企業会計審議会第53回監査部会議事録
1.日時:2021年(令和3年)10月26日(火曜)13時00分~15時00分
2.場所:オンライン開催 ※一部、中央合同庁舎第7号館 9階 金融庁共用会議室3(905B会議室)
【西山開示業務室長】
定刻より少々早いのですが、皆様おそろいになりましたので、これより企業会計審議会第53回監査部会を開催いたします。
事務局の企業開示課開示業務室長の西山でございます。皆様には御多忙の中、御参加いただき、誠にありがとうございます。
本日の会議でございますが、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、企業会計審議会議事規則1条2項にのっとって、オンライン開催とさせていただきます。議事録はこれまでどおり作成しまして、金融庁のホームページで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
オンライン開催に際して、2点、注意事項がございます。まず、御発言されない間は、恐縮ですが、マイクをミュートの設定にしていただきますようにお願いいたします。御発言されるときには、マイクをオンにして、ミュート解除で御発言いただき、御発言が終わられましたら、またミュートにしていただくということでよろしくお願いいたします。また、支障のない範囲で構いませんので、会議中はお顔が見えるように、カメラの設定をオンにしていただきますようお願いいたします。
2点目として、御発言を希望されるときですが、チャット機能を使って全員宛てに、発言希望である旨とお名前をともに入れてお送りください。お名前については、協会名などの組織名でも結構ですので、御入力ください。それを私どもで確認させていただいた上で、部会長から指名させていただきたいと思います。なお、御発言に際しては、念のため、御自身の名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただければと思います。
それでは、堀江部会長、よろしくお願いいたします。
【堀江部会長】
西山室長、どうもありがとうございました。
それでは、まず、会議の公開についてお諮りいたします。企業会計審議会議事規則にのっとり、監査部会の審議について公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
【堀江部会長】
御了解をいただきましたので、本日の会議の模様はウェブ上でライブ中継させていただきます。
それでは、審議に入りたいと思います。本年6月に開催させていただきました監査部会におきまして、監査に関する品質管理基準の改訂についての公開草案を公表することを御了承いただきました。その後、6月30日から7月29日まで意見募集を行いましたところ、7の個人・団体から、23件の御意見を頂きました。
本日は、頂きましたパブリックコメントを踏まえた修正事項につきまして、まず事務局から、その内容について説明を行いまして、その後、委員の皆様から、これに対する御質問、御意見を伺い、当部会としての取りまとめをしていただきたいと考えております。
それでは、事務局から説明をお願いいたします。
【西山開示業務室長】
開示業務室長の西山でございます。堀江部会長から御説明のありましたとおり、本年6月の監査部会で、監査に関する品質管理基準の改訂について、公開草案を取りまとめていただき、その後、6月から7月まで意見募集を行った結果、7の個人・団体から、23件のコメントをいただいています。本日は、パブリックコメントで頂きました御意見を踏まえて改訂案に修正を加えた箇所を中心に御説明させていただきます。
パブリックコメントの概要及びコメントに対する考え方(案)が資料2、また、当該コメントを踏まえた公開草案からの修正案を見え消しでお示ししたものが資料3になります。
では、まず資料2を御覧ください。左側の欄がパブリックコメントで頂きました御意見の概要、右側の欄が、当該コメントに対する企業会計審議会としての考え方を示しております。
まず、御意見のナンバー2,20は、それぞれ意味の明確化を図るために修文すべきとのコメントを頂きましたので、修正をした次第でございます。具体的には、1ページ目のナンバー2では、前文一、第3段落の「最高責任者」は「監査事務所の最高責任者」とすべきというお話。それから、ナンバー20、9ページ目でございます。こちらでは、基準第十四「監査事務所間の引継」第1項の監査調書の閲覧は「それらに関連する監査調書の閲覧」とすべきとの御意見がありまして、明確化の観点から、こうした御意見もごもっともかと存じますので、資料3の1ページ目及び15ページ目の赤い下線部に「それらに関連する」というのを見え消しにて、それぞれ追加の修正を行っているところでございます。
次に、戻りまして、資料の2の2ページ目、ナンバー4を御覧ください。左の欄のコメント概要ですけれども、非監査業務の提供に当たっては、監査業務との同時提供が禁止されている業務の実施により独立性に抵触するリスクを考慮した品質目標を設定することを要求していると理解してよいかとのコメントを頂きました。
右の欄の回答としては、まず、御理解のとおりですと回答しました上で、さらに、非監査業務が監査業務との同時提供を禁止されているかにかかわらず、品質目標の設定において、独立性に与える影響を考慮することを求めている点を明確化するため、「同時提供を禁止されているかにかかわらず、」を追記する修正を行った旨、回答しております。この修正箇所は、本文の3ページ目、前文二 2(3)職業倫理及び独立性のところの追加修正になっております。
それから、次に移りたいと思いますが、資料2に戻りまして、6ページ目のナンバー13,14、それから9ページ目のナンバー19を御覧ください。左側のコメントの概要でございますが、基準第二 2の監査事務所の最高責任者と、基準第十一 5の品質管理システムに関する最高責任者の位置づけが不明確との趣旨のコメントがございました。
右の回答の部分では、まず、品質管理システムに関する最高責任者と監査事務所の最高責任者は、監査事務所の性質及び状況によっては、同一になる場合もあれば、両者が同一にならないという場合もあると考えられます。ついては、例えば監査事務所が、品質管理担当理事を品質管理システムに関する最高責任者として任命することが考えられます。ただし、この場合でも、監査事務所の最高責任者は、品質管理システムに関する説明責任を含む最終的な責任を負うことになりますと回答しております。
その上で、品質管理システムに関する最高責任者を置くということを明確化するため、基準第二 3において「品質管理システムに関する最高責任者」を追記する修正を行った旨、回答しております。これに対応する資料3の修正箇所は8ページ目でございます。こちらの第3項の部分でございます。
次に移りたいと思います。戻りまして、資料2のコメント8ページ目、ナンバー18を御覧ください。左の欄のコメントの概要ですが、2段落目、基準第十一 3「不備の重大性及び影響を及ぼす範囲を評価」のところは、重大性の評価はよいとして、影響を及ぼす範囲は「特定」とすべきとのコメントがございました。
この点、右の回答欄では、不備の重大性及び影響を及ぼす範囲については、通常、重大性と影響を及ぼす範囲を切り離さず、併せて分析すると考えられるため、コメントの御趣旨を踏まえて、基準十一 3を「不備の重大性及び影響を及ぼす範囲を分析しなければならない」に修正しましたと回答しております。これに対応する修正は、資料3の14ページ目でございます。こちらの第3項で「不備の重大性及び影響を及ぼす範囲を分析しなければならない」として、次の文章にも分析という形で、プロセスがつながっていくというものでございます。
このほか、戻りまして資料2のナンバー1では、今回の改訂案に対する賛同の御意見でありますとか、また、ナンバー3にございます通り、3品質管理が効果的・効率的に行われることへの期待のお話をいただきました。また、用語の定義の確認が、ナンバーで言うと12,16,17、また実施時期がナンバー10、などの御質問があり、それぞれコメントに対する考え方という右欄のほうで回答しております。
以上でございます。
【堀江部会長】
ありがとうございました。
それでは、ただいまの説明に関しまして、委員の皆様から御質問、御意見を頂戴したいと思います。それでは林田委員、どうぞ御発言ください。
【林田委員】
ちょっと前半で出てしまうので、早手回しに申し上げます。
全体としては、今回の改訂は多方面に目配りがされていて、適正なものだと思います。1点、残念なことに、様々な会計不正や不適切会計の事案が相次いでおりまして、会計監査の品質向上に対する社会の期待は高まっていると。今回それを見直して、それぞれの監査事務所が主体的に取り組むということは大変時宜にかなうと思っております。ただ、ここ十数年のことを考えますと、会計監査をめぐる状況は刻々と変化しておりまして、その時々で必要な対応というのも変わってくると。今回の改訂をして一丁上がりということではなく、ルールに関してもしっかりPDCAサイクルを回して、不断の見直しを続けるということをお願いしたい。それから、公認会計士の業務が非常に増えているという話がありまして、カバーする範囲も拡大し、現場の負担は増すばかりだと聞いております。監査の品質向上というものを、管理基準の厳格化や精緻化、あるいは個々の会計士の頑張り、職業的使命感などに依存する、頼り切ってしまって達成しようとしても、これは限界があるかと思っています。やはり会計士としての、職業としての魅力というものを高めて、多くの優秀な人材が集まってくる形にしなければ、質・量ともに追いつかなくなるので、その辺への目配りをお願いしたい。
私がこの審議会のメンバーになって十数年になりますが、これまでは不祥事の発生を受けて制度を見直すということが続きました。なぜ不正を見抜けなかったのかという観点、そうした文脈でばかり議論が進められた嫌いがありまして、どうしても北風型の見直しが多かったというふうに思っております。会計士の負担が増えている以上は、それに見合う報酬の在り方、あるいは会計士が誇りを持って仕事をできる環境の整備、いわゆる太陽型の見直しというのも必要だと感じております。その際には、会計分野の方々のみならず、内輪の議論ということだけではなく、監査を受ける企業側、あるいは監査報告の利用者である投資家、その他様々な立場の方々の意見を聞きながら検討する必要があると感じています。この後、私、参加できませんが、会計監査の在り方に関する懇談会の報告があると思いますけれども、そうしたところで包括的な検討が進められると思っています。ありがとうございました。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。大局的な観点から、貴重な御意見を頂戴いたしました。
それでは、林委員、お願いいたします。
【林委員】
関西学院大学の林です。原案は改訂の目的に沿った内容であると考えますので、この原案の採択に賛成いたします。
その上で、今回の改訂のポイントなのですけれども、リスク・アプローチを採用して、より一層、組織の実態に即した、実効的な品質管理の実施を求めると、こういう点にありますので、求められている品質管理の水準が、組織によって、あるいは規模によって異なる、高低があるというものではない、それぞれの組織ごとに高い水準の品質管理が求められるということを念のため確認しておきたいというふうに思います。また、これも改訂案に織り込まれておりますけれども、事務所の規模によって、改訂基準に対応するためになすべきことは異なります。特に規模の小さい事務所は対応に苦慮することが見込まれますので、適用上の課題を洗い出して、将来的により実効性の高い品質管理を目指すために、適用後のモニタリングあるいはレビューをしっかりいただくことが重要と考えています。
私からは以上です。どうもありがとうございました。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。貴重な御意見を頂戴いたしまして感謝いたします。
紙谷委員、お願いいたします。
【紙谷委員】
紙谷でございます。御指名ありがとうございます。今回の公開草案に対するコメントの取りまとめにつきまして、事務局の皆様、大変ありがとうございました。コメント対応としては適切なものになっていると考えております。
今回の品質管理基準の改訂は、監査品質に影響を及ぼす可能性のあるリスクを積極的に識別したところで、監査事務所として主体的に対応していくというリスク・アプローチが採用されております。やはりこれは形式的な対応にならないようにというのが非常に重要だと思っておりますので、この改訂の趣旨を踏まえたところでしっかり対応していくと、そうすれば業界全体として監査品質の向上につながっていくと確信しております。私が所属する監査法人においても、実がある対応になるようにしっかり務めていきたいと思っております。
以上でございます。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。
引き続きまして、引頭委員、御発言いただけますでしょうか。
【引頭委員】
引頭でございます。御指名ありがとうございます。
このたび、16年ぶりですか、品質管理基準が改訂されて、もちろん国際基準の変更とともに改訂されたという面はありますけれども、監査事務所のいわゆる業務管理において、大変よい基準ができたのではないかと思います。先ほど林先生もおっしゃっていましたけれども、各事務所が自身の品質管理の目標というものを、与えられたものではなくて、自分たちが自主的に考えるというアプローチが今度取られたわけですが、これは非常に大きな意味があるのではないかと思います。さらに、上場会社を監査する事務所においては、より高品質なものが求められるはずだというふうに書いてある分野であるとか、あるいは、過去の不祥事で大変問題になっておりました監査事務所間の引継に関しましても、きちんと定義づけされたことなど考えますと、大変進歩があったのではないかと思います。
こうした中で、今後、協会の品質管理レビュー、そして公認会計士・監査審査会によるモニタリングというのがこの基準の開始とともに始まっていくと思うのですけれども、我々が考えたような目標に合致しているかどうか、ぜひそれぞれの仕組みの中で見ていっていただきたいと思いました。
以上でございます。
【堀江部会長】
貴重な御意見ありがとうございました。
小畑委員、お願いいたします。
【小畑委員】
小畑でございます。発言の機会を頂戴しましてありがとうございます。
今回の取りまとめは、修正点も含めて、非常に適切な対応をしていただきまして誠にありがとうございます。この場でも何度も申し上げましたが、この品質管理も監査基準と一体として運用されるということでありまして、監査業務のみならず、品質管理が効率的に実施されるということも極めて重要だと思っております。コメント対応にも書いていただきましたけれども、効率性もよく踏まえて今後御対応いただければと思っております。ありがとうございます。
【堀江部会長】
御意見ありがとうございました。
それでは引き続きまして、住田委員、御発言いただけますでしょうか。
【住田委員】
ありがとうございます。今回の改訂は、監査事務所の品質管理のさらなる向上に非常に役立つものというふうに受け止めており、改訂案をまとめていただいて大変よかったなというふうに思っております。
非常に細かいところで恐縮なのですけれども、コメント13,14のコメントに対する考え方に記載されている内容について、2、3点、確認させていただきたく思います。
今回、監査事務所の品質管理システムに関する責任の明確化に関して、2点ほど改訂が加えられたと思います。1点目は、監査事務所の最高責任者が品質管理システムに関する説明責任を含む最終的な責任を負うということが、品質管理基準レベルで明確化されたという点があると思います。ただ、監査事務所の最高責任者が品質管理システムに関する最終的な責任を負うということ自体は、従来のISQM1にもありましたし、それを基にしている公認会計士協会の実務指針の中でもうたわれておりましたので、実質的に今回新たに加わったのは、この最終的な責任の中に説明責任が含まれているということが明確化されたということだと思います。
2点目は、品質管理システムに関する最高責任者と、品質管理システムのモニタリング及び改善プロセスの運用に関する責任者を新たに明確化することを基準で求めたという点です。従来から品質管理システムの整備及び運用に関する責任者を明確にするということは品質管理基準上で求めてこられたわけですけれども、それに加えて今回は、この2つの責任者を明確化することを求めているということになります。このうち品質管理システムに関する最高責任者という名称は、ISQM1にはない、日本独自の要請といいますか、責任の決め方、明確化ということになろうかと思います。
これに関連して、質問が3つほどあります。まず1つ目の質問なのですけれども、この日本で独自に設けられた品質管理システムに関する最高責任者の持つ責任というのは、従来からある品質管理システムの整備及び運用に関する責任者とどのような点で異なるということを想定しているのかということです。現行の監査事務所で使われている品質管理担当理事というような役職は、現行の基準に基づいて、監査事務所のマネジメントの一員として、品質管理システムの整備及び運用に関する責任者として任命されているのかなと思っていましたので、今回、その上になるのか下になるのか、多分上だと思うのですけど、品質管理システムに関する最高責任者という、責任の明確化を求められた趣旨というのを伺っておきたいと思っております。
それから、2つ目と3つ目の質問は、品質管理システムに関する最高責任者と、品質管理システムの最終的な責任との関係です。コメント13,14のコメントに対する考え方の中で、品質管理システムに関する最高責任者と監査事務所の最高責任者は、同一になる場合もあれば、同一にならない場合もあるということを示されています。同一でない場合を考えてみますと、今回改訂された十一の5の品質管理システムのモニタリング改善プロセスの運用責任者からの報告を受ける者が、品質管理システムに関する最高責任者というふうになっていますので、最終責任を有する監査事務所の最高責任者への報告は、基準上は必ずしも求めていないということになります。それから、十三の品質管理システムの年次評価も、品質管理システムに関する最高責任者が行うということになりましたので、監査事務所の最高責任者の最終的な責任には含まれていないという解釈も可能になっております。
一方、今回の改訂でベースにしたISQM1では、この第十一 5と第十三の品質管理システムに関する最高責任者に当たる部分は、品質管理システムの最終的な責任を有する者となっています。また、ISQM1では、品質管理システムの最終的な責任を有する者は、監査事務所のCEOか、中小事務所の場合を想定して、呼称の問題ですけれども、マネージングパートナーか、あるいは、適切な場合はマネージングボード・オブ・パートナーズとされています。このマネージングボード・オブ・パートナーズという会議体でも、最終責任を有する主体として可能だという考えも示されています。そういう最終責任の所在を明らかにした上で、ISQM1では、この最終的な責任を有する者に説明責任が含まれるということを新たに加え、その重要な部分として日本の基準の第十一 5と第十三に相当する要求事項を設けているという建てつけになっています。
今回改訂された品質管理基準を文字どおりに読んでいきますと、監査事務所の品質管理システムに関する最終責任を有する監査事務所の最高責任者は、この第十一 5と第十三の重要な責任とは切り離されているようにも読めてしまいます。これはISQM1とは違うマネジメントのスタイルを描いているとも見えます。必ずしもそれを意図しているわけではないのかもしれないのですけれども、監査事務所の経営トップが品質管理システムにもっと主体的に取り組むべきという今回の大きな改訂の方向性と、ちょっと齟齬が生じているようにも感じているところです。
ということで、2つ目の質問としては、この品質管理システムに関する最高責任者の持つ責任は、監査事務所の最高責任者の持つ最終的な責任とはどういう関係にあるのかということです。何を想定しているのかということをお伺いしたいと思います。
それから3つ目の質問は、コメント14のコメント者が言及しているISQM1のA34の例外的な扱い、つまり監査事務所のパートナーでない者、ISQM1で想定しているのは、同一のネットワークファームの者を想定しているようなのですけれども、そういう監査事務所のパートナーでない者が日本の監査法人の品質管理システムの最終的な責任を負うということを許容するのかどうかということも、念のためにお伺いしておきたいと思います。
以上です。
【堀江部会長】
ISQM1との関係を踏まえまして、3点御質問いただきました。特に大きなところでは、監査事務所の最高責任者と品質管理システムの責任者との関連、こういう理解でよろしいでしょうか。
それでは、まず事務局のほうから簡単に御説明いただいた上で、私、必要に応じて補足させていただきます。
【西山開示業務室長】
今ありました、「監査事務所の最高責任者は品質管理システムに関する説明責任を含む最終的な責任を負わなければならない」と規定しているところ、それからまた、基準第二 3では、監査事務所は品質管理システムに関する最高責任者を明確にしなければならないと規定しておりまして、この点はISQM1と異なると考えております。ただ、ISQM1は一方で、品質管理システムに関する説明責任を含む最終的な責任者を置くことを要求しておりまして、当該品管システムの最終的な責任を負う者というのは、ISQM1においても、必ずしも監査事務所の最高責任者ではないと理解しております。
翻って我が国の状況ですけれども、大規模監査法人などでは、御指摘もありました品質管理担当理事といった者がおり、監査事務所の最高責任者とは別にこのような理事がいて、実態としては品質管理システムに関する最高責任者として業務をしているという実態があると理解しております、一方で、中小規模の監査法人においては、それら最高責任者と品管の責任者が兼ねられている場合もありまして、いずれの場合も可能とするような基準としております。
2つ目の御質問にありました、品質管理の最終責任者と事務所の最終責任者の責任関係についてですけれども、基準第二 2に記載させていただきました通り、品質管理システムに関する説明責任を含む最終的な責任を負うこととしておりまして、当該の部分におきまして、監査事務所の最高責任者、トップが品質管理システムへコミットするという趣旨が示されていると承知しております。
よろしければ、続きまして、3つ目にありました、事務所外に品質管理責任者が存在することを念頭に置いているのかという御質問につきましては、監査事務所は、業務を公正かつ的確に遂行するために、品質管理をはじめとする業務管理体制を整備することが求められておりまして、これは公認会計士法にもその旨規定されております。監査事務所はこうした体制整備を行うとございますところ、品質管理システムに関する最高責任者たる人物は業務管理体制の中核をなすものと考えられますので、当該者は監査事務所に置かれるものと考えられます。
【堀江部会長】
住田委員、いかがでございましょうか。
【住田委員】
ありがとうございます。3つ目の点は非常にクリアになりました。
2つ目の点なのですけれども、品質管理システムに関する最高責任者の持つ責任と、誰が最終的な責任を持つかということとは別として、その最終的な責任との関係を伺いたかったのですね。ですので、この回答の趣旨からすると、監査事務所の最高責任者が最終的な責任を負うと書いているものの、今回ISQM1で新たに加えられた説明責任の中核をなす年次評価の責任とかは、その最終的な責任とは切り離されているように見えるので、それはどう整理したらいいのかなというのが質問の趣旨でございます。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。今回のこの基準の中で、監査事務所の最高責任者と品質管理システムの責任者を区別し、さらにはモニタリング及び改善プロセスの運用に関する責任者も区別しております。この本来の趣旨というのは、監査品質を維持向上させるために、事務所の最高責任者とは別にこういった職責を求めることによって、事務所として組織的に明確で、確固たる実施・責任体制を整えることに意味があると、こういう趣旨でございまして、もちろん言うまでもなく、事務所によっては、規模ですとか特性によっては、これらが一致するということもあり得るかもしれない。ただ、本来の趣旨というのは、やはりきちんとした管理の体制を事務所の中でつくってもらいたいのだと、とはいえその最終責任はあくまでも事務所の最高責任者が負うのは当然でございまして、例えば品質管理システムに関する責任者を置いたからといって、その部分について監査事務所の最高責任者の責任が免責されるとか、そうそういったような意図ではないと、こういうふうに考えるということでいかがでございましょうか。
【住田委員】
ありがとうございます。事務所の規模とか状況によって、どういうふうに品質管理システム関係の責任や権限のデリゲートを行うかというのは各事務所で考えていただければいいと思うのですけれども、基準上で今回、今までになかったものが、明確化せよというふうに求められましたので、それぞれの責任の関係をよく考えて設計していただくなり、各事務所で文書化していただく必要があるというふうに思いますので、念のために発言させていただきました。
以上です。ありがとうございます。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。
それでは引き続きまして、岡田委員、御発言をお願いできますでしょうか。
【岡田委員】
岡田です。ありがとうございます。今回の品質管理基準の改訂は、品質管理に対する期待の高まり、社会からの期待の高まりを受けた、誠に時宜にかなった改訂だったと思います。内容的にも大変充実しておりまして、事務局の方には御礼を申し上げたいと思います。
それだけの期待に応えるという内容であるからこそ、監査法人による積極的な品質向上の取組を期待したいと思います。そして会計士協会には、やはり矜持を持って、支援と、それから問題が起こったときの原因究明や処罰といった対応に積極的に取り組んでいただきたいと思います。一方、今回、品質の向上に関する透明性の高い報告を行うように求められておりますので、監査法人は、ただ単に説明をしましたという、木で鼻をくくった説明で終わらずに、企業にも透明性を保った報告をした上で、企業と積極的に品質管理の向上に向けたディスカッションをしていただきたい。そして、企業もそれを踏まえて品質管理の水準で監査法人を選んでいくという姿勢が望ましいと思います。これは一朝一夕では実現できないと思いますが、PDCAを回しながら、レベルの高い監査水準となるように、企業も監査法人と切磋琢磨していくというような姿勢を取っていただきたいと思います。
以上、感想ですが、改めて御礼申します。ありがとうございました。
【堀江部会長】
貴重な御意見ありがとうございました。
それでは、あとお三方の委員の方から御質問をいただいておりますので、順次進めさせていただきます。町田委員、御発言をお願いできますでしょうか。
【町田委員】
ありがとうございます。先ほど御説明いただいたコメント対応のところについては、取りまとめいただいた内容で異議はないのですけれども、コメントが寄せられなかったところで、資料3の前文二 1の第2段落のところについて一言申し上げて、もしも可能であれば、部会長の下で御対応いただけないかなということで、申し上げたいと思います。
どういうことかといいますと、今回の品質管理基準の改訂は、国際基準において改訂が行われたこと、そしてその国際基準では、監査事務所の状況に応じて、それに合った形で自主的に、様々な方針や手続をとったりと、あるいは組織体制をとったりして、品質管理を向上させていくことが認められるようになったわけです。スケーラビリティと言われている問題です。
ただ、その一方で、国際基準の審議の過程でもあった議論ですが、PIEと呼ばれる、日本で言えば、例えば上場企業などの監査に関しては、やはり一定水準の監査の品質というものの維持が求められます。また、公認会計士・監査審査会の検査、あるいは、証券取引等監視委員会の検査等々で、問題がある監査事務所の事例が指摘されている状況もあって、やはり上場企業の監査を担当する監査事務所の品質の向上ということは強く求められるのだろうと思うわけです。
そのときに、この「また、」以下の文章がちょっと、明確にその両方の趣旨が伝わっているのかなと。1行目のところはスケーラビリティのことが挙げられていて、監査事務所の状況に応じて品質管理システムを構築してほしいということが書かれていると思うのですけれども、後段のところです。「上場会社等の監査を行う監査事務所については、公共性に鑑み、充実した品質管理システムの整備及び運用が求められる」と書かれていますが、これでは十分に意味が伝わらないのではないかと思うのです。上場会社の監査を行う監査事務所であれば、例えば中小の監査事務所であったとしても、一定水準以上の監査が求められる、一定水準以上の品質管理が求められるはずです。スケーラビリティと品質管理の水準というのは、両者が対立した概念ではなくて、スケーラビリティはそれぞれの監査事務所に応じた方法を採って構わないという方法論の問題であっても、あくまでも維持しなければいけない品質の水準はあるのだということをもう少し明確に書いていただくべきではないかと思っております。
公開草案が公表された後に気づいたのですが、公開草案に対するコメントで、特にここについて疑問とか、あるいはスケーラビリティに関する直接の質問などがなく、修文の機会がなさそうでしたので、本日のコメント対応の議論を外れてしまいますけれども、申し上げたいと思います。
大きく加筆するということではなく、この2つの文章が、対立するような内容を含む文ではあるけれども、でも両方兼ね備えなければいけないのだということ、つまり、スケーラビリティを許容していて、状況に応じた品質管理システムをとったとからといって、上場会社の監査に求められる水準は変わらないのだ、不変なのだということが分かるような形で書いていただきたい、ということを申し上げたいと思います。
以上です。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。この点につきましては、町田先生から私に振られてしまいましたので、私の責任において考えさせていただきますが、どうしても修正が必要であるということであればですけれども、このような形で記述されています2つは同時に達成しなければいけないという意図で書かれていることだけは、先生おっしゃるとおり、間違いございませんので、その点まず委員の方々には御理解いただいて、それで、この記述部分につきましては私に預からせていただくということでよろしゅうございましょうか。具体的に今ここで、こういうふうに直すとかということは申し上げることもできませんし、かえって修文して、これまでの審議の議論と矛盾するようなことになりますと大変なことになりますので、基本的には、まずこの記述の意図を御理解いただき、その上で、どうしてもつながらないということであれば、私の責任において考えさせていただくということで、お許しいただけますでしょうか。
【町田委員】
承知しました。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。先生おっしゃるとおりでございますが、この文章がつくられている意図だけは御理解いただければというふうに思います。
それでは引き続きまして、水口委員、御発言をお願いいたします。
【水口委員】
ありがとうございます。水口です。監査の品質に焦点当てて、積極的に品質管理上のリスクを捉えて、リスクに対処して、品質管理体制を改善するPDCAサイクルを組織内に有効に展開する品質管理に変えていくといった旨を、しっかり織り込んで、充実した品質管理基準の改訂を行っていただいたことを大変感謝しております。
文書化の負荷が大きいというような話も漏れ聞こえてまいりますけれども、当該改訂を受けて、実効性のある形で、うまくPDCAサイクルが回っていくように、個々の監査法人、公認会計士協会も既に様々な施策を取っていただき始めているのではないかと考えておりますし、更なる実効性のある施策が講じられることを期待しております。
幅広い投資家が存在する上場企業に相応する被監査先を有する中小監査法人については、大手監査法人と中小監査法人との間で監査品質の水準の差を許容すべきではないと考えていることは以前から述べてまいりましたが、仮に中小監査事務所が有するリソースが適切な監査品質を担保するに十分でない場合には、様々な創意工夫が必要である場合もあるのではないかと考えております。当該基準の改訂も踏まえて、自前のリソースに限界がある中小監査法人、監査事務所が、外部リソースの活用や、規模とか監査品質などの観点から、事務所間の連携の余地など、様々な選択肢を模索することも想定されるかと思います。中小監査事務所が監査品質に関する課題などに取り組む際に、監査事務所が方向感を持って、着実に準備を進めやすくなるように、公認会計士協会は既に様々な形で、監査事務所と併走する等、サポートする施策を御検討いただいているのではないかと思っておりますので、大変期待しております。
また、後段の会計監査の在り方に関する懇談会で、多面的な視点から議論が進んでいると認識しております。当監査部会で様々な、品質管理基準の改訂の枠の留まらない、非常に有用な御意見を様々な委員からお伝えいただいていることも踏まえて、後ほどまた、在り方懇の枠組みの中でもコメントもさせていただきたいと思っております。
以上です。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。それでは、手塚委員、お願いいたします。
【手塚委員】
手塚です。どうもありがとうございます。
今回、取りまとめていただきましてありがとうございます。私としては追加の意見はありませんので、今日の審議の結果、取りまとまれば、実務指針の作成等、急いで進めてまいりたいと思います。また、御期待の言葉もいただきました。中小監査法人中心に、しっかりと経営基盤が強化されるように支援をしていきたいと思います。それに加えて、品質管理レビューの在り方も、この基準が改訂されることによって変わっていくのではないかと思いますので、そうした自主規制の取組についてもしっかりとやっていきたいと思います。ありがとうございました。
以上です。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。
それでは、最後となりますが、松本委員、御発言をお願いいたします。
【松本委員】
堀江先生、ありがとうございます。関西大学の松本です。今、手塚先生からもコメントがございましたように、このISQM1ベースの品質管理基準の改訂に伴いまして、品質目標の設定とその達成可能性に関するリスク評価と対応、それに対する是正措置というのが非常に重要になってくるというように御理解いただいていると思います。したがいまして、従来の、品質管理の方針と手続を外形的にチェックするという品質管理レビューではなくて、品質目標の設定、すなわち有効かつ適切な目標設定とリスク評価かつ改善措置というのがなされているかどうかについて、第三者の目で実質的な会計士協会の品質管理レビューと、それから審査会の検査という形での重層的なモニタリングが非常に重要になってくると思います。ぜひ、協会でも審査会でも、人員の増加を含めて事後的なモニタリングの拡充を御検討いただけるようお願いしたいと思います。
以上です。
【堀江部会長】
貴重な御意見ありがとうございました。
ここまで様々御意見をいただき、誠にありがとうございました。
今回の品質管理基準改訂案でございますけれども、合意が得られたというふうに考えております。町田先生から1点、宿題的なことをいただきましたけれども、これまでの審議で十分に練られてきたところであり、この段階で文章を修正して意図が変わってしまうようなことがありますと、とんでもないことになりますので、再度私のほうで精査はさせていただきますけれども、基本的には、具体的な代案が出ない限りにおきましては、原案通りとさせていただきたいと考えております。
それでは、私といたしましては、企業会計審議会の総会に報告してお諮りをさせていただきたいと存じますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
【堀江部会長】
御了解いただきましたので、当部会の意見書案として、審議会の総会にお諮りをさせていただきたいと存じます。なお、意見書案につきましては、後日、事務局から皆様方に送付させていただきます。誠にありがとうございました。先生方の御尽力をもちまして、いいものができたというふうに考えております。
それでは、引き続きまして、次の議事に移りたいと思います。
最近の会計監査の信頼性確保のための取組に関しまして、本年9月に金融庁に設置されました会計監査の在り方に関する懇談会の議論の内容等について、事務局から説明をお願いいたします。
【西山開示業務室長】
資料の5を御覧ください。会計監査の在り方に関する懇談会について説明させていただきます。
これまで当該懇談会を、9月15日、10月11日と、2回開催してまいりました。会計監査の在り方に関する懇談会は、かつて2015年から2016年にも開催しておりましたが、令和3年度の在り方懇の開催の背景を御説明しますと、まず監査法人につきましては、資本市場のゲートキーパーとして、外部監査の質を一層高めていくことが求められています。その監査法人ですが、会計監査を取り巻く環境を見ますと、社会経済情勢の変化に伴いまして、監査品質に対する社会からの期待の高まりや、会計士が担う役割の広がり、働き方の多様化などの変化が生じておりますので、これを受けて、会計監査をめぐる諸課題について総合的に検討すべく、会計監査の在り方に関する懇談会を開催することとなりました。
主な議論としては、スライドの2ページ目を用いながら御説明させていただきます。広範かつ様々な意見があったところを、左列に大きく、幾つかの柱にまとめております。
まず左上の、監査人の体制などの柱についてでございます。監査の担い手として、大手監査法人のみならず、準大手監査法人や中小監査事務所が果たす役割が大きくなっている中で、特に上場企業監査の担い手や、監査全体の品質を向上させていくこと、同時に、担い手の裾野を広げる支援などの重要性というお話がありました。上場企業におきましては、一般投資家を含めて多数のステークホルダーを有しておりまして、財務報告の信頼性確保はより重要といったお話がありました。事業会社が大規模化・複雑化しているような上場企業の監査のために、それに対応できる監査法人についてもそれなりの規模が要るかといった話や、上場企業の監査について、ほかの監査とは異なる規律付けが必要といったお話もありました。日本公認会計士協会が自主規制として、上場企業監査事務所登録制度を運用していること、それらを踏まえて、上場企業監査の信頼性向上のために実効性のある方策を講じるにはどうしたらいいかといった御議論がありました。
また、マネジメント、ガバナンスにも関係しておりますが、国内外における近年の監査基準の改訂や、先ほど御議論いただきました我が国の品質管理基準の改訂、国際的にはISQM1の改訂などを受けまして、監査法人においては、こうした変化の対応のための整備も求められています。
この監査法人の体制などの部分は、ガバナンスの在り方、具体的には監査法人のガバナンス・コードの受け入れの促進でございますとか、監査法人の体制整備の状況について、KPIなどの情報提供の充実といった議論がございました。また、これに付随しまして、規律の話だけではなくて、中小監査事務所などに対する支援の充実が大切だというお話がありました。中小事務所に対しては、テクノロジーや人材、ノウハウ面での支援を講ずるといった、監査の担い手の裾野を広げるための方策の一層の充実を検討する必要があるといった御意見もございました。あわせて、第三者の目によるチェックにつきましては、公認会計士協会の品質管理レビューや公認会計士・監査審査会による検査の役割も重要であるといったお話がありました。
続きまして、スライドの中段にございます公認会計士の能力向上・能力発揮について御説明いたします。こちらの論点の背景としましては、まず、監査事務所、監査法人等においてではなく、企業に勤める公認会計士、いわゆる組織内会計士の増加に見られますように、公認会計士の活躍の場の多様化、あるいは女性公認会計士の増加といったダイバーシティの進展が生じていることが挙げられます。女性活躍の観点では、例えば被監査会社に配偶者がいる場合の監査の独立性に関する規定を、実態に合わせて見直したらどうかという御提案、それから組織内会計士につきましては、組織内会計士が増えていることを踏まえて、それに合わせた指導・支援を広げるための方策の検討、研修プログラムの充実といった御意見もありました。
また、公認会計士の能力の向上に関しては、監査基準の高度化や、AIをはじめとする技術革新にキャッチアップできることも求められます。そこでまず、継続的専門研修、CPEと言われる制度がございますが、CPEや実務補習、業務補助などの充実を検討することや、一方でCPEの受講義務を適切に果たさない者に対する対応の検討などのお話もございました。
さらに、多様な経験の部分でございますが、企業の不正を見抜く力というのが、やはり監査人にとって特に必要な能力であるといったお話から始まりまして、公認会計士には、企業のビジネスモデルとその裏側にあるリスクを理解して経営者と意見を交わせるような能力、経験を培うことの重要性が挙げられました。多様な経験の確保についても、公認会計士登録の前に行うことが求められている業務補助や実務従事の充実や、それに加えて企業への人材交流、監査法人内で様々な企業を担当して、現場感覚、監査経験を積む機会を持つなどのお話もありました。
また、公認会計士試験制度につきましては、右欄の中長期的な論点という列にございます。こちらは、公認会計士の役割の広がりや、求められる資質も踏まえて、中長期的な目線で検討してはどうかといったお話がございました。
スライド下段の監査実施の環境につきましては、会計監査のためには、監査法人だけではなくて、企業側の取組も両輪となって重要なものだとの観点からいただいた意見をまとめております。
まず企業においては、これまでコーポレートガバナンス・コードの改訂を受けた取組などが進展していますが、特に内部監査部門、監査役と監査人の連携について御意見がありました。また、内部統制報告制度もございます。こちらは2008年に導入されて以来13年が経つところですけれども、内部統制の運用状況を把握しつつ、実効性向上に向けて取り組めないかといった議論がございました。
資料の3ページ目以降、こちらは御参考でございます。在り方懇は、先ほど申し上げましたが、2015年から2016年にかけても行われていまして、会計監査の信頼性確保に向けて講じる取組として5つの柱の提言をまとめまして、それを受けて、監査法人のガバナンス・コードの策定や監査報告書の透明化、KAMの導入などの諸政策につながってきたところでございます。
令和版の会計監査の在り方に関する懇談会では、引き続き、会計監査の課題を議論いただき、意見を集約していければと考えています。
この在り方懇談会の議論の内容に関しまして、監査部会の委員の皆様からの御意見などございましたら、御発言いただければ大変ありがたく存じます。
以上でございます。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明に関します御質問、御意見等を頂戴したいと思います。それでは、弥永委員、御発言をお願いいたします。
【弥永委員】
ありがとうございます。1つ御質問させていただきたいのですけど、この「主な議論」のところで、監査の担い手の裾野を広げるための支援が重要であり、かつ、上場会社の監査の担い手全体の監査品質を向上させる必要があるという、結構大きな課題があるわけです。けれども、このための支援として、どのような支援がこの懇談会で想定されているのでしょうか。日本公認会計士協会が一定の役割を果たすのだろうとは思われますけれども、それだけでは、なかなかこの裾野は広がらないのではないか、やはり監査品質を確保するためには、ある程度の人的資源が必要なのではないかと思うのです。中小監査事務所がもう少し大きくなっていくような監査法人の合併をやりやすくするという方向性とか、あるいは、中小監査事務所自体が他の監査事務所と一緒に監査をするということが、今まで以上にやりやすくなると言うと多少語弊があるのですけど、そのような制度整備とか、こういったことも念頭に置いてこの懇談会では御議論がされているのか、その辺りについてもう少し詳しく伺えればと思うのですが、よろしくお願いいたします。
【堀江部会長】
それでは、事務局のほうから回答をお願いいたします。
【西山開示業務室長】
御質問にありました、特に中小監査法人の人的資源の充実なども踏まえて、どのような施策が考えられるかというところでございますが、御指摘のように、日本公認会計士協会で人材やテクノロジー支援等にも連携して当たっているところでございます。現時点では幅広く議論をしておりまして、どのような余施策があるかというのは検討しているところでございます。例えば、品質管理システムの導入などにつきましても、監査法人が十分準備ができるようにといった対応もしていければと思っております。
【堀江部会長】
弥永先生、今の説明でいかがでございましょうか。
【古澤企画市場局長】
若干補足させていただければ。
【堀江部会長】
古澤企画市場局長、お願いいたします。
【古澤企画市場局長】
先生ありがとうございます。若干補足です。先ほど来でております「在り方懇」の議論では、今回の新しい監査品質の基準も踏まえて中小監査法人に対してどういう支援が必要かが課題とされていると考えております。今西山室長から申し上げましたとおり、基本的にはJICPAのサポートの在り方が議論の中心でやはり人材が品質管理の肝ですので、そこに対してどういうサポートが必要か、それからIT面でのサポートとしてどういうことが考えられるかといったようなことが課題となっております。
先生からお話のあった、例えば合併支援とか共同監査といった課題は、今のところ在り方懇では議論になってございません。他方、在り方懇で出ている関連する論点としては、監査事務所の規模が大きくなるということが本当に品質管理にプラスになるのかどうかという点があります。その点については、在り方懇の中では両論、やはり品質をコアにしながら規模拡大が図られることが重要、他方、品質向上につながるかはなかなか難しい大きな課題だというような議論もしていただいております。そういった点も含め、また制度的なことが必要であれば、さらに議論を深めてまいりたいと考えております。
以上です。
【弥永委員】
ありがとうございました。
【堀江部会長】
それでは引き続きまして、水口委員、御発言をお願いいたします。
【水口委員】
どうもありがとうございます。水口です。どうも御説明ありがとうございました。今表示されているページの中で、大きな黒枠で囲ってあるものではないところではありますけれども、情報提供についての意見です。
上場企業の監査をする中小監査事務所の監査の質も注目される中で、規律付けの観点、中小監査法人が資本市場関係者の目からどのように自分たちが見られ得るかに関して意識する機会という観点から、上場企業相当の企業を監査する中小監査法人によるトップの姿勢、ガバナンス、品質管理体制、財務資源、人的資源の在り方、ITに関わる資源、体制などに関する情報開示をしていただくことは有用だと思っております。
こうした開示を想定する際に、監査事務所の自己評価の適切性の観点からも、監査事務所が自ら認識する課題以外に、仮に協会レビュー及び審査会検査などの第三者評価によって追加的に課題が指摘される場合があったら、どんな指摘があったと個別具体的に開示してくださいという意味ではないのですけれども、こうした第三者による指摘も踏まえた形で、PDCAサイクルの中に入れ込んだ形で、諸課題、課題に対する改善策、改善策の実施による改善状況が読み取れる形でうまくPDCAサイクルが回っているということに関する概略を開示していただくことを期待しています。こうしたアプローチを踏まえた上で、時系列で見て変化が見えるという形で、開示内容がボイラープレート化しないような開示を期待しております。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。
それでは引き続きまして、松元委員、御発言をお願いいたします。
【松元委員】
御発言の機会をいただきありがとうございます。学習院の松元でございます。3点あるのですが、できるだけ手短に申し上げたいと思います。
1点目ですが、今後、上場会社の監査については、大手・準大手以外の会計事務所にも、監査の担い手になることが求められている状況だというふうに認識しております。この点に関連して、現在行われている上場会社監査を行う会計事務所の登録制度について、若干コメントしたいと思います。
現在は上場会社を監査する事務所の登録制度は公認会計士協会が行っていらっしゃると思うのですが、私が誤解していなければ、名簿に登録する際に、積極的要件というのは一切課されていないのではないかと認識をしています。というのは、品質管理レビュー等で何か問題があるということになれば登録できないとか、あるいは抹消されるとかいうことはあると思うのですが、それ以外に、規模の要件といった積極的な要件というのはほとんど課されていないのではないかと理解しております。そうだとすると、今後、登録制度をどう変えていくかということを考えるときに、例えば担い手を会計士協会のままにするのか、あるいは国に移すのかといった議論もあると思うのですが、より重要なのは、最低限の基準というのを定める必要がないのかということだと考えています。
例えば、監査法人のガバナンス・コードもできましたけれども、あれも、主に念頭に置かれている対象というのは大手あるいは準大手ということで、中小の監査法人は、そもそもこのガバナンス・コードを採用することはあまり想定されていないわけです。そうすると、大手・準大手はガバナンス・コードを頑張って採用して、どんどん質を高めていくのだけれども、中小に対しては、そもそもガバナンス・コードを遵守してくださいということはあまり想定されていないと。
それで、前半の議論の中で、水口委員もおっしゃっていたことかと思うのですが、やはり上場会社の監査をする以上は、最低限の品質というものは確保していくことが一番大事だと思っています。なので、例えば上場会社監査の登録をする際に、最低限の基準ないし要件を定めること、例えば、中小であっても、上場会社監査をする以上はガバナンス・コードを採用することを要求するであるとか、あるいは、小さいところが悪いという意味では決してないですが、やはり上場会社の監査をする以上は、ある程度の人的資本、リソースは必ず必要であって、仮にパートナーの会計士が1人しかいないという事務所で上場会社の監査を担当しますと、その方が急病になったらもう終わりじゃないかというような感じもいたしますので、最低限の人数の要件を要求するということも、検討したほうがいいのではないかと思っています。ということで、上場会社監査をする監査法人の積極的な基準要件を御検討いただけないかというのがまず1つ目でございます。
2つ目ですが、これは以前からこの委員会でも出ていたと思いますけれども、各監査法人の監査の質が、投資家から見て分かりやすく見えるようにしていただきたいということです。これはちょっと大きな意見なので、あまり精緻な議論ではなくて申し訳ないのですが、投資家が見て、この会社はこの監査法人に依頼しているなら安心だなというふうに見えるというのが最終的には重要だと思いますので、もう少し分かりやすい形で開示の制度を整えていただくということを長期的には御検討いただきたいということです。
それから3点目、事務局からの御説明にもありましたが、パートナー会計士の配偶者が監査対象の会社の一定の役職員である場合に、その会計事務所は監査ができないという問題、これは積極的に、早く解決していただきたいなと思っています。もちろん、その会計士自身が監査担当者になることはあってはならないということは前提です。問題は、この場合に会計事務所自体がその会社を監査できなくなるという点です。
伺うところによると、今、監査法人のパートナー会計監査人というのは、大きいところだと五、六百人いるというふうに伺いまして、そうなってくると、その五、六百人の中に、配偶者が監査対象の会社の役員レベルあるいは部長レベルである方はいるはずです。
現状では、男性が上場会社にいて女性が会計事務所にいるというパターンが多いのかと思います。今のルールのままだと、例えば、ある女性の会計士をパートナーに引き上げようとなったときに、いや、でもこの会計士をパートナーにすると、今監査を行っている会社の監査を事務所として引き受けられなくなるというような問題が発生するのではないかということがかなり現実的に考えられます。ここは諸外国と同じレベルまで早急に直していただいて、問題なく女性会計士が活躍できるようにしていただければというふうに思います。
【堀江部会長】
大変貴重な意見をありがとうございました。
実はあと8名の委員の先生方から手が挙がっております。本来であれば、貴重な御意見をいただいておりますので、それに対してこちらから、逐一、コメントをお返ししないしないといけないんですけれども、時間の関係から逐次進めさせていただきたいと思います。お許しいただければ幸いです。
引き続きまして、青山委員、御発言をお願いいたします。
【青山委員】
ありがとうございます。NECの青山朝子です。私はいわゆる企業内会計士でして、93年に会計士の資格を取って以来、監査法人にいて、今は長らく企業のほうにおりますので、企業内会計士としての立場から、それからもう一つ、女性会計士としての立場、加えて、被監査会社から見たこの会計監査の在り方という3つの視点からコメントさせていただければと思います。
先ほど、監査の質を上げていくためには人的資源の確保が重要と、まさにおっしゃるとおりだなと思っているのですけれども、一方で、私の同期は、今まだ大手の監査法人にもおりますし、何人かは中小の監査法人に移っています。そして、私のように企業内会計士となって活躍している者もいるのですが、一様に口をそろえて言っているのは、監査法人は忙しいということです。最近は特に忙しくなるという話をしていて、ここについては、監査法人だけではなくて、受け手側の被監査会社も、監査手続が増えるたび、やはり我々も負担は増えるということがあるのですけれども、とはいえ、やはりどんどん忙しくなってきますと、目の前の仕事をこなすのに精いっぱいで、何かリスクを見るための余裕がどんどんなくなってきているなというのを非常に受け手としても感じます。私自身、社内で社内監査をするときに心がけているのは、リスクを見るというときに、きちんとその会社のビジネスを見る、人を見るというところが重要なのが、忙しくなって、いろいろな基準が厳しくなるあまり、そういった大事な部分を見失ってはいけないんじゃないかなというふうに思っています。
そういう中で、今もし自分が監査法人に戻れば随分いい監査ができるんじゃないかと勝手に思ってはいるのですけれども、ただ、じゃあ明日監査法人に戻りたいかというと、残念ながら、本当のことを言うと監査法人に戻りたい気持ちはないというのがあるんですね。この監査法人が大手・中小どちらとも関わらず、人的資源を確保する場として考えたときに、優秀な人材をアトラクトできなくなってくるというのは非常に問題ではないかなと思っていますし、また、少し女性の会計士の問題にもなりますけれども、ずっと自分は監査法人にいていいのだろうかという悩み相談をよく受けます。女性・男性に関わらず、優秀な人材を常に持っておける存在でないと、やはり質の高い会計監査ができなくなり、ひいては、上場会社の監査等でリスクを見誤るという大きな問題が生じると思いますので、こちらの会計監査の在り方は非常に重要だなと思っています。
そんな中、手続というのはどんどん増えていくとは思うのですけれども、ここをさらにテクノロジーを活用することによって、何とかいろいろなことを自動化していけないかと思います。AIを活用した監査はいろいろチャレンジされているとは思いますけれども、そういったことも後押しをしていくことで、監査の質を下げることなく、一方で、手続ばかり増えて、監査法人の担い手も、それから被監査会社の受け手側も疲弊していくことがないような在り方をぜひ御議論いただけることを望んでおります。
以上です。
【堀江部会長】
様々貴重な御意見をありがとうございました。
それでは引き続きまして、大野委員、御発言をお願いいたします。
【大野委員】
大野でございます。私は監査役協会専務理事として参加させていただいております。
私も、今青山委員がおっしゃったことと全く同じことを実は発言しようと思っておりました。資料の中で、監査法人と、監査役等あるいは内部監査部門との連携の機会が増えてきたとあり、まさにそういう環境変化を私は見てまいりました。もちろん監査役等と監査法人の方のコミュニケーション、ミーティングの機会が増えるということもありますが、永年実態を見てきた経験から申しますと、大きな会社であれば、被監査会社、つまりクライアントの企業の中に監査法人の事務所を構えていただいています。会計士の皆さんは非常にお忙しく働かれていて、特に四半期決算が始まって以降は、とにかく年がら年中監査をやっているに近いような状況も生まれてきていて、若手の会計士の先生が、夜遅くまでクライアントの会社の中に残っておられる姿もたくさん見てきました。ですので、今後、特に監査品質の向上、あるいは信頼性を確保する上では公認会計士の先生方の労働環境、言い換えれば能力を発揮できる環境も大事な局面と思いますので、そこを踏まえながらやっていかなければ、結局は監査の信頼性の確保ということにつながらないのではないかと思います。様々なマスコミの記事などを見ていても、監査法人の現場では離職率もそれなりに高いというお話も聞いており、それはもしかしたら、そういう労働環境の影響があるのかもしれません。こうした点を含めて全体を見ながら、会計監査の在り方というのを考えていく必要があるのではないかと思います。
それから、もちろん試験制度の在り方ということについても重要な論点だと思います。
以上、コメントさせていただきました。ありがとうございました。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。
それでは引き続きまして、今給黎委員、御発言をお願いいたします。
【今給黎委員】
日立製作所の今給黎でございます。御説明ありがとうございます。懇談会でも非常に幅広く議論されていると伺っておりますけれども、企業実務も、監査実務も対応しなければならない共通の課題というのは非常に多いと改めて認識いたしました。2点コメントさせていただきます。
1点目は、企業実務から監査に至るプロセス全体の効率化の観点でございまして、将来の国内の深刻なリソース不足、あるいは監査スコープの拡大という流れの中で、品質の担保と効率化のためには、先ほど御発言がございましたけれども、デジタル・トランスフォーメーション、これは企業も監査人も取り組んでいくべきテーマと認識しております。最近では、AIを含めて様々なツールやシナリオが監査の現場でも段階的に導入されていて、企業の内部統制プロセス、あるいはディフェンスラインへの組込みといったようなことも試行が続いておりますけれども、やはりそれらの前提として、デジタルデータの整備というのは不可欠であると思います。
この辺り、欧米は非常に進んでいて、最近の海外の監査基準の議論を拝見しても、企業のデータのインフラが完全に整備されていることが前提になっているのではないかと思われるようなこともございます。また、国内でも、新しい企業では、大半のトランザクションがデジタル化されていて、会計監査も効率的に行われているというモデルケースもあるというふうに伺っております。こうしたデジタル環境整備は、企業の内部監査や監査役監査との効率的な連携も可能にすると考えますので、ぜひ会計監査の面からも、先端事例を広くお示しいただいて、目指すべき方向性を明らかにしていただきながら議論していくことも有意義かと思いますので、御検討いただければと思います。
2点目は、能力向上といいますか、人材育成と言い換えてもよいかもしれませんけれども、その観点でございます。会計士が多様なフィールドで御活躍されているというお話もございましたけれども、会計監査の能力向上の源泉というのは、やはりまずは監査の現場の経験の積み重ねにあるのではないかと思っております。若い方々がやりがい、熱意を持って監査に取り組める環境づくりとして、マインド面でも、最近の言葉で言うとパーパスの再認識でありますとか、そういったことも必要かしれませんけれども、やはり監査人として、企業の実務者や経営陣との監査プロセスでの激しい議論を通じて、異常値検知の感度・センス・直感も磨かれて、切磋琢磨しながら高いモチベーションを維持するということにつながっていくのではないかなというふうに思います。
経営上のリスクの識別は、これは企業経営も監査も同じでございますので、企業としても、監査人あるいは監査法人が有しておられる、企業にはないリスク分析やアプローチの手法に期待もございます。先般、KAMも導入されて、より踏み込んだディスカッションの機会も日常的になりまして、こうした場が増えていくということは、企業と監査法人相互の人材育成あるいは経営面でも有用で、シナジーが生まれてくるというふうに思います。今後いろいろ議論はあるかと思いますけれども、監査人が形式的なチェックや監査法人内の手続で忙殺されて疲弊して、監査の現場でのコミュニケーションの機会が失われることのないよう、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。ありがとうございます。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。
引き続きまして、白川委員、御発言をお願いできますでしょうか。
【白川委員】
白川です。よろしくお願いいたします。私は弁護士をしておりまして、会計監査に関して、必ずしも全体的な知見を持っているというわけではないのですけれども、同じプロフェッショナルとして、公認会計士と弁護士というのは、大体においてパラレルに語られることが多いので、もしかしたらというふうに思いまして、そういった観点でコメントさせていただけたらと思います。
私たちももちろんそうなのですけれども、全てこういった規制であるとかをつくるときに必要なのは、先ほど今給黎委員もおっしゃっていましたパーパスといいますか、魂というか、それが本当に非常に大事なのかなというふうに思っております。今回も品質管理基準が大変充実したものが出来上がっていっているわけですけれども、そしてまた、その中でのマネジメントの果たす役割というのが非常に強調されているところではありますけれども、マネジメントの役割は大事である一方で、個々のプロフェッショナルに落ちている場面というのはすごく大きいと思いますので、現場で働いておられる会計士さんの能力の向上・発揮というのが非常に大事なのではないのかなというふうに、私、現場世代をまた全然卒業していない、まさに現場真っただ中の弁護士として思う次第でございます。
その中で、ちょっと気になるといいますか、もちろん会計士さんのリスク識別能力というのは、会計監査の現場において当然発達されていくものだと思うのですけれども、他方で考えられるのが、それは本当に弁護士としての反省も踏まえてなんですけれども、ムラの意識に寄ってしまっていないだろうかということについての、そこは多少気にするポイントかなというふうにも思います。
それで、今見させていただいている資料の中にも書いてあるとおり、多様な経験というところが非常に大事なんじゃないかと。私たちもクライアント企業への出向を通じて、それでお客様の目線を見るということだけじゃなくて、同業他社の仕事ぶりを見るというのは非常に参考になって、あ、こういうことなのだと、こういうことは困ることなのだとか、そういうことが分かるというのもあります。
あと、もう一つまた別の観点ではありますけれども、弁護士に対してですと、この弁護士は嫌だなと思ったら簡単にセカンドオピニオンを取れるのですけれども、会計士さんというのは、簡単にセカンドオピニオンを取りに行けない。私たちが弁護士としてお聞きするクライアントからの御相談の中には、まあまあ、会計士さんがこういう意見なのに、言ったまま固執してしまって全然離れてくれない、どういうふうにしたら会計士さんを説得できるでしょうかみたいな、そんな話が割とあるのです。こちらも会計のことについてそんなに詳しくないこともあり、こんなこともあんなこともとかと、一応言ってみるのですけれども、そういった、やはりどちらかというと、監査する立場、監査される立場というのはもう本当に固定化されていて、いくらローテーションがあったとしても、それは本当に10年に1回とかしか変わらないという、そこの固定化された関係というのを監査法人の方々、公認会計士の先生方にはできれば御認識をいただいて、マネジメントレターみたいな形でもらうとかもらわないとかというんじゃなくて、もっと積極的に監査対象企業の方の現場の声をすくい上げるというような、そういった手段があればいいのかなというふうに思った次第でございます。
すみません、以上でございます。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。異なった視点から、大変有意義な御意見を頂戴いたしました。
引き続きまして、紙谷委員、御発言いただけますでしょうか。
【紙谷委員】
紙谷でございます。御指名ありがとうございます。こちらのスライドの能力向上・能力発揮に関連したところで2点コメントさせていただきたいと思います。
1点目は配偶者に係る独立性規定の件です。こちらは先ほど松元委員から詳細に御説明いただきましたので、繰り返しは申し上げません。ただ私の身の回りでも、配偶者が出世するかどうかどきどきしているような人を実際見ておりますので、ぜひこの点はさらなる検討を進めていただきたいと思います。
2点目はデジタルリテラシーの向上に関するところでございます。私が会計士になったのは30年ぐらい前で、当時、段ボールに入った伝票の中から紙の伝票を引っ張り出してきて、それを見るというような仕事だったのですけれども、今はそれが全てデータになっているという環境になっているかと思います。そういった意味では、今の監査というのはいかにデジタルデータに対してアプローチしていくかというのが非常に重要になってきていると思います。
こうした状況において、監査法人としても、デジタルリテラシーの向上に向けた研修を監査法人なりには努力しているところなのですが、もうちょっと大きな視点で見た場合に、例えば試験制度に組み込まれるべきかとか、補修所でどのように教育をすべきか、CPEでどう取り扱うべきかといった大きな観点での検討が必要であり、監査法人としても努力するんですけど、全体としてデジタルに対する取組が強化されるべきではないかなと思っております。試験制度のほうはなかなか短期的には難しいと思っておりますので、短期的には補修所やCPE、この辺りの中でどう取り組んでいくか、その辺りの議論を深めていただけたらなと思っております。
私からは以上でございます。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。
それでは引き続きまして、髙田委員、御発言をお願いいたします。
【髙田委員】
ありがとうございます。神戸大学の髙田です。まずは、このような具体的な提言があることの重要性は、前回に引き続いて高く、よりよい制度設計のための真摯な取組は継続する必要があると思いますという私の感想から述べさせていただきます。ほかの委員の御発言と一部重複するところもあるかと思いますが、今から2点についてコメントさせていただきたいと思います。
スライド5枚目の、会計監査の在り方に関する懇談会での提言について、1点コメントさせていただきます。いずれのトピックスについても、現在、具体的には何が問題になっているのかという実態の解明を丁寧に実施する必要があるのではないかということをまず感じます。これらは、限られた事例のみをピックアップした事例分析であるとか、他国の制度との対比によって日本の現状を把握するといった類いのものだけではなく、実証的な研究や、学術的かつ学際的な視点も踏まえた多面的な現状分析を検討していただければと考えています。
実際に検討のインプットとして活用できるような国内外の研究や報告書は、既に複数存在すると思います。具体的に言いますと、例えば1つ目については、監査法人のガバナンス・コードの公表からもう既に数年が経過していますし、3つ目については、不正リスク対応基準の公表からは、かなりの年月が経過しています。それらの公表内容について実務における定着度合いや効果を丁寧に識別しなければ、改善策や今後の展開は見えてきません。
日本における監査制度の設計では、これまで、制度の事後評価ということについて、時間と資源を割いた活動はそれほど積極的には行われてこなかったのではないかと個人的には感じています。制度設計における事前的な議論の重要性もさることながら、一度導入した制度についてもその適否を検証し、改善に役立てることの重要性も決して低くないと考えます。つきましては、結果的に時間が多少かかったとしても、本提言を基に、現在議論されている問題の論点はどこにあるのかという原因の究明と同時に、コードといったものを含む幅広い現存の法令の評価を日本として実施していくことが今後求められていくのではないかと考えます。
2つ目、こちらのほうは、特にほかの委員の方々との重複も大きいのですけれども、規制や締め付けが一方的に強化されていくような印象だけを一般に与えるような提言といったものは、公認会計士という資格はもとより、財務諸表監査や、それに等しい業務に対する魅力が低下し、人材育成に対して負の影響をもたらす可能性が高いということも申し上げておきたいと思います。
会計教育分野の学際的な、国際的な学術研究を見ておりますと、国際的な市場においても、公認会計士という資格を魅力的なものとし、監査業務に関与する優秀な人材の育成に苦慮している様子がうかがえます。これはつまり、日本だけに限定した問題ではありません。公共性の高い業務ですので、魅力を高めるといっても、安易な対応はできませんが、1枚目のスライドにもありますように、公認会計士の働き方の多様化を踏まえ、能力を十全に発揮できる環境を整えることが必要との問題意識を持ちながら、試験制度や実務補習に限定しない議論が行われていくことを期待しております。
以上がコメントになります。ありがとうございました。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。
引き続きまして、引頭委員、御発言をお願いいたします。
【引頭委員】
御指名ありがとうございます。引頭でございます。私は、能力向上・能力発揮のところについて1点と、それから監査人の体制等について2点、合わせて3点コメントさせていただきます。
最初に能力向上等の話なのですけれども、継続的専門研修、いわゆるCPEについて、何人かの委員の方々も既におっしゃっていましたけれども、私もこれはもう少し内容について見直すべき時期に来たのかもしれないというふうに思っております。もちろん、エシックスとかそうしたものも内容に加えられているとは聞いておりますが、多くは、いろいろな監査手続の基準の改訂とか、そうしたノウハウというのですか、やり方ということに終始しているように感じます。
これもちょっと釈迦に説法の話なのですけれども、今、公認会計士のいわゆる試験に受かった人というのは毎年出てきていて、会計士という名のプールは増えているのですけれども、実際監査に当たっている方々というのは、この数年、どうも1万5,000人ぐらいで推移しているようです。業界として魅力ということについて考えていかなければならない時期に来ているわけです。そうは言っても、では魅力とはとは何かと考えると、1つはやはりプライドを持ってできるとか、やっていて楽しいとか、そういうことでしょうし、もう一つは報酬ということになるかもしれません。
それで、少し後者について申し上げますと、先ほど今給黎さんからデジタル・トランスフォーメーションというお話があり、また紙谷さんもITについて言及されていましたが、IT化を進めれば効率が上がります。ですが、現状の監査報酬の体系をみますと、単価×時間が基本的な考え方となっています。つまり、ITで効率化が進み監査時間が減少すれば、監査報酬が減る可能性も否定できないわけです。それを打破するための一つの手段として、CXOを始めとして、様々な企業の方々とのエンゲージメントを手厚く行い、高品質な監査に結びつくような活動、ソフトパワーというのですか、そうしたものが多分求められていくと思うのです。
ですがそうしたことがCPEにあるかというと、あまりないような気がします。例えばですが、これまでずっと議論してきた高品質な監査というのは一体どういうものなのかというのを徹底的にディスカッションしたり、あるいはエンゲージメントにおけるベストプラクティスをもっとみんなで実際勉強したりするなど、ソフトスキルについて、あるいは根本的な考え方について。何かプログラム等を御検討いただくことが必要かもしれないと思った次第です。業界に内在する様々な問題も考えながら、教育内容についてさらなる改革を行うべきではないかというのが1点目です。
2点目ですが、ITに関してです。先ほど、中小監査法人に関してですが、ITの導入について少し難しいという話等がございました。ですが、余力のある一部の大手監査法人のみがIT化を進めればよいということではないと思っております。業界全体で高品質な監査を目指さすことが重要で、それには中小も含めてIT化を進めなければならないということだと思います。繰り返しになりますが、中小監査法人には、投資するための資金余力が乏しいことや、自分で開発したりするのが難しいという現実を考えますとやはり公認会計士協会が扇の要となって、中小への支援を大手監査法人と連携しながら着実に進めていく必要があり、そうでないと、全体としてのレベルアップは図れないのではないかと思いましたというのが2点目です。
3点目でございます。上場会社監査事務所登録制度についてです。2007年にスタートしたわけですが、それ以前ですと、上場会社を監査している監査法人が、行政処分を受けた実績や、協会のレビューでの指摘などについて、監査の利用者あるいは投資家にとっては、それを簡単に把握することが大変難しい状況にありました。登録制度の開始後、協会の御努力によって、サイトもだんだん見やすくなってきたと思っております。現在、個人も合わせますと130か140の事務所が登録されているわけですが、行政処分やレビューに関するもの以外で、実際に閲覧できるのは、経営者の誓約書、品質管理の概要、それから業務及び財務に対する説明書類となっています。2番目に申しました品質管理の概要に関しましては、今回前段で改訂を決めました品質管理基準、これが今度反映されていくと理解しております。
今回の品質管理基準の改訂では、かなり監査法人のガバナンス・コードの考え方と共通する部分も多かったように思っております。このように考えますと、ここにいよいよ2017年に確定されましたガバナンス・コードへの順守の状況に関する資料を閲覧資料の一つとして入れていくということも1つ考えられるのではないかと思います。現在は、コードの採用をしていない監査法人も多く存在していますが、やはり上場会社を監査するのであれば、ガバナンス・コードの採用について考えていくべきではないかと思った次第です、コンプライできないところはできないと説明すればすれいいわけですし利用者あるいは監査先である事業会社と会話する上での一つの重要なコンテンツになるのではないかというふうに思います。
先ほど監査役等の役割のお話も出ていましたけれども、監査役等に関しては、監査法人の品質管理についてもきちんと見ていくというのが流れとしてございますのでまずはガバナンス・コードについても、取組状況を掲載するということを少し御検討いただければなと思います。こうした取組を続けながら、上場会社監査事務所登録制度がブラッシュアップされていきますと、事業会社そしてその監査を利用する利用者が安心して、高品質な監査を享受できることに繋がると思いますので、本当によいことかと思います。
以上でございます。
【堀江部会長】
ありがとうございました。
それでは引き続きまして、松本祥尚委員、御発言ください。
【松本委員】
堀江先生、ありがとうございます。関西大学の松本です。2点ほど申し上げたいと思います。
1点目は、懇談会で当たり前過ぎて触れられていないのかもしれないのですが、法定監査を議論する場合と、任意監査を議論する場合とでは明らかに区別すべきという点だと思います。法定監査を議論する場合、ローテーションの問題でもそうですが、独立性の外観が確保できているかどうかが非常に重要な要素となります。水口委員もおっしゃっていましたが、資本市場が監査制度、法定監査を安心して受容してくれる、受入れ可能性を確保できるような環境を担保できるのは独立性の外観だと思います。その独立性の外観を考えた場合、先ほど松元委員、引頭委員、水口委員がおっしゃっていましたが、上場会社監査事務所登録制度というのはその根幹をなすものだと考えます。その登録事務所として登録されている事務所の上場会社クライアントが1社しかないというのを、我々は明らかにデータとして見ることができるわけなのですが、上場会社1社しか監査しない監査事務所があるという事実が分かったときに、果たして資本市場に参加している投資家が、そういった監査事務所がやっている監査そのものに加えて、そういった事務所が監査できることを認めている監査制度に対して信用して受容してくれるのか、社会的信頼性の欠如をもたらしかねないのではないか、と私は思っています。したがいまして、独立性の外観に関して一定の要件を課し、クライアントが1社しかないような監査事務所の登録は認めないといった規制は必要なのではないか、と思います。1社にするのか2社にするのかは分かりませんし、中小事務所の品質が低いとは全然思っておりません。要は、独立性の外観の問題として捉えて、規制が必要なのではないかなというのが1点目です。
もう1点は、内部統制の監査の問題なのですけれども、既に導入後、先ほど西山さんのほうからもおっしゃっていましたけど、10年以上経過しております。会計不祥事が発生すると常に、有価証券報告書の訂正、内部統制報告書の訂正というふうなことが続くような状態だと、かえってディスクロージャー制度の信頼性が損なわれることになりますので、内部統制報告制度について、内部統制の構築、評価、報告書の作成ができるような環境は上場会社には完成しているはずだという前提で、アメリカのようなダイレクトレポーティングの形で、監査人自らが内部統制の有効性に関する立証要点を設定・評価し、監査できるような制度にそろそろ変更してはどうかなというのが、2点目の私の意見です。
以上です。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。
それでは、このあと金子委員、それから最後に手塚委員から御発言を求められておりますので、まず金子委員から御発言いただきます。時間が迫っておりますので、誠に申し訳ございませんが、先生、ポイントを中心に御発言いただければ幸いです。
【金子委員】
はい、ありがとうございます。早稲田大学の金子です。私は会計士として30年近く監査をやってきまして、今、会計士を目指す学生たちに教えておりますので、そうした中で感じていることを2つ述べさせていただきます。
まず1点目、上場会社の監査が非常に品質としては特に重要であるという観点については、皆様おっしゃっていただいたとおりだと思います。ただ、上場企業の数が増えているとともに、規模や、国際化の程度、あるいは事業の複雑性といった観点から、かなり幅が出ています。そういう中では、例えばブティック型のIPOをして間もないような企業の監査に特化するとか、あるいは特定の業種に強い等の特徴ある監査法人といった存在が考えられます。そうした観点で、今回の改訂された品質管理基準は、品質管理目標を自らが設定して、必要な監査品質のレベルを達成していくという形で、一律に何かを求めるわけではないということから、非常に時機に合った改訂と感じております。
それからもう1点は、人材、能力向上・能力発揮という観点です。皆さんおっしゃったように、品質を上げるためには人材の育成が重要で、ここにおいては、多様な経験を持つことは非常に重要だと思います。先ほどCPEのお話がありましたけれども、私はCPEを受けていまして、最近は、かつてはなかったようなビジネス自体に関する理解やグローバル文化を理解する研修があり、CPEの幅が広くなっている感じはいたします。ただ、個人における多様な経験というのは、やはり限界があるように思います。コーポレートガバナンス・コードにおいても、多様な人材は、1人の人に多様性を求めるだけではなく、多様な人材が入ってくるということを想定していると思います。例えば企業内会計士であった人が監査法人に戻るとか、あるいは、現在でもかなりいろいろな人が監査チームの中にいますが、会計士以外の人に監査チームの一員として様々な能力を発揮していただくという観点も、一つの重要な柱として考えていくことが重要ではないか、そして、それをマネージできる会計士をつくっていくということが大事ではないかと感じております。
以上でございます。
【堀江部会長】
手短におまとめいただき、ありがとうございました。感謝いたします。
では、手塚委員、お願いいたします。
【手塚委員】
ありがとうございます。公認会計士協会会長の手塚です。今日はいろいろ貴重な御意見をいただきありがとうございました。私どもの協会の会務の運営に生かしていきたいと思います。
私として申し上げたいことは、規律正しく活発に機能する資本市場を実現するために、全体最適の観点から規制を考えていただきたいということです。どういうことかと申しますと、資本市場の情報開示は、内容の充実と開示の適時性と信頼性の3つが求められるというふうに考えています。監査は信頼性に関わるものですけれども、現在、それぞれ3つの要素がばらばらに議論をされているように感じています。監査は監査でやるべきことがあって、それはしっかりやるのですけれども、それ以外の情報開示の内容の拡充とか、開示の適時性とも監査の質は非常に大きく関連しますし、企業側の情報開示の質も当然関連するわけです。御承知のとおり、監査人が実施する仕事は、もう過去ずっと増え続けています。これからも増えます。現在行われている国際監査基準の議論でも手続が増える傾向にありますし、倫理基準も改訂される。改訂品質管理基準も入る。こういった状況で、四半期ごとに監査、レビューを行っている監査の現場は、かなり厳しい状況にあることは間違いありません。この上で、さらに増え続ける仕事量をこなすことは、過重な負担になるのではないかということを私は懸念しています。
一方、企業に目を移すと、昨今、企業が開示を求められる情報の質の充実や量の増加も顕著であります。しかも、これを適時に開示することが求められる。サステナビリティ情報の開示が最も分かりやすい例だと思いますが、これが仮に有価証券報告書における法定開示事項とされた場合を想定すると、投資家や株主にとっては、やはり有価証券報告書の株主総会前開示がこれまで以上に有用性を持つ可能性がある。これを実現するということは、企業にとっても大いに負荷が増加するわけであり、監査人にとっても、監査期間の確保という観点から、現状の慣行において、期末日から3か月以内に監査を終えて有価証券報告書を開示していく、それを株主総会前にやるというのはかなり厳しいわけです。
以上のことを考慮すると、資本市場におけるディスクロージャー制度の全体最適の観点から、企業と監査人、そしてまた議決権を行使する株主、また、投資をする投資家等にとって、一定の余裕のある、そういった仕組みづくりをしていただく。すなわち、既存の仕組みを見直していただく必要があるのではないかというふうに考えています。その一環として、会計監査の在り方についても、こうした場で継続して議論を続けていただけるということが望ましいのではないかというふうに考えます。もちろん、監査法人の経営努力と、当協会による監査法人の支援、そして自主規制の強化が求められていることは重々承知しておりまして、今後とも御期待に応えられるよう努めてまいりますが、今日申し上げた私の考えにも御理解を賜れれば大変ありがたいと思います。
以上でございます。どうもありがとうございました。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。町田委員、最後にどうしてもということであれば、簡潔にお願いできますでしょうか。
【町田委員】
分かりました。申し上げたい点は2つあります。1つは、この真ん中の能力向上から試験制度という部分です。公認会計士の試験や資格、会計士の能力開発というのは、試験を受ける前の教育からCPEに至るまでの一貫した話なのだということを申し上げたいと思います。ですからです、試験とかCPEのことだけ切り出したり、何か別の方法で、企業でインターンをするとかそういう話で、人材開発のことだけを取り出して議論する話ではなくて、国際教育基準では、資格取得前教育と資格取得後教育などと言いますが、試験も含めて、公認会計士の生涯を通じたキャリアの一貫した問題として議論していただきたいということです。また、この問題については、個別の議論ではなく、常に見直しを図って、都度、改善を図っていくという形で、不断の見直しを図っていただきたいと思います。
もう一つは、監査法人の体制のところで、第三者の目という問題が挙げられています。これは、例えば、公認会計士・監査審査会の検査と公認会計士協会の品質管理レビューのように、公的規制と自主規制のどこからどこまでを公的規制にして、どこから先を自主規制にするかという棲み分けの議論なのだろうと思います。そのときに、日本では、IFIARの常設事務局を東京に誘致して設置していますが、IFIARの参加メンバーである公認会計士・監査審査会において、監査事務所を審査会に登録させるという制度を有していないというのは、グローバルに見ると、ちょっと特殊なパターンなのだろうと思います。では、審査会に登録するような制度にすべきというわけではなく、公的規制と自主規制のバランスを考えていく中で、我が国なりの最適解を見出すべきだと思います。問題は実効性ですが、現状のモニタリングにはやや課題があると思いますので、公的規制と自主規制のバランスの中で、有効な第三者の目が働く仕組みを考えていくべきであると思います。
以上です。
【堀江部会長】
どうもありがとうございました。
委員の皆様方から様々御意見をいただきましたので、これを受けまして、古澤企画市場局長から、最後にコメントをお願いいたします。
【古澤企画市場局長】
部会長ありがとうございます。手短に一言お礼を申し上げたいと思います。本日は在り方懇についての御議論もいただき、誠にありがとうございます。企業実務の現場からの御視点、それから公認会計士としてのプロフェッショナルとしての御視点、さらには弁護士としてのプロフェッショナルとしての御視点、それから利用者等の御視点、それから組織内会計士としての御視点、それから法制度面の問題、それから、髙田先生、松元先生、アカデミアからの御視点、本当に様々からの御視点、ありがとうございました。
2つ大きな難しさがあると思っております。1つは、JICPAの手塚会長からも御指摘ありましたが、本問題は、もちろん監査部会の関係もございますし、それからディスクロージャーの問題も当然考えないといけない。それから、先生方からも御指摘あったとおり、内部統制のことも考えないといけない。そして当然、公認会計士制度の問題になり、さらには資本市場全体ということになると、コーポレートガバナンス全体がどういうふうにあるかべきか、これをどういうふうにホリスティックに議論するかというところが難しさの一つでございます。
それから、今回ございましたけれども、髙田先生から実態の解明が基本だという御指摘がありましたがありいわゆるイベントバイアスのかからない、ある事件が起こったことへの対応を議論するのではなく、実態を踏まえたPDCAを回していく、この資本市場とゲートキーパーとしての機能発揮をしていただくためにPDCAを回す、それをその時々の状態を踏まえながら直していく、ここがある意味、挑戦であり、難しさだと考えております。
最後に、町田先生からの不断の見直しというお言葉がございました。資料の2ページの中で掲げている短期的な検討と中長期的な論点をそれぞれできる限り先生方の御意見を伺いながら整理し、まさにやれるものから、その時々、きちんと課題を果たし、その上で次のPDCAにつなげていくというような形で議論を進めていければと考えております。
また機会を設けまして先生方の御意見を伺うことも検討いたしますので、ぜひ引き続き御指導をよろしくお願いいたします。一遍に全部合格点をいただけないこともあるかと思いますが、ぜひ広い気持ちで受け止めていただけると、我々としてはとてもありがたいと考えてございます。
本日はどうもありがとうございました。
【堀江部会長】
それでは、本日の審議はこれで終了させていただきます。
最後に、今後のスケジュール等につきまして、事務局から説明いただきます。
【西山開示業務室長】
今後の日程につきましては、改めて事務局から御連絡させていただきます。
監査に関する品質管理基準の改訂案に関しては、委員の皆様には、本日を含め計5回にわたり充実した議論をいただき、大変ありがとうございました。これにて本日の監査部会を終了いたします。ありがとうございました。
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