金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第9回) 議事録

  • 1.日時:

    令和4年5月23日(月曜日)10時00分~12時00分

  • 2.場所:

    オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

【神田座長】
 ただいまから、金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループの第9回目の会合を開催させていただきます。

 皆様方にはいつも大変お忙しいところを御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日の会議でございますけれども、これまで同様、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、金融審議会の議事規則にのっとりまして、オンライン会議を併用した開催とさせていただきます。

 また、議事録は、通常どおり作成の上、金融庁のホームページにて後日公開させていただく予定ですので、よろしくお願い申し上げます。

 会議が始まる前に、いつものことですが、事務局から留意事項の説明をお願いいたします。よろしくお願いします。

【廣川企業開示課長】
 おはようございます。金融庁の企業開示課長、廣川でございます。本日もよろしくお願い申し上げます。

 オンライン会議につきまして、2点ほど留意事項がございます。

 1点目でございますが、御発言を希望される際は、オンライン会議システムのチャット上にて、全員宛てにお名前を御入力ください。そちらを確認の上、座長から御指名をいただきます。また、御発言をされる際には、冒頭にお名前をお願いいたします。

 2点目でございますが、御発言されない間は、必ずミュート設定にしていただくようお願いします。御発言される際にミュートを解除いただき、御発言が終わりましたら再びミュート設定にしていただくようお願いいたします。以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。なお、本日の会議の模様は、これまでと同様、ウェブ上でライブ中継をさせていただいております。

 それでは、早速ですが、議事に移らせていただきます。

 本日は、事務局から資料の説明をしていただきまして、その後、質疑応答と討議の時間に充てたいと思います。
 それでは、事務局から資料についての説明をお願いいたします。廣川課長、よろしくお願いいたします。

【廣川企業開示課長】
 ありがとうございます。お手元の資料1、標題が「金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(案)」、副題として「中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて」とついております、こちらの資料に沿って説明をさせていただきます。

 おめくりいただきまして、まず、メンバー名簿の次に目次というところがございますけれども、大きな構成としては4つの部分から成っております。1つ目は、サステナビリティに関する企業の取組みの開示、2つ目がコーポレートガバナンスに関する開示、3つ目が四半期開示をはじめとする情報開示の頻度・タイミング、そして4つ目がその他の開示に係る個別課題ということでございます。

 では、順に概要を御説明申し上げます。本文の1ページに参りまして、「はじめに」というところでございますけれども、「はじめに」では、最初の段落で、企業情報の開示の役割について書かせていただいた上で、その次の段落で、前回の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループの審議がどうだったかという振り返りをし、そして、足元の動向として、特に企業開示を取り巻く経済社会情勢については、サステナビリティの重要性の急速な高まりということと、コーポレートガバナンスに関する議論の進展があったという、ここの部分を大きな変化として書かせていただいております。

 また、下のほうへ参りますけれども、新しい資本主義との関係でいきますと、「現在の資本主義経済が抱える、持続可能性の欠如、中長期的投資の不足、気候変動問題の深刻化といった課題に対応し、資本市場の機能発揮を促すとの観点から、企業開示のあり方の検討が求められている。」としてございます。

 また、その他、その次の段落では、国際金融センターの実現に向けた取組みが進んでいることも、こうした「国際的な動きを踏まえた資本市場の一層の整備が求められる。」という形で触れてございます。その上で、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループを設置して議論を行ってきたというような「はじめに」の構成にしてございます。

 3ページから個別のテーマに入ってまいります。

 1番目には、サステナビリティに関する企業の取組みの開示ということで、「1.サステナビリティ全般に関する開示」、「(1)サステナビリティ開示を巡る状況」ということで、最初は、サステナビリティ開示につきまして、国際的なものも含めて基準策定の動き等について触れてございます。

 それを踏まえました上で、次に4ページまで飛びますけれども、「(2)我が国におけるサステナビリティ開示の対応」というところで、中ほどまで行って(ⅰ)、(ⅱ)、(ⅲ)というのが出てくるところがございますけれども、まず方向性として3つのことを書いてございます。1つ目は、有価証券報告書において、サステナビリティ情報についての独立した「記載欄」を創設すること。そして2つ目に、我が国におけるサステナビリティ開示に関する情報集約や分析、国際的な意見発信、さらには具体的開示内容の検討を行うための体制整備を進めること。そして3つ目に、任意開示等について、それを活用した対話が進むよう促すこと、この3つを書いてございます。

 その上で、この1番目ですけれども、「①有価証券報告書における開示」ということで、こちらにつきましては、4ページの下から5ページにかけてですけれども、まず、この関連で、一般に有価証券報告書での非財務情報の開示に当たって、企業において重要性、マテリアリティの評価軸を持つことが求められるということで、4ページの下のところですが、これまでも、2019年3月につくられた「記述情報の開示に関する原則」の中で、重要性の考え方を一旦整理しております。このマテリアリティ、重要性の考え方につきましては、関連するものとして5ページの頭に書いてございますけれども、ISSBの公開草案におきましても考え方が示されている中で、この私どもの「記述情報の開示に関する原則」の考え方と、このISSBの公開草案の考え方については、「概ね整合的なものと評価できる。」とさせていただいてございます。

 ただ、その上で、今後についてはということで、5ページの上から2番目の「ただし、」から始まっている段落のところですけれども、「今後、サステナビリティ開示の充実を進めるに当たっては、企業価値に関連した投資家の投資判断に必要な情報が開示されるよう、金融庁において、国際的な動向も踏まえつつ、「記述情報の開示に関する原則」を改訂すべきである。」と記してございます。

 そして、その下の段落からですけれども、こちらのほうでは、サステナビリティ開示をどのように書くかということに関してでございますけれども、「サステナビリティに関する考え方や取組みを開示することは国際的な資本市場整備の観点から最低限必要となってきているとの指摘がある。」としておりまして、5ページの一番下からですけれども、「投資家に分かりやすく投資判断に必要な情報を提供する観点から」、6ページの頭2行目ですが、「有価証券報告書にサステナビリティ情報の「記載欄」を新設すべきである。」と記してございます。

 その際に、6ページ中ほどまで行きまして、TCFDのフレームワークでは、「ガバナンス」と「リスク管理」はすべての企業が開示、「戦略」と「指標と目標」は重要性がある場合に開示が求められております。また、「TCFDの提言は、4つの構成要素と11の推奨開示項目で構成されているが、推奨開示項目の中には企業の開示負担が大きいものがあるといったことを踏まえた対応が必要となる。」とした上で、「このため、」以下ですけれども、「「記載欄」には、国際的なフレームワークと整合的な「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つの構成要素に基づく開示を行うこととし、」「「ガバナンス」と「リスク管理」は全ての企業が開示する」、また、「「戦略」と「指標と目標」は開示が望ましいものの、各企業が「ガバナンス」と「リスク管理」の枠組みを通じて重要性を判断して開示する」と記してございます。

 その上で、「なお、」のところの段落ですが、「「戦略」と「指標と目標」について、各企業が重要性を踏まえて記載しない場合、その旨開示する必要があるとの意見もあり、企業はこうした点を含めた開示を積極的に行うことが期待される」と記してございます。

 それから、7ページの上に参りまして、次に参照の話を書いてございます。最初の段落ですけれども、「有価証券報告書の「記載欄」においては、投資家の投資判断に必要な核となるサステナビリティ情報を記載し、有価証券報告書の他の項目である【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】、【事業等のリスク】等と適切に相互参照するとともに、必要に応じて詳細情報を記載した任意開示書類を参照することが考えられる。」としてございます。

 また、今後の話として、「その上で、」の段落ですけれども、「SSBJにおいて、ISSBが策定する基準を踏まえ、速やかに具体的開示内容を検討すべきである。その後、ワーキング・グループにおいて、当該具体的開示内容を有価証券報告書の「記載欄」へ追加する検討を行うことが考えられる。」としてございます。

 それから、「②国内の体制整備(国際的な意見発信と開示の個別項目の検討)」、こちらにつきましては、7ページの下のほうにございますけれども、「本年7月に正式にSSBJが設立される予定である。」ということも踏まえました上で、最後の行からですけれども、「引き続き官民を挙げて、資金面・人材面の支援も含め、SSBJの取組みを後押ししていくことが極めて重要である。」としてございます。

 あと、「③任意開示の促進」につきましては、結論的には一番最後の文章ですけれども、「引き続き開示の好事例を広げる取組みを進めていくことが重要である。」ということを書いてございます。

 次に、「(3)サステナビリティ開示に関する留意事項」ということで、「①将来情報の記述と虚偽記載の責任」についてでございます。9ページの最初の段落の中ほどからですけれども、前回のこのディスクロージャーワーキング・グループの報告を踏まえた内閣府令の改正の際に、将来情報の記載と虚偽記載の関係については、かぎ括弧のところですが、「一般に合理的と考えられる範囲で具体的な説明がされていた場合、提出後に事情が変化したことをもって虚偽記載の責任が問われるものではないと考えられる」ことを明らかにしております。その上で、その次の段落ですが、「サステナビリティ開示について、投資家の投資判断にとって有用な情報を提供する観点では、事後に事情が変化したこと等をもって虚偽記載に問われることを懸念して企業の開示姿勢が委縮することは好ましくない。」とした上で、「企業内容等開示ガイドライン等において、更なる明確化を図ることを検討すべきである。」このようにしてございます。

 それから、「②任意開示書類の参照」についてでございますけれども、そちらの中の2つ目の段落ですけれども、「金融商品取引法は有価証券報告書の記載内容に虚偽記載があった場合の責任を規定しているが、任意開示書類に明らかに重要な虚偽記載があることを知りながら参照することで投資家の誤解を生じさせるなど、当該任意開示書類を参照する旨を記載したこと自体が有価証券報告書の重要な虚偽記載になり得る場合を除けば、参照先の任意開示書類に虚偽記載があったとしても、単に任意開示書類の虚偽記載のみをもって、同法の罰則や課徴金が課されることにはならないと考えられる。」としてございます。その上で、なお書きのところは、中ほどですけれども、「投資家が真に必要とする情報については有価証券報告書に記載しなければならない。」ともしております。

 それから、次のページ、10ページに参りまして、「③法定開示と任意開示の公表時期」についてでございますけれども、そちらのほうは、最後の2行ですけれども、将来的には、この法定開示と任意開示ですけれども、「両書類の公表時期を揃えていくことが重要であり、実務的な検討や環境整備を行っていくことが考えられる。」としてございます。

 次に、サステナビリティの各論ですけども、「2.気候変動対応に関する開示」「(1)気候変動対応に関する開示を巡る状況」ということで、こちらのほうは、国際的な開示規制を巡るいろいろな状況を記しております。その上で、11ページの(2)のところまで飛びますが、「我が国における気候変動対応に関する開示の対応」というということでございまして、こちらのほうは、中ほど部分でございますけれども、「こうした情勢等を踏まえ、」のところですけれども、「まずは、基準策定に向けた議論の途上にあるISSBの気候関連開示基準の策定に積極的に参画し、日本の意見が取り込まれた国際基準の実現を目指すことが望ましい。その後、本年中に最終化予定のISSBの気候関連開示基準を踏まえ、SSBJにおいて迅速に具体的開示内容の検討に取り掛かることが期待される。」とした上で、次の段落ですが、「現時点においては、有価証券報告書に設けるサステナビリティ情報の「記載欄」において、企業が、業態や経営環境等を踏まえ、気候変動対応が重要であると判断する場合、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の枠で開示することとすべきである。」としてございます。

 その上で、最後の段落ですが、「なお、」とあるところ、GHG排出量に関しましては、「国際的にも気候変動に関する指標として確立しつつある。」とした上で、次の12ページの頭の段落ですけれども、この「GHG排出量については、ただちに具体的な開示項目とするのではなく、各企業の業態や経営環境等を踏まえた重要性の判断を前提とした開示項目とすることが適切」ということで、「我が国においては、相当程度多いGHGを排出する企業は、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき、Scope 1・Scope 2のGHG排出量の公表が求められている。」ということで、その段落の最後のほうですけれども、こうした相当程度多いGHGを排出する企業につきましては、「特にその重要性を適切に評価した上で、開示を検討することが期待される。また、その他の企業においても、重要性に基づいた適切な対応が期待される。」と記してございます。

 次の個別テーマ、「3.人的資本、多様性に関する開示」ということで、(1)では「人的資本、多様性に関する開示を巡る状況」というのを書いてございます。最初の段落では、「「新しい資本主義」の実現に向けた議論の中」、「人件費を単にコストと捉えるのではなく、人的投資を資産と捉えた上で、人的投資が持続的な価値創造の基盤となることについて、企業と投資家で共通の認識をすることを目指している。」ということで、こちらのコンテクストの中で非財務情報の充実を図ることとしてございます。

 また、これまでも、その下の段落にありますように、昨年、2021年6月のコーポレートガバナンス・コードの再改訂によりまして、経営戦略に関連する人的資本への投資とか、多様性の確保に向けた方針、その実施状況の開示が盛り込まれているということもございます。

 また、金融分野以外の取組みとしては、12ページの下のところにありますように、女性活躍推進法により、一定以上の労働者を常時雇用する事業主に対して、女性の活躍に関する情報の公表を義務付けていく中で、女性の管理職比率や男女別の育児休業取得率といったものが情報の公表項目の選択肢として位置付けられたといったようなことがございます。

 また、13ページの2段落目にありますように、国際的にも、アメリカでは、人的資本に関する開示の義務付けが行われています他、国際標準化機構(ISO)においては、ISO30414を策定して、人的資本の状況を示す指標を公表しているといったような状況がございます。

 これも踏まえまして、我が国の対応ですけれども、(2)のところ、「人的資本、多様性に関する開示の対応」ということで、具体的には、次の14ページに参りまして、(ⅰ)のところで、「「人材育成方針」と「社内環境整備方針」について、有価証券報告書のサステナビリティ情報の「記載欄」の「戦略」の枠の開示項目とする」、(ⅱ)で、「上記の「方針」と整合的で測定可能な指標の設定、その目標及び進捗状況について、同「記載欄」の「指標と目標」の枠の開示項目とする」、また、(ⅲ)として、「女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差について、中長期的な企業価値判断に必要な項目として、有価証券報告書の「従業員の状況」の中の開示項目とする」としてございます。この(ⅲ)につきましては、その次の段落ですけれども、「企業負担等の観点から、他の法律の定義や枠組みに従ったものとすることに留意すべきである。」ということで、その次の段落の最後3行ですが、「最低限、提出会社及び連結会社において、女性活躍推進法、育児・介護休業法に基づく公表を行っている企業は有価証券報告書においても開示することとすべきである。」としてございます。

 次に4ポツに参りまして、「今後の課題」ということで、(1)は「SSBJの役割の明確化」ということでございますが、具体的には15ページに参りまして、上から「その際、」と書いてある段落のところですけれども、現在、企業会計基準やその設定主体である企業会計基準委員会(ASBJ)が法令上の枠組みの中で位置付けられているということがございます。これを参考としつつ、「SSBJ自身について、法令上の枠組みを含めて、どのように位置付けるかが論点となる。」としてございます。

 次に、(2)に参りまして、「サステナビリティ情報に対する信頼性確保」ということで、これはサステナビリティ情報に対する保証の議論でございますけれども、最初の段落では、国際的にも様々議論が進んでいるということを紹介してございます。ここの部分の結論的なものは、15ページの一番下の部分でございますけれども、「このため、」と書いてあるところですが、「ワーキング・グループにおいて、前提となる開示基準の策定や国内外の動向を踏まえた上で、中期的な課題として検討を進めていく必要がある。」としてございます。

 それから、16ページの「(3)IFRS財団アジア・オセアニアオフィスのサポート」ということで、このISSBの活動についてですけれども、この段落の最後のほうですが、「米州、欧州の拠点では、ISSBへのサポート体制が構築されているところ、日本もこれまで同様、IFRS財団による国際的な開示基準の策定に積極的に参画・貢献していくため、アジア・オセアニアオフィスの活動についても、日本の関係者が協力して物心両面でサポートしていくことが望まれる。」としてございます。

 17ページから、大きく2つ目の「コーポレートガバナンスに関する開示」でございます。こちらのほうは、1ポツでこれまでの取組みを記した上で、2ポツですけれども、「取締役会、指名委員会・報酬委員会等の活動状況」ということでございます。具体的には次の18ページ上のほうの段落で、「このような中、」とありますけれども、「取締役会、指名委員会・報酬委員会の活動状況開示については、コーポレート・ガバナンス報告書や任意開示書類において、一定の進展がみられる」と。また、諸外国では「法定書類で詳細に開示されている」と。さらには、「投資家の関心の高まりが見られる」ということを踏まえまして、中ほどですけれども、「取締役会、委員会等の活動状況の「記載欄」を有価証券報告書に設けるべきである。」と。その次の段落でありますが、「まずは「開催頻度」、「主な検討事項」、「個々の構成員の出席状況」を記載項目とすべきである。」ということでございます。

 それから、「3.監査の信頼性確保に関する開示」というところでございますけれども、前回のディスクロージャーワーキング・グループ報告以降の取組みとして、「監査役等の活動状況の開示」、それから「監査上の主要な検討事項(KAM)の導入」、そして3つ目ですけれども、「内部監査部門が取締役会や監査役会等に対して適切に直接報告を行う仕組み(デュアルレポーティングライン)の構築」が進められているところでございます。

 今回は19ページ、下のほうですけれども、「このような中、」と書いてございますけれども、「監査役会等における実質的な活動状況の開示を求め、投資家と監査役等との対話を促進させていくことが重要である。」とした上で、「そのため、現在の有価証券報告書の枠組みの中で、(ⅰ)監査役又は監査委員会・監査等委員会の委員長の視点による監査の状況の認識と監査役会等の活動状況等の説明」、「(ⅱ)KAMについての監査役等の検討内容」、この2つを「開示することが望ましい。」としております。

 さらに、内部監査体制の基本的な情報というのが投資家にとっても有用と考えられることから、有価証券報告書において、(ⅲ)ですが、「デュアルレポーティングラインの有無を含む内部監査の実効性の説明を開示項目とすべきである。」、このようにしてございます。

 次に、「4.政策保有株式等に関する開示」でございます。「政策保有株式については、」と書き始めがある段落ですけれども、「その存在自体が、我が国の企業統治上の問題であるとの指摘もあるところ、投資家と投資先企業との対話において、政策保有株式の保有の正当性について建設的に議論するための情報が提供されることが望ましい。」とした上で、次、「このような状況を踏まえ、政策保有株式の発行会社と業務提携等を行っている場合の説明については、有価証券報告書の開示項目とすべきである。また、政策保有株式の議決権行使の基準についても、例えば、「記述情報の開示の好事例集」等を通し、積極的な開示を促すべきである。」。

 また、その次ですけれども、純投資目的の株式についてですけれども、こちらについては、一番下のところからですけれども、「企業における「純投資目的」の保有株式について、純投資と政策保有の区分の考え方や両者の間の区分変更の動向、両区分における銘柄別の保有期間などの実態を調べ、適切な開示に向けた取組みを進めることが期待される。」と記してございます。

 22ページに参ります。次はⅢですけれども、「四半期開示をはじめとする情報開示の頻度・タイミング」ということで、「1.四半期開示」、「(1)四半期開示を巡る状況」というところ、こちらのほうでは、2006年の法制化以降の流れを、本ディスクロージャーワーキング・グループでもいろいろ御議論いただいたことも含めて書いてございます。その上で、今回は点検ということで、四半期開示の見直しに関して御議論いただきましたし、また、実証研究を中野委員のほうから御紹介をいただきました。

 22ページから23ページにかけては、本ディスクロージャーワーキング・グループで頂戴した意見を記載させていただいております。

 また、23ページの(2)のところ以降ですけれども、実証研究の概要を示させていただいております。

 その上で、「(3)四半期開示見直しの方向性(四半期決算短信への「一本化」)」のところでございますけれども、24ページの下から25ページにかけてでございますけれども、具体的には25ページの中ほどですけれども、「「一本化」については、四半期報告書に集約させる方法と四半期決算短信に集約させる方法とが考えられるが、」とした上で、以下3つですが、1つ目、「開示のタイミングがより遅い四半期報告書に集約させることは、情報の有用性・適時性を低下させるおそれがあること」、また、2番目ですけれども、「四半期決算短信に関しては、投資家に広く利用されていること。」また、3番目ですが、「「正確性の担保」という点からは、四半期報告書の形でなくても、代替的な手法により確保することも考えられるとの指摘があること等を踏まえると、」とした上で、「四半期決算短信への「一本化」とすることが適当と考えられる。具体的には、上場企業についての法令上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止し、取引所の規則に基づく四半期決算短信に「一本化」することが適切と考えられる。」としてございます。

 その上で(4)ですが、「「一本化」の具体化に向けた検討課題」ということで、「以下をはじめとする課題についての検討が必要であり、ワーキング・グループにおいて引き続き議論を深めていく。」とした上で、5点論点を掲げてございます。1つ目は、25ページ一番下ですが、四半期決算短信の義務付けの有無、それから、26ページに参りまして、2つ目は、四半期決算短信の開示内容、3つ目は、四半期決算短信の虚偽記載に対するエンフォースメントの手段をどう確保するか。そして4つ目は、四半期決算短信に対する監査法人によるレビューの必要性。そして5つ目、一番下ですけれども、第1・第3四半期報告書の廃止後に上場企業が提出する半期報告書に対する監査法人の保証のあり方についてどう考えるかという5つでございます。

 次に、「2.適時開示のあり方」に参ります。適時開示のあり方に関しましては、26ページ下のほうですけれども、「こうした中、」というところにありますけども、「我が国の上場企業の中には過度に「間違いのない開示」を指向し、投資判断に重要と見込まれる情報でも「細則」に該当しない場合、開示に消極的」、「経営環境が不透明で、「細則」への該当性が不明確な場合、開示に消極的」といった事例が見られるとの指摘があるとしておりまして、「例えば、」ということで、その下、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大時、また、27ページ頭ではロシア・ウクライナ情勢のときの状況に触れてございます。

 それも踏まえた上で、今後については、27ページ第2段落ですけれども、「取引所において適時開示の促進を検討すべきである。」としておりまして、「その検討に当たっては、適時開示のエンフォースメントのあり方についても整理することが期待される。」としてございます。

 それから3ポツに参ります。「有価証券報告書の株主総会前提出」ですけれども、こちらのほうにつきましては、次の28ページまで参りまして、上のほうの「また、」のところですけれども、「中長期的な企業価値を判断する上でサステナビリティ情報の重要性が世界的に高まる中で、グローバルな経営を行う上場企業において、株主総会前にサステナビリティ情報を記載した有価証券報告書が提出されることは特に重要と指摘されている。」とした上で、次の4ポツの直前、最後の2行ですが、「まずは、必ずしも十分に早い時期でなくとも株主総会前に有価証券報告書を提出するといった取組みが期待される。」としてございます。

 次に、「4.重要情報の公表のタイミング」につきましては、29ページの2段目です。「決算情報を含む重要情報の公表タイミングについては、社内手続きなどを了したタイミングで速やかに開示することが基本であり、このような開示を促す取組みを進めるべきである。」としてございます。

 ちょっと長くなってしまって恐縮でございます。次に30ページに参ります。次に「Ⅳ.その他の開示に係る個別課題」ということで、「1.「重要な契約」の開示」でございます。「(1)「重要な契約」の開示を巡る状況」ということで書いてございますけれども、今回は個別分野としてということで、30ページの一番下ですが、「企業・株主間のガバナンスに関する合意、企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意、ローンと社債に付される財務上の特約を取り上げ、検討を行った。」としてございます。

 それぞれに書き分けておりまして、31ページの頭、まず「(2)企業・株主間のガバナンスに関する合意」ということで、こちらについては、そこの「(ⅰ)役員候補者指名権等の合意」、それから「(ⅱ)議決権行使内容を拘束する合意」、そして「(ⅲ)事前承諾事項等に関する合意」と、3つ類型を挙げました上で、その31ページの一番下ですけれども、「少なくとも前記3類型の合意を含む契約が企業と株主との間で締結されている場合、「重要な契約」として当該契約の内容等の開示が求められるということを明確化すべきである。」としてございます。その際の開示内容としては、32ページの上のほうですが、「契約の概要、合意の目的、当該契約の締結に関する社内ガバナンス、企業のガバナンスに与える影響」、これを「記載すべきことを明確化すべきである。」としてございます。

 次に「(3)企業・株主間の株主保有株式の処分・買増し等に関する合意」ということで、ここも4類型ですけれども、下のほうですが、「保有株式の譲渡等の禁止・制限の合意、保有株式の買増しの禁止に関する合意、株式の保有比率の維持の合意、契約解消時の保有株式の売渡請求の合意」の4つでございます。こちらにつきましては、同じく、少なくともこの前記4類型については「開示が求められることを明確化すべきである。」とした上で、開示内容としては、33ページの上のほうですが、「契約の概要、合意の目的、当該契約の締結に関する社内ガバナンス」としてございます。

 (4)に参ります。「ローンと社債に付される財務上の特約」ということで、こちらについては、34ページ中ほどからですけれども、「特に重要性が高いと見込まれる財務上の特約について、財務情報を補完する非財務情報として開示されることが適切と考えられる。」とした上で、「例えば、」ということで、「ローンの契約額や社債の発行額が、自社の純資産額の一定比率以上である場合に臨時報告書において開示」、「ローンの残高や社債の残高が自社の純資産額の一定比率以上である場合に有価証券報告書において開示すること」と。「一定比率」等については、「具体的な検討を行うことが求められる。」となっております。

 その上で、開示内容については、一番下ですが、「融資借入契約又は社債等の概要」、それから「財務上の特約の概要」、そして、35ページの上のほうですけれども、「重要な変更・解約」、それから「基準への抵触があった場合」には、「その内容を臨時報告書によって開示することとすべきである。」としてございます。

 最後、「(5)その他の留意事項」ですけれども、「重要な契約」に関してということですが、最初の段落に書いてありますことは、「円滑な施行に向け、既契約の取り扱いなど、実務的な課題についても十分検討を行うべきである。」としております。また、前述の合意を含む契約以外の「重要な契約」についても、「例えば、「記述情報の開示の好事例集」等を通し、投資家にとって重要な情報が十分に開示されるよう促すべきである。」としてございます。

 次、「2.英文開示」でございます。有価証券報告書の英文開示につきましては、実施企業が少数にとどまっているという認識を第2段落で示しておりまして、今後についてですけれども、ずっと下のほうに行きまして、そのページの最後の段落です。「まずは【事業等のリスク】、【経営者による財政状況、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】、【コーポレート・ガバナンスの概要】、【株式の保有状況】など利用ニーズの特に高い項目について、英文開示を行うことが重要である。」と。また、「サステナビリティ情報についても英文開示が期待される。」とした上で、金融庁のEDINETにおいて、「有価証券報告書上で特に英文開示が求められる上記項目を英訳した企業についても一覧として公表し、海外投資家に対して情報発信するべきである。」また、EDINETで外部の翻訳ツールを利用しやすいよう改修を進めると書かせていただいております。

 36ページ、最後ですけれども、「3.有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書の記載事項の関係」ということで、こちらは両報告書の内容の重複が指摘されているところでございまして、その関係について整理をすることが考えられるということで記させていただいております。長くなってしまいまして、失礼いたしました。以上でございます。

【神田座長】
 どうも御説明ありがとうございました。それでは、今日は残りの時間、皆様から御質問、御意見等をお出しいただく討議の時間とさせていただきます。

 いつものように、まず委員の皆様方から御発言をいただき、その後でオブザーバーの皆様方からも御発言をいただく機会を設けたいと思います。

 いつものことで恐縮ですけれども、時間が限られておりますので、皆様方の御発言のお時間を確保できるよう、大変恐縮でございますけれども、お一人当たり、計算いたしますと3、4分程度をめどということを念頭に置いていただければありがたく存じます。

 それではまず、委員の皆様方から御意見あるいは御質問をお出しいただければと思います。チャット欄に全員宛てで発言希望などと1行入れていただきますと、ありがたく存じます。いかがでしょうか。

 早速ありがとうございます。井口委員、永沢委員の順でお願いします。まず、井口委員、どうぞ。

【井口委員】
 発言の機会をいただきありがとうございます。まず、事務局のほうで多様な意見をまとめていただいて、ありがとうございました。報告(案)のページ順に沿って何点かコメントさせていただきますのと、1点だけ確認させていただければと思っております。あと、コメント、意見をしないところは、基本的には賛同させていただいております。

 最初、6ページのサステナビリティ情報の「記載欄」を新設するところにつきましては、賛成いたしたく思っております。ただ、1点だけ確認させていただきたいのですが、企業にとっては「記載欄」の内容も重要になってくると思いますが、私の理解では、当面は、資料でいいますと4ページにあります「記述情報の開示に関する原則」の充実が行われ、それに基づいて、企業は自らの重要性の判断に基づいて開示を行う、そして、将来的には、7ページに記載のあるSSBJで策定する基準を活用することも検討するということと理解しておりますが、そのような解釈でよいか、後で確認させていただければと思っております。

 あと、7ページにありますサステナビリティ開示についての「市場区分ごとに段階的な対応」というところにつきましては、私も、会計基準と異なって、サステナビリティの取組みには大きな企業格差があるという中で、1つの基準だけではなかなか適用が難しいと思いますので、こういった方向に賛成いたしております。

 9ページ以降にあります任意開示書類の参照につきましては、その活用については賛同いたしますし、資料にもありますように、同時に公表するための実務的な検討や環境整備を早急に進めることも賛同いたします。あと、そのISSBの公開草案では、同時期だけではなくて同条件ということも示されておりますので、9ページに記載がありますように、参照先の情報についても慎重な取扱いを定めるという方向性にも賛同いたしております。

 10ページ以降の気候変動開示の記載の中で、12ページに、「指標と目標」の開示について、「GHG排出量については、ただちに具体的な開示項目とするのではなく、」と記載されております。一方、冒頭の4ページの開示の対応の中の(ⅲ)のところで、「開示における比較可能性を十分確保すること」が書かれております。海外では、御存知のようにScope 1・Scope 2はもちろんのこと、Scope 3までの開示を求める動きがあって、ここが開示の焦点になっているということと思っております。Scope 3については、実務上の課題があるということは重々承知しておりますが、日本国政府も国際的に気候変動課題に対するコミットメントを行っている中、海外から、あるいはグローバル投資家から日本の気候変動開示に対する姿勢が誤解されないよう、ここの「ただちに開示項目とするのではなく」の「ただちに」という時間軸の表現も含め、十分な説明を追加したほうがよいのではないかと思っております。個人的には、ISSBとかあるいはSSBJの気候変動の基準化を踏まえてということになるのではないかと思っております。

 あと、15ページ以降にあります「(2)サステナビリティ情報に対する信頼性確保」です。この点は利用者にとって重要と思っておりますが、まだ、保証の基準自体がありませんので、中期的な検討課題でいいのではないかと思っております。一方、現状、既に任意で保証を行って、そのことについて有価証券報告書に記載している企業もあります。このような取組みや開示姿勢というのは、投資家としては高く評価したく思っておりますが、一方、その保証範囲とか保証方法などが分かるような開示になっておりませんので、近々の課題といたしましては、有価証券報告書における任意のサステナビリティ情報の保証に関する開示の枠組みといったことについても検討する必要があるのではないかと思っております。

 17ページ以降にあります取締役会の活動状況の開示の拡充につきましては、賛同いたしたく思っております。

 また、19ページの下にあります監査役等の活動状況の開示の一段の拡充につきましても、この方向性については賛同いたしたく思っています。一方、ここで「開示することが望ましい。」となっておりますが、これは「開示すべき。」とするのが妥当ではないかと思っております。まず、この項目につきましては、前回のディスクロージャーワーキング・グループで導入されておりまして、他の有用なガバナンス項目を含めて、こういった有用な開示というのは、段階的に開示を強化する方向が妥当ではないかと思っておるということがあります。また、監査人からのKAMを受けて、企業の内部の機関として監査役等として主体的にこういったKAMに対してどういうふうな対応をしたか、その対応に対する考え方を開示するということは、利用者にとって監査の信頼性を理解するという上で重要と考えております。もし、当該項目を開示しても、KAMと近しい内容になり、開示の有用性が落ちるということですと、そのことは監査役等の主体性のなさを示すことではないかということで、監査の実態面を懸念する次第です。このような監査役等ばかりではないと信じておりますので、ここにおける一段の開示の充実を望んでおります。

 あと、20ページにあります政策保有株式につきましては、資料に記載いただいていますように、その保有目的からすると、常識的には業務提携を行っている場合が多いと推察されますので、重要な契約等と関連付けて開示すべきと考えております。また、重要な契約等と関連付けられていない政策保有株式につきましては、コーポレートガバナンス・コードの定めにありますとおり、社外取締役を中心に、その保有の妥当性をしっかり吟味すべきと考えております。

 最後となりますが、36ページ以降の有価証券報告書とコーポレート・ガバナンス報告書の記載事項の関係のところとなります。今回の取締役会等の活動状況の整理につきましては、事務局の整理のとおりの方向で賛同いたしたく思っております。今後につきましても、投資家が企業価値創造プロセスを一覧的に見ることができる有価証券報告書におけるコーポレートガバナンスに関する情報の開示の充実を進めつつ、検索機能など、投資家にとって欠かすことのできない報告書であるコーポレート・ガバナンス報告書の機能も損なわないよう、慎重な整理が求められるものと思っております。

 すみません、長くなりましたが、以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。多くの方からチャットをいただいておりまして、ありがとうございます。その順番で、次に永沢委員、どうぞ、お願いいたします。

【永沢委員】
 永沢でございます。発言の機会をいただきありがとうございます。最初に、このたび報告(案)をお取りまとめいただきまして、事務局の皆様、大変御苦労があったと思いますが、ありがとうございます。報告(案)の内容につきましては、私は、賛成でございます。この報告書は、恐らく、ここに参加されているような委員のような方々だけでなく、これから企業において情報開示を担当される方などがお読みになると思っております。情報開示の制度については、会社法、金融商品取引法、取引所規則などがございますが、そのいろいろと複雑だったところが、今回、整理できたと思います。また、非財務情報の開示に関して、世間ではいろいろと誤解されていた部分もあったというところにつきまして、この度、是正することができたということも、それから、「重要な契約」に関することなど、投資家にとって開示いただきたいことについて、これは開示すべしということで明確に方針を具体的に出せたことは大変よかったと思っております。私のような専門家でない者にもよく分かる内容になっていると思います。これも事務局の皆様の御尽力のおかげと思っております。

 また、前回のワーキング・グループでは、少し対立する箇所もあったように記憶しておりますが、今回は大きな対立はなかったと思っており、建設的な意見、多様な優れたご提案を、専門家の委員の方々から出していただきまして、大変勉強になりましたし、そういったことも報告(案)に十分に反映されており、高く評価しております。

 私として、いくつか感想と意見を申し上げたいと思います。

 まず、個人投資家という立場からですけれども、投資といいますと、我が国では、投資は何か悪いものと感じる人が少なからずいまして、それは、やはり他人や環境を犠牲にして自分は儲けるというようなことを思ってしまいがちなところがあると思うのですけれども、今回の審議を通じまして、サステナビリティという観点からの情報開示が進むことによって、顧客や株主だけでなく、社員や地域社会、地球環境を大切に考え、そして実践する企業こそが持続的に発展するということに気付く、そういったお金の流れを作ることができるのではないかなということが、この度の審議を通じて大きく期待できるものになりました。投資に対する偏見が、非財務情報の開示によって是正されていくのではないかと、私としては大いに期待しております。

 第2に、先に申したこととも関連することですが、サステナビリティ情報をはじめとする非財務情報が信頼できるものであるということが担保されることが大変重要であるとも思っております。グリーンウォッシュだとかESGウォッシュだとか、いろいろ言われておりますけれども、個人投資家は、この点を疑心暗鬼になって見ているところがございますが、今回の議論を通じて、保証という方法があるということを知りました。これはこれで進めていっていただくことはよろしいことかと思うのですけれども、一方、何でもお金をかけてということもどうなのかと思っておりまして、個人投資家としては、企業に直接アプローチできる機関投資家やアナリストの皆様が、信頼できない情報を開示する企業に対して厳しい評価を与えていっていただくことを期待したいと思います。企業を導けるのは、直接そのように接することができる機関投資家やアナリストの方々であろうと思っておりまして、これは零細な株主にはできませんので、よろしくお願いしたいと思います。

 井口委員からも先ほど、企業間格差が情報開示において広がっているというお話がありましたが、私もこの点はワーキング・グループの途中でも何回かそのことについて触れさせていただいております。日本の企業の情報開示に関して、全体に底上げが必要と思っております。グローバルに展開されていて、海外の機関投資家と常に接しておられる企業はともかく、一般の多くの企業は、海外においてこれほどサステナビリティへの関心が高いということとか、どういう情報開示が求められているかについて、十分な情報がまだ行き届いておらず、認識されていないと思います。その意味で、当局の役割とか、このたび新設されるSSBJの果たす役割というのが大変大きいのではないかと思っております。このワーキング・グループに参加した委員として、当局やSSBJの役割が重要であることを、機会を捉えてお伝えしていきたいと思っています。

 企業の収益環境が大変厳しくなっておりますので、情報開示というのはコストもかかることですので、なかなか難しいところだと思っております。どれくらい開示すればいいのかというような考え方、姿勢は甘えだと言われるかもしれないのですけれども、私も社外取締役をやっておりまして感じることといたしましては、最低限開示が求められている事項について、当局から一定程度出していただけることは、情報開示の後押しになって、それは望ましい方向に全体を導くことに少なからず働くのではないかと思っております。それに加えて、望ましい開示の事例なども、継続的に出していただけたらよいだろうと思っております。

 最後になりますけれども、今回のこのような報告書は、開示をされる企業の情報開示の担当者だけでなく、社外取締役なども、この報告書を読んで、どのようなことが議論されて、情報開示が進んでいるのかということの認識を共有していくことも大事なのではないかと感じております。私からは以上になります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、近江委員、どうぞお願いいたします。

【近江委員】
 近江です。御指名ありがとうございます。今回は、多岐にわたる課題につきまして、様々な議論を踏まえて取りまとめていただきまして、ありがとうございました。特に、サステナビリティ開示のプラットフォームが明確に示されまして、最重要である気候変動や人的資本に関する基本的な開示が盛り込まれ、また、これを起点としてSSBJにおける検討などを踏まえ、今後の社会的な要請を反映していくことが可能な、柔軟で、将来に開かれた枠組みが示されたということを大変すばらしく思っております。

 全体として記載されている内容に賛同いたしますけれども、その上で、いくつか気になった点について意見を述べさせていただきます。

 まず、6ページにおきまして、TCFDのフレームワークに基づき、「ガバナンス」と「リスク管理」を全ての企業が開示する一方で、「戦略」、「指標と目標」は各企業の重要性の判断に基づいて開示すべきとされている点について、「各企業が重要性を踏まえて記載しない場合、その旨開示する必要があるとの意見もあり、企業はこうした点を含めた開示を積極的に行うことが期待される。」との記載になっておりますけれども、重要性の判断は、記載事項を決定する非常に重要なポイント、観点ですので、ここは説明が求められることだと考えます。本来的には開示すべき項目ではないかと考えております。

 次に、12ページにおきまして、GHGの排出量につきまして、「特にその重要性を適切に評価した上で、開示を検討することが期待される。」と記載されておりますけれども、ここは、先ほどから議論もありますが、グローバルでは開示が求められつつある現状であるということに対して、企業側が認識を高めて準備を進めていく上でも、「積極的に開示することが期待される。」などと表現を強めていくということも検討いただきたいと思います。

 次に、人的資本についてですが、「連結ベースでの開示に努めるべき」と明記していただいた点を評価します。そして何より、男女間賃金格差を【従業員の状況】における基本的な開示項目としていただいた点、これは、企業の人材活用の実態を知る上で大変重要な指標になりますので、非常にありがたく思っております。なお、その男女間賃金格差につきましては、女性活躍推進法において開示方法が検討されるとのことですけれども、その際に、やはり計算方法が大変重要になりますので、ここはグローバルのベストプラクティスなどが考慮されていくことを期待しております。

 次に、政策保有株式に関する開示につきましては、現在求められている議決権行使に関する具体的な基準の開示に加えて、説明が必要な議決権行使について開示を促す必要については従来から認識しており、これは変わらないのですけれども、今回記載いただきましたとおり、まずは今後、純投資目的の保有株式について様々な検討を進めていただくということに対して期待をしております。

 最後に四半期開示についてです。25ページに、今後の検討事項として「全部又は一部の上場企業を対象とした四半期決算短信の義務付けの有無をどう考えるか」を記載しております。また、27ページには、「海外の機関投資家を含む幅広い資金を取り込むことができる環境を確立することができれば、必ずしも一律に四半期開示を求めなくても、投資家に充実した情報が提供されることになるとの指摘もある。」と記載されておりますけれども、ここは私の認識が不足しているのかもしれませんが、今までの議論を踏まえて、これらが記載される必要があるのか、やや疑問を持っているところであります。私からは以上になります。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは次に、神作委員、どうぞお願いいたします。

【神作委員】
 神作です。御指名ありがとうございます。ディスクロージャーワーキング・グループにおける多岐にわたる論点と議論を的確におまとめいただいており、その方向性に全面的に賛成いたします。その上で、3点コメントさせていただきます。

 第1は、報告(案)22ページ以下の情報開示についてです。法令上の四半期開示義務のうち第1と第3四半期の四半期開示義務を廃止し、四半期決算短信への「一本化」を進めるに当たっては、この報告(案)25ページの終わりから26ページにかけて指摘されております諸課題について、今後十分に検討し、日本市場の情報開示が全体として後退することがないよう、また、後退したという印象を持たれることもないように注意する必要があると思います。

 また、投資判断に重要な影響を与える情報については、よりタイムリーに企業の状況変化に関する情報を企業が開示するよう、公表のタイミングも含めて、適時開示制度がより適切に運営されることが一層重要になると思われます。現行の適時開示制度は、基本的にインサイダー取引規制に倣った開示事項が定められておりますけれども、純粋な開示規制である適時開示制度はプリンシプルベースに切り替えて、投資判断に重要な影響を与える、より具体的に申しますと、株価に一定以上の影響を与える情報を速やかに開示するよう、エンフォースメントの強化を含めて検討する必要があると考えます。また、適時開示のタイミングについても、現在よりも迅速に公表されることが望まれると思います。

 第2に、報告(案)30ページ以下の「重要な契約等」の開示について申し上げます。注の59で御指摘いただいておりますけれども、「経営上の重要な契約等」という開示項目の名称に関し、「経営上」という文言が含まれているため、経営上の契約以外の契約に関する開示がこれまで十分にされてこなかったという御指摘は重要であり、私も賛同いたします。

 この点とも関連すると思いますけれども、議決権行使に関する合意及び株式の譲渡や保有に関する合意は、企業自体が当事者ではない場合、すなわち、株主間の合意にすぎない場合であっても、会社支配や株式の流動性に深く関わることから、投資者一般、とりわけ支配権の取得を目指そうとする投資者の意思決定に大きな影響を与え得ると考えられます。したがって、支配や株式の流動性に関する透明性の確保という観点からは、将来的には、株主間の議決権行使や株式の譲渡・保有に関する合意も開示の対象にすることを検討することが必要になると思われます。注の66と注の69におきまして、その点に関連する記述をいただいており、私も賛同いたします。

 第3に、報告(案)33ページ以下の、「ローンと社債に付される財務上の特約」について申し上げます。市場制度ワーキング・グループにおいても議論されておりますように、社債市場の活性化は、日本の資本市場の重要な課題の1つであると認識しています。日本の社債市場の活性化を促すためには、社債及びローンの基本条件や、特に財務上の特約を適切に開示することが極めて重要であるとの御指摘が報告(案)33ページになされておりますが、私も同感です。まずは、特に重要性が高いと見込まれる財務上の特約について、財務情報を補完する非財務情報として開示することを御記載いただいておりますけれども、特に重要性が高いものに限ることなく、次第に重要性が高いもの一般を幅広く開示することが期待されます。このような開示は、資本市場の透明性を高め、市場の機能を高めるとともに、財務上の特約の意義や、その必要性を再認識したり、財務上の特約の多様化を促したりすることにも資すると考えます。重要性が高いかどうかの判断に当たりましては、投資者の声を十分に反映したものとなることが重要であると思われます。以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは次に、小林委員、どうぞお願いいたします。

【小林委員】
 小林です。非常に多岐にわたる議論をバランスよくまとめていただきありがとうございます。また、内容全体としても、広く重要事項が盛り込まれており、私としましては、全体の内容には異論はございません。その上で、ちょっと瑣末な点も含めまして、4点ほどコメントさせていただきます。ざっと読んだときに頭に入りづらい表記のところも含まれておりますので、御了承ください。

 まず1点目は、6ページの、これは近江委員が先ほど御指摘なさった点ですけれども、下から2番目の、「各企業が重要性を踏まえて記載しない場合」という表現があるのですけれども、ちょっとこの表現自体が分かりづらいということと、あと、内容的には、その「重要性を踏まえて記載しない場合、その旨開示する必要がある」ということですけれども、これはむしろ、どういう内容に、どういうことに基づいて開示をしているのかということを記載していくということのほうが重要なのではないかと思いますので、この点、もう一度お考えいただきたいと思います。

 それから、次の7ページ目の真ん中辺のポツが2つありますけれども、2番目のポツの「充実した体制が整っていない有価証券報告書提出会社にとって、過度な負担にならないか」という、この言い回しですけれども、意味は分かりますが、このような言い方ですと、充実した体制が整っていない会社というのを容認しているようなニュアンスで、ここの表現はもう一段考えていただきたいと思います。

 それから3点目は、9ページの「任意開示書類の参照」です。ここに、「任意開示書類に明らかに重要な虚偽記載があることを知りながら参照することで」とありますが、これは、実際に任意開示書類を作る側の企業にとりましては、何が「明らかに重要な虚偽記載である」と認定されるのかに、若干曖昧性がありますので、これは、できれば少し具体的な例等を挙げていただいたほうが分かりやすくなるのではないかと思います。

 それから4点目、最後の26ページ目の適時開示制度ですけれども、これは当然のことながら、投資判断に影響を与える内容については適時開示を充実させていくという方向性についてはもちろん賛成いたします。一方で、現在の細則主義では、投資判断に影響を及ぼすとは思えないような内容でも細則主義に基づいて開示をしなければいけないという例も実は多発していると思います。例えば定款における文言の修正等が、明らかに投資判断にすぐに影響しないというものでも適時開示の対象になり、即時開示をするというようなケースが最近目につきます。この議論をさらに進めるには、何をもって投資判断に影響するのかという視点からも、しっかりとした議論をしていただきたいと思います。以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは次に、佐々木委員、どうぞお願いいたします。

【佐々木委員】
 佐々木でございます。御指名ありがとうございます。今回の報告(案)の取りまとめ及び丁寧な御説明、どうもありがとうございました。私からも数点コメントをさせていただきます。

 まず、サステナビリティに関する企業の取組みの開示に関するところでございますが、有価証券報告書に「記載欄」を設けて「ガバナンス」、「戦略」等いわゆる4つの構成要素に基づく開示を求めております。気候変動に関しましては、TCFD開示の普及によりまして、この開示の実務が定着してきていると思われますが、人的資本など、それ以外のサステナビリティ情報につきましては、まだ実務が定着していないと思います。一定期間、例えばISSBあるいはSSBJでの結論が出るまでの間は、この4つの構成要素に必ずしも基づかない開示も許容していただけるとありがたいと思ってございます。本テーマは、一度ワーキング・グループで扱ったテーマではあって、非常に恐縮でございますけども、課題があると思いますので、御検討をお願いできればと思います。

 2つ目でございますけれども、コーポレートガバナンスに関する開示に関して、まずは、監査の信頼性確保に関して、KAMについての監査役等の検討内容の開示が望ましいと書かれてございます。ただ、KAMの実務は開始されたばかりということなので、まずは、その適用の状況の評価ということが重要ではないかなと思いますし、それから、本件は、KAMにつきましては会計監査人と監査役等で意見のすり合わせを行った上で監査報告書が開示されるということですから、監査役からの追加の情報があるというケースは非常に少ないのではないかなと思います。したがいまして、開示が望ましいということではなくて、考えられるといった程度ではないかなと思います。

 それと、政策保有株式に関してでございますけれども、コーポレートガバナンス・コードを踏まえまして、多くの企業が縮減する方向で対応してきているということでございます。そうしますと、徐々に残ってくるものは、ここにあります業務提携等を行っているという場合になってくるかと思いますけども、そういったものにつきましては守秘義務があったり、あるいは営業機密に触れるということでございますので、非常に開示が限定的になるのではないかなと思います。したがいまして、ここには「開示項目とすべきである」と書かれてございますけれども、一律的な開示ということではなくて、できるだけ開示を促すという方向で今後議論をいただければと思ってございます。

 それから3つ目でございますけれども、四半期開示でございますが、(4)の「「一本化」の具体化に向けた検討課題」ということで、「第1・第3四半期報告書の廃止後に上場企業が提出する「半期報告書」に対する監査法人の保証のあり方」とございます。括弧の中に「レビュー」、「中間監査」とありますけれども、第2四半期について、昔のといいますか、以前の半期報告書プラス中間監査というふうなものに自動的に戻るといった趣旨ではなくて、現在の第2四半期報告書プラスレビューという、こういった体制の維持ということで、そういった理解でよいのかどうかということをまず確認させていただきたいと思ってございます。

 その上で、前回でも申し上げた案ですけれども、本来、四半期開示は、年度の業績の途中経過を報告するという趣旨だと思ってございますので、第2につきましても、第1・第3と同様に四半期決算短信に「一本化」するのが妥当であると考えてございますので、そういったことも追記していただければと思ってございます。

 なお、プライム市場に属する多くの企業も、まだ四半期開示そのものの任意化ということも意見として持っている会社がございますので、それにつきましても付け加えて申し上げたいと思います。

 それから、その他の開示に関することでございますが、重要な契約の開示につきましては、先ほどと趣旨が似てくるのですけども、相手方との守秘義務でございますとか、あるいは経営戦略上の重要な情報など会社の機微情報に該当する場合、これも開示が非常に困難ということになってくるかと思います。したがいまして、既存の契約あるいは今後結ばれる契約、いずれにしましても、契約の位置付けですとか、あるいはその重要性、それから、企業価値を毀損しないかといった観点を考慮して、最終的には企業自身が開示の可否を判断すべきであるということをその他の留意事項において明記をしていただければと思います。

 最後になりますけれども、今回、非常に開示項目が増加するというふうなことで、有価証券報告書作成者、企業側としても、覚悟が必要だと考えてございますけれども、かなりの負担になるということは否めないと思います。そうした中で、一部記載していただいていますが、エンフォースメントにつきましては、やはり企業そのものが開示に後ろ向きになる原因にもなりますし、そういったことはできるだけ避けるべきだと思いますし、それから、法定開示項目の段階的な導入ということも明記をしていただければと思います。その上で、将来のスケジュールを示すということが企業にとっては非常に重要だと思ってございます。上場企業は4,000社ございます。それからプライム市場に属する企業も1,800社ということで、かなりばらつきがあるということですが、重要なことは、開示を促すといったことだと思いますので、その点、御配慮をいただければ幸いでございます。私からは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは次に、三瓶委員、どうぞお願いいたします。

【三瓶委員】
 三瓶です。御指名いただきありがとうございます。まず最初に、報告(案)について、4つの大項目について丁寧にまとめていただき、ありがとうございます。特に、任意開示書類の参照の点とか、政策保有株式、重要な契約の開示について、今回、踏み込んで丁寧な記載をしていただきありがとうございます。その上で、3点ほどコメントさせていただきたいと思います。

 まず1つ目は、「重要性(マテリアリティ)」についての開示です。先ほど、近江委員又は小林委員からも御指摘がありましたけれども、この「重要性」が企業の開示の判断軸になるということで、非常に重要なので、まず、その「重要性」の開示は求めるべきだと思っています。

 ただこれは、5ページの記載のところで、2つ目のパラグラフの下から3行目ぐらいですかね、「「記述情報の開示に関する原則」を改訂すべきである。」と。それを踏まえて、この原則に基づき、また、ISSBの考え方を踏まえて、重要性の評価を経た開示が必要となるというのは、その「重要性」について開示を求めるということになるかもしれないのですけど、ちょっと曖昧であって、または、そういった段階を踏まえてから開示をしてもらうので、すぐに開示すべきとは書かなかったのかもしれないのですけど、いずれにせよ、こういったことを踏まえた上で、「重要性」についてどういう判断軸を持っているのか、開示をすることが必要だと思っています。

 そして2つ目ですが、14ページの中段のパラグラフ、下から4行ぐらいのところ、「開示する際には、」というところからですけども、「連結ベースでの開示に努めるべき」というふうに言いつつも、例えば女性活躍推進法に基づくものであれば、その範囲でとなっています。例えばその女性活躍推進法でいうと、私のちょっと調べたところによると、労働者数301人以上の事業主、雇用管理区分ごとに把握する必要というような記載がありますけども、そういうベースと投資家が判断するときの連結ベースとどう違うのか、開示される企業側の負担への配慮もあると思うのですが、グローバル標準の視点が重要と考えます。例えば、先ほど近江委員もコメントされましたけど、男女間賃金格差というのは、例えば昨年3月に発効した欧州のSFDRで、来年からはさらに取扱いが厳しくなるのですけども、投資家が評価すべき投資先企業についてモニターすべき指標18項目が挙げられていますけども、その中の1つに入っています。ですから、今後、海外でグローバル投資家はこういったことについてより目を光らせてくると思います。そのときに、算出の根拠とか開示の範囲というものが投資家にとって使えるものではないとなると、または国際的な算出根拠と違うとなると、比較可能でないことと、そもそもそうした重要項目についての投資先企業のデューデリジェンスをグローバル投資家ができないということになるので、日本企業についての評価が著しく下がる可能性があります。そういった指摘を受けてから日本が後から改善していくということでは、日本の評価は全く上がらないと思いますので、少なくともプライム上場企業については連結ベースで開示する。ただ、それについてはある種の移行措置というか、こういったISSBや金融庁の原則について改訂がされることを踏まえてというような形で、どういうゴールを目指しているかということを示すのがいいのではないかなと思います。

 そして3点目ですけれども、重要な契約の開示についてです。32ページ、33ページに、重要な契約に関する具体的な開示内容が列挙されています。「契約の概要」というのがありますね。「契約の概要」について、「締結日、契約当事者」等とあるのですけども、ここに契約解除要件、それと契約期間というのが必要じゃないかなと思っています。こういったことを企業と議論するときに、契約の解除要件というのは非常に重要なポイントになります。また、契約期間も毎年更新なのか、例えば10年固定でその10年後に見直しをするとかいうのがあるのか、そういうことによっても、対話の中身というか方向性が変わってきます。ですから、こういったことも開示の内容として加えることを検討していただければと思います。私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは次に、田代委員、どうぞお願いいたします。

【田代委員】
 田代です。ありがとうございます。私からは、皆様がお話しになった、特に1つが、6ページ目にあります、これも繰り返しになりますが、TCFDにおけるフレームワーク、ISSBにおけるフレームワークの「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4つのうち2つは開示ということと、あとはGHG排出量につきまして、開示をすぐにではないというような表現になっているところ、この2つにつきましては、グローバルな流れについても開示に向かっているということを考えますと、まず、現段階においては、高めの球と申しますか、考えるきっかけにもなると思いますので、これはマストにするというところからスタートにするべきではないかと考えます。もちろん、皆様の御議論の後に、現実的にはすぐ対応できる企業、そうではない企業、時間軸を持ってどう対応するかという議論からスタートすると思いますので、現段階では高めの球を投げておくべきではないかと考えます。

 2つ目は、人的資本につきましても皆様の御意見に、私も同意であるのですけども、1つ気をつけなければいけないのは、日本の人事制度が海外とかなり異なることから、同じ数字を発表しても誤解を招くことが多いので、事前にすごくそこは熟考する必要があるのではないかと思います。例えば男女別賃金についてお話が出ておりますが、欧米において男女別賃金が問題になるのは、同じ職に就いて男女の賃金に差があるからだと思います。日本は逆に、同じ職とか同じ職位に就くと、男女の差は実はあまりなくて、その職に女性が就いていないところに問題があるのだと思います。なので、その2つの問題をちゃんと分けて、逆に、日本は同じ職であれば、賃金の差が職位ではあまりないというプラスの面もアピールできる可能性もあるので、そこは日本の事情をよくよく考えて開示していかないと、海外の投資家は、日本の事情はあまりよく分かっていないで数字だけ見て判断するので、そこは非常に慎重になる必要があると思います。

 最後になりますが、重要な契約の開示につきましては、ここまで詳しく記載いただきまして、非常に大切だと思います。特にこれから脱炭素を含めまして、資本市場からお金を集めないとなかなか進められない大きな金額のプロジェクトが増えてくると思いますが、このような開示がない中では、なかなか投資家も安心して投資もできないと思いますので、ぜひこちらの開示につきましては、議論を重ねて進めるようにしていただければと思います。私からは以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは次に、中野委員、どうぞお願いいたします。

【中野委員】
 中野です。御指名ありがとうございます。まず、今回の報告(案)を拝読いたしまして、非常に多岐に及ぶ、かつ難しい議論が行われたことを再認識いたしました。この取りまとめをしていただきました事務局の皆様にまず御礼を申し上げたいと存じます。ありがとうございました。

 3点コメントさせていただきます。まず、報告(案)の5ページから6ページにかけて、サステナビリティ開示の「記載欄」についてですが、現状は開示箇所が分散しており、明瞭性や比較可能性の確保が必要になっている旨述べられた上で、「投資家に分かりやすく投資判断に必要な情報を提供する観点から、核となるサステナビリティ情報を有価証券報告書に記載することができるよう、有価証券報告書にサステナビリティ情報の「記載欄」を新設すべきである。」という記述につきまして、このワーキング・グループの結論を的確に表す、非常に納得感のある記述と思いました。また、我が国のディスクロージャー史の観点から見ても、節目になる決定がなされたという思いをいたしました。

 2点目についてですが、報告(案)の15ページ「サステナビリティ情報に対する信頼性確保」についてです。こちらの記述については、基本的に賛成ですけれども、サステナビリティ情報に関する「記載欄」が実際にできてくると、日本において自発的な保証が予想以上に進展する可能性があるのではないかと考えています。その意味では、中期的な検討課題と記載されているのですけれども、かなり重要性の高い中期的な重要課題というぐらいの意味を持っているように思いました。今後、自発的な保証の動向、実態を注視していく必要がある、という認識を持ちました。

 3点目は、四半期開示についてです。報告(案)の25ページ、27ページのところですけれども、先ほど近江委員が指摘された点は、私も同意見です。25ページの、「全部又は一部の上場企業を対象とした四半期決算短信の義務付けの有無をどう考えるか」、また、27ページの、「海外の機関投資家を含む幅広い資金を取り込むことができる環境を確立することができれば、必ずしも一律に四半期開示を求めなくても、投資家に充実した情報が提供されることになるとの指摘もある。」という記述について、26ページに、エンフォースメントやレビューが今後の課題になるという記述と整合性がとれていないように読んでいて感じました。したがって、私も近江委員と同様に、この記載を入れることについて疑問を持った次第です。以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは次に、藤村委員、どうぞお願いいたします。

【藤村委員】
 ありがとうございます。藤村です。よろしくお願いいたします。今回、一連の議論を比較的コンパクトに、内容が多岐にわたるにもかかわらずまとめていただきまして、事務局の皆さんには御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

 私も全体を拝見いたしまして、全体の方向性については賛同いたします。ただ、各論的に4点申し上げたいところがございます。

 まず1点目ですけども、これは2回目の修正案を頂いたときに修正されているので、特にさらなる修正というのは必要ないと思っているのですけども、重要な点だと思いますので、申し上げます。いろいろなページで、「投資家の投資判断に重要な」という表現が開示の基準として出てきますけども、あくまでも企業価値に関連した投資家の投資判断にとって重要だというところを明確にしていただきたいと思っておりました。これは5ページ目の「ただし、」のパラグラフにおいても明確に述べられております。

 この背景を少し申し上げますと、昨今、投資家といっても様々な方がいらっしゃって、もちろん機関投資家、個人投資家は従来からおられますけども、例えば環境団体のようなステークホルダーが株式を買って投資家という側面も持たれているというケースもございます。今回の有価証券報告書に限って言うと、シングルマテリアリティで考えるというのを軸にしておると思いますので、やはり企業価値の判断、評価に重要なものを開示していくという、ここの軸は非常に重要だと考えております。もちろん、企業価値評価ではなくて、企業の様々なステークホルダーの方々から開示を要請される事項というのがあって、この要請も非常に重要なもので、ただ、これは有価証券報告書の話ではないと考えております。それが1点目です。

 2点目は、人的資本のところですけども、先ほど御意見も出ていたので、重複するところがあると思いますが、多様性の拡充に向けた男女の賃金格差の開示・是正というのは非常に重要な点だと思いますし、岸田内閣の施政方針演説に沿ったものであるので、方向性について異存はございません。

 ただ、先ほど資格の問題もありましたけども、例えば世代について言っても、様々な世代が企業内にいる中で、やはり時間軸で考えたときに、人員構成とか給与の差というものも、同じ仕事をしていれば同じ給与というのはそのとおりですけど、特に世代については、人員構成の格差なんていうものを柔軟に説明していく、世代ごとに説明するとか、そういうふうにしないと、すごくミスリーディングな結果になるのではないかなと思います。世代の人員構成、人事・資格制度、これに個別に賃金格差といったものを開示していくということが許されるべきだと。むしろ、そうしないとミスリーディングの情報になると考えております。

 3点目、政策保有株式について、業務提携を行っている場合にはそれを開示しようということで、全体的な違和感はございません。ただ、法定開示ということになると、要は開示しなければ違法になるわけなので、この業務提携の範囲について一定の明確化が必要だと思います。これは、この書面の話ではないのかもしれませんが、今後、金融庁のほうから提携契約の規模とか、その中身とか、一定の指針があると、企業側としても違法・適法の区別になるわけなので、対応ができるのではないかなと思っています。

 4点目は、すみません、四半期開示のところですね。ここはちょっと確認ですけども、22ページの1ポツの(1)の中段のところに「一方、日本では、」というパラグラフがございます。ここを拝見しますと、「一方、日本では、」その下2行目ですね、「四半期報告に虚偽記載の可能性がある場合に第三者委員会等を設けて開示内容を詳細に点検する実務が拡がりつつある。」という記載がございますけども、これは私、ワーキング・グループを1回欠席してしまったので、そこでの議論だったのかもしれませんが、この「実務が拡がりつつある。」というのは、何か根拠とか、ワーキング・グループでもあまり議論された記憶が私はないので、この辺がどういう背景で入っているのかなと。もし明確な背景がないのであれば、ちょっと表現は変えたほうがいいのではないかなと考えております。

 あと、今までの各委員の皆様の議論の中でちょっと気づいた点でコメントを申し上げますと、「指標と目標」が重要性の基準に入ってしまうので、Scope 1・Scope 2については直ちに開示を求めないという立場がこの書類の立場になっていますけども、井口委員、田代委員御指摘のとおり、Scope 1・Scope 2に関しては、かなりの部分でマストアイテムになっているという理解でおります。そういったところで、世界的に見て日本が遅れていると思われることは非常に残念で、せっかく行う今回の制度改定の評判を下げてしまうと思うので、Scope 1・Scope 2のところは少し表現を考えたほうがいいかなと思います。

 その上で、Scope 3については、先ほど井口委員もちらっと触れておられましたけども、実務も定着しておりませんし、横比較するとかえってミスリーディングな状況でございますので、そこは明確に分けて、今、注釈のところでScope 3が述べられていますけども、Scope 1・Scope 2とScope 3を分けて、Scope 1・Scope 2のほうはもう少し踏み込んだ書き方をしてもいいのではないかなと思いました。

 あとは、神作委員のほうから御指摘があったところで、今回の書類にはそこは修正にならない、変更はないと理解していますけども、株主間の合意書です。これについて、当該発行企業が当事者でない場合もという部分がございまして、これは非常に実務的に当該発行企業に知らされていない合意もたくさんございますし、自分たちが当事者でない契約をどうやって開示するのかな、これは難しいのではないかなと。重要な情報というのは非常によく分かりますけども、これは大量保有報告等、別な制度で担保すべき話じゃないかなと、実務のほうからは考えました。私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。1点確認の御質問があったように思いますけど、いかがでしょうか。

【廣川企業開示課長】
 企業開示課長の廣川でございますが、今、藤村委員から1点確認の御質問をいただいたのは、22ページでありますけれども、「四半期報告に虚偽記載の可能性がある場合に第三者委員会等を設けて開示内容を詳細に点検する実務が拡がりつつある。」というところでございます。ここのところは、私どもは四半期報告書、法定の開示書類のエンフォースメントも金融庁において対応させていただいておりますし、また、独立した証券取引等監視委員会のほうでも、四半期報告書については開示検査という中で見ていっているというような状況でございます。実際の虚偽記載があった場合には訂正報告書が提出をされるわけですけれども、そういった過程の中で、訂正報告書を提出する、検討していく中で、実際にどういうような虚偽記載があったのかとか、その原因は何だったのかとか、そういったものを社内的に、しかしながら独立した立場できちんと確認をする、適正な確認を行うという観点から、例えばですけれども、公認会計士ですとか、弁護士ですとか、そういった方々をメンバーに加える形で第三者委員会を設置されている例が出てきている、拡がってきているという印象を私どもは受けているということをもって、今回これを書かせていただいていると。経緯的にはそういうことでございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。藤村委員、よろしゅうございますでしょうか。そういうことでございます。

【藤村委員】
 ありがとうございます。そういった実例があるということで、本当にそれが拡がりつつあるのかなというところが、依然としてデータが分からないので疑問ではございますけども、そういう例があるということと理解いたしました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、先へ進ませていただきます。次に、上柳委員、どうぞお願いいたします。

【上柳委員】
 上柳です。ありがとうございます。6ページ辺りですけれども、サステナビリティであるとか、あるいは気候変動も含めてですけれども、TCFDフレームワークの4つの構成要素のうち、「戦略」あるいは「指標と目標」も任意ではなく法定開示項目とすべきというふうに議論を踏まえても思っております。6ページのなお書きのところに、それがうかがえるような記載にはなっているのですけれども、復活折衝ではないですけれども、そういう意見も日本社会には盛り上がっているということが分かるような書きぶりに変えていただけるとありがたいなと思いました。

 気候変動について、GHG排出量のScope 3についても、当面はコンプライ・オア・エクスプレイン的な内容でも構わないと思うのですけれども、開示項目とするべきだと思います。

 四半期開示の「一本化」については、開示の実質が後退することがないように、それから、取締役会や監査役等の活動、あるいは重要な契約、コベナンツ等の開示も賛成です。さらに、適時開示の充実も本格的に進めたいところだと思います。

 全体的にですけれども、開示項目の増加やエンフォースメントについては、個社あるいは開示担当者の方々にとっては負担が増える面があるということは、同情というか、理解いたしますが、やはりこの日本企業が積極的に新しい社会課題、あるいは国際社会の課題を捉えているということ、それに対してエクスプレインの部分があるかも分かりませんけれども、対応を考えているということを示すということだろうと思います。それを日本国全体としても開示の枠組みを整備しているということは、国際社会の課題解決への貢献であり、あるいは国際的な資本市場での地位を高める重要なメッセージであるということを忘れてはいけないと思います。以上です。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次は黒沼委員、どうぞお願いいたします。

【黒沼委員】
 黒沼でございます。私からは1点だけコメントしたいと思います。9ページのサステナビリティ開示における任意開示書類の参照についてです。

 任意開示書類に虚偽があった場合の考え方は報告(案)の整理のとおりで結構と思います。より重要なことは、サステナビリティ開示欄の記載を任意開示書類に丸投げするような実務が行われますと、有価証券報告書に「記載欄」を設けた趣旨が没却されてしまうということです。この点は、報告(案)に記載のとおり、重要な事項は有価証券報告書に記載するのが法の趣旨であるということは当然ですが、それを踏まえて、丸投げが生じたような場合に、課徴金などのエンフォースメントを当局にしっかりやっていただくことが重要だと考えています。私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に上田委員、どうぞお願いいたします。

【上田委員】
 御指名ありがとうございました。まず、報告(案)を拝見いたしまして、多岐にわたる議論がされておりましたけれども、それをこのようにおまとめいただきましたこと、本当にありがとうございました。

 特にこの分野は、今、世界でも急速に議論が進展している中で、そういった議論を取りまとめた報告(案)になっているかと思います。今後これが具体的にルール化される中で、そういった具体的な部分については、より進化したディスカッションができればありがたいなと思っております。

 私は、まず一般的なところ、全般的に関するところとして感じたところをお伝えいたしますと、やはり重要なのは、必要な情報は何であるか、特にサステナビリティというのは数字を計算すれば出てくるものではなくて、企業がしっかり考えてお悩みいただく場面が多いと思うのですが、その上でお答えを出していただかないといけないものがあるかと思います。例えば、マテリアリティの判断もそうですし、あと、ここで重要なのが、実は企業によって相当格差が既に生まれている、しかも、今後、グローバルに求められる情報というのがどんどん変わっていく、進化していく中で、企業によっては、こういうグローバルな流れから隔絶したところにある企業もあられますし、また、投資家の動向というのも直接感じにくい、感じられる会社とは違うような情報格差が出ているように思いますので、そういったグローバルな動きというものを強く持って、その企業がマテリアリティを判断できるような働きかけというか、すいません、イメージなく申し上げておりますけれども、が今後の議論を含めてしていければと思っております。

 そこで考えますのが、ルールという枠組みは金融商品取引法の中でされていくとは思うのですけれども、それとは別にベストプラクティスとしての開示のあり方というものをしっかり考えるものとしまして、やはりガイドライン、実務指針等もできるだけ早く議論は始めていただいて、企業にいろいろな定着を図っていただければと思います。

 以上、全般的なところですが、以下は細かい点をちょっと幾つか申し上げさせてください。

 まず、7ページ、市場区分とそれに見合った負担となっておりますが、「充実した体制が整っていない有価証券報告書提出会社」とございましたけれども、これは特に市場区分の中では、プライム市場については、やはり市場の信頼性というところも強く認識される、これは日本自体の信頼性にも関わるものですので、ここはしっかりと考えていただきたいと思います。

 次に、9ページ目になりますが、将来情報と任意開示の部分で、ここは企業の積極的な取組みを後押しつつ信頼性を確保する仕組みということでして、これは先ほどの話になるのですけれども、こういった点、積極的に企業において取組みをしてほしいといったところを共有していければと思っています。

 続いてですが、14ページ、人的資本のところです。私、ちょっと懸念していましたのが、数値の開示が目的化してしまうと、本来的な意味での人的資本の開示につながらないなということを心配しておりました。けれども、方針についても開示項目とされるということをここに明記されていますので、これは大変望ましい改定であるなと拝察いたしました。

 次に、18ページですが、ここはコーポレート・ガバナンス報告書について言及いただきました。私、かねてからコーポレートガバナンスのあり方をコーポレートガバナンス・コードに沿って開示してもらっているということで、有価証券報告書と何らかの形で一体的に開示されるといいなと思っていましたので、こういう補完し合えるような形になっているというのは大変ありがたい表記であり、これはぜひ実務に定着をしていただきたいと思います。

 最後に適時開示、26ページのところです。適時開示はワーキング・グループの文脈の中では、四半期開示との関連で入ってきたかと思いますが、ウクライナ問題を例に挙げますと、実際に適時開示をされたのは17社ぐらいしかなくて、ところが、業績インパクトというのはほとんどの会社で開示されておられるということもあって、そもそも適時開示の必要性は何なのかということについて、ちょっと今、強く問題意識を持っている、あるいは問題意識を持つに至ったというような状況があるかと思いますので、ここは今後しっかりと詰めて議論されればよろしいのかなと思いました。以上でございます。本当におまとめいただきまして、ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に清原委員、どうぞお願いいたします。

【清原委員】
 ありがとうございます。清原です。このたびは非常に複雑な問題が多岐にわたってある中で、うまく報告(案)としてまとめていただいたことに対して、事務局の方をはじめ皆様に感謝申し上げたいと思います。

 委員の方から御発言がありましたように、今般、この報告(案)のまとめた方向で進んでいくと、企業の負担が増えることは確かにあるかと思ますが、ワーキング・グループの報告(案)の副題として、「中長期的な企業価値向上につながる資本市場の構築に向けて」と付けていただいているところについても考えるとよいと思います。これまで開示について投資家の投資判断を中心としてずっと議論がされてきていますが、同時に、企業にとっても開示のメリットが感じられるような形で、これからの実務が進んでいくことが望ましいというふうに、感想ではありますけれども、感じるところであります。

 個別の点に入る前に、1点だけ先に触れさせていただきたいものとして、今回のディスクロージャーワーキング・グループで、必ずしもあまり直接触れてはいないのですけれども、プロセスの開示ということが今後もっと重要性を持つようになっていくだろうと感じているところがございます。

 現在は、皆さん御案内のとおり、VUCA(volatile, uncertain, complex, ambiguous)と言われていて、不確実性が高く不透明で複雑、そして変化も激しいという環境の中で、企業経営そのものも、なかなか大変な時代であり、その中で新しいリスクも含めた不確実な事象に対処していくこと、これに早く気付いて対応できるということ、その感度が高まっていくことが大事で、今までのようなコンプライアンス・ベース、ルールだからやるというような発想ではなくて、この機会に発想を変えて、企業価値向上に向けて、社内体制・プロセスを整備して、感度を高めていく、そのようなこととあわせて開示の充実を捉えたうえで、運用されていくとよいのではないかと感じているところでございます。

 そういったことをベースに、5点ほどコメントさせていただきたいと思います。

 1点目が、今回フレームワークとして「記載欄」を作るということで始まるわけですが、そこでの4項目に「ガバナンス」と、それから「リスク管理」が入っているということの意味も考えておくべきというところでございます。

 下手をすると、「記載欄」が作られるので、そこにまとめるということで、これまでの実務の延長ですとそこが「たこ壺」的な開示になりかねないということも懸念されるところであります。この「ガバナンス」、「リスク管理」というところが、【コーポレート・ガバナンスの状況等】の開示、それから、あとは【事業等のリスク】の開示、それらと関連するものでありますし、それ以外にも、【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】ですとか、その他の開示箇所との連動性、関連性ということをよく考えた開示がなされるようになること、その意味でクロスレファレンスがなされること、社内体制の整備としても、それぞれが関連していることが明確に意識された形で体制の構築・運用がなされ、開示内容も準備がされるということがとても重要ではないかと考えているところでございます。そういった点は、報告書に書き込みにくいかとは思うのですが、報告(案)の最終化において考慮いただければと感じているところでございます。

 2点目はマテリアリティのところであります。

 内容的には書いていただいているのですが、マテリアリティは重要なテーマとして、このワーキング・グループでも議論がされたところでもあり、その評価軸がやはり今までとは大きく変わってきて、複雑化なものとなる面があると思われますが、そのことがまだ必ずしも読み切れないのではないかと感じております。短期、中期、長期の影響ということを考えることもありますし、それから業績、特に財務諸表そのものだけでなく、ビジネスモデルもそうでしょうし、いろいろな影響があるところを考えて、マテリアリティは判断されていくことになるのだろうと思われるので、この報告書を読んだ方がもう少しそれをイメージしやすいように、気候変動その他を専門にされている方は当然だと思われるかとは思うのですが、それに必ずしも通じてない方も、理解しやすいようなまとめ方になっているとよいのではないかと考えるところでございます。

 次に、リスクマネジメントについてです。【コーポレート・ガバナンスの状況等】のところで、取締役会の活動状況が開示項目として新設されることは賛同するのですが、ガバナンスやリスクマネジメントに関して、経営陣と取締役会の役割というものが当然サステナビリティ開示の項目のところで記載されることになるわけであり、この取締役会の活動状況の開示のところとも関係してくるわけです。そういうことを考えたときに、そこの「記載欄」のところであげられている「開催頻度」、「主な検討事項」、「個々の構成員の出席状況」という記載項目について、法制度上はできるだけ他の開示項目と合わせた方がよいということで挙がってきていることも分かるのですけれども、それだけではここでの活動状況の開示がなぜ重要なのかということ、それから他の開示箇所との関連性があるということが、ここからはなかなか読み取れないと懸念を感じるところであります。取締役会の活動状況について開示が求められるから開示するというのではなくて、4つの開示項目のところの「ガバナンス」、それから「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」、こことの関連でも当然取締役会はその役割を果たしているはずで、そういったことがこの取締役会の活動状況の記載項目からもうかがえるような、そういった連動性が分かるように、今後の金融庁のガイダンスその他でも示されていくことを期待したいと考えております。

 「リスク管理」に関しては、リスク管理体制の整備状況について、【コーポレート・ガバナンスの状況等】の記載上の注意で例示されているのですけれども、そういったものがやはり今後開示項目として明確に示されること、また、整備状況のみならず、取締役会の活動、役割の中でいうと運用状況の監督が重要ですので、運用状況の監督のところにまで開示がしっかりなされること、実際にその開示をされている企業もありますけれども、そういったことが望まれているということなどが脚注などを含めて書いていただくことがよいのではないかと思います。また今後の「企業内容等開示ガイドライン」や「記述情報の開示の原則」の中で記載していくこともできるのではないかと考えるところであります。

 コーポレートガバナンスのところでいうと、監査の信頼性の中で、内部監査のところに関して、「内部監査の実効性」という言葉が使われております。内部監査の実効性そのものについての説明の意義を否定するものではないですが、内部監査の実効性を考えるということであれば、当然取締役会の実効性ということも、現状の実務では実効性評価が実施されているところでもありますので、そういったことの開示が望まれるということぐらいは、今回の報告(案)で記載いただくこともできるのではないかと考えるところでございます。

 次に重要な契約のところでありますが、重要な契約に関しては、今回明確化を図れるということは非常に歓迎しております。ただ、「契約」という文言でありますと、やはり法的な意味で、両当事者が正式に契約書を締結したということを念頭に想定したものということになりがちですけれども、今回の報告(案)の31ページの注の65のところであげられている大量保有報告書に関しては、「契約又は取決め」というように「取決め」という言葉もあわせて使われていて、必ずしも契約が締結されている場合だけでなく、そういう取決めがある場合には開示の対象になるということが示されているところです。同様に、重要な契約に関しても、正式な書面としての契約書というものでなくても取決めがあるということであれば、それはやはり開示の対象になるということが適切ではないかと。なぜならば、契約書という形式の場合のみを開示対象とするならば、開示の潜脱のような行為をすることが極めて容易にできてしまうとも懸念されるからです。そういった開示ルールの潜脱のようなものが許容されていないことがはっきりと示されるようにしていくことは、この点に関して重要ではないかと考える次第でございます。

 次に、株主総会前の有価証券報告書の提出というものが、開示の頻度、タイミングのところで上がっておりましたので、コメントさせていただければと思います。

 今回このトピックが出てきたのは非常に重要で、これまで何度も取り上げられながら、なかなか前に進んでない課題ですので、その原因などについて、本当は深く議論する機会があればよかったのではないかと考えるところでもありますが、報告書案では投資家と企業の対話ガイドラインの4-1-3の内容について、28ページの頭のところで触れられているので、少し補足していただきたい点があります。ここは対話ガイドラインの4-1-3の前段部分だけなので、後段についても明確にリファーすることがよいのではないかと考えるところです。何を申し上げたいかというと、その後段のところでは株主総会関連の日程の適切な設定という話が上がっておりますが、「投資家と企業の対話ガイドライン」の改訂のパブコメ回答などを見ておりますと、そこでは基準日の見直しの余地の話が出ています。決算期末に株主総会の基準日を設定していると開催は決算期末から3か月以内になりますが、株主総会の基準日自体が、決算期末から1か月後、場合によっては2か月後でもいいのかもしれませんけれども、そういったことがあれば株主総会の開催時期を4か月後や5か月後とすることが可能になるところです。決算期末より後にする実例があることも、本当はしっかりと正面から取り上げていったらよいのかもしれないとも考えられます。なお、この報告(案)において、決算基準日という言葉を使っている点は少しミスリーディングというか、混乱を招きかねない点があると思っています。株主総会の開催を決算期末から4、5か月後にすることに関して、決算期末というものと、株主総会の基準日というものが、必ずしも常に一致していなければならないわけではない、ということを議論する上で、2つの概念の区別がつけられるように使用する用語を選択することがよいと思うからであります。

 それから最後に四半期のところの意見として、四半期開示のところの整理が進むというのは、重複をなくすという意味での合理化、これは有用だと思うのですけれども、柔軟性も考えていってよいのではないかというふうに考えているところです。また、第1、第3四半期に関して、四半期報告書については四半期決算短信に「一本化」していくが、半期が残るというふうにこちらの報告(案)のほうではまとまっているところであります。ここについて、いろいろ御意見はあるかとは思うのですけれども、非上場の会社において半期報告書が出されている、すなわち年次報告1本だけではないということを考えたときに、果たして上場会社が半期報告書も出さずに、年に1回しか継続開示書類がないということが果たしていいのかどうか、ということも含めて、今後の議論の中でバランスを含めて検討がなされることがよいと考えるところであります。長くなりましたが、以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に熊谷委員、どうぞお願いいたします。

【熊谷委員】
 ありがとうございます。みずほ証券の熊谷でございます。まず、皆様からも御指摘ありますけれども、今回のディスクロージャーワーキング・グループ、非常にアジェンダが多い中で、かつ難しい問題も扱う中、きっちり報告(案)としてまとめていただきましたことを感謝申し上げます。

 まず全体としての方向性、これまでの議論を踏まえた形になっていると思いますし細かいところでは、今、他の委員の方々からも御指摘ございました。他の委員の御意見を含め、全体として賛成いたします。

 そういう中で、特に私自身、このサステナビリティ情報につきましては、SSBJの位置付けですとか、国際意見発信体制、あるいは国内の開示の、これからISSB、あるいはSSBJが基準をつくっていく中で、そういう基準をどうやってエンドースメントしていくかということについて最初の頃に問題意識を申し上げましたけれども、それについても、今回のディスクロージャーワーキング・グループで十分議論できたとは思っておりませんが、この報告(案)の内容を拝見する限りは、今後そういったことについて議論を深めていくというふうに理解いたしました。こういった記述をしていただいたということで感謝いたしております。

 それから四半期開示の制度見直しについてであります。

 今回のディスクロージャーワーキング・グループで、第1、第3四半期について、四半期決算短信に「一本化」していくという方向性が決まったと理解しております。ただ、今、その中で、何人かの委員から開示の後退につながる、あるいはそういう印象を持たれないということが重要じゃないかというような御発言がありましたけれども、実際私のところにも開示見直し後の開示内容の質、量、それから信頼性、あるいは正確性について懸念を示す声が国内外から届いております。これ、不幸中の幸いといいますか、まだ、今回のディスクロージャーワーキング・グループで方向性が決まっただけでありまして、検討課題が残っているということで、今回の報告(案)でもいろいろ指摘があるわけであります。検討課題が残ったがゆえに、投資家に限らず、利害関係者のアウトリーチの時間を確保できたのではないかなと考えてございます。今後のディスクロージャーワーキング・グループでより詳細が決まっていくのだろうと思いますけれども、やはり利害関係者のアウトリーチというのは必要ではないかなと思っております。

 特に海外の投資家から、開示の後退というふうに思われないということが重要であるということが、皆様からも指摘されておるわけであります。今回の四半期開示の見直しについて、海外の投資家に対してもアウトリーチしていくようなことが必要じゃないかなと思います。また、制度というよりも、例えば四半期決算短信に開示される内容、それから、半期報告書になるのか、あるいは第2四半期の話になるのか、あるいは第2四半期の報告書になるかということもまだ決まってないわけでありますけれども、その開示内容のレベル、特に決算短信につきましては、今後、東証において投資家及びその他の利害関係者に対してアウトリーチをやっていっていただきたいと思います。もし今回の報告書にそれが書き込めるのであれば、ぜひ書き込んでいただきたいなと思っているところであります。

 今、海外の投資家の話も言及しましたけれども、実際、日本の株式のおよそ3割がもう既に海外の投資家が保有している。しかも、東証におきまして、約6割から7割の取引というのは海外の投資家が行っているということを考えますと、やはり、この議論を国内だけで閉じるのではなくて、可能な限り海外の投資家の理解も深めながらやっていくということが必要ではないかなと思っているところであります。

 それから最後に、これは佐々木委員もおっしゃっておられましたが、スケジュールということですね。ディスクロージャーワーキング・グループでも、ロードマップをつくりましょうというお話が出ていたと思います。それがちょっと残念ながら、今回の報告(案)の中からは消えてしまっているようでありますので、報告書の中、ないしは概要のところでもいいのではないかと思うのですけれども、そういうスケジュール感を示すようなロードマップというのが必要ではないかなと思っております。

 この報告書を読んでいれば、今回決まった開示内容自体が、今後国際基準やSSBJ基準の開発の進展によって、開示すべき内容の修正とか拡充があるであろうということは容易に予想されるところでありますけれども、そういった意味で、この報告書で開示を求めているものに関しましては、気候関連にせよ、人的資本にせよ、暫定的なものであろうと思います。

 ただ、国際基準の開発とかSSBJのこれからの動きとか、あるいはこのディスクロージャーワーキング・グループの議論の関係というのがかなり複雑で、恐らくこの議論に参加している人は、我々含めまして分かると思うのですが、これを読んだだけではなかなか、スケジュール感が分かりづらいのかなと思います。利害関係者の期待ギャップをコントロールし、将来に向けた実務的準備を容易にするためにもロードマップが必要ではないかなと思います。

 四半期開示につきましても、同じようにロードマップが必要ではないかなと思っております。こういうロードマップ自体が、性格上、暫定的なものにならざるを得ないわけでありますけれども、今後の議論の状況の進展に応じて、報告書のアップデート、あるいは概要のところだけでもいいかもしれませんが、そういうアップデート、金融庁のホームページにおいて、報告書とは別に、そういうロードマップを示すようなページをつくっていただいて、随時更新していくということが必要ではないかなと思います。私のほうから以上です。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に高村委員、どうぞお願いいたします。

【高村委員】
 神田座長、どうもありがとうございます。私からは3点申し上げたいと思います。その前にまず、事務局には他の委員からもございましたように、非常に多岐にわたる検討事項について、それから特にサステナビリティ情報開示に関しては、従来ないエリアの開示の課題について、しっかり議論をまとめていただきましたことを御礼申し上げたいと思います。基本的に事務局の取りまとめの方向性について賛成、賛同いたします。

 その上で3点、申し上げたいと思っております。

 既に他の委員と重複をするところではございますけれども、まず第1点目が6ページ目のところでございます。近江委員や小林委員などからも御指摘があったところでございますけれども、なお書きのところです。私、以前の当ワーキング・グループの会合で発言させていただいた趣旨をちゃんと事務局が反映していただいているようにも理解をしておりまして、恐らく私の言葉の足りなかったところもあるかと思って、改めて発言をさせていただきます。

 委員の御指摘がありましたように、「その旨」というのは、つまり重要性に照らして、開示の必要がないと判断をした根拠、理由の開示というものが必要だという趣旨でございます。

 そういう意味で、もし修正をいただくとすると、恐らく「その旨」の曖昧さに起因していると思いますので、今申し上げましたように、重要でないと、情勢を踏まえて開示をしないと判断した場合の根拠、理由の開示の必要性があるというふうに御修文いただくというのが一案ではないかと思っております。

 2点目でありますけれども、これは12ページ目のGHG排出量のところで、その辺りは藤村委員がもう私が申し上げたいところを既に御発言いただきましたので、簡潔に申し上げたいというふうに思っております。

 12ページの2行目のところでありますけれども、既にその前の11ページのところで、まさに国際的にはGHG排出量について「気候変動に関する指標として確立しつつある。」と明確に記載いただいておりますので、恐らくこの2行目のところの、「ただちに具体的な開示項目とするのではなく」というのを削除していただいた上で、藤村委員からも御示唆がありましたように、Scope 1・Scope 2に関してやはりしっかり開示が求められる状況であること。そして今、Scope 3に関しては重要性を考慮した開示という書き分けをしていただくことで、現在の国際的な議論と今後の方向性をしっかり示すことができるのではないかというふうに思います。

 最後、3点目であります。サステナビリティ情報開示に今回この取りまとめで大きく一歩を踏み出す、そういう報告であるというふうに思います。他方で、多くの委員から御指摘ありましたように、やはりあくまでこれは、これから国際基準の議論が進んでいくことも念頭に置いた、最初の出発点としての方向性を示したものであると理解をしております。その意味では、将来に向けての拡充ということをしっかり念頭に置いていることがうまく伝わるようにしておく必要があるのではないかと思っております。

 具体的な点で申し上げますと、もちろんこれはISSB等の国際的な基準の議論の進展との符合を見ながらということでございますけれども、各項目の中、報告(案)の中で予定される検討課題はそれぞれ書かれているというふうに思いますけれども、こうした検討課題を、これは佐々木委員、熊谷委員からの御指摘にあったように、どういうスケジュール感で検討し、制度構築を追求していくのかといったロードマップというものは、この報告とは別なのかもしれませんけれども、やはりお示しをしていくことが開示を行う企業にとっての取組みの予見可能性、ひいては開示の充実につながっていくものというふうに思います。

 あわせて、いくつかの非常に重要な開示に関わる概念ですとか判断基準、例えば、重要性、マテリアリティの判断基準などが典型的でありますけれども、こうしたものの指針といいましょうか、ガイダンス、あるいはこうしたよりよい開示のグッドプラクティスをしっかり示していくといった、開示のこうした項目、基準設定だけではございませんで、実質的にその質を充実させるための方策についても、金融庁あるいは関係省庁を通して協力して取り組んでいただきたい、取り組んでいくということを示していただくのがよいのではないかというふうに思っております。以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうも、貴重な御指摘をありがとうございました。予定の時間を過ぎてしまっているのですけど、少しだけ延長することをお認めいただければと思います。

 委員全員の皆様方から御意見をいただくことができました。大変貴重な御指摘をたくさんいただきまして、ありがとうございました。それで、オブザーバーの皆様方にも、手短にお願いしたいのですけども、もし御発言があれば承りたいと思います。いかがでしょうか。

 経団連の小畑オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【小畑オブザーバー】
 経団連、小畑でございます。発言の機会をいただきましてありがとうございます。まず、前段の非財務情報関連の開示の充実については非常に意義のあることだと思っておりまして、今回の取りまとめは、この方向で、企業側も対応してまいりたいと思っております。サステナビリティ情報の開示については、これから開示府令の改正等が行われると思っておりますが、実際の適用時期について、見通しで結構ですので事務局から教えていただければと思います。よろしくお願いします。

 もう1点、四半期開示については、いろいろと御意見があると思いますが、今の四半期開示の利用状況からすると、四半期決算短信のほうが中心となっておりますので、四半期報告書をなくすことによって開示の後退というのは基本的にはないと認識をしております。

 その上で、26ページに「半期報告書」という言葉が出ておりますが、これはかつての年度決算と同様のレベルの半期報告書に戻るということを意味しているのではなく、現在ある第2四半期の四半期報告書について、第1・第3四半期開示がなくなるので、「半期」と表記されていると認識しております。「半期報告書」が、かつての半期報告書を意味しているわけではないと理解しておりますので、その点、よろしくお願いしたいと思います。以上でございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。御質問が1点あったようですけれども、いかがでしょう。

【廣川企業開示課長】
 企業開示課長の廣川でございます。まず、非財務情報開示の関係で、適用時期の御質問をいただきました。現時点で案としてお示ししているのは報告(案)に書いてあるとおりではございますので、それ以上のことというのは何ら決まっているわけではないのですけれども、今後の手続的なことを考えますと、記載事項というのは開示府令の改正事項になりますので、そのパブリックコメントをかけて、成案を得て、もちろんのこととしてそれぞれの項目について開示をされる企業の準備というのがございますので、それも踏まえた上で適用時期を考えていくということになろうかと思います。当然、その際には多くの企業が3月末決算であるということも踏まえた上で、じゃあその適用時期として、例えば来年の3月末決算の企業が6月末までに有価証券報告書を出されるときに間に合うような事項なのかどうか。今回は幅広に項目があったかと思います。その中に、例えばですけれども重要な契約については円滑に実施をしていく観点から既契約についてどうするかという論点も報告書案の中には書かれていたかと思いますので、それぞれの項目ごとに今後、金融庁のほうでも検討してまいりたいというふうに考えてございます。

 1点だけ補足で、これはご質問はいただいてないのですけれども、「半期報告書」が何を指すかということは、現在の第2四半期に出てくる四半期報告書のことであるというふうに、何らか報告(案)で決めて書いているわけではございませんで、まさにその半期報告書というものがどういうものかも含めて、今後の論点というふうに私としては認識をしてございます。以上でございます。

【神田座長】
 ありがとうございました。小畑オブザーバー、よろしゅうございますか。

【小畑オブザーバー】
 はい。ありがとうございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。では次に、連合の片山オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【片山オブザーバー】
 連合の片山です。発言の機会をいただきましてありがとうございます。時間もありませんので、簡潔に3点ほど述べさせていただきたいと思います。

 まず、1点目は人的資本に関する開示ですが、企業の内部留保が増加する一方で、人的投資が少ないという現状を踏まえれば、「人材育成方針」や「社内環境整備方針」が人的投資の増加につながるものである必要があると思います。そのために、方針策定に当たっては労使の協議というものが重要になってくると思いますので、よろしくお願いします。

 2点目ですが、多様性に関する開示です。報告(案)14ページに、多様性に関する指標については「企業負担等の観点から、他の法律の定義や枠組みに従ったものとする」というふうに書いてありますが、現行、女性活躍推進法の枠組みでは男女の賃金差異については情報公表の項目に入ってないということになりますので、今後見直しが行われるというふうに13ページにも記載ありますが、政府として一体的な法改正について対応をお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。

 3点目について、人権です。ビジネスと人権の問題ですが、報告(案)12ページでは注の中に人権デューデリジェンスについて記載がありますが、欧米の政府の対応を踏まえると、サプライチェーンも含めた人権デューデリジェンスというのは今後さらに注目されると思いますので、サステナビリティ情報の「記載欄」において人権に対する姿勢を明確にすることは、企業価値向上のためにも必要なことだと思います。以上3点、よろしくお願いします。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、次に全国銀行協会の伊藤オブザーバー、どうぞお願いいたします。

【伊藤オブザーバー】
 全国銀行協会の伊藤です。御発言の機会をいただきまして、ありがとうございます。サステナビリティ開示、特に気候変動対応に関する開示につきましては、私ども銀行業界としましても重要なテーマでございますのでコメントさせていただきます。

 現在、金融分野では世界的なサステナビリティ開示の充実の流れと平仄をとる形、つまりサステナビリティ開示が前提となるような形で、その開示情報に基づき、トランジション・ファイナンスの適格性や、気候変動リスク管理などに関するグローバルなルールメイキングが急速に進展している状況です。したがいまして、私どもからしますと、お客様である投融資先企業の開示と、私ども金融機関側の気候変動リスク管理や、円滑なトランジション・ファイナンスの御提供、与信判断が今後さらに非常に密接に関係してくる状況です。今後、開示の充実を考えていただく際には、金融資本市場のグローバルな競争力の観点は当然のことながら、こうした金融分野でのルールメイキングなどとの相互関係も含めまして、ぜひともスピーディーかつ多角的な検討を引き続きお願いできればと考えています。また今回、TCFDの4つの開示項目のみを定めて、具体的な開示事項は各企業の御判断に委ねる形になっておりますが、比較可能性の確保や、開示の充実を促す観点から、好事例集などを公表するなどの取組みも一考に値するのではないかと考えておりまして、今後御検討いただけると幸いです。私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。ちょっと私の進行の仕方が下手で、時間を大幅に超過していて恐縮ですけれども、最後に皆様方に、報告書の取りまとめについて御相談をさせていただく必要がございます。

 本日もいろいろと御議論いただきましたけれども、これまでも個別の項目について皆様方それぞれのお立場もあり、意見が異なっているような事項もございました。本日の案は、そういったものを、委員の皆様方から頂戴いたしました御意見を踏まえて事務局のほうで本日のたたき台の案にまとめさせていただいたものです。本日はこの案につきまして皆様方から大変貴重な御指摘、また具体的な御示唆等も多数いただきまして、本当にありがとうございました。

 そこで、もう一回会合を開催するかどうかですけれども、私としては開催する必要はないのではないかと感じました。すなわち、全体としての方向性ないし方針については皆様方に御賛同いただけたものというふうに理解しております。ただ、表現ぶりを含め、なお様々御指摘をいただいたことは繰り返し申し上げているところでございます。ということですので、今後、もう一度会議を開催するということは恐らく不要ですが、事務局において本日いただきました御指摘、御議論を反映したバージョンといいますか、案を作っていただきまして、メールその他の方法で委員の皆様方に改めて御相談をさせていただきます。その上で、特に大きな問題もなく委員の皆様方の御了解を得られるということでありましたら、その方向で正式に取りまとめとさせていただきたいと考えております。大変恐縮でございますけれども、取りまとめをする時期になっておりますので、今申し上げましたような取りまとめに向けた進め方ということで、大変恐縮ですけれども、私に御一任をいただければ、そのように進めさせていただきたいと考えております。以上のように進めさせていただくことについて、御承認いただけませんでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神田座長】
 どうもありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきます。また今後、このワーキング・グループでの取りまとめが完了いたしましたら、その結果につきまして金融審議会の総会に御報告をさせていただきたいと存じます。

 以上をもちまして、このワーキング・グループとしては本日一つの区切りを迎えることができました。言うまでもなく、これは委員の皆様方に、大変お忙しいところ毎回精力的な御議論をいただいた結果でございます。また、オブザーバーの皆様方にも御熱心に参加いただき誠にありがとうございました。この場を借りまして、厚く御礼申し上げます。

 ただ、先ほどからも御指摘いただいておりますように、これで終わりでは決してありません。まだ続くということで、委員の皆様方には引き続き日本のディスクロージャー制度を一層充実、発展させていくためにも、御意見、御指導をいただくことになるかと存じます。引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。それでは最後に、局長から御挨拶をお願いいたします。

【古澤企画市場局長】
 ありがとうございます。企画市場局長の古澤でございます。私からも一言御礼を申し上げたく存じます。

 委員の皆様には昨年9月より、幅広い論点につきまして丁寧に御議論いただきましてありがとうございました。本日いただきましたコメントにつきましても、先ほど座長からお話ございましたとおり、早急に作業を進めまして、公表できるように準備したいと思ってございます。

 その上で、先ほど課長からもお話しさせていただきましたけれども、内閣府令で対応できる事項につきましては早急に準備をいたし、また法律事項につきましても、御指摘いただいてございますけれども、引き続き御議論いただきたく存じます。

 今回のディスクロージャーワーキング・グループ、2018年6月の前回のワーキング・グループで御議論いただいた点についてさらに議論を深められた点、それから新しい点、ありがとうございました。座長からもございましたけれども、継続的に議論をさせていただくということが非常に大事だと思ってございます。引き続きの御指導のほど、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。それでは、以上をもちまして閉会とさせていただきます。皆様方、長時間にわたりどうもありがとうございました。
 

―― 了 ――

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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局企業開示課(内線3688、2872)

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