金融審議会「銀行制度等ワーキング・グループ」(第1回)議事録

  • 1.日時:

    令和2年9月30日(水)9時30分~11時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室

金融審議会「銀行制度等ワーキング・グループ」(第1回)
令和2年9月30日
  
【神作座長】

おはようございます。ただいまより銀行制度等ワーキング・グループの第1回会合を開会いたします。皆様、御多忙のところ、お集まりいただき、誠にありがとうございます。

私は、座長を務めさせていただくこととなりました、東京大学の神作でございます。何とぞよろしくお願いいたします。

本日は初回の会合ですので、会議の運営と議事の公開、議事録の取扱いについてお諮りいたします。会議は、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、今後も必要に応じて、本日のようにオンライン開催といたしたいと考えております。議事の公開については、オンライン開催ではなく、メンバーにお集まりいただく場合には、通常どおり、メディア関係者の皆様や一般の傍聴ありとし、本日のようにオンライン開催の場合には一般の傍聴はなしとした上で、メディア関係者の皆様には金融庁内の別室において傍聴いただくことにしたいと考えております。また、いずれの場合も、議事録は通常どおり作成の上、後日、金融庁ウェブサイトに掲載させていただきたいと考えております。

以上につきまして、皆様、よろしゅうございますか。

(「異議なし」の声あり)
【神作座長】

ありがとうございます。

後ほど事務局からも御説明をいただく予定ですけれども、本ワーキング・グループは、資料1にあるとおり、人口減少など社会経済の構造的な課題や新型コロナウイルス感染症等の影響を踏まえ、金融システムの安定を確保しつつ経済の回復と持続的な成長に資するとの観点から、銀行の業務範囲規制をはじめとする銀行制度等の在り方について検討を行うことという大臣からの諮問を受けて設置されたものでございます。皆様から御意見を頂戴しつつ、幅広い観点から議論を進めてまいりたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

次に、事務局よりメンバーの皆様の御紹介をお願いいたします。

     
【端本信用制度参事官】

信用制度参事官の端本でございます。よろしくお願いいたします。

メンバーの皆様を御紹介します。資料2のメンバー等名簿順に、

岩下直行様です。

翁百合様です。

小倉義明様です。

加藤貴仁様です。

河野康子様です。

それから、本日は遅れて御出席される予定ですが、後藤元様です。

坂勇一郎様です。

高田創様です。

野崎浩成様です。

村岡隆史様です。

森下哲朗様です。

家森信善様です。

また、本日は御欠席ですが、大庫直樹様にもメンバーをお引き受けいただいております。

オブザーバーの皆様につきましては、メンバー等名簿をもって御紹介に代えさせていただきます。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

次に、万が一、私が会議に出席できない場合に備え、座長代理を森下メンバーにお願いしたいと考えておりますが、皆様、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)
【神作座長】

どうもありがとうございました。

それでは、早速、議事に移ります。本日は事務局よりワーキング・グループの設置の趣旨や現行規制などについて説明を聴取いたします。続きまして、参考人として御出席いただいております早稲田大学法学部教授の岩原紳作先生より、岩原先生が金融庁金融研究センターから依頼を受けて取り組んでいらっしゃる、日本と諸外国における銀行の業務範囲規制に関する研究プロジェクトの成果について、プロジェクトメンバーを代表して御報告いただきます。その後、高田メンバーより、新型コロナウイルス感染症が経済に与える影響や銀行が今後担うことが期待されている役割などについて御説明をいただいた上で、全体についてまとめてメンバーの皆様より御意見や御質問をいただくという流れで進めさせていただきます。

それでは、事務局より御説明をお願いいたします。

【端本信用制度参事官】

それでは、資料3に沿いまして、本ワーキング・グループの検討課題等について説明させていただきます。

まず、3ページを御覧いただきたいと思います。先ほど神作座長から御紹介いただきました大臣からの諮問の背景といたしまして、今後、デジタル・トランスフォーメーションの進展、その他の構造変化が見込まれること、銀行等はこうした構造変化を力強く後押しすることが求められていることがございます。

続きまして、4ページ目、次のページに参ります。本ワーキング・グループにおける検討課題でございます。真ん中のブルーで囲っているところを御覧いただきたいと思います。今申し上げましたような観点に立ちまして、まず、銀行が保有する人材や技術を活用した地方創生への貢献、銀行による出資を通じた地域の事業再生・事業承継やベンチャービジネスの支援、それから、国際競争力の強化に資する制度の在り方について検討いただくことが考えられます。また、地方創生の観点からは、地域における金融機能を維持するという視点からの検討が重要になってまいります。人口減少や低金利などの厳しい経営環境が続く中で、地域における金融機能を維持するための方策につきまして幅広く御検討いただくことが考えられます。

5ページ目に参ります。本年7月に閣議決定されました成長戦略のフォローアップのうち、今申し上げた点に関連した部分を抜粋しております。まず①、銀行グループの他業規制の緩和としましては、銀行業高度化等会社制度について2020年度中に制度を抜本的に見直す。②、銀行グループにおける事業会社出資規制の在り方の検討につきましては、まず1つ目のポツ、三、四行目の最後のところですけれども、事業再生・事業承継やベンチャー支援の必要の高まりといった状況の変化を踏まえ、その在り方を検討し、2020年度中に結論を得る。その次のポツですけれども、1行目の後段ぐらいからです。事業会社の保有する銀行の在り方についても、銀行を保有する既存の事業会社グループへの影響には十分留意しつつ、検討する。それから、③、銀行グループの保有リソースの最大活用ですが、最後のところになります。付随業務・従属業務に係る規制について2020年度中に関連規制を見直す。それから、④ですが、(a)のところになります。銀行・保険会社の海外子会社の業務範囲規制の緩和について検討するということでございます。なお、④の(b)、いわゆる銀証のファイアウオール規制につきましては、市場制度ワーキング・グループで検討することといたしますので、本ワーキング・グループの直接の検討課題ではございません。

続きまして、6ページ目はそれを踏まえた金融行政方針ですので、説明を省略させていただきます。

8ページ目から、検討課題に関する御指摘事項を御紹介させていただきたいと思います。

まず8ページ目、先般の金融審議会の総会におけます、本ワーキング・グループの検討事項に関連する主な指摘事項を整理しております。1つ目の丸です。地域の再生に必要な業務を金融機関が行うことを可能にする業務範囲規制の見直しは、時宜を得ている。2つ目の丸、銀行がデジタル化に十分対応できるような検討が必要じゃないか。それから、3つ目の丸、このような危機の下で銀行がきちんと役割を果たすことは重要であるということ。他方で、4つ目の丸です。既存規制には立法当時の趣旨や目的がありますので、それを踏まえた総合的な検討をしていただきたい。次の丸です。理屈をきちんと整理して規制緩和を行っていただきたい。こういった御指摘が先般の総会ではございました。

9ページ目ですけれども、これは先般閣議決定されました、いわゆる政府の基本方針におきまして、感染症拡大を受けました我が国の課題やリスク等について整理させていただいております。1つ目のポツ、デジタル化・オンライン化の遅れが明らかになった。2つ目のポツ、中枢機能が一極に集中していることのリスクが改めて認識された。3つ目のポツ、働き方を変えたりする機運が増している。4つ目、デジタル専門人材等が不足している。5つ目、非正規雇用者や中小・小規模事業者が厳しい立場に置かれているのではないか。こういった指摘がされているところでございます。

続きまして、10ページに参ります。こちらは同じく感染症の拡大を受けまして、海外の金融当局がどのような問題意識を持っているかというものを拾ったものでございます。1つ目、まず国際決済銀行(BIS)ですけれども、アニュアルレポートで、1つ目の丸の最後の、中略以降。現在は、流動性の段階で、そこから抜け出そうとしているところだという現状認識。それから、一番最後の丸の辺り。倒産の手続を迅速に進めること、それから、次の行、存続不可能な企業を延命することについての経済に対する影響ということについての問題点を述べております。それから、次の2つ、米英の当局ですけれども、このような危機で金融機関がきちんと役割を果たさないといけないということを強調しております。

11ページに参ります。冒頭はIMFの国際金融安定報告書でございますが、1つ目の丸、幾つかの先進経済圏において、金融機関の低収益は根強い課題である。それを踏まえまして、3つ目の丸、銀行が過剰なリスクを取るということに対する警戒感。それから、4つ目、このような状況の下で、2行目辺りからでしょうか。銀行統合への構造的障害を取り除くこと、それから、低金利環境をきちんと考慮した監督等を行うことが必要であるということを提言しております。続きまして、同じくIMFですけれども、再訓練などを通じて、人材のシフトが円滑に行われるように留意すべきだという点を指摘しております。最後にシンガポールの通貨当局ですけれども、デジタル化への取組を一層強化していきたいという決意を表明しているところでございます。

以上が検討課題に関連する情報で、最後に、これに関連する現行制度について御説明させていただきたいと思います。各制度の在り方につきましては、次回以降のワーキング・グループにおきまして、規制緩和後の利用実態などと併せて、より詳細な資料を提出して御議論いただきたいと思います。時間の関係もございますので、今回は簡単な制度の御紹介にとどめさせていただきたいと思います。

13ページは全体像です。右側の囲みのところですけれども、①、銀行(本体)の業務規制、②、子会社・兄弟会社の業務範囲、それから③、海外子会社・海外兄弟会社の業務範囲、それから④、議決権取得等制限、⑤、主要株主規制をこの囲みの中で御説明させていただいております。

続きまして、14ページ、次のページに参りまして、こちらは改正経緯を整理しております。その時々の経済情勢を踏まえながら、業務範囲、出資規制の緩和が行われてきているということがお分かりいただけると思います。2008年以降で簡単に御紹介いたしますと、左側から、銀行(本体)につきましては、2019年に保有情報の第三者提供業務が追加されている。子会社・兄弟会社につきましては、2016年に銀行業高度化等会社が追加されております。それから、1つ飛びまして、議決権取得等制限の例外措置ですけれども、2008年以降、出資できるベンチャービジネス、事業再生の会社につきまして要件緩和が行われるとともに、2013年に地方の面的再生を念頭に地域活性化事業会社、それから2019年に事業承継会社への出資が追加されているということでございます。

続きまして、15ページに参ります。これ、いわゆる本体の業務範囲としまして、固有業務に加えまして、付随業務等を整理してあります。銀行のバックオフィス業務等につきましては、銀行・銀行グループからの収入が一定割合以上であること等を要件に、従属業務会社ということで子会社等で行うことができることになっております。

次のページに参ります。16ページですけれども、こちらでは銀行業高度化等会社、先ほどから何度か出てきておりますけれども、この具体的な法文上の内容を御紹介させていただいております。情報技術その他の技術を活用した銀行の営む銀行業の高度化もしくは銀行の利用者の利便の向上に資する業務または資すると見込まれる業務を営む会社ということで定義されております。

続きまして、17ページですけれども、こちらは銀行等が海外金融機関等を買収した場合の経過措置等について御説明させていただいております。

それから、18ページ、次のページに参ります。議決権取得制限の例外として、出資できるベンチャービジネス、事業再生会社、事業承継会社、地域活性化会社の具体的な要件について御紹介させていただいています。

最後に、19ページに参りまして、銀行主要株主規制等を整理しております。イコールフッティングの議論、先ほどから出てきておりますけれども、左側を見ていただきますと、その背景といたしまして、銀行の議決権を一定以上保有する事業会社は、主要株主としての認可を得て、それに基づく規制があるわけでございますけれども、その兄弟会社の業務範囲等につきましては特段の規制がないということが背景の一つとしてございます。

簡単になりますが、以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、岩原先生に御報告をお願いいたします。岩原先生、どうかよろしくお願いいたします。

【岩原参考人】

私の報告について、掲示されております資料4に沿ってお話をさせていただきたいと思います。

資料4の、まずⅠにございますように、金融研究センターにおいて昨年から1年間にわたりまして、銀行の業務範囲規制に関する調査研究プロジェクトを行ってまいりました。そして、このほど最終原稿をまとめたところであります。プロジェクトの参加者とその研究テーマは、資料4のⅠに書いてあるとおりでございます。本日は、当該プロジェクトにおけるディスカッション、検討を踏まえまして、私個人としての、銀行の業務範囲規制に関する問題についての考え方をお話しさせていただきたいと思います。

まず前提問題として、現在の日本の銀行業務範囲規制でありますが、Ⅱのところに記載してありますが、今もう事務局から概要の説明がございましたので、ごく簡単に触れることにとどめたいと思います。

まず、銀行本体における業務範囲というのは、固有業務、付随業務、他業証券業務、法定他業に限定されて、それ以外の業務は禁止されるという他業禁止原則が銀行法では取られております。

また、銀行子会社の業務範囲についても、従属業務、金融関連業務等々、一定の範囲に制限されております。

次に、(3)の銀行の議決権保有規制でございますが、銀行とその子会社を合算して、他の会社の株式の5%以下しか保有することはできないというのが原則であります。ただし、一定の例外がございます。

次に、(4)の銀行持株会社と銀行持株会社子会社の業務範囲規制でございます。銀行持株会社の定義は、資料にあるとおりでございますが、銀行持株会社は、子会社の経営管理及びその附帯業務、そして共通重複業務のみを行うことができます。また、銀行持株会社の子会社の業務範囲は、銀行子会社の業務範囲とほぼ同じになっております。そして、銀行持株会社とその子会社による他の会社の議決権保有は、合算して15%以下でなければならないとされています。

2枚目であります。次に、(5)の銀行主要株主規制でございますが、先ほども少し事務局説明でございましたが、銀行の議決権の20%以上を有する者または15%以上を保有する実質的支配力を有している者は、銀行主要株主として内閣総理大臣の認可を受ける必要があります。しかし、この銀行主要株主には業務範囲規制がない。その子会社等についても業務範囲規制はないわけであります。

その次に、(6)で、銀行取締役には兼任規制がかけられております。

そこで、次にⅢの銀行業務範囲規制の見直しが現在検討されるようになっている背景を考えてみますと、まず何よりも超低金利、マイナス金利の下で銀行収益が非常に悪化しているということがあります。そこから、銀行の業務範囲を拡大することによって銀行の収益力を高めるべきではないかといった考え方が出てきているわけであります。次に、IT化の進展等による銀行を介さない資金移動や決済方法が発展しているということもそのような必要性を感じさせているということであります。次に、IT業と金融業の間の境界が言わば融解してきているという事情があります。そこで、IT関連業務に銀行が進出できるようにすべきではないかということが問題になります。最後に、地域経済の活性化ということが現在非常に大きい課題になっているわけでありますが、それに銀行が貢献してもらうためには銀行の業務範囲を見直す必要があるのではないかという主張がなされているわけであります。

次に、Ⅳの海外における銀行業務範囲規制について見てみたいと思います。これは、海外ではbankingとcommerceの分離の問題として論じられております。

日本におきます銀行業務範囲規制のモデルになってきたのがアメリカであります。アメリカでは、銀行の商業への直接投資が多くの銀行破綻を招いたという経験があり、19世紀半ばまでには、銀行は商業、すなわち非金融業務を行うことができないというbankingとcommerceの分離原則が確立したところであります。細かいところは省略しますが、判例やOCC(アメリカの銀行監督当局)による解釈を通じて、少しずつ銀行の業務範囲は広く解されてきてはいますけれども、基本として現在でもbankingとcommerceの分離、銀行は非金融業務(商業)には進出できないという原則が取られております。また、連邦の銀行持株会社法により、銀行株式の25%以上を所有するなどして、銀行を支配する、または支配的な影響力を与える者を銀行持株会社として定義し、銀行持株会社及びその子会社は銀行業務に非常に密接に関連した業務以外を行ってはならないという業務範囲規制がかけられております。これもbankingとcommerceの分離の考え方に基づくものであります。したがって、アメリカでは、一般事業会社は銀行持株会社としての規制を受けることなく銀行を支配することはできないのが原則であります。一般事業会社が銀行持株会社になると、今述べましたような業務範囲規制を受けることになります。ただ、最近、一定の例外が認められておりまして、1999年、グラム・リーチ・ブライリー法によりまして、一定の条件を満たした銀行持株会社は、3ページ目ですが、マーチャントバンク業務子会社を有することができるということになっております。そしてまた、州法に基づく銀行においては、bankingとcommerceの分離原則の例外が認められる例がありまして、フィンテック企業、自動車製造会社、小売業者などがIndustrial Loan Companyと呼ばれる州法銀行を支配する場合がございます。

次にイギリスでございますが、イギリスにおいては、銀行業務と商業(非金融業)の分離という制度は存在しておりません。つまり、制度上は分離原則はないわけであります。しかし、イギリスはBasel Accordなどの銀行の健全性規制が、銀行が併営する、あるいは銀行の関連会社の非金融業にも適用されると解釈してきたために、銀行が非金融業を併営したとしても、そういう規制を受けると採算が取れないという理由で、実際には他業を併営することは行われていないようであります。なお、イギリスは、預金受入れを営む大銀行5行についてのみ、いわゆるring-fencingと呼ばれる規制を課しております。これは、ring-fenced bodyは、自己計算における投資取引、商品の売買が禁止されるとともに、他の会社を子会社化すること、20%の株式保有、一定の類型の会社の株式取得などが規制されるというものであります。

次にドイツでございますが、ドイツにおいては、bankingとcommerceの分離原則は採られておりません。そのため、フィンテック企業が銀行になったソラリスバンクのような例があります。同行はAPIを開放し、デジタルバンキングサービスにアクセス可能なプラットフォームを提供して手数料を得ております。また、仮想通貨のカストディーサービスを営む完全子会社を設立しております。ヨーロッパ中央銀行がマイナス金利を取って、ドイツでも金利は低下しておりますが、ドイツの銀行は、個人向け銀行口座にマイナス金利を導入したり、口座維持管理手数料を取るなどして、日本に比べれば銀行の収益悪化はひどくない様子であります。ただ、特に州銀行は収益が悪化しておりまして、事業会社を含めた株式保有を行っているものの、それによる収益はあまり上がっていないということのようであります。ドイツは、信用機関、つまり銀行から自己勘定による取引部門を分離し別会社にすることなどを要求しております。

次に、それ以外の国でありますが、フランスなど、ドイツ以外のヨーロッパ大陸諸国の多くは、bankingとcommerceの分離原則を採らず、事業会社が銀行の子会社になったり関連会社になったりしております。もっとも、フランスは、投機的ファンドなどの一定以上の持分保有を銀行に禁止したり、プライム・ブローカレッジ業務の禁止を定め、銀行のグループ会社が農産物などの一次産品の自己勘定取引や高頻度取引を行うことを禁止しております。次に、4ページ目でございますが、アジアを見ますと、シンガポールは、緩やかな規制ではありますが、bankingとcommerceの分離原則を取っているとされております。台湾もそのようであります。しかし、オーストラリアでは、bankingとcommerceの分離原則は取られずに、さらにはイギリスとは異なりまして、Basel Accordなどの健全性規制は、非金融業への銀行による投資を制限することにはならないと解釈することによって、銀行は非金融業への多くの投資を行っているようであります。オーストラリアの銀行界は、銀行も多角化しないと存続できないという主張をしているそうであります。

次に、Ⅴとして、業務範囲規制、持株規制の趣旨を考えてみたいと思います。以下のような理由により業務範囲規制や持株規制がなされていると言われております。第1に、銀行は免許業種であり、その機能を発揮するために本業専念義務がある。第2に、他業の兼営や他業の会社をグループ会社にすることによって銀行の固有業務の健全性が損なわれることを防ぐ。そこから顧客へのサービスの低下、預金者・取引者の資産の安全を害する事態を防ぐ。第3に、預金者の利益と他業の利益の間の利益相反を防ぐ。第4に、銀行監督の効率化・実効化を図る。これはどういうことかと申しますと、他業に関する部分というのは金融庁が監督することは実際上難しいのではないかということであります。第5に、銀行業による産業支配への競争政策上の懸念。第6に、銀行による優越的地位の濫用にならないか。それを防止するという観点。第7に、預金保険などのセーフティーネットや、免許業種であることにより銀行に生じる利益が他業において用いられて、競争上それが利用されるということによる競争上の公平性の阻害を防ぐということが挙げられております。これらの中で特に問題になるのは、②と③の問題だと思われます。戦前の機関銀行の例や戦後の幾つかの金融機関の破綻において、②、③が実際上問題になったことからは、これらの問題に対する対処として他業禁止の分離原則を取るということは考えられるところであります。銀行は、健全性を第一にするべきであって、他業に手を出してリスキーな行為を行うべきではないし、銀行員は企業風土としてリスクを取る行為に慣れていないし、また金融システムの安定性を維持するためには、健全性を第一とする銀行の企業風土を維持すべきだという意見もあるところであります。しかし、他方、先ほどⅢで論じましたような背景から、bankingとcommerceの分離原則を廃止または緩和すべきだという主張も強くなされております。銀行の収益性の悪化は著しく、現在のままでは多くの金融機関、特に地域金融機関は存続できなくなるおそれがある。他業への進出を認めて収益性の向上を図れるようにすべきだという意見であります。また、銀行の情報力や資金力などを産業に活用することによって、経済、特に地域経済の活性化を図るべきだという意見も有力であります。確かに、2019年の監督指針により銀行業高度化会社の定義の見直しが行われましたように、地域経済の活性化のために銀行の業務範囲を見直す必要性は否定できないところであると考えます。また、制度論的には、分離規制といった業務範囲を入り口から限定することによってリスクを遮断するのではなく、利益相反や各種健全性規制など、個別の危険行為を除去することによって対応すべきだ、5ページ目ですが、という意見が海外の学者の論文などでも主張されているところであります。確かに、銀行法には、大口信用供与規制、特定関係者との取引の禁止、取締役等に対する信用供与の制限、銀行グループとしての自己資本比率規制、銀行グループとしての経営管理、銀行持株会社に係る同一人に対する信用供与限度規制などの規制が存在して、そのような利益相反等に対する手当てが相当なされております。これらをさらに緻密な規制にすることによって対応するということは考えられるところであります。ドイツなどが取っている方法であります。そのようにして銀行やその子会社の業務範囲は原則自由とした上で、イギリス、ドイツ、フランスの規制に見られますように、例外的に特に危険な業務に限定して、業務範囲規制を銀行やその子会社等に課すという、言わば従来の原則と例外を逆転させるという考え方もあり得るかと思います。しかし、業務範囲や株式所有などを原則自由化した場合、そのような対応だけで銀行のリスクの限定や利益相反防止に十分であるか、銀行行為の規制や検査体制、監督体制、さらには銀行が破綻に瀕した場合の制度的な対応がその場合に十分に機能できるかなど、なお検討が必要であると思われます。さらに、銀行やその関連会社の業務範囲や株式保有規制を原則自由化することによって、本当に銀行の収益構造を改善することができるのかといったことについては、実証的・実務的な検討が必要であると思われます。最後に、これらの業務範囲規制の改革等の成否にかかわらず、固有の銀行業務に関し、海外の銀行におけるように例えば預金者に口座管理料を徴求したり、店舗の整理等をはじめ業務の在り方の見直し、非常にコストがかかっている銀行間決済システムの在り方やその料金体系の見直しなど、本来の銀行業務の収益性を改革することがまず必要であるという意見もプロジェクトではあったところであります。

次に、Ⅵとして、IT化、フィンテックの発展と銀行業務範囲規制・持ち株規制の関係であります。以上のような業務範囲の問題の中でも、特に注目すべき問題として、IT化やフィンテックの発展によって銀行業(金融業)と非金融業の境界が不明確になっており、銀行が有する顧客データなどを活用して、金融業と非金融業を併せ営むことによるシナジーを銀行は活用すべきではないかということが議論になっております。具体的には、フィンテック会社への投資、顧客の不動産会社への紹介、銀行が有する顧客に関するビッグデータの販売、ある商品の売主と買主のあっせん情報の他の商品の広告や販売促進への利用、銀行の電子支払システムから得られる消費者の購買行動に関するデータの非金融サービスに提供する利用、海外への決済インフラの構築業務や販売、サイバーシステムの堅固さ・監督・ガバナンス等を他の者に提供する、顧客due diligence手段の非銀行利用者への販売、その他の銀行データに基づく非金融コンサルティングサービスの構築・販売などが例として挙げられております。これらの業務の多くは、既に銀行が保有しているデータやスキルを活用するビジネスでありまして、新たな投資が必要な場合は少なく、フィービジネスがほとんどで、銀行に財務的な負担をかける心配は少ないし、銀行業務との利益相反の可能性も少ないと考えられます。これらの中には既に付随業務や銀行子会社等の対象業務として認められているものもございますが、それらになお課されている制限、例えば、総理大臣の認可要件、収入依存度規制、固有業務を超えないという分量の制限などの制限を緩和することが考えられますし、もしまだ認められていない業務であれば、認める方向で検討されるべきであるという意見が出されました。

最後に、Ⅶとしまして、主要株主規制とbankingとcommerceの分離原則の関係であります。現行銀行法には、銀行単体、銀行子会社、銀行持株会社の子会社には業務範囲規制が課されておりますが、銀行主要株主あるいはその子会社には業務範囲規制を課していないという、業務範囲規制のアンバランスの問題があります。これは、主要株主規制の立法を行った1998年頃には、金融危機の下で日本の銀行が危機に瀕していたことから、事業会社に銀行業務に進出してもらって、競争を通じて日本の銀行を活性化しようとして、このようなアンバランスが認められたと言われております。しかし、銀行やその子会社などの業務範囲規制は、事業会社のリスクが銀行に及ぶことや、銀行業と非金融業の間の利益相反を防止することに主な目的があることから考えますと、非金融業を営む事業会社に銀行が支配されることによる銀行業務へのリスクの波及や利益相反の問題は、銀行が事業会社を子会社とする場合のリスクの波及や利益相反の問題より小さいとは言えないと思われます。将来的には、両者の業務範囲の制限は共通のものとすることを目指すべきではないかと考えられます。

簡単ではございますが、以上でもって私の報告とさせていただきます。

【神作座長】

岩原先生、誠にありがとうございました。

続きまして、高田メンバーより御説明をお願いいたします。

【高田メンバー】

それでは、私のほうから、資料5を使いまして御説明をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。今回は大変貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。

まず、今回の諮問を受けまして、銀行をめぐる環境認識というもの、1番目、まずコロナショックがもたらす影響、それから2番目に、4つの特に構造変化についての環境認識、それから3番目に、それを受けました地域銀行の戦略転換といった話をさせていただければと思います。

まずは第1番目の項目で、1ページ目ですけれども、コロナショックがどのような影響を及ぼすかということになります。基本的には産業構造転換と資本といったことが中心になります。

2ページ目のところでございますけれども、そもそも今回のコロナショックというものは、売上げ消失に伴う「資本」の毀損になります。となりますと、短期の流動性供給だけでは済まないといったことがあるわけでありまして、今回のコロナ関連の緊急融資の多くは赤字補塡融資、事実上の資本供給に当たっているということでございます。となりますと、全国あまねく資本や長期の資本の供給に伴う長期にわたる金融機関の安定的な関与というものが必要になってくるわけでありまして、資本を仲介することを中心とした金融機能が重要でもございます。また、資本の供給に加えて、事業再生でありますとかコンサルティング業務というものが重要になってくるということでございます。

次に、3ページ目でございますけれども、今回の危機ということで、従来のバブル崩壊というものと比べて少し考えてみたいと思います。こちらのまとめ表でございますけれども、バブル崩壊というものは資産デフレで、バランスシートの左側の毀損ということが出発点になったわけでございますが、今回のコロナショックは売上げ消失に伴うP/L上の損失、これが資本の毀損になり、バランスシートの右側が、資本の部分が出発点ということになるわけでございます。バブル崩壊につきましては、いわゆる「バブル3業種」と言われた問題、不動産を中心とした問題でありますが、これが大手の企業を中心とし、これが大手の銀行を直撃したという構造になったわけでございます。一方、コロナショックにおきましては、比較的中小にわたる「コロナ7業種」と言われる、これは私が勝手につけた命名でございますけれども、影響を及ぼし、これが地域の金融機関を直撃しやすい構造にあるということでございます。

今申し上げましたバブル3業種とコロナ7業種を比較したのが次の4ページ目ということになるわけでございます。バブル3業種は、左側にございますように、債務負担の重い、不動産関連の不動産、建設、卸小売といったところが中心になるわけで、いわゆる過剰債務という形になりました。一方で、コロナ7業種の場合には、こちらの右側にございますように、資金繰り、それから自己資本比率、損益分岐点から私どもで総合的判断をした指標でございまして、その結果として、陸運、小売、宿泊、飲食、生活関連、娯楽、医療福祉といった、いわゆる地域中心の中小・零細といったところに影響が及ぶということでございます。

この性格づけを次の5ページ目のところで御覧いただきたいと思います。コロナ7業種は、特徴といたしまして、まず左側にございます、地方銀行の融資シェアが高いということで、地域銀行への影響が大きくなります。また、私はこのコロナ7業種の性格づけ、4:2:1と申し上げているんですけれども、雇用が4割、売上げが2割、利益が1割ということで、生産性が低い、非効率セクターに当たるケースが多いということでございます。その結果といたしまして、こうした低生産性に対して、効率化、事業構造改革が重要になるわけでございますので、単に債務調整とともに、コロナ7業種を中心とした地域の再生、また構造転換というものは非常に重要になっておりまして、この事業構造転換を取り得るインフラというものが重要になるということではないかと思います。

また、このコロナ7業種の状況が現在どのような状況であるかを見たのが次の6ページ目でございます。これはあくまでも参考として見ていただければと思いますが、この半年間で見ましても、雇用が、特にコロナ7業種で、随分減っています。また、売上げ、それから利益というものも減っている状況がお分かりいただけるわけであります。

これを受けまして、次、7ページ目でございますけれども、今回、大変な金額がコロナ7業種向けの緊急融資という形でなされたわけでございますが、こうした貸出しを短期間で返済することが難しい状況にあるという現実があるわけでございます。コロナ7業種向けの緊急融資というのは事実上の固定費をカバーする赤字補塡融資になっておりますので、売上げ消失で、固定費対応の融資を償還するといたしますと、他業種と比較して非常に長くなり、短期間での返済が困難になるということでございます。もちろん既に飲食を中心とした不動産の固定費を軽減すべく家賃支援給付金等の公的サポートはなされておりますが、それでもなかなか厳しい状況がございます。すなわち、今後、債務調整に加えて、DESでありますとか、いろいろ含めた債務調整、いろいろな選択肢が必要になるわけでございますし、また、こうしたものに対応して、再生の業務、エクイティー的な対応と申しましょうか。再生コンサル業務といったようなものが重要になるわけでございます。こうした事業構造改革、これに地域の銀行がいかに対応できるかといったところが重要な課題になろうかと思います。

それでは、2番目の論点、地域を中心とした4つの環境認識ということを申し上げたいと思います。1番目が高齢化、2番目が地域格差、そして3番目が企業の資金余剰への転換、そして金利水没というような状況でありまして、加えるといたしますと、IT化、フィンテックの台頭といった議論もあろうかと思います。それぞれにつきまして、次の9ページ目以降で見ていきたいと思います。

まず、9ページ目のところでございますが、高齢化ということになるわけでございまして、こちらにつきましては、地域における高齢化、その中で後継者不足、人材の不足というものも制約になるという点があろうかと思います。

それから、第2の論点、次の10ページ目のところでございますが、地方と都市圏の格差拡大。特に地域の中での人口減少が強まる状況がこの絵からもお分かりいただけるわけでございます。バブル崩壊は比較的都市に集中したわけでありますが、コロナショックの場合には地域全体に広がる前提であるということで、いわゆる金融機関も含めた存続問題になるといったことでございます。

次に、11ページのところをちょっと御覧いただきたいと思います。第3の転換として、企業が資金余剰に転換したわけでございまして、そうした余剰セクターへの融資というのは、本業たる融資ではございますが、南極で氷を売るような状況になってしまっているということでございます。ただ、南極でも必要な氷というのは、資本が今不足した中では、資本性の対応でございますので、こうしたものをどうできるかが問われます。そういう意味では、これまで資金調達インフラであった地域金融機関のビジネスモデルに大きく転換を迫るような状況になっているということでございます。

また、4番目の転換、次の12ページでございますけれども、大きく分けて、金利水没、利払いが低下する、その中で預貸業務では困難な状況ということでございます。こちらの図表は法人企業統計から取ったものでございますが、30年近くで企業収益は3倍以上になったわけでありますが、支払利息は6分の1になり、配当は5倍以上になっているというような状況でございまして、こうした状況の中でなかなか、企業が収益を増しても銀行にその見返りが来ない、いわゆる構造不況と言われるような状況に転じていることを示すわけでございます。

この状況でございますが、次の13ページのところにありますように、超低金利、マイナス金利という状況は、金融機関、それから家計から政府、企業への所得移転をもたらすような、こうした試算も可能ということになろうかと思います。

また、次の14ページのところにございますように、この金利水没というようなものを図示したのが、私ども、この五、六年使っております、水没マップとしているものでございます。こうした水没は、日本だけの状況ではございません。横軸が年限、縦軸が国の名前でございますけれども、左上のところにある真っ黒の水没状態、マイナス金利の状況の中では、水中生活、長短金利差を取ることができない状況です。もちろんマイナスの預金ファンディングができればいいわけでありますが、なかなか、そう容易ではないといった中で、商業銀行を中心とした生き残りが難しいわけです。中でも、こうした預貸に依存した地域の金融機関の難しさがあるということになるわけでございます。

こうした状況の中での生き残り策というものをまとめたのが次の15ページのところでございまして、私は名づけて「LED戦略」という言い方をしておりますけれども、今、先ほど、前のページの水没マップの中で、要は長くしないと金利がない、まず、L(Long)ということになります。それが第1。それから、自分の国が水没していれば、ほかの国に、E(External)という形になるわけで、これがEになるわけであります。また、金利以外のものに多様化する、要はDのDiversified、多様化ということになります。その対象が、例えばエクイティーであり手数料の世界でありというような多様性というものがあるわけであります。しかし、残念ながら、地域の金融機関の場合は、この中でもEとDのところが非常に難しいような状況になっているというところに制約があるわけでありますし、また地域の財政にも制約が生じやすいということにもなるわけであります。

こういった状況を絵にしたのが次の16ページということになるわけでございまして、次のところにありますように、金融の及ぶところがまず海外、先ほどのLEDでいえばE、それから、商社化と言われるような、いわゆる事業のところに進出していくという形で、この絵のところでいえば川上のところに遡る動きになります。また、キャッシュフローがある源泉のところに行きながら、企業、地域の再生を可能にするような状況というものが重要になってきます。すなわち、持続的成長実現までに、川上に遡ってキャッシュフローを捉える川上戦略、また、それに伴う実際のリアルビジネスのところにいかに影響を与えるかということで、この絵の姿というものは、企業と、それから金融、金融と非金融の一体化と言えましょう。こうした状況が昨今のIT化の中でもより強まっている。また、こういう中で必要な多様なインフラは何かというのが議論の対象になるわけでございます。

そこでまとめましたものが次の17ページということになるわけでございまして、今、マネーフローの転換から預貸中心の業務だけでは対応が難しいとなります。一方で、余剰になった企業が求めるのはエクイティー、情報・ネットワークということになるわけであります。また、コロナショック下で重要なのは、資本の仲介、事業再生ということにもなるわけであります。また一方で、地域の問題として、高齢化の中での事業承継への対応。また、新たな産業構造転換に向けベンチャー支援にも必要な資本や人材があります。そういう状況の中で、地域の中に非常にこういったネットワーク、人材を擁する地域の銀行が擁する潜在力にも注目しているわけでございますし、また、そういう中で地域と一体となって事業を行う器づくりというものも重要になろうとしているわけであります。これまで地域の主要な金融機関というものは、事実上、安定的な貸出しとして、疑似エクイティーとして供給してまいりました。こうしたものを、疑似エクイティーをリアルエクイティーとしてファンド的な対応を行うこと。また、事業再生・地域再生といったようなものを行う器をどうするかというのが重要になるわけであります。特に金融と非金融が融合する状況の中で、効率性の観点からも金融機関の所有の人材、データをどう活用できるか。既に金融機関保有の株式もかなり減少している中で、企業が保有する資本の厚みも増している中で、金融と非金融が同一化している状況も大きな変化と考えることができようかと思います。

次の18ページのところは、1つ、事業化、商社化というものを挙げた事例ということで、参考としていただければと思います。

また、19ページのところは、こうした商社化と言われるようなもの、例外的に地域商社として出資規制というものもいろいろ認められてまいりましたが、先ほど岩原先生の御指摘もございましたように、さらなる分野の拡大といったところも論点になるのではないかと思います。

それでは、最後になりますけれども、次のページのところで、地域金融機関の戦略転換ということを話題にしようかと思います。要は、どうすれば持続性のあるビジネスモデルを構築しながら地域貢献を実現することができるかという論点が中心になろうかと思います。

次の21ページ目でございますけれども、先ほどバブル崩壊と申し上げましたが、バブル崩壊では大手銀行がかなりの負担を背負うような形で大きな影響につながりました。一方で、地方銀行を中心とした地域の場合は比較的その負担を免れた要因をここのところにまとめさせていただいております。

ただ、今回の状況、コロナ禍における状況は、次の22ページでございますけれども、今回の場合は特に地域の金融機関に影響が及びやすいといった要因があるのではないかということでございます。先ほど申し上げたコロナ7業種を中心としたところの論点ということになるわけでございます。とりわけ地域金融機関は従来から預貸業務の収益の比率が高く、そういう意味で、通常の収益の多様化というものがどうしても小さい。先ほど私がLED戦略と申しましたが、EとDの比率が低いというような状況の中、どうしても構造不況的な環境になりやすかったという部分があろうかと思います。

こうした論点を受けて、次の23ページ目のところでございますが、こうした不況下においた状況、歴史的にはどのような対応があったかというのをまとめた表ということでございます。戦後の産業調整を行うときには、一般的にこの4段階、すなわち、構造不況認定を行いながら独禁法適用除外をし、そして再編と事業再建が行われ、それにより持続的な収支構造を確立し、そして同時に新たな事業分野への転出、業態転換というものがこれまでなされてきたわけであります。そういう観点から、今回、地域の銀行にこうした動きを適用して考えるとすれば、地域銀行に対し、この5月に特例法による独禁法適用の緩和というのが既に行われ、11月から施行ということになっております。そして、それに伴いまして再編、事業再建といったことも視野に入る状況ではございますし、また同時に、持続的な収支構造を行うためにどうしたらいいのかという議論も行われます。また同時に、新たな分野への進出、新たな収益という形で規制緩和、既に商社化でありますとかデジタルバンク、投資分野といったところに動きが出てきているわけであります。

そういう中で、次の24ページに、地域金融機関の持続性あるモデルをまとめたのがここのところでございます。バブル崩壊、それから金融危機時の公的資金問題というのは、資本の問題、一時的な対応でございましたが、一方、今回の問題は収支の問題であるだけに、そういった対応が、公的資金だけでは困難で、収支問題には、持続的な収支構造をいかに作るかということが重要になるわけです。そのためには、先ほど申しました再編・統合・共同化といった幅広い選択肢もあります。また、持続的な収支構造にするために、社外流出を抑制しながら、例えば配当率を引き下げたりというようなこともあるわけでありますし、また、新たな分野にということであれば、貸出しに依存しない無借金も含めた多様な企業ニーズへの対応、また家計のニーズ、また業態転換も意識した商社化というようなことでの対応もあります。また、収支の引上げのためにエクイティー的な取組、配当は増えておりますので、そういう中で、金融、非金融の境界がなくなる中で、デジタル化に対応した新たな専門的な対応というものの実際のところも重要な動きになってきているということでございます。

また、今申し上げました収支の構造の中で、持続性のある収支構造という観点から見ますと、次の25ページのところにございますような上場・ガバナンスの在り方も重要になってこようかと思います。戦後、拡大する商業銀行業務に対応し、資金調達が重視されてきたわけであります。そのために、預金中心の資金調達の安定にも銀行の上場化、また普銀転換というものも行われたわけであります。しかしながら、前述の企業の資金余剰化、拡大均衡が転換し、金利水没で調達メリットが低下するという中で前提が変わりました。そういう中で、持続的な収支構造転換に向け、上場の問題も含め、社外流出抑制、配当率の引下げというものも重要になってくるわけであります。まして、海外の株主に対して高い配当率をというようなことを地域の金融機関として本当にすべきなのか。そういう中で、海外株主保有が高い地域銀行ほど、実際に株主への還元が高い、社外流出が多いという実証研究も出てきております。そこで、地域で持続的な配当を維持する協同組合組織というものも注目されているわけでありまして、例えば上場から非上場化、また、上場と非上場の中間であります株主コミュニティ制度というものも選択肢にあるわけであります。また、こうした非上場株を売買できるインフラ、また地域の水準に合わせた配当還元ということも重要でございますし、また、そうなった場合の共同インフラというものも重要です。ただ一方で、金融機関側も質の高いガバナンスをもって経営する必要もございますし、特に地域における出資者に支えられることでのガバナンスというものも重要かと考えております。

最後にまとめたのが、最後の26ページでございます。いわゆる地域への貢献を可能とするインフラづくりをということで、従来の預貸モデルから資本仲介ができる地域の支援をということでございます。従来、商社が物の仲介から投資業務になったような形で、地域商社にもファンド的な、またコロナショックで必要とされる資本を仲介するような地域密着型の投資銀行業務的なものも一つの論点になろうかと思います。また、地域で必要なヒト・モノ・カネ、こうした地域の資本をリアルなビジネスに向ける地域の活性化、事業を起こすというような状況も必要であるわけであります。要はプライベートエクイティーのハンズオンと同様に経営人材を仲介すること、また、企業家的な対応でもって地域貢献を業務範囲の拡大で行いながら、再生、事業承継、ベンチャーの支援にも、また地域で必要とされる海外への対応というものを支援することも重要であります。最後になりますけれども、実業、それから金融のコングロマリット、金融と非金融の融合的な対応で地域の活性化をいかにできるかと、こういう仕組みづくり、まさに今、このコロナ禍において、地域、銀行の一体的な対応というものが重要な局面ではないかと考える次第です。

以上でございます。どうもありがとうございました。

【神作座長】

高田メンバー、御説明、誠にありがとうございました。

それでは、メンバーの皆様より御質問や御意見をお伺いできればと存じます。本日は初回の会合でございますので、諮問事項や本ワーキング・グループの検討課題をめぐって、幅広い観点から御意見を頂戴したいと存じます。御発言される際は、オンライン会議システムのチャットに全員に宛てて御自身のお名前を入力、送信してください。それを確認した後、私が指名をさせていただきますので、御自身のお名前をおっしゃっていただいた後、御発言をいただければと存じます。どなたからでも結構でございます。御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。家森先生、お願いいたします。

【家森メンバー】

ありがとうございます。神戸大学の家森です。

まず、岩原先生のおまとめいただいたものは、非常に参考になりましたし、高田先生の特に17ページにまとめていただきました現状認識についても大変共感しながら伺いました。今回のコロナ禍の中で、やはり地域では銀行や信用金庫が非常に頼られてきたということなので、銀行、信用金庫、信用組合の在り方を考えるのは非常に重要であると思っておりますし、高田先生からもご指摘がありましたように、流動性の提供という局面はここのところまででできてきたわけですけれども、今後、本業支援というところで非常に難しいことになるのではないかと思っております。それで、中小企業の課題というのが資金繰りだけではなくなっていて、いろいろなサポートが必要になってくるが、地方でそれを提供できるのは現状、銀行、信用金庫、こういうところではないかと思っていまして、議論の必要性が非常にあると考えております。

それから、伝統的に銀行の業務範囲規制について、今日、岩原先生から御指摘いただいたいろいろな理由があるんですが、それぞれについて、経済環境の変化の中で緩和の余地が広がってきているのではないかと思います。一個一個について話をするのは、今日は時間の制約上、避けますけれども、そうなってきているのではないかと考えております。現状、逆に規制が銀行や金融機関の行動をゆがめているのではないかとも考えております。例えばですけれども、不動産関係の業務について、私が銀行に対してアンケート調査をやると、不動産に関してのアドバイス、助言をしたことがあるという銀行の支店長さん、非常に多いんです。それが本業の収益につながったかというと、実は他のいろいろな項目の中で、ビジネスマッチング等も聞いているんですが、非常に多くの方々が、不動産関連が本業の利益につながったと言っているんです。しかし、現状、御案内のとおり、不動産仲介手数料を取るわけにいきませんので、恐らく融資をしているということになると思うんです。そうすると、本当は例えばこの不動産よりも違うものを買ったほうが顧客にとっていいのに、ローンはどちらが大きいかということが影響して、どうしても判断にバイアスが出てくるのではないだろうかと思うわけです。不動産関係の業務を今日は例にいたしましたけれども、規制されているために、本当にお客様にとってふさわしい助言や支援ができていない心配はないのかということを検証する必要があるのではないかと思っています。先般、規制緩和された人材紹介に関しまして、最近までに多くの銀行が参入されていて、これについて今一生懸命やられていますが、ニーズがこれだけあったということを示していると思います。まだ緩和できていない部分でお客様が求められている点というのはたくさんあるのではないだろうかと予想しております。したがいまして、銀行等の業務範囲規制について、規制を残すべき理由が多々あることも事実であります。全くの全面自由にとは私も思っておりませんが、緩和の余地が広がっているのではないかと考えております。

それから、今後事務局にお調べいただきたいことを1つだけ申し上げたいんですが、事業会社が銀行を持っているという問題です。これについてイコールフッティングしていこうということはよく分かるんですが、これまでもう20年ほどの歴史があるんですが、この形態を取っている銀行においてどのような問題が起こってきたのか。全然問題が起こってこなかったとすれば、それは偶然と認識すべきなのか。この間、リーマンショックもあり、コロナショックもありということで、大きなショックがありながら大きな問題は起こっていないとすれば、現行のやり方がかなり有効に働いていたのではないかというような気もするんです。事業会社傘下の金融機関について問題が起こったのかどうか等について教えていただければと思っております。

まとめますと、これからの議論ではありますが、リスクを抑えながら規制緩和をしていく余地があると思いますし、今般の独禁法の改正の中でも、許可した後にモニタリングでしっかり見ていくというような対応をされたわけですので、そのようなアプローチも十分、国会でも御承認いただいているわけですから、国民の皆さんにも御承認いただけるのではないかと期待しております。ただし、そのときに、高田先生の26ページの資料にもありましたように、ガバナンスのこともやはり考えていく必要があるのではないのかと考えます。

以上です。どうもありがとうございました。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、野崎メンバー、お願いいたします。

【野崎メンバー】

野崎です。よろしくお願いします。

まず、岩原先生のほうから、本当に立法趣旨、それから環境変化による見直しの整理をしていただいて、すっきり頭の整理ができました。それを受けて、3点御指摘申し上げたいと思います。

まず第1に、地域金融の収益性の問題についてですけれども、振り返りますと、1997年の店舗通達の廃止以降、成長機会や収益機会を求めて、越境、すなわち隣県のほうに出て行って他行との消耗戦を繰り返している状況があると思われます。これに、低金利が加わり、さらに拍車がかかったという状況であります。ですから、ある意味で業務範囲の緩和によって収益の機会の見つけ方というものについて銀行の行動を変えていく、そういうインセンティブをつけるのは有効だと思います。

それから、2点目として、規制の在り方についての見直しですけれども、今までの限定列挙型からイギリスあるいはドイツ型の業務範囲についての制約廃止へというのは非常に急過ぎるというところがあります。とはいっても、やはり機会の公平性というところを踏まえますと、認可、あるいは、収入制限等の緩和あるいは撤廃等、今後議論を深めていくべきじゃないかなというのが2点目です。

それから、3点目です。主要株主規制に関して申し上げます。やはりここの部分で気をつけなければいけないのは、先ほど家森先生のほうから御指摘があった、過去にいかなる問題があったか、あるいはなかったのか、この点、検証が必要だということです。それと、イコールフッティングを前提に、例えば事業会社を締め出すということについては、今の状況としては反対であります。というのは、テクノロジーを持った事業会社、あるいは例えば地域の公益性を非常に大切にしている企業と一緒になって、例えばエコシステムをつくるとなったときに、そういった機会を排除するというのはあまり賢明ではないのかなと考えられるからであります。

今後の議論についてですけれども、ぜひ機会の公平性を踏まえて実効性の高い見直しをしていきたいと思います。そしてエクイティーを通じた、やはり企業支援あるいは地域支援ということも重要です。先ほどの高田先生からの御指摘のとおり、取引先の資本基盤がかなりコロナショックで傷んでいるというところを踏まえて考えていくべきでしょう。

それから、最後に3点、先ほど冒頭で事務局のほうから御説明いただいた部分ですが、IMFから、「株主からの収益性への圧力を軽減するのは難しい」というコメントを御紹介いただきました。やはりここは地域経済、地域社会と、それから株主資本市場との緊張関係、この辺については、先ほどの高田先生あるいは家森先生の御指摘のとおり、少しガバナンスの在り方というのを見直す時期に来ているのかなと考えております。

以上です。ありがとうございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続いて、小倉メンバー、お願いいたします。

【小倉メンバー】

ありがとうございます。小倉と申します。よろしくお願いいたします。大変丁寧な御説明をいただきまして、誠にありがとうございました。その中で、岩原先生の御説明の中にありました、5%ルールあるいは15%ルールに関する点につきまして意見を述べさせていただきたいと思います。

まず、この規制の趣旨というのは、1つは銀行による産業支配、あるいは優越的地位の濫用を防ぐというところがあろうかと思うのですけれども、どういう状況なのかという具体的なイメージにつきまして、海外の研究者の間で最近話題になっているのが、コモンオーナーシップの問題というのが話題になっており、それが競争制限的に作用するとの指摘があります。つまり、投資運用会社が大量に株式を買って投資信託を組成するわけですが、そうして買った上で議決権を行使する。そうしますと、例えば航空産業でいえば、航空産業内の航空会社AとB、競合している会社の両方の大株主に特定のファンドがなってしまう。そうすると、競争制限的な圧力がかかってしまう。実際にそういう現象が出ているのではないかという実証研究が最近出ておりまして、そういう意味では、産業支配、あるいはそれが競争制限的に作用するおそれがなくはないというところではあります。ただ、それがいつでもどこでもあるのかといいますと、多分そうではなくて、例えば中小企業向け融資を中心とする地域金融の世界でそんな心配が本当にあるのかと言われると、そこは疑問があるところです。そういう意味では、産業支配、優越的地位の濫用の防止というのを、防ぐというのを目的として5%、15%と画一的に規制するのは、ちょっと画一的過ぎるかなと思われます。もう少し柔軟に弾力的に対応する、あるいは独占禁止法の運用のほうで工夫していくとか、公正取引委員会との連携を強めていくとかといったやり方で少し工夫する余地があるのではないかというのがまず1点でございます。

それから、他業からのリスクですね。他業を兼業することで余計なリスクを抱えないようにという趣旨の規制もあるわけなのですけれども、そういう規制の趣旨もあるわけですが、その場合であれば、特定の企業の5%以上持ってはいけないというだけではなくて、むしろ大口信用供与規制のような規制を出資に関して設定する。つまり、銀行のサイズに比べて、その特定の企業に対して出資し過ぎないようにしていただく、そういう形でリスクを抑えるような規制の在り方もあるのかなという考えを持ちました。

それから、最後にもう一点なのですが、高田先生からの御報告にありましたとおり、今回のコロナ禍の支援というのは、最初は資金繰りの支援だったのですが、結局のところ、資本性の資金による支援にならざるを得なくなるだろうというところでありまして、それに加えて、最近、自然災害がだんだん激甚化してきていて、そういった様々な突発的な損失に耐え得るような資本を中小企業もある程度積まなければいけない、あるいはそういう資本を確保する道をつくっておかなければいけないというニーズが非常に高まっていると思います。そういう意味でも、先ほどの出資規制等々を弾力的に運用して、資本性資金の供給の道を広げていくというのは方向性としては検討の価値があるところなのではないかなと思った次第でございます。

以上でございます。ありがとうございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、岩下メンバー、お願いいたします。

【岩下メンバー】

どうもありがとうございます。岩下でございます。今回の金融機関の業務範囲規制の見直しを行うということは大変時宜にかなったことだと思っておりまして、これに対して賛成の立場から、幅広い視点で意見をということですので、申し上げさせていただきます。

先ほど高田メンバーからの御発表で、様々な構造変化が起こっていると。結果として、銀行のビジネスというものが南極で氷を売るようなものになったという大変印象的な例えがあったわけであります。そのとおりでございますが、この数か月は氷の売行きが好調なようでございまして、貸出しの前年比は多分6%とか7%ぐらいいっていますし、マネーストック、M2とかもかつてのバブル期以来ぐらいの伸びを示しているということなので、これは金融機関が果たすべきであった流動性供給という責任を十分に果たしたということで、この間の様々な金融機関の取組が功を奏した形で、今回のショックに大いに金融機関が貢献したということだと思うんです。ただ、かたがた、今回のこの諮問というのの多分出発点は、2019年、昨年の1月に金融審議会の金融制度ワーキング・グループ、岩原座長の下で発表された、金融機関の情報の利活用に関する指針によるものであったと思いますが、その指針を出した際に、そもそもなぜそういうことが必要かというと、金融機関が直面する様々な情報技術の状況が変わってきていて、その時代に合わせるためのという、言わば構造変化対応ということだったはずであります。ところが、今回の資料、特に事務局資料などを見ておりますと、とりわけ地域金融機関の支援という部分が強調されております。こうすると、何となく従来の議論とちょっと感覚が変わってきたような感じがするんです。地域金融機関の収益環境が厳しくなってきた。これは、例えば昨年10月の日銀の金融システムレポートなどでも、地域金融機関の、いわゆる地方銀行の収益の合計値の予測値がゼロに近づくのがあと10年しか余裕がないというような話がありましたが、コロナショックでその猶予はさらに短くなったはずです。いわゆる信用金庫などの場合はもっと短い、5年ぐらいでしたが、これもさらに短くなったとすると、これは実は大変喫緊の課題でありますが、この喫緊の課題に対して、やや、かつての金融制度ワーキング・グループの取りまとめたときの、そういう危機がそれほど差し迫っていないときの構造的な問題に対する検討であったはずでありまして、その意味では何となく急病の患者に漢方薬を処方しましょうと言っているような感じがしないでもないわけです。つまり、業務範囲を規制緩和したからといってすぐにもうかるわけじゃないので、そうすると、地域金融機関の収益環境を改善するために業務範囲規制の緩和からやりましょうというのはなかなか道が遠いかなと思うんです。ここは多分、論点を2つに分けたほうがいいかと思います。1つは、まさに地域金融機関の収益を含めた形での短期的な金融機関のビジネスに資する目的での業務範囲規制の見直しをどうすべきかという話。もう一つは、もうちょっと構造問題に対応するために、先ほどの南極の氷もそうですし、金融制度ワーキング・グループの情報化に伴う問題もそうです。金融機関はこれまで、多分、国際的に比較すると、日本の金融の専業義務というのがそれほど特殊なものではないというのは先ほどの御報告からも大変よく分かるところでありますけれども、ただ一方で、何となく日本の場合は自らが門を閉ざしてしまっているような感じがあるわけです。海外の金融機関というのは、例えば多くの場合、クレジットカードを発行しておりますし、デビットカードを発行しております。様々な電子マネー的な決済を担うのも金融機関であることが多いわけでありますが、日本の場合はそれらのものがほぼ全てノンバンクによって提供されておりまして、銀行自身がやっている部分は非常に少ないわけです。これは別に、日本で銀行はそういうのをやっちゃいけないと言ったわけではないんですが、銀行自身がそういう道を選んで、非常に銀行業務というものを純化するというんでしょうかね。その方向に行ってしまった結果として今の現状があるんだと思うので、そこの部分の構造的な問題を解決するというのが非常に一つの大きな論点としてあると思います。それとは別に、比較的短期的な課題として言えば、例えば地域商社であるとか、あるいは地域の不動産の活性化。例えば住宅団地の再建のプランなどを地域の金融機関が提案するという事例があちこちで見られておりますけれども、こういったことによって金融機関のビジネス機会を広げて、それによって、融資が伸びるのではなくて、実際にもうちょっとフィービジネスとしてきちんとした形で金融機関がそれをもうけられるような形にしていくためにはどうすればいいかと、こういう2つの、短期と長期の論点を分けて議論したほうがよいのではないかと考えた次第です。

私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、河野メンバー、お願いいたします。

【河野メンバー】

日本消費者協会の河野でございます。岩原先生、それから高田様の御説明を伺って、今後少しずつ理解を深めていきたいと思っております。

今回の諮問内容に関しまして、私は消費者ですので、消費者としての受け止めをお伝えしたいと思います。これまでも環境変化に応じて銀行制度というのは様々に手を加えられ、アップデートされてきたと思っております。一消費者である私は、専門的な知見は乏しいものの、グローバル化ですとかデジタル化、そして低金利の状況やフィンテックの台頭に対して今の銀行制度が対応できているのかという、この問いかけに対して、今のこの時期にスピード感を持って対処することが重要であると思っておりますし、今回のワーキングに心から期待しています。その際、私たちのような、いわゆる小口のといいましょうか、一般利用者への影響に関してもぜひ議論の俎上に加えていただきたいと考えております。その上で、幾つか申し上げたいことがございます。

まず、消費者として金融機関へ望むことは、やはり安全で強固な信頼できる社会インフラであってほしいという点でございまして、経営組織としての健全性、それから透明性は絶対条件だと思っています。今問題になっています銀行口座からの不正出金の問題というのは、金融機関が本来果たすべき、預金者を守るという一番の役割を果たせていませんし、また、国民生活センターの報告においても、金融商品に関わるトラブル報告というのは相変わらず減っておりません。セキュリティーと、それから、それを担保するコンプライアンス、ガバナンスに関しては、今後どのような制度の変更、それから拡充が行われることになったとしても緩むことのないように制度設計をお願いしたいと思います。

2つ目です。私は消費者セクターの代表として、国のSDGs推進円卓会議のメンバーとして、現行動いておりますアクションプラン策定等に関わっております。人口の減少、高齢化、それから自然災害の多発、コロナ感染症等の影響はじわじわと社会の力をそいで、また社会の中に不安が高まる一方でございますけれども、連携、それから協働の力で新しい生活、元気な社会を再構築していこうという、気概ある取組の芽が全国に生まれております。地域のニーズと、それを支える技術シーズはあり、さらに住民からの期待も大きいという現状ですけれども、欠けているのは、そうしたプロジェクトを推進し、持続可能にするための財源と経営のアドバイスなんです。ここがもう決定的に欠けています。みんなが元気になるためのドライバーとして、ぜひ、地域をよく知っている、それから地域住民との信頼関係を構築している地域の金融機関が果たす役割というのはとても大きいものがあると思いますので、この辺りの制度の整理を大いに期待したいと思います。

最後にお願いです。コロナ禍で生活が困窮し、現金が必要になった人が、給与ファクタリングのような新手の貸金に手を出して被害に遭っています。斬新なアイデアを持ったスタートアップ企業がクラウドファンディングに頼らざるを得ない状況があります。銀行の皆さんは大口の預金、融資には積極的で、ビジネスとしては当然のことだと分かっておりますけれども、ぜひもう少し敷居を下げて、社会全体の活性化と、その存続の鍵となるサステーナブル・シェアド・バリューの創造に力を注いでいただきたいと思っております。私も、本当に微力ながら、今後の制度設計に関わっていければと思っております。どうぞよろしくお願いします。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

村岡メンバー、お願いいたします。

【村岡メンバー】

村岡です。私自身は過去20年ぐらい、産業再生機構以来なんですけれども、企業の再生の実務ですとか、事業承継、最近はベンチャーも含めて、実務家としてずっと関わってきていますので、その観点でコメントさせていただきたいと思います。

基本的には、まず、一番障害になっているのは、やはりこれは地方銀行のいわゆる稼ぐ力が低下してしまっていることであり、これがいろいろな障害、弊害を生んでいます。これをどう解決していくのか、このために基本的には規制緩和をするという方向に私自身は賛成です。ただ、その上では、銀行自身のビジネスモデルの転換を促す、あるいは組織の在り方自体を改革を促すというところまで考えて落とし込んでいかないと、実効性がない形になってしまいます。そこをどう議論してつくり込んでいくかということが今回の大きなテーマ、重要なテーマになるんじゃないかと考えています。

まず、マクロ環境の認識からなんですけれども、先ほど高田委員のほうから御説明があったとおりだと私も思います。先ほどコロナ7業種という説明がありましたが、それに加えて製造業も非常に大きなインパクトを受けています。グローバルの耐久消費財の消費が飛んでしまっていますので、この影響で、日本でいくと、やはり自動車に代表されるような産業群が非常に大きなインパクトを受けています。これは自動車本体もあるんですけれども、自動車に部品を提供しているような企業、素材を提供している企業も含めた製造業が非常に大きな影響を受けています。これらのコロナの経済に対するインパクト、あるいは企業経営に対するインパクトの大きさ、それから、ひいては事業再生の仕事に対するインパクトは、私たちの実感値からすると、過去20年間では最大の大きさになるだろうと考えています。もう今既にそうなりつつありますし、これから更に影響が大きくなるということを体感している状態です。これは規模の問題だけではなくて、企業再生の質が変わっているということが非常に大きな問題です。20年ぐらい前のちょうど産業再生機構をやっていたときに、それから、その後、リーマンショックで対応したときは、多くの企業はやはりバランスシートの問題を解決する、あるいは事業のポートフォリオのコア、ノンコアを整理するということをすれば企業再生がなし得るというケースが多かったんですが、今回の問題は、コロナの前と後とで事業環境が大きく変わってしまうこと、すなわちビジネスモデル自体の転換をしないとそもそも事業再生が成り立たないということになりますので、事業再生の質が違う。難易度からすると、はるかに高いものが求められるという状況になっているというのが私の認識です。では、これに対して地域の金融機関が的確、適切に対応できているのか、あるいはできる状況にあるのかというと、これは甚だ厳しいものがあるのではないかと思っています。今現在は、これは3月4月からずっと、資金をつないでいるという状態の企業が多いと思うんですが、これが本格的にこの秋冬から再生というフェーズに移ってこざるを得ない企業が増えると思います。そこに対して地域金融機関が適切なコンサルティング業務であったり、あるいは場合によっては再生企業に対して資本を提供するということが本当にできるかどうか。これは業法上の問題というよりは、別のところにも要因があって、なかなかうまくいっていないのが現実じゃないかと思います。1つは、これは事業を見る力が現場で落ちてしまっている。これは非常に本質的な問題ですね。それから、2つ目としては、いろいろな形の利益相反を極度に恐れるとか、利益相反の整理がしっかりつけられない。利益相反を整理するためには第三者の判定を使ったり、依存したりするわけなんですが、産業再生機構があったときには産業再生機構がその役割を果たしたりしていますけれども、今あるREVICは、人的な制限もありますから、なかなかその役割が果たせない。あるいは、地域の、各県の支援協というのもあるんですが、なかなかそこも力不足で、踏み込んだ抜本的な事業再生というものの計画を立案するだけのことに至っていない。こういったことも絡まって、なかなか進まない。さらに言えば、再生コンサルというのは、金融機関にとっては収益化が難しい現実もある。ここに銀行としてのリソースを割くよりも、ほかの、ちょっと言葉は悪いんですけれども、よりイージーにお金をもうけられるような業務にどうしても向かってしまう。これは例えば、クーポンスワップとか、あるいはシローンとか、そういった業務のほうに重点が行ってしまう。こういったことも含めて、全ての原因は、銀行自身の稼ぐ力が、収益力が落ちてしまっているがゆえに、本質的なところに経営のリソースが振り向けられないというようなことに根幹があるんじゃないかと思います。したがって、これは銀行自体の組織の在り方、ビジネスモデルを本質的に見直していかなければいけないとすると、例えばなんですけれども、これは銀行自体が、地域の金融機関自身がいわゆるデジタル・トランスフォーメーションしなければいけない。そうでなければ、地域の事業会社、取引先に対してもそういうことをもちろん指導もできなければ、チェーンとしてつながっていきません。ですから、昨今の話でいけば、やはり銀行の中から判こをなくすということも含めてやっていくか、あるいはそういうことも促していけるような今回の規制緩和、業務範囲の規制見直しということにつながればと思っています。

まとめますと、基本的にはイコールフッティングの考え方も賛成ですし、かつ、同時にですけれども、先ほど議論ありましたが、いわゆるガバナンスの在り方を見直す、それから金融庁の検査の在り方についても見直すと、こういうことも全てセットで行った上で業務範囲を見直していくということが必要じゃないかと思います。

私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、翁メンバー、お願いいたします。

【翁メンバー】

翁でございます。それでは、意見を申し上げたいと思います。

まず、やはり今、金融をめぐる大きな環境変化ということを一度ちゃんと踏まえておくことが大事だと思っておりまして、やはり技術進歩、デジタル経済が、人口動態が、それから、グローバルに見れば地球環境変化、こういったことにどういうふうに金融が対応する必要があるのかということから一応押さえておくことが大事かなと思います。2019年にバンク・オブ・イングランドでフューチャー・オブ・ファイナンスという報告書が出ているんですけれども、やはりそういったところで、金融の役割というのは、デジタル経済化をサポートしながら、また人口動態変化や地球環境変化などの対応もサポートしていく、こういった役割が非常に重要で、今までの銀行業ということの枠組みも大事ですけれども、やはり今、骨太な環境変化に金融業としてどう応えていくべきなのかというような、そういった観点を確認しておく必要があるかなと思っております。その上で、2018年に機能別・横断的規制ということで、これも岩原先生が座長をされて、大きな環境変化にふさわしい規制の在り方についてまとめたものがございますけれども、全体としては機能別・横断的な考え方をこれから大事にしていく必要があると。業ということだけに着目するだけでなく、やはりそういった様々な、いろいろな参入がある中で、行為規制とか、そういったことを考えていくという大きな流れというのが非常に、パースペクティブというか、そういった視点が大事かなと思っておりますし、また、そこでも書かれておりますけれども、全てのことを規制でやるのではなく、既にいろいろありますけれども、利益相反といっても、各金融機関が抱えている状況というのはまちまちでございますので、金融プリンシプルとか、そういったもので、どういうふうに組み合わせてやっていくかという考え方も大事だろうと思っております。それから、欧州の例がそうですけれども、業務範囲規制だけではなく、業務範囲規制と財務規制をどういうふうに役割分担させてリスクをしっかり守っていくかというような考えも取り入れて、広く考えていくことが必要かなと思っております。

2番目に、高田メンバーからも御説明ありましたし、今村岡メンバーからも御指摘ありましたけれども、やはり今回のコロナに対応する、特に地銀を中心とした役割というのは非常に重要になっていると思っております。非常に広がりのある業種が大きなダメージを受けていて、今村岡さんが御指摘になったように、本当にビジネスモデルを大きく転換していかないとサバイブできないというような状況になっている中で、どういうふうに地方銀行がほかの方々と一緒になってそういった支援をしていくかということで、一番やりやすいやり方を考えていくということが大事かなと思っています。高田メンバーのスライドにもありましたけれども、エクイティー、情報、ネットワーク、人材、こういったものをいかに生かしていくか。恐らくやはりノウハウの面の問題もありますので、いかに協業しながら、こういったコロナでダメージを受けている企業の再編とかM&Aとか産業構造転換というのを促していくかという非常に大事な役割、主要な役割を担っていくと思いますので、短期的にはこういったことにスムーズに対応できるような環境整備がまず求められると思っています。

最後になりますが、最初が割と広いパースペクティブのことを申し上げて、そこに関連する話でございますけれども、やはり、どういう役割を金融業、銀行業が果たしていく必要があるかということに加えて、利用者がどういうふうに利便性を確保できるかという視点も非常に重要だと思っています。主要株主規制の見直しというのは、イコールフッティングというのをどういうふうに確保していくかというのは非常に難しい課題だと思っていますけれども、先ほどから委員のメンバーの方々から指摘ありましたけれども、具体的な問題がどう生じているか、利用者の利便性にどういうふうに影響するかということも考えて検討していく必要があると思っています。それから、同時に、リスク管理の可能性と金融システムの健全性をどう確保していくかということについても、先ほど申し上げた規制の組合せということに加えまして、経営が悪化したときに、破綻処理も含めて、どういう迅速な対応ができるのかというようなこととの組合せで、やはり幅広く、セーフティーネットの在り方とか破綻処理の在り方ということも組み合わせて、このリスク管理の可能性と金融システムの健全性ということも考えていく必要があるかなと思っております。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、西原メンバー、お願いできますでしょうか。

【西原メンバー】

JPモルガンの西原と申します。私からは、市場から銀行経営や銀行実務を常日頃見ている者として2点コメントさせていただきたいと思います。1点目は銀行の他業規制の緩和、出資規制の見直しについて、2点目が地域金融機関がポストコロナにおいてより地方創生に貢献していくための制度や制度運用面の見直しについてです。

まず1点目の銀行の他業規制の緩和、出資規制の見直しにつきましては、賛成の立場で、検討を進めていければと思っています。その1つ目の理由としましては、事務局の資料にもございましたとおり、事業会社グループと銀行グループとのイコールフッティングの確保があります。日本では、御案内のとおり、楽天ですとかソフトバンクなどの事業会社プラットフォーマーがそれぞれのコアビジネスを起点に金融サービスを結びつけ、独自の経済圏に消費者を取り込んでいく動きを本格化させていまして、この動きが奏功しています。消費者向けのクレジットカードの決済分野を見ますと、今年、2020年、楽天が銀行グループを除いて首位になる可能性が高まっており、もうここまで状況は変わっています。さらに今後は、金融サービス仲介法制によりましてスーパーアプリが発現いたしますと、岩原先生もおっしゃっていました、金融と非金融の融解、融合が一層加速化していく状況にございます。また、2つ目の理由としましては、こうした中で安心・安全なサービスを求める高齢化社会である我が国においては、銀行が果たせる役割というのは大きいと考えています。特に事例としても挙げられていましたデータビジネスです。データにはプライバシーが含まれますので、データビジネスを銀行が安心・安全に提供していくということは利用者のニーズにも合致していると考えます。この際、成長戦略のフォローアップにもあります、銀行グループと事業会社グループのイコールフッティングの観点から、事業会社が保有する銀行の在り方につきましても検討すべきポイントだと思います。参入時の対応を考えるということのみならず、既に相応の規模になっているプレーヤーをどう考えていくかという点です。G-SIBsとかD-SIBsのようなみたいな考え方が一つの起点になるかと思っています。

大きな2点目の地域金融機関がポストコロナにおいて地方創生にどのように貢献していくかという点でございますが、その1点目としましては、地方創生に関する業務に限定する形とはなろうかと思いますけれども、地域金融機関に不動産業などの業務範囲規制の緩和を行う必要性が高まってきていると思います。事務局資料にも、企業のデジタル化によるバーチャルな働き方の受入れ、これによって地方から働くということが可能になったと示されていましたが、これにより、例えば週の半分は地方で過ごして、週の半分は首都圏というような働き方の変化、これが地方の人口減少という課題解決につながるチャンスも生まれてきているのかと思います。この中で地銀がビジネスにおいてできることは何かと考えますと、例えば地銀は地元の空き家ですとか旅館やホテルの空室状況などを把握していますので、こうしたところをセカンドハウスとかサブスクリプションの住居として整え、首都圏から地方に人を送る、その環境づくりを行っていくということが考えられます。なぜ今、業務範囲規制の緩和までして銀行がやる必要があるのかという点はあろうかと思いますが、コロナの収束まで少し時間がかかりそうですので、銀行が直接行うことによって、スピーディーに利用者に安心して働けるソリューションを提示していくということによって、このニーズをより多く汲み取り地域経済に還元していくことができると思いますし、また、銀行であれば、不動産業とか旅行業の業際で生じる無駄を最小化したり、ベンチャーと組んで利用者にサービスを届けたり、全国レベルの視点ではなかなか採算性から取り上げられない案件も、地元目線で、地域金融機関のROEは低いという実情もございますので、取り上げていけると思います。規制緩和のデメリットを慎重に考えながら、緩和していく方向で検討を進めていくべきだと思います。銀行は、規制緩和ができたら、きちんとそれを収益改善に結びつけていくという、先ほどいただいたメンバーの御意見もしっかりと対応していかなければならないと思います。

最後になりますが、地域金融機関の再編の後押しとなる制度運用面の見直しについてもコメントを申し上げたいと思います。地域金融機関の数を減らすということが目的ではないというような意見がございますが、これは全くその通りであると思います。ただ、人口減少や事業会社プラットフォーマーとの競争、事業会社プラットフォーマーは、デジタルを活用し、全国に、広範囲にサービスを提供していますので、やはり将来を見通しますと、地域金融機関の少なくとも個人事業のマーケットシェアというのはどうしても圧力を受けていく見通しであります。その中で地域金融機関に求められるのは、広域連携の視点でありますし、デジタル化の加速化であると思います。2点目は、自行のみで投資するというのはなかなか難しいので、ほかと連携して一緒に投資していくということになろうかと思いますので、地域金融機関間の再編を含めた協力関係がソリューションになるのではないかと思います。特に業態を超えた再編が進まないということがこうした協力関係の構築の足かせになっている可能性もあると思いますので、例えば昭和43年につくられました合併転換法といった業態を超えた協力関係の構築も検討に値するのではないかというのが私の意見であります。

以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、加藤メンバー、お願いいたします。

【加藤メンバー】

加藤です。私からは3点、意見を述べさせていただきます。

1点目は、金融とそれ以外の業務、非金融の境界が融解しているということを意識する必要があるということです。現在の業務範囲規制は、金融と非金融の境界が比較的明確であった時代に構築されたように思われます。しかし、近年、両者の境界は、特に機能面で不明確になっているように思います。そのため、改めて銀行と商業の分離の社会的意義の再検証が求められているように思います。その際、商業から分離される銀行とは、決して組織としての銀行ではなくて、銀行が果たすべき社会的機能として考える点が重要ではないかと思います。社会の銀行に対する期待は時代とともに変化し、それが事務局資料の14ページで説明されている業務範囲規制の緩和という形で現れてきたのではないかと思います。

2点目は、これまでも銀行などの業務範囲規制の緩和が行われてきたわけですけれども、それが銀行などの行動に実際にどのような影響を与えたのかを検証する必要があるということです。これは事務局からの御説明でもありましたけれども、ぜひ調査結果をワーキングに提示していただきたいと思います。例えば、事務局資料の14ページで、これまでも銀行などの業務範囲規制は緩和されてきたわけですけれども、その中で何が使われて、何が使われなかったのかということ。さらに言うと、規制は緩和されたけれども、あまり使われなかったものがある場合にその理由。これらの分析業務範囲規制を緩和する具体的な設計の在り方を考える際に、非常に重要だと思います。業務範囲規制を緩和したとしても、自己資本比率規制や行為規制による新たな対応が必要となる場合があると思いますが、規制緩和の意義を没却しないような制度設計を行う必要があると思います。

3点目は、銀行持ち株会社と銀行主要株主という、2本立ての規制の意義についてです。既に他のメンバーから御意見がありましたけれども、銀行持ち株会社と銀行主要株主規制という2本立ての規制は日本特有のものではないかと思いますし、約20年の間、我々は社会実験をしてきたわけです。この社会実験の成果を制度設計に役立てることが必要です。銀行主要株主規制しか適用されない銀行について何らかの問題が生じていた場合には、銀行持ち株会社の業務範囲規制の在り方を考える点でも示唆を得ることができるような気がいたします。関連して、銀行主要株主規制の見直しを考える際に、業務範囲規制に焦点を絞り過ぎることは適切ではないと考えます。銀行持ち株会社の規制は決して業務範囲規制だけではなくて、例えば、事務局の資料でも書かれていますけれども、連結自己資本比率規制なども存在するわけです。業務範囲規制だけ銀行主要株主規制と銀行持ち株会社でそろえて、ほかのところは全くそろえないということで、それがどういう意味があるのか。銀行持ち株会社の規制は結局、傘下に銀行が含まれるグループを対象とした規制であって、業務範囲規制はその一つにすぎません。2つの規制のイコールフッティングを考える際に、業務範囲規制だけに着目することが適切か、やや疑問を持っています。さらに、銀行持ち株会社と銀行主要株主に関する規制の非対称の評価は、それぞれの論者が想定している銀行主要株主と銀行の関係によって相当異なってくるような気がします。例えば、現在の規制では、金融庁は議決権を50%以上保有する銀行主要株主に対しては、銀行持ち株会社と同じく、銀行の健全性に関する一定の措置を要求することができます。このような措置が現実的に機能するのであれば、例えば銀行主要株主が銀行の健全性を害する行動を行うことに対して一定の制約は存在するわけです。ただ一方、いわゆる巨大なプラットフォーマーが銀行主要株主になることを想定した場合には、銀行の健全性というよりは、プラットフォーマーによる優越的地位の濫用の防止に関する規制とのバランスが問題となります。これまでの銀行の業務範囲規制の中で、優越的地位の濫用の防止という場合、主に念頭に置かれてきたのは、銀行の強い影響力を事業会社が利用するというような、言わば銀行が強い存在であるということが暗黙の前提とされていたような印象を持っています。しかし、現在、優越的地位の濫用の防止を考える際に、強い銀行だけを想定すればいいのか。むしろ銀行主要株主が非常に強い力を持っているような場合に、その銀行主要株主の主戦場である商品やサービスの市場のことを考える必要はないか。これを銀行規制として考えるのか、そのほかの法律で考えるのかということは、規制の選択肢としては、いろいろ考え方があると思いますけれども、少なくとも複数の規制によって問題に対処する場合に、それらの規制の間のバランスは必要だと思いますので、そういった点も意識する必要があるのではないかと思います。

私からは以上です。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

続いて、坂メンバー、お願いいたします。

【坂メンバー】

ありがとうございます。私のほうからも、総論的な意見として3点述べさせていただければと思います。

1点目ですけれども、制度見直しに当たっては、単純な規制緩和ではなく、規制の形を変えるものとする必要があると思います。銀行をめぐる環境や期待される役割が変われば、規制も形を変えていく必要があろうかと思います。他方で、本来業務の適正確保、財務の健全性確保、利益相反管理、優越的地位の濫用の防止等の課題への対応の必要性は基本的には変わりません。形を変える規制において課題への対応が必要十分なものかは十二分に確認される必要があると思います。

2点目ですけれども、銀行の本来業務、特に金融仲介機能の中における情報生産の重要性について確認しておきたいと思います。銀行は金融仲介に当たって、事業者や事業計画の審査を行い、その後もモニタリングを行います。効率的な事業や社会的に有意義な事業が実行され、社会経済が形づけられる中で、金融機関は重要な役割を果たしていると思います。情報生産という銀行の機能をより工夫されたものにいかにしていくか、収益をいかに確保するかということが極めて重要であろうと思います。情報環境が劇的に変わってくる中で、銀行としての専門性がどこにあるのかという観点からの検討も必要と思います。

3点目ですけれども、対応すべき課題の中で、利益相反管理について述べたいと思います。業務範囲を拡大する場合に、新たな形での利益相反問題が生じることも心配されるところです。極端な例で言いますと、例えば銀行情報を利用するなどして銀行の関連会社が銀行の取引先事業者の顧客を奪うですとか、あるいは銀行の関連会社が顧客に不利な取引を行わせるなどのことが懸念されるところであります。利益相反関係の下で不適切な取引が行われる場合、往々にして経済合理性を欠く取引が行われ、関係機関や当事者間の信頼が損なわれることになります。また、社会的に弱い立場、一般個人や中小・零細企業者に負担がしわ寄せされやすいという問題もあろうかと思います。

この間、利益相反については様々な実践が重ねられてきているところと思います。先ほど課題の御指摘もありましたが、今後ともこの利益相反問題について適切なコントロールをしていくことは極めて重要だと思います。管理可能な業務範囲の前提として、これまでの利益相反管理の蓄積を検証しつつ、適切な形で拡大、応用することも必要だと思います。また、海外では業務範囲規制が比較的緩やかな国も存するということでございます。そのような国において、利益相反管理に関し、どのような制度上の工夫が行われているのかということも、今後の在り方を考えるに当たって重要な視点を与えると思います。今後の議論や取組の中で、利益相反関係の把握や管理の在り方がより洗練されていくことが期待されるところと思います。このことをぜひよろしくお願いしたいと思います。

以上です。

     
【神作座長】

どうもありがとうございました。

続きまして、後藤メンバー、お願いいたします。

【後藤メンバー】

東京大学の後藤でございます。本日は大学の講義の関係で遅れて参りまして、大変失礼いたしました。そのため、前半の御報告を全く聞けておらず、少し見当違いなことを申し上げるかもしれませんけれども、その点はどうぞ御容赦ください。

今回の業務範囲規制などの見直しについて、基本的な方向性としては私も賛成するところでありまして、金融機関、メガバンクや地域金融機関などの収益力がこれによって少しでもよくなるといいなと思っているところでございますが、どういう方向性から見ているかということを少し申し上げたいと思います。現在の業務範囲規制は、国家が銀行や銀行グループに対して、どういうことをやっていいかということを限定列挙の形で示しているわけですけれども、何人ものメンバーの方から御指摘がありましたように、金融と非金融の境界が揺らぐ中で、何をやっていくのが今後いいのかということを果たして国家が今までどおりうまく指定していくことができるのだろうか。個別に有望な事業は今日もいくつか御指摘があり、それはそれでいいのですが、それ以外に今後どう展開していくべきかということは、なかなか考えることが難しい。特に自ら事業を営んでいるわけではない規制当局である金融庁や金融審議会などが、将来を見通して、適時に業務範囲規制を緩和していくということはなかなか非現実的なんじゃないかなと思っているところでございます。また、銀行が新たに認められた業務範囲をちゃんと生かしているのかというお話もありましたけれども、銀行としては、やっていいと言われるかどうか分からないものの検討に最初から時間を割くということは、体力にもよるでしょうけれども、なかなか難しいということもあるかもしれません。また、銀行界からの要望を待ってから当局が検討するというスタンスだと、銀行側はそもそも認めてもらえるか分からないので検討も深めておらず、その結果として要望も出てこないということになる恐れもあると思います。結局、業務範囲規制の緩和にすごく時間がかかってしまって、適時に動くことができないという側面が日本の銀行界にひょっとしたらあるのではないかという気もしているところでございます。これは、限定列挙による事前規制という形を取っているからこういうことになるのでありまして、発想を転換して、どういう事業をやることが銀行業の収益力または銀行業の役に立つのかということは事業者自身が考えていくというアプローチもあるように思います。もちろん、自己資本比率規制や預金保険の保険料の扱いなど、健全性確保のための規制が適切にかけられること、またグループ内の利益相反関係の処理が適切になされることや、またリスク遮断のために銀行本体ではなく子会社であるとか兄弟会社を使う、そういった基本的なところを確保したことが前提ですが、どういう事業をやることが銀行業の収益力または銀行業の役に立つのかということは事業者自身に委ね、もし不適切なところがあれば、事後規制の形で当局が介入していくという規制のかけ方もあり得るのではないかと考えているところでございます。今回そこまで踏み込めるのかは分かりませんけれども、基本的に業務範囲規制を緩和する方向で考えていくということには賛成している次第であります。

このことを申し上げた上で、2点ほど、ほかに気をつける必要があると思っていることがございます。まず1つは、そうやって業務範囲規制を緩和しますと、何をやってもいいということになるわけですが、一方において日本企業は歴史的に、やみくもに多角化を進めた結果、かえって収益力が害されてきたという、銀行ではなくて、ほかの一般事業会社についてですけれども、そういう指摘もあるわけでございます。そういう観点からは、やはり多角化できるということになった上で、本当に意味のあるところに取り組んでいくことが必要であり、この点で銀行および銀行グループのガバナンスが非常に重要になるのではないかと思います。この点は、村岡メンバーから御指摘があったところです。また、一般事業会社であれば基本的には企業の収益、株主利益のためということになるのでしょうけれども、銀行のように一定の公益性が必要となる業界にとっては、どういう指針でガバナンスをかけていくべきなのか、そこについてもしっかりと考える必要があると思います。銀行法によるリジッドな規制という考えにはなじまないのかもしれませんが、プリンシプルのようなものはあってもよいのではないかなという気がしているところです。

また、今日は銀行の収益力を強調する御意見が多かったように感じたところではあるのですけれども、他方において、銀行は金融サービスという、国民生活にとって非常に重要な、一種の制度的インフラを提供しているわけです。今日はコロナ禍における資金繰りの支援など、融資面の話があったかと思いますけれども、消費者や企業にとっては預金サービス、決済サービスも同様に重要であるわけです。しかし、銀行の収益力を強調していくと、恐らく都心部は問題ないのでしょうけれども、地方においてはこれらのサービスが削減されていってしまうというおそれもあるように思います。これらのサービスをどれだけオンラインで代替していけるのか。また、オンライン決済が広まったとしても、どこかでリアルとの接点は必要になってくるかと思いますが、そこをどうやって確保していくのか。地方においてそういう設備を持つことが負担になったからこそ収益力が悪化しているのだとしますと、片方で収益力を強化しろと言いつつ、片方で何の公的な手当てもなしにサービスは維持しろというのは、銀行に無理を強いることにもなりかねない。そうしますと、公的な意味合いを持つ金融サービスのネットワークの維持ということについて、これを完全に事業者に投げているのでいいのか、国として何か補助ないし制度的な支援をしていくべきではないのか、そういったところも、今回のワーキング・グループの範囲を超えているのかもしれませんけれども、考えていく必要があるのではないかと感じております。

以上でございます。

【神作座長】

どうもありがとうございました。

森下メンバー、御発言、ございませんでしょうか。

それでは、ほかに御意見がないようでしたら、時間も過ぎておりますので、本日の討議を終了したいと存じます。活発な御議論を頂戴し、誠にありがとうございました。本日いただきました御説明や御意見を踏まえ、今後さらに議論を深めていきたいと考えておりますので、何とぞよろしくお願いいたします。

なお、次回の会合は、全国銀行協会より、銀行業界を代表して、成長戦略フォローアップに記載された事項について、銀行業界が地域の社会経済にどのように貢献していけるのかについてヒアリングを行った後、各論の検討に移っていくことにしたいと考えております。

最後に、事務局から連絡事項等ございましたら、お願いいたします。

【端本信用制度参事官】

次回のワーキング・グループの日程につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で、後日、事務局より御案内させていただきます。よろしくお願いいたします。

【神作座長】

それでは、以上をもちまして、本日のワーキング・グループを終了いたします。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室(内線3572、3556)

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