スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第26回)議事録

1.日時:

令和3年3月31日(水)14時30分~17時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館9階 共用会議室3

【神田座長】  

 すみません、予定の時刻をちょっと過ぎてしまいましたけれども、ただいまからスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議の第26回目の会合を開催させていただきます。

 皆様方には、いつも大変お忙しいところを御参集いただきまして、あるいは御参加いただきまして、誠にありがとうございます。

 本日でございますけれども、これまでの御議論を踏まえて、事務局でまとめていただきました3つの文書について、事務局から説明をしていただきます。1つ目が「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について」という、「資料」と書いてあるものでして、2つ目が「コーポレートガバナンス・コードの改訂案」、別紙1です。そして、「投資家と企業の対話ガイドライン改訂案」、これが別紙2になるかと思います。この3つについて、事務局から御説明をしていただきます。その後、皆様方に討議をお願いするということになります。

 なお、本日は、ワリングメンバーから英語での御発言が予定されております。そこで、本日は同時通訳を試みさせていただきたいと思います。メンバーの皆様方の中で、同時通訳をお聞きになられたい方は、事務局からあらかじめお送りさせていただいておりますリンク先にアクセスしていただくか、あるいは番号にお電話をいただきたく思います。また、ユーチューブで視聴していただいている皆様方におかれましては、英語のみの配信となりますので、大変申し訳ありませんけれども、その点お許しをいただければと思います。

 それでは、まず事務局からの御説明をお願いします。島崎課長、よろしくお願いいたします。

【島崎企業開示課長】  
 よろしくお願いいたします。それでは、資料、それから別紙1、別紙2について御説明させていただきます。

 まず、資料の「コーポレートガバナンス・コードと投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について(案)」とついているものでございます。こちらは今回の改訂の背景、考え方を含めて御説明させていただいている資料です。

 まず繰っていただきまして、「Ⅰ.はじめに」の部分は、コロナ禍を契機とした企業を取り巻く環境の変化の下での新たな成長を実現するには、各々の企業が課題を認識し、変化を先取りするということが求められるといったような認識、東京証券取引所の市場区分の適用が開始になるという背景、そういった状況の下で、ガバナンスの諸課題に企業がスピード感を持って取り組むこと、そして、その企業のより高度なガバナンスを発揮する後押しをするために御議論もいただき、12月には意見書をいただいているところ、今回の改訂案に至っております。「コンプライ・オア・エクスプレインの枠組みの下で」ということを1ページ目の中段あたりに記させていただいていますが、それを明確にした上でコード等の提言をすることとしたという内容になっております。

 1ページの下のほう、「Ⅱ.本コードと対話ガイドラインの改訂に当たっての考え方」でございますけれども、「1.取締役会の機能発揮」では、意見書の(5)でもいただきましたように、事業環境が不連続に変化する中での取締役会の機能発揮について12月にも御議論いただいていまして、提言いただいているとおりのことでございます。それから、前回の改訂で、経営陣において特に中心的な役割を果たすのはCEOで、その選解任は最も重要な戦略的意思決定であるというような委員会の改訂もしており、それの今日に照らした指摘などを踏まえて、委員会等についての改訂を行っていくという方向性などについて示してあります。

 3ページ目が、「2.企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保」では、こちらも意見書(5)でいただいておりますが、不連続な変化を先導し、新たな成長を実現する上では、取締役会、それから経営陣に多様な視点や価値観を備えることが求められます。その上で、こうした取締役や経営陣を支える管理職層における多様性の確保や、あるいは多様性の確保に向けた人材育成、社内環境整備というものの重要性について記載させていただいています。

 「3.サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)を巡る課題への取組み」ということで、1行目から示されていますが、中長期的な企業価値の向上に向けてということで、リスクとしてのみならず収益機会としても、積極的・能動的に対応することの重要性の高まりなどを示しています。そして、この3ポツの中では、人的資本や知的財産に関する取組みの重要性、あるいはサステナビリティの要素として取り組むべき課題には、全企業共通のものや、各企業それぞれの事情に応じて異なるものがあり、実質的な対応の重要性といったことについても触れているところでございます。

 「4.その他個別の項目」では、個別の論点のことも記載していまして、(1)が「グループガバナンスの在り方」です。グループ経営の在り方を検討する昨今の動きなどを踏まえて、「支配株主は、会社及び株主共同の利益を尊重し、少数株主を不公正に取り扱ってはならないのであって」とした上で、支配株主を有する上場会社においてはということで、こちらのほうのガバナンスの在り方について後ほど改訂をしていくということを書いてあります。

 (2)が「監査に対する信頼性の確保及び内部統制・リスク管理」ということで、これは前回御議論いただきましたけれども、意見書(4)のほうを受けて、内部監査部門と取締役・監査役の連携の重要性ですとか、あるいは内部統制やリスク管理について、企業価値向上の観点から企業として引き受けるリスクの適切な決定等の重要性の指摘ですとか、そういったことについて背景、考え方を示させていただいています。

 (3)は「株主総会関係」であり、株主総会での意思決定のためのプロセス全体を建設的かつ実質的なものとするという問題意識の下での考え方と改訂の内容について、ここの部分で示させていただいています。

 (4)について、「上記以外の主要課題」として、事業ポートフォリオや、あるいは政策保有株式について示させていただいております。詳しいコードの改訂の中身は、これから御説明させていただきます。

 「Ⅲ.本コードの改訂の適用について」ということで示させていただいています。まず、2022年4月より東京証券取引所において新市場区分の適用が開始になりますが、上場会社は、遅くとも本年12月までに、本コードの改訂に沿ってコーポレートガバナンス報告書の提出を行うことが望まれます。また、プライム市場上場会社のみに適用される原則等に関しては、準備期間等も鑑み、2022年4月以降に開催される各社の株主総会の終了後、速やかにこれらの原則等に関する事項について記載した同報告書を提出するよう求めることが考えられ、これらの提出時期については東京証券取引所において具体的に検討がされることが求められるとしております。

 また、新市場区分になりますが、プライム市場上場会社以外の、その他の市場の上場会社においても、プライム市場上場会社向けのガバナンス項目を参照しつつ、ガバナンスの向上に向けた取組みを進めることが望ましい旨、またグロース市場上場会社においては、基本原則のみがコンプライ・オア・エクスプレインの対象となることが考えられるが、各社の置かれた状況に応じつつ、原則や補充原則にも沿いながらガバナンスの向上に向けた自主的な取組みが進められることが望ましい旨も記載しております。それから、このコードの改訂案は東京証券取引所における上場会社を念頭に置いたものでございますが、その他の証券取引所においては、本コードの改訂案を基に、当該取引所の各市場の性格も踏まえた上で、各市場に求められる内容を検討することが望ましいとしているところでございます。

 「Ⅳ.おわりに」で、改訂について、速やかにコードの改訂、対話ガイドラインの改訂の期待が書かれております。

 こちらが資料のほうの御説明で、続きまして、別紙1に基づきまして、「コーポレートガバナンス・コード改訂案」を御覧いただければと存じます。ページの順に、改訂点について御説明させていただきます。

 まず、6ページでございます。議決権電子行使プラットフォームについてでございますが、補充原則1-2④において、「特に、プライム市場上場会社は、少なくとも機関投資家向けに議決権電子行使プラットフォームを利用可能とすべきである。」旨記載しております。

 続きまして、8ページ目でございます。第2章の株主以外のステークホルダーとの適切な協働のところでして、こちらの第2章の考え方のところで、昨今の、中長期的な企業価値向上に向けサステナビリティが重要な経営課題であるとの意識の高まりと、その中での我が国企業におけるサステナビリティ課題への積極的・能動的な対応を一層進めていくということの重要性について記載しております。

 続きまして、9ページ目でございます。補充原則2-3①では、「取締役会は」として、「気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等への危機管理など」ということで、サステナビリティをめぐる課題への対応について、その事例を示させていただいた上で、「サステナビリティをめぐる課題への対応は、リスクの減少のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、中長期的な事業が向上の観点から、これらの課題に積極的・能動的に取り組むよう検討を深めるべきである。」としています。

 続きまして、10ページ目でございます。補充原則2-4①で、こちらは先ほど御紹介しました12月の意見書の内容を反映しまして、「上場会社は、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともに、その状況を開示すべきである」としております。それから、「多様性の確保に向けた人材育成方針と社内環境整備方針をその実施状況と併せて開示すべきある。」ということにしております。

 続きまして、12ページ目でございます。英文開示についてでございますが、補充原則3-1②では、プライム市場上場会社における英文開示について記載しております。同じページの3-1③でございますが、サステナビリティに関する開示につきまして、「上場会社は、経営戦略の開示に当たって、自社のサステナビリティについての取組みを適切に開示すべきである。」とし、「また、人的資本や知的財産への投資等についても、自社の経営戦略・経営課題との整合性を意識しつつ分かりやすく具体的に情報を開示・提供すべきである。」としています。その上で、「特に、プライム市場上場会社は、気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動や収益等に与える影響について、必要なデータの収集と分析を行い、国際的に確立された開示の枠組みであるTCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである。」と記載しております。

 この点、意見書にもあるのでございますが、「TCFDまたはそれと同等の枠組み」に関連しまして、国際会計基準の設定主体であるIFRS財団において、TCFDの枠組みにもよりつつ、気候変動を含むサステナビリティに関する統一的な開示の枠組みを策定する動きが進められているところであって、我が国もこうした動きに積極的に参画することが求められています。その上で、今後IFRS財団におけるサステナビリティ開示の統一的な枠組みがTCFDの枠組みにもよりつつ策定された場合には、ここにあります、これがTCFD提言と同等の枠組みに該当するものとなることが期待されるということを意見書のほうで示しているところでございます。

 続きまして、14ページになります。グループガバナンスでございますが、第4章の考え方におきましては、「支配株主は、会社及び株主共同の利益を尊重し、少数株主を不公正に取り扱ってはならないのであって、支配株主を有する上場会社には、少数株主の利益を保護するためのガバナンス体制の整備が求められる。」と記載しております。

 それから、16ページ目に参ります。16ページでは、サステナビリティに関する取締役会の役割として、4-2②におきまして、「取締役会は、中長期的な企業価値の向上の観点から、自社のサステナビリティを巡る取組みについて基本的な方針を策定すべきである。」としております。「また、人的資本・知的財産への投資等の重要性に鑑み、これらをはじめとする経営資源の配分や事業ポートフォリオに関する戦略の実行が、企業の持続的な成長に資するよう、実効的に監督を行うべきである。」と記載しております。

 続きまして、同じように16ページ目でございますが、内部統制、全社的リスクマネジメントでございますが、こちらは前回の会議での御指摘なども踏まえまして、全社的リスク管理体制ですとか、あとはグループ全体を含めた内部統制、リスク管理体制の適切な構築といったものについて記載しております。

 17ページ目でございます。原則4-4は監査役の選解任などの役割、責務を果たす役割というもの、監査役及び監査役会の役割を明確にした記載です。

 それから、18ページ目でございます。原則4-8は、こちらも12月の意見書において提言がされておった事項でございまして、プライム市場上場会社は、独立社外取締役を少なくとも3分の1(その他の市場の上場会社においては2名)以上選任すべきであるとしております。これに関わらず、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、過半数の独立社外取締役を選任することが必要と考えるプライム市場上場会社(その他の市場の上場会社においては少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社)は、十分な人数の独立社外取締役を選任すべきである旨記載しております。

 それから、補充原則4-8③においては、支配株主を有する上場会社のガバナンス体制について、このような上場会社は、「取締役会において支配株主からの独立性を有する独立社外取締役を少なくとも3分の1以上(プライム市場上場会社においては過半数)選任するか、または支配株主と少数株主との利益が相反する重要な取引・行為について審議・検討を行う、独立社外取締役を含む独立性を有する者で構成された特別委員会を設置すべきである。」となっております。こちらも意見書のほうで、支配株主のみならず、これに準ずる支配力を持つ株主を有する上場会社においても、今回の提案を基にした対応が取られることが望まれるというような表現が盛り込まれているところでございます。

 19ページ目でございます。4-10①でございます。独立した指名委員会・報酬委員会の設置を明記することとしております。指名の検討に当たっては、「ジェンダー等の多様性やスキルの観点を含め、指名委員会の助言を得るべきである。」旨も記載しております。最後に、「プライム市場上場会社は、各委員会の構成員の過半数を独立社外取締役とすることを基本とし、その委員会構成の独立性に関する考え方・権限・役割等を開示すべきである。」としています。

 原則4-11では、ジェンダーや国際性に並ぶ形で、職歴や年齢も取締役会の多様性の1つとして記載しております。

 続きまして、補充原則4-11①ですが、「取締役会は、経営戦略に照らして自らが備えるべきスキル等を特定した上で、取締役会の全体としての知識・経験・能力のバランス、多様性及び規模に関する考え方を定め、各取締役の知識・経験・能力等を一覧化したいわゆるスキル・マトリックスをはじめ、経営環境や事業特性等に応じた適切な形で取締役の有するスキル等の組み合わせを取締役の選任に関する方針・手続と併せて開示すべきである。」とした上で、「独立社外取締役には、他社での経営経験を有する者を含めるべきである。」としておるところでございます。

 それから、21ページに移りまして、4-13③でございます。いわゆるデュアルレポーティングラインの重要性についての御指摘を踏まえた記載となっております。

 続きまして、23ページ目でございます。補充原則5-1①において、株主との対話の対応者に関して、「株主の希望と面談の主な関心事項も踏まえた上で、合理的な範囲で、監査役が面談に臨むこと」についても加えているところでございます。

 最後に、24ページ目でございますが、補充原則5-2①において、「上場会社は、経営戦略等の策定・公表に当たっては、取締役会において決定された事業ポートフォリオに関する基本的な方針や事業ポートフォリオの見直しの状況について分かりやすく示すべきである。」旨記載しております。

 以上、コーポレートガバナンス・コードの改訂案について御説明申し上げました。

 続きまして、別紙2に従いまして、「投資家と企業の対話ガイドライン改訂案」についてでございます。

 まず、1ページ目でございます。経営環境の変化に対応した経営判断で、ESGやSDGsに対する社会的要請・関心の高まりやデジタルトランスフォーメーションの進展、サイバーセキュリティー対応の必要性、サプライチェーン全体での公正・適正な取引の必要性等の事業を取り巻く環境の変化が、適切に反映されているかと、事業を取り巻く環境の変化の経営戦略等への反映について記載しています。また、サステナビリティに関してでございますが、例えば取締役会の下または経営陣の側に、サステナビリティに関する委員会を設置するなど、サステナビリティに関する取組みを全社的に検討・推進するための枠組みを整備しているかとしております。また、注のほうでは、1ページの下のほうで、CTOなどの経営陣の体制整備が必要との指摘があった旨を、カーボンニュートラルですとかデジタルトランスフォーメーションと関連づけて記載させていただいています。

 続きまして、投資戦略・財務管理の方針では、2-2で、「投資戦略の実行を支える営業キャッシュフローを十分に確保するなど、持続的な経営戦略・投資戦略の実現が図られているか」との記載、それから、「3.CEOの選解任・取締役会の機能発揮等」では、3-7のほうで、「取締役会の実効性確保の観点から、各取締役や法定・任意の委員会についての評価が適切に行われているか。」としておりまして、各取締役や委員会の評価について記載しております。3-8では、「必要に応じて独立社外取締役を取締役会議長に選任することなども含め、取締役会が経営に対する監督の実効性を確保しているか。」、3-10からは監査関係の項目になりますが、3-10は、監査役に適切な人材が「監査役会の同意をはじめとする適切な手続を経て選任されているか。」、3-11では、監査役の対応として、「監査上の主要な検討事項の検討プロセスにおける外部会計監査人との協議」、それから3-12では、内部通報関係で、「内部通報制度の運用の実効性を確保するため、内部通報に係る体制・運用実績について開示・説明する際には、分かりやすいものとなっているか。」ということについて記載しております。

 続きまして、4のほうに参ります。「4.ガバナンス上の個別問題」といたしまして、まず株主総会のところで、4-1-1は、株主総会において可決には至ったものの相当数の反対票が投じられた会社提案議案に対する対応、4-1-2では、株主総会の招集通知に記載する情報についてのTDnet及び自社ウェブサイト等での早期の情報開示、4-1-3では、例えば有価証券報告書を株主総会開催日の前に提出するなどの、株主との建設的な対話の充実に向けた取組みの検討ですとか、株主総会関連の日程の適切な設定含め、株主総会の在り方についての検討。4-1-4では、バーチャル方式により株主総会を開催する場合の株主の利益の確保に配慮した適切な対応の有無に関する記載を行っております。

 続きまして、政策保有株式につきましては、「保有効果の検証が、例えば、独立社外取締役の実効的な関与等により、株主共同の利益の視点を十分に踏まえたものになっているか。」とし、検証の内容について、検証の手法も含め具体的に分かりやすく開示・説明されることについて記載されております。

 (3)に参りますと「アセットオーナー」で、自社の企業年金の運用に当たっての、取引先との関係維持の観点からの運用委託先の選定などによって適切な運用を妨げていないか、それから(4)で、「株主と企業の対話の充実」については、「株主との面談対応者について、株主の希望と面談の主な関心事項に対応できるよう、例えば、「筆頭独立社外取締役」の設置など、適切に取組みを行っているか。」としております。

 以上、対話ガイドラインの改訂案の主なポイントについて御説明させていただきました。

 以上、私からの御説明とさせていただきます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。今御説明をいただきました3つの文書につきまして、本日御欠席と伺っていますけれども、松岡さんから意見書を提出していただいておりますので、事務局から簡単に概要の御説明をお願いいたします。

【島崎企業開示課長】 
 御説明させていただきます。松岡メンバーからは、日本企業の競争力強化、企業価値の向上に資する改革に全面的に賛同してこられたということと、一方で、改革が競争力や価値創造力にどのようにつながったかという効果に関する検証が十分に行われてきたかという点については少々課題が残るという印象もありますと置かれた上で、4点、再改訂されたコードを定着させる段階での配慮のお願いについて触れられています。

 1点目は、経営の質を向上する観点で、独立社外取締役の多様性を確保しながら、人数、役割を拡充していくためには、候補となる人材を相当数確保することが必要で、人材プールの拡充や選任時期などについて、投資家を含む市場関係者全体に十分な理解を促進していただきたい。2点目は、コードの基本的考え方はコンプライ・オア・エクスプレインであると、スチュワードシップ・コードにも示されているとおり、機関投資家や議決権行使助言会社等が、一律的・形式的な判断を行うのではなく、建設的な対話を通じた企業価値向上を図ってほしいと、政府並びに金融当局からの御指南をともされております。3点目は、ガバナンス改革が企業価値向上に与える影響についての検証作業、それから4点目は、コードの適用局面での実務的課題について丁寧なフォローアップをという御意見を頂戴しています。

 最後に、経団連としては今後、主要な論点について、パブリックコメントにおいて意見提出することに加え、再改訂定されたコーポレートガバナンス・コードの周知を含め、サステナブルな資本主義の構築によって日本企業の中長期的な企業価値向上に貢献していく所存ですという御意見を頂戴しております。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それではこれから、皆様方から、今事務局のほうから御説明させていただきました、資料、別紙1、別紙2という3つの文書、とりわけコードと対話ガイドラインの改訂に向けて、御意見等をお出しいただきたいと存じます。

 いつものように、御発言いただける方は、オンライン会議システムのチャット上にて、全員宛てにお名前を御入力いただければありがたく存じます。また、御発言は、恐縮ですけれども、1人当たり5分以内ということでお願いできればと存じます。

 それで、ちょっと冒頭申し上げましたけれども、ワリングさんに最初に御発言をいただいて、同時通訳をさせていただきたいと思っております。ワリングさん、いらっしゃいましたら、どうか御発言、お願いいたします。

【ワリングメンバー】 
 神田座長、そしてメンバーの皆様、日本のコーポレートガバナンス・コード及び投資家と企業の対話ガイドラインの改訂について意見を述べる機会をいただき感謝いたします。いずれも高い基準のコーポレートガバナンスと投資家と企業の対話を促進することで、長期的な企業価値の向上と持続可能な経済成長を促すものです。本コードの改訂案については、ICGNは、特に5つの主要な改訂点を歓迎します。

 第1に、新しい原則2.4.1は、企業が測定可能な目標を含む多様性に関する方針及び人的資本経営に関する方針を開示することを求めています。今後は、多様性の目標の達成時期の言及と、年次報告を要件として付け加えることを推奨します。また、社会的不平等、なかんずく人種差別と公平な地位に対応するために、多様性、ダイバーシティに加えて、平等と包摂性の重要性を考慮することをお勧めいたします。

 第2に、我々は、プライム市場上場会社にTCFDモデルに基づいた気候変動に関する開示を求める新しい原則を歓迎します。今後これが全ての上場会社に拡大されることを推奨します。開示は、気候変動が企業のビジネスモデルに及ぼす影響と、ネットゼロ社会のニーズを満たすためにいかに適応していくかを説明するべきです。その中には炭素の排出削減の目標設定と開示及び達成時期も含まれます。

 第3に、プライム市場上場会社における独立社外取締役の割合を3分の1以上とする、より高い要件を歓迎します。また、プライム市場における支配株主を有する上場会社においては独立社外取締役を過半数とする要件を歓迎します。今後は全ての上場会社の取締役会が、少なくとも3分の1以上は独立社外取締役から構成されることを推奨し、より高いガバナンス基準であるプライム市場においては独立社外取締役が過半数であるべきだと考えます。また、過半数が独立社外取締役で構成される指名委員会が主導する、透明性の高い、厳格な取締役選任プロセスの重要性に言及することを推奨します。

 第4に、プライム市場上場会社の取締役会が、過半数が独立社外取締役で構成される指名委員会及び報酬委員会を設置する要件も歓迎します。また、委員会の構成及び権限の開示の新しい要件も歓迎します。今後はプライム市場ばかりではなく、全ての上場会社に拡大されれば有益でしょう。

 第5に、我々は、取締役会が会社の事業ポートフォリオに関する基本的な方針や見直しの状況を開示することを求める新しい原則を歓迎します。将来は、この原則が取締役会に、事業ポートフォリオを毎年見直し、長期的な価値創造の土台となる資本配分への取組みに関する明確な方針を開示することを求めるようになることを推奨します。

 では次に、フォローアップ会議に今後考えていただきたい改訂点で、今回含まれていない3つの点について申し上げます。

 第1点は、開示の場所です。本コードが企業に、気候変動関連の情報、多様性の方針、人的資本への取組み、委員会の権限の開示の要件を新たに設けたことを歓迎します。しかし、こうした情報をどこで開示するのかは特定されていません。ICGNは、こうした情報は企業の長期的な価値創造のために重要であり、よって年次の有価証券報告書で、英語で、株主総会の前に開示されるべきだと提唱します。

 2点目は、政策保有株式に関して、当初のコードから変更が加えられていませんが、この原則は強化され、政策保有の理由と性格、例えば親会社、子会社またはサプライヤーであるかといったことに関して開示を求めるようにすべきであります。また、政策保有株式の縮減または解消の期間も開示すべきです。

 将来改訂が望まれる3点目は、取締役会の評価に関することです。我々は、原則4.11.3を拡大して、取締役会が定期的に、できれば3年ごとに、外部のコンサルタントによる評価を受けることを求めることを推奨します。パフォーマンスの評価によって、長期在職の取締役が退任し、空席ができることによって、適切な取締役会の多様性、独立性、後継者計画が可能になります。

 投資家と企業の対話ガイドラインの改訂案に関しては、3点申し上げたいと思います。

 第1点目は、ガイドライン3.8、独立社外取締役の選任に関してです。取締役会議長が独立社外取締役であるか否かについての新たな言及を歓迎します。将来には、議長が選任された日に独立社外取締役であったかどうかという点も含むように強化することができるでしょう。また、議長、CEO、筆頭独立社外取締役委員会委員長の職務の役割についての開示も可能でしょうか。

 第2点目は、ガイドライン4.1.3に関してです。ICGNは有価証券報告書を株主総会開催日の前に提出することへの言及がされていることを評価いたします。しかし、これもコーポレートガバナンス・コードの中で、具体的には補充原則3.1.2でも言及するべきだと思います。

 第3点目ですが、最後の点ですが、ガイドライン4.1.4に関してです。ハイブリッド方式またはバーチャル方式のみの株主総会を開催する場合には、できる限り直接参加方式の株主総会を再現して、株主との双方向性を確保することを推奨します。これは、株主が株主総会の前に、または総会の進行中に質問したり発言することを認めることも含みます。

 最後に、フォローアップ会議に対して、ICGNの意見を見直しの作業の中で検討してくださったことに感謝します。ICGNは、金融庁が日本のコーポレートガバナンス政策や慣行の改革の継続に御尽力されていることを賞賛します。今回のコードと対話ガイドラインの改訂は、前向きのステップであると考えます。コーポレートガバナンス改革はそれ自体が目的地ではなく、継続的な旅なのです。それぞれの国が、その国の規則、規制、企業文化、株式保有モデルを考慮に入れ、異なった進化の段階にあります。しかし、企業と投資家は共通のグローバルな責任を負っています。長期的な価値を維持し、高め、経済成長、社会の繁栄、安全、そして現在及び将来の健全な環境に貢献することです。その精神の下で本日発言をさせていただきました。

 御清聴どうもありがとうございました。引き続きディスカッションができることを期待しております。

【神田座長】 
 ワリングさん、どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、チャットで御連絡をいただいております冨山さん、どうぞよろしくお願いいたします。

【冨山メンバー】
 どうもありがとうございます。まず最初に、今のワリングさんのコメント、大変すばらしかったので、感銘いたしました。ありがとうございます。

 特に最後のところの、これは会社はもちろん、ボードももちろん、それから投資家も含めて、地球の未来というか、人類の未来というか、人間の未来に責任を持つべきだというところは、これは恐らく今最もガバナンスが問われているところだと思っているので、その辺はぜひとも、自分としても銘記したいなと思いました。

 それから、私自身のコメントなんですが、結構実は今のお話とかぶるんですが、今回のコード、ガイドライン等々については、現時点で達成できるものとしては十分にすばらしいものが仕上がっていると思います。そういう意味で全て賛同いたします。ただ一方で、この策定をしている間においても、コロナ禍でいろんな状況が加速度的に変化をしておりまして、私は今の世界をいろいろ規定している、あるいは動かしている変化を加速している要因は大きく4つあると思っていまして、これはもともと起きていたグローバル化、いい意味でも悪い意味でもグローバル化という流れは結局止まらないと、コロナになっても。それと裏腹でいう、いわゆるデジタルトランスフォーメーション、デジタル革命ですね、私に言わせれば。これがむしろ加速をしている。それからもう一つは、地球環境問題というのがいよいよリアルアジェンダになってきているということ、まさにサステナビリティですね。それから、最後にもう1点、今起きている大きな要因としては、やっぱり政治的な状況変化、いわゆる覇権の、ある意味で戦いがまた始まってしまったという、非常に、この4つの物すごく大きな変動要因が動いていて、それでこれがもたらす状況というのは、ますます経営における、不連続性、非連続性と、それから、これも今のワリングさんの話にありましたけど、やっぱり経営における人的価値、これはだから価値を生み出す源泉としての人的資源、無形価値の問題です。要するに人間の知識とか知恵というものが価値の源泉であると同時に、先ほどの議論であったように、企業が活動していく、あるいは投資家が活動していく最終的な、誰に奉仕するかというのは、やっぱり人間そのものであるという、この人間を中心とした人間と資本の循環といいましょうか、そういったものをさらに加速すると思うんです。

 それで、先ほど冒頭の資料、書面の中に、効果の計測という議論はあって、それは気持ちはすごくよく分かるんですけれども、正直言って、この先5年、10年、僕はもっとすごいことになると思っています。もっとすごいことになるということは、果たして効果測定ができるようなスタティックな状況であろうかと。私、正直申し上げると、いわゆるJPXの400でもいいですし、日経225でもいいんですけど、20年後に今と同じ会社の名前で存在している会社、僕は半分もなくなると思っています、これはシリアスに。私もパナソニックの取締役やっていますけど、少なくともそういう思いでやっています。多分なくなると思う、半分は。なくなるか、名前が消えるか、どこかと一緒になっているか、そういうこと。

 ですから何が言いたいかというと、実はこの先を考えるべきで、この先、このガバナンスコード、次の改訂、これもさっきワリングさんおっしゃっていましたが、どう改訂していくか。それから、当然この開示ルールに関しては、僕は、今やっていることをもっと加速しなきゃ駄目だと思います。例えばいろんな、人的資産とかいったものの開示の問題もそうだし、あとダイバーシティの問題に関しても、もうダイバーシティは、何というのかな、もうCSRじゃないんですよね。競争力の源泉であって、これがなきところに未来はないです。とすれば、これも随分議論がありましたけど、私はもう、あと女性の問題なんかはクオータ制にまで踏み込むべきだと、僕は次のステージでは思っているのと、それからあと、取締役候補の人材の問題。言っていますけど、あれは鶏・卵みたいなことを言っていて、結局何で少ないかといったら、女性で執行レベルで経営に関わっている人が少ないからなんですよ。だから社外取になる人も候補が少ないんですね。

 それでまた、その実力がどうだ、能力がなんていうやつがいるんだけど、私に言わせれば、世界の今の経営に関わる人間の水準でいってしまうと、あの議論って、テニスでいったら世界ランキングが1,000番の人が、1,100番でおまえら能力低いぜと言っているようにしか聞こえないんです。これだけ男性ばかり使っていて1,000番なんですよ、はっきり、日本の今の平均的な経営レベルって。だから時価総額も失ってきたし、世界ランキング、売上ランキングも落ちてきたわけですから、収益力もない、営業キャッシュもないわけですから、そうすると、あれだけ男性使って1,000番だったら、まだ活躍していない女性を表に出せば絶対、上のランキングに行く可能性高いですよ、これ。だって見てくださいな、テニスでもゴルフでも、グランドスラムとメジャー、先に取ったの女性じゃないですか。サッカーだって先にワールドカップチャンピオンになったのは女性なので、だからそこが僕は、次はそういうところに踏み込むということを、ぜひともガバナンス・コードの次の改訂、それからあと開示、もろもろの開示ルールのところでさらに進めていってほしいなと私は思っております。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、NECの小幡さん、どうぞよろしくお願いします。

【小幡メンバー】 
 小幡です。御指名ありがとうございます。私、基本的には今回の改訂案については賛同していますけれども、1点質問と、3つお願い事項があります。1つ目ですけれども、コードの4-3のところですけれども、よろしいでしょうか。

【神田座長】 
 すみません、小幡さん。

【小幡メンバー】 
 島崎さん、これで聞こえますか。

【島崎企業開示課長】 
 小幡メンバー、音声がちょっと聞こえづらい状況になっておりまして、1つ画面を落としていただく、あるいは、それでいかがでございましょうか。ちょっとお願いできますか。

【小幡メンバー】 
 落としました。これでよろしいでしょうか。

【神田座長】 
 はい、大丈夫です。

【島崎企業開示課長】 
 ちょっと一度、お続けいただいて。すみません。

【小幡メンバー】 
 お手数かけます。申し訳ないです。基本的には私、今回の改訂案に賛同しておりますが、1つ質問と、3つお願いがございます。順番に即していきます。

 1つ目はコードの4-3④のところなんですけれども、リスクと内部統制のところになります。こちらにつきまして、意見書では「必要な資源を投入し」という文言を書き加えていただいているんですけれども、できますならばコードのほうにも、この内部統制の体制のところについて、必要な資源を投入するという文言を書き添えていただくとありがたいと思っております。それが1点目です。

 2点目ですけれども、2点目はコードの原則4-8のところです。ここは大事なところだと思うんですけれども、過半数の独立社外取締役選任が必要と考えるプライム市場上場会社は、十分な人数の独立社外を選任すべきというように書かれています。これは、考える主体は、その当事会社が自分で考えるということを意図していると思うんですけれども、ここで言っているのは、過半数が必要だと思っても、諸般の事情で今は過半数を置けないけど十分なレベルだということであれば、多分これをコンプライしているということになろうかと思うんですけれども、そういう解釈でよいかという点について確認をしたいと思っているのが質問の1点目です。

 次に、対話ガイドラインになります。ガイドラインのほうもいろいろ手当てをありがとうございました。1つ目が1-3のところで、ESG、SDGsに加えましてデジタルトランスフォーメーション、サイバーセキュリティーなどもここに書き加えていただいたんですけれども、やはり今、この分野は非常に重要性が高まってきていると思っています。経産省においてもDXガバナンスコードなどを策定したり、そういう動きをしていますので、できますならば、これは対話ガイドラインではなくて、コードのほうにぜひ記載いただくことについても御検討を賜ればありがたいと思っております。

 最後、4点目ですけれども、ガイドラインの3-12になります。内部通報のところになりますけれども、ここにつきましても、できますならば「実効性を確保するため」というところに、例えば「実効性を確保するために必要な資源を投入するとともに、内部通報に係る体制」云々とか、そういう表現をしていただけますと、すごくありがたいと思っていますので、以上、質問1つと、コメント3点ですが、御検討いただければありがたいです。

 以上になります。よろしくお願いいたします。すみませんでした。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。質問の点についてはどうしましょうか。

【島崎企業開示課長】 
 では、私のほうから。御指摘のとおり、4-8というのは、必要と考えるというのは上場企業が考えるところでございまして、これまでの運用でいきますと、基本的にここはコンプライ・オア・エクスプレインの対象として運用されてきておりませんので、そう考える企業において、その対応がこれまで取られてきているという箇所でございます。

 以上です。

【小幡メンバー】 
 ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、先へ進ませていただきたいと思いますけれども、今のところまだチャットで御発言の希望をいただいていないのですが、どなたでも御質問、御意見等。

 ありがとうございます。春田さん、どうぞお願いします。

【春田メンバー】 
 連合の春田でございます。今回の改訂案の取りまとめに御尽力された神田座長及び事務局の方々に心よりお礼申し上げたいと思います。

 その上で、意見を2点、申し上げさせていただければと思います。まず意見書の中で、ステークホルダーとの対話の重要性について入れていただきました。この点につきましては、デジタル化やグリーンリカバリー、カーボンニュートラルの実現という観点から、産業構造の転換が起こってくる中で、ステークホルダーとの対話というのは非常に重要性を増してくると考えております。我々労働組合も含む従業員、取引先、地域社会といったものとの対話がこれから重要性を増してくるという意味で、意見書の中に盛り込んでいただいたことに感謝申し上げたいと思います。

 具体的には、ガバナンス・コードのほうの9ページ目、原則2-3のところでございます。産業構造の転換が進む中で、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティをめぐる課題について適切な対応を行う、ここが重要性を増してくるというふうに考えております。この2-3①の補充原則の中にもいろいろと我々の要望も踏まえて、整理していただいていると認識しておりますが、今後のことを考えたときに、単純に社会・環境問題をはじめとするサステナビリティをめぐる課題について適切な対応を行うべきだ、という一言だけではなく、もう少しここを深掘りしていく必要があると思っていますので、今後の産業構造の転換状況も踏まえながら、さらに検討していく必要があるのではないかと思っているところであります。

 それから、2点目でございますけれども、我々ずっと意見しているのが、ESGのS、労働・人権が非常に重要だということです。働き方改革やテレワークの普及等によって労働者の働き方が大きく変化している中で、企業に求められるのは、労働・人権、このSに関する情報開示を積極的に行うということではないかと思っています。コーポレートガバナンス・コードによって、情報開示を後押ししていくということが重要ではないかと認識しております。

 この労働・人権に関して、昨今、ミャンマーの国軍による人権侵害の問題や東京オリンピック・パラリンピックに関する様々な課題も含めて、国際的な労働・人権の問題というのがクローズアップされてきていると認識しております。労働・人権に関する国際ルール、例えばILOの中核的労働基準、それからOECDの多国籍企業行動指針といったものの尊重・遵守ということが、これから重要度を増してくると思います。今回のコーポレートガバナンス・コードの見直しの中には盛り込まれませんでしたけれども、これから見直しに向けた検討課題としていくべきだと思います。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、岡田さん、どうぞお願いいたします。

【岡田メンバー】 
 今回まとめていただきましたコーポレートガバナンス・コードと対話ガイドラインの改訂案について、基本的に賛成です。おまとめいただいた神田座長と事務局の皆さんに厚く御礼を申し上げたいと思います。

 私からは感想のようなものを交えて、お話をさせていただきたいと思います。まず、今回の改訂の中心である取締役会の機能発揮、ダイバーシティ、サステナビリティ、これらは相互に強く関連する課題でありまして、企業にとって一貫した取組みを必要とすると思います。この結果、ESGに関する開示などの充実を図ることで、企業は透明性の高い開示により、環境、CO2問題に正面から取り組む覚悟を求められますし、またダイバーシティについては、単なる数合わせから、実質的なダイバーシティに取り組むことが期待されます。しかし、コードが整備されたのはあくまでも始まりにすぎないと思います。世界レベルに引き上げるためには、企業と投資家の対話を通じた一層の努力が期待されます。

 次に、監査の信頼性の確保に関しまして、監査役の独立性について様々な意見を述べさせていただきましたが、監査役は会社法上、大変大きな権限を持ちながら、権限を十分行使していないのが現実であります。行使しないから監査役の独立性が軽視されるのか、その逆なのかは鶏と卵の関係と言えます。監査役はコーポレートガバナンスの重要な担い手の一人です。今回コードに、監査役も取締役と共に投資家との面談に臨むことを基本とするよう示されたように、積極的にガバナンス改善に取り組む姿勢を示す必要性を痛感しました。

 最後に、これはこのフォローアップ会議と関係がないかもしれないのですが、この会議参加して感じたのは、現在の日本のガバナンスの機関設計、監査役会設置会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社という3つの機関設計の一本化を検討する時期に来ているのではないかと感じたことです。ガバナンス・コードの浸透が進んだことに加えて、ガバナンス・コードの検討過程で、取締役の過半数を社外にすべきという議論が出ました。また、取締役のスキル・マトリックスが充実して、社外役員人材の充実が今後本格化すると予想される状況であります。こうしたガバナンス環境の変化を踏まえまして、ガバナンス・コードが適用される上場企業の機関設計について、会社法の改正をぜひ御検討いただきたいと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは次に、三瓶さん、どうぞお願いいたします。

【三瓶メンバー】 
 三瓶です。まず最初に、意見書案について、8ページにも及び、本コードの改訂の意図、目的、期待が丁寧に書かれているので、非常に分かりやすいと思います。事務局の御尽力に感謝いたします。個別の項目についての意図、目的、期待というのももちろん重要ですが、まずは原則主義の精神をしっかり理解した上で取り組むことが、大前提として最も重要だと考えます。

 そういう意味では、具体的に、意見書の「Ⅰ.はじめに」の2段落目後半、「プライム市場上場会社は一段高いガバナンスを目指して」のところと、「その他の市場の上場会社においても」というところは非常に重要だと思います。本コードに書かれている項目について単にコンプライ・オア・エクスプレインで終わるのではなくて、さらに上を目指していくということだと思います。ただ、このことからすると、7ページ目の「Ⅲ.本コードの改訂の適用について」で、「グロース市場上場会社においては基本原則のみがコンプライ・オア・エクスプレインの対象となる」という箇所は矛盾しているようにも思います。グロース市場上場会社は、当初はエクスプレインする項目が多くても、徐々にコンプライに向けてガバナンスを改善していくことが望ましいと思います。

 また、意見書案において、本コードの改訂に沿ったコーポレートガバナンス報告書の提出時期に関する考え方、特に株主総会を経てコンプライが実効的になる項目についてのコーポレートガバナンス報告書の提出時期への配慮が丁寧に記載され、期待値が示されているというのは非常によいと思います。

 意見書案について最後のポイントですけれども、今後の検討課題としては、5ページ目の「(1)グループガバナンスの在り方」で記載の、支配株主に準ずる支配力を持つ主要株主(支配的株主)についての共通認識を醸成する必要があるのではないかというふうに思います。

 別紙1のコードの改訂案については、2点だけ。まず、基本原則4の考え方の一番下に書いてある文章ですけれども、「不公正」という言葉が出てきますが、これについての共通理解も必要だと思います。この辺もこれから、例えばどういうことを不公正というのかということを明確化していく必要があるのではないかと思います。もちろん例示になると思いますけれども、イメージがはっきりすることが大事だと思います。

 最後のポイントですが、補充原則4-2②です。ここでは人的資本・知財への投資をはじめとする経営資源の配分ということと、事業ポートフォリオに関する戦略の実行という、1つのことと考えていいのかもしれないし、もしかすると違う2つのことが入っているかもしれないと、若干気になっています。例えば事業再編には、1つ目は財務的な視点での事業ポートフォリオの見直しが起点になる場合、2つ目に人的資本の機能発揮の最適化が起点になる場合、また3つ目にデジタルトランスフォーメーションによるビジネスモデルの見直しが起点になる場合など、起点が様々あり得ると思います。そういう意味では、ここに人的資本と知財への投資が入っていることは分からなくもないんですけれども、懸念しているのは、人的資本とか知財への投資といったときに、現状の体制維持の口実に使われてしまって、本来やるべき事業譲渡、撤退を抑制するような作用に働かないか、その結果、再編が見送りになるというように使われると非常に困ります。先ほど冨山さんもおっしゃっていた、ものすごい変化がこれから訪れてくるとき、どんどん先手先手を打って対応しなきゃいけないときに、現状体制維持の口実みたいなことに使われるようなことがもしあれば、これは本末転倒だというふうに思うので、ここが若干気になったところです。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。メンバーの皆様方で、御意見等ございませんでしょうか。

 どうもありがとうございます。川北さん、上田さん、高山さんの順でチャットをいただいておりますので、川北さん、どうぞお願いします。

【川北メンバー】 
 川北です。よろしくお願いします。意見書全体、それからコード、対話ガイドラインに関して、あまり大きな違和感はありませんが、多少気になるところ、もしくは今後の課題かも分からないですけれども、それを3点お話をさせていただきたいと思います。

 1点目は原則2-4に関してです。ここは人材の多様性確保を掲げ、女性とか外国人を例に挙げて書いてあるわけですけれども、現在は女性とか外国人のみではなくて、いろんな観点から多様な人材を企業としては採用し、活躍させることが非常に重要になってきていて、これが今後の企業の発展を左右すると思います。

 それに関連しての話ですが、これまでの採用の在り方があります。新卒を一斉に採用して、終身雇用の下で育てていくということがまだ日本の企業の主流だと思いますが、これが本当に適切なのかどうか、そこを考えることが出発点になり得ると、多様な発展の出発点になり得ると思います。その上で育成とか登用とかを考えるのが当然のことだろうと思います。そういうことで、企業としてはこの点をしっかりと認識していただいて、表面的にコードへの対処に終わるということがないようにお願いしたいと思います。

 それから、補充原則4-8③に関してです。親子上場の問題ですけれども、親子上場に潜んでいる問題というのは、コードに記されたようなガバナンス体制の確立だけでは完全には解決しないと私は思います。最終的には、これは上場制度の問題かも分からないですが、この点の議論をコードでもある程度深めていただきたいし、コード以外の部分でも関係者の間で議論をしていただければありがたいと思います。

 それから、対話ガイドラインの4.(「1)株主総会の在り方」に関して、配当を取締役会で決められるようにということを、この会議の場で意見として述べましたがメンバーの皆さんにあまり賛同を得られなかったように思います。しかし配当政策というものは、資本政策と表裏一体であり、かつ資本コストとも深く関わっています。言い換えれば、配当政策を決めるということは、設備投資とか資本コストなどを勘案して、資本政策全体を決めるということと同じです。この意味で、配当政策を株主総会での決議事項とする一方で、後者はそうしないということは、論理矛盾だろうと私は思います。そういうことで、特段今回の対話ガイドラインの修正を求めるものではないものの、特に投資家に向けてのお願いとして、配当政策を議論するのであれば、資本政策とか成長戦略も意識をして、しっかりとセットで議論をしてもらえればと思います。

 私からは以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは次に、上田さん、どうぞお願いいたします。

【上田メンバー】 
 上田でございます。ありがとうございます。まずは、このコロナ禍でミーティングも直接お会いできない中、このようなすばらしいコードの原案を作成いただきましたこと、まずはありがとうございます。我々メンバーの意見を最大限酌み取っていただいたものだと思います。会合も大変頻繁にありまして、私に関して言うと、全ての回でいろいろ意見言わせていただきまして、それをかなり酌み取っていただいたと思っておりますので、全体的に賛同しております。その上で、今後の課題といいますか、今後このコードを、金融庁さん、あるいは東証さんのほうで広めていく上で、少し力を入れてほしいなという点が3点ほどございますので、そこをコメントさせてください。

 まず、サステナビリティの開示についてです。今回、気候変動のところでTCFD、そして先ほど課長からのお話にもございましたけれども、IFRS財団の新しい取組みという、世界的に共有化されたプラットフォームのようなものの示唆があったかと思います。特に環境については、どうしてもこれはEUが主導して、日本を含め引っ張られていくという形であったかと思います。企業にとっては、環境政策、特にエネルギー政策が違う中で、かなり負担感も大きかったかと思います。ですので、今後、新しい取組みがいろいろ始まっていると思いますけれども、日本の政府当局、そして企業と投資家含めて、しっかりと議論に参加して、リードしていくようなことを期待いたします。

 特に、コードの2-4①にありますが、人材投資やダイバーシティの開示が今回もうたわれておりますが、このうちヒューマンキャピタルについては大変重要になっております。世界的にもこの情報が欲しいという投資家が増えてくるかと思いますが、一方で、その枠組みがまだはっきり固まったものがないということですので、企業も恐らくどういう情報を出せばいいのかというところで悩みもあろうかと思います。ぜひこういったところは関係各所、そして政府機関含めて、日本企業、そして日本市場がしっかりアピールできるような枠組みづくりを国際的にリードしていただきたいと思います。

 続きまして、第2点として、支配株主の責任を明記していただいたというところです。コードの考え方のところで、支配株主の責任らしきものとして、責務と書かれています。これは会社法にも書いていない先行する考え方を示すものとして大変新しいもので、ここの部分については大きな一歩だと信じております。さらに、親子上場という議論から、支配的株主、コントローリングシェアホルダーでしょうか、逆に言うと定義が曖昧であるために、実態をより網羅的に押さえられるような株主にまで広げて、その責任、そしてその株主がいる企業の体制整備ということが書かれているというのは大きな一歩だと思います。

 ただ一方で、この支配的株主について、企業にとっては、では何%、あるいは実質基準はどういう基準なのかというところで、恐らく投資家と企業との間で、対話の中でも違いが出てくると思いますので、こういった点は何らかの指針のようなものがまとめられること、これは投資家コミュニティーあるいはルール設定の側、あるいは企業なども含めて、定義の明確化というものが進むといいなと思っております。

 その点で、補充原則4-8③において、支配株主を有する上場会社については、原則として独立社外取締役が3分の1、あるいはプライムは過半数とするか、または特別委員会を設置するとあります。この特別委員会の構成については独立性を有する者ということでありますが、ここについては支配的株主からも独立性という点であるということを、ぜひ今後、広報活動を通じて強調していただいて、この特別委員会が形骸化しないような監督する仕組みについて、これは投資家さんを含めて、見守っていただきたいと思います。

 最後ですが、補充原則4-10①に関連します。委員会の独立性でございます。この「プライム市場は」という段落にあるんですが、過半数が独立社外取締役とすることを「基本とし」とございます。多くの場合、「基本とし」と書いてあると、企業はその強さの程度をちょっと悩んでしまう。これまでのコードをめぐる実務経験上そういうのがございますので、この「基本とし」というのは、過半数の独立社外取締役に相応するような体制であると、恐らく独立社外取締役と社内取締役が半数半数なんだけれども委員長が独立社外取締役とか、そういった場合を想定されておられると思いますので、その「基本とし」の内容についても、混乱なきようしっかりと、このコードの独立性という趣旨が伝わるような説明の広報活動等していただければと思います。

 以上です。皆様大変ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは次に、高山さん、どうぞお願いいたします。

【高山メンバー】 
 高山です。今回のコードの改訂の内容に賛同いたします。このコードの改訂案を策定してくださいました座長をはじめ事務局の皆様の御尽力に感謝いたします。

 その上で、2点コメントさせていただきます。コードの原則2-3のところでサステナビリティに関する取締役会の取組みについて記載されています。従来よりも、より積極的、能動的な取組みがここで推奨されています。加えて、意見書の4ページのところでは、サステナビリティについて、形式的ではなくて実質的な対応が重要であるというふうに記載されています。ここのところは非常に重要だと思います。企業の中には、もしかしたら形式的な対応で済まそうというようなところもあるかもしれません。しかし、形式ではなくて、実質的な対応、取締役会での本質的な議論が重要だということが、この意見書を読めばよく分かると思います。

 そこで、1つお願いがあります。コードが適用される企業の方と話していると、コードが提示されたときに、コーポレートガバナンス・コードそのものについてはかなり深く読み込んで、その対応を考えられる企業が多いのですけれども、同時に出される意見書や対話ガイドラインについては、コード自体よりもより関心が低い、それほど注意を払わないというケースも散見されました。これから東証や金融庁の皆様がコードの内容を説明し、企業の方々に理解していただくという機会を設けることも多いと思いますが、その際には、コーポレートガバナンス・コードの改訂の内容を深く理解するためには対話ガイドライン及び意見書も同じく重要であるということを、併せて企業の方たちに伝えていただければと思います。それが1点です。

 それから、補充原則4-11③の、取締役会評価に関わるところです。今回、補充原則4-11③については改訂がなされませんでした。一方で、意見書及び対話ガイドラインでは、評価の対象は取締役会だけではなくて、委員会、それから個人に対する評価も重要であるということが記載されていて、それは大変結構なことだと思います。私は、今後コードが改訂されるときには、将来的には、この補充原則4-11③においても、明確に、取締役会全体に加えて、委員会及び個人の評価も記載したほうがよろしいと思います。

 理由は2点です。1つは、今回の改訂の重要事項との整合性という点です。それから2点目は、グローバルな視点という点です。まず最初の改訂内容の重要事項との整合性について説明します。今回のコードの改訂の内容においては、例えばプライム市場の企業に対しては3分の1以上の独立社外取締役を求めるであるとか、委員会についてもより独立性を求めるなど、社外取締役個人の重要性、それから委員会の重要性がさらに高まっているという状況にあると思います。そうであれば、その個人や委員会が、果たしてきちんと実効性を有しているかどうかについては、より厳しい目で評価されるべきだと思います。その手段としては取締役会評価が適切であると思いますので、取締役会評価においては、取締役会全体だけではなくて、個人及び委員会の評価も将来的には加えたほうがいいと思います。

 それから2点目は、グローバルの視点という観点です。私は、コーポレートガバナンス・コードの一番の目標は、日本企業の企業価値を上げるということにあると思っています。それを踏まえた上で、その次にというか、同様に重要になってくるというのが、日本企業がそのような取組みをしているということを、グローバルな資本市場に対して適切に、かつ、十分に発信するということだと思います。その際に、グローバルな投資家が考えるのが、ほかのグローバルの規範との比較ということになります。取締役会評価について申し上げると、例えばヨーロッパではイギリスやフランス、それからアジアではシンガポールなど、主要な国のガバナンス・コードでは、取締役会全体に加えて委員会及び個人の評価というのが要求されています。米国では、コードはありませんけれども、ニューヨーク証券取引所の上場規則で取締役会全体及び委員会の評価が要求されています。個人の評価は要求されていませんけれども、多くの企業でそれが実施されているという状況にあります。これらのグローバルな基準と比較して、日本のコードにはそれらが明記されていないという状況を考えると、世界の投資家から見ると違和感を持たれるのではないかと思います。以上より、将来的にはそのような内容もコードに加えたほうがよいと考えます。

 以上、私からの意見でございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは次に、円谷さん、どうぞお願いいたします。

【円谷メンバー】 
 どうもありがとうございます。まず、今回コードの改訂に賛同いたします。どうもありがとうございました。

 その上で、2点ほど発言をさせてください。まず1点は、皆様おっしゃっておりますけれども、今回のコードの改訂の意図ですとか目的が十分に理解いただけるような諸活動に力を入れていただきたいというのが1点ございます。例えば今回、新しくスキル・マトリックスというのが入りましたけれども、スキル・マトリックスでいかに丸の数を増やすかみたいな話になりますと、本来の趣旨と変わってきてしまいますので、そうした、何でそのようなものをつくる必要があるのかといったようなところを、時間は多少かかっても十分に理解してもらえるように、何かしらの施策を、各委員も含めて打っていくことが必要かと思っております。これが1点です。

 もう1点、原則1-4の政策保有のところについてなんですけれども、対話ガイドラインのところの改訂、及び東証さんの流通株式比率のところで数字が出てきているということで、今回コード本体では、この政策保有のところに改訂は入らなかったと理解しています。補充原則1-4①で株式の売却等の意向が示された場合に、それを妨げてはいけないというところがございますが、私は、個人的には売却の意思を示せないことがそもそも問題だと思っておりますので、今は、売却の意思を示した後にそれを妨げるべきではないになっておりますが、売ってほしいのに言えない、または売りたいのにそれを言い出せないというようなところに何かしらの改訂を今後お考えいただければよろしいかなというふうに考えております。

 以上、2点になります。どうもありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございますか。

 それでは次に、小口さん、どうぞ。お願いいたします。

【小口メンバー】 
 ありがとうございます。事務局におかれましては、これまで多くの議論があった中、整理いただき、また反映いただき、その御尽力に大変感謝いたしております。今日提示されました意見書並びにコード及び対話ガイドラインの改訂案については賛同させていただきます。

 その上で、今後に向けてということで、一言だけ申し上げたいのですが、今回の議論では、第20回のフォローアップ会議で検討課題を確認した後に、21回から25回まで各検討課題について議論して、その議論の結果が、本日、コードの改訂案とガイドラインの改訂案となって提示されたと理解しております。各回の議論においては、本日示された意見書に項目ごとに整理されているように、コードとガイドラインのすみ分けを意識しない、シームレスな議論だったと理解しておりますが、ガイドラインについては、前文にありますように、コンプライ・オア・エクスプレインを求めないということで、名宛て人である投資家と企業にとっては、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードとは受け取る意識の面で大きな段差があって、結果としてガイドラインが形式的なものにとどまり、実質的に活用されないことを懸念しています。この点は、先ほど高山メンバーも指摘されたと思います。

 それで、コードとガイドラインについては、現時点では時期尚早だと判断されて、ガイドラインに回った項目もあると思うのですが、本日御指摘があったように、現実というのは想定を超えて変化する可能性が高いということを考えますと、むしろ時期尚早項目を含むガイドラインの持つ意味は大きいのではないかなと思っています。ずっと続けておりますコーポレートガバナンス改革の主目的は、形式から実質の充実へ高めるということでして、そのことがフォローアップ会議の役目でもあると思いますので、このフォローアップ会議でこの点を取り上げるのはもちろんですけれども、その他の様々な機会を通じて、対話ガイドラインが実質的に両コードの附属文書として理解され、コーポレートガバナンス改革に寄与するように、自分たちも工夫していく必要がありますし、工夫していただく必要もあるのではないかと思っています。

 私からは以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、武井さん、どうぞ。お願いいたします。

【武井メンバー】 
 ありがとうございます。武井でございます。まず、去年の秋から議論を始め、相当多岐にわたることを議論してきたと思いますが、今日こういう形で3点にわたるものをおまとめていただいて、事務局の皆さんと座長の神田先生の大変な御尽力に感謝いたしますとともに、本当にいいものができたなと思っております。コロナを含めて大変な時期に、大変お疲れさまでございましたとまず申し上げたいと思います。

 今日いろんな方からいろんな御発言も出ているところではございますが、今日出ている文言に関して、特に私は何か直すべき点があるとは思っておりません。特にコードを含めて、何かこれ以上細かくいろいろ書こうとするよりは、今日の皆様からの御発言とかも含めて、これからコードに関わる企業の方とか関係者の方が今日の議事録とかを読まれて、こういう趣旨なんだ、ああいう趣旨なんだということをご理解した上で、ガバナンス・コードに取り組んでいくということが大事だと思います。しかも今回、先ほど三瓶さんもおっしゃいましたとおり、とても分かりやすい意見書も出ておりますので、そういったものも参考にして、今回の改訂の文言の中でまさに原則主義で取り組んでいくということが大切ではないかと思います。ですので、私はこの原案でいいと思います。以上が1点めです。

 その上で2点目が、今回いろんな議論、多岐にわたる議論が行われたわけですけれども、やはり強いメッセージとして出ているのは、サステナビリティに対する取組みだと思います。この点に関して今回正面から取り組まれ、またこの点はいろいろな意味で実は相当インパクトがある改訂ではないか、今回の改訂は相当意義が大きいのではないかと思っています。ガバナンス・コードで言いますと、補充原則2-3①を直すだけではなくて、補充原則4-2②も直して、取締役会が自社のサステナビリティをめぐる取組みについてきちんと基本的な方針を策定すべきということを明記した。今の現場実務に照らして、この点は実は相当インパクトがあると私は思っています。加えてそれだけではなくて、補充原則3-1③で、そうした取り組みについてきちんと取組みの開示をしてくださいということまではっきり書いている。この2点に加えて、人的資本とか知的財産とか、そういったこともはっきり書かれていますので、今まさに日本企業さんを取り巻くいろんなイシューに対して正面から取り組んだ大きな改訂が今回なされたのではないかと思っています。

 サステナビリティの中身に関しましても、コード補充原則2-3①で、TCFDとか人権尊重とか、労働環境とかサプライチェーン全体の公正・適切な取引とか、自然災害とかも書かれていますし、それ以外に、皆さんもおっしゃっていますが、対話ガイドラインのほうを見れば、デジタルトランスフォーメーションであったりサイバーセキュリティーとか、そういった各論の重要なイシューも書かれています。そういったことをセットで、企業さんとして持続的に成長していくためにサステナビリティイシューに関して正面から取り組まなければいけない状態だと思います。そうした取り組みを進めていかれる中で、今回のガバナンス・コードも1つの参考に、ぜひ自社の企業価値の向上、持続的な成長に、このガバナンス・コードを活かしていっていただければと思います。今回の改訂は本当に重要な意義があると思っております。

 さらにそうしたサステナビリティへの取り組みを進めていく中で、取締役会における「数からスキルへの実質化」といいましょうか、スキルを備える、多様性を備えるという実質化のことも伴って進めていくと。またそれに伴って独立社外取締役の数も増やしていくと、そういうことになっているわけですので、まさにそういう意味での形式から実質という話のところにもケアした形でのメッセージも示されています。今回のガバナンス・コードのメッセージについて相当きちんと正面から取り組んでいくことで、日本の上場企業さんが企業価値向上に取り組むに当たってのいろいろな示唆に富む内容が含まれていると思います。

 最後に3点目が、以上の点を含めてなんですけれども、やはり今回、ガバナンス・コードにおけるコンプライ・オア・エクスプレインということの趣旨は極めて大事なのだと思います。特に、このガバナンス・コードをつくったときに前文があって、そこで原則主義が大事ですよということが書かれてあります。改訂を重ねるとなかなか皆さん前文を読まなくなるのですが、前文の趣旨はまだ依然として重要であることを忘れてはいけないと思います。その観点で、企業さんにおかれましても、やはり形式的なコンプライをするより、ちゃんと状況に応じてエクスプレインすべきものはエクスプレインするという形で、コンプライ・オア・エクスプレインの実質をきちんと担保していくことが重要であると思います。その上できちんと、機関投資家の方々との対話を含めて、いろんな形で価値を高めていくということをやっていくと。また機関投資家の方におかれましても、一律的な、形式的な判断を行うのではなくて、きちんとコンプライ・オア・エクスプレインの趣旨にかなった対話を通じて、各企業さんの特性を活かした対応をしていただく。そうした形で、企業側も機関投資家側も共に、実質主義にかなった対応を行う原則主義をぜひ進めていただければと祈念しております。そうした中で相当大きな前進が期待できるといいますか、また前進していくべきコードの改訂が今回できたと思いますので、そういったメッセージも、今回のコードの改訂の諸文書、意見書とか対話ガイドラインも含めて酌み取っていただいて、今回のガバナンス・コードを自社のいろいろな戦略とか企業価値向上に是非活かしていっていただければと思います。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、田中さん、どうぞお願いいたします。

【田中メンバー】 
 私も今回のコーポレートガバナンス・コードの改訂案に賛成をさせていただきます。この改訂についてというものも非常によくできていると思いますので、これも大変結構なことと思います。

 冒頭、冨山さんがおっしゃっていたのが非常に響いていまして、事業会社にいる身としては、言わばコーポレートガバナンス・コードをどのように具体的に適用していくのかという観点から、やっぱり見せてもらうわけですね。実際、事業環境の変化というのはすさまじいものがありまして、皆さん、いろいろな経営者の方々、CEOの方々は非常に悩んでおられるというのはもう明らかです。以前このフォローアップ会議のメンバーでおられました日立の川村さんが雑誌で書いておられますけれども、まさにこの温暖化対応の問題、カーボンニュートラルの問題については、これはもうぜひやらなければいけないことだけれども、抜本的に産業そのものが変わってしまう、もしくは産業が消えてしまうということがあり得るような状況であるということを最近の雑誌で、インタビューに答えておられます。我々も、まさにそういう事態が起きるんじゃないかということを考えている企業、上場会社は非常に多いんだと思います。

 そうしたカーボンニュートラルの問題に加えて、最近はデカップリングの問題が起きていますね、ジオポリティカルの問題、これも非常に大きな影響を与えるでしょう。一方で、日本の企業の成長というのは、やはりグローバル化をしないとなかなか成長の機会が見つからないと思われます。サプライチェーンの問題が最近様々なところで起きていますけれども、グローバル化のリスクというものも、そういうところに現れてくる。さらに、DXの進展によって世界中と非常にいろいろな形でつながりが速くなってきているという、こうした環境を考えますと、我々が今回つくっているコーポレートガバナンス・コードの改訂というものは、日本の企業で、かつグローバル化した企業にとっては、その会社をグローバルな組織全体に適用するという、そういう側面を持っています。

 これは非常にチャレンジングなテーマとして我々は捉えていまして、日本の会社が日本のコーポレートガバナンスというものを、海外でM&Aをやってきた会社は特にそうだと思うんですが、世界のいろんな国にある自分たちの子会社であるとか、買収をした会社にこのコードを適用していくという、そういうタスクがここに、目の前にあるわけです。これは極めてチャレンジングで、経営者として物すごくエネルギーを要する、そういうタスクであるというふうに私は思います。したがって、非常にいいものができたとは思うんですが、特にグローバル展開をしている企業にとって、これを具体化していく、また、このガバナンス・コードというものの趣旨を世界の仲間に認識してもらうというのは非常に時間と説得を要すると、そういう側面があるということはぜひ御理解をいただきたいなというふうに思います。

 それから、独立性の問題、先ほど上田メンバーもおっしゃっていましたけれども、独立性の問題がいろいろなところに書かれています。例えば「今回の改訂について(案)」の中の2ページ真ん中に、なお書きで「独立社外取締役には、形式的な独立性に留まらず、本来期待される役割を発揮することができる人材が選任されるべきであり、また、独立社外取締役においても、その期待される役割を認識しつつ、役割を発揮していくことが重要となる。」、こう書かれているわけですし、それから、例えば同じ書類の5ページのグループガバナンスのところにも、取締役会として支配株主からの独立性と株主共同の利益の保護云々等が書かれています。

 この独立性という課題は、以前も私、申し上げたことがあるんですが、一体何からの独立なのかということを常に頭に置いておく必要があるだろうと思います。取締役会の独立性ということになりますと、経営からの独立性というようなことが当然あるでしょうし、支配株主からの独立性、特に上場子会社を持っている場合の、その子会社の社外取締役の独立性というもの。それから最近は、少し識者といろいろな話をしてみたんですが、アメリカでは経済的独立性というものが非常に重視されるようになってきているという話があります。ある会社の社外取締役であることが、まさに生活の糧となっているというような社外取締役というのは独立性が欠けるという、そういう見方がされているそうです。

 一方で、松岡さんの御意見にあるように、この独立取締役のプール、人材というのが非常に少ないという意見が当然あります。そういう中で、金融機関の出身者というものがいろいろなところで、元のメインバンクの出身だからということで独立性がないというような、形式的に、そうした基準に関わるということが時々あります。当社のこの間の株主総会でもそういう面がありました。しかしながら、金融機関の出身だからといって、必ずしも、その金融機関に送られた取締役、紐つきの人であることでは必ずしもないものですから、その辺については実質的に、もう少し形式基準を緩めて、金融機関には非常に優秀な先輩も後輩もいますので、そういう方々が活躍できる場をつくってみてはどうかというふうに思います。そういう意味では、今回のこの改訂をベースに、恐らく日本取引所の独立役員の確保というところは手を入れられるのではないかというふうに私は思いますけれども、そのときにその辺を考えていただければというように思います。

 最後に1点、先ほど岡田メンバーがおっしゃいましたけれども、日本には今3つのガバナンスの仕組みがあります。そろそろ会社法をいじって、一本化するということを考えたらいいんじゃないかという御意見がありました。私もそれに賛同いたします。その点を申し上げて、コメントとさせていただきます。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは続きまして、佃さん、どうぞお願いいたします。

【佃メンバー】 
 どうもありがとうございます。今回の改訂案は、今までの議論を踏まえまして、大変よくまとめていただいたと思います。異論ございません。全て賛同いたします。神田座長と、それから事務局の皆様、大変御苦労さまでした。ありがとうございました。私が言いたかったことは、ほぼ今まで皆さんの御意見、御発言でカバーされておりまして、特に冒頭のケリー・ワリングさん、それから冨山さんがおっしゃったことには強く共感いたしました。そういった観点で、特に繰り返しませんけれども、今回の一連の議論の中で私自身が感じたことを、一言だけコメントさせていただきたいと思います。

 それは、日本企業の取締役会が今まで以上に抜本的に変わっていかなければならないということです。しかも連続的でなく、非連続的に変わっていかなければならないといった点です。基本原則4には、上場会社の取締役会が企業戦略の大きな方向性を示すことと記載されておりますけれども、事業環境が劇的に変化し続ける中で、一方でカーボンニュートラルの実現を果たしつつ、他方で資本コストを上回るリターンを上げ続け、株主価値、企業価値を上げ続けると、この両立を果たすというのは、多くの日本企業にとっては極めて難しい課題であると認識しています。したがって、今後、夢のあるような話ばかりでなく、例えば主要事業からの撤退であるとか、あるいは、場合によっては会社そのものを他社に身売りするような非常に厳しい判断を取締役会がしなければならない、そういう状況というのも想定され得るわけでございます。

 私は今、上場企業の独立社外取締役を務めておりますけれども、取締役会で、この基本原則4にある、企業戦略を今まで以上に深く議論すること、つまり、企業価値を上げる企業戦略を、カーボンニュートラルを実現しながら実現するという議論は大変難しいですから、今後の日本企業の取締役会の責務はますます重くなると、こう感じています。

 したがって、これからこそが、ガバナンス改革の本番であるとの思いを強く持ちました。ピンチはチャンスというふうに言われますけれども、本当に目の前のピンチをチャンスにしていければと思っております。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 多くの方から、いつものように大変貴重な御指摘、御意見を多数いただきまして、ありがとうございました。本日御参加いただいているメンバーの皆様方で御発言がない方は、名簿順というか、あいうえお順で、岩間さん、大場さん、翁さん、神作さんの4人の方になるのですけれども、もちろん無理に御発言いただく必要はございませんけれども、念のために順番に、もし御発言があれば、いただければと思います。

 岩間さん、いかがでしょうか。

【岩間メンバー】 
 岩間でございます。ありがとうございます。ちょっと参加が遅れましたこと、おわび申し上げます。

 今回の改訂については、私も、非常によくできた改訂だと思っております。ただ、冒頭にいろいろ御発言ありましたように、事業環境、それからその他もろもろの環境が急速に変化している状況の下でこれからどうしていくかということについて、課題もいろいろ残っていると思うので、これも皆さんがおっしゃったようなことだと思うんですが、基本的にガバナンス・コードの改訂というのは、今、大体3年置きということになっておると理解しておりますけれども、いろいろなことが変化したときに、ある程度柔軟に即応するということも考えなければいけないということもあり得ると思いますので、そういうときには、そのときの課題というのをどういう具合に見ていくかということについて、もう少し、何といいますか、臨機応変ということも考えたほうがいいんじゃないかということを1つ思っております。

 それともう一つは、田中メンバーその他からお話ございましたように、ガバナンスの仕組みでございます。3つが並列して動いておるということについては、やはりできるだけ早い時期に一本化していくということがいろいろな意味でいいのではないかと、グローバルに、日本のガバナンスがどういう具合になっているかということについても非常に理解しやすいという方向に持っていくということが大事なのではないかという具合に思っております。

 以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 大場さん、もし御発言があれば、どうぞお願いいたします。

【大場メンバー】
 もう皆さんから御指摘がございましたので、特段ないのですが、あえて申し上げますと、ワリングさんから御発言があったと思うんですが、開示の場所という課題が1つ残っているかと思います。いろいろな報告書があるのですが、投資家が一番注目するのは何かというと、やはり有価証券報告書という答えがすごく多いんですね。したがって、開示の場所をどこにするかということについて、これはもう少し具体的に示してもいいのではないかと、これは今後の課題ということではないかと思います。

 それから、田中さんから御指摘のあった独立性という定義をどうするかというのも、1つ課題としてまだあるかなと思います。簡単に言ってしまうと経済的独立性と精神的独立性ということなんですが、これは綿密に関連をしていますので、そういったところについて、もう少し踏み込んでもいいのかなと思います。

 もう1点は政策保有のところですが、具体的なスケジュールを、縮減の規模と期間をどのように明示するかというような課題は今後残るのではないかと思います。

 以上3点です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、翁さん、もし何かございましたらお願いできませんでしょうか。

【翁メンバー】 
 おまとめいただきまして、どうもありがとうございました。私もこの内容について賛同いたします。特に今回、コロナの中で、こういったコーポレートガバナンス・コードがまとめられたことにとても価値があると思っております。やはり今こそ変化していかなければならないタイミングでございますし、今回多様性にこそ価値があるということとか、また人的資本への投資が非常に重要であるということが書き込まれて、サステナビリティ、そして長期的な企業価値の向上、こういったことに取締役会がしっかり議論して考えていく重要性について指摘していることに価値があるというふうに思っております。また、冨山さんや、最初にワリングさんもおっしゃっていましたけれども、やはり非常に激変する世界になってきておりまして、こういった中で、今のままではいけないという危機感が伝わるとよいと思っております。

 あと、具体的な今後の課題として、1つ私も申し上げたかったのは、今、大場さんがおっしゃって、前回私も申し上げましたけれども、どういう開示をどういうところにしていくかということだと思います。その開示の仕方とか、どこに開示するかということで、相当その効果も変わってくると思っております。コーポレートガバナンス・コードのところで議論することなのか、または開示の在り方のところで議論することなのか分かりませんが、とても重要な点でございますので、今後も議論を継続していただきたいと思っております。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、神作さん、もし何かあればお願いしたいんですけれども、いかがでしょうか。

【神作メンバー】 
 どうもありがとうございます。神作でございます。私も、今回のコーポレートガバナンス・コードの改訂案及び対話ガイドラインの改訂案に全面的に賛成でございますし、意見書によって、この2つの改訂案の背後にある考え方を含め説明がきちんとなされていて、大変結構であると思います。特に、私も含めて、メンバーの意見を極力取り込んでいただいておりまして、事務局、それから取りまとめていただいた神田先生に厚く御礼申し上げます。

 最後に、感想めいたことでございますけれども、今日のこれまでのメンバーの御発言の中で、例えば支配株主あるいは支配的株主の定義、特に支配的株主の定義の問題ですとか、あるいは、支配株主が、従属的な地位にある株主、少数株主を不公正に扱ってはならないという場合の公正性の意義について、もうちょっと客観的に、共通認識ですとか、場合によっては対話ガイドラインにおいて説明をという御発言があったと思います。私もその点には賛成でありまして、支配株主からの独立性ですとか、支配株主が少数株主をどのように扱うことが不公正なのかという点は、対話とかエンゲージメントによってのみ解決できるものではなくて、やはりある程度、客観的と申しますか、基準が存在することが望ましいように思います。

 私の感想、個人的な考えにすぎませんけれども、まず支配的株主という点から申し上げますと、会社法的な議決権に基づく支配から申し上げますと、取締役の過半を選任するという権限がある株主が支配的株主になるのではないかと思います。この場合には、持ち株状況といいますか、株式の保有状況によって会社ごとに支配株主の持ち株比率は異なり得るということになると思います。したがって、支配株主について一律に持ち株比率などで定義することは非常に難しいと思います。しかし、支配的株主の第一の定義というのは、経営陣の過半を選任するに足る議決権があるということだと思います。そのほかもう一つは、契約によって経営に影響を与えるという場合、特に株主と会社との間の契約などによってそのような権限がある株主が支配的株主になると思います。実は、今の契約の話を申し上げますと、本当は株主ではない者に、契約に基づいて支配的な地位が生じるということもあり得ますので、そのようなことについて、将来的にはさらに議論をしていく必要があるのではないかと思います。

 また、意見として出されました、例えば独立した委員会をつくって検討すべき事項が何かという点については、意見書のほうに書かれておりますように、非通例的な、あるいはグループに特有の取引が行われるとか、例えば持ち株や持分についてグループ間で譲渡して、グループの組織とか構造に影響が生じる場合とか、あるいはグループ間で、市場を配分したり資源を分配したりする場合ですとか、あるいは危機に陥ったグループ会社を支援する場合など、こういった、グループの中で特に支配株主が従属的な地位にある株主の利益を害するおそれが大きい非通例的な行為というはどのような行為であるのか、共通の認識を持って対処することが望ましいと思います。他方、親子会社間の通例の日常的な取引のようなものは、基本的には内部統制体制を通じてコントロールしていくことになり、独立した委員会を設置して対処すべき事項ではないと感じております。

 いずれにいたしましても、今回のコードおよび対話ガイドラインの改訂案、それから意見書には全面的に賛成いたします。御指名いただき誠にありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、全員の方々から御発言をいただきまして、どうもありがとうございました。もし追加で御発言があれば承りたいと思いますけれども、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、今日できれば取りまとめということを目指しているのですけれども、本日、具体的な御指摘もいただきました。ただ、まず全体としては、コードの改訂案、それから対話ガイドラインの改訂案、そして意見書とは言いませんけど、資料ということになりますけれども、番号で言いますと、資料と別紙1、そして別紙2、この3つの文書について、基本的な方向感についてはメンバーの皆様方の御賛同をいただけたものと理解しております。若干の委員の方々から具体的な修正の御提案とか御意見をいただいておりますので、今後それらをちょっと検討させていただきたいと思います。現時点で島崎さんのほうから何かございますか。よろしゅうございますか。

【島崎企業開示課長】 
 大丈夫です。

【神田座長】 
 それで、もう1回会合を開くかどうかということですけれども、オンラインなので簡単なのかもしれませんけれども、皆様方を相当長時間拘束することにもなりますし、私の印象としては、もう一度会合を開いて取りまとめという必要はないのではないかと思います。すなわち、本日いただきました御指摘を踏まえて、事務局のほうで、修正ができるところ、すべきところというのを検討していただき、皆様方とメール等で調整をさせていただいて、皆様方に御確認いただくという形でこの確定して、後日公表するということにさせていただいてはどうかと感じます。なお、皆様方が中身を御確認した後の表現の平仄など、てにをはとか、そういう最終的な細かい精査については、念のため、恐縮ですが、私に御一任をいただければというふうには思います。

 取りまとめに当たって、以上のように進めてはどうかと思いますけれども、皆様方におかれましては、以上のような方向で御承認というか、御承諾いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【神田座長】 
 どうもありがとうございます。今回、通信環境を安定させるため、カメラをオフにしていただいていますので、ちょっと皆様方の表情が見えませんでしたが、今ご発言をしていただきまして、どうもありがとうございました。御承認いただいたとさせていただきます。

 それでは、今後のパブリックコメント等の手順等について、事務局から御説明をお願いいたします。

【島崎企業開示課長】 
 先ほど座長から確定というお話もありましたが、確定しましたコード改訂案及び対話ガイドライン改訂案は、コード改訂案につきましては東証において、対話ガイドライン改訂案におきましては金融庁において、おおむね1か月間程度、パブリックコメントに付しまして、広く関係者の皆様の御意見を求めることとしたいと考えております。また、英語版につきましても同様に、パブリックコメントに付したいと思っております。

 昨年10月の第20回以降、コーポレートガバナンス・コード及び対話ガイドラインの改訂に向けて、メンバーの皆様から様々な御意見を頂戴しまして、誠にありがとうございました。本日も本コード改訂の御指摘に加えまして、改訂されたコードの運用ですとか定着についての取組み、それこそ趣旨をよく関係者の方々に理解していただくよう取り組むべきですとか、あるいは意見書、コード、対話ガイドラインというのを一体として、よく御説明していく必要があろうということ、それから一律形式的な判断とならないよう、投資家の方々と企業との対話、それから企業の方々のエクスプレイン、そうしたことも含めての対話の重要性について御指摘をいただいたと思っていますし、あとはガバナンス改革についての検証といったお話もあったかと思っております。しっかり対応していこうと考えております。

 また、皆様から、それこそ事業環境の変化の激しさというところから始まりまして、サステナビリティ、人的資本、グループガバナンス、取締役会の評価、政策保有株式、ちょっと網羅するのもあれですけれども、様々な点にわたりたくさんの意見をいただいておりまして、しかも今後また将来に向けたものも含まれていまして、例えば開示の在り方、開示ルールの在り方、それからひいてはガバナンスの形といったお話というのもあったかと思います。皆様方のお力も借りながら、実効的なコーポレートガバナンスの実現のために、事務局として、御指摘を踏まえつつ、検討対応を行ってまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。今御説明いただきましたパブリックコメントにおいて寄せられました御意見等も踏まえた上で、コードの改訂と対話ガイドラインの改訂を最終的に確定して、それで公表し、実施していくという段取りになります。場合によりましては、パブコメ後に、コード改訂、ガイドライン改訂を、最終的にというのでしょうか、確定する際にもう一度、皆様方にはお集まりいただくとか、オンラインで会議を開催させていただくという可能性も一応ありますけれども、もしそういう必要が生じた場合にはどうかよろしくお願い申し上げます。

 いずれにしましても、本日をもちまして、今回のコード及び対話ガイドラインの改訂に向けた議論は一段落ということになります。ただ、このフォローアップ会議自体は、今後とも継続して開催してまいりますので、引き続き皆様方には御支援と御鞭撻をいただければと思います。コロナの状況の中で、今回はオンライン開催ということ、あるいはユーチューブでの同時配信など、新しい試みを幾つかしまして、不具合があったりもして皆様方にはいろいろ御迷惑をおかけしましたけれども、皆様方から、いつものように、非常に活発で、前向きで、また建設的な、鋭い御指摘、御示唆を多数いただきまして、本当にどうもありがとうございました。

 それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。皆様方、どうもありがとうございました。
 

―― 了 ――

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企画市場局企業開示課

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