監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会(第7回)
1.日時:
令和4年11月14日(月曜日)15時00分~17時00分
2.場所:
中央合同庁舎7号館 13階 共用第1特別会議室(オンライン開催)
【八田座長】
定刻になりましたので、監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会第7回会合を開催いたします。皆様、ご多忙のところ、ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の会議でございますが、運営要領第2条第2項にのっとり、オンライン開催とさせていただきます。
本日は、日本公認会計士協会によるプレゼンテーションを予定しておりますので、南成人様にご出席いただいております。
それでは、まず会議の公開についてお諮りいたします。運営要領第5条第1項にのっとり、本日の会議について公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
ご了解いただきましたので、本日の会議の模様はウェブ上でライブ中継させていただきます。
なお、非公開でのご発言をご希望される場合には、あらかじめその旨を申し出ていただければ、その間はライブ中継を中断させていただきますので、よろしくお願いいたします。
また、会議の議事録を作成し、金融庁のウェブサイトで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
それでは、事務局よりオンライン会議の開催に当たっての留意事項をお知らせいたします。
【齊藤開示業務室長】
事務局の企業開示課開示業務室の齊藤でございます。オンライン開催に関して2点、注意事項がございます。
まず、ご発言されない間は、恐縮ですが、マイクをミュートの設定にしていただきますようにお願いいたします。ご発言されるときにはマイクをオンにして、ミュート解除でご発言していただき、発言が終わられましたらまたミュートにしていただくということでお願いいたします。
また、支障のない範囲で構いませんが、会議中はお顔が見られるようにカメラの設定をオンにしていただきますようお願いいたします。
第2点目として、ご発言を希望されるときですが、チャット機能を使って全員宛てに発言希望がある旨とお名前を共に入れてお送りください。お名前については、協会名などの組織名でも結構ですので、ご入力ください。それをこちらでご確認させていただいた上で、座長から指名させていただきたいと思います。
なお、ご発言に際しては、念のため、ご自身のお名前をおっしゃっていただいた上でご発言いただければと思います。
【八田座長】
それでは、議事に入ります。まず事務局から説明いただいた後にご質問、ご意見をお伺いしたいと思います。
それでは、事務局からご説明をお願いいたします。
【齊藤開示業務室長】
八田座長、ありがとうございます。
それでは、お手元の資料1に沿って説明をさせていただきます。今回は論点ごとに、左側に前回の議論、右側にそれを踏まえたコードの見直しの方向性案をお示しさせていただいております。
1ページをご覧ください。コードの前文に関し、コードが対象とする監査事務所についてでございまして、前回はご意見として、中小監査事務所に限定したコードを別途作成する必要はない。上場企業等の監査を担う監査法人における組織的な運営の姿を念頭に記載内容を見直すべきと。
また、上場企業等の監査を担う共同監査事務所や公認会計士個人に対してもコードの受入れが義務づけられることを踏まえた記載内容に見直すべきといったご意見を頂戴しました。
右側、コードの見直しの方向性案でございます。1つ目は、大規模な監査法人に限定した記載内容を削除し、上場企業等の監査を担う監査法人における組織的な運営の姿を念頭に作成していることを前文に明記することです。
2つ目は、上場企業等の監査を担う共同監査事務所や公認会計士個人について、監査法人を監査事務所に読み替えて適用されること。また、コンプライ・オア・エクスプレインの手法により、実質的な組織運営の実践状況を説明する必要があること。さらに、上場会社監査を担う個人会計事務所については、日本公認会計士協会において中小監査事務所の育成支援の一環として監査法人への移行を進めていくことが期待されること。これらのことを前文で明記することです。
2ページをご覧ください。ここでの論点は、適用手法とコードの位置づけ、記載内容についてでございます。
適用手法について、前回ご意見として、エクスプレインの将来の方向性を示しながら、進捗状況を説明することが重要と。
コンプライする場合も、どのようにコンプライしているのか、その内容をさらに深化させようとしているのかなどを説明することも重要と。
監査法人によってコンプライとエクスプレインの捉え方が異なるため、一定のメルクマールが必要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性案としては、コンプライ・オア・エクスプレインの在り方や考え方を前文に明記することでございます。
また、コードの位置づけ・記載内容についてでございますが、前回のご意見として、指針の位置づけについて、要求事項ではなく例示にすぎないことを明確にすることも考えられると。
法令の開示事項であっても、コードへの規定により、情報開示項目の一覧性を高めることができるほか、どのように遵守されているのか説明を求めることができると。
法令や品質管理基準で要求されている事項について、同じ粒度でコードに規定する必要はないといったご意見を頂戴しました。
ご意見に沿ってコードを見直す方向でございます。
3ページをご覧ください。ここでの論点は、日本公認会計士協会の役割と原則1の監査法人の役割に関して、上場会社監査への期待についてでございます。
協会の役割について、前回ご意見として、監査法人が上場会社監査を行う上で適切な体制整備や情報開示を自律的・自主的に行っていくよう、協会はしっかり役割を果たすべきと。
協会などが役割分担を明確にしてフォローアップを行っていく必要。その際は、単に横比較するのではなく、目的に照らしてどうあるべきかを検討することが重要と。
さらに、監査法人における原則の適用状況に関する説明内容を定期的にモニタリングする必要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性案としては、これらの提案を前文に明記することでございます。
また、上場会社監査への期待についてでございますが、前回のご意見として、日本市場の信頼性を維持し、投資家が安心して市場に参加できるように、上場企業等の監査を担う監査法人においては、その規模にかかわらず、一定の監査品質の確保が必要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性案でございますけれども、こちらについては、上場企業等の監査を担う監査法人は、より一層高い組織としての監査の品質の確保が求められることを原則1の考え方に明記することでございます。
4ページに参ります。ここでの論点では、原則2の経営機能、原則3の監督・評価機能、原則4の業務運営に関連して、中小監査法人の受入れに馴染む工夫と独立第三者の選任についてでございます。
中小監査法人の受入れに馴染む工夫についてでございますけれども、前回のご意見としては、各原則指針の目的や必要性を明確に示すことが重要で、それにより中小監査法人がその目的に従い創意工夫した取組みを行うことが可能ということです。
また、監査法人が自らの状況や実態を踏まえて、実効的なガバナンス機能を確保する組織体制を構築することが重要。
また、特別な機関を設置せずに代替的手法により経営機能や監督・評価機能を確保している場合は、その合理性を説明すべきといったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性案でございますが、1つ目は、各原則の考え方や各指針に目的や必要性を明記すること。
2つ目は、各原則・指針において、形式的な経営機関や監督・評価機関の設置は必須としないということを明確にすることです。
3つ目は、特別な機関を設置せずに経営機能や監督・評価機能を確保している場合は、その合理性を説明することを原則2、原則3に明記することでございます。
また、独立第三者の選任についてでございますけれども、前回はご意見として、機関の構成や独立第三者の選任方針を開示させることが重要と。
また、監査法人の経営を適切に監督・評価できる独立第三者を確保していくことが重要で、各監査法人で独自第三者を選任するためのルール策定を検討する必要といったご意見をいただきました。
見直しの方向性案としては、監督・評価機能を担う独立第三者に期待する要件を開示することを原則3に明記することでございます。
5ページでございます。ここでの論点は、原則2の経営機能、原則3の監督・評価機能に関連して責任形態の相違についてでございます。前回のご意見としては、無限責任と有限責任の違いで、組織的運営の在り方も異なると。無限責任、有限責任いずれの法人でも同じ品質が担保されなければならないため、品質水準を合致させるために遵守すべきコードの内容は同じと。
無限責任監査法人の場合、無限社員が相互に監視してガバナンスを効かせられるが、市場のゲートキーパーとしての役割を果たすには第三者の目を入れる必要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性案としては、上場企業等の監査を担う監査法人における経営機関等の役割について、原則2の考え方に2つの点を明記することとして、1つ目は、経営機関等の役割は、無限責任と有限責任のいずれの形態であっても、適切に果たされるべきこと。
2つ目は、経営機関等の役割として監査品質に対する資本市場から信頼に大きな影響を及ぼし得るような重要な事項について、監査人としての適正な判断が確保されるための組織体制の整備及び当該体制を活用した主体的な関与等が社会から期待されるということでございます。
次のページ、6ページでございます。ここでの論点は、原則1、監査法人の役割、原則5、透明性の確保に関連しまして、グローバルネットワークとグループ法人、非監査業務についてです。
グローバルネットワークとグループ法人について、前回いただいたご意見としては、グローバルネットワークに参加する意義・目的やリスクの開示が重要と。
また、各法人の組織体制に込めた意図が伝わるように創意工夫した情報開示を行う必要と。
また、グループ全体の業務収入に占める非監査業務収入の割合が多い場合、その対応策を開示することは重要といったご意見を頂戴しまして、このご意見に沿って原則1や原則5を見直す方向です。
また、非監査業務については、前回は、非監査業務の提供を拡大するのであれば、その意義を明らかにして、それに伴うリスクへの対応を開示することが重要と。
また、中小監査法人の場合、非監査業務にまでリソースを拡大している環境にないが、ニーズに応じて開示していく必要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性案としては、非監査業務の位置づけの考え方に加えて、利益相反や独立性の懸念に対し具体的にどのような姿勢で対応を講じているかを明らかにすべき旨を原則1に明記して、原則5には、市場参加者にとって有益な情報として開示すべき旨を明示することです。
7ページでございます。ここは原則5、透明性の確保でございまして、品質管理システムとガバナンスの充実についてです。
品質管理システムについては、前回はご意見として、改訂品質管理基準によって、リスクアプローチに基づく品質管理システムを実現して、実質的に深化されるよう開示していくことが重要と。
また、法令での開示事項であっても、コードに規定することで、情報開示項目の一覧性を高めることができるほか、どのように遵守されているのか説明を求めることができるといったご意見を頂戴しました。
意見を踏まえまして、見直しの方向性としては、法令や品質管理基準で要求されている事項についてコードへの記載は必要最小限にとどめるということでございます。
また、ガバナンスの充実について、前回はご意見として、市場参加者の方が各監査法人における会計監査の品質向上に向けた取組みを評価できるように、監査法人が中長期的に目指す姿や、その方向性を示したKPIを開示することが重要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性としては、そのようなKPIの開示を求めることを原則5に明記することでございます。
8ページに参ります。ここでは原則4、業務運営と原則5、透明性の確保の関連でして、IT・テクノロジーと人材基盤についてでございます。
IT・テクノロジーについては、前回はご意見として、ITを活用した監査業務の効率化と監査品質の向上、また、サイバーセキュリティー対策について現状と今後の方向性の開示が重要ということでございました。
見直しの方向性でございますが、各監査法人におけるIT基盤の実装化や積極的なテクノロジーの活用に向けた対応状況に関する開示を求めることを原則5に明記することでございます。
人材基盤については、前回はご意見として、上場会社を監査する監査法人として、会計監査以外の専門家の確保状況に加えて、企業出向等の経験者や女性管理職の状況なども含めて、構成員が多様かつ必要な人材が確保されているという状況の開示が重要ということもありましたし、また人材育成の観点から、研修・教育の実施状況の開示ということが重要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性としては、1つ目は、監査法人様において多様かつ必要な構成員の確保状況や人材育成方針の開示ということを原則5に明示ということですし、2つ目は、監査法人の業務運営で留意すべき事項として、構成員が業務と並行して十分に能力開発を取り組むことができる環境を整備することを原則4に明記することでございます。
9ページでございます。こちらは、原則5、透明性の確保に関連して、財務基盤、国際対応などについてでございまして、財務基盤については、前回はご意見として、報酬依存度が一定以上の場合は、安定した財務基盤の確保に向けた改善策を実行して、その状況を外部に説明していくことが重要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性でございますが、こちらは、原則5に明記するものとして、特定の監査報酬に左右されない財務基盤の確保状況に関する開示でございます。
また、国際対応についてですけれども、こちらもご意見としては、グローバルネットワークに所属していない中小監査法人の場合は海外進出企業への対応状況の開示が必要と。
また、グローバルネットワークに所属していることだけでは評価されないため、海外進出企業のニーズに対応できる体制となっているかどうかを具体的に開示することが重要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性について、こちらも原則5に各監査法人における海外進出企業活動への対応状況に関する開示を求めるということでございます。
さらに、前回はご意見として、コードで開示を求める事項を細分化しますと、開示内容のボイラープレート化の懸念が高まると。ですから、各法人に自由度を与えた開示を促して、市場参加者の対話で改善をしていくことが重要ということをいただきました。
見直しの方向性としては、原則5には、監査法人の規模、業務内容等を踏まえて開示すべきであることを改めて明記するということでございます。
駆け足でございましたけれども、説明は以上でございます。
【八田座長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、日本公認会計士協会の南様からご説明をお願いします。
南さん、よろしくお願いいたします。
【南日本公認会計士協会副会長】
それでは、スライドに沿って説明させていただきます。日本公認会計士協会で中小事務所施策を担当しております副会長の南でございます。今日はよろしくお願いいたします。
本日の中小監査事務所の体制整備の支援に向けた取組みについてご説明させていただく機会をいただき、誠にありがとうございます。
それでは、まず1ページ目になります。近年は中小事務所への監査人の交代案件が急増しております。中小事務所の監査の担い手としての役割はますます大きくなっております。
また、品質管理基準の改訂等もあり、監査品質の維持・向上が求められております。これが左側の緑の部分であります。
このような状況を踏まえ、弊会におきましては、右下の紫色の枠にありますが、中小監査事務所について、基盤強化の支援策、そして情報開示の充実という施策を実施するとともに、改正公認会計士法に対応した上場会社監査事務所登録制度の充実を図ってまいります。
そうしたら次の2ページ目になりますが、弊会は中小監査事務所に対して、情報開示の充実と基盤強化の支援策により、監査品質の向上と自律的・自発的な経営基盤の強化を促進してまいります。
このうち情報開示につきましては、上場会社を監査する中小監査事務所には、後ほどご説明させていただきます、監査品質のマネジメントに関する年次報告書、この作成を求め、その中には、6つの経営基盤として、品質管理基盤、組織・ガバナンス基盤、そして人的基盤、IT基盤、財務基盤、国際対応基盤に関する記載を含めることになります。
次に3ページでは、改正公認会計士法に関連する上場会社監査事務所登録制度の充実について触れております。ここで記載しましたとおり、改正公認会計士法及び現在パブリックコメント中の公認会計士法施行規則案におきましては、各種の体制整備の規定が設けられています。
そして、金融審議会公認会計士制度部会報告におきましても、「登録を受けた監査法人・公認会計士には上場会社監査に係る体制整備や情報開示等について、より高い規律付けを求めることとし、登録後に上場会社監査を公正・的確に実施する体制が整備されていないこと等が確認された場合には、日本公認会計士協会において登録を取り消すことができることとすべきである。」との記載がございます。先ほどご説明した体制整備が適切に行われていない場合には、このページの下に記載のとおり、登録の取消し等を検討することになります。
続きまして、4ページ目になります。改正公認会計士法により、上場会社監査人名簿への登録の申請時、また登録後、監査事務所が上場会社の監査を公正かつ的確に遂行する体制を備えているかどうかの確認、これを品質管理レビューを通じて行っていきます。これが最も重要な監査品質、監査事務所の品質改善のための施策となります。
協会では、現在38名の常勤レビュアーによって上場会社の監査を行う事務所の品質管理の状況を、原則として3年に一度の頻度で確認しています。確認に際しては、監査の品質に関する基準・諸規定に監査事務所の品質管理のシステムが適合しているかどうかを評価し、不備が見受けられる場合には改善に向けての指導を行います。
指導の結果として監査事務所が改善できているかどうかに関しては、翌期以降に改善措置の状況を確認しております。ここで監査事務所の改善に向けた取組みが十分でない場合には、品質管理レビュー制度上の措置として、注意、そして厳重注意、辞退勧告といった措置を講ずることにより、監督機能を発揮しております。
それでは5ページになります。昨今の会計、監査、品質管理基準等の高度化・複雑化、資本市場における中小監査事務所への期待の高まり、そして今般の公認会計士法改正における国会審議を踏まえまして、中小監査事務所に対する弊会の指導力の発揮が今まで以上に求められております。
これを受けて、弊会におきましては、中小監査事務所の基盤強化のため、中小監査事務所に自主的な情報開示の充実を促すとともに、様々な支援策と指導を実施してまいります。
次の6ページになりますが、上場会社等の監査を行う中小監査事務所は、その経営基盤強化のために監査品質のマネジメントに関する年次報告書、先ほどお話しした年次報告書です、これを作成して情報開示を行うことになります。
当該報告書は、公認会計士法においてその作成が義務づけられている説明書類とは別に、自主規制の範疇において作成、公表するものとなります。
公の説明書類の記載内容は、公認会計士法施行規則において定められていますが、当該報告書の記載内容は、原則、各事務所の自主的な開示とし、開示を通じて各事務所は自律的・自発的にその基盤の強化を図っていくことになります。
それでは、7ページになります。当該報告書の作成、公表する趣旨についてご説明いたします。上場会社等の監査を行う中小監査事務所が6つの基盤に係る情報開示を行い、そして自らの監査事務所の品質に関する取組みを市場関係者に周知することにより、常に資本市場の目線を意識し、そして今まで以上に自らの監査品質向上に真摯に取り組むことが必要となり、そのことが品質管理体制の一層の向上を実現することにつながると考えております。
当該報告書の作成、公表は自主規制の範疇で行うものですが、その中には6つの基盤と監査法人ガバナンス・コードへの対応状況、これが含まれております。それらは公認会計士法施行規則改正案の第95条(経営管理の状況等の公表)及び第96条(組織的な運営)の体制の整備に対応するものと考えております。
そして8ページには、監査品質とマネジメントに関する年次報告書、この構成を記載しております。まず最初に、監査品質の向上に向けた取組みと事務所の概要を記載していただきます。監査品質の向上に向けた取組みの箇所では、理事長などによるトップメッセージを記載することを想定しています。この部分は特に大切であると考えております。監査品質に関するトップの考え、そして自分の事務所の強み、他の事務所と差別化できるような内容をここで発信し、それに沿って次に記載する6つの基盤にどのように対応しているかを開示する流れになります。
また、当該報告書には監査法人のガバナンス・コードへの対応状況の記載も含まれております。
それでは、9ページです。このページは、協会として、中小監査事務所の基盤強化のための支援策、そしてその対応組織、これを一覧表にして説明しております。
支援策としましてはこちらに記載しておりますとおりですが、上から、監査業務の品質の維持・向上、実務の参考に資する公表物等の検討、そして2つ目は、中小監査事務所のITに関する実態把握やITインフラ整備、ITを活用した監査ツール開発の支援、3つ目は、IFRSを含む企業会計基準等の適用、表示チェックリストの作成及び昨今の非財務情報を含めた企業内容等の開示充実に関する研究、そして4つ目ですが、IFAC中小事務所アドバイザリーグループ、ここに対するメンバーを通じたコメント発信等をしております。
このほか、下の中小監査事務所連絡協議会のほうになりますけれども、1点目は、監査法人のガバナンス・コードの原則5、この対応支援といたしまして、中小事務所と資本市場関係者との意見交換会を開催していきたいと考えております。
次に、国際対応のサポートをするための海外監査事務所名簿の整備について検討を進めております。
また、監査品質のマネジメントに関する年次報告書の作成については、参考となるガイダンスの作成を進めております。
さらに、中小監査事務所に対する監査人材の採用支援、新人研修につきましての具体的な実施に向けた検討を行う予定でございます。
ほかに、中小監査事務所の育成やサポート、個別相談機能の強化、専門家人材の紹介につきましても検討、実施を進めている状況にあります。
こういった形で中小監査事務所の基盤強化に対する支援をしっかりと行っていきたいと考えております。
それでは、次の10ページに移りたいと思います。こちら、ちょっと小さな絵になっておりますけれども、中小監査事務所支援策のロードマップであります。上のグレーの網かけの行、こちらは改正された公認会計士法、あと、改正された品質管理基準等、この適用時期を示しております。
そして品質管理基準の適用というのが、中小監査事務所の場合は2024年7月ということになっております。これに平仄を合わせる形で、監査品質のマネジメントに関する年次報告書の作成開始時期、これにつきましても2024年7月からと考えております。
このような状況を踏まえまして、弊会では2024年7月を1つの目標として、中小監査事務所が6つの経営基盤や監査法人のガバナンス・コードの受入れを行い、そして適切に情報開示を行えるよう、各種の支援策を強力に遂行してまいります。
弊会におきましては、今後も継続して中小監査事務所との密なコミュニケーションに努め、相談や指導といったきめ細やかな対応を引き続き行ってまいります。
最後になりましたが、現在行っております支援策の1つである対話型研修会をご紹介させていただいております。当該研修会は、監査事務所の育成やサポート、個別相談機能の強化の支援策に対応するものでございます。
スライドのご説明は以上となります。ご清聴ありがとうございました。
【八田座長】
どうもありがとうございました。これより皆様からご質問、ご意見をお伺いする討議とさせていただきます。まずは日本公認会計士協会によるご説明に関しまして、ご質問、ご意見を頂戴した後に、事務局より説明したコードの見直しの方向性について討議するといった形で進めさせていただければと思います。
メンバーの皆様方にご発言いただく機会を確保する観点から、恐縮ではありますが、ご発言の時間につきましては5分以内を1つの目安にしていただければありがたく存じます。
それでは、チャット機能を使って発言希望がある旨を送ってください。
まず石原メンバー、お願いいたします。
【石原メンバー】
質問とお願いです。「監査品質のマネジメントに関する年次報告書」というものを新しくつくられるということで、これは自主規制と位置づけられていますが、上場会社監査事務所登録制度全体に関わる話として、自主規制の部分と、今回法制化される部分、法的裏づけに基づいて行われる部分がどのように変わってきているのかというあたりが分かりにくいと感じています。それで質問に加えてお願いという意味で、今回に限らないのですが、本日の資料は、支援に向けた取組みに関して説明されていますが、支援はやっていただく一方で、私にとって最大の関心事は、スライドの1にも上場会社監査事務所登録制度の充実と書かれていますけれども、この制度を実際にどうやって回していかれるのかということでありまして、これまで自主規制で行われているものから何をどう法的な裏づけのあるものに変えていこうとされているのかというあたりを、はっきりとさせていただいたほうが分かりやすいのではないのかと思っております。
それで、協会の方から「公認会計士法改正に関連する協会制度変更要綱案」というものが10月に出されていますが、この中には、上場会社等監査人登録制度に係る制度変更ということで様々な提案がなされているわけですから、その中に書かれているようなことを含めて、どうやって公認会計士法に基づく法的な裏づけを持った登録制度として運用されていくのかということについて、この有識者検討会のスコープに入るのかどうかというところはありますが、また次回とかに、できればそういった説明をしていただいたほうが、今回の制度改正で何がどう変わるのかということが分かっていいと思っています。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。ただいまのご質問、今回の検討会のかなり基本的な問いかけの1つではないかと思いますので、南様、今日ご報告いただいた中で、今石原メンバーがご質問されたように、会計士法上、法制化された登録制度、それを踏まえた上で、日本公認会計士協会が自主的なサポート支援をするという部分のすみ分けといいますか、立ち位置をもう少しご説明いただけるのであればありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
【南日本公認会計士協会副会長】
八田先生、ありがとうございます。今、ご質問された点は2点あると思います。1点目が、年次報告書が自主規制としてどのような位置づけになっているのかという、この表の部分でしょうか。まず、体制整備が義務づけられて、その整備状況を公表するということは、施行規則の規定に入っており、法制化されていると考えております。ただ、具体的に体制整備の状況を記載する内容自体、ここについては法律上どのように記載するかということが規定されておりませんので、この記載の内容については、協会としてガイダンスを作成しまして、中小監査事務所の皆さんが自発的・自律的に開示をして経営基盤の改善をしていくというPDCAサイクルが回っていく形で支援をしていきたいと思っております。
そういう意味で、公表自体は義務づけられて法制化されておりますが、その記載内容については、自主規制として、その内容について支援・指導していきたいと考えております。そのような建付けで考えております。
今回、上場会社監査事務所登録制度自体が、いわゆる法制化されたわけですけれども、その法制化がされて、自主規制としてより高い規範性を持って運営していくという側面については、今回、自主規制として登録の取消し等が対応できるという形になりましたので、従来より厳しく対応を検討していきたいと考えております。
【茂木メンバー】
茂木でございます。石原メンバー、ご質問ありがとうございます。今、南のほうからお話し申し上げましたとおり、監査品質のマネジメントに関する年次報告書に関しては、体制整備義務について施行規則第95条、また第96条において、定めが置かれております。これを踏まえておりますけれども、これを超えてさらにより充実した開示を求めていくというところで、自主規制の中で、よりよく社会にご理解をいただけるような開示を進めていきたいというところでございます。
それから、自主規制について、その実施についてというところでございますけれども、先ほど南のほうからもご説明申し上げましたように、上場会社監査事務所登録制度が法定のものということになってまいりました。それの前から、私ども日本公認会計士協会としては品質管理レビューということで取組みを行っておりますけれども、品質管理レビューの実施の中で、最終的な判断が監査業務の辞退勧告というようなことになってきたものにつきましては、品質管理体制に対する課題から上場会社監査事務所登録制度における登録の抹消等の検討を行うということにつながっていくというところでございます。
当然そういった対応を行うというところについては、上場登録に関する審査会等の設置を行いまして厳格な対応を取っていくような判断をしていく所存でございます。
また、各監査事務所においても、そのような制度変更が行われたという厳格な対応が取られるということを踏まえた監査実施体制の整備を行っていくようになっていくと考えております。
【八田座長】
どうもありがとうございます。
それでは、次に、小野メンバー、お願いいたします。
【小野メンバー】
ありがとうございます。今の石原メンバーのご質問と若干重複するのですが、私が確認をしたいのは、監査品質のマネジメントに関する年次報告書というのは、これは大監査法人、準大手ですか、監査法人以外の中小監査法人については、全ての上場会社を監査している監査法人が作成をしなければならないマストなものだと、そういうふうに理解してよろしいでしょうか。自主規制といいながら、先ほどの施行規則との関係が、今ご説明を聞いてもいまいち明瞭ではなかったものですから。要は、上場会社監査をする中小監査法人は、一応全てこの年次報告書をつくらなきゃいけないという、そういう理解でよろしいでしょうかということです。よろしくお願いします。
【南日本公認会計士協会副会長】
南です。今、ご質問のとおりであります。上場会社の監査を行う監査事務所全て、この年次報告書の公表をしていただくというふうに考えております。それについては個人事務所も同じだと考えております。
【小野メンバー】
分かりました。ありがとうございます。この年次報告書の内容を見ますと、最後に監査法人のガバナンス・コードの対応状況というのが添付されるようになりますので非常によろしいと思いますが、これが2024年以降、全ての監査法人が対応していただいた後は、日本公認会計士協会のほうで全監査法人の対応状況をまとめて対外公表等をしていただくと透明性が一層向上すると思います。
すみません、意見まで言わせていただきまして。以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、岡田メンバー、お願いします。
【岡田メンバー】
ありがとうございます。南さん、ご説明どうもありがとうございました。私からはコメントです。まず第1に、先ほど登録制度について、厳しく対応するというお話がありましたけれども、正直言って、どこまで厳しくできるのかという点については、私はあまり信用しておりません。信用してないというよりは、かなり難しい話じゃないかという気がしております。
品質管理を見て、全くできてない、品質管理担当者がいない、となればとんでもない話です。ある程度の人数がいて何かやっていればいいのか。また、不正が実際に起きた、不正を見逃したという場合、明らかに見逃した場合もあれば、例えば経営者による内部統制の無効化があった場合にはとても監査法人では分かりません。このような場合はどうやって判断していくのか。こういうことは大変難しい問題だと思います。信用してないと、ちょっと悪い言い方しましたけど、決してできないと言っているわけではなくて、かなり困難だろうと思います。
一方では市場参加者と言われている、外の目からの退場勧告とか、あるいは、もっと言えば、監査される企業の監査役等の人たち、この人たちが監査法人を選任するわけですから、この人たちがどう考えるか、こういう目も必要だと思います。正直なところ、私も監査役をやっておりましたが、中小監査法人を選任している上場会社の監査役等がどれだけ問題意識を持って選任しているか分かりませんが、やはりここは1つのきっかけとして、監査役等とのコミュニケーションをどんどんやっていただくといいのではないかと思います。監査役等が責任を持って選任するという体制ができれば理想的だと思います。
そういう意味では、ロードマップで示されていますように、施行規則の適用開始が2024年の7月だからそれまでにやろうというのは悠長な話であって、規則の適用時期に合わせるのは構わないと思いますが、それまでに、先ほどの監査品質マネジメントに関する年次報告書、これの原案を早急に作成して、監査役等とコミュニケーションを始める、監査役等が監査法人を選任する際の参考にどんどんしていってもらうという姿勢で臨んでいただきたいと思います。
一方では監査役のほうも、監査役協会を通じてだと思いますけれども、そういう意識を持ってもらうという活動をしなければいけないのではないかなというのがまず第1の感想であります。
それに若干関係しますけれども、ここで支援体制が書いてありましたけれども、監査品質と言うのですから、会計監査に限定した話だと思いますが、やはり監査品質とガバナンス・コードというのは表裏一体の関係にありますので、ガバナンス・コードの適用に関していろいろ相談に乗っていく、あるいは適用を支援していくことになれば、どうしても会計マターだけではなくて、ガバナンスの知識、あるいは経営の知見というのも必要になるのではないかという気がします。
そういう意味では、会計士協会と監査法人が会計の目だけで話しても新たな発想は出てこないと思われますので、この支援メンバーに、これは私からの提案ですけれども、既に退職しているけれども会社経営の知見がある人、あるいは監査役等の経験のある人を入れてはいかがかなと思います。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、弥永メンバー、お願いします。
【弥永メンバー】
ありがとうございます。ご説明ありがとうございました。私も石原メンバーや岡田メンバーがおっしゃっているように、今回の改革では、品質管理レビューと上場会社監査事務所登録制度の実効性が非常に重要だと思います。この点について、今日ご説明いただいた中では、ここがどのように改善されるか、どのように強化されるのかという具体的な内容をあまり十分に理解できなかったのですが、厳しい対応を日本公認会計士協会が行っていくということは簡単ではないのではないかと私も思います。
しかしながら、やはり品質管理レビューがしっかり行われて、その結果が監査役等にコミュニケーションされることによって、監査役等は、重要な不備ではないにしても、不備があるということを伝えられれば、それを無視すると申しますか、それに目をつぶるわけにもいかないと思います。そういう意味で、品質管理レビューの結果が監査役等にコミュニケーションされるという形で品質管理レビューがしっかり行われることはある程度は効果を持つと思うのです。そこで、ちょっとご質問したいと思いますのは、これまでの制度の中で、個人の公認会計士で上場会社を監査されている方に対する品質管理レビューは、これは監査法人と同じように3年に一遍同じようなレベルでなされていたのかという点です。判断の基準として、組織的な監査がきちんと行われる体制が整っているかどうかに関しては、個人の会計士についてはそこだけで判断することはなかなか難しいと思うのですが、その辺りはどのようにこれまでなされていたのか、そして今後どのようになされる可能性があるのかという点をお聞きしたい。
それから、2つ目として、今年の6月に公表された日本公認会計士協会の報告書、2021年度品質管理レビューの概要によると、改善状態を確認しようとして、品質管理レビューを行おうとしたところ、レビュー手続を拒否されてしまったというケースが1件あったとされているわけですけれども、事務所が協力しないというときに日本公認会計士協会はどのように対応していくのでしょうか。懲戒処分だけではなく、上場会社監査事務所登録制度の下では、協力しないこと自体だけで一発でアウトにしたってよいぐらいな気がするのですが、その辺りはどのようにお考えなのか。この2点について教えていただければと思います。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それほど大きな問題ではないかもしれませんが、すぐ回答が伺える話ですので、協会のほうで、茂木メンバーか南先生、お答えいただけますでしょうか。
1つは、個人事務所の担当者、個人事務所でやっている場合の品質管理レビューの状況及び今後の動向、2つ目が、6月公表された、レビューを拒否された場合ですか、その取扱い、よろしくお願いします。
【南日本公認会計士協会副会長】
まず1点目のところです。個人についても全く同じ水準で協会のレビューを行うということが原則になっていますし、実際そのように行っています。
組織的な監査の体制があるのかと言われますと、事務所内で完結はできないですけれども、委託をしながら審査をするとか、定期的検証をするとかということを機能として取り入れながらやっておりますので、トータルとしては、上場会社監査事務所として同一水準の品質管理レビューを受けて、それをクリアしているという状況だと理解しております。
【茂木メンバー】
2点目は、私からお答えいたします。茂木でございます。弥永先生、ご質問いただきましてありがとうございます。今お話しいただいたように、改善状況についてのレビューを拒否したという事案があったということでございます。レビュー手続を拒否した場合には、品質管理レビュー実施上の措置が辞退勧告ということになります。辞退勧告となるということでありますと、新しい上場会社監査事務所登録制度におきましては、登録の抹消の事由となるというようなことで考えております。
以上でございます。
【八田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、上田メンバー、お願いいたします。
【上田メンバー】
ご指名ありがとうございました。上田です。よろしくお願いいたします。私からは、コメント2点、質問1点申し上げさせてください。
まず、日本公認会計士協会様、ご説明をありがとうございました。監査法人の品質管理レビューは、繰り返しお伝えしていることではありますが、日本の金融市場のインフラである監査の品質確保という観点から大変重要な仕組みであって、これを担当される協会様のお役割、大変重要で、これからもっと強い自主規制機関としてのご指導力も期待しておるところです。
基本的なところとしては、中小監査法人であったとしても、上場会社監査というインフラを健全に確保するという観点からは、その品質というのは、大手、準大手と仮に形式的に対応が違ったとしても、実質的には劣ってはいけないと思っておりますので、そういう意味で、中小監査法人が単独では難しい局面でのサポートについてはぜひ協会を通じてご支援いただければと思います。
その上で2点、具体的にコメントさせてください。まず1点目、監査品質のマネジメントに関する年次報告書、基本的には、これから内容も色々ご検討されていくのだとは思うのですが、前回の議論でもあったようにボイラープレート化のご懸念もあるということですが、ただ、他方で必要な情報については必ず出していただけるようなテーブルを用意していただくとか、こういったところはご対応いただきたいと思います。
特に、先ほど別のメンバーからもご指摘ありましたけれども、今後、各法人が提出した年次報告書がそろってくるという中で、ぜひ日本公認会計士協会様におかれては、レビューをしていただいて、全体的なディスクロージャーの品質向上にはぜひ努めていただければと思います。
この年次報告書の基本となるものがガバナンス・コードでございますので、ガバナンス・コードの遵守状況についても、ぜひ分析やご評価をしていただいて、その実効性も高めることが必要なのかと思います。
第2点目が、ステークホルダーとの対話についてです。市場関係者から見た場合に、中小監査法人は本当に実態が見えにくいという問題がございまして、特定の中小監査法人が入っている場合には、それ自体がレピュテーション上のリスクにもなることもあります。これは中小監査法人ご自身にとっても、上場会社ご自身にとっても、そういうふうに見られてしまうおそれがあるというリスクになります。相手の顔が見えないことがリスクになるということはお互いにとって幸せなことではございませんので、資本市場、金融市場の関係者との対話というのは、ぜひ協会様の音頭で、できるだけ多くの監査法人が参加できるような形で運営をしていただければありがたいなと思います。
最後に、大変簡単な質問ですが、このように協会様のお役割が、大変重要になってくると思います。現状、恐らく準大手中心にご対応されておられるとは思いますが、今後これをほぼ全ての上場会社監査を担当する中小の監査法人対応ということになると、リソース等は大丈夫でしょうか。非財務情報の重要性も高まるなかで、より一層自主規制機関としてのリソースも必要になるのではないかと思うのですが、その辺りはいかがでございましょうか。ぜひ安心材料としてお聞かせいただけますと幸いです。
以上です。ありがとうございます。
【八田座長】
どうもありがとうございます。ただいまのご質問に関して、茂木メンバーないしは南先生、何かありますか。よろしくお願いします。
【南日本公認会計士協会副会長】
まず先ほど岡田メンバーも同じようなご質問をされたところで、いわゆる年次報告書についてですね。これについては、当然ボイラープレートになったら全く意味がありませんので、各事務所の特徴とか、他の事務所と比べて差別化できる点をしっかり主張していただいた上で、自発的・自律的に開示していただくというのが原則だと思っております。
それで、タイミングですが、2024年7月以降に正式に第1回目の年次報告書を提出すると考えておりますけれども、実際今回の施行規則で規定された履行義務の実態を踏まえて、品質管理レビューを実施しながら確認していく方針です。その中で、今回の年次報告書につきましては、ドライランをする期間を設けたいと思っておりまして、来年の1Qには、当該年次報告書作成のためのガイダンスを協会のほうから公表するようにしたいと思っています。その後、研修会とか説明会を開催しまして、中小監査事務所に対してなるべく早期に、2023年の4月頃をめどにドライランの形で当該年次報告書の作成に着手していただくよう促していきたいと考えております。
従前から実は透明性報告書という形で作成、公表していた中小監査事務所もあるのですけれども、そういった事務所を除けば今回初めての取組みになりますので、協会としても、実際の作成、公表の状況を見ながら、ガイダンスも徐々に充実させ、研修会の内容もレベルアップさせながら、2024年7月までに複数回にわたって指導するというふうに考えております。しっかりと中小監査事務所との意見交換、あるいはコミュニケーション、これを取りながら、意味のある内容になるように指導していきたいと思っています。
そして、あと協会レビューとの関連ですけれども、監査法人のガバナンス・コードの適用状況を含め、年次報告書に記載していただくということになるのですけれども、これが公表されていない場合は、当然に体制整備義務に違反することになると思いますし、たとえ公表されていたとしても、いわゆるコンプライ・オア・エクスプレインの状況が事務所の実態と著しく乖離していると認められる場合には、やはり体制整備の義務に違反しているものとして取り扱って、上場会社等監査人名簿からの登録の取消しの要否など、こういうことを判断していくことになると考えております。
そういう意味で、今回、監査法人のガバナンス・コードの導入、そして年次報告書の開示、これによって中小監査事務所の実態をしっかり把握した上で、品質管理レビューの中で対応していきたいと考えております。
品質管理レビューを通じて行う指導というのは、監査事務所の品質管理システムの不備が認められるとき、その不備を改善するための指導になります。
一方、監査法人のガバナンス・コードの適用状況につきましては、中小監査事務所の品質向上のための支援という観点から進めていくことが求められているように理解しておりますが、この点については、上場会社等監査人から当協会に提供された情報を横断的に分析して、監査法人の運営状況等を踏まえて、指導の質の向上、これが図られるものと、またつなげていくものと捉えて考えております。
そういう意味で、先ほど、各事務所の比較であるとか、そういった点もご要望がありましたが、そういったことも踏まえて検討させていただきたいと思っています。
あと、先ほど投資家との対話、市場との対話というのがありましたが、百数十ある事務所とどうやって対話していくかという話がありますが、色々工夫しながら対話の機会を持つように、またご協力をお願いするかと思うのですけれども、対話していただくような機会を持ちたいと考えておりますので、その際はよろしくお願いしたいと思っています。よろしくお願いします。
【八田座長】
ありがとうございます。もう一つご質問があったと思いますが、資料の4ページで、品質管理レビューの役割、期待が現状よりもさらに高まってくるだろうということになると思うのですが、その場合のリソース、体制の問題、これは協会として今後どのような施策ないしは基本的考え方をお持ちでしょうか。
茂木メンバー、お分かりであれば教えてください。
【茂木メンバー】
ありがとうございます。ご質問ありがとうございます。レビュー体制の人員体制のところでございますけれども、人員体制については充実を図っていきたいと考えております。
一方で、現在、皆様ご案内のとおり、監査の現場におけるリソースもしくは人員の確保ということも非常に重要なテーマになっております。こちらとも折り合いをつけながら、また、こちらの人員については、例えば、先ほどもコメントいただいたかもしれませんけれども、監査事務所をリタイアされた方々の活用等も含めて、体制の充実というものを図っていきたいと考えております。
以上でございます。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、お待たせしました。澤田メンバー、お願いします。
【澤田メンバー】
澤田です。私のほうからは質問というわけではないのですが、各メンバーの方から非常に厳しい中小監査法人に対するご意見も今回伺いましたので、メンバーの中で私が唯一中小監査法人を経営している者として、手短に私のほうからコメントさせていただきたいと思います。
中小監査法人の顔が見えないというご意見がすごく多いですけれども、現状、上場会社を監査することができる中小監査法人は116法人あるかと思いますが、私たち中小監査法人も大手監査法人や準大手監査法人と同様に、協会レビューないしCPAAOBの調査というものを受けております。私たち應和監査法人も、多分、皆様の中で会社の監査役をやられている方、やられていた方もいらっしゃるかと思うのですが、その結果等に関してきちっと、中小監査法人であっても、改善勧告を受ければ、改善勧告の内容や、改善の状況を報告する必要があります。改善勧告事項はほとんどない運営をこの10年以上やってきている弊法人の立場から1つ申し上げたいのは、中小監査法人といっても、確かに、昨今、雑誌などで出てくるような問題があるような事務所、ないし、最近、この数か月以内に処分勧告や行政処分を受けている監査法人もありますが、処分の状況を私も見ますと、あまりにもひどいというか、これはないんじゃないのというのが私の意見であります。
例えば、協会レビュー。自主規制の形式をとっていますが、協会レビューのほうで、我々は現状では指導ないし監督を受けている、モニタリングを受けているのですけれども、その結果を全然改善していないですとか、トップの姿勢としても軽視をしているだとか、実態は私も分かりません。処分勧告の文書を読む限り、あまりにもひどい運営をしている監査法人があるのは事実ですけれども、116全ての監査法人がそうかというと、私が経営している監査法人がそんなことをしたことはありませんし、そういうトップのビジョンとしてやったことはありません。
監査クライアントに対しても、丁寧に情報開示、ないし、これから監査をすることになるかもしれない営業であっても丁寧に事実を開示しているつもりです。前回の会議のときにもお話しさせていただいたのですが、今、このガバナンス・コードの見直しが、中小監査法人という角度から見直しが始まっているかとは思いますが、中小監査法人といっても様々な事務所の品質状況があるということを、我々中小監査法人の業界としても、より発信していかなければいけないのかなと考えております。
今後の法制度について日本公認会計士協会のほうに所属している立場から申し上げます。メンバーからも、「自主規制から法制度になって協会のほうでどういうふうに変わっていくのか」というご質問が前回もあり、茂木会長も南さんもおっしゃっていましたが、登録を抹消する権利を協会が持つことになったと思いますので、今後、この法制度ができていくことによって、協会レビューやCPAAOBの調査結果を受けて、ついてこられない監査法人に対しては指導しつつも、法的バックグラウンドがあるので、きちんと退場勧告していくことを期待しております。
以上になります。
【八田座長】
どうもありがとうございます。
私の個人的な感想ですけれども、今、澤田メンバーがおっしゃったように、確かに、もう誰もが気がついているのは、大手法人もそうですけれども、特に中堅・中小、小さいところの事務所の品質にあまりにも差があり過ぎる、あるいは、意識に差がある。したがって、顕在化してくるのは、CPAAOBなどが行った結果の処分勧告案に明示されてくるわけで、そのとき見て、そのひどさに愕然とするわけですよね。ほかはそんなことないですよという気持ちがあるのかもしれませんが、自主規制というのはそういうのを排除しなければいけない。
つまり、同品質の監査を確保すること、法律に触れるか触れないかはまた別の問題であって、社会からの信頼と期待に応えるためには、同品質の監査業務がなされているということを訴える必要が協会にはあるのだろうと思います。そこにどうやってメスを入れるかということが実は一番大事なのであって、そこがどのようにこの今のリソースできるかということが、私は期待も大きいのですけれども、不安も抱えているわけです。その辺のところ、茂木メンバー、もう一回お伺いしますが、今後の課題でしょうけれども、この品質管理レビューの38人体制、はっきり申し上げて、これまでの現状のレビュー対応から見たときに、その数倍の負荷がかかってくる可能性がありますので、それはどうやって応えていくでしょうか。
【茂木メンバー】
八田座長、ありがとうございます。現状、数倍ということが必要かというところについては、私はまだそこまでの結論に至っていません。これまで以上の体制の充実というのが必要だというところについては、ご認識のとおりだと思っています。
そして、そこに向けては、先ほど申し上げましたように、より多くの人材、現在、それだけの能力がありながら活躍し切れていない方々等の登用等を含めて、この部分についての充実を図っていきたいと考えております。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、栗原メンバー、お願いします。
【栗原メンバー】
ありがとうございます。私、途中から参加させていただきましたので、皆様のほうで既になされたご質問等と重なっていたら申し訳ございません。その場合はおっしゃってください。
まず、協会がやっている品質管理レビューの対象範囲ですが、先ほどのご説明で、品質管理のマネジメントに関する年次報告書、ここは登録する法人については全て作成して開示をすることが必須になるということですが、8ページのところに書かれている報告書の構成の6つの基盤の中で、品質管理基盤、その結果として出てくる品質管理、そこの部分だけをレビューされているというように考えていいのでしょうか。
逆に言いますと、ガバナンス・コードの中で、組織ガバナンス体制、あるいはIT、財務、こういったところについては協会は見ていない、したがって、年次報告書の中の一部分だけ、品質管理の部分だけを協会はエンドースしていると考えて良いのでしょうか。これが1つ目の質問です。
それから、2点目はコメントですけれども、リソースが今以上に充実している必要があると思いますが、対象法人数に比例するというよりはむしろ、中小・中堅の法人が増えることによって、1法人に係るレビューは増す可能性もあるのではないかと思います。従って、相当な陣容が必要だろうと思いますし、先ほどのITなどまで見ていくとすると、様々なリソースが必要になるのではないかと思われます。
それから、3点目は、先ほど他のメンバーの方からもありましたが、これは中小監査法人と協会だけの問題ではなく、レビューの結果を受けた監査法人を、企業が正しくレビュー結果を受け止める、理解することが重要になると思います。企業側の見る目、評価する目をより向上させるために、協会のほうでは、監査法人に対してだけではなく、企業に対してもレビュー結果が理解できるようサポートしていくことが重要と思います。企業が理解した上で監査法人を選択するようになれば、全体として高まるのではないかと思いますので、協会のほうでは、ぜひ、企業に対してもレビューを正しく理解するということを発信していただきたいと思います。
【八田座長】
どうもありがとうございます。
それでは、多くのご質問、ご意見等をいただき、日本公認会計士協会のほうでご説明いただいた内容について重点的に議論が進んでまいりました。そこで、最初のほうで、事務局からご説明いただきましたこのコードの見直しに関しての方向性、今度は、これにつきましてご意見、ご質問等いただければと思います。先ほど、冒頭のご発言の中で、石原メンバーがおありかと思いますが、石原メンバー、いかがでしょうか。
【石原メンバー】
石原です。それでは、今の件に絡んだことも含めて申し上げたいと思います。今回の検討は、事務局資料のコードの見直しの方向性①に記載されていますが、上場企業等の監査を担う監査法人における組織的な運営の姿を念頭に行っていくということでありまして、これによって監査の品質を高める、あるいは、問題事例の発生を抑止するということに向けての見直しということですので、今まで各メンバーの皆様からも議論があったとおり、今まで行ってきた自主規制による協会の品質管理レビュー、この品質管理レビュー自体は今後も残るわけですが、それを踏まえつつ、品質管理レビューを活用しつつ、新たな法的裏づけのある登録制度になっていくわけです。これによって何がどう変わって、どこが見直されることによって登録制度がより充実した形になるのかということについて、分かりやすく整理をしていただくことが良いのではないのかなと思っております。
自主規制から法的裏づけのあるものになるということは非常に重たい変化だと思います。自主規制を十分活かしながらやっていくという点については、もともとの議論の中でも少し分かりにくいところではあったので、本当に何がどう変わっていくのか是非整理していただければと思います。座長と事務局を含めてご相談いただければと思います。
事務局のほうからご説明いただいたガバナンス・コードの見直しの方向性に関してですが、これについては、私は「コードの見直しの方向性(案)」と書かれている内容について、基本的に全く異存はないということでありまして、その上で若干補足的なコメントをさせていただきます。見直しの方向性の②のところで、コードの位置づけ・記載内容の右側の2つ目の黒丸のところ、法令で定められている事項については必要最小限にとどめるとあり、その下の矢羽根のところで、法令で開示が義務づけられているが、「原則5」において、監査法人が説明すべき項目として明記してはどうかということで、私はこれに賛成です。
法令で定めてあるからといって記載しなくていいということではなくて、やはり、それを見て品質管理の全体像が見えるという意味では、ぜひ原則5に書いていただいて、それをきちんと開示していただくことが必要と思います。
それから、もう一点は、確認も含めてですが、④の独立第三者の選任ということで、監督・評価機能を担う独立第三者に期待する要件を開示することを原則3にとあるわけですが、この「要件」という言葉、確認させていただきますと、今現在のコード原則3の考え方のところに、「例えば、企業における組織的な運営の経験や資本市場の参加者としての視点などを有する、外部の第三者の知見を活用すべきである」とあります。これは現在のコードを策定する際の議論において、第三者の視点を入れることが非常に重要ということで記載されたと記憶しています。
現在は「例えば」と書いてあるわけですが、ここで言っている「要件」というのは、企業における経験であるとか、資本市場における経験であるとか、そういったことについて例示ではなくてもう少し要件的に書いていくという、そういう方向性だということでしょうか。その2点、意見と確認の質問です。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。すみません。先ほど、栗原メンバーのほうから1つご質問をいただいていまして、報告書の中身のところですけれども、協会のほうでご説明いただきたいと思いますが、この6つの基盤の中で、品質管理のレビューで、そこから外れる内容についてはどう対応するのかということであったかと思いますが、栗原メンバー、もう一回確認させてください。それでよろしいでしょうか。
【栗原メンバー】
ありがとうございます。協会がやっていらっしゃる品質管理レビューは、各法人が出します年次報告書の中の6つの基盤、いずれも関連はしてはいますけれども、このうち品質管理という点を主に見ていらっしゃるということであって、例えば、ITですとか財務ですとかについては、踏み込んでレビュー対象にはしていないと考えてよろしいんでしょうか。
【八田座長】
南先生、いかがでしょうか。
【南日本公認会計士協会副会長】
南です。まだ、年次報告書については、これから公表をして、これがレビュー対象になるということですので、どこまでレビューをするかということについては、これからの検討となります。
先ほど申しましたように、1の(1)のところで、理事長のメッセージとして、監査品質に向けてどのように取り組んでいるのか、どのような意識でやっているのかということを宣誓していただきます。そこに事務所としての特徴であるとか、他事務所と比べて差別化している点とかを主張していただいて、それに沿って6つの基盤を具体的にどのように強化しているのかということを説明していただきます。
監査品質という観点からいきますと、監査対象になっている被監査会社の規模であるとか複雑性であるとか事業内容であるとか等によって、当然、人的リソースをどの程度を確保すべきかとか、IT化をどこまで監査の中で行っていくべきかということが決まってまいりますので、この(1)の品質管理基盤だけじゃなくて、それぞれ6つの基盤が相まって監査品質に関わっていると思います。
そういう意味で、レビューでは総合的に判断するのだというように考えておりますけれども、今後、これから年次報告書のガイダンスを出して、具体的に中身が固まってきますと、レビューをどこまで行っていくのかということについては検討させていただきたいと思っております。
【八田座長】
どうもありがとうございます。大変失礼いたしました。
それでは、石原メンバーのご質問にもありました内容について戻らせていただきます。ご質問がありましたが、最初のほうの再三繰り返しの議論かもしれませんが、今般、上場会社監査登録制度が法制化され、それを踏まえた上で、日本公認会計士協会がさらなる自主規制の発揮ということで、施策を講じようとしているわけですが、どういう方向性、どういう整理ができるのかということで先ほども伺いましたが、これについて、突然ですが、金融庁のほうはどういうふうな認識をお持ちなのか、もし伺えれば、こんなようなイメージなのかというのがもしあれば教えていただきたいのですが。齊藤さん、お願いします。
【齊藤開示業務室長】
ありがとうございます。今回、改めて登録制度が法定化されるということで、協会様のほうでも、それに基づいて色々な取組みを強化されていくということであります。取組みを強化していくということについては、もちろん今までも、登録制度の枠組みの中でレビューというところをやられてきているわけですけれども、法定化していくと規律づけというところが重要になってきますので、そこはどういうふうに規律づけをしていくのかというところです。ここは先ほどのレビュー体制も必要ですというのは、ここは必要な対応になってくると思います。そうでないと、今まで以上に規律づけしていくというのは難しいというところはあろうかと思います。
ただ、一方で、規律づけしてくださいと言うだけではなくて、今回、どういう観点で規律づけをしていただく必要があるのかということで、また、どういうふうに中小監査法人様の体制を整備する必要があるのかというところをより明確化させていただいた上で、規律づけ、エンフォースメントしていただくというところだと思いますので、そういう意味で金融庁としても今回コードを見直させていただいて、こういうことをやっていただきたいというのを示させていただいた上で、そういうのも参考にしながら情報開示もしていただいた上で、レビューのほうもしっかりやっていただくという、そういうふうなことを考えているというところでございます。
【八田座長】
どうもありがとうございます。突然振りまして申し訳ないです。
今のご回答、私も日頃考えているのと全く同じでありまして、文献的にも、自主規制というものの要件の1つに、厳格な懲戒処分の制度が機能しているかどうかというのがあると言われています。そうしますと、法律や規則に直ちに触れるわけではないけれども、やはり公共性の高い独占業務を担っている団体として、このような事務所の対応あるいは業務内容では好ましくないというのであれば、その場合に、厳格な規制対応、処分が求められるのではないかなという気がするのです。したがって、そこでのJICPAの役割は、非常に大きなものが私は今後求められてくるだろうという気がします。これは私の個人的な見解ですので、参考にしていただければと思います。
もう一つ、この独立の第三者に対して期待する要件というところで、現行の原則のところで「例えば」とありますが、どういう方たちをイメージしているのか。もし追加的でご発言があれば、協会のほうからご説明いただけますでしょうか。茂木メンバーでも南先生でも構いませんが。
【南日本公認会計士協会副会長】
ありがとうございます。独立の第三者という点は、今、中小監査事務所になかなか監督・監視機構を具体的に持つのは難しいのではないかなと考えておりまして、機能を持てばいいということで今考えてはいるのですけれども、ではどうやって機能を持つのかという話ですが、パートナー会議、社員会であるとかそのような会議体のところに独立第三者の方に入っていただいて、その議論の内容を見て、アドバイスをいただくというようなことも1つの方策かなと思います。常置的な機構、機関を設けるのではなくて、そのようなことが可能かなと考えております。
要件そのものについては今後の検討課題かと思っております。
【八田座長】
どうもありがとうございます。茂木メンバー、何か追加でご発言ありますでしょうか。
【茂木メンバー】
ありがとうございます。今、南のほうからご説明申し上げましたけれども、前回のところの議論でもお話しいただいておりますように、この第三者の視点というのをどう生かしていくか、我々の業務また組織運営に反映していくかというところが、一番重要な目的であると認識しています。それを生かすために、今、南のほうでも申し上げましたように、どのようなやり方が中小監査事務所等も含めた実態により適切にマッチするのかというような点から、この点は考えていく必要があるだろうというふうに考えています。
その中で、特別な機関を設置するということももちろん1つの選択肢でありますけれども、それを設置せずに、経営監視機能、そういった第三者の目線を反映するための機能といったものを生かしていくことが重要だろうと思っています。
その上で、今、石原メンバーからもお話ありましたように、第三者に期待する要件というこの「要件」という表現には、「要件」という言い方が適切なのかというところについては、若干引っかかるところがあります。第三者にどのような役割を期待しているか、それをどのようにこの第三者を生かしてくれるか、そういったことを考えていくことが必要ではないかと考えております。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。茂木メンバー、ほかにご発言のご連絡が来ていますが、よろしいでしょうか。
【茂木メンバー】
すみません。先ほどの南のフォローを少しさせていただこうかと思います。
【八田座長】
どうもありがとうございます。
【茂木メンバー】
品質管理レビューの対象範囲については、先ほど南が申し上げましたように、6項目の中で、品質管理制度に対してどのような影響を与えるかという切り口になるかと思います。しかし、当然のことながら、今日、ここでも議論していただいていますけれども、ガバナンス等についても品質管理に影響を与える部分が当然ありますので、そういった点については対象になってくるというふうに思っております。
あともう一点、お話しいただきましたレビューの結果を受けた被監査会社の対応というところでございますけれども、現在においても、監査基準委員会報告書の規定の中で、私ども品質管理レビューの結果、もしくは、金融庁CPAAOBの検査結果については、その概要を被監査会社の監査役にお伝えするというような対応を取っているところでございます。
以上、ご報告でございます。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、弥永メンバー、お願いします。
【弥永メンバー】
ありがとうございます。1点だけです。
このコードの見直しの方向性案には、私も基本的に、非常によくできていて賛成なのです。けれども、スライド⑦のところですが、このガバナンスの充実というところで、見直しの方向性として、各監査法人が中長期的に目指す姿やその方向性を示すKPIの開示を求めることを明記することとするとされております。これは監査法人を念頭に置けば、もっともだと思うのですけれども、これを個人の会計士に読み替えるというのは結構難しそうな気もいたしまして、読み替えるというだけではなくて、もし可能であれば、前回の主な議論を踏まえていただいて、各監査事務所における会計監査の品質向上に向けた取組みを評価できるような、そのような情報を監査法人だけではなく共同事務所あるいは個人の会計士の方々に開示していただくことが期待されているということが分かるようにぜひ書いていただくと、このガバナンスの充実あるいは品質管理システムの辺りについてもよろしいのではないかと思うのです。そこをもし可能であれば工夫していただきたいなと思います。
以上です。よろしくお願いいたします。
【八田座長】
ありがとうございます。それでは、岡田メンバー、お願いします。
【岡田メンバー】
岡田です。ありがとうございます。私もこのコードの見直しの方向性については、ほとんど異論はございません。
細かいところですが、②のところの上、適用方法のところに、「形だけのコンプライよりもコンプライしない理由や」云々と書いてあるわけですが、「コンプライしない合理的な理由や」としてはどうかと思います。さらに、「必要に応じて将来的なコンプライの方向性を十分かつ具体的に説明することが望ましい」ということに加えて、「実質的に同じ効果を持つ代替的方法で対応している旨の説明があることが望ましい」というようなことを加えたらどうかと思います。これはちょっと冗長になってしまいますけれども、他の部分で言っていることもこういうことなので、そうしてはいかがかと思います。
それから、ITですけれども、⑧ですが、ITテクノロジーについて、ここに書いてある内容はそのとおりで、これで十分と思いますが、私はIT基盤の実装化というのは、いかに効率的に監査業務がされているかということを見る上で大変重要なマターだと思います。また、監査フィーの合理性を見る上でも大変参考になります。そして、不正発見のためのデータアナリティクスの活用実績など、これは透明性報告書になるのかもしれませんが、これも示していただけるといいと思います。
それと、サイバーセキュリティー対策はもちろん重要ですけれども、事務所における顧客情報の管理、例えば、リモートワーク時の情報の管理なども透明性報告書に明示していただくといいと思いますので、どこまで書き込むかはありますけれども、その辺が私が気になっているところであります。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、澤田メンバー、お願いします。
【澤田メンバー】
澤田です。事務局の資料について発言をさせてください。まず、大きなコードの見直しの方向性については私も賛成です。「監査の品質に大規模も中小もない。上場会社の監査の担い手としては、均一的な監査品質を維持してみんなで向上していく。」というコンセプトは当然私も考えているところであります。ですが、今回の有識者会議の目的が監査法人のガバナンス・コードの見直しということを考え、いま一度、平成28年の会計監査の在り方懇談会の提言や当時の議事録も拝見し、気に掛かる点として大手上場企業等の監査の担い手としての大手監査法人の組織の複雑化・大規模化に対応し切れていないことが監査品質確保に問題を生じさせているというくだりがいくつか主要な部分で見られます。
ガバナンス・コードの設定当時に私は検討会議に出ていなかったので、どういう議論がされてこのガバナンス・コードができたのかが議事録でしかうかがえないのですが、ガバナンス・コードの文書を見ていると、例えば、原則2の考え方のところしかり、前文のところしかり、大規模、大手の企業を監査している大手の監査法人が自分たちの組織の複雑化・大規模化に対応し切れていないことが監査品質確保の問題視をさせているがために、このガバナンス・コードを策定されているように見えました。そこから今回のコンセプトとして、監査の担い手としての中小監査法人の監査品質は大丈夫なのか、ガバナンス・コードは中小監査法人であっても適用させるのは当たり前だろうという考え方に変化しています。
私の監査法人の規模感は大手監査法人の100分の1に満たない規模ですけれども、それでも、組織体制をつくっておいたほうが、僕は経営者として、トップとして安心感があるということで主体的に取り組んでいるところです。何回も申し上げておりますけれども、116の中小監査法人がある中で様々な規模の中小監査法人があります。ガバナンス・コードの原則のところに、監査の品質を維持していくためになぜこのコードが必要なのか、監査法人の組織が大規模化・複雑化しておらず、中小規模でシンプルであっても、監査の品質の維持にとって、この原則がプリンシパルとして絶対必要なんだよということをもう少し分かりやすく、中小監査法人用に作り直す必要はないと思っていますが、各原則の作り直しに当たって、そこを前提にカスタマイズをどのようにされるのかなというのが見直しの中で疑問に思っております。
その中で、特に3番のところですね。監査の品質向上という目的では、我々でも外部からの通報制度というものがありますが、コンプライ・オア・エクスプレインとはいっても、やはりこの3番のところが、中小監査法人をはじめとする全ての監査法人に監督・評価・支援が必要なのかについて懸念があります。ここは支援といっても気づきを与えるという観点でお話ししますが、監査法人を経営していく中で、外部の意見を聞き「こういう考えがあったんだな」とか、我々社員、当事者メンバー以外の者も入ることで緊張感を持ったりですとか、我々の考えが間違っている場合に物申してくれたりすると期待している部分もあります。しかし、経営というとあまりにも幅が広いため、この原則3番のところを中小監査法人という、明らかに大規模な監査法人と違い組織が複雑でない規模感のところに適用するに当たって、コードの目的を明記していただくようにしていただいたほうがいいと考えます。
その上でのプリンシパルですので、それを各監査法人がどのようにして適用していったり簡便的な適用をしたりしていくのかというのは、主体性でやっていきたいと思っておりますが、そこの3番のところについては、より目的を明確にしていっていただいたほうが業界側としてはいいのではないかと感じております。
以上になります。
【八田座長】
どうもありがとうございます。
長々とご説明する時間もないですけれども、前回の在り方懇に参加していた一メンバーとして、私の立場で少しだけご説明させていただきますが、あのときに確かに大手監査法人、つまり、上場会社監査を担当している大手監査法人をターゲットにしたガバナンス・コードの策定に至ったわけですけれども、本来であれば、別に大中小関係なく適用されなくてはならない。ただ、あのときの歴史的背景から見ると、大手監査法人においてさえ、十分な監査が行われていなかった不正な事案が露見してしまった。
したがって、日本の監査制度を牽引していただくためには、まずもって率先垂範で大法人が襟を正してほしいと。しかし、中小でもちゃんとそれに遵守できるところはやってくださいねという流れで来たわけであって、別に中小を無視したわけでもなければ軽視したわけでも何でもないということです。ただ、中小法人にとっては、時期尚早であるという認識がありました。全面的にこのようなガバナンス・コードが導入されてくることによって皆さん方の負担とか懸念があまりにも大きいということで、軟着陸する意味で、大手のほうに特化した議論になったのではないかというふうな感想を持っております。ちょっと余分なことをご説明いたしました。
それでは、小野メンバー、お願いいたします。
【小野メンバー】
ありがとうございます。小野です。私も今回のガバナンス・コードの見直しの事務局による方向案につきましては、基本的に賛成です。
その上で、2点ばかり、細かいことになって恐縮ですけれどもコメントさせていただきたいのですが、3ページの右下のボックスのところの「上場企業等の監査を担う監査法人には、より一層高い組織としての監査の品質の確保が求められることを『原則1』の考え方に明記する」というここのくだりですけれども、この点については全く異論はないのですが、この点は既に現行のコードの原則1の考え方の中に記載されていますので、それに加えて、上場企業等の監査を担う監査法人においては、その規模に関わらず一定の監査品質の確保が必要というような、そういうくだりの内容を少し追加してもらうことをご検討いただけないかというのが1点目のコメントです。
それから、2点目は、次のページの右上のボックスの3つ目の黒丸ですけれども、特別な機関を設置せずに経営機能や監督・評価機能を確保している場合は、その合理性を説明することを原則に明記することとするということですけれども、この点に関しては、中小監査法人で監督・評価機関を設けずに監督・評価機能を確保するためには、それなりに創意工夫が必要じゃないかというふうに思うのですが、実務的にはなかなか難しいのではないかというふうに思います。
ただ、実際そういう機能を持たせるためにどうするかということで色々考えられますから、それはそれで尊重すればいいのですが、監査法人では、社員会とかあるいは社員総会が最高意思決定機関になるわけですけれども、そこに社員以外の独立第三者に、例えば、監事になってもらって、監督・評価機能を持ってもらうというようなこともあり得るのではないかというふうに思います。
これは昔私がおりました、大分昔ですけれども、大手の監査法人の中でも、経営会議の中に監事が何人かいるのですけれども、その中に第三者の社外監事を設けたというような例もありますので、そこら辺は、仮にそういう場合も認め得るとしたら、例として挙げてもらうのもいいのではないかなというふうに思った次第です。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、上田メンバー、お願いいたします。
【上田メンバー】
ありがとうございました。まず、ご説明と資料をありがとうございました。私も皆様と同様に方向性について賛同しております。特に実効性確保という観点から、中小監査法人においては大手と異なって形式的な対応が難しいということは十分分かりますけれども、他方で、実質面ではこれが劣っているようなことがあってはならないと思っております。仮に実質の前提として形式面あるいは組織的な対応が必要であれば、それも1つ検討するべきものであろうと思います。
以上、そういう前提を踏まえて、上場会社を担当する監査法人、監査事務所のガバナンスという観点について、実効性確保という視点から、資料に沿って2点ほどコメントさせてください。
まず、第1点目、方向性案の2ページ、②になります。コンプライ・オア・エクスプレインの部分です。ここは、コンプライ・オア・エクスプレインに加えて、エクスプレインの場合にオルタナティブ、すなわち代替手段の説明まで行うことを求めてはいかがかと考えるものでございます。つまり、なぜエクスプレインなのか、遵守しないのかという理由だけではなくて、実態に応じてこういう違った手法で目的を達成していますという説明が必要ではないでしょうか。特にこれは中小監査法人の場合、形式対応が難しい場合には、この代替手段というのは大変重要になってくると思います。
というのが、このコンプライ・オア・エクスプレインというのは、外部のステークホルダーからのモニタリング評価がある場合には、大変よく機能します。例えば、上場会社の場合には、投資家とか株主、あるいは、社会の目にさらされていますので、コンプライ・オア・エクスプレインに基づいて説明や対応をしっかりしないと、外部のステークホルダーからしっかりと監督されてしまうわけです。
ところが、監査法人の場合には、こういうステークボルダーというのが大変少ない環境にあるようですので、ぜひこのエクスプレインに加えて、代替手段の説明というところまで書き込んでいただけるとありがたいと思います。
ただしですが、まず、その大前提として、コンプライ・オア・エクスプレインについては、ガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードで既に金融庁として公表されて、日本の政府として公表されておられる定義がありますので、基本的にこれは同じものがあるというのがよろしいかと思います。コードによって定義が違うのも混乱するだけですので。その上で、監査法人については、特にそういう点が必要なのではないかと思った次第です。
次に、④のところで、独立第三者に関する部分についてです。独立第三者に期待する要件を開示というふうに書いてございますけれども、ここについては、これはベストプラクティスとしての独立性基準のようなものをコードで記述していくのが望ましいのではないかと思いました。
その上で、各監査法人、監査事務所におかれては、こういった独立第三者について、独立性についての説明、その役割の説明、どういった立場でモニタリング等に関与してもらうのか、それが形骸化せずに反映させる仕組みはどうなっているかといったところの開示・説明することが求められるのではないかなと思った次第です。
以上です。ありがとうございました。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、茂木メンバー、お願いいたします。
【茂木メンバー】
ありがとうございます。茂木でございます。今お話をいただいておりますように、監査事務所の組織的な運営を確保していくためにこのガバナンス・コードの見直しを行うという点について、賛同しております。その前提の下で、1点の確認と全般的な事項について、2点発言させていただければと思っております。
全てこれは今後コードの文書化に当たってご検討いただければと考えております。
まず、1点目、確認でございます。1ページ目のところで確認をさせていただければと思いますけれども、この参考のところで書いてある制度部会報告のところで、若干この制度部会報告で書かれている文言から一部はしょられている部分があるのではないかと私は感じています。
例えば、日本公認会計士協会において、監査法人への移行に向けた取組みを計画的に進めるべきであるというような記載がありますけれども、監査法人への移行を進めるべきという形の記載ではなかったのではないかと見ております。これはもしかすると私の見落としかもしれないので、確認をしていただいて、元の文章に合わせてご対応を検討いただければと思っております。
それから、全般的な事項について2点発言させていただければと思いますけれども、1点目は、コンプライ・オア・エクスプレインの徹底ということでございます。ガバナンス・コードの内容につきましては、監査事務所の品質に関する健全な理念を反映できるようにするべきだと考えています。エクスプレインについては、監査事務所がそのような体制を選択する合理的な理由を記載するものであって、市場関係者に当然納得感のあるものでなければならないと考えています。形式的なコンプライよりも意味がある場合も多く、また、監査事務所が情報を開示して、それを市場関係者が見て監査法人を選択するというようなことを通じても、持続的な監査品質の向上を目指していくことができるのではないかと思っています。
また、業界の活性化、有望な人材を引きつける、今後、この監査の現場で多くの人に活躍してもらうためにも、形式的な参入障壁になってしまうようなものについては、高過ぎないものとすることが必要ではないかと考えております。
2点目は、監査品質の向上につなげるという目的の徹底と、その目的との関連性の明確化ということでございます。グローバルネットワークとの関係について言及されているところでございますけれども、監査品質に係る事項を中心に開示していくべきものであるという点については、そのとおりだというふうに思っております。
一方で、これは民間企業のガバナンス・コード、開示でも同じことでございますけれども、競争上の秘密に当たる情報、契約上の守秘が求められる情報というようなことも考えられますので、開示することによる公益と民間企業の事業上の秘密、こういったバランスを取ることが重要だと考えております。この点につきましては、2015年にIOSCOから、「公開企業を監査する事務所の透明性」というものが公表されておりまして、その報告書の内容も参考にして、具体的な開示項目を検討いただいたらいいのではないかと考えております。
先ほど、KPIということが触れられております。その趣旨から、今まで申し上げてきた監査品質の向上という目的からすると、個人的には、AQIというほうがしっくり来るのではないかと感じているところもございまして、この点についても、品質に関する部分であるということを明確化していただく必要があるかと感じております。
すみません、長くなりました。私からは以上でございます。
【八田座長】
どうもありがとうございます。最後の言葉の話ですけれども、確かに、PCAOBはAQIをベースに議論されていますので、そちらのほうがしっくり来るのではないかと私も思います。
それでは、栗原メンバー、お願いします。
【栗原メンバー】
ありがとうございます。コードの見直しの方向性につきましては、全般的に私も違和感はございません。特にコンプライする場合でもエクスプレインする場合でも、真に実質を伴っているのかどうかを説明するというところは大事ではないかと思います。それから、中小監査法人の受入れに馴染む工夫のところで、特別な機関を設けないとしても、代替的方法によってきちっとその機能が確保されていることを説明することも重要だと思います。そういった趣旨でコードの見直しの方向性が書かれていることについては賛成いたします。
2点コメントですけれども、その下にあります独立第三者の選任というところですが、独立第三者に期待する要件を開示するとありますが、独立第三者がどういう場合に独立第三者と言えるのかという第三者自体の要件についても、ある程度目線を合わせたほうがいいのではないかと思いますので、例示をするのか、定義をする事を検討いただければと思います。それが1点です。
それから、2点目に、8ページのところで、ITテクノロジーがあります。先ほど協会はこのIT基盤をどの程度見るのでしょうかという質問をさせていただいたのですが、大手の監査法人と中堅・中小の監査法人で様々なリソースの違いがありますが、IT基盤の差も非常に大きいのではないかと思います。色々な仕組みで代替できる、先ほどの独立性の組織的なカバーができるようなところと、一方で、ITなどの場合はそういう代替がなかなか難しいと思いますので、そこについて基準を満たしていくことは、かなり中小・中堅法人にとってハードルが高いのではないかと思うのです。
ですから、場合によっては、こここそ協会のサポートですとか、それから、IT基盤を何らかの形で共同化していく、あるいは、外部委託によりクリアしていくようなことですとか、例えばですが、協会が整備したり、あるいは、推奨するような基盤を共同利用していくような、そういったサポートもあって良いのではないかと思います。ここは切実な問題ですので、サポートを得ながらIT基盤をきちっと整えていくことが、このコードを守っていくために重要ではないかなと思います。
【八田座長】
よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。
座長ですので、あまり個人的な意見は差し控えるべきだと思いますが、事務局ともこの見直しの方向性について、一、二回事前のご相談もさせていただいております。その中で、私が前回の検討会、そして、今回もそうですけれども、一番気になるところが、この4ページのところの中小監査法人の受入れに馴染む工夫というところでの例の監督・評価機構の設置の有無、並びにその機能の重視というところです。どなたかも外の目は絶対不可避的なもので避けられないということで、何がしか工夫が要るのではないかというときに、自主規制の一環として考えるのであれば、1つヒントになるのが、少し古いですけれども、1970年代後半のアメリカ公認会計士協会でピアレビューが始まったときに、その監視モニタリング機構としてPOBというのが組成された。Public Oversight Board(公共監視審査会)です。
これは残念ながら、21世紀初頭のエンロン事件、ワールドコム事件等を踏まえて非営利組織の行政機関のPCAOBに生まれ変わるわけですけれども、このPOB的なものが日本公認会計士協会の主導でもし設置されるのであれば、中小監査法人をそこでモニタリングないしは評価を受けることができるのではないかなと考えています。こういう機関の設置というのはヒントとしてあるのかなということを申し上げましたけれども、特にそういった外出し的な議論というのは全く触れられていませんので、これは運用の部分で協会さんのほうでご議論されるのかもしれませんけれども、1つヒントとしてご提案しておきたいと思います。
時間が迫ってまいりましたが、あと一、二分、どうしてもご発言というご希望があれば伺いますが。よろしいでしょうか。茂木メンバー、私のこのアイデアは駄目でしょうか。
【茂木メンバー】
八田座長、ありがとうございます。ご意見は検討させていただいております。もう少々お時間をいただければと思います。
【八田座長】
ありがとうございます。
それでは、特にないようでしたら、本日はこれで終わらせていただきますが、ほかにもご意見、ご質問等がございましたら、事務局のほうにお問合せいただきたいと思います。
すいません。ごめんなさい。チャットのほうで。石原メンバー、失礼いたしました。ご発言がありますので、よろしくお願いします。
【石原メンバー】
ありがとうございます。何度も申し上げて、しつこいようで申し訳ないですけれども、今回の法制化は大きな変化だと思っています。今までは、協会の品質管理レビューを通じた自主規制であり、この品質管理レビューというのは、品質のところが重点であったと理解していますが、一方で、これまでの監査法人のガバナンス・コードの対象は大法人に基本的には限定されていたわけですから、それはそれで大法人には受け入れられていたということですが、今後は、コードが、見直しの方向性に記載のとおり、変わっていく、追加されていく、考え方が示されていくということの中で、特に中小監査法人がこれを受け入れることが上場企業の監査をする前提条件になっていく。そのことを日本公認会計士協会がレビューしていくことになります。
そのときには、何度も議論になっていますけれども、品質だけの問題ではなくて、体制等、今までもそういうこともレビューの中で検討されていたのかどうかというのは必ずしも分かっていませんが、少なくとも品質管理に問題がなければいいということではなくて、リスクを抑制することも含めて体制が整備されているということ、それから、第三者性の問題も含めて、そういう代替の方法も含めて監督機能が発揮されているということ、それから、当然、情報開示がなされているということ、こういったことが今後は、品質レビューという名称で適切なのかどうか分かりませんが、これまでのレビューの仕組みを、より大きくしていくということの中で担保されていることを協会として責任を持って見ていくわけです。ですので、今までの品質管理レビューでは不十分ではないのかと思っているわけです。
したがって、今後どうレビューを変えていくのかということについて、ぜひご説明をいただきたいと思っております。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございました。この件に関しましては、次回以降、必要があればまたご発言いただきたいと思います。進行の不手際がございまして、失礼いたしました。
本日いただきましたご意見も踏まえ、事務局とも相談いたしまして、本検討会を運営してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。なお、次回以降につきましては、事務局とも相談し、これまでのご意見を踏まえ、監査法人のガバナンス・コードの改訂案をお示しできればと思います。
では、最後に、事務局から連絡等がございましたらお願いします。
【齊藤開示業務室長】
ありがとうございます。次回の有識者検討会の日程でございますけれども、皆様のご都合を踏まえた上で、後日、事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
【八田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。大変ありがとうございました。
定刻になりましたので、監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会第7回会合を開催いたします。皆様、ご多忙のところ、ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の会議でございますが、運営要領第2条第2項にのっとり、オンライン開催とさせていただきます。
本日は、日本公認会計士協会によるプレゼンテーションを予定しておりますので、南成人様にご出席いただいております。
それでは、まず会議の公開についてお諮りいたします。運営要領第5条第1項にのっとり、本日の会議について公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
ご了解いただきましたので、本日の会議の模様はウェブ上でライブ中継させていただきます。
なお、非公開でのご発言をご希望される場合には、あらかじめその旨を申し出ていただければ、その間はライブ中継を中断させていただきますので、よろしくお願いいたします。
また、会議の議事録を作成し、金融庁のウェブサイトで公開させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
それでは、事務局よりオンライン会議の開催に当たっての留意事項をお知らせいたします。
【齊藤開示業務室長】
事務局の企業開示課開示業務室の齊藤でございます。オンライン開催に関して2点、注意事項がございます。
まず、ご発言されない間は、恐縮ですが、マイクをミュートの設定にしていただきますようにお願いいたします。ご発言されるときにはマイクをオンにして、ミュート解除でご発言していただき、発言が終わられましたらまたミュートにしていただくということでお願いいたします。
また、支障のない範囲で構いませんが、会議中はお顔が見られるようにカメラの設定をオンにしていただきますようお願いいたします。
第2点目として、ご発言を希望されるときですが、チャット機能を使って全員宛てに発言希望がある旨とお名前を共に入れてお送りください。お名前については、協会名などの組織名でも結構ですので、ご入力ください。それをこちらでご確認させていただいた上で、座長から指名させていただきたいと思います。
なお、ご発言に際しては、念のため、ご自身のお名前をおっしゃっていただいた上でご発言いただければと思います。
【八田座長】
それでは、議事に入ります。まず事務局から説明いただいた後にご質問、ご意見をお伺いしたいと思います。
それでは、事務局からご説明をお願いいたします。
【齊藤開示業務室長】
八田座長、ありがとうございます。
それでは、お手元の資料1に沿って説明をさせていただきます。今回は論点ごとに、左側に前回の議論、右側にそれを踏まえたコードの見直しの方向性案をお示しさせていただいております。
1ページをご覧ください。コードの前文に関し、コードが対象とする監査事務所についてでございまして、前回はご意見として、中小監査事務所に限定したコードを別途作成する必要はない。上場企業等の監査を担う監査法人における組織的な運営の姿を念頭に記載内容を見直すべきと。
また、上場企業等の監査を担う共同監査事務所や公認会計士個人に対してもコードの受入れが義務づけられることを踏まえた記載内容に見直すべきといったご意見を頂戴しました。
右側、コードの見直しの方向性案でございます。1つ目は、大規模な監査法人に限定した記載内容を削除し、上場企業等の監査を担う監査法人における組織的な運営の姿を念頭に作成していることを前文に明記することです。
2つ目は、上場企業等の監査を担う共同監査事務所や公認会計士個人について、監査法人を監査事務所に読み替えて適用されること。また、コンプライ・オア・エクスプレインの手法により、実質的な組織運営の実践状況を説明する必要があること。さらに、上場会社監査を担う個人会計事務所については、日本公認会計士協会において中小監査事務所の育成支援の一環として監査法人への移行を進めていくことが期待されること。これらのことを前文で明記することです。
2ページをご覧ください。ここでの論点は、適用手法とコードの位置づけ、記載内容についてでございます。
適用手法について、前回ご意見として、エクスプレインの将来の方向性を示しながら、進捗状況を説明することが重要と。
コンプライする場合も、どのようにコンプライしているのか、その内容をさらに深化させようとしているのかなどを説明することも重要と。
監査法人によってコンプライとエクスプレインの捉え方が異なるため、一定のメルクマールが必要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性案としては、コンプライ・オア・エクスプレインの在り方や考え方を前文に明記することでございます。
また、コードの位置づけ・記載内容についてでございますが、前回のご意見として、指針の位置づけについて、要求事項ではなく例示にすぎないことを明確にすることも考えられると。
法令の開示事項であっても、コードへの規定により、情報開示項目の一覧性を高めることができるほか、どのように遵守されているのか説明を求めることができると。
法令や品質管理基準で要求されている事項について、同じ粒度でコードに規定する必要はないといったご意見を頂戴しました。
ご意見に沿ってコードを見直す方向でございます。
3ページをご覧ください。ここでの論点は、日本公認会計士協会の役割と原則1の監査法人の役割に関して、上場会社監査への期待についてでございます。
協会の役割について、前回ご意見として、監査法人が上場会社監査を行う上で適切な体制整備や情報開示を自律的・自主的に行っていくよう、協会はしっかり役割を果たすべきと。
協会などが役割分担を明確にしてフォローアップを行っていく必要。その際は、単に横比較するのではなく、目的に照らしてどうあるべきかを検討することが重要と。
さらに、監査法人における原則の適用状況に関する説明内容を定期的にモニタリングする必要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性案としては、これらの提案を前文に明記することでございます。
また、上場会社監査への期待についてでございますが、前回のご意見として、日本市場の信頼性を維持し、投資家が安心して市場に参加できるように、上場企業等の監査を担う監査法人においては、その規模にかかわらず、一定の監査品質の確保が必要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性案でございますけれども、こちらについては、上場企業等の監査を担う監査法人は、より一層高い組織としての監査の品質の確保が求められることを原則1の考え方に明記することでございます。
4ページに参ります。ここでの論点では、原則2の経営機能、原則3の監督・評価機能、原則4の業務運営に関連して、中小監査法人の受入れに馴染む工夫と独立第三者の選任についてでございます。
中小監査法人の受入れに馴染む工夫についてでございますけれども、前回のご意見としては、各原則指針の目的や必要性を明確に示すことが重要で、それにより中小監査法人がその目的に従い創意工夫した取組みを行うことが可能ということです。
また、監査法人が自らの状況や実態を踏まえて、実効的なガバナンス機能を確保する組織体制を構築することが重要。
また、特別な機関を設置せずに代替的手法により経営機能や監督・評価機能を確保している場合は、その合理性を説明すべきといったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性案でございますが、1つ目は、各原則の考え方や各指針に目的や必要性を明記すること。
2つ目は、各原則・指針において、形式的な経営機関や監督・評価機関の設置は必須としないということを明確にすることです。
3つ目は、特別な機関を設置せずに経営機能や監督・評価機能を確保している場合は、その合理性を説明することを原則2、原則3に明記することでございます。
また、独立第三者の選任についてでございますけれども、前回はご意見として、機関の構成や独立第三者の選任方針を開示させることが重要と。
また、監査法人の経営を適切に監督・評価できる独立第三者を確保していくことが重要で、各監査法人で独自第三者を選任するためのルール策定を検討する必要といったご意見をいただきました。
見直しの方向性案としては、監督・評価機能を担う独立第三者に期待する要件を開示することを原則3に明記することでございます。
5ページでございます。ここでの論点は、原則2の経営機能、原則3の監督・評価機能に関連して責任形態の相違についてでございます。前回のご意見としては、無限責任と有限責任の違いで、組織的運営の在り方も異なると。無限責任、有限責任いずれの法人でも同じ品質が担保されなければならないため、品質水準を合致させるために遵守すべきコードの内容は同じと。
無限責任監査法人の場合、無限社員が相互に監視してガバナンスを効かせられるが、市場のゲートキーパーとしての役割を果たすには第三者の目を入れる必要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性案としては、上場企業等の監査を担う監査法人における経営機関等の役割について、原則2の考え方に2つの点を明記することとして、1つ目は、経営機関等の役割は、無限責任と有限責任のいずれの形態であっても、適切に果たされるべきこと。
2つ目は、経営機関等の役割として監査品質に対する資本市場から信頼に大きな影響を及ぼし得るような重要な事項について、監査人としての適正な判断が確保されるための組織体制の整備及び当該体制を活用した主体的な関与等が社会から期待されるということでございます。
次のページ、6ページでございます。ここでの論点は、原則1、監査法人の役割、原則5、透明性の確保に関連しまして、グローバルネットワークとグループ法人、非監査業務についてです。
グローバルネットワークとグループ法人について、前回いただいたご意見としては、グローバルネットワークに参加する意義・目的やリスクの開示が重要と。
また、各法人の組織体制に込めた意図が伝わるように創意工夫した情報開示を行う必要と。
また、グループ全体の業務収入に占める非監査業務収入の割合が多い場合、その対応策を開示することは重要といったご意見を頂戴しまして、このご意見に沿って原則1や原則5を見直す方向です。
また、非監査業務については、前回は、非監査業務の提供を拡大するのであれば、その意義を明らかにして、それに伴うリスクへの対応を開示することが重要と。
また、中小監査法人の場合、非監査業務にまでリソースを拡大している環境にないが、ニーズに応じて開示していく必要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性案としては、非監査業務の位置づけの考え方に加えて、利益相反や独立性の懸念に対し具体的にどのような姿勢で対応を講じているかを明らかにすべき旨を原則1に明記して、原則5には、市場参加者にとって有益な情報として開示すべき旨を明示することです。
7ページでございます。ここは原則5、透明性の確保でございまして、品質管理システムとガバナンスの充実についてです。
品質管理システムについては、前回はご意見として、改訂品質管理基準によって、リスクアプローチに基づく品質管理システムを実現して、実質的に深化されるよう開示していくことが重要と。
また、法令での開示事項であっても、コードに規定することで、情報開示項目の一覧性を高めることができるほか、どのように遵守されているのか説明を求めることができるといったご意見を頂戴しました。
意見を踏まえまして、見直しの方向性としては、法令や品質管理基準で要求されている事項についてコードへの記載は必要最小限にとどめるということでございます。
また、ガバナンスの充実について、前回はご意見として、市場参加者の方が各監査法人における会計監査の品質向上に向けた取組みを評価できるように、監査法人が中長期的に目指す姿や、その方向性を示したKPIを開示することが重要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性としては、そのようなKPIの開示を求めることを原則5に明記することでございます。
8ページに参ります。ここでは原則4、業務運営と原則5、透明性の確保の関連でして、IT・テクノロジーと人材基盤についてでございます。
IT・テクノロジーについては、前回はご意見として、ITを活用した監査業務の効率化と監査品質の向上、また、サイバーセキュリティー対策について現状と今後の方向性の開示が重要ということでございました。
見直しの方向性でございますが、各監査法人におけるIT基盤の実装化や積極的なテクノロジーの活用に向けた対応状況に関する開示を求めることを原則5に明記することでございます。
人材基盤については、前回はご意見として、上場会社を監査する監査法人として、会計監査以外の専門家の確保状況に加えて、企業出向等の経験者や女性管理職の状況なども含めて、構成員が多様かつ必要な人材が確保されているという状況の開示が重要ということもありましたし、また人材育成の観点から、研修・教育の実施状況の開示ということが重要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性としては、1つ目は、監査法人様において多様かつ必要な構成員の確保状況や人材育成方針の開示ということを原則5に明示ということですし、2つ目は、監査法人の業務運営で留意すべき事項として、構成員が業務と並行して十分に能力開発を取り組むことができる環境を整備することを原則4に明記することでございます。
9ページでございます。こちらは、原則5、透明性の確保に関連して、財務基盤、国際対応などについてでございまして、財務基盤については、前回はご意見として、報酬依存度が一定以上の場合は、安定した財務基盤の確保に向けた改善策を実行して、その状況を外部に説明していくことが重要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性でございますが、こちらは、原則5に明記するものとして、特定の監査報酬に左右されない財務基盤の確保状況に関する開示でございます。
また、国際対応についてですけれども、こちらもご意見としては、グローバルネットワークに所属していない中小監査法人の場合は海外進出企業への対応状況の開示が必要と。
また、グローバルネットワークに所属していることだけでは評価されないため、海外進出企業のニーズに対応できる体制となっているかどうかを具体的に開示することが重要といったご意見を頂戴しました。
見直しの方向性について、こちらも原則5に各監査法人における海外進出企業活動への対応状況に関する開示を求めるということでございます。
さらに、前回はご意見として、コードで開示を求める事項を細分化しますと、開示内容のボイラープレート化の懸念が高まると。ですから、各法人に自由度を与えた開示を促して、市場参加者の対話で改善をしていくことが重要ということをいただきました。
見直しの方向性としては、原則5には、監査法人の規模、業務内容等を踏まえて開示すべきであることを改めて明記するということでございます。
駆け足でございましたけれども、説明は以上でございます。
【八田座長】
どうもありがとうございました。
では、続きまして、日本公認会計士協会の南様からご説明をお願いします。
南さん、よろしくお願いいたします。
【南日本公認会計士協会副会長】
それでは、スライドに沿って説明させていただきます。日本公認会計士協会で中小事務所施策を担当しております副会長の南でございます。今日はよろしくお願いいたします。
本日の中小監査事務所の体制整備の支援に向けた取組みについてご説明させていただく機会をいただき、誠にありがとうございます。
それでは、まず1ページ目になります。近年は中小事務所への監査人の交代案件が急増しております。中小事務所の監査の担い手としての役割はますます大きくなっております。
また、品質管理基準の改訂等もあり、監査品質の維持・向上が求められております。これが左側の緑の部分であります。
このような状況を踏まえ、弊会におきましては、右下の紫色の枠にありますが、中小監査事務所について、基盤強化の支援策、そして情報開示の充実という施策を実施するとともに、改正公認会計士法に対応した上場会社監査事務所登録制度の充実を図ってまいります。
そうしたら次の2ページ目になりますが、弊会は中小監査事務所に対して、情報開示の充実と基盤強化の支援策により、監査品質の向上と自律的・自発的な経営基盤の強化を促進してまいります。
このうち情報開示につきましては、上場会社を監査する中小監査事務所には、後ほどご説明させていただきます、監査品質のマネジメントに関する年次報告書、この作成を求め、その中には、6つの経営基盤として、品質管理基盤、組織・ガバナンス基盤、そして人的基盤、IT基盤、財務基盤、国際対応基盤に関する記載を含めることになります。
次に3ページでは、改正公認会計士法に関連する上場会社監査事務所登録制度の充実について触れております。ここで記載しましたとおり、改正公認会計士法及び現在パブリックコメント中の公認会計士法施行規則案におきましては、各種の体制整備の規定が設けられています。
そして、金融審議会公認会計士制度部会報告におきましても、「登録を受けた監査法人・公認会計士には上場会社監査に係る体制整備や情報開示等について、より高い規律付けを求めることとし、登録後に上場会社監査を公正・的確に実施する体制が整備されていないこと等が確認された場合には、日本公認会計士協会において登録を取り消すことができることとすべきである。」との記載がございます。先ほどご説明した体制整備が適切に行われていない場合には、このページの下に記載のとおり、登録の取消し等を検討することになります。
続きまして、4ページ目になります。改正公認会計士法により、上場会社監査人名簿への登録の申請時、また登録後、監査事務所が上場会社の監査を公正かつ的確に遂行する体制を備えているかどうかの確認、これを品質管理レビューを通じて行っていきます。これが最も重要な監査品質、監査事務所の品質改善のための施策となります。
協会では、現在38名の常勤レビュアーによって上場会社の監査を行う事務所の品質管理の状況を、原則として3年に一度の頻度で確認しています。確認に際しては、監査の品質に関する基準・諸規定に監査事務所の品質管理のシステムが適合しているかどうかを評価し、不備が見受けられる場合には改善に向けての指導を行います。
指導の結果として監査事務所が改善できているかどうかに関しては、翌期以降に改善措置の状況を確認しております。ここで監査事務所の改善に向けた取組みが十分でない場合には、品質管理レビュー制度上の措置として、注意、そして厳重注意、辞退勧告といった措置を講ずることにより、監督機能を発揮しております。
それでは5ページになります。昨今の会計、監査、品質管理基準等の高度化・複雑化、資本市場における中小監査事務所への期待の高まり、そして今般の公認会計士法改正における国会審議を踏まえまして、中小監査事務所に対する弊会の指導力の発揮が今まで以上に求められております。
これを受けて、弊会におきましては、中小監査事務所の基盤強化のため、中小監査事務所に自主的な情報開示の充実を促すとともに、様々な支援策と指導を実施してまいります。
次の6ページになりますが、上場会社等の監査を行う中小監査事務所は、その経営基盤強化のために監査品質のマネジメントに関する年次報告書、先ほどお話しした年次報告書です、これを作成して情報開示を行うことになります。
当該報告書は、公認会計士法においてその作成が義務づけられている説明書類とは別に、自主規制の範疇において作成、公表するものとなります。
公の説明書類の記載内容は、公認会計士法施行規則において定められていますが、当該報告書の記載内容は、原則、各事務所の自主的な開示とし、開示を通じて各事務所は自律的・自発的にその基盤の強化を図っていくことになります。
それでは、7ページになります。当該報告書の作成、公表する趣旨についてご説明いたします。上場会社等の監査を行う中小監査事務所が6つの基盤に係る情報開示を行い、そして自らの監査事務所の品質に関する取組みを市場関係者に周知することにより、常に資本市場の目線を意識し、そして今まで以上に自らの監査品質向上に真摯に取り組むことが必要となり、そのことが品質管理体制の一層の向上を実現することにつながると考えております。
当該報告書の作成、公表は自主規制の範疇で行うものですが、その中には6つの基盤と監査法人ガバナンス・コードへの対応状況、これが含まれております。それらは公認会計士法施行規則改正案の第95条(経営管理の状況等の公表)及び第96条(組織的な運営)の体制の整備に対応するものと考えております。
そして8ページには、監査品質とマネジメントに関する年次報告書、この構成を記載しております。まず最初に、監査品質の向上に向けた取組みと事務所の概要を記載していただきます。監査品質の向上に向けた取組みの箇所では、理事長などによるトップメッセージを記載することを想定しています。この部分は特に大切であると考えております。監査品質に関するトップの考え、そして自分の事務所の強み、他の事務所と差別化できるような内容をここで発信し、それに沿って次に記載する6つの基盤にどのように対応しているかを開示する流れになります。
また、当該報告書には監査法人のガバナンス・コードへの対応状況の記載も含まれております。
それでは、9ページです。このページは、協会として、中小監査事務所の基盤強化のための支援策、そしてその対応組織、これを一覧表にして説明しております。
支援策としましてはこちらに記載しておりますとおりですが、上から、監査業務の品質の維持・向上、実務の参考に資する公表物等の検討、そして2つ目は、中小監査事務所のITに関する実態把握やITインフラ整備、ITを活用した監査ツール開発の支援、3つ目は、IFRSを含む企業会計基準等の適用、表示チェックリストの作成及び昨今の非財務情報を含めた企業内容等の開示充実に関する研究、そして4つ目ですが、IFAC中小事務所アドバイザリーグループ、ここに対するメンバーを通じたコメント発信等をしております。
このほか、下の中小監査事務所連絡協議会のほうになりますけれども、1点目は、監査法人のガバナンス・コードの原則5、この対応支援といたしまして、中小事務所と資本市場関係者との意見交換会を開催していきたいと考えております。
次に、国際対応のサポートをするための海外監査事務所名簿の整備について検討を進めております。
また、監査品質のマネジメントに関する年次報告書の作成については、参考となるガイダンスの作成を進めております。
さらに、中小監査事務所に対する監査人材の採用支援、新人研修につきましての具体的な実施に向けた検討を行う予定でございます。
ほかに、中小監査事務所の育成やサポート、個別相談機能の強化、専門家人材の紹介につきましても検討、実施を進めている状況にあります。
こういった形で中小監査事務所の基盤強化に対する支援をしっかりと行っていきたいと考えております。
それでは、次の10ページに移りたいと思います。こちら、ちょっと小さな絵になっておりますけれども、中小監査事務所支援策のロードマップであります。上のグレーの網かけの行、こちらは改正された公認会計士法、あと、改正された品質管理基準等、この適用時期を示しております。
そして品質管理基準の適用というのが、中小監査事務所の場合は2024年7月ということになっております。これに平仄を合わせる形で、監査品質のマネジメントに関する年次報告書の作成開始時期、これにつきましても2024年7月からと考えております。
このような状況を踏まえまして、弊会では2024年7月を1つの目標として、中小監査事務所が6つの経営基盤や監査法人のガバナンス・コードの受入れを行い、そして適切に情報開示を行えるよう、各種の支援策を強力に遂行してまいります。
弊会におきましては、今後も継続して中小監査事務所との密なコミュニケーションに努め、相談や指導といったきめ細やかな対応を引き続き行ってまいります。
最後になりましたが、現在行っております支援策の1つである対話型研修会をご紹介させていただいております。当該研修会は、監査事務所の育成やサポート、個別相談機能の強化の支援策に対応するものでございます。
スライドのご説明は以上となります。ご清聴ありがとうございました。
【八田座長】
どうもありがとうございました。これより皆様からご質問、ご意見をお伺いする討議とさせていただきます。まずは日本公認会計士協会によるご説明に関しまして、ご質問、ご意見を頂戴した後に、事務局より説明したコードの見直しの方向性について討議するといった形で進めさせていただければと思います。
メンバーの皆様方にご発言いただく機会を確保する観点から、恐縮ではありますが、ご発言の時間につきましては5分以内を1つの目安にしていただければありがたく存じます。
それでは、チャット機能を使って発言希望がある旨を送ってください。
まず石原メンバー、お願いいたします。
【石原メンバー】
質問とお願いです。「監査品質のマネジメントに関する年次報告書」というものを新しくつくられるということで、これは自主規制と位置づけられていますが、上場会社監査事務所登録制度全体に関わる話として、自主規制の部分と、今回法制化される部分、法的裏づけに基づいて行われる部分がどのように変わってきているのかというあたりが分かりにくいと感じています。それで質問に加えてお願いという意味で、今回に限らないのですが、本日の資料は、支援に向けた取組みに関して説明されていますが、支援はやっていただく一方で、私にとって最大の関心事は、スライドの1にも上場会社監査事務所登録制度の充実と書かれていますけれども、この制度を実際にどうやって回していかれるのかということでありまして、これまで自主規制で行われているものから何をどう法的な裏づけのあるものに変えていこうとされているのかというあたりを、はっきりとさせていただいたほうが分かりやすいのではないのかと思っております。
それで、協会の方から「公認会計士法改正に関連する協会制度変更要綱案」というものが10月に出されていますが、この中には、上場会社等監査人登録制度に係る制度変更ということで様々な提案がなされているわけですから、その中に書かれているようなことを含めて、どうやって公認会計士法に基づく法的な裏づけを持った登録制度として運用されていくのかということについて、この有識者検討会のスコープに入るのかどうかというところはありますが、また次回とかに、できればそういった説明をしていただいたほうが、今回の制度改正で何がどう変わるのかということが分かっていいと思っています。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。ただいまのご質問、今回の検討会のかなり基本的な問いかけの1つではないかと思いますので、南様、今日ご報告いただいた中で、今石原メンバーがご質問されたように、会計士法上、法制化された登録制度、それを踏まえた上で、日本公認会計士協会が自主的なサポート支援をするという部分のすみ分けといいますか、立ち位置をもう少しご説明いただけるのであればありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
【南日本公認会計士協会副会長】
八田先生、ありがとうございます。今、ご質問された点は2点あると思います。1点目が、年次報告書が自主規制としてどのような位置づけになっているのかという、この表の部分でしょうか。まず、体制整備が義務づけられて、その整備状況を公表するということは、施行規則の規定に入っており、法制化されていると考えております。ただ、具体的に体制整備の状況を記載する内容自体、ここについては法律上どのように記載するかということが規定されておりませんので、この記載の内容については、協会としてガイダンスを作成しまして、中小監査事務所の皆さんが自発的・自律的に開示をして経営基盤の改善をしていくというPDCAサイクルが回っていく形で支援をしていきたいと思っております。
そういう意味で、公表自体は義務づけられて法制化されておりますが、その記載内容については、自主規制として、その内容について支援・指導していきたいと考えております。そのような建付けで考えております。
今回、上場会社監査事務所登録制度自体が、いわゆる法制化されたわけですけれども、その法制化がされて、自主規制としてより高い規範性を持って運営していくという側面については、今回、自主規制として登録の取消し等が対応できるという形になりましたので、従来より厳しく対応を検討していきたいと考えております。
【茂木メンバー】
茂木でございます。石原メンバー、ご質問ありがとうございます。今、南のほうからお話し申し上げましたとおり、監査品質のマネジメントに関する年次報告書に関しては、体制整備義務について施行規則第95条、また第96条において、定めが置かれております。これを踏まえておりますけれども、これを超えてさらにより充実した開示を求めていくというところで、自主規制の中で、よりよく社会にご理解をいただけるような開示を進めていきたいというところでございます。
それから、自主規制について、その実施についてというところでございますけれども、先ほど南のほうからもご説明申し上げましたように、上場会社監査事務所登録制度が法定のものということになってまいりました。それの前から、私ども日本公認会計士協会としては品質管理レビューということで取組みを行っておりますけれども、品質管理レビューの実施の中で、最終的な判断が監査業務の辞退勧告というようなことになってきたものにつきましては、品質管理体制に対する課題から上場会社監査事務所登録制度における登録の抹消等の検討を行うということにつながっていくというところでございます。
当然そういった対応を行うというところについては、上場登録に関する審査会等の設置を行いまして厳格な対応を取っていくような判断をしていく所存でございます。
また、各監査事務所においても、そのような制度変更が行われたという厳格な対応が取られるということを踏まえた監査実施体制の整備を行っていくようになっていくと考えております。
【八田座長】
どうもありがとうございます。
それでは、次に、小野メンバー、お願いいたします。
【小野メンバー】
ありがとうございます。今の石原メンバーのご質問と若干重複するのですが、私が確認をしたいのは、監査品質のマネジメントに関する年次報告書というのは、これは大監査法人、準大手
【南日本公認会計士協会副会長】
南です。今、ご質問のとおりであります。上場会社の監査を行う監査事務所全て、この年次報告書の公表をしていただくというふうに考えております。それについては個人事務所も同じだと考えております。
【小野メンバー】
分かりました。ありがとうございます。この年次報告書の内容を見ますと、最後に監査法人のガバナンス・コードの対応状況というのが添付されるようになりますので非常によろしいと思いますが、これが2024年以降、全ての監査法人が対応していただいた後は、日本公認会計士協会のほうで全監査法人の対応状況をまとめて対外公表等をしていただくと透明性が一層向上すると思います。
すみません、意見まで言わせていただきまして。以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、岡田メンバー、お願いします。
【岡田メンバー】
ありがとうございます。南さん、ご説明どうもありがとうございました。私からはコメントです。まず第1に、先ほど登録制度について、厳しく対応するというお話がありましたけれども、正直言って、どこまで厳しくできるのかという点については、私はあまり信用しておりません。信用してないというよりは、かなり難しい話じゃないかという気がしております。
品質管理を見て、全くできてない、品質管理担当者がいない、となればとんでもない話です。ある程度の人数がいて何かやっていればいいのか。また、不正が実際に起きた、不正を見逃したという場合、明らかに見逃した場合もあれば、例えば経営者による内部統制の無効化があった場合にはとても監査法人では分かりません。このような場合はどうやって判断していくのか。こういうことは大変難しい問題だと思います。信用してないと、ちょっと悪い言い方しましたけど、決してできないと言っているわけではなくて、かなり困難だろうと思います。
一方では市場参加者と言われている、外の目からの退場勧告とか、あるいは、もっと言えば、監査される企業の監査役等の人たち、この人たちが監査法人を選任するわけですから、この人たちがどう考えるか、こういう目も必要だと思います。正直なところ、私も監査役をやっておりましたが、中小監査法人を選任している上場会社の監査役等がどれだけ問題意識を持って選任しているか分かりませんが、やはりここは1つのきっかけとして、監査役等とのコミュニケーションをどんどんやっていただくといいのではないかと思います。監査役等が責任を持って選任するという体制ができれば理想的だと思います。
そういう意味では、ロードマップで示されていますように、施行規則の適用開始が2024年の7月だからそれまでにやろうというのは悠長な話であって、規則の適用時期に合わせるのは構わないと思いますが、それまでに、先ほどの監査品質マネジメントに関する年次報告書、これの原案を早急に作成して、監査役等とコミュニケーションを始める、監査役等が監査法人を選任する際の参考にどんどんしていってもらうという姿勢で臨んでいただきたいと思います。
一方では監査役のほうも、監査役協会を通じてだと思いますけれども、そういう意識を持ってもらうという活動をしなければいけないのではないかなというのがまず第1の感想であります。
それに若干関係しますけれども、ここで支援体制が書いてありましたけれども、監査品質と言うのですから、会計監査に限定した話だと思いますが、やはり監査品質とガバナンス・コードというのは表裏一体の関係にありますので、ガバナンス・コードの適用に関していろいろ相談に乗っていく、あるいは適用を支援していくことになれば、どうしても会計マターだけではなくて、ガバナンスの知識、あるいは経営の知見というのも必要になるのではないかという気がします。
そういう意味では、会計士協会と監査法人が会計の目だけで話しても新たな発想は出てこないと思われますので、この支援メンバーに、これは私からの提案ですけれども、既に退職しているけれども会社経営の知見がある人、あるいは監査役等の経験のある人を入れてはいかがかなと思います。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、弥永メンバー、お願いします。
【弥永メンバー】
ありがとうございます。ご説明ありがとうございました。私も石原メンバーや岡田メンバーがおっしゃっているように、今回の改革では、品質管理レビューと上場会社監査事務所登録制度の実効性が非常に重要だと思います。この点について、今日ご説明いただいた中では、ここがどのように改善されるか、どのように強化されるのかという具体的な内容をあまり十分に理解できなかったのですが、厳しい対応を日本公認会計士協会が行っていくということは簡単ではないのではないかと私も思います。
しかしながら、やはり品質管理レビューがしっかり行われて、その結果が監査役等にコミュニケーションされることによって、監査役等は、重要な不備ではないにしても、不備があるということを伝えられれば、それを無視すると申しますか、それに目をつぶるわけにもいかないと思います。そういう意味で、品質管理レビューの結果が監査役等にコミュニケーションされるという形で品質管理レビューがしっかり行われることはある程度は効果を持つと思うのです。そこで、ちょっとご質問したいと思いますのは、これまでの制度の中で、個人の公認会計士で上場会社を監査されている方に対する品質管理レビューは、これは監査法人と同じように3年に一遍同じようなレベルでなされていたのかという点です。判断の基準として、組織的な監査がきちんと行われる体制が整っているかどうかに関しては、個人の会計士についてはそこだけで判断することはなかなか難しいと思うのですが、その辺りはどのようにこれまでなされていたのか、そして今後どのようになされる可能性があるのかという点をお聞きしたい。
それから、2つ目として、今年の6月に公表された日本公認会計士協会の報告書、2021年度品質管理レビューの概要によると、改善状態を確認しようとして、品質管理レビューを行おうとしたところ、レビュー手続を拒否されてしまったというケースが1件あったとされているわけですけれども、事務所が協力しないというときに日本公認会計士協会はどのように対応していくのでしょうか。懲戒処分だけではなく、上場会社監査事務所登録制度の下では、協力しないこと自体だけで一発でアウトにしたってよいぐらいな気がするのですが、その辺りはどのようにお考えなのか。この2点について教えていただければと思います。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それほど大きな問題ではないかもしれませんが、すぐ回答が伺える話ですので、協会のほうで、茂木メンバーか南先生、お答えいただけますでしょうか。
1つは、個人事務所の担当者、個人事務所でやっている場合の品質管理レビューの状況及び今後の動向、2つ目が、6月公表された、レビューを拒否された場合ですか、その取扱い、よろしくお願いします。
【南日本公認会計士協会副会長】
まず1点目のところです。個人についても全く同じ水準で協会のレビューを行うということが原則になっていますし、実際そのように行っています。
組織的な監査の体制があるのかと言われますと、事務所内で完結はできないですけれども、委託をしながら審査をするとか、定期的検証をするとかということを機能として取り入れながらやっておりますので、トータルとしては、上場会社監査事務所として同一水準の品質管理レビューを受けて、それをクリアしているという状況だと理解しております。
【茂木メンバー】
2点目は、私からお答えいたします。茂木でございます。弥永先生、ご質問いただきましてありがとうございます。今お話しいただいたように、改善状況についてのレビューを拒否したという事案があったということでございます。レビュー手続を拒否した場合には、品質管理レビュー実施上の措置が辞退勧告ということになります。辞退勧告となるということでありますと、新しい上場会社監査事務所登録制度におきましては、登録の抹消の事由となるというようなことで考えております。
以上でございます。
【八田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、上田メンバー、お願いいたします。
【上田メンバー】
ご指名ありがとうございました。上田です。よろしくお願いいたします。私からは、コメント2点、質問1点申し上げさせてください。
まず、日本公認会計士協会様、ご説明をありがとうございました。監査法人の品質管理レビューは、繰り返しお伝えしていることではありますが、日本の金融市場のインフラである監査の品質確保という観点から大変重要な仕組みであって、これを担当される協会様のお役割、大変重要で、これからもっと強い自主規制機関としてのご指導力も期待しておるところです。
基本的なところとしては、中小監査法人であったとしても、上場会社監査というインフラを健全に確保するという観点からは、その品質というのは、大手、準大手と仮に形式的に対応が違ったとしても、実質的には劣ってはいけないと思っておりますので、そういう意味で、中小監査法人が単独では難しい局面でのサポートについてはぜひ協会を通じてご支援いただければと思います。
その上で2点、具体的にコメントさせてください。まず1点目、監査品質のマネジメントに関する年次報告書、基本的には、これから内容も色々ご検討されていくのだとは思うのですが、前回の議論でもあったようにボイラープレート化のご懸念もあるということですが、ただ、他方で必要な情報については必ず出していただけるようなテーブルを用意していただくとか、こういったところはご対応いただきたいと思います。
特に、先ほど別のメンバーからもご指摘ありましたけれども、今後、各法人が提出した年次報告書がそろってくるという中で、ぜひ日本公認会計士協会様におかれては、レビューをしていただいて、全体的なディスクロージャーの品質向上にはぜひ努めていただければと思います。
この年次報告書の基本となるものがガバナンス・コードでございますので、ガバナンス・コードの遵守状況についても、ぜひ分析やご評価をしていただいて、その実効性も高めることが必要なのかと思います。
第2点目が、ステークホルダーとの対話についてです。市場関係者から見た場合に、中小監査法人は本当に実態が見えにくいという問題がございまして、特定の中小監査法人が入っている場合には、それ自体がレピュテーション上のリスクにもなることもあります。これは中小監査法人ご自身にとっても、上場会社ご自身にとっても、そういうふうに見られてしまうおそれがあるというリスクになります。相手の顔が見えないことがリスクになるということはお互いにとって幸せなことではございませんので、資本市場、金融市場の関係者との対話というのは、ぜひ協会様の音頭で、できるだけ多くの監査法人が参加できるような形で運営をしていただければありがたいなと思います。
最後に、大変簡単な質問ですが、このように協会様のお役割が、大変重要になってくると思います。現状、恐らく準大手中心にご対応されておられるとは思いますが、今後これをほぼ全ての上場会社監査を担当する中小の監査法人対応ということになると、リソース等は大丈夫でしょうか。非財務情報の重要性も高まるなかで、より一層自主規制機関としてのリソースも必要になるのではないかと思うのですが、その辺りはいかがでございましょうか。ぜひ安心材料としてお聞かせいただけますと幸いです。
以上です。ありがとうございます。
【八田座長】
どうもありがとうございます。ただいまのご質問に関して、茂木メンバーないしは南先生、何かありますか。よろしくお願いします。
【南日本公認会計士協会副会長】
まず先ほど岡田メンバーも同じようなご質問をされたところで、いわゆる年次報告書についてですね。これについては、当然ボイラープレートになったら全く意味がありませんので、各事務所の特徴とか、他の事務所と比べて差別化できる点をしっかり主張していただいた上で、自発的・自律的に開示していただくというのが原則だと思っております。
それで、タイミングですが、2024年7月以降に正式に第1回目の年次報告書を提出すると考えておりますけれども、実際今回の施行規則で規定された履行義務の実態を踏まえて、品質管理レビューを実施しながら確認していく方針です。その中で、今回の年次報告書につきましては、ドライランをする期間を設けたいと思っておりまして、来年の1Qには、当該年次報告書作成のためのガイダンスを協会のほうから公表するようにしたいと思っています。その後、研修会とか説明会を開催しまして、中小監査事務所に対してなるべく早期に、2023年の4月頃をめどにドライランの形で当該年次報告書の作成に着手していただくよう促していきたいと考えております。
従前から実は透明性報告書という形で作成、公表していた中小監査事務所もあるのですけれども、そういった事務所を除けば今回初めての取組みになりますので、協会としても、実際の作成、公表の状況を見ながら、ガイダンスも徐々に充実させ、研修会の内容もレベルアップさせながら、2024年7月までに複数回にわたって指導するというふうに考えております。しっかりと中小監査事務所との意見交換、あるいはコミュニケーション、これを取りながら、意味のある内容になるように指導していきたいと思っています。
そして、あと協会レビューとの関連ですけれども、監査法人のガバナンス・コードの適用状況を含め、年次報告書に記載していただくということになるのですけれども、これが公表されていない場合は、当然に体制整備義務に違反することになると思いますし、たとえ公表されていたとしても、いわゆるコンプライ・オア・エクスプレインの状況が事務所の実態と著しく乖離していると認められる場合には、やはり体制整備の義務に違反しているものとして取り扱って、上場会社等監査人名簿からの登録の取消しの要否など、こういうことを判断していくことになると考えております。
そういう意味で、今回、監査法人のガバナンス・コードの導入、そして年次報告書の開示、これによって中小監査事務所の実態をしっかり把握した上で、品質管理レビューの中で対応していきたいと考えております。
品質管理レビューを通じて行う指導というのは、監査事務所の品質管理システムの不備が認められるとき、その不備を改善するための指導になります。
一方、監査法人のガバナンス・コードの適用状況につきましては、中小監査事務所の品質向上のための支援という観点から進めていくことが求められているように理解しておりますが、この点については、上場会社等監査人から当協会に提供された情報を横断的に分析して、監査法人の運営状況等を踏まえて、指導の質の向上、これが図られるものと、またつなげていくものと捉えて考えております。
そういう意味で、先ほど、各事務所の比較であるとか、そういった点もご要望がありましたが、そういったことも踏まえて検討させていただきたいと思っています。
あと、先ほど投資家との対話、市場との対話というのがありましたが、百数十ある事務所とどうやって対話していくかという話がありますが、色々工夫しながら対話の機会を持つように、またご協力をお願いするかと思うのですけれども、対話していただくような機会を持ちたいと考えておりますので、その際はよろしくお願いしたいと思っています。よろしくお願いします。
【八田座長】
ありがとうございます。もう一つご質問があったと思いますが、資料の4ページで、品質管理レビューの役割、期待が現状よりもさらに高まってくるだろうということになると思うのですが、その場合のリソース、体制の問題、これは協会として今後どのような施策ないしは基本的考え方をお持ちでしょうか。
茂木メンバー、お分かりであれば教えてください。
【茂木メンバー】
ありがとうございます。ご質問ありがとうございます。レビュー体制の人員体制のところでございますけれども、人員体制については充実を図っていきたいと考えております。
一方で、現在、皆様ご案内のとおり、監査の現場におけるリソースもしくは人員の確保ということも非常に重要なテーマになっております。こちらとも折り合いをつけながら、また、こちらの人員については、例えば、先ほどもコメントいただいたかもしれませんけれども、監査事務所をリタイアされた方々の活用等も含めて、体制の充実というものを図っていきたいと考えております。
以上でございます。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、お待たせしました。澤田メンバー、お願いします。
【澤田メンバー】
澤田です。私のほうからは質問というわけではないのですが、各メンバーの方から非常に厳しい中小監査法人に対するご意見も今回伺いましたので、メンバーの中で私が唯一中小監査法人を経営している者として、手短に私のほうからコメントさせていただきたいと思います。
中小監査法人の顔が見えないというご意見がすごく多いですけれども、現状、上場会社を監査することができる中小監査法人は116法人あるかと思いますが、私たち中小監査法人も大手監査法人や準大手監査法人と同様に、協会レビューないしCPAAOBの調査というものを受けております。私たち應和監査法人も、多分、皆様の中で会社の監査役をやられている方、やられていた方もいらっしゃるかと思うのですが、その結果等に関してきちっと、中小監査法人であっても、改善勧告を受ければ、改善勧告の内容や、改善の状況を報告する必要があります。改善勧告事項はほとんどない運営をこの10年以上やってきている弊法人の立場から1つ申し上げたいのは、中小監査法人といっても、確かに、昨今、雑誌などで出てくるような問題があるような事務所、ないし、最近、この数か月以内に処分勧告や行政処分を受けている監査法人もありますが、処分の状況を私も見ますと、あまりにもひどいというか、これはないんじゃないのというのが私の意見であります。
例えば、協会レビュー。自主規制の形式をとっていますが、協会レビューのほうで、我々は現状では指導ないし監督を受けている、モニタリングを受けているのですけれども、その結果を全然改善していないですとか、トップの姿勢としても軽視をしているだとか、実態は私も分かりません。処分勧告の文書を読む限り、あまりにもひどい運営をしている監査法人があるのは事実ですけれども、116全ての監査法人がそうかというと、私が経営している監査法人がそんなことをしたことはありませんし、そういうトップのビジョンとしてやったことはありません。
監査クライアントに対しても、丁寧に情報開示、ないし、これから監査をすることになるかもしれない営業であっても丁寧に事実を開示しているつもりです。前回の会議のときにもお話しさせていただいたのですが、今、このガバナンス・コードの見直しが、中小監査法人という角度から見直しが始まっているかとは思いますが、中小監査法人といっても様々な事務所の品質状況があるということを、我々中小監査法人の業界としても、より発信していかなければいけないのかなと考えております。
今後の法制度について日本公認会計士協会のほうに所属している立場から申し上げます。メンバーからも、「自主規制から法制度になって協会のほうでどういうふうに変わっていくのか」というご質問が前回もあり、茂木会長も南さんもおっしゃっていましたが、登録を抹消する権利を協会が持つことになったと思いますので、今後、この法制度ができていくことによって、協会レビューやCPAAOBの調査結果を受けて、ついてこられない監査法人に対しては指導しつつも、法的バックグラウンドがあるので、きちんと退場勧告していくことを期待しております。
以上になります。
【八田座長】
どうもありがとうございます。
私の個人的な感想ですけれども、今、澤田メンバーがおっしゃったように、確かに、もう誰もが気がついているのは、大手法人もそうですけれども、特に中堅・中小、小さいところの事務所の品質にあまりにも差があり過ぎる、あるいは、意識に差がある。したがって、顕在化してくるのは、CPAAOBなどが行った結果の処分勧告案に明示されてくるわけで、そのとき見て、そのひどさに愕然とするわけですよね。ほかはそんなことないですよという気持ちがあるのかもしれませんが、自主規制というのはそういうのを排除しなければいけない。
つまり、同品質の監査を確保すること、法律に触れるか触れないかはまた別の問題であって、社会からの信頼と期待に応えるためには、同品質の監査業務がなされているということを訴える必要が協会にはあるのだろうと思います。そこにどうやってメスを入れるかということが実は一番大事なのであって、そこがどのようにこの今のリソースできるかということが、私は期待も大きいのですけれども、不安も抱えているわけです。その辺のところ、茂木メンバー、もう一回お伺いしますが、今後の課題でしょうけれども、この品質管理レビューの38人体制、はっきり申し上げて、これまでの現状のレビュー対応から見たときに、その数倍の負荷がかかってくる可能性がありますので、それはどうやって応えていくでしょうか。
【茂木メンバー】
八田座長、ありがとうございます。現状、数倍ということが必要かというところについては、私はまだそこまでの結論に至っていません。これまで以上の体制の充実というのが必要だというところについては、ご認識のとおりだと思っています。
そして、そこに向けては、先ほど申し上げましたように、より多くの人材、現在、それだけの能力がありながら活躍し切れていない方々等の登用等を含めて、この部分についての充実を図っていきたいと考えております。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、栗原メンバー、お願いします。
【栗原メンバー】
ありがとうございます。私、途中から参加させていただきましたので、皆様のほうで既になされたご質問等と重なっていたら申し訳ございません。その場合はおっしゃってください。
まず、協会がやっている品質管理レビューの対象範囲ですが、先ほどのご説明で、品質管理のマネジメントに関する年次報告書、ここは登録する法人については全て作成して開示をすることが必須になるということですが、8ページのところに書かれている報告書の構成の6つの基盤の中で、品質管理基盤、その結果として出てくる品質管理、そこの部分だけをレビューされているというように考えていいのでしょうか。
逆に言いますと、ガバナンス・コードの中で、組織ガバナンス体制、あるいはIT、財務、こういったところについては協会は見ていない、したがって、年次報告書の中の一部分だけ、品質管理の部分だけを協会はエンドースしていると考えて良いのでしょうか。これが1つ目の質問です。
それから、2点目はコメントですけれども、リソースが今以上に充実している必要があると思いますが、対象法人数に比例するというよりはむしろ、中小・中堅の法人が増えることによって、1法人に係るレビューは増す可能性もあるのではないかと思います。従って、相当な陣容が必要だろうと思いますし、先ほどのITなどまで見ていくとすると、様々なリソースが必要になるのではないかと思われます。
それから、3点目は、先ほど他のメンバーの方からもありましたが、これは中小監査法人と協会だけの問題ではなく、レビューの結果を受けた監査法人を、企業が正しくレビュー結果を受け止める、理解することが重要になると思います。企業側の見る目、評価する目をより向上させるために、協会のほうでは、監査法人に対してだけではなく、企業に対してもレビュー結果が理解できるようサポートしていくことが重要と思います。企業が理解した上で監査法人を選択するようになれば、全体として高まるのではないかと思いますので、協会のほうでは、ぜひ、企業に対してもレビューを正しく理解するということを発信していただきたいと思います。
【八田座長】
どうもありがとうございます。
それでは、多くのご質問、ご意見等をいただき、日本公認会計士協会のほうでご説明いただいた内容について重点的に議論が進んでまいりました。そこで、最初のほうで、事務局からご説明いただきましたこのコードの見直しに関しての方向性、今度は、これにつきましてご意見、ご質問等いただければと思います。先ほど、冒頭のご発言の中で、石原メンバーがおありかと思いますが、石原メンバー、いかがでしょうか。
【石原メンバー】
石原です。それでは、今の件に絡んだことも含めて申し上げたいと思います。今回の検討は、事務局資料のコードの見直しの方向性①に記載されていますが、上場企業等の監査を担う監査法人における組織的な運営の姿を念頭に行っていくということでありまして、これによって監査の品質を高める、あるいは、問題事例の発生を抑止するということに向けての見直しということですので、今まで各メンバーの皆様からも議論があったとおり、今まで行ってきた自主規制による協会の品質管理レビュー、この品質管理レビュー自体は今後も残るわけですが、それを踏まえつつ、品質管理レビューを活用しつつ、新たな法的裏づけのある登録制度になっていくわけです。これによって何がどう変わって、どこが見直されることによって登録制度がより充実した形になるのかということについて、分かりやすく整理をしていただくことが良いのではないのかなと思っております。
自主規制から法的裏づけのあるものになるということは非常に重たい変化だと思います。自主規制を十分活かしながらやっていくという点については、もともとの議論の中でも少し分かりにくいところではあったので、本当に何がどう変わっていくのか是非整理していただければと思います。座長と事務局を含めてご相談いただければと思います。
事務局のほうからご説明いただいたガバナンス・コードの見直しの方向性に関してですが、これについては、私は「コードの見直しの方向性(案)」と書かれている内容について、基本的に全く異存はないということでありまして、その上で若干補足的なコメントをさせていただきます。見直しの方向性の②のところで、コードの位置づけ・記載内容の右側の2つ目の黒丸のところ、法令で定められている事項については必要最小限にとどめるとあり、その下の矢羽根のところで、法令で開示が義務づけられているが、「原則5」において、監査法人が説明すべき項目として明記してはどうかということで、私はこれに賛成です。
法令で定めてあるからといって記載しなくていいということではなくて、やはり、それを見て品質管理の全体像が見えるという意味では、ぜひ原則5に書いていただいて、それをきちんと開示していただくことが必要と思います。
それから、もう一点は、確認も含めてですが、④の独立第三者の選任ということで、監督・評価機能を担う独立第三者に期待する要件を開示することを原則3にとあるわけですが、この「要件」という言葉、確認させていただきますと、今現在のコード原則3の考え方のところに、「例えば、企業における組織的な運営の経験や資本市場の参加者としての視点などを有する、外部の第三者の知見を活用すべきである」とあります。これは現在のコードを策定する際の議論において、第三者の視点を入れることが非常に重要ということで記載されたと記憶しています。
現在は「例えば」と書いてあるわけですが、ここで言っている「要件」というのは、企業における経験であるとか、資本市場における経験であるとか、そういったことについて例示ではなくてもう少し要件的に書いていくという、そういう方向性だということでしょうか。その2点、意見と確認の質問です。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。すみません。先ほど、栗原メンバーのほうから1つご質問をいただいていまして、報告書の中身のところですけれども、協会のほうでご説明いただきたいと思いますが、この6つの基盤の中で、品質管理のレビューで、そこから外れる内容についてはどう対応するのかということであったかと思いますが、栗原メンバー、もう一回確認させてください。それでよろしいでしょうか。
【栗原メンバー】
ありがとうございます。協会がやっていらっしゃる品質管理レビューは、各法人が出します年次報告書の中の6つの基盤、いずれも関連はしてはいますけれども、このうち品質管理という点を主に見ていらっしゃるということであって、例えば、ITですとか財務ですとかについては、踏み込んでレビュー対象にはしていないと考えてよろしいんでしょうか。
【八田座長】
南先生、いかがでしょうか。
【南日本公認会計士協会副会長】
南です。まだ、年次報告書については、これから公表をして、これがレビュー対象になるということですので、どこまでレビューをするかということについては、これからの検討となります。
先ほど申しましたように、1の(1)のところで、理事長のメッセージとして、監査品質に向けてどのように取り組んでいるのか、どのような意識でやっているのかということを宣誓していただきます。そこに事務所としての特徴であるとか、他事務所と比べて差別化している点とかを主張していただいて、それに沿って6つの基盤を具体的にどのように強化しているのかということを説明していただきます。
監査品質という観点からいきますと、監査対象になっている被監査会社の規模であるとか複雑性であるとか事業内容であるとか等によって、当然、人的リソースをどの程度を確保すべきかとか、IT化をどこまで監査の中で行っていくべきかということが決まってまいりますので、この(1)の品質管理基盤だけじゃなくて、それぞれ6つの基盤が相まって監査品質に関わっていると思います。
そういう意味で、レビューでは総合的に判断するのだというように考えておりますけれども、今後、これから年次報告書のガイダンスを出して、具体的に中身が固まってきますと、レビューをどこまで行っていくのかということについては検討させていただきたいと思っております。
【八田座長】
どうもありがとうございます。大変失礼いたしました。
それでは、石原メンバーのご質問にもありました内容について戻らせていただきます。ご質問がありましたが、最初のほうの再三繰り返しの議論かもしれませんが、今般、上場会社監査登録制度が法制化され、それを踏まえた上で、日本公認会計士協会がさらなる自主規制の発揮ということで、施策を講じようとしているわけですが、どういう方向性、どういう整理ができるのかということで先ほども伺いましたが、これについて、突然ですが、金融庁のほうはどういうふうな認識をお持ちなのか、もし伺えれば、こんなようなイメージなのかというのがもしあれば教えていただきたいのですが。齊藤さん、お願いします。
【齊藤開示業務室長】
ありがとうございます。今回、改めて登録制度が法定化されるということで、協会様のほうでも、それに基づいて色々な取組みを強化されていくということであります。取組みを強化していくということについては、もちろん今までも、登録制度の枠組みの中でレビューというところをやられてきているわけですけれども、法定化していくと規律づけというところが重要になってきますので、そこはどういうふうに規律づけをしていくのかというところです。ここは先ほどのレビュー体制も必要ですというのは、ここは必要な対応になってくると思います。そうでないと、今まで以上に規律づけしていくというのは難しいというところはあろうかと思います。
ただ、一方で、規律づけしてくださいと言うだけではなくて、今回、どういう観点で規律づけをしていただく必要があるのかということで、また、どういうふうに中小監査法人様の体制を整備する必要があるのかというところをより明確化させていただいた上で、規律づけ、エンフォースメントしていただくというところだと思いますので、そういう意味で金融庁としても今回コードを見直させていただいて、こういうことをやっていただきたいというのを示させていただいた上で、そういうのも参考にしながら情報開示もしていただいた上で、レビューのほうもしっかりやっていただくという、そういうふうなことを考えているというところでございます。
【八田座長】
どうもありがとうございます。突然振りまして申し訳ないです。
今のご回答、私も日頃考えているのと全く同じでありまして、文献的にも、自主規制というものの要件の1つに、厳格な懲戒処分の制度が機能しているかどうかというのがあると言われています。そうしますと、法律や規則に直ちに触れるわけではないけれども、やはり公共性の高い独占業務を担っている団体として、このような事務所の対応あるいは業務内容では好ましくないというのであれば、その場合に、厳格な規制対応、処分が求められるのではないかなという気がするのです。したがって、そこでのJICPAの役割は、非常に大きなものが私は今後求められてくるだろうという気がします。これは私の個人的な見解ですので、参考にしていただければと思います。
もう一つ、この独立の第三者に対して期待する要件というところで、現行の原則のところで「例えば」とありますが、どういう方たちをイメージしているのか。もし追加的でご発言があれば、協会のほうからご説明いただけますでしょうか。茂木メンバーでも南先生でも構いませんが。
【南日本公認会計士協会副会長】
ありがとうございます。独立の第三者という点は、今、中小監査事務所になかなか監督・監視機構を具体的に持つのは難しいのではないかなと考えておりまして、機能を持てばいいということで今考えてはいるのですけれども、ではどうやって機能を持つのかという話ですが、パートナー会議、社員会であるとかそのような会議体のところに独立第三者の方に入っていただいて、その議論の内容を見て、アドバイスをいただくというようなことも1つの方策かなと思います。常置的な機構、機関を設けるのではなくて、そのようなことが可能かなと考えております。
要件そのものについては今後の検討課題かと思っております。
【八田座長】
どうもありがとうございます。茂木メンバー、何か追加でご発言ありますでしょうか。
【茂木メンバー】
ありがとうございます。今、南のほうからご説明申し上げましたけれども、前回のところの議論でもお話しいただいておりますように、この第三者の視点というのをどう生かしていくか、我々の業務また組織運営に反映していくかというところが、一番重要な目的であると認識しています。それを生かすために、今、南のほうでも申し上げましたように、どのようなやり方が中小監査事務所等も含めた実態により適切にマッチするのかというような点から、この点は考えていく必要があるだろうというふうに考えています。
その中で、特別な機関を設置するということももちろん1つの選択肢でありますけれども、それを設置せずに、経営監視機能、そういった第三者の目線を反映するための機能といったものを生かしていくことが重要だろうと思っています。
その上で、今、石原メンバーからもお話ありましたように、第三者に期待する要件というこの「要件」という表現には、「要件」という言い方が適切なのかというところについては、若干引っかかるところがあります。第三者にどのような役割を期待しているか、それをどのようにこの第三者を生かしてくれるか、そういったことを考えていくことが必要ではないかと考えております。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。茂木メンバー、ほかにご発言のご連絡が来ていますが、よろしいでしょうか。
【茂木メンバー】
すみません。先ほどの南のフォローを少しさせていただこうかと思います。
【八田座長】
どうもありがとうございます。
【茂木メンバー】
品質管理レビューの対象範囲については、先ほど南が申し上げましたように、6項目の中で、品質管理制度に対してどのような影響を与えるかという切り口になるかと思います。しかし、当然のことながら、今日、ここでも議論していただいていますけれども、ガバナンス等についても品質管理に影響を与える部分が当然ありますので、そういった点については対象になってくるというふうに思っております。
あともう一点、お話しいただきましたレビューの結果を受けた被監査会社の対応というところでございますけれども、現在においても、監査基準委員会報告書の規定の中で、私ども品質管理レビューの結果、もしくは、金融庁CPAAOBの検査結果については、その概要を被監査会社の監査役にお伝えするというような対応を取っているところでございます。
以上、ご報告でございます。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、弥永メンバー、お願いします。
【弥永メンバー】
ありがとうございます。1点だけです。
このコードの見直しの方向性案には、私も基本的に、非常によくできていて賛成なのです。けれども、スライド⑦のところですが、このガバナンスの充実というところで、見直しの方向性として、各監査法人が中長期的に目指す姿やその方向性を示すKPIの開示を求めることを明記することとするとされております。これは監査法人を念頭に置けば、もっともだと思うのですけれども、これを個人の会計士に読み替えるというのは結構難しそうな気もいたしまして、読み替えるというだけではなくて、もし可能であれば、前回の主な議論を踏まえていただいて、各監査事務所における会計監査の品質向上に向けた取組みを評価できるような、そのような情報を監査法人だけではなく共同事務所あるいは個人の会計士の方々に開示していただくことが期待されているということが分かるようにぜひ書いていただくと、このガバナンスの充実あるいは品質管理システムの辺りについてもよろしいのではないかと思うのです。そこをもし可能であれば工夫していただきたいなと思います。
以上です。よろしくお願いいたします。
【八田座長】
ありがとうございます。それでは、岡田メンバー、お願いします。
【岡田メンバー】
岡田です。ありがとうございます。私もこのコードの見直しの方向性については、ほとんど異論はございません。
細かいところですが、②のところの上、適用方法のところに、「形だけのコンプライよりもコンプライしない理由や」云々と書いてあるわけですが、「コンプライしない合理的な理由や」としてはどうかと思います。さらに、「必要に応じて将来的なコンプライの方向性を十分かつ具体的に説明することが望ましい」ということに加えて、「実質的に同じ効果を持つ代替的方法で対応している旨の説明があることが望ましい」というようなことを加えたらどうかと思います。これはちょっと冗長になってしまいますけれども、他の部分で言っていることもこういうことなので、そうしてはいかがかと思います。
それから、ITですけれども、⑧ですが、ITテクノロジーについて、ここに書いてある内容はそのとおりで、これで十分と思いますが、私はIT基盤の実装化というのは、いかに効率的に監査業務がされているかということを見る上で大変重要なマターだと思います。また、監査フィーの合理性を見る上でも大変参考になります。そして、不正発見のためのデータアナリティクスの活用実績など、これは透明性報告書になるのかもしれませんが、これも示していただけるといいと思います。
それと、サイバーセキュリティー対策はもちろん重要ですけれども、事務所における顧客情報の管理、例えば、リモートワーク時の情報の管理なども透明性報告書に明示していただくといいと思いますので、どこまで書き込むかはありますけれども、その辺が私が気になっているところであります。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、澤田メンバー、お願いします。
【澤田メンバー】
澤田です。事務局の資料について発言をさせてください。まず、大きなコードの見直しの方向性については私も賛成です。「監査の品質に大規模も中小もない。上場会社の監査の担い手としては、均一的な監査品質を維持してみんなで向上していく。」というコンセプトは当然私も考えているところであります。ですが、今回の有識者会議の目的が監査法人のガバナンス・コードの見直しということを考え、いま一度、平成28年の会計監査の在り方懇談会の提言や当時の議事録も拝見し、気に掛かる点として大手上場企業等の監査の担い手としての大手監査法人の組織の複雑化・大規模化に対応し切れていないことが監査品質確保に問題を生じさせているというくだりがいくつか主要な部分で見られます。
ガバナンス・コードの設定当時に私は検討会議に出ていなかったので、どういう議論がされてこのガバナンス・コードができたのかが議事録でしかうかがえないのですが、ガバナンス・コードの文書を見ていると、例えば、原則2の考え方のところしかり、前文のところしかり、大規模、大手の企業を監査している大手の監査法人が自分たちの組織の複雑化・大規模化に対応し切れていないことが監査品質確保の問題視をさせているがために、このガバナンス・コードを策定されているように見えました。そこから今回のコンセプトとして、監査の担い手としての中小監査法人の監査品質は大丈夫なのか、ガバナンス・コードは中小監査法人であっても適用させるのは当たり前だろうという考え方に変化しています。
私の監査法人の規模感は大手監査法人の100分の1に満たない規模ですけれども、それでも、組織体制をつくっておいたほうが、僕は経営者として、トップとして安心感があるということで主体的に取り組んでいるところです。何回も申し上げておりますけれども、116の中小監査法人がある中で様々な規模の中小監査法人があります。ガバナンス・コードの原則のところに、監査の品質を維持していくためになぜこのコードが必要なのか、監査法人の組織が大規模化・複雑化しておらず、中小規模でシンプルであっても、監査の品質の維持にとって、この原則がプリンシパルとして絶対必要なんだよということをもう少し分かりやすく、中小監査法人用に作り直す必要はないと思っていますが、各原則の作り直しに当たって、そこを前提にカスタマイズをどのようにされるのかなというのが見直しの中で疑問に思っております。
その中で、特に3番のところですね。監査の品質向上という目的では、我々でも外部からの通報制度というものがありますが、コンプライ・オア・エクスプレインとはいっても、やはりこの3番のところが、中小監査法人をはじめとする全ての監査法人に監督・評価・支援が必要なのかについて懸念があります。ここは支援といっても気づきを与えるという観点でお話ししますが、監査法人を経営していく中で、外部の意見を聞き「こういう考えがあったんだな」とか、我々社員、当事者メンバー以外の者も入ることで緊張感を持ったりですとか、我々の考えが間違っている場合に物申してくれたりすると期待している部分もあります。しかし、経営というとあまりにも幅が広いため、この原則3番のところを中小監査法人という、明らかに大規模な監査法人と違い組織が複雑でない規模感のところに適用するに当たって、コードの目的を明記していただくようにしていただいたほうがいいと考えます。
その上でのプリンシパルですので、それを各監査法人がどのようにして適用していったり簡便的な適用をしたりしていくのかというのは、主体性でやっていきたいと思っておりますが、そこの3番のところについては、より目的を明確にしていっていただいたほうが業界側としてはいいのではないかと感じております。
以上になります。
【八田座長】
どうもありがとうございます。
長々とご説明する時間もないですけれども、前回の在り方懇に参加していた一メンバーとして、私の立場で少しだけご説明させていただきますが、あのときに確かに大手監査法人、つまり、上場会社監査を担当している大手監査法人をターゲットにしたガバナンス・コードの策定に至ったわけですけれども、本来であれば、別に大中小関係なく適用されなくてはならない。ただ、あのときの歴史的背景から見ると、大手監査法人においてさえ、十分な監査が行われていなかった不正な事案が露見してしまった。
したがって、日本の監査制度を牽引していただくためには、まずもって率先垂範で大法人が襟を正してほしいと。しかし、中小でもちゃんとそれに遵守できるところはやってくださいねという流れで来たわけであって、別に中小を無視したわけでもなければ軽視したわけでも何でもないということです。ただ、中小法人にとっては、時期尚早であるという認識がありました。全面的にこのようなガバナンス・コードが導入されてくることによって皆さん方の負担とか懸念があまりにも大きいということで、軟着陸する意味で、大手のほうに特化した議論になったのではないかというふうな感想を持っております。ちょっと余分なことをご説明いたしました。
それでは、小野メンバー、お願いいたします。
【小野メンバー】
ありがとうございます。小野です。私も今回のガバナンス・コードの見直しの事務局による方向案につきましては、基本的に賛成です。
その上で、2点ばかり、細かいことになって恐縮ですけれどもコメントさせていただきたいのですが、3ページの右下のボックスのところの「上場企業等の監査を担う監査法人には、より一層高い組織としての監査の品質の確保が求められることを『原則1』の考え方に明記する」というここのくだりですけれども、この点については全く異論はないのですが、この点は既に現行のコードの原則1の考え方の中に記載されていますので、それに加えて、上場企業等の監査を担う監査法人においては、その規模に関わらず一定の監査品質の確保が必要というような、そういうくだりの内容を少し追加してもらうことをご検討いただけないかというのが1点目のコメントです。
それから、2点目は、次のページの右上のボックスの3つ目の黒丸ですけれども、特別な機関を設置せずに経営機能や監督・評価機能を確保している場合は、その合理性を説明することを原則に明記することとするということですけれども、この点に関しては、中小監査法人で監督・評価機関を設けずに監督・評価機能を確保するためには、それなりに創意工夫が必要じゃないかというふうに思うのですが、実務的にはなかなか難しいのではないかというふうに思います。
ただ、実際そういう機能を持たせるためにどうするかということで色々考えられますから、それはそれで尊重すればいいのですが、監査法人では、社員会とかあるいは社員総会が最高意思決定機関になるわけですけれども、そこに社員以外の独立第三者に、例えば、監事になってもらって、監督・評価機能を持ってもらうというようなこともあり得るのではないかというふうに思います。
これは昔私がおりました、大分昔ですけれども、大手の監査法人の中でも、経営会議の中に監事が何人かいるのですけれども、その中に第三者の社外監事を設けたというような例もありますので、そこら辺は、仮にそういう場合も認め得るとしたら、例として挙げてもらうのもいいのではないかなというふうに思った次第です。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、上田メンバー、お願いいたします。
【上田メンバー】
ありがとうございました。まず、ご説明と資料をありがとうございました。私も皆様と同様に方向性について賛同しております。特に実効性確保という観点から、中小監査法人においては大手と異なって形式的な対応が難しいということは十分分かりますけれども、他方で、実質面ではこれが劣っているようなことがあってはならないと思っております。仮に実質の前提として形式面あるいは組織的な対応が必要であれば、それも1つ検討するべきものであろうと思います。
以上、そういう前提を踏まえて、上場会社を担当する監査法人、監査事務所のガバナンスという観点について、実効性確保という視点から、資料に沿って2点ほどコメントさせてください。
まず、第1点目、方向性案の2ページ、②になります。コンプライ・オア・エクスプレインの部分です。ここは、コンプライ・オア・エクスプレインに加えて、エクスプレインの場合にオルタナティブ、すなわち代替手段の説明まで行うことを求めてはいかがかと考えるものでございます。つまり、なぜエクスプレインなのか、遵守しないのかという理由だけではなくて、実態に応じてこういう違った手法で目的を達成していますという説明が必要ではないでしょうか。特にこれは中小監査法人の場合、形式対応が難しい場合には、この代替手段というのは大変重要になってくると思います。
というのが、このコンプライ・オア・エクスプレインというのは、外部のステークホルダーからのモニタリング評価がある場合には、大変よく機能します。例えば、上場会社の場合には、投資家とか株主、あるいは、社会の目にさらされていますので、コンプライ・オア・エクスプレインに基づいて説明や対応をしっかりしないと、外部のステークホルダーからしっかりと監督されてしまうわけです。
ところが、監査法人の場合には、こういうステークボルダーというのが大変少ない環境にあるようですので、ぜひこのエクスプレインに加えて、代替手段の説明というところまで書き込んでいただけるとありがたいと思います。
ただしですが、まず、その大前提として、コンプライ・オア・エクスプレインについては、ガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードで既に金融庁として公表されて、日本の政府として公表されておられる定義がありますので、基本的にこれは同じものがあるというのがよろしいかと思います。コードによって定義が違うのも混乱するだけですので。その上で、監査法人については、特にそういう点が必要なのではないかと思った次第です。
次に、④のところで、独立第三者に関する部分についてです。独立第三者に期待する要件を開示というふうに書いてございますけれども、ここについては、これはベストプラクティスとしての独立性基準のようなものをコードで記述していくのが望ましいのではないかと思いました。
その上で、各監査法人、監査事務所におかれては、こういった独立第三者について、独立性についての説明、その役割の説明、どういった立場でモニタリング等に関与してもらうのか、それが形骸化せずに反映させる仕組みはどうなっているかといったところの開示・説明することが求められるのではないかなと思った次第です。
以上です。ありがとうございました。
【八田座長】
どうもありがとうございます。それでは、茂木メンバー、お願いいたします。
【茂木メンバー】
ありがとうございます。茂木でございます。今お話をいただいておりますように、監査事務所の組織的な運営を確保していくためにこのガバナンス・コードの見直しを行うという点について、賛同しております。その前提の下で、1点の確認と全般的な事項について、2点発言させていただければと思っております。
全てこれは今後コードの文書化に当たってご検討いただければと考えております。
まず、1点目、確認でございます。1ページ目のところで確認をさせていただければと思いますけれども、この参考のところで書いてある制度部会報告のところで、若干この制度部会報告で書かれている文言から一部はしょられている部分があるのではないかと私は感じています。
例えば、日本公認会計士協会において、監査法人への移行に向けた取組みを計画的に進めるべきであるというような記載がありますけれども、監査法人への移行を進めるべきという形の記載ではなかったのではないかと見ております。これはもしかすると私の見落としかもしれないので、確認をしていただいて、元の文章に合わせてご対応を検討いただければと思っております。
それから、全般的な事項について2点発言させていただければと思いますけれども、1点目は、コンプライ・オア・エクスプレインの徹底ということでございます。ガバナンス・コードの内容につきましては、監査事務所の品質に関する健全な理念を反映できるようにするべきだと考えています。エクスプレインについては、監査事務所がそのような体制を選択する合理的な理由を記載するものであって、市場関係者に当然納得感のあるものでなければならないと考えています。形式的なコンプライよりも意味がある場合も多く、また、監査事務所が情報を開示して、それを市場関係者が見て監査法人を選択するというようなことを通じても、持続的な監査品質の向上を目指していくことができるのではないかと思っています。
また、業界の活性化、有望な人材を引きつける、今後、この監査の現場で多くの人に活躍してもらうためにも、形式的な参入障壁になってしまうようなものについては、高過ぎないものとすることが必要ではないかと考えております。
2点目は、監査品質の向上につなげるという目的の徹底と、その目的との関連性の明確化ということでございます。グローバルネットワークとの関係について言及されているところでございますけれども、監査品質に係る事項を中心に開示していくべきものであるという点については、そのとおりだというふうに思っております。
一方で、これは民間企業のガバナンス・コード、開示でも同じことでございますけれども、競争上の秘密に当たる情報、契約上の守秘が求められる情報というようなことも考えられますので、開示することによる公益と民間企業の事業上の秘密、こういったバランスを取ることが重要だと考えております。この点につきましては、2015年にIOSCOから、「公開企業を監査する事務所の透明性」というものが公表されておりまして、その報告書の内容も参考にして、具体的な開示項目を検討いただいたらいいのではないかと考えております。
先ほど、KPIということが触れられております。その趣旨から、今まで申し上げてきた監査品質の向上という目的からすると、個人的には、AQIというほうがしっくり来るのではないかと感じているところもございまして、この点についても、品質に関する部分であるということを明確化していただく必要があるかと感じております。
すみません、長くなりました。私からは以上でございます。
【八田座長】
どうもありがとうございます。最後の言葉の話ですけれども、確かに、PCAOBはAQIをベースに議論されていますので、そちらのほうがしっくり来るのではないかと私も思います。
それでは、栗原メンバー、お願いします。
【栗原メンバー】
ありがとうございます。コードの見直しの方向性につきましては、全般的に私も違和感はございません。特にコンプライする場合でもエクスプレインする場合でも、真に実質を伴っているのかどうかを説明するというところは大事ではないかと思います。それから、中小監査法人の受入れに馴染む工夫のところで、特別な機関を設けないとしても、代替的方法によってきちっとその機能が確保されていることを説明することも重要だと思います。そういった趣旨でコードの見直しの方向性が書かれていることについては賛成いたします。
2点コメントですけれども、その下にあります独立第三者の選任というところですが、独立第三者に期待する要件を開示するとありますが、独立第三者がどういう場合に独立第三者と言えるのかという第三者自体の要件についても、ある程度目線を合わせたほうがいいのではないかと思いますので、例示をするのか、定義をする事を検討いただければと思います。それが1点です。
それから、2点目に、8ページのところで、ITテクノロジーがあります。先ほど協会はこのIT基盤をどの程度見るのでしょうかという質問をさせていただいたのですが、大手の監査法人と中堅・中小の監査法人で様々なリソースの違いがありますが、IT基盤の差も非常に大きいのではないかと思います。色々な仕組みで代替できる、先ほどの独立性の組織的なカバーができるようなところと、一方で、ITなどの場合はそういう代替がなかなか難しいと思いますので、そこについて基準を満たしていくことは、かなり中小・中堅法人にとってハードルが高いのではないかと思うのです。
ですから、場合によっては、こここそ協会のサポートですとか、それから、IT基盤を何らかの形で共同化していく、あるいは、外部委託によりクリアしていくようなことですとか、例えばですが、協会が整備したり、あるいは、推奨するような基盤を共同利用していくような、そういったサポートもあって良いのではないかと思います。ここは切実な問題ですので、サポートを得ながらIT基盤をきちっと整えていくことが、このコードを守っていくために重要ではないかなと思います。
【八田座長】
よろしいでしょうか。どうもありがとうございます。
座長ですので、あまり個人的な意見は差し控えるべきだと思いますが、事務局ともこの見直しの方向性について、一、二回事前のご相談もさせていただいております。その中で、私が前回の検討会、そして、今回もそうですけれども、一番気になるところが、この4ページのところの中小監査法人の受入れに馴染む工夫というところでの例の監督・評価機構の設置の有無、並びにその機能の重視というところです。どなたかも外の目は絶対不可避的なもので避けられないということで、何がしか工夫が要るのではないかというときに、自主規制の一環として考えるのであれば、1つヒントになるのが、少し古いですけれども、1970年代後半のアメリカ公認会計士協会でピアレビューが始まったときに、その監視モニタリング機構としてPOBというのが組成された。Public Oversight Board(公共監視審査会)です。
これは残念ながら、21世紀初頭のエンロン事件、ワールドコム事件等を踏まえて非営利組織の行政機関のPCAOBに生まれ変わるわけですけれども、このPOB的なものが日本公認会計士協会の主導でもし設置されるのであれば、中小監査法人をそこでモニタリングないしは評価を受けることができるのではないかなと考えています。こういう機関の設置というのはヒントとしてあるのかなということを申し上げましたけれども、特にそういった外出し的な議論というのは全く触れられていませんので、これは運用の部分で協会さんのほうでご議論されるのかもしれませんけれども、1つヒントとしてご提案しておきたいと思います。
時間が迫ってまいりましたが、あと一、二分、どうしてもご発言というご希望があれば伺いますが。よろしいでしょうか。茂木メンバー、私のこのアイデアは駄目でしょうか。
【茂木メンバー】
八田座長、ありがとうございます。ご意見は検討させていただいております。もう少々お時間をいただければと思います。
【八田座長】
ありがとうございます。
それでは、特にないようでしたら、本日はこれで終わらせていただきますが、ほかにもご意見、ご質問等がございましたら、事務局のほうにお問合せいただきたいと思います。
すいません。ごめんなさい。チャットのほうで。石原メンバー、失礼いたしました。ご発言がありますので、よろしくお願いします。
【石原メンバー】
ありがとうございます。何度も申し上げて、しつこいようで申し訳ないですけれども、今回の法制化は大きな変化だと思っています。今までは、協会の品質管理レビューを通じた自主規制であり、この品質管理レビューというのは、品質のところが重点であったと理解していますが、一方で、これまでの監査法人のガバナンス・コードの対象は大法人に基本的には限定されていたわけですから、それはそれで大法人には受け入れられていたということですが、今後は、コードが、見直しの方向性に記載のとおり、変わっていく、追加されていく、考え方が示されていくということの中で、特に中小監査法人がこれを受け入れることが上場企業の監査をする前提条件になっていく。そのことを日本公認会計士協会がレビューしていくことになります。
そのときには、何度も議論になっていますけれども、品質だけの問題ではなくて、体制等、今までもそういうこともレビューの中で検討されていたのかどうかというのは必ずしも分かっていませんが、少なくとも品質管理に問題がなければいいということではなくて、リスクを抑制することも含めて体制が整備されているということ、それから、第三者性の問題も含めて、そういう代替の方法も含めて監督機能が発揮されているということ、それから、当然、情報開示がなされているということ、こういったことが今後は、品質レビューという名称で適切なのかどうか分かりませんが、これまでのレビューの仕組みを、より大きくしていくということの中で担保されていることを協会として責任を持って見ていくわけです。ですので、今までの品質管理レビューでは不十分ではないのかと思っているわけです。
したがって、今後どうレビューを変えていくのかということについて、ぜひご説明をいただきたいと思っております。
以上です。
【八田座長】
どうもありがとうございました。この件に関しましては、次回以降、必要があればまたご発言いただきたいと思います。進行の不手際がございまして、失礼いたしました。
本日いただきましたご意見も踏まえ、事務局とも相談いたしまして、本検討会を運営してまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。なお、次回以降につきましては、事務局とも相談し、これまでのご意見を踏まえ、監査法人のガバナンス・コードの改訂案をお示しできればと思います。
では、最後に、事務局から連絡等がございましたらお願いします。
【齊藤開示業務室長】
ありがとうございます。次回の有識者検討会の日程でございますけれども、皆様のご都合を踏まえた上で、後日、事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
事務局からは以上でございます。
【八田座長】
どうもありがとうございました。
それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。大変ありがとうございました。
―― 了 ――