経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議(第3回)議事要旨及び資料
議事要旨
1.日時:
令和元年9月20日(金)16時00分~18時00分
2.場所:
中央合同庁舎第7号館 12階 共用第2特別会議室
3.議事内容:
冒頭、事務局による資料説明(資料1)、砂本オブザーバーによるプレゼンテーション(資料2)、竹下メンバーによるプレゼンテーション(資料3)が行われた。続いて、以下のような議論が行われた。
- ○ 投資教育が遅れていた日本では保守的な定額型商品を好む人が多いということかもしれないが、だからといって保険会社に社会のひずみを受けるような形の要求(定額型商品の提供)をするのではなく、資産形成にはリスクが伴うことを説明しながら、貯蓄ではなく投資を選択することも各人の責任であることももっと説明していくべき。
- ○ ドイツのハイブリッド商品の最大の特徴は、ギャランティーファンドの仕組みを有効活用している点にある。規制上、ギャランティーファンドでは、政府保証があればリスクがほとんどないという計算になるため、ドイツの生命保険会社はその制度を最大限に利用しているという印象を持っている。
- ○ 今日の発表をお聞きして感じたのは、経済価値ベースの規制は出来るだけ早く導入し、行政も保険会社も出来るだけ早くその準備を始めるべきだということ。経過措置等の様々な手当ては必要になるにしても、導入が遅れれば遅れるほど問題が先送りにされ大きくなるのではないかと危惧する。
- ○ 消費者ニーズに適合した商品の提供を行うことは保険会社の責務であるが、今後も低金利環境の継続が予想される中で、保険会社が過大なリスクを負い、そのリスクが顕在化することで経営状況が悪化すれば、最終的に損害を被るのは消費者である。
- ○ 欧州の事例を見ても分かるとおり、消費者にとって経済価値ベース規制の導入は中長期的にはメリットとなっており、短期的にも大きな問題は生じていない。問題となっているのは商品の売り方であり、消費者に分かりやすく、リスクを理解しながら投資できる商品をどのように提供・説明していくかが重要なポイントだと思う。
- ○ ドイツは日本に比べはるかに経済価値ベース規制の受け入れ体制が進んでいるとの話があったが、欧州で経済価値ベース規制が導入された頃は、対応が非常に遅れていた国であり、官民で様々な努力や工夫をしてここまで来た。我々もできる限り早くこのような努力や準備は始めるべきだと思う。
- ○ インフラ投資の取扱いについて日本でも検討する余地はあると思うが、幾ら政府保証が付いていても過度な期待は避けるべきであり、十分な検討が必要である。
- ○ 情報開示は重要なポイントであり導入すべきことは明確であるが、時期や開示方法については慎重に検討する必要がある。情報の利用者への教育に必要な措置も考えつつ、情報開示のタイミングはあまり先延ばしすべきでない。例えば、3年後から情報開示を行うなど、タイムラインを定め、それに向けて保険会社、行政、あらゆる関係者が一丸となって努力する体制が必要である。
- ○ 長期保障商品の提供について、最終的なリスクを誰が負うのかということを考えなければならない。保険会社がリスクを負担しているように見えるが、万一その会社が破綻した場合、国からの資金援助等を受けることとなれば、最終的には国民が負担を負うことになる。
- ○ 情報開示は必要だが、一般的な消費者が難しい開示を理解できるとは限らないため、間に入るコンサルのような役割が必要。従来の計算能力といったリテラシーだけではなく、保険商品の仕組みや商品性を理解する応用的なリテラシーも必要となってくると思う。
- ○ 「意図せざる影響」と言われているのは、保険会社への負担が大きな商品を知らず知らずに売っており、それが契約者にとってもメリットがあったように見えた、という過去に溜まった膿の面が大きいとも思う。そう考えると、経済価値ベースの制度を早く導入し、提供商品のあり方や対応について考えていくことで、これまで生じていた事態が徐々に緩和され、より適切な方向に進むことが期待できる。
- ○ 資料上にあったインフラ投資の取扱いについてだが、リスクがあるものを規制上はリスクがないように見せることで投資がその部分に集中するのであれば、それによる意図せざる影響が生じる危険がある。
- ○ ドイツで生じたランオフの事例については、ランオフによる風評は起こり得るのかもしれないが、無理な投資等が原因で新規・既存の契約者ともに痛みを蒙るような事態を避けるためにランオフを選択するということであれば、どちらが良いとは言えないのではないか。
- ○ 経済価値ベース規制を早く導入することによって、意図せざる影響が徐々に緩和されて、より適切な世界に進むのではないか。
- ○ ドイツにおいてソルベンシーIIや低金利環境に対応するためにハイブリッド型の商品等が必要だったとのことだが、我が国における変額保険や変額年金の割合は現状では低い。それを考えると、一定の助走期間のようなものを設けないと対応が難しくなる部分もあるのではないか。
- ○ 一時点で経済価値の資産、負債の評価を行う場合、保有する債券の信用リスクプレミアムが平均的には否定され、稼げた部分は後で資本に積み上がることになる。アメリカの保険会社はキャッシュフローのマッチングを行い、デフォルトコストを勘案しつつ信用リスクプレミアムも上手く扱っているので、そうした部分を評価できる要素を入れていくことも必要かと思う。ソルベンシーIIでマッチング調整やボラティリティ調整が取り入れられたのもそうした背景だと理解している。
- ○ 経済価値ベースの考え方は、1年後のキャッシュフローの部分と40年後のキャッシュフローの部分を現在価値で評価して足し合わせたものを、一時点で評価することになる。キャッシュフローの時点を反映して、リスクの発現時期も考えて早期是正措置の発動を考えていくような仕組みも必要なのではないかと思う。
- ○ 米国がICSに反対している背景には、まだイールドカーブが立っていることにもあるのではないか。日本や欧州のようにイールドカーブが潰れてしまうと、会社の存続可能性を判定する良い方法が他にないので、経済価値ベースのリスク管理が必要になってくる。現在の金利環境の継続やマイナス金利の深掘りは生保の体力をゆっくり奪っていき、やがて一か八かの破滅的なリスクテイクをする状態が来るかもしれない。そうした将来を現時点で示唆し、回避するために必要なのが経済価値ベースのリスク管理だと考える。
- ○ アリアンツがパースペクティブのような商品を出せた背景には、エンベディッドバリューの開示が進んできて、そうした機運が社内で醸成されてきたことが大きいのではないかと予想する。そう考えると、第2、3の柱が大事ということになるのではないか。経済価値ベースの規制は、緩和措置を講じたとしても何らかの社会的な痛みを伴う可能性は否定できないが、それはもっと大きな社会的な痛みを回避するためのものであれば、容認すべきものだと考える。
- ○ パースペクティブは既払保険料を年金開始時に保証し、実態的には(低いものかもしれないが)予定利率を保証したような形になっていると理解しており、そうすると日本の年金保険と大きくは異ならないようにも見える。規制の早期導入によりドイツのような変化を促すというご意見もあったが、そうした商品によりリスクが実態として大きく減ることにはならないのではないかと思う。
- ○ 保険会社では商品開発も含め経済価値ベースで内部管理をしているが、それが規制に入ってしまうと内部管理と比べた場合に、より厳しい判断をしないといけないということになる。
以上
配付資料等
資料1 事務局資料「欧州における保険商品の動向」(PDF:252KB)
資料2 砂本オブザーバー資料「想定される意図せざる影響について-ドイツ生保の事例から考えるー」(PDF:912KB)
資料3 竹下メンバー資料「経済価値ベースのソルベンシー規制等の導入に伴う想定される『意図せざる影響』について」(PDF:746KB)
- お問い合わせ先
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金融庁監督局保険課保険モニタリング室
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