金融審議会「銀行制度等ワーキング・グループ」(第6回)議事録

  • 1.日時:

    令和2年11月25日(水)10時30分~12時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「銀行制度等ワーキング・グループ」(第6回)
令和2年11月25日
  
【神作座長】

おはようございます。ただいまより銀行制度等ワーキング・グループの第6回会合を開催いたします。皆様、御多忙のところお集まりいただき、誠にありがとうございます。

本日の会合も、前回に引き続きオンライン開催とし、一般の傍聴は「なし」とした上で、メディア関係者の皆様には、金融庁内の別室において傍聴いただくこととしております。

それでは早速、議事に移ります。本日は、本ワーキング・グループでの報告書の取りまとめを念頭に置いて、経済を力強く支える金融機能の確立に向けた政策対応の方向性において、これまでの議論の全体を整理した上で、金融機関の経営基盤強化に向けた環境整備として、資金交付制度案をテーマに御議論いただきたいと存じます。

まず事務局から御説明を聴取した上で、メンバーの皆様に御討議いただくという流れで進めさせていただきます。なお、討議に当たりましては、資料2にございます、「本日討議いただきたい事項」を適宜御参照いただければと存じます。

それでは、事務局より御説明をお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

それでは、資料1に沿いまして御説明させていただきたいと思います。

1ページ目でございます。経済を力強く支える金融機能の確立に向けた政策対応の方向性といたしまして、まず金融機関は、ポストコロナの日本経済の回復・再生を支える「要」であるということ。それから、経営環境が厳しさを増す中、金融機関がそれぞれの判断の下で経営基盤を一層強化し、求められる役割を果たすことができるよう、規制緩和などを通じて幅広い選択肢を用意するという基本的考え方でございます。前回も御議論いただきましたとおり、収益力の強化、経費の合理化、金融機関の取組を支援するということで規制緩和、まさにこのワーキング・グループで御議論いただいた内容でございます。

続きまして、右側でございますけれども、合併・経営統合等、経営基盤強化に向けたその他の環境整備という右側の下のところでございますが、独禁法の特例法、今週施行されます。この施行に合わせまして、金融庁に、まずサポートデスクを設置させていただきたいと考えております。それに加えて資金交付制度を創設してはどうかということで、これにつきましては2ページ目を参照いただきたいと思います。

資金交付制度、まず目的ですけれども、人口減少地域等において、ポストコロナの地域経済の回復・再生を支える金融機能を維持するということが目的だということを明確にさせていただきたいと考えております。

対象金融機関は、合併・経営統合等の抜本的な事業の見直しを行う地銀等ということで、資金交付を受けようとする地銀等は、資金交付の申請を行う。その際に、経営強化計画を策定・提出するということで、合併・経営統合等、まさに各金融機関の経営判断だという原則を踏まえて、申請主義ということでございます。また、資金交付制度の目的に沿って業務が実施されることを確認するために、経営強化計画を策定・提出いただくということでございます。

交付額。事業の見直しに必要な追加的な初期コスト(システム投資等)の一部ということで、後ほど詳しく考え方を説明させていただきますが、上限は30億円程度とすることを想定しております。

財源は、預金保険機構の利益剰余金を活用ということで、これは金融機能強化勘定の利益剰余金ということでございます。現在、350億円程度の利益剰余金がございます。1件当たり30億円程度の支援をするということであれば、10件程度の合併・経営統合、その他の抜本的な事業の見直しを支援できるのではないかということを考えているということでございます。

監督・モニタリング。ポストコロナの地域経済の回復・再生に資する経営基盤を構築できるか審査し、5年間は進捗をモニタリングさせていただきたいということでございます。

申請期間につきましては、コロナの経済に与える影響、なかなか見通せない部分もございます。そうした点も踏まえて5年程度を確保してはどうかということで考えております。

続きまして、資料2に沿いまして、本日討議いただきたい事項を御紹介させていただきたいと思います。

1.経済を力強く支える金融機能の確立に向けた政策対応の方向性といたしまして、3つ目のパラグラフの辺りです。地銀等による経営基盤強化に向けた選択肢を拡充する観点から、①収益力の強化、②経費の合理化を規制緩和により支援するとともに、③合併・経営統合等に取り組む地銀等に対する支援策として、資金交付制度を時限措置として創設することが考えられる。資金交付制度は全体の選択肢を拡充する中の1つの選択肢として位置づけられるということでございます。

下のほうにまいります。2.資金交付制度でございます。

基本的考え方。1つ目のパラグラフを読み上げさせていただきます。

地銀等には、ポストコロナの地域経済の回復・再生を支える要としての役割が期待されている。しかし、生産年齢人口の減少や低金利環境の継続など、地銀等の経営環境は厳しく、特に人口減少地域では将来的にその役割を十分に果たせなくなるおそれがある。このため、地銀等がこうした役割を持続的に果たせるよう、規制の緩和と併せて経営基盤強化に向けた取組に対する時限の支援措置を創設するという考え方でございます。

具体的には、①、②、③、④と、基本的な視点を書かせていただいております。

①合併・経営統合等は、各地銀等の自主的な経営判断に基づくものであることを前提とする。②人口減少等により、特に経営環境に厳しい地域における貸出を含む利用者ニーズの高い基盤的な金融サービスの維持・強化を目的とする。③金融機関相互間の適正な競争環境を阻害しない。④税財源、国の一般会計税収を使用しないということを基本に検討してはどうかということでございます。

こうした考え方に基づきまして、①資金交付制度は、申請に基づく制度である。②対象となる地銀等は、地域における貸出を含む利用者ニーズの高い基盤的な金融サービスの提供において相当程度の役割を果たしており、他の機関では役割をその役割を代替できないと考える先とするということです。③支援は、合併・経営統合等に伴い必要となる追加的な初期コストの一部とし、経常的な経費への支援を行わないということであります。また、資金交付の際に、金融機関相互間の適正な競争環境を阻害しないか審査する。④財源は、預金保険の金融機能強化勘定の利益剰余金を活用するということでございます。

続きまして、(2)対象金融機関でございます。

より具体的に申し上げますと、少なくとも以下の基準を全て満たす地銀等を対象とするということで、まず1つ目のポツ、合併・経営統合等の抜本的な事業の見直しを行う。2つ目です。地域において相当程度の貸出を含む基盤的な金融サービスを提供している。3つ目、人口減少地域等を主たる営業地域とし、特に経営環境が厳しいと見込まれる。4つ目、抜本的な事業の見直しにより、貸出を含む基盤的な金融サービスを持続的に提供することが可能となると見込まれるということでございます。

続きまして、(3)経営強化計画の提出・審査でございます。

3行目辺りからです。監督官庁、金融庁等は、金融機能強化審査会の意見を聴取しつつ、当該経営強化計画により、ポストコロナの地域経済の回復・再生に資する経営基盤を構築し、地域のニーズに沿った貸出を含む基盤的な金融サービスが持続的に提供可能かどうかについて審査を行うということとしてはどうかと考えております。

3ページ目にまいります。冒頭のパラグラフの2行目の後半辺りからでございます。貸出にとどまらない総合的なサービス提供を強化する態勢構築について確認するということ。それから、次のパラグラフでございます。ITガバナンスの強化についても確認するということが考えられるということでございます。

(4)交付額につきましては、3行目辺りからでございます。

上限を設ける考え方ですけれども、人口減少等により、特に経営環境に厳しい地域において、金融機能を維持するとの目的等に鑑み、例えば、地銀等における年間のシステム関連経費や近年の合併・経営統合事例における統合費用の水準などを勘案した上で、交付額に一定の上限を設けることが考えられるということでございます。また、資金交付制度の適正な運用を確保する観点から、対象経費や交付率などを定めた交付要綱を策定・公表してはどうかと考えております。

(5)財源でございます。

資金交付の財源には、預金保険機構の金融機能強化勘定の利益剰余金を活用するということ。この金融機能強化勘定の利益剰余金は、将来金融機能強化業務を終了し、当該勘定を閉鎖する際に残余があれば、国庫納付することとなっております。人口減少地域等において、ポストコロナの地域経済の回復・再生に資する金融機能を維持・強化するとの政策目的の下、地銀等の経営基盤強化の支援策に活用させていただいてはどうかということでございます。

この点については、質問を多数いただきましたので、詳しく説明させていただきます。

まず、注4でございます。預金保険機構、現在、金融機能強化法に基づきまして、市場から調達した資金を原資として、これまで延べ36金融機関に対して資本参加をしております。この配当収入が利益剰余金になっているということでございます。

注5でございます。金融機能強化勘定は、金融機関からの保険料を責任準備金として積み立てている、恒久的な一般勘定とは異なりまして、時限的な勘定でございます。金融機能強化勘定の閉鎖は、金融機能強化法に基づき、国が資本参加する全ての金融機関から返済を受けた後に行うことになります。

4ページの注6でございます。預金保険機構の利益剰余金を活用した資金交付制度を創設するには、金融機能強化法において、資金交付の仕組みを規定するとともに、当該資金交付の業務を預金保険機構の業務として定める必要があると考えております。

先ほど申し上げたとおり、国民の皆様から納めていただいている税金を直接活用するわけではございませんが、将来国庫納付することが予定されている、いわば公的な資金を活用させていただくということで、法律にその仕組みをしっかりと規定して、国会で審議していただく必要があろうかと考えております。

続きまして、(6)監督・モニタリングでございます。

経営強化計画の履行状況について、5年間モニタリングを行いますが、仮にポストコロナの地域経済の回復・再生に資する方策の実施状況が不十分な場合には、経営強化計画の適切な履行を求めることができるという権限規定もしっかりと規定させていただきたいと考えております。

それから、(7)申請期間でございます。

先ほど申し上げたとおり、コロナ感染症による経済の影響はなかなか現時点では見通せない状況でございます。そうしたことも踏まえまして、5年程度の申請期間を確保してはどうかということでございます。

以上でございます。

【神作座長】

御説明どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの御説明を踏まえて、メンバーの皆様に御討議いただきたいと存じます。御説明に対する御意見がございましたら、併せて御発言いただければと思います。

御発言をされる際は、オンライン会議システムのチャットに全員に宛てて、御自身のお名前を入力、御送信ください。それを確認した後、私が御指名をさせていただきますので、御自身のお名前をおっしゃっていただいた後、御発言ください。

それでは、どなたからでも結構でございますので、御発言をお願いいたします。いかがでございましょうか。家森メンバー、お願いいたします。

【家森メンバー】

神戸大学の家森です。今回御提案をいただいた資金交付制度について、幾つかコメントさせていただきます。

全体として、私は国民の理解が得られるような形で組み立てられていられているのではないかというふうに考えます。2ページの(2)において、対象は地銀等とされていますけれども、この「等」には信用金庫や信用組合も含むということだと理解をしています。注3では、合併や経営統合でない場合でも対象になる可能性を残すこととされています。曖昧になってしまうようなきらいもありますけれども、経営統合に相当する抜本的な取組が行われる可能性もありますので、私は措置しておいてもよい規定だというふうに考えます。

2ページの(3)において、経営強化計画について、入り口の審査に関して、金融機能強化審査会に諮ることにも賛成です。原案に追加するとすれば、(6)にある監督・モニタリングで、交付金の返還を求めることもできるようになっていることからしても、同委員会による中間審査の機会を設けることで、より客観性が高められるのではないかと思います。その際、注の7では、合併したかだけがモニタリングの対象になっているようにも見えますけれども、その前文にあるように、計画全体の履行状況をモニタリングの対象にするということをしっかりと定めておいてはどうかと思います。

一方で、交付を受ける金融機関のコンプライアンスコストが上がり、事業の見直しに支障が出てきては本末転倒です。その際、共通化できるものは共通化しておくということをあらかじめ検討しておいてはどうでしょうか。

第1に、抜本的な対応を考える際に、金融機能強化法による資本注入を受けるという選択肢があると思います。今回、公的資金を受け入れる銀行については、資金交付制度のモニタリングと、かなりの程度共通化することができると思います。そうすることによって負担を減らす工夫ができるのではないかと思います。また今回、独占禁止法の特例法が施行されたわけですけれども、それに基づく合併と併せて本制度が使われることもあり得ると思います。統合特例法でも事後のモニタリングが定められていますので、なるべく共通化できるようにしておくと、負担が小さいのではないかと思います。

それから、4ページ(6)で、モニタリングの期間を5年としていますけれども、より一段の経営改革を妨げることがないように、過度に形式的な基準ではなく、実質的な観点でモニタリングをしていただきたいと思います。

それから、私は、科学研究費の補助金を使って、この11月に中小企業4,500社に対しての企業調査を実施しました。まだ論文を書けていませんが、この中で近い将来、貴社のメインバンクが経営統合したら、貴社は賛成ですかというようなことを尋ねてみました。消極的な賛成も含めて賛成が5割を超えており、明確に反対というのは僅か4%弱でした。つまり、中小企業の側でも、金融機関の経営統合に対しての反対は、かつてほど強くはないようです。今回御提案の資金交付制度が地域経済のために必要であることをしっかりと説明すれば、中小企業者や国民の理解も得られるものと思います。

最後に繰り返しになりますけれども、私は基礎的な金融サービスの安定的な提供や、顧客支援力の改善のために、経営統合を実現しやすくするための環境整備には賛成です。ただ、例えば当局が金融機関と中長期的な在り方について、深度ある対話を実施されていますけれども、その際に、経営統合以外の経営努力を一概に否定的に取り扱うことがないようにしていただきたいと思います。本日の資料の1節にも明確にその点は書かれていますが、念のためにつけ加えさせていただきました。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続いて、高田メンバー、お願いいたします。

【高田メンバー】

よろしくお願いいたします。御説明いただきましてありがとうございました。

今回の資金交付制度というのは、事実上の補助金でもありますし、公的な資金の側面を持つだけに、かなり異例なものだとは私、理解しております。ただし、この制度単体で議論するのではなく、今日の地域銀行が置かれた環境認識というんでしょうか、その中からの対応として、私はトータルで評価すべきものと思っております。

私も初回で議論させていただきましたように、今日の地域の銀行は構造不況であり、また、地域経済の構造的な問題を抱える中で、持続的な収支構造の構築がやっぱり急務になっています。そこでは4段階のステップということで、第1に独禁法の特例、第2に再編、3段階目に収支構造の再構築、そして第4に新たな収益力という形で申し上げたんですけれども、その中で今回、再編に伴う収支構造をつくる上でのインセンティブになるものとして、今回の対応というのは、まさにミッシングピースがある程度埋まったような状況ではないかと思っています。また、同時に発表されております日本銀行の支援の対応も同じようなものではないかと思っています。

ただし、こうした対応というのは、公的な補助金でもあるだけに、先日の持続的なプロセス実現を本当に担保することがやっぱり必要ではないかと思います。また、こういうプロセスというものが、例えば、1つの期限として、今、無利子・無担保での緊急融資という形で、2023年ぐらいめどにして、猶予期間という形で対応されているわけでありますけれども、そうした23年、また2020年代半ばまでをある程度視野に置いて、時限的な中で、集中改革期間であるという位置づけを明確に示すことがやっぱり必要なのではないかと思います。

また今回、こういう公的な資金の活用に対しては、単に銀行の生き残りだけではなく、今回非常にコロナショックの中で苦しむ、私はコロナ7業種と申し上げておりますけれども、こうした業種の事業構造改革でありますとか地域経済の再生、私はそうしたものを銀行と併せて三位一体改革としてパッケージで行うことが必要であると考えます。今回のこの資金交付に当たっては、そうした企業への改革というんでしょうか再建、改革へのコミットを加えることもやっぱり重要ではないかと考えております。またそれによって、あくまでも国民、地域コミュニティーからの納得感が得られるものになりやすいのではないかと思います。

先ほどの構造状況の改革の必要性というのは、従前から分かっていたものなんですが、なかなか実現ができなかったものだと思います。そうした状況の中、今回のコロナショックを機会として改革をすることができるのは、ある面で言いますと、大きなチャンスにつながる部分というものもあるわけです。バブル崩壊後の銀行への対応というのは、バブル崩壊への責任論から、かなり強力的に追い込む北風的な状況だったと私は思います。今回の場合は、コロナショックで責任が問われにくいということでありますので、あくまでも太陽的というんでしょうか、飴というか、インセンティブを与えやすい状況というものがあるわけです。そうした状況の中で、あくまでも申請をベースとしながらも、最初の第一歩を踏み出す行動経済学的なナッジングをもたらす効果というものもあるんじゃないかと思います。ただそのためにも、国民合意、地域の中における信頼、また銀行の覚悟といったようなものもやっぱり重要でありますので、そうしたものを丁寧に説明しながら対応していくことがやっぱり必要ではないかと思います。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、村岡メンバー、お願いいたします。

【村岡メンバー】

村岡です。よろしくお願いします。

今回の資金交付制度ですが、公的支援を使ってやるということですので、その本質的な意味合いが相当問われることを前提になります。私は基本的に賛成ですが、この目的が、地銀を含めた金融機関の経営のためだけではなくて、その先にいるお客さんである地域の企業、あるいは地域経済の活性化であったり再生であったりに資するということが明確になって初めて国民的な理解が得られるのではないか。あるいは、それこそが真の目的であるということを、より明確にするということが重要ではないかと考えています。

具体的には幾つかありますけれども、1つは、抜本的な事業の見直し、あるいは抜本的な経営の見直し、言い方を変えると金融機関のビジネスモデルを変える。新しいビジネスモデルを運営するに当たっての組織を変えるということを実行する。それを通じて、地域経済に対してポジティブな影響を与えていく。あるいは地域の取引先に対して、取引先自体の事業の改善であったり、改革であったり、あるいは組織の改善を促していくと、そういうことを実現するということを目的にすること。合併とか経営統合というのは、あくまで手段の1つであって、マストではない。あくまで金融機関の事業の見直しが抜本的になされて、それが地域の経済に対して、具体的にポジティブな影響を与えるということが前提条件だというふうに、私は位置づけるべきだと思います。

それから、2つ目として、それを前提にすると、資料の3ページの一番上に、経営相談から始まっていろいろ書いてありますけれども、このようなサービス、すなわち資金を提供するサービス以外のサービス。これは特にデジタル化の支援ですとか、こういったものが現実に、かつ具体的に提供できるということを前提条件の1つとして明確に位置づけるべきではないかというふうに考えております。

それから、3つ目としては、先ほど家森委員からのお話もあったんですけども、事後のモニタリングについては、硬直的なものに決してなることなく、あくまで実質的にモニタリングを継続的に行っていくということが重要ではないかというふうに考えております。

私からは以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続いて、小倉メンバー、お願いいたします。

【小倉メンバー】

小倉です。資金交付制度について、2点ほどコメントをさせていただきたいと思います。

1点目は、先ほどの村岡メンバーのお話と少し重複する部分もあるかもしれないんですが、原則論として、やはり他業種ではあまり例を見ない、政府による経営統合支援でもありますので、これを正当化する理由、理屈をきちんと考える必要があるかなというふうに考えました。ちょっと教科書的な説明で恐縮なんですが、政府による補助金が正当化されるのは、経営統合など事業見直しが社会全体に便益をもたらすものであるにもかかわらず、その便益の多くが、経営統合をした銀行自身のところで生じるのではなくて、銀行の外で発生するものであるために、当該銀行自身には統合を行う積極的なインセンティブが生じにくい、こういう状況がある場合なんだろうなというふうに考えています。つまり、外部性があるような状況ですね。

例えば、既に経営効率化を実現している銀行が、効率の悪いほかの銀行と経営統合する積極的な理由、メリットは特に見いだせないので、そういうことはしないというのが自然な状況であろうというふうに思います。他方で、そういう統合によって、これまで効率が悪かった銀行の経営状態が改善する、あるいはサービス提供の状況が改善すれば、その銀行のお客さんにとっては、取引銀行の安全性、効率性、あるいはサービスの質の向上といった便益が生じるかもしれない。これは先ほどの家森先生のアンケート調査の結果にもありましたように、最近では経営統合に賛成する経営者の皆さんも割と増えてきているというようなお話がありましたが、それはこういうベネフィットを示唆するものなのかもしれません。

こういった統合の社会的ベネフィットがその費用よりも大きいと見られる場合に、ベネフィットから費用を引いたネットで見た社会的便益を超えない範囲で、そういう超えない金額で公的支援を用意して、自然に任せていたのではなかなか実現できなかったような経営統合を促すことというのは、理論的には非常に適切な政策であろうというふうに思います。ただ、こういう外部性ですね、ネットで見た社会的ベネフィットを数字として計測することはなかなか難しいので、どうしてもこの辺りは、結局今言ったような原則を頭に置きながらも、大まかな見積りに基づいて政策的な判断せざるを得ないだろうなと考えます。この辺りの見積りを、金融庁さんのほうでどのように見積もられているのかというところが、もし何かお考えのことがあれば教えていただきたいというところでもあります。

2つ目の論点として、補助金がよいのか、あるいはもっと別の資金提供の仕方がよいのかという論点、これは前回の会合でもそういうお話が出てきたような気がするんですけれども、補助金がよいのか、それとも出資や劣後債といった形での支援がよいのかという点なんですけれども、補助金を提供した後に、経営強化計画の履行状況を5年間にわたってモニタリングするという事務局からの御提案がありました。モニタリングに頼るというのも1つの手ではあるんですけれども、それだけでなく、より自動的に、より強く効率化をインセンティブづけする、あるいは効率化があまり見込めないにもかかわらず、補助を申請するようなインセンティブを事前に抑制するという、そのような必要がもしあるのであれば、将来の追加的な資金調達の邪魔にならない程度に、利払いであるとか返済のプレッシャーがある劣後債といった手段で資金支援をしてあげるという形をとったほうがよいのかもしれないと考えているところであります。また、その際には経営強化計画の履行状況に関するコベナンツを付するというような工夫もできるのかなと思っています。

ただし、この点もあまり厳格にやり過ぎますと、この制度を利用する金融機関がそもそも出てこなくなってしまうというおそれもありますので、この辺りも結局のところ、どの程度インセンティブづけを強化するのか、意識するのかというところのさじ加減を十分に考える必要があるんだろうというふうに思います。

私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。ただいま小倉メンバーからは、本件の資金交付案によると、社会的便益が生じることが前提になっているはずで、その社会的便益についての見積りと申しますか、既に試算や計算にあたっての考え方があれば教えていただきたいという御質問をいただいたかと思います。この点について、いかがでしょうか。

【端本信用制度参事官】

まさに小倉メンバーがおっしゃったとおり、定量化は非常に難しい分野だと思います。我々としては、具体的な経営強化計画を出していただいて、その中でどういうサービスが地域において提供されるか、それを確認させていただく中でベネフィットが大きいことを確認させていただきたいということでございます。

【神作座長】

小倉メンバー、よろしゅうございますか。

【小倉メンバー】

ありがとうございます。審査会の中で個別具体的に評価をしていくという、そういう形ですか。

【端本信用制度参事官】

そういうことでございます。

【小倉メンバー】

ありがとうございます。

【神作座長】

それでは、続きまして、坂メンバー、お願いいたします。

【坂メンバー】

ありがとうございました。討議事項1と2、相互に関連する部分があるかと思いますところ、1について3点、2について2点述べさせていただければと思います。

まず、1ポツの1点目ですけれども、経済を力強く支える金融機能の確立という目標が掲げられておりますが、必要なのはここにありますとおり、中小企業や地域経済の維持、活性化に資する金融機関であろうと思います。収益力の強化については、金融仲介機能の充実、情報生産機能の充実が一丁目一番地であり、このことが明記されるべきと思います。1ポツの第2パラグラフに、単独で地域密着、低コストを徹底するという表現がありますが、むしろ地域密着でそれなりのコストといいますか手間をかけて地域企業の企業価値を向上させ、将来の収益の源泉を育てるという、相応のコストや手間を伴う、ある種の種まき思考、未来思考の在り方が必要と考えます。

これまでにもローカルベンチマークの活用等、金融仲介機能の充実のための取組が重ねられてきていると思いますが、事業計画の評価とその実現への寄与がますます重要と思います。現時点の財務指標や非財務情報を的確に把握することを前提として、将来の事業計画について、収益性と実現可能性を合理的に検討、評価する力や、その実現に金融機関として寄与し得る仕組みや個別の取組が期待されるところと思います。

2点目ですけれども、収益力に関し、金融商品や投資関連商品の個人への販売業務について一言しておきたいと思います。私は、問題案件に比較的多く接する立場にありますが、銀行や地方銀行による金融商品や投資商品の販売勧誘・取扱いには課題が多いと感じております。外貨建て保険に関する紛争は相変わらずありますし、少し前にはシェアハウス関連の融資等の問題も生じております。こうした業務、特に個人へのプッシュ型業務が、銀行や地方銀行の業務にふさわしいかはよくよく考える必要があると考えます。

3点目ですけれども、2点目とも関連しますが、利益相反や優越的地位の濫用への対応を含め、全体として規制緩和の中で起こる問題を早期に把握し、実態把握と改善に向けた回路を回していく仕組みが重要だと思います。当局の監督とともに、地域の企業や利用者からの評価を酌み上げる仕組みや、それに基づく改善の仕組みを充実していくことが必要と思います。係る観点から、地域機関の活動に関する情報開示の一層の充実と、金融ADR等の紛争解決機関の役割はますます重要になると思います。

次に、資金交付制度についてですけれども、この制度は市場の機能だけでは対応が難しい課題について、民間の金融機関の自主的な取組を前提としつつ、公的な支援を行うものと理解をしております。

1点目ですけれども、対象金融機関として人口減少地域を主たる営業地域とし、特に経営環境の厳しい地銀等が想定されております。そうした地域において、金融機能を通じてどのように持続的に収益を上げ得る地域経済を維持・形成するか、創意工夫を期待したいところです。また、申請に際して当局や関連機関の情報や知恵も得られるとありがたいのではないかと思います。

2点目ですけれども、交付額の使途として、システム投資等が想定されているようです。ぜひ効率的、かつ今後の技術の進展や社会の変化に対応し得るシステムを目指してほしいと思います。前回の事務局の資料によりますと、地銀の共同センターはやや数が多い印象を受けております。社会的効率性の観点から、これを絞るという観点も、あるいは必要かと思います。また、システムには各行に共通の基幹部分と、多様なサービス提供のための個別性が高い部分があり得ますので、堅牢性と柔軟性を兼ね備える必要があろうかと思います。さらに今日、セキュリティの確保がますます重要になってきているところでもあります。システムの在り方は、業務の在り方と裏腹の関係にあると考えますところ、ITガバナンスが確立されたシステム整備の推進を図れるよう、ぜひお願いしたいと思います。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続いて、西原メンバー、お願いいたします。

【西原メンバー】

ありがとうございます。JPモルガンの西原です。

今回の資金交付制度の創設につきましては、地銀の約半数の先でコア利益が赤字であり、かつ数年間赤字が続く先も多い中で、選択肢の1つとして示していくということに賛成の立場であります。経営基盤強化のアプローチのうち何を選んでいくかは、各金融機関の経営判断ながら、当ワーキング・グループが目的としている「持続的な金融サービスのサポートを通じた地域経済の貢献」の1つの方法となる制度だと考えます。その下で、補助金形式になりますため、制度創設の上では、国民の観点から実効性を求め、かつ慎重に運営していく必要があります。その点で、3つの留意点を申し上げます。

まず1点目が、制度のカバレッジの点です。先ほど申し上げましたとおり、コア利益が赤字、つまり今後、持続的な経営サービスの提供が懸念されるような地域金融機関数は地銀では半数程度に達しており、広範な地域における金融サービス提供の持続性が危ぶまれています。既にいわば「面」の問題になっていますので、地銀が102行ある中で、それなりのカバレッジを想定して制度設計をしていくべきではないかと考えます。

今回の資金交付制度の目的は、人口減少など環境の厳しい地域における金融機関による持続的な金融サービスの提供と、これによる地域経済のサポートですので、この特性上、やはり対象となる金融機関は、中規模から小規模の先が多くなると考えられます。1先当たりの補助金の上限が30億という事務局の説明がございましたが、その金額の算出根拠は、平均的な預金量で計算されていると思いますので、実際の1先当たりの補助金は10億から20億程度になると思われます。従って、350億の予算の中でも、102行の中の4分の1、コア利益赤字先の半分をカバーしていくことを想定可能ではないかと思います。

ちなみに現在、預金量が1兆円未満の地銀は2割弱ありまして、小規模先から見て3割程度に当たる地銀の預金量は1.5兆円程度でありますので、3分の1のコスト負担と考えますと、1先当たり10から20億円程度となるのかと思われます。

資金交付制度の目的と求められる効果の観点から、中小規模の地域金融機関を主たるターゲットとし、それなりの制度のカバレッジを想定していくべきかと考えています。この点は、11月10日に日銀が発表しました、ある意味全ての地域金融機関を対象とする日銀の特別融資制度とは一線を画す制度の特性を示すものでないかと思います。

2点目は対象金融機関の考え方ですが、2ページ目の(2)に示されていますように、対象金融機関には、地域における貸出など、サービスの一定のシェアがあり、人口減少などで環境が厳しいエリアであることと挙げられております。この点はまさにそのとおりだと思います。

特に、「抜本的な見直しにより、金融サービスの提供が持続できること」という条件が挙げられておりまして、この点が、制度の実効性を担保する上で非常に重要だと考えます。この4つ目の点の具体的な条件、ないし経営改善目標としては、コア利益の増益反転を想定すべきだと考えます。このほかにはBOJのスキームのように、経費率(OHR)の改善が考えられますが、OHRがどの水準になると金融サービスの提供が持続可能かはなかなか設定が難しいので、コア利益の増益反転を具体的なターゲットとしていくべきではないかと思います。

また今回の制度は、合併や統合される、どちらかというと中規模から小規模の金融機関への補助金になるんですけれども、何らかの形で合併や統合を受け入れる中規模ないし大規模な地銀にも、何らかインセンティブを与えられないのでしょうか。経済的に限らず、非経済的なものでも、何かしらのインセンティブがあれば、より障害が除かれると考えます。

3点目は、経営強化計画の提出・モニタリングについて、「貸出額やその他基盤となる金融サービスの計画」とそのモニタリング上の取扱いについてです。「その他の基盤となる金融サービス」につきましては、今回のワーキング・グループでの業務範囲規制の緩和を機に今後本格的に手探りではじめていきますので、予め計画を決めてモニタリング、フォローしていくというよりは、毎年、顧客ニーズを踏まえながら軌道修正できるよう、フレキシブルな形としていくのが望ましいと考えます。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続いて、野崎メンバー、お願いいたします。

【野崎メンバー】

ありがとうございます。野崎です。私のほうから簡単に2点だけ申し上げます。

まず1点目は、預金保険機構の勘定に係る簡単なコメントです。財源としての印象ですけれども、一般勘定を使わない、金融機能強化勘定を使うというところについては、非常に適合性が高いと思います。仮に一般勘定であれば、剰余金に関しては、やはり対象金融機関が保険料の値下げの対象になる原資になりますので、そういったところの対象金融機関の総意を得るのは難しいと思われます。こうしたところを考えると、やはり地方経済を支える安定化というところの勘定趣旨に沿う政策内容で、非常に適合性が高いんじゃないかというふうに考えます。

2点目に関しては、勘定についての素朴な疑問なのですけれども、金融機能強化法に基づき資本注入されている銀行が何行かあるわけですが、実際に優先株等を持っているのは整理回収機構です。そこで、整理回収機構が万が一損失を負担した場合には、預金保険機構としては債務保証契約を通じて負担が生じます。そうなると、実質的に国民負担に通じるということであります。もともとこの勘定の特性としては、例えば責任準備金を置くとか資本を置くとかそういった特性は持っていないので、たまたま剰余金が増えてしまったという状況ではあるのですけれども、ただやはりこれだけ厳格な分別管理をしている中でもありますので、将来的なそういった損失負担に対して、ある程度バッファを持つ必要があるんじゃないかなと思います。ですから、ここで剰余金をフル・フルに使い切っていいものかどうなのかという議論に関して、慎重に考えておく必要があるんじゃないかと思います。

以上の2点です。ありがとうございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続いて、河野メンバー、お願いいたします。

【河野メンバー】

今回御提案いただきました、資金交付制度案に対する意見を申し上げたいと思います。

地銀等の経営基盤強化支援策として、業務範囲規制、それから出資規制等の緩和が検討されてきました。さらにその背中を押す対策として、今回提案された資金交付制度に対して、一般消費者として特段反対するものではございません。環境の変化によって立ち止まってしまった金融サービスが、規制緩和によって従前の形から前向きに変化することで、円滑に社会に根づいて、再び地域経済の核として、社会のにぎわいとか、それから持続可能性を牽引していく。今回のこのワーキングというのは、そういった将来をつくっていく戦略会議だと思って参加させていただいております。ですから、資金交付制度においても、ぜひ目に見える効果が期待できる、実効性あるものでなければというふうに考えております。

そこで、専門的知識がございませんが、3点お願いがございます。1点目でございます。この制度の目的を、やはり明確に示していただきたい。銀行を救う制度ではなく、地域経済の回復と再生を担うという、強い決意と能力を持った金融機関のみが活用できる制度であるとしていただきたいと思っております。

2点目です。資料の討議いただきたい事項の2ページ目に記載されている制度概要ですけれども、専門家の先生方の御意見を伺っていると、さらに精査は必要だと思いますが、全体概要は納得できる内容だと思って受け止めました。その上で、(2)の対象金融機関の要件についてでございますけれども、過去にガバナンス、コンプライアンスの観点から問題が指摘された金融機関は、当面除いていただきたいというのが希望でございます。

3点目になります。(3)に書いてくださっています経営強化計画は審査の結果、採択された案件の計画等が金融庁のホームページなどで常に公開され、誰でも確認できる状況にしていただきたいと思います。また、(6)に書いてくださっています監督・モニタリングに示されているように、計画の履行状況につきましては、計画の是正や、その資金返還も視野に入れて、しっかりと目を光らせていただきたいと思いました。

コロナ禍で暮らしの先行きが不透明です。それから、経済の先行きも決して楽観できない状況だと思っております。金融機関の皆様には、この制度で提供されるまとまった資金を、ぜひ生きたお金として使っていただきたい。この資金を元手にして、当然組織の構造改革に着手していただきますし、さらに地域の人材を巻き込み、地域に眠っている知恵や財源を呼び込んで、しっかりと地域経済を回して、地域の期待に応える金融サービスを再構築というか確立していただきたいと思っております。精度の高い実効性のある資金交付制度になってほしいと思っております。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続いて、翁メンバー、お願いいたします。

【翁メンバー】

翁です。今回の資金交付制度は、やはり国庫納付をする資金を活用して、補助金的に金融機関に交付するものでありますので、やはり他業態などから見ましても、しっかりと厳しい基準で運用されるということがとても重要だと私も思っております。

今日お示しいただいたいろいろな条件として、申請主義であったり、競争の阻害への配慮とか、いろいろと必要な視点というのは入っていると思うんですが、私はやはり強調すべきは、村岡委員もおっしゃいましたけれども、やはりこの資金交付制度が利用者、銀行の顧客のための改革に結びつくものとして使われるかということが非常に重要だと思いますし、それで初めて理解も得られるものではないかと思います。

先ほど村岡メンバーもおっしゃっていましたけれども、やはりこれからは事業支援、地銀が取引先を多く抱えていますけれども、ほとんどの先が様々な困難を抱えていますけれども、そういったところに対してしっかりとした総合的なサービスを提供していくために、こういった新しい形態、統合とかが必要になってくるということがしっかり説明できるということが重要なのではないかというふうに思っております。

私は、商工中金について家森委員と一緒にちょっとモニタリングをしているんですけれども、かなり抜本的にビジネスモデルを改革して、本当に利用者、顧客のために変わっていくという方向でのビジネスモデルの転換をモニタリングしているというような状況になっていますが、何のためにやるのかということが確認されるということが、地銀の支援にとってもとても大事なんじゃないかなと思っております。ですので、やはり単独といういき方もありますし、より地域密着でやっていくと。それから、業務提携とか資本提携でやっていく。そしてもう一つ、統合というやり方があると思うので、期限つきにするということは、それぞれの地銀がどういう選択肢が一番いいのかということを考える集中期間として、その期間を設定するということにしていただきたいと思っております。

ちなみに、今までのいろいろな統合を見ていても、それが本当に顧客のためになったのか、本当に利用者のためになっているのかということが必ずしも確認できてないんじゃないかなという感じはいたしておりますので、そこについて特に私は見ていただきたいと思っております。

その意味で、モニタリングについても、家森委員もおっしゃいましたけれども、実質的なモニタリングが大事で、形式的なものにとどまらず、しっかりとビジネスモデルの改革ができているのか、それが利用者、顧客のための改革につながっているのかというような点をしっかり見ていただくということが、いろいろな数字でのチェックのほかに重要なのではないかなと思っております。以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、森下メンバー、お願いいたします。

【森下メンバー】

ありがとうございます。私も御提案いただきました交付制度には賛成したいと思います。前回でしたかね、地域の事業者の8割から9割の地方金融機関がメインバンクになっているというようなお話もありましたので、しかしそれを代替するようなプレーヤーというのが今すぐには見当たらないということであれば、やはりそういった基本的な資金を供給していくというプレーヤーがなくなっては困るわけですから、そういったプレーヤーが活動しやすいような環境を提供するというのは、地域の経済を支えていく上で大事なのかなと思います。

対象先については、特に経営環境が厳しいと見られる地域、あとは相当程度の基盤的なサービスを提供している金融機関というようなことが挙げられていました。としますと、やはりこういった特に経営環境が厳しい地域にいて、しかも相当程度の基盤的なサービスを提供している金融機関ということになりますと、そういった金融機関が、例えば、経営破綻してしまっては大変困ることになりますし、あとは生き残るために過度にサービスを収縮してしまうということがあっても困るわけです。そういったようなことが発生すれば、地域経済により悪い影響を与えることになるわけですから、そういったことがないようにするための政策ということで、十分理解を得られるのではないのかと思います。

そういった事態にならないようにするためには、やはりつぶれてもらっては困ると。資金を投入したにもかかわらず、収益力が上がらないまま経営状況がどんどん悪化してつぶれてもらっては困るということですので、収益力を拡大するような努力はしっかりとしていただく必要があると思いますし、その上で経営統合や合併というのが、1つ収益を改善する上での有効なツールであるというのは、この会議体でも何度か報告されてきているところですから、そういったことも考えていただければと思いますし、加えて業務範囲の拡大というものも行われるわけですから、そういったようなものを有機的に結合して、しっかりとした収益力の改善が行われていくかということのモニタリング、あるいは当局との対話ということを継続していっていただきたいと思っています。

あともう一つ、やはり金融サービスを提供するということですので、貸出もそうですし、出資もそうですし、できることはたくさん増えるわけですので、そういったようなことを収縮せずにしっかりと地域の環境に合わせて伸ばしていくということが非常に重要かと思います。要件になっているのが、基盤的なサービスを提供しているプレーヤーですので、基盤的なサービスを提供しているプレーヤーが取引を渋る、あるいは合理的な理由なく拒絶すると。独禁法の問題はあるのは当然ですけれども、そのような姿勢になってしまうということは最も警戒しなければいけないことの1つだと思いますので、モニタリングをしていく際には、実際にじゃあ何をやったのかと。どれだけ金融サービスを提供したのかという点をしっかりとモニタリングをし、同時に、金融機関自身に積極的に公表していただくといったような仕組みが重要ではないのかなと思います。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続いて、加藤メンバー、お願いいたします。

【加藤メンバー】

ありがとうございます。私からは、3点コメントをさせていただきます。

1点目ですが、今回の資金交付制度案は、地域における基盤的な金融サービスの維持・強化を、地銀などを援助することによって達成する仕組みであると理解しています。このように資金交付制度案を位置づけると、公的資金によって地銀などを援助する必要性、つまり政策としての合理性は、地域によって相当程度異なるということになります。ですから、制度設計及び制度の運用に際して、こういった点をうまく考慮できるような仕組みを整えておく必要があると思います。

2点目は、350億円という数字の意味についてです。この350億円というのは、金融機能強化勘定の利益剰余金の額であって、例えば、政策目的を達成するための必要額の積上げではありません。ですから、この350億円という限られた予算を政策目的を達成するために効果的に利用することを考える必要があります。たとえば、広く薄く分配し過ぎてしまうと、効果が薄れてしまう可能性があるかと思います。この資金交付制度案の他、基盤的な金融サービスの維持・強化を目的とした様々な施策が展開されているかと思いますので、他の仕組みとの補完というものも考えながら、制度を運用していく必要があると思います。

第3に、制度の運用に関して、1点意見を述べます。既に多くのメンバーが発言されたとおり、経営強化計画の履行状況のモリタリングは非常に重要であると思います。ただ、昨今の経済、社会の状況に鑑みますと、今立てた計画が、果たして1年後にも合理性を維持できているのか予測することは難しい気がします。ですから、経営強化計画の履行状況のモニタリングは必要ですけれども、資金交付制度案の目的に反しない範囲では、計画自体の一部修正のようなものも、適切な範囲では認めることができるといったことを、あらかじめ予定しておくことも検討してはどうかと思います。

私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続いて、岩下メンバー、お願いいたします。

【岩下メンバー】

岩下でございます。私も先生方と同様に、今回の資金交付案につきましては、基本的に賛成の立場でございます。

金融機関の経営を改善してもらうために、公的な資金を金融機関に対して注入するということは、かつて日本の金融危機のときも行われたわけですが、そのときにも様々な軋轢というか、実行のプロセスではいろいろ大変なものがあったと記憶しております。個々の金融機関にしてみれば、公的資金からのサポートを受けるということはある意味でレピュテーションに関わる問題にもなりますので、実際には資金の注入を受け入れて経営を安定させたいけれども、一方でそういう悪いレピュテーションになることを恐れて、なかなか踏み切れないといったような動きが、特に資金注入の議論の最初にはあったように記憶しております。

そういう意味では、今回の制度案について、もちろん実質的なモニタリングをしっかりやっていくことはとても大事なんですが、同時にこの注入を希望する方々というのは、多分この資金、あるいは日銀による日銀当座預金への不利といった、若干のプラスの部分というのも、その金融機関が直面している課題や、あるいは経営規模と比べて物すごく大きいものでは多分ないんですよね。その経営判断を物すごく左右するような水準ではなくて、背中を押すというのが基本だと思います。そうすると、それに伴って非常に多くの負担がくっついてきてしまうということになると、それは政策当局の意図している方向に必ずしも合った行動を取ってくれない可能性がありますので、その意味では、基本的な目的については当然理解してもらい、かつ様々なモニタリングはするにしても、この資金を条件として、あれもしろこれもしろという形に持っていくというのはどうかなという感じがいたします。

この種の公的資金というのは過去にも世界的にもいろんな産業に対して注入された例があります。そういうことが行われること自体は、産業の転換期ということでしようがないと思うんですが、ただ今の銀行業界が直面している産業構造の転換というのは、もちろん人口減少であるとか、コロナによる地域経済の疲弊であるとかということもあるんですが、私自身は非常に大きいのはITの関係だと思うんですね。各金融機関がこれまで積み上げてきた経営資源というものが、ITの進展によって一気に実質的な価値を減ずる状況になってきたというときに、従来型のITの投資を続けていたのでは、多分立ち行かないと思うんです。かといってゼロからつくり上げるような形のことは多分できない。そういう意味で、どうやって彼らにそこの部分のリーダーシップを自分で取れるようになっていただくかというのも非常に大事なことだと思います。そのために十分にこの制度が活用されることを期待しております。

私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続いて、大庫メンバー、お願いいたします。

【大庫メンバー】

大庫でございます。私自身は、この御提案されている制度について、基本的に賛成の立場です。その上で、3点ばかりコメントをさせていただきたいと思います。

最初のポイントですが、これは特になぜ私がこの提案を支持しているかということにもつながってきますが、この提案は、金融機関の経営状態が必ずしも悪い状況でない場合においても活用できると受け止めたからであります。これまで金融機能強化法のようなものについては、金融機関の経営状況が悪いということが前提になって適用されていたと思いますけれども、今回の提案の制度は、コロナショックや人口減少によって、経営環境が厳しくなっている、そういう環境を前提に、地域経済のために資するような経営基盤強化を図ろうとする金融機関に対してということで、今までにないような制度だと私は受け止めました。その意味で、前向きな金融機関の改革に対して支援をするということであれば、私は大賛成です。

その上で、2つ目のコメントになりますが、どういう形で地域経済に資するのか、経営統合だけではないということは、まさに多くの皆様が御指摘されたとおりだと私も思います。前回まで様々な形で、銀行制度の見直しということで、業務規制緩和の議論をしてまいりましたが、そういう中で、これから銀行に認めていくであろう、新しい事業サービスを本格的に取り入れるために、新しい投資が必要であれば、本制度を通じた交付金などを活用できるのであれば、これまでの議論とも整合性がついて、非常によいと思います。

特に、支給額が30億円ということでキャップがはめられていることを考えてみますと、大きなところが利用されるよりも、むしろ中小の金融機関がこの制度を活用して、新しく事業サービスなどを検討し、そこで地域貢献をしていくということで、非常に整合性がとれてくると思いました。

そして、3つ目のコメントとしてお伝えしたいのは、本制度が経営環境の悪化しているマーケットの問題であるというところに基点を置くのであれば、ぜひ制度を審査する中で、地域データを活用した議論を盛り込んでいただけないだろうかと思いました。失業率ですとか求人倍率ですとか、それから商業動態統計に見られるようなデータについては、ほんの数か月遅れただけで、ほぼリアルタイムに近いデータを取ることができるかと思いますし、いろんなFinTechの会社等々もデータを出しているのではないかと思いますので、そういったところと連動できるのかなと思います。

また、金融庁がチーフ・データ・オフィサーを置くということで、データを重視していくという政策と併せて、経営環境の悪化を客観的に把握するということを申請された案件の制度の中に、ぜひ盛り込んでいただきたいと思います。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

本日予定している終了時間まで、まだ少し時間がありますので、どうか2回目の御発言がある方はぜひ御発言いただくとともに、後藤メンバー、もし御意見がございましたら、ぜひ御意見を頂戴できればと存じます。いかがでございますか。よろしゅうございますか。後藤メンバー、どうぞ御発言ください。

【後藤メンバー】

改めて申し上げるほどのことでもないのですけど、今回御提案いただきました基本的な方向性については、こういう形で地域金融機関に対して補助ができるということは、非常に結構なことではないかと思いますので、賛成をしたいと考えております。ただ、既にいろいろなメンバーの御発言にもありましたように、あまり厳しくし過ぎると使い勝手が悪くなる一方で、やはり国民の理解を得るためには、ある程度の監督も必要という、そういうところの運用上のさじ加減が非常に難しい問題ではあろうかとは思います。また、できるだけ規模の小さな、一番苦境にあるであろう金融機関を広く支援するというニーズがある一方で、薄く広くになり過ぎると効果があまり期待できなくなるというところもありますが、実際の対象を絞り込むのは容易ではないとも思っております。そのため、制度論というよりは、運用の際の御苦労のほうが多いのではないかと思いますが、そこをぜひうまくやっていって頂ければと考えております。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

ほかに御発言はございますか。時間がございますので、御発言いただければと思います。よろしゅうございますか。

もしほかに御発言がないようでございましたら、討議を終了したいと思いますけれども、本日、討議いただきたい事項として、資料2で御提示いただきました2つの大きな論点、経済を力強く支える金融機能の確立に向けた政策対応の方向性、そしてその方向性の中で、資金交付制度を時限措置として創設する、これが2つ目の主要な論点でございましたけれども、いずれも基本的方向性としては賛成という御意見をいただいたと存じます。

ただ、特に資金交付制度については、慎重な制度設計が必要であるという観点から、個別の論点についてはさまざまな御意見、御提言をいただいたと存じますので、事務局のほうにさらに御検討いただき、引き続き御議論をいたしたいと存じます。

さて、本ワーキング・グループでは、これまで6回にわたって様々な論点について御議論をいただいてまいりました。次回は報告書の取りまとめに向けて、事務局にはぜひ御準備をお願いしたいと存じます。

最後に、事務局から、連絡事項等がございましたらよろしくお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

次回のワーキング・グループの日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日御案内させていただきます。よろしくお願いいたします。

【神作座長】

それでは、本日は若干早いですけれども、いつも延長させていただいておりますので、本日のワーキング・グループを終了させていただきます。御多忙のところ、誠にありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室(内線3572、3556)

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