用する場合には、それに対応して柔構造化する提案であると理解しております。
【神作座長】
ありがとうございました。それでは、すでに予定した時間を超過しておりますけど、最後に小木曽委員、お願いいたします。
【小木曽委員】
すみません、2つだけ。
収納代行のところは、我々としては申し上げましたが、原因取引の債務の弁済が支払った時点で終わっていますので、送金とは異なるというふうに思っていますので、収納代行全般に規制の網をかけた上で適用除外するということは、理念としてあり得ないと強く反対します。
それから、資産保全のところですけれども、これは実際にやるとした場合に、前払式でも収納代行でもどっちでも議論がありましたけれども、どういう方法を使って日々大量に行われる取引に対して、どういうふうに保全するんだというところを冷静に見て考えないと、消費者に対する利便性が悪くなるということで、誰が得をするのかわからないということになる可能性があることを強く指摘しておきます。
あと最後、ちょっと誤解がある言い方をしてしまったかもしれないので、正しい言い方をしますが、前払式支払手段の体制整備のところです。私として言いたかったのは、要するに新しい法律のレベルで、新しい法規制としてやる必要はないということを言いました。要するに、今、根拠のある条文がありますので、それに基づいて事務ガイドライン等の形で書けばいいという趣旨でございます。
以上です。
【神作座長】
どうもありがとうございました。すみません、先ほど最後にと申し上げましたけど、永沢委員、ご発言をお願いします。
【永沢委員】
私からは3点申し上げさせていただきたいと思います。
まず、前払式の保全ですけども、私は流れとしては原則という全額保全という方向で進めていくことが望ましいのではないかと思っております。お金を眠らせておくのはもったいないというご意見はとても説得力があったのですが、入金した利用者は全額が保全されていると期待するのが一般的だろうと思います。既存の事業者が事業継続が困難になるようなことは避けなくてはいけませんが、方向としては全額保全を目指すことがやはり望ましいのではないかというのがまず第1点目でございます。
2点目は割り勘アプリですが、その機能や、業者が信用リスクを負っている点を考えますと、資金移動業の一つと定義して規制をかけていくことが望ましいと考えます。
3点目がエスクローなどの収納代行ですが、規制をどう考えるかはなかなか難しい話と思います。先ほど質問をさせていただきましたが、当局がこの分野でどういう事業者が存在しているかを把握されていない状況にあることは、個人としては安心して利用できない状況です。利用者の甘えかもしれませんけれども、当局なり当局に代わるところが、この分野でどのような活動がなされているのかを把握しておいてほしいと思います。規制を入れるとすれば届出制かは思いますが、当局にあまり何でもお願いして行政の監督コストがかかることは、国民の税金を使うことでもありますので、例えば業界団体で認証制度を導入されるとか、民間で知恵を絞っていただいてということはあるのではないかと思います。森下先生が言われたように、知恵を絞って前に進めていただけたらと思っております。
以上でございます。
【神作座長】
どうもありがとうございました。私の不手際で予定の時刻を超過してしまいましたけれども、本日の討議はこれで終わらせていただきたいと思います。第1回目と同様、本日も非常に多様な意見をお出しいただきました。本日いただいたご説明やご意見等を踏まえて、引き続き審議を進めてまいりたいと存じますので、何とぞよろしくお願いいたします。
それでは、最後に事務局の方から連絡事項等がございましたら、お願いいたします。
【守屋横断法制室長】
次回のワーキング・グループでございますけども、来週10月30日水曜日、16時から18時で開催を予定しておりまして、金融サービス仲介法制についてご議論いただきたいと考えております。タイトな日程で恐縮でございますけども、どうぞよろしくお願いいたします。
【神作座長】
それでは、以上をもちまして本日のワーキング・グループを終了させていただきます。どうもありがとうございました。
―― 了 ――