スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第24回)議事録

1.日時:

令和3年2月15日(月)15時30分~18時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館9階 共用会議室3

【神田座長】  
 それでは、定刻になりましたので、始めさせていただきます。ただいまからスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議の第24回目の会合を開催させていただきます。皆様方には、いつも大変お忙しいところをお集まりいただき、また、御参加いただき、誠にありがとうございます。

 本日でございますけれども、まず事務局説明としまして、金融庁から「ESG要素を含む中長期的な持続可能性(サステナビリティ)について」ということと、それからもう一つ、「企業と投資家の対話の充実/企業年金受益者と母体企業の利益相反管理」、この2つのテーマについて御説明をいただきます。その後、皆様方に討議をお願いするということになります。

 なお、本日はワリングメンバーから英語で御発言が予定されておりますので、逐次通訳をさせていただきます。

 それでは、早速ですけれども、まず金融庁から「ESG要素を含む中長期的な持続可能性(サステナビリティ)について」、それから、「企業と投資家の対話の充実/企業年金受益者と母体企業の利益相反管理」についての御説明をお願いします。島崎さん、よろしくお願いいたします。

【島崎企業開示課長】 
 よろしくお願いいたします。それでは、資料1と資料2に基づきまして御説明させていただきます。まず資料1の、ESG要素を含む中長期的な持続可能性(サステナビリティ)についてということで、まず総論的なものといたしまして2ページ目でございます。今のコーポレートガバナンス・コード及びスチュワードシップ・コードにおける記載ということで、現行のコーポレートガバナンス・コードでは、原則2-3にサステナビリティをめぐる課題について適切な対応を行うべきだという記載がございます。第3章にも、いわゆるESG要素等についての、非財務情報についての開示の言及がございます。またスチュワードシップ・コードの前回改訂(2020年3月)では、サステナビリティを考慮すべき旨を追加しているところでございます。

 3ページ目でございますが、ESGの1つの要素たる気候変動についてでございますが、企業・投資家ともに、リスクであるとともに投資機会・ビジネス機会であると捉えている者が多数を占めるようになってきている。アンケート調査では、回答した企業の69.7%が、また、回答した投資家の77.8%がリスクとともに、ビジネス機会があると回答している。

 4ページ目以降、その企業の取組み等も御説明していきたいところですが、まず、日本経済団体連合会が推進する「チャレンジ・ゼロ」は、ネット・ゼロエミッション技術等の開発、普及・実装、これらに取り組む企業等に対するファイナンスなどを対象とした取組みで、こういう脱炭素社会の実現に向けてチャレンジするイノベーションのアクションを国内外に発信していっているところかと思います。

 5ページ目はサステナブル・ファイナンスについてであり、「気候変動分野のサステナブル・ファイナンスに関する基本的な考え方と今後のアクション」は、昨年2020年10月に出されたものです。関連する部分は青くなっておりますが、一番下の方には、「コーポレートガバナンス・コードの改訂が来春にも予定される中、企業の情報開示の自主性・柔軟性を確保しながら、気候変動分野におけるTCFDの位置づけの明確化など、既にある制度的基盤の一層の整備の必要性も検討すべきである。」とございます。

 6ページ目になりますと、ここでは、サステナビリティ関係の企業の取組みについての例を出させていただいています。取締役会の諮問機関として位置づけられている例や執行側の最高決定機関として位置づけられている例でございます。その後7ページ目では、国際的な議論の1つとして、ダボス・アジェンダにおける議論がございます。(2021年1月)2020年9月に、ESGに関する定量的指標と推奨される開示に関する報告書が出されていまして、こうしたものに基づきまして61のグローバル企業が意思表明を行っています。これらはガバナンス原則、地球、人類、繁栄など4つの柱に分類されており、主な参照基準については、既存のESG開示枠組みなども活用しております。

 8ページ目は、私どもが昨年行いました、ポストコロナにおいて注目していきたいガバナンスについてのヒアリングであり、Eに加え、従業員の役割やその安全への配慮といったS要素への注目が集まっています。

 9ページ目ですと、ESG投資の各地域での増大の傾向などについて示させていただいております。

 10ページ目は、投資家の関心の高まりの一例でございますが、ブラックロックは、投資先企業と顧客投資家に対し、ESGを軸にした運用を強化すると表明し、またビジネスモデルの適合についての計画の開示などを求めていく旨を示しております。

 11ページ目が政府におけるグリーン成長戦略の抜粋でございます。カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略で、金融のところでは、今後、TCFDに位置づけを明確化していくといった記述となっております。

 12ページ目は、菅総理とバイデン米国大統領との電話会談についてであり、気候変動問題について日米で緊密に連携していくことで一致した。ここには気候変動問題とコロナ対策、イノベーションなどと国際社会共通の課題が書かれています。

 13ページ目以降がサステナビリティに関する開示でございます。我が国の企業の動向でございます。14ページ目では、統合報告書における開示を含め、非財務情報の開示について、下の方に、TCFD、SASB、CDP等、あとは統合レポートの数字も載っておりますが、積極的な動きが見られます。

 15ページ目でございますが、そのフレームワークにつきましては、非財務情報の開示に関してのフレームワークがこちらにございます。TCFD提言、SASBスタンダード、GRIスタンダード、あるいは、国際統合報告フレームワークなど様々な団体が策定、公表している状況にございます。

 16ページ目では、TCFDの自主的な開示をサポートしていく動きについて、日本における取組みとして、TCFDコンソーシアムを載せさせていただいております。

 それから、17ページ目が海外の動向でございます。海外では欧州を中心にTCFD提言に基づく開示の法制の動きなどが活発化しているということで、イギリスでは、2020年11月に2025年までのTCFD開示の義務化に向けたロードマップを公表。21年1月からはプレミアム市場の上場企業にコンプライ・オア・エクスプレイン方式での開示が課されているというところでございます。アメリカにつきましては、バイデン政権は上場企業に対して気候関連リスクと温室効果ガス排出量の開示を求めることを公約し、また、大統領令でも言及がなされております。フランス、ドイツでもTCFD提言に関する動きがございます。

 続きまして、18ページ目でございます。こちらは、先ほど様々な団体がというお話をさせていただきましたが、そうした林立、並立している基準について、2020年9月にIFRS国際会計基準の設定主体であるIFRS財団が国際的な報告基準を策定すべく、新たな基準設定主体を設置する旨の市中協議文書を公表しているということでございます。こちらについて、新たな基準設定主体の設置、既存の団体と連携新たな基準設定主体での気候関連情報についての作業、投資家及び他の市場参加者に有用なサステナビリティ情報の提供ということが記載されています。翌19ページ目に、その大まかな新たな基準設定主体設置のイメージを記させていただいていまして、評議委員会の下にその国際会計基準を作るところ、サステナビリティ報告のための基準を作るところを設定していこうという提案となっております。

 これにつきまして、昨年11月27日に日本からコメントレターをIFRS対応方針協議会名で発出しております。関係団体も議論に参画していただいております。こちらではサステナビリティ報告に関する基準設定主体の新たな設置を支持する。それから、主要な報告対象者は投資家を中心とする資本市場の参加者とすべきであり、その上で、重要性の範囲は、企業財務に与える影響を基本に考えるべきである。それから、メンバーについて、多様性を確保すべきであり、気候変動以外のESG要素、特にSやGも並行して対応すべきである。それから、財源の確保について意見を発信したところです。こちらは現在、IFRS財団が公表したプレスリリースなどによりますと、そうしたIFRS財団のサステナビリティ報告への取組みなどについて、その要請が高まっている。高い要請であるということですが、これの意図といたしましては、時間軸などを含めたロードマップを含む最終提案を9月末までに固めていきたいというようなことが公表されているところかと思います。

 21ページ目でございますが、「サステナブルファイナンス有識者会議」でございます。こちらは金融庁で有識者会議を設けておりまして、2050年、カーボンニュートラルを「経済と環境の好循環」につなげることが政府全体の課題ということで、この「テーマ(案)」の中にもございます、例えばこの項と関係があります気候関連の開示などにつきまして、2月10日にも会議が開かれまして、投資家、あるいはほかのステークホルダーについての有用な情報の開示の重要性、それをどのように保っていくか、国際的な動向ですとか、あるいは自主的開示性的開示ですとかといったことについても含め、議論がなされたと伺っております。

 それから、23ページ目、こちらはこれまでの議論の中でもございました企業価値の考え方について、1枚参考資料として挟ませていただいております。企業価値につきましては、下に図はございますが、測定手法が確立された株主等にとっての企業価値と、これら、下の段にもございますが、DCF法ですとか、EBITDAマルティプル法等、確立したメジャラブルな測定手法が確立されたものと、それから、測定手法が模索途上である、より広いステークホルダーを含む企業価値等が存在すると言えるというようなことかと私どもも存じております。

 企業価値評価、DCF法、EBITDAマルティプル法等に加えて株主価値もEPS、BPS、PER、PBRなどを用いて算出可能です。主に現在の収益力と将来の収益力見込みにより規定されると言えるのではないか。そういった市場の評価である株価というものが存在しています。それから、バランスシートに記載されない非財務資本無形資産について、評価の在り方や情報開示についての検討が、先ほどもございましたが、国際的になされており、サステナビリティ報告に関する動きも含む、より的確な企業評価に資することが期待されるということで、私どもが様々な公表されているもの、文献や、そういったものも基にして1枚にまとめさせていただいたものでございます。

 本日、御議論いただきたい事項を、24ページ目に記させていただいておりますが、中長期的な企業価値の向上に向け、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)の重要性は高まっており、我が国企業においても、サステナビリティに関する開示の充実等が進んでいる。また、サステナビリティに関しては、従来よりE(環境)の要素への注目が高まっているところであるが、それに加え、近年、S(社会)の要素の重要性も指摘されている。こうした中、中長期的な企業価値の向上を図る上で、サステナビリティに関しどのような要素を考慮することが考えられるか。企業のサステナビリティに関する開示について、投資家との建設的な対話を深める等の観点から、どのような点が重要であり、これをどのように後押ししていくことが考えられるか。サステナビリティに関する取組みを通じて、企業価値の向上を図る観点から、企業のガバナンス体制等についてどのように考えていくか、ということを御議論、お願いできればと考えております。

 続きまして、資料2では、企業と投資家の対話の充実、企業年金受益者と母体企業の利益相反管理について御説明させていただきます。まず、コーポレートガバナンス改革の中で対話ということで申しますと、少し後ろにこの会議でも、最近の会議でも多く対話について御議論いただいていますので、まとめさせていただいていますが、スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードを車の両輪として、コーポレートガバナンス改革の深化に向けた取組みを行っている中、2018年6月には、機関投資家と企業との間の対話の実効性を高めるため、両コードの附属文書として投資家と企業の対話ガイドラインを策定しているところです。

 2ページ目でございますが、「投資家と企業の対話ガイドライン」の概要でございまして、そこの章立てでございますが、「経営環境の変化に対応した経営判断」では、中には資本コスト、事業ポートフォリオの見直しなども含んでいるところでございます。「投資戦略・財務管理の方針」では、設備投資、研究開発、人材投資ですとか、財務管理の方針などを含んでいるということです。「CEOの選解任・取締役会の機能発揮等」では、CEOの選解任プロセスですとか多様性の確保。それから、「政策保有株式」についても、4.として柱が立っていまして、その保有目的や便益・リスクの検証と方針の明確化。それから、「アセットオーナー」でございますが、こちらは資質を備えた人材を計画的に登用・配置するなどの取組みについてでございます。翌3ページ目は、ここまでのところの議論で、対話の充実の重要性に関する御意見、いただいた御意見をまとめさせていただいております。

 4ページ目、こちらの項目の中にアセットオーナーの話がございます。コーポレートガバナンス・コードの原則の2-6や対話ガイドラインにおいては、先ほども少し触れさせていただいた適切な資質を持った人材を計画的に登用・配置するなどの取組みの重要性や、企業年金受益者と会社間の利益相反管理に言及がなされております。翌5ページ目に、先日、先般のスチュワードシップ・コードの再改訂にあたり、利益相反管理についてパブリックコメントなども通して、利益相反管理に努めることが重要との御意見が寄せられたところであり、今後、実態を踏まえながらフォローアップ会議や金融庁を含む関係者において、さらに検討を進めることが期待されるとされております事項ですので、本日、議論の射程において御議論いただければと思っている次第です。

 資料の6ページ目につけさせていただきましたのは、企業年金の運用実務担当者に伺った実態調査ということでございますが、母体企業との取引関係を重視して運用委託先を決めているという企業年金も存在することが下記の実態調査の回答などからわかるかと思っております。

 7ページ目でございます。本会合で御議論いただきたい事項で、資本効率に関する課題等についての企業と投資家の対話をはじめとして、対話の充実の重要性に関する御意見がこれまで聞かれている。こうした中、企業のガバナンス向上に向けて、企業と投資家との対話をより実効的なものとするためには、いかなる取組みが必要か。対話の更なる充実に向け、「投資家と企業の対話ガイドライン」で記載すべき事項は何か。また、アセットオーナーたる企業年金と母体企業の関係性(利益相反管理)については、どのように考えるかということを御議論いただきたい事項として整理させていただいております。

 私からの御説明は以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、これから皆様方から御意見等をお伺いする討議の時間とさせていただきます。本日は、今御説明いただきました内容も踏まえ、事務局から御議論いただきたい事項として論点を提示していただいておりまして、資料1ですと最後のページ、24ページですね。資料2でも最後のページ、7ページになります。これを中心に御意見をお出しいただければありがたく存じます。

 なお、コメントや御意見等は、いつものように、恐縮ですけれども、お1人あたり5分程度以内を目安にお願いできれば幸いでございます。いつものように御発言いただける方にはチャット機能を使っていただき、全員宛てに発言希望の旨をチャットでお知らせいただきますと、私から御指名をさせていただきます。そこでお名前を名乗って御発言いただければと存じます。

 今日はワリングさんに御参加いただいておりますので、もし差し支えなければワリングさんに最初に御発言いただければと思いますけれども、いかがでしょうか。

【ワリングメンバー】 
 本日の会議でICGNの意見を発表する機会を与えてくださった神田座長及び理事会のメンバーの皆様、大変ありがとうございます。企業と投資家は長期的な企業価値の維持を向上させ、最終的には持続可能な経済成長と社会的繁栄に貢献することに相互の利益を共有します。今、世界はまさに最大規模での課題、つまり、新型コロナと気候変動に直面していると言えます。より健康で持続可能な世界を創るためには、これらのリスクを同時に管理し、地球を脱炭素化しながら世界経済を再起動していく必要があります。地球温暖化を1.5度に安定させ、生成される炭素排出量が大気から除去される量と等しくなるようにネットゼロ目標を設定する為には、緊急の行動が必要となります。さもなければ、将来の世代が大変な社会的、生態学的、そして経済的影響を不当に負担することになるからです。

 では、一体どのようなアクションが必要なのでしょうか。全ての政府は行動計画とともに自国の経済のネットゼロ目標を設定し、そして開示する必要があります。ネットゼロへの移行に取り組む企業は、気候変動の悪影響を緩和するだけでなく、再生可能エネルギー、資源効率、スマートテクノロジーから生じる事業機会から恩恵も受けられます。

 では、企業の取締役会はどのように気候変動に対してより責任を持ち、そして説明責任を果たすことができるでしょうか。持続可能性の問題に精通している独立取締役を任命するということもできますし、また、独立取締役が主導するサステナビリティ委員会を設置し、そしてもちろん、取締役会全体が共同で責任を負うということもできると思います。また、気候変動の影響について教育をしたり、そして気候変動の影響がどのようにビジネスモデルに組み込まれているかを投資家に説明し、リスクが適切に識別、測定、監視、そして管理されていることを実証するということもできると思います。

 そして、報告の仕方については、TCFDと整合させることを私たちとしては推奨したいと思います。具体的には取締役会が、気候変動がビジネスモデルに与える影響とネットゼロ経済及び長期戦略のニーズを満たすためにビジネスモデルがどのように適用されるかということを評価し、また、株主の承認の下、達成期間を含む炭素排出量削減の目標と計画を開示する。そして株主の承認を前提とし、CEO及び役員の賞与制度とその計画をしっかりと連動させるといったようなことができると思います。

 これらの行動に関連する開示は、投資家が企業のレジリエンスを理解し、進捗状況を評価するのに役立ちます。有価証券報告書で開示し、株主総会の前に公表、そして英語に翻訳されるべきです。投資家は投資ポートフォリオから気候変動リスクを区別して抜き出すことはできません。しかし、より優れた開示があれば、リスクを持続可能な環境及び社会インフラストラクチャーに再割当てし、経済成長を促進しながら、世界の有限の資源を最適化することができます。一般的にはIFRSとUSGAAPが人的資本や自然資本などのリスクとリターンの無形の側面について、ほとんど知見を提供していないということを考えると、持続可能性報告に対する単一のグローバルなアプローチが確立されることが非常に有益だと言えます。

 また、投資家自身も2050年までにネットゼロポートフォリオを目指すことにコミットもしています。TCFDはアセットオーナーにネットゼロカーボン排出量への移行のためにポートフォリオがどのように位置づけられているかということを開示することを要求しています。フランスでは、「緑の成長のためのエネルギー移行に関する法律」の第173条で、アセットオーナーに炭素リスクと気候変動への方針の開示を求めています。イギリスでは年金基金がESGを含む経済的に重要な要素が企業のエンゲージメントや議決権行使においてどのように考慮されているかを説明する必要があるとしています。ICGNも今年、国連の持続可能な開発のためのグローバル投資家(GISD)と協力してICGNモデル・マンデート(模範委託契約条項)を見直す予定です。このモデル・マンデートでは、アセットオーナーが運用委託先マネジャーとの契約でスチュワードシップ義務を起草する際に考慮するべき条件の例を提供します。例えば期間とかインセンティブ、そしてESGの統合などです。

 今回の新型コロナの危機は、深刻な社会的不平等をあらわにし、資本主義に対する国民の不信を広めてしまいました。どのようにレベルアップし、よりよい状態に戻すかというのが、全ての市場の企業及び投資家にとって重要な優先事項だと言えます。支払い能力を維持するため、短期流動性要件を満たしながら従業員の健康、安全、そして福祉を確保する。そして社会的責任、公平性、持続可能な価値創造に関する長期的な視点を持って社会的意義を公に定義する。そして、労働力、利害関係者、資本提供者を考慮しつつ、資本配分の決定に全体的かつ公平なアプローチをとります。さらに価値創造のための長期戦略の一環として、人的資本政策に関するよりよい情報を公開するよう、企業に呼びかけています。これには雇用の安定性、総労働力コスト、多様性、人材管理などに関する透明性の向上が含まれます。こうした優先事項については、今年のICGNのグローバルガバナンス原則の改訂にも含まれております。

 こういった問題に対して企業と投資家の対話を一体どのように改善していけばいいのでしょうか。コンプライ・オア・エクスプレインのシステムを通じてコーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コードがどのように関連しているかということをまずよりよく理解する必要があります。これには企業がコーポレートガバナンスの原則を適用し、投資家にどのように適用したかを開示する必要があると思います。この開示は有報という単一の報告書に一元化する必要もあります。企業が特定のコード原則から逸脱する正当な理由がある場合に、エクスプレインというアプローチが有効となります。システムが効果的に機能するためには、企業側からの説明が意味のあるものでなくてはならず、投資家に代替アプローチの明確な理由とその潜在的な影響を説明しなくてはなりません。投資家は、その説明を慎重に検討し、個々の会社の状況に十分な配慮を払う必要もあります。

 つまり、議決権行使においては、ただ単にチェックボックスにチェックマークを入れるというアプローチを避けなくてはなりません。株主、そして全ての利害関係者は、企業の財務資本だけでなく、人的、そして自然資本にも注目をしています。ということで、私たち投資家は、またさらに株式の所有と、そして責任のあるスチュワードシップ・コードを通じてすぐれたガバナンスの守護者として行動する必要があると思います。御清聴、ありがとうございました。

【神田座長】 
 ワリングさん、貴重な御発言をいただきまして、どうもありがとうございました。

 それでは、ほかの皆様方から御発言をお出しいただきたいと思いますけれども、今日は途中で退席される御予定と伺っておりますソニーの松岡さん、もしいらっしゃいましたら、先に御発言いただければと思いますけれども、いかがでしょうか。

【松岡メンバー】 
 ありがとうございます。発言の機会をいただきまして、大変恐れ入ります。私どもといたしましては、まずESG要素を含む中長期的な持続可能性のお話でございますけれども、こういったサステナビリティの重要性が高まっているというのは同感でございまして、中長期的な企業価値の向上に向けて投資家との建設的対話を深めるという観点から、各企業ともにそのサステナビリティに関する開示というのも充実させてきておりますし、今後も引き続き前向きに取り組んでいくというふうに皆様考えているところだと認識しております。

 今もお話にございましたけれども、ESG要素を含んでいる中長期的なサステナビリティの確保というのは、全世界的にも着実に大きな流れとなっているという中で、各社が自社の置かれている状況、環境というものを踏まえて、個別に多様な取組みを進めている最中であり、今後も進めていくという状況であると認識しております。例えば、エンバイロメントのお話で気候変動の話も出ましたけれども、廃プラであったり、サーキュラーエコノミーだったり、環境問題全体というのは、各企業いろいろと取り組んでいる、また、取り組んでいくということでございます。

 投資家さんの関心自体も、多様だということを感じておりまして、ESG開示に関わる国際的な枠組みも様々な手法が出ているということでございますので、あまりOne Size Fits Allということではなく、やはりそういった多様な取組みに対応できるような検討が今後必要なのではないかと思っております。なので、ESGに関わります国際的な開示基準の統一化ということに向けた動きというのも出始めているという状況も承知しておりますので、こういったところも注目をしながら、ESG要素を含んだ中長期的な持続可能性の確保ということに企業側としては取り組んでいきたいと思っている次第でございます。

 また、企業と投資家の対話の充実や後段に出ました企業年金受益者と母体企業の利益相反管理の話でございますけれども、当然のことながら、企業とその重要なステークホルダーの1つである投資家との対話は大変重要だという認識の下で、企業各社においてもいろいろな御尽力を進めていると認識しております。御参考まででございますけれども、弊社におきましても、丁寧な説明と理解の促進、そして充実した対話というのを非常に重視いたしておりまして、様々な環境の変化だったり、その課題の現状ということにも目を向けながら、非常に力を注いで取り組んできております。

 企業年金のお話に関しても、各社いろいろな事情とか状況というのがあるとは存じます。その中で、またこれも一例として御参考までに弊社の状況を御紹介させていただきますと、長年、利益相反的なことを限りなく排除する体制づくりということに尽力してきているつもりでございまして、近年、DCに移行しておりまして、様々な外部からの提案だったりアドバイス、これはコンサルやいろいろな金融機関さんのほうからでございますけれども、を頂きながら、やはり社内外関係者の精通度や洗練度というのも高めていって、今後ますます多様化するであろうニーズというものにも応えられるように、そういった体制づくりということを目指して日々努めている状況でございます。なので、こちらも今後いろいろと進捗していくのではないかと全体としても期待しているとおりでございます。

 以上でございます。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、ほかの皆様方から御発言をいただければありがたく存じます。チャットにてお知らせいただけませんでしょうか。それでは、小林会長、どうぞお願いいたします。

【小林メンバー】 
 まず、資料1の23ページの企業価値の考え方から始めたいなと思うのですけれども、従前のシェアホルダー・キャピタリズムの時代ですと、そもそも企業価値というのは専ら財務的な要素、僕はこれをマネジメント・オブ・エフィシェンシー、マネジメント・オブ・エコノミクスとして捉えているのですが、特に資本効率の辺りで全て決まってきたのかなと思っています。しかし、幅広くステークホルダー全体に配慮するキャピタリズムに移行する中で、従業員の価値、ひいては従業員の健康だとか、あるいはサステナビリティへの貢献、あるいは知財を含めたテクノロジー要素、言ってみればマネジメント・オブ・サステナビリティとマネジメント・オブ・テクノロジーとでも表現すべきファクターの重みが2割、3割、4割と増えてきているのかなという感覚を持っています。

 そういう状況の中で、去年1年、パンデミックによって、結局、インターネットをベースにした重さのない経済といいますか、バーチャル経済、具体的にはGAFA辺りのアクティビティが急激に拡大して、実際、彼らの時価総額は日本の一部上場会社全体の時価総額をはるかに上回るに至っているわけです。あっと言う間に時価総額が700兆、800兆円と成長していくような、ああいうテック企業のバーチャルな期待値ビジネスといいますか、そういうものの価値をどう考えるのか。彼らは確かに巨大なキャッシュフローを生んで、従前の財務諸表ベースの資本効率、ROEからコスト・オブ・エクイティを引いたエクイティスプレッドと単純な比例関係にあるような伝統的でフィジカルな企業価値からは完全に逸脱して、バーチャル空間、ネット空間に新しい経済の場を創る、バーチャル経済を具体化することで非常に価値を上げている。

 それがバーチャル系企業の時価総額の急増という形で表れているわけですが、一方では、重化学工業的なものは当然時価総額が下がるか、PBRが1に届かないということが常態化しています。そのような中で、では一方でそのようなあくまでリアルをベースにしている企業の企業価値を今後どう表現し、考えていくかということが重大な課題になっていると思います。今、例えばカーボンニュートラルに向けて具体的にソリューション・プロバイダたり得るのは、むしろリアル経済を行っている企業なわけです。ファイナンスの力でカーボンニュートラルの方向に経済社会システムを変えていくだけでは不足で、テクノロジーとしてはやはり従来の石油であり、石炭であり、鉄であり、自動車でありという、この辺りのリアルの経済を行っている人が持っている具体的なアクションプランといいますか、カーボンニュートラルを実現するリアルなソリューションを提供しない限り、具体的には動いていかないだろうと思います。

 ということは、やはり今後のソリューション、イノベーションを語る上で、知的財産というものがすごく重要になってくると思うのですが、その知的財産の表現の仕方というか、そもそも無形資産としての知財の活用の重要性とその開示ということに対して、この事務局資料でも目配りが少し足りないのではないかと感じます。株主価値、従業員価値、顧客価値、取引先価値、社会コミュニティ価値と記載されているのですが、それらの源泉である非財務資本、無形資産の中でかなり重要な部分というのは、知財や商標、そしてそれらの投資、活用戦略です。ここに関する充実した開示がなされないと、先ほど申しましたマネジメント・オブ・テクノロジーとマネジメント・オブ・サステナビリティに係る重要な情報が欠けてしまうのではないかなという気がします。カーボンニュートラルや循環経済をリアルに生み出すのが知財なので、何らかの形でやはり記述すべきではないかなというのが1つの論点かと思います。

 もう一つは、投資家との対話の件です。私の経験ですと、投資家というのは経営者が対リスク戦略をどう考えているのかという点と、カーボンニュートラルなりデジタルトランスフォーメーションなり、あるいは昨今のパンデミックというように、ビジネス環境が大きく変革している中で、ポートフォリオ・マネジメント、ポートフォリオ・トランスフォーメーションをどう考えているのかという点に、かなり本質的な興味を見いだしています。ですから、気候リスクなりカーボンニュートラルなりデジタル化なり、こういう大きなトレンドに対応して、企業がどのようにポートフォリオ・マネジメント、結果としてはキャピタルアロケーションをしていくのか、一貫性をもって結びつけて開示することが大きなポイントになるのではないかなと思います。

 それと、具体的に対話を行う中で、執行や社内取締役だけが機関投資家とのミーティングに当たるのではなく、やはり社外取締役、とりわけ取締役会議長的な人が、少なくとも年に1回ぐらいは機関投資家とこれまで述べてきたようなアイテムについて対話をする必要があると思います。単に執行のみならず、会社全体として方向性を一致させるという意味でも重要ですし、社外取締役個人の勉強という意味でも非常に重要ではないかと思います。

 最後に繰り返しになりますが、今日のテーマであるサステナビリティをメインとした非財務関係の充実については、当然、何ら異論はないのですけれども、次会以降で、知的財産、ひいては無形資産関係全般の投資と活用についてディスカッションすべきではないかということを一言申し上げたいと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして春田さん、どうぞお願いいたします。

【春田メンバー】 
 春田です。よろしくお願いいたします。私のほうから、サステナビリティの問題と、対話の重要性について発言させていただければと思います。まず、サステナビリティの問題でございますけれども、資料内の「本会合でご議論頂きたい事項」の中に、「E(環境)の要素への注目が高まっているところでありますが、それに加え、近年、S(社会)の要素の重要性も指摘されている」との記載がございます。まさにそのとおりだと思っております。

 我々、働く者の立場で言うと、このESGの中でやはりS、労働や人権といった要素というのは非常に重要だと思っています。大きな課題として、企業にもこの労働や人権に関する指標の情報開示があまり進んでいないというところが大きな問題だと思っていまして、非正規雇用の割合とか、離職率とか、労災の状況だとか、都合の悪いという言い方が正しいかどうか分かりませんけれども、そういったものはなかなか情報として出てこないというところもありますので、そういった情報開示が1つ大きなポイントになるかと思っております。コーポレートガバナンス・コードが、企業への情報開示を促すことへの後押しになればと思いますし、それが労働環境の整備や労働条件の向上、企業の持続可能性、ひいては社会の持続可能性につながっていくものだと思っています。コーポレートガバナンス・コードには、その辺りについても盛り込んでいただければと思います。

 それから、2点目でございますけれども、先ほど来、話があるとおり、このコロナ禍におきましても、対話の重要性が高まっているというのは、我々も大変認識しております。これだけ産業構造の転換が起こっている中で、投資家だけでなく、従業員、取引先、地域社会といったステークホルダーとの協働、対話というものが重要だと思っております。コーポレートガバナンスの中でも、対話の重要性といったところを強化していく必要があるのではないかと思っています。

 その中で、我々が注目しているのが、デジタルリカバリー、グリーンリカバリーと言われる中で、先ほど話があったイノベーションを向上していくための人材育成の支援が重要だと思いますが、一方で、働く者の立場から言うと、サプライチェーンの再構築の中で特に課題認識としているのが取引の適正化というところでございます。この取引の適正化については、サプライチェーン全体で取り組んでいくことが必要だと思っておりますけれども、いまだに不適正なコスト負担を強いられるとか、無理な短納期の発注だとか、こういったしわ寄せを中小企業である取引先がかかえているということもありますので、そういった意味で取引先との対話ということも、これから非常に重要になってくると思います。

 また、サプライチェーン全体での取組みという観点では政労使で合意した「パートナーシップ構築宣言」というものがあり、これを企業として宣言していくことも重要だと思いますし、コーポレートガバナンス・コードの中でもこういった観点を盛り込んでいく必要があると思っております。

 それから、最後になりますけれども、投資家との対話という中で、資料の「企業価値の考え方」にありましたけれども、非財務情報を意識した企業行動が、企業価値の向上につながるという認識は広めていければと思っています。よく言われるのがESG投資をしてもリターンにはね返ってこないということです。因果関係というのを証明するのは非常に難しいですけれども、そういったことがうまく認識できれば、私は非財務情報の開示やESG投資がより進んでいくのではないのかなと思っております。特に重要だと思っているのは、企業と投資家の対話を通じて、このESGに関する取組みと、企業価値の向上の因果関係を明らかにしていくということが非常に有意義だと思いますし、そういったことをコーポレートガバナンス・コードの中で促進できればと考えております。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、チャットをいただいている順番で、次に小幡さん、どうぞお願いいたします。

【小幡メンバー】 
 小幡でございます。ありがとうございます。通信環境が悪いものですから、画面はなしで発言させていただきたいと思います。

 前半のESGの要素のところですけれども、こちらにつきましては皆さんの発言と同様に、取締役会がきちんと関与して、会社としてこの辺を見ていくということについては全く異論がないところであります。ただ、今日もいろいろな方の発言がありましたように、この部分も各社各様に置かれた状況において、いろいろな取組みをされていることだと理解をしておりますので、コーポレートガバナンスガバナンス/コード等で一定の開示を求めていく、規律を求めていくということでありますならば、できるだけ共通的に適用できるような表現や項目を挙げていただきたいと思います。その観点におきましては、企業側としての開示しやすい、話しやすいということの一方、投資家やNPOなどのそういった情報を求める方たちの中で、それが最大公約数的なことがうまく整合をとれますならば、企業としてもそこを中心に開示をしていくということができるので非常にやりやすくなるのではないかなと考えております。

 あと、後半の対話ガイドラインのところにつきましては、再度読み直してみましたけれども、非常によくできているなという印象でした。今後、先ほどの話では、非財務情報等で充実させていくということになっていくのだと思うのですけれども、企業としてこういったところを意識しながら対話をしていくという観点から、指針が示されているので非常にやりやすいものではないかなと思っております。

 最後に企業年金の利益相反のところですけれども、これにつきましては会社としても利益相反が生じないように、年金の運用者につきましてもちゃんと資質を持った人を手当するですとか、いろいろな工夫をしており、会社としてもかなりやることはやってきているなという印象なので、また何か不足等があれば御指摘いただければありがたいと思っております。

 私からは以上になります。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして高山さん、どうぞお願いいたします。

【高山メンバー】 
 私からは、今、画面に映っております「本会合で御議論頂きたい事項」の最後のサステナビリティについて、企業のガバナンス体制の観点からどのように考えられるか、実際にガバナンスコードの文章をどのように改訂するかということも踏まえて、お話しさせていただきます。3つのポイントについてお話ししたいと思います。

 1つ目は、サステナビリティに関する機会とリスクというところです。資料1の2ページに、現在のガバナンスコードの文章が書いてあります。この補充原則2-3では、サステナビリティをめぐる課題への対応は重要なリスク管理の一部であると認識し、という書き方がされています。一方で、その後のページでは、投資家の考え方について、あと、5ページには経団連のステートメントがありますが、それらが共に示しているように、企業も、それから、投資家も、サステナビリティに関しては、単にリスクということだけではなくて成長の機会という側面でも捉えています。このような企業、投資家の認識を踏まえて、ガバナンスコードの書き方も、リスクだけではなくて、機会という観点も踏まえた文章を考えたほうがいいのではないかと思います。

 それから、2つ目ですが、サステナビリティに対するスタンス、姿勢について意見を述べたいと思います。ガバナンスコードの原則2-3では、サステナビリティをめぐる課題について適切な対応を行う、というふうに書いてありますが、これは何となく受け身的な感じがします。その補充原則の下に書いてある、積極的・能動的に取り組む、というところをもっと全面的に持ってきてもいいのではないかと考えます。つまり、サステナビリティに対する姿勢に対する積極性を、より強く出した文章にしたほうがよいと思います。

 最後に経営と監督、執行サイドの役割と取締役会の役割についてお話ししたいと思います。この点は、かなり重要なことだと考えます。この資料の中でサステナビリティ委員会についてお話がありましたが、サステナビリティ委員会には2つの種類があります。1つは執行側のサステナビリティ委員会、それからもう一つは取締役会における、社外取締役が中心となっているサステナビリティ委員会、この2つです。これはそれぞれ性格が違うので、ガバナンスコードの議論のときには、それらを峻別して議論をしたほうがいいと思います。

 執行サイドのサステナビリティ委員会は、サステナビリティ経営を行う経営側の委員会であるという位置づけです。一方で、取締役会におけるサステナビリティ委員会というのは、そのような執行側によるサステナビリティ経営を監督するという意味合いの委員会です。コーポレートガバナンス・コード及びコーポレートガバナンスの議論においては、当然ながら取締役会がどのようにその監督機能を果たすかということが主要なテーマになります。よって、サステナビリティについても取締役会がどのようにその監督機能を果たすか、サステナビリティ経営に対してどのように監督するかということが重要となります。このサステナビリティ経営の監督については、グローバル企業において、だんだんベストプラクティスが出来つつあります。

 例えば取締役会全体でサステナビリティについて、どういう観点で議論しどのように監督するのか、指名、報酬、監査委員会など主要な委員会において、その役割、責務に応じてサステナビリティという事項を委員会としてどのように監督するのか、それから、まだ少数企業においてですが、サステナビリティ委員会がある場合にはそこでどのような議論を行うかについて、だんだん企業の間でプラクティスが出来つつあります。では、それをこのガバナンスコードにどのように取り込むかということですが、これら全てについて記載するというのは、簡潔かつ明確を旨とするというコードの趣旨とは合わなくなると思います。よって、まず取締役会全体に関する包括的な記載をする、取締役会がサステナビリティ経営を監督する責任がありますよということを、コードに書くというのがいいのではないかと思います。

 そういう際に参考になるのが、昨年12月に出しましたこのフォローアップ会議の意見書における、多様性に関する記載です。そこでは、企業は多様性の確保に取り組むべきだという記載があります。そして、その後に、取締役会は主導的にその取組みを促進し監督する、という文章がございました。それに倣うのであれば、今回改訂するコードにおいては、「取締役会は執行によるサステナビリティ経営を促進し監督する」というような表現がいいのではないかと思います。そのような全体的な方向性を示すことによって、各企業の取締役会が、それぞれの状況に応じて、どのようにサステナビリティ経営を監督するかということを考えることができると思います。それから、これに関してもう一つ参考となるのが、ICGNの原則です。先ほどケリーさんがICGNとしての意見を発表されていましたが、ICGNでも現在、ガバナンス原則の改訂作業が進行中であり、そこでは、サステナビリティに関して取締役会がどのように監督するかについて、包括的な記載がございます。そのような記載も参考にしながら、ガバナンスコードの文章を考えていけばいいのではないかと思います。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして岡田さん、どうぞお願いいたします。

【岡田メンバー】 
 岡田でございます。私からは、非財務情報の開示と企業と投資家の対話についてお話をしたいと思います。資料にもありますように、非財務情報の開示が一般的となってきまして、ESGをはじめとする非財務情報の重要性が大変高まっております。特にEに関する開示であります。また、投資家も、これら非財務情報を重要な投資判断材料として使うようになっております。しかしながら、これらは会計監査人の監査の範囲外となっています。会計監査人は非財務情報を一読して、財務情報と矛盾するところがあれば指摘するということに留まっております。

 したがって、非財務情報の開示が正確であるかどうかの保証はなく、また、保証することも大変難しい。一方、資料にある通り目的に応じた基準設定主体が多数存在していて、その開示要求がどんどん複雑化しています。そういう状況の中で一般の投資家は何を頼りに投資判断をすればよいのか。IFRSが統一的な基準に取り組むということですが、完成までには時間がかかるだろうと思いますし、簡単ではないと思います。また、ESG開示全般を理解している専門家も不足していると思います。

 もちろん投資家のレベルアップ、企業のレベルアップも必要なのですけれども、私は専門知識を養ったアナリストの育成が喫緊の課題ではないかと思います。証券アナリストの試験の科目にあるのかどうか分かりませんが、今後、非財務情報、特にEについて試験の課題として、なおかつ合格した後も継続的な専門研修制度、いわゆるCPEに組み込んで最新の知識をアップデートしていくという試みもあっていいのではないかと思います。もちろん企業内の専門家の育成も必要だと思います。

 そういう知見のあるアナリストが増えてまいりましたら、彼らと企業との対話が大事だと思います。これは知見のあるアナリストが養成されてからということではなくて、同時進行的であってもよいと思います。やはりアナリストはある程度ESGに関する分析をして、その分析結果を基に企業と対話していくということが重要ではないかと思います。「投資家と企業の対話ガイドライン」には、投資戦略と財務管理の方針についての項目はありますが、それに加えてESGの開示に関する対話も含めてはどうかと思います。

 また、コーポレートガバナンス・コードの中には、投資家との対話を促すのみならず、必要に応じてその対話の内容を企業が開示するということも求めるべきかと思います。ESGについて投資家、特にプロでない投資家の理解を得るためには、対話したアナリストのレポートに加えて、企業による対話の内容の開示があった方がよいと思います。投資家、あるいはアナリストの質問、意見に対して企業はどういう見解を持っているのか、企業としての方針も含めて一般の投資家にも分かるように示すということが必要かと思います。その結果、一般の投資家たちもESGに対する企業の取組み姿勢を理解した上で彼らの投資判断に役立てるということができるようになると思います。

 私からは以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして神作先生、どうぞお願いいたします。

【神作メンバー】 
 どうもありがとうございます。初めにサステナビリティについて御意見を申し上げます。事務局からも御報告がございましたように、昨年3月に公表されたスチュワードシップ・コードの第二次改訂版によって、スチュワードシップ活動に当たってサステナビリティを考慮すべき旨が新たに追加されました。スチュワードシップ・コードは、その前文においてサステナビリティを、「ESG要素を含む中長期的な持続可能性」と定義した上で、スチュワードシップ責任とはサステナビリティの考慮に基づく建設的なエンゲージメントなどを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより最終受益者の中長期的な投資リターンの拡大を図る責任であると、このようにサステナビリティについて定義規定を設け、その意義について述べています。

 コーポレートガバナンス・コードにおいても、先ほど高山メンバーからも御紹介がございましたように、既に原則2-3におきまして上場会社は社会環境問題をはじめとするサステナビリティをめぐる課題について、適切な対応を行うべきであるとされ、また、補充原則2-3の①では、取締役会はサステナビリティをめぐる課題への対応は重要なリスク管理の一部であると認識し、的確に対処すべきであると、記載されております。経営陣と機関投資家の間で建設的な対話が行われ、議論がうまくかみ合うためには、機関投資家によるサステナビリティの考慮と、投資先の上場会社が課題として捉えるサステナビリティの観点とが、基本的な方向において一致していることが望ましいと思われます。

 そこで、コーポレートガバナンス・コードにおいても、スチュワードシップ・コードに併せてサステナビリティを「ESG要素を含む中長期的な持続可能性」と定義した上で、ここに言うサステナビリティとは、基本的には会社が行っている事業の内容に即して検討されるべきであり、事業との関連性において利益を生み出す過程に着目して議論されるべきであると考えます。そのようにサステナビリティを捉えるならば、会社ごとにその事業の内容や利益を生み出すプロセスに応じて、サステナビリティに関する課題が特定され、対応がなされ、リスクと表裏の関係にあるリターンを生み出すプロセスに着目して検討がなされることになると思います。このようにサステナビリティを捉えると、開示に関しては、特にSの要素の1つである人的資本の開示の在り方についてさらに議論が促進されるべきではないかと考えます。

 なお、気候変動のように社会全体と全ての会社の双方にとって共通の差し迫ったリスクと評価し得る事項については、両コードの中で特出しして言及するというようなことも考えられると思います。

 他方、このように会社ごとに異なり、不明確な概念であるサステナビリティという言葉を用いる場合には、経営陣による裁量が拡大し、コーポレートガバナンス上の懸念が生じ得ます。機関投資家との対話が重要であるとともに、会社のガバナンス体制においても留意が必要であると考えられます。先ほど述べたような意義の概念としてサステナビリティを捉える場合には、取締役会においてサステナビリティの観点からどのように課題を特定し、対応すべきかについて、経営方針、経営戦略の一環として認識が共有されることが重要であると思われます。それとともにサステナビリティ委員会等の組織を設けることを求めるかどうかは別として、独立社外取締役を中心とする外部の中立的な目によるコントロールが必要になると考えます。

 次に、対話の充実についてコメントさせていただきます。コーポレートガバナンス・コードの原則2-6や投資家と企業の対話ガイドラインにおいては、自社の企業年金の運用に当たる適切な資質を持った人材を計画的に登用・配置することなど、その母体企業としての取組みの重要性を指摘しております。母体企業と企業年金の関係がより緊密になるということは、メリットになり得る反面、最終的な受益者である企業年金の受給者の最善の利益が実現されない利益相反の可能性を一層高めるという懸念がございます。このことはコーポレートガバナンスの観点からも、スチュワードシップ活動の観点からも望ましくないと思われます。

 本来この問題は、ハードローによって対処すべき事項であると思われますけれども、従業員ほか退職者の最善の利益を図るように努めるということを改めて確認するとともに、潜在的なものも含めて、母体企業と企業年金との利益相反に関する事項の開示や両者の関係などについての詳細な情報提供に係る、例えば取り決めを行うことなどによって、利益相反に対処する必要性が非常に大きいと考えられます。さらに単なる開示や情報提供を超えて、利益相反が生じ得る状況を緩和ないし除去するために、積極的な措置を講じるということが望まれると思われます。

 最後に、投資家と企業の対話ガイドラインについて、記載すべき事項として1点だけ申し上げたいと存じます。ガイドラインの3-8には、独立社外取締役として適切な資質を有する者が十分な人数選任されているかという記載がございますけれども、最も重要と考えられる独立社外取締役の選任のプロセスと、取締役会及び各種委員会において独立社外取締役にどのような役割が期待されているのかということを対話の対象として明記することが望ましいと考えております。

 少し長くなりましたけれども、以上でございます。どうもありがとうございました。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして小口さん、お願いいたします。どうぞ。

【小口メンバー】 
 ありがとうございます。資料1の本会合でご議論いただきたい事項に記載されているとおり、サステナビリティの重要性が高まっていることについては、改めて申し上げるまでもないわけですけれども、ここでのサステナビリティには(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)との解説がついておりまして、先ほど神作先生のご指摘にもあったとおりですが、一方、松岡メンバーのコメントにもありましたように、いわゆるESG投資には多様な考え方が存在する点について、まずは申し上げたいと思います。

 例えば、160か国以上、約18万人の投資プロフェッショナルが所属するCFA協会というのがあるのですけれども、そこでESG投資に関する多様な考え方を整理しまして、本年5月にも具体案を公表予定なのですが、そのために昨年、コンサルテーションが実施されまして、その資料に提示された考え方について簡単にご紹介します。まず、投資リターンとリスクに重要なESG要素を考慮するESGインテグレーションという考え方がありまして、これは資料1の2ページで示され、先ほど神作メンバーからもご説明がありました、中長期的な投資リターンの拡大を図るスチュワードシップ・コードの定義と合致する考え方がございます。

 ただ、それ以外にも、自らの信念にそぐわない投資を排除する、いわゆるダイベストメント、それから、投資パフォーマンスにかかわらず、ESGパフォーマンスで判断する投資、ESG要素をテーマとして判断する投資、さらには、社会的課題解決へのインパクトで判断する投資と、それぞれがESG投資の考え方として示されているわけでございます。このようにいろいろな考え方がある中、ご議論いただきたい事項で問われております投資家との建設的な対話を深める等の観点から申し上げたいのは、一口にESG投資といっても様々ですので、投資家がどういう考え方に基づいて対話しようとしているのかということを企業が把握していないと対話がかみ合わない、したがって、対話が深まらない懸念があるということです。

 その上で、先ほどご紹介した、いろいろなESG投資の考え方を否定するわけではないのですけれども、私は先ほど神作メンバーのおっしゃったお考えに賛同した上で、中長期的な企業価値の向上を図るコーポレートガバナンス・コードの目的からは、スチュワードシップ・コードの定義に沿った、投資の世界で言いますとESGインテグレーションについて対話すべきだと考えております。

 そうなりますと、開示フレームワークとしては、本日幾つかご紹介のあった中で例えばTCFD等、既に広く受け入れられているルールの活用も考えていくべきだと思いますし、重要だと思いますけれども、多くのメンバーからご指摘のありましたSの要素の重要性、あるいは小林メンバーが本日指摘されましたし、前回の資料でも示されております知財等無形資産の重要性、こういったことを考え併せますと、気候変動に関する情報は大変重要なテーマですけれども、そこにとどまらずに財務情報と重要性の高い非財務情報を統合的に報告する、いわゆる統合レポートのフレームワークが有益であると思っています。この点、コード原則の3-1に情報開示の充実というのがありますので、そこで具体的に言及すべきではないかと思っています。

 それからもう1点、資料2のほうですけれども、アセットオーナーたる企業年金と母体企業の利益相反管理が議論のテーマとして挙がっているわけですが、機関投資家の利益相反行為は大変重要な課題でありまして、だからこそスチュワードシップ・コードは8原則あるのですけれども、その第2原則として、上位概念として規定されているわけです。

 この第2原則におきましては、機関投資家が所属する企業グループとの利益相反管理が求められておりまして、企業年金と母体企業等の間の利益相反と問題の所在は同じでございます。企業年金について言えば、母体企業に自社の企業年金等の人事、運営面でのサポートを求めることは、先ほど複数のメンバーからご指摘がありましたように、現実的な解であるとは思うのですけれども、その結果として、資料2の5ページ、6ページにあったように、母体企業と企業投資家が所属する企業グループの関係が勘案されて、その結果運用委託先が決められるような傾向がもし強まるようなことがあれば、現在、すでに強まっているのか、これから強まることがあるのかは分かりませんが、そのことがあれば、これは利益相反の観点から看過できない。これは先ほどの神作メンバーのご懸念と同じでございます。

 そこで、母体企業からサポートを受けながら、独立した立場で母体企業との利益相反を管理するというのは、言うのは簡単ですが、実行は難しいことは理解しつつも、コーポレートガバナンス・コードの対象は上場母体企業となりますので、そこに加えましてアセットオーナーたる企業年金自らがスチュワードシップ・コードに署名して、原則2に向き合って対応していく、あるいは署名しない場合であっても、利益相反管理について説明責任を求めていくような建付けを検討する必要があるのではないかと考えています。

 私からは以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして三瓶さん、どうぞお願いいたします。

【三瓶メンバー】 
 三瓶です。よろしくお願いします。私のほうからは、まず資料2の論点についてお話しさせていただきたいと思います。企業と投資家の対話の充実についてですが、対話については「建設的な『目的を持った対話』」だということでエンゲージメントという表現がされています。ただ、実際は、内容はピンキリであって何でもあり。企業の方と投資家が何らかの話をすれば、コミュニケーションをすれば対話というふうにみなすところもあります。導入当初は、対話というよく分からないものについて、できるだけ限定しないで幅広に捉えようというのがあったと思いますが、そろそろもう少し定義を明確化するのが必要ではないかなと思います。まず、対話について、成果を求めていかないと時間の無駄、生産性が低い対話になってしまうだろうと思います。

 そこで、対話についてどういう成果を求めているのかというと、大きく2つあると思います。一つは、投資家が企業に求める成果。もう一つが、企業が投資家に期待する成果という2つです。対話先進国であるイギリスでも、この課題に今直面していると思います。2010年にイギリスではスチュワードシップ・コード、2012年にKay Reviewができましたが、その以前は、むしろ少数の実力のある投資家だけが対話をしていた。そのときには対話の成果があったけれども、このコードができてKay Reviewでも対話が促進された結果、かなり多くの機関投資家が対話をしなければいけなくなった結果、質の低下があると思います。

 そこで、昨年、2020年に英国のスチュワードシップ・コードの改訂では、アクティビティーズ・アンド・アウトカムレポートというもので、対話について成果の公表が求められるようになってきています。ということで、やはり成果がないと対話をどんどん後押ししても、やはりどこかでまた課題が出てくると思います。ですから、もっと対話の成果にこだわって、対話の定義を明確にするというのも一案かと思います。

 次に、企業年金の利益相反管理についてですが、資料4の9ページにA、B、C、3社の記載が抜粋されています。この3社を批判する意味はないのですけれども、ここでこういった説明がされているときに、退職給付信託で保有しているみなし保有株式については、管理の範囲に入っていないというのが現実です。退職給付信託というのは、2000年の退職給付会計の導入によってできたもので、退職給付の積み立てリスクを解決するのが目的です。それはそれでいいのですけれども、そこで政策保有株式を拠出して信託契約する。そこでみなし保有株式というのができ上がるということです。みなし保有株式というのは、御承知のとおりだと思いますが、母体企業が所有していないのに議決権行使権限またはその指図権限を母体企業が持っているという状況です。

 そうして、企業年金の事務局が管理していない空白地帯ができます。私たちは、このみなし保有株式の残額が年金資産に対して大きい会社と対話をしてきましたけれども、そこで分かったのは、企業年金の事務局はこの退職給付信託については管理していないということです。それはなぜ起こるかというと、退職給付信託は確定給付企業年金法の範囲ではないからというのが1つの彼らの答えです。したがって、退職給付信託と年金資産の関係とか、その管理責任について実態調査を行って是正策を検討すべきだと思います。そうしないと、先ほどメンバーの方から御指摘もありましたけれども、年金資産の中に含まれている資産ではあるけれども、誰も管理していないという年金資産のひずみの問題と、そこで議決権だけ母体企業が持っていっているという利益相反管理を誰もしていないという問題、これがそのまま放置されているということになってしまいます。

 次に、資料1のほうのサステナビリティについて3点申し上げたいと思います。まず1点目は、サステナビリティを考えるときに企業はマテリアリティの特定ということで何を重要課題として捉えているかということを開示しています。ただ、昨今、ダブルマテリアリティ、ダイナミックマテリアリティ、シングルマテリアリティということでいろいろな議論が出てきて錯綜している状況です。平たく言えばダブルマテリアリティの1つは、企業のサステナビリティについて重要課題を特定すること。もう一つは、社会のマテリアリティについて企業がどの順番で取り組むかということで重要課題を特定することなどです。これについて、今、企業も投資家も自分たちはどの立ち位置にいるのかというのをはっきり自覚していないケースが多いと思います。ですから、対話するに当たっては、まず自分たちはどの立ち位置にいるのかということを明確にして、相手にそれを伝えて、それで対話をする必要があると思います。

 2点目、サステナビリティの取組みのときに、それを推進するときには必ずキャピタルアロケーションがあると思います。ただ、キャピタルアロケーションがあるということは、アロケートしたキャピタルに対するリターンの測定が開示されないといけないと思います。ただ、キャピタルというのは財務的なものだけではないので、人的資本とかあります。なので、実は測定が難しいというのが現実でもあると思います。

 例えば知財、皆さんも言及していますけれども、知財や人的資本を含む無形資産への投資成果の場合に、数値で示せればベターですけれども、それができなくても財務的パフォーマンスとの因果関係でも示せれば、投資家の理解や支持を得られる可能性が高まります。ここで例えば端的な、数字的なものとしては、生産性というのがあります。ただ、この生産性を示すときにもコスト削減による生産性向上ではない、または分母の削減による生産性の向上ではないということです。それではサステナブルではないので。そういったことも考えて、どうやって見せていくか、対話に使うかということが企業も考えなければいけないし、投資家側からも提示、提案することができると思います。実は少数ですけれども、これができている日本企業もあります。

 3点目、サステナビリティ委員会の設置についてです。設置自体に異論はありませんけれども、1つ要注意な点があると思います。それはサステナビリティ委員会の答申を受ける場合に、その内容というのは社会の共通課題の解決に向かって何らかの取組みをしようということだと思いますので、そうするとその中にはグローバル、例えばイニシアチブに賛同表明をするとか、ガイドラインに沿った取組みをするとかいうことになると思います。これ自体、問題ではないのですけれども、そこに潜むリスクがあります。

 それは皆、横並びになってしまう。または、ハーディング現象、群れるということですね。群がる。その結果、レッドオーシャンになる。そうするとキャピタルアロケーションの回収が不可能になるということです。えてして日本企業が同じ方向にみんなで進んでいくとか、横並びということがあります。ですから、今このサステナビリティに取り組んでいくのはもちろんいいのですけれども、そのときに企業としてこういったハーディング現象、レッドオーシャンに向かっていくということにならないかということを重要な業務執行の決定機関である取締役会には十分に留意してほしいと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして上田さん、どうぞお願いいたします。

【上田メンバー】 
 上田です。どうぞよろしくお願いいたします。では、まず資料1のサステナビリティについて2点コメントをさせていただければと思います。特にこの1年顕著だったのですけれども、コロナであるとか、カーボンニュートラルによって、経済社会の構造が非連続的に変化するということを投資家も企業も、そして労働者を含めて認識したかと思うのです。そういった中で今回のテーマでありますが、サステナビリティ、これは将来的な企業価値につながる戦略づくり、あるいは経営判断においても、そういった視点が必要だということが認識できたのではないかと思います。

 ただ、そのためには、今回のこのコードの議論でもさんざん議論しているテーマではありますが、組織の柔軟性ですとか、あるいは対応力、その前提としてのガバナンスの体制というものは必須であろうかと思います。それを企業サイドが判定するのみならず、資金提供者側、これは投融資、両方あるかと思うのですが、それが評価するためにもやはり情報開示、非財務情報の開示というのは今まで以上により具体的な意図を持って必要になってくるかと思います。そういう意味では、コーポレートガバナンス・コードについて、この点をもう少し踏み込んだ記述があってもよろしいのかなと思っています。

 まず、ガバナンス情報については、コーポレートガバナンス報告書、これがまさにガバナンス情報の宝庫でございまして、相当進んでいると思うのですが、現在話題になっているのはEとSだと思います。Eについては本日の資料にもありましたけれども、TCFDが世界的に義務化をもって進められている国もあるということで定着した開示フレームワークになっているのかと思います。日本においても既に相当定着しているということですので、こういった点にTCFDという具体的な名称を書くかどうかはともかくとして、ある程度の具体性を持った記述をコードないし対話ガイドラインの中に踏み込んでもよろしいのかなと思います。これって国際的な資金の取り合いでございますので、ややそういう意識を持って取り組む必要があるかと思います。

 次にSなのですが、最近、海外の投資家等と議論していますと、普遍的な課題としては人権問題がありますけれども、より企業に密着している課題としては人材、ワークフォースの課題というものがあるかと思います。特に今後よりこういう非連続的な環境の中で変革がある中で、どうしてもどういう人が働くか、そういった人々を定着させていくかという企業文化も含めた活用、あるいは議論が重要になってくるかと思うのですが、このようなワークフォースに関する開示のフレームワークというのは、ISOにあるようではありますけれども、それほど確立したものはないようです。こういった点の議論についても、IFRSで進むとされていますが、議論が進むように、そして日本の関係者がここに参加できることを希望しています。

 さらに、今いろいろな委員からもお話がございましたけれども、今後は、こういった人材等も含めた価値の総体としてブックバリューをはるかに上回る企業価値というものを目指していかざるを得ないという時代に入っておりますので、そういった中では無形資産も知財も含むのかもしれませんが、無形資産について、これもまた開示フレームワーク、大変難しいものがありますけれども、どちらかというと対話の中で企業にとって期待されているものは何か、あるいは企業が発信したいという無形資産に対する取組、これの戦略化を含めて、対話の中で解決していただきたいと思います。

 第2点としては、そういったものを可能にするガバナンス体制です。特に開示で重要な媒体として統合報告書がありますが、統合報告書、何のために出しているのかといった点で、これはCSR報告書の延長ではなく、資金調達が目的の1つであるということを明らかにして、IRとか財務、経営企画、こういった視点を強く入れていき、さらにそういった体制整備として、これも本日の事務局の報告にありましたけれども、取締役会に対するサポートも含めてサステナビリティ委員会の設置というものも有用なのではないかと思います。

 次の資料2に関しまして、対話のガイドラインですけれども、これは大変重要だと思っています。特にサステナビリティの点につきましては、例えば、COについて少し残念な経験がありまして、何かというと海外のパッシブ投資家の中には、カーボンゼロ、例えば自動車業界においてはEVへの転換、これが目的化していて、そうなった場合に企業の将来の存在の在り方、あるいは企業を取り巻く産業全体の存在の在り方にあまり興味を払っていないような、こういう向きも実際に感じることがございました。

 したがって、今回のブラックロックのローレンス・フィンクさんの受け止めでもございませんけれども、それが将来的な企業価値にどうつながるのか、サステナビリティが目的化するのではなく、より戦略、ビジネスモデル、こういったものにどう組み込んでいくのかといった点を、これも投資家さんに対する希望でもあるのですが、対話ガイドラインを通じてしっかりとその目的というものを明確にしていただければなと思います。この対話ガイドラインは、投資家だけではなく、先ほどほかの委員からもございましたけれども、ステークホルダーとの対話にも有用なものになればより発展的になるのではないかと思います。

 すみません、長くなりましたが、最後に企業年金の利益相反について、これはたしか先ほど三瓶さんが詳しく御紹介いただきましたけれども、その前のページにありますが、資産運用会社を選ぶに際しても、相当、母体企業の影響があるということで、これがアセットアロケーションになると、ましていわんやになるわけです。という中で退職給付信託、どうするかといったところです。本会議においても政策保有株式の問題、相当議論しておりますが、持ち合い株式を、これを退職給付信託に振り替えてみなし保有という形にしてしまうようなケースもあるのではないかと推測します。といった場合に、特にこの政策保有株式の場合には、母体企業に議決権が留保されているケースが多くなりますので、まさに利益相反そのものに関する部分になろうかと思います。こういった点についてもコード、あるいは対話ガイドライン等を通じて具体的な議論を進めて解決をしていただければと思います。

 以上になります。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

【上田メンバー】 
 ありがとうございました。

【神田座長】 
 それでは、続きまして、田中さん、どうぞお願いいたします。

【田中メンバー】 
 ありがとうございます。サステナビリティ、ESG要素を含む中長期的な持続可能性という点についてなのですけれども、実務的な論点から少しお話ししたいと思います。例えば、僕はこの話というのは、日本の文化、企業文化の中では既に、いわゆる近江商人の三方よしというのが非常に根づいているものですから、各社、このことについては非常に自然に対応するという、そういう文化があるのではないかと思っているんです。例えば当社では、昨年の7月だったと思うのですけれども、コロナが非常に問題になったときに、全従業員に対して希望者全てPCR検査をやるというようなことをやりました。それから、国内の医療機関にマスクを配布したりとか、抗ウイルス塗料を寄附したりとか、そういうことも自然にやってきたわけです。

 それから、老朽化する設備についても、いわゆるDXの投資としてする。そういうふうなこともやり、現在、例えば品川の本社を実は建て直しているんですけれども、ハザードマップによりますと、その地域は大洪水が出た場合には5メートル浸水するということで、近隣住民の方々のために、100人ぐらいは避難できるような、そういう設計をしよう。例えばこういうことは、ある意味ではみんなやっているんだと思うんですね。この間、申し上げたと思うのですが、従業員のベアについても3%上げますよという発表をしたんですね。こうしたことをやっていくと、どういうことが起きるかというと、直ちにセルサイドのアナリストから一体幾らかかるんだ、コスト増になるだろうと質問が来る。そして、これは当然、利益が落ちて株価下落要因になりますよと、そういうレポートが出たりするんですね。

 これは実際に投資家のコミュニティからESG投資というものの大事さというものを高らかに発言、あちこちでしていただいているわけで、それについては、異論はないのですが、目の前には、こうしたことが実際に起きるということになりますと、投資家側のほうでESG投資を促進すると言いながら、他方ではそれを阻害するような投資分析のやり方というものから脱却できていないという側面がこういうところに表れてきます。ESG投資というものを促進するためにも、今のアナリストたちがやっているその投資分析指標というものを新たにこうしたESG投資というもの、ESGの活動というものを促進するような投資指標に変えていく必要があるのではないかと、これが不可欠だろうと私は思います。

 それから、このサステナビリティのほうで非常に大きなテーマとしては地球環境で、温室効果ガスをネットゼロに向けてやらなければいけないという、これも恐らく日本の企業はみんな十分認識していると思うのですけれども、これは御承知のようにスコープ1とスコープ2、そして、スコープ3まで分かれているんですね。スコープ1ですと例えば燃料とか、車両燃料とか、そうしたいわば直接的なもので、私どもの会社ですと大体あまり大きくはありません。それから、スコープ2は、これは購入する電力ですね。これは間接的なもの。これを合計して、私ども日本では4万7,000トン出ていますので、規模は大きくないのですが、このスコープ1のほうは、例えば工場を新設する、新たにするという、そうしたことから対応はできるのですが、結局、購入電力というのは、これは間接的なものですから、そうしたものに対してはやはり政府であるとか、そうした業界のほうで実際、温室効果ガスを減らしていくというようなことが進められないと、各社だけで投資家と対話をしてもなかなかこれは前に進まないという大きな問題があります。

 しかも、私どもの会社のように8割が海外で事業をやっている、30か国以上でやっているわけですけれども、そうしますと、この数字、先ほど日本では4万7,000トンといいますが、グループ全体ではは28万トンあるんですね、世界中で。そのうち12万トンは、実は中国なんです。そうなると、企業としては日本のことだけではなくて、世界のことを考えなければいけない。各国における国の対応というものが非常に大きな影響を受けます。そうなりますと、この問題というのは、日本の政府だけ、もしくは日本の産業界だけでできる問題ではなくて、極めてグローバルなアプローチをしっかりやっていただいて、それに対してどういうふうな対応を各社がしていくのだと、そういう角度からのエンゲージメントというのが必要になってくると思っています。

 それから、このESGに関しましては、現在、ESG格付とか開示基準、非常に複雑に複数存在していまして、情報の出し手にとっても、受け手にとっても極めて煩雑で非効率なものになっていると思われます。この点については共通化していくという動きが出ることを期待したいと思っています。一方、このESGの問題というのは、コストの問題だけではなくて、実際、各企業にとっては新しい事業を作っていくということで社会課題に対して対応していくという、そういう姿勢が求められると思うのですけれども、1つの事例として申し上げますと、実は水上風力というのがあるわけですけれども、これは非常に大事な、新たな電力源になるわけですが、これは太陽光とか、海の風とか、潮とかにやっぱり耐えなければいけないんですね。そうすると、私どものところですと耐候性が非常に高い塗料がありまして、こうしたものが新たな事業として出てくるという、そうした側面もあります。

 したがって、ただ単にコストだけではなくて、そうした新しい事業ということも出てくるというのは明らかに新しい変化なので、そういうふうに捉える必要があると思いますが、先ほど申しましたようにアナリストのアプローチというのは必ずしもそうではないという面がありますので、その点については分析の手法というものをしっかり開発してもらう必要があるだろうと思っています。

 次に、資料2のほうですけれども、対話の充実なのですが、私どもの企業年金は昨年12月にスチュワードシップ・コードを受け入れました。運用機関に対して、このコードの方針に即した活動の実施を求めてモニタリングするということを表明しています。このプロセスにおいてやっぱり非常に重要だったのは、投資運用ということがよく分かる人がそれをやるということが必要なものですから、理事長を含め、数名、運用業務に知見のある人に代えました。実際にその後の活動状況を見ていますと、運用機関から聞いた話なのですけれども、投資家と企業の対話のガイドラインに対応した活動の報告というのはないんですね。対話ガイドラインで重点的に議論すべきとされている事項について、運用機関が実際にどれだけ対話をやって、その対話が進展しているのか、こういう成果が開示をされていない。

 それから、運用機関からスチュワードシップ活動に関する報告を受けている年金コンサルの話ですけれども、対話ガイドラインに対応した報告を行う運用機関はまだ非常に少ないという話を聞いております。こういうふうにスチュワードシップ・コードを受け入れたのですが、こうした課題があるというようなことが見えてきています。スチュワードシップ・コードにはサステナビリティのコードに基づく建設的な目的を持った対話の推進とうたわれているわけですけれども、対話ガイドラインには代表する記載がないんですね。対話ガイドラインの最後に5-1、アセットオーナーというのが1つ書いてあるだけで、それ以外にこの対話のガイドラインの中身に、このサステナビリティとかカーボンニュートラル、ESG、そうしたことは全く書かれていないので、このガイドラインの中にそうしたものを埋め込んでいくということが必要ではなかろうかと思います。

 私からは以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして川北さん、どうぞお願いいたします。

【川北メンバー】 
 川北です。よろしくお願いします。まず、ESGに関しまして、いろいろな方がおっしゃったこととかぶる部分があるのですけれども、高い視座から対応していく必要性が企業と投資家にあるのではないかと思います。EとかSに関して欧米の動きもしくは他社の動きを追随するだけではESG本来の意味はない。この例として企業に当てはまるのかどうかは怪しいのですけれども、石炭火力に関しましては、その全廃の主張に追随するだけでは疑問があると思います。先進国は、石炭で発展してきたわけです。特にヨーロッパがそうですけれども、それがよろしくないとなると、全廃を叫ぶというのは、これは一種の先進国のエゴだろうと思います。発展途上国は、電力不足のところがたくさんあるわけなので、そういう実態を見つつ、石炭の位置づけを考えていく、これが本当のEだし、これがSにつながるのだと思います。ということで、石炭に関しましては発展途上国の電力の供給とか、それから、将来的にCOのゼロをどういうふうに目指すのかとか、そこまで描きながら議論すべき問題だろうと思います。

 それとブラジルのアマゾンですけれども、ここでは森林破壊が問題になっています。でも、これも先進国自身が自分たちの国に生えてきた森林を抜粋し、経済発展をしてきたという、この事実は見逃せません。ということで、アマゾンの議論をするのであれば、そのCOの吸収力とか、生物の多様性とか、そういうふうなものを評価し、その積極的な活用を図り、活用するのであれば、その活用に対して先進国が対価を払うという、そこまで見据えた議論とか活動をすべき問題だろうと思います。ということで、言い換えればEとか、それから、Sもそうなのですけれども、その部分だけを取り上げ議論するのではなくて、両方をちゃんと見据えた上での議論、もちろんそこにGも入ってくるかも分からないですけれども、そういうことが必要であり、それが先進的だと思います。これについは政府の役割がかなり大きいとは思いますけれども、やはり企業もその点を意識し、行動すべき問題だろうと思います。

 以上を捉えて企業としては高い視座から、こういうふうな活動をしているのだ、それがこのように評価され、もしくは評価されるべきであり、それが企業価値を高めるのだという、そういう開示を積極的にやっていただきたいし、それをベースに投資家と対話をすべき問題だろうと思います。ということで、その開示に当たりましてはフォーマットがあってもいいと思いますし、それが効率的だとは思いますけれども、そのフォーマットに単純に従うのではなくて、当然、コンプライ・オア・エクスプレインで対応すべき問題だし、アナリストもそういう開示をベースに議論もすべきだと思います。ただ、EやSが企業価値の向上をもたらすというのは、今日、明日の話しではなくて、長期的な企業価値につながるのだということ、ここはしっかりと押さえて議論すべき問題だろうと思います。

 対話の話に少し入ったのですけれども、そのEとかSに関しまして、COとか、コロナの問題とか、デジタル化とかいろいろな問題があるわけですけれども、そういうふうなものに企業としてどういうふうに取り組んでいるのか、もしくは社会とか従業員への対応、それに対応する力として、企業として何を発揮しているのか、そういうことを投資家と長期的な観点から対話をし、投資家はそれを評価するのだと思います。強調したいのは、長期的な観点だということです。これはコードにも書かれているとは思うのですけれども、もう一度そこを強調しておきます。

 それからもう1点は資本コストの問題です。これも主要な事業にまで下りて資本コストを開示し、もしくは企業として想定をし、それに基づいて投資家と対話するべきだと思います。これは前回申し上げたことの繰り返しになります。それと資本コストに関しましては、社外取締役の役割というものが非常に大きいと思いますので、社外取締役の意見を聞くということも、これも念頭に置いてもいいのではないか、コードにある程度書いてもいいのではないかと思います。

 最後に年金に関しまして、確定給付年金の議論は他のメンバーから話されたと思うのですけれども、確定拠出年金とか、iDeCoとか、こういう制度が今急速に拡大しているということ、ここも念頭に置いてコードに書くべき部分だろうと思います。従業員が選ぶ投資対象の商品、これを企業としてどういうふうに選定しているのか、もしくは投資教育をどうやっているのか。たとえば選定するに当たって、取引関係だけで業者を選んでいるのであれば、これは大きな問題だろうと思います。そういうことも含めて、従業員の観点から年金をどういうふうに設定し、実際の運用をやっているのか。この点に関しましては、やはり企業からの表明というものが必要な点だろうと思います。

 私からは以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして翁さん、どうぞお願いいたします。

【翁メンバー】 
 サステナビリティにつきましては、事務局からの御説明にもございましたけれども、特に環境、社会、様々な要素が関連してくると思っております。環境につきましては、リスクであると同時に投資機会、ビジネス機会であるという受け止めが多くなっているというのは事務局からの御説明のとおりでございます。やはりそう考えますと、企業価値の向上の期待ということを皆様強調されていますけれども、無形資産がどういうふうにその企業にあり、それを活用していこうとするのかが見えていくということが極めて重要だと思います。

 特に今回、日本ではカーボンニュートラルが打ち出されましたけれども、技術革新が、イノベーションがどういうふうに実現していくのか、知的財産や人的資本、こういった無形資産の評価がしっかり行われて開示され、それらの資源配分をどう行って企業価値に結びつけるのかが語られていくことが必要になってくると思います。ですので、やはり開示についてもエンゲージメントについても、今後一層、無形資産が大事になると思いますというのが1点目でございます。

 それから、2点目は23ページに記載されていましたけれども、環境と、外部性と企業価値についての関係が図示されております。環境というのは外部性があるわけですが、これをどう内部化していくのかというところで、税のほかにやはりESG投資といった対応になるという記載がございます。これは大変重要だと私も思っておりまして、カーボンプライシングというと税とか排出権取引と受け止められますけれども、やはりCOを排出する企業、こういったところについては、この図にあるように企業価値を盛り込まれたり、調達コストに、プライシングに反映されるということが金融の市場としては必要になっていくのだろうと思います。

 その意味で、今まで御指摘もありましたけれども、開示のインフラとか、格付の整備とか、会計基準とか、こういったところも非常に難しい課題ではあるのですけれども、体系的なインフラ整備をしていき、外部性というのがどのようにプライシングされていけるのかということを認識しながら考えていくということが大事なのではないかと思っております。

 次、あと2点ですが、もう一つソーシャルという観点は、これも皆さん御指摘になっていましたが、やはり非常に重要になっていて、特に本業でどのような社会的課題を解決して企業価値を上げていくかということに加えて、長期的なイノベーションを生み出すのはやはり人材でありますので、そういった意味で今までの議論とすごく関連しておりますが、ダイバーシティを実現し、働きやすい環境を作り、どういう人材育成をしているのかというようなことがきちんと開示されることが大事です。先ほど田中委員からも御指摘がありましたけれども、投資家もそれを評価してしっかりとエンゲージメントするという方向に長期的な視点から見ていくということが求められるようになってきているのではないかと思います。

 最後に、サステナビリティについてやはり取締役会でしっかりと議論し、執行を監督していくということが極めて重要だと思っております。特に独立社外取締役がそういった役割を果たして、ESG要素を考慮した経営戦略を執行が考え、それをしっかり取締役会が監督していくということが大事であり、そこにはEの部分だけでなく、Sの部分もしっかり見ていくということが、議論されるということが重要だと思っています。サステナビリティ委員会といった委員会を作るということも1つの考え方だと思いますが、そこでもリスク管理という観点だけでなく、成長機会としてこういったことを議論するということが求められると思います。

 以上でございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして佃さん、どうぞお願いします。

【佃メンバー】
 佃です。よろしくお願いします。サステナビリティの重要性については、論を待たないとの基本認識として持っております。その上で、今、映していただいている資料1の24ページにございます中長期的な企業価値の向上を図る上で、サステナビリティに関してどのような要素を考慮することが考えられるか。そして、サステナビリティに関する取組みを通じて企業価値の向上を図る観点から、企業のガバナンス体制等についてどのように考えられるか。この2つの設問に関して、最近経験した事例も御紹介させていただきつつ、コメントしたいと思います。

 まず、1つ目の事例ですが、ある東証一部上場企業が取締役会の傘下、つまり、監督サイドにサステナビリティ委員会を設置することを見送りました。サステナビリティ委員会の設置に反対した独立社外取締役は、サステナビリティは極めて重要である。したがって、数人だけの限られたメンバーで議論することが果たして正しいのか、なぜ取締役全員で議論しないのか。さらには、法定の3委員会以外に任意の委員会を設置することで、取締役会の機能が弱くなる可能性もある。このように反対理由を述べておられました。私個人としては、至極真っ当な議論だと思いました。個人的にはサステナビリティ委員会の設置に直ちに反対するものではございませんけれども、委員会の設置目的、そしてその設置によって得られる効用とコスト、これをしっかりと検討することが重要ではないかと思います。

 次に2つ目の事例ですけれども、これも日本を代表する上場企業でございまして、時価総額もどんどん大きくなっていて、資本市場の評価も極めて高い企業ですけれども、既にサステナビリティ委員会を監督サイドに設置しています。当該企業の社長とお話しする機会があったのですけれども、サステナビリティをいかに自社の成長につなげるか。自社の利益につなげるか。分かりやすく言うと、サステナビリティでいかに儲けるか。こういった観点でサステナビリティ委員会を監督サイドに設置したとのことでした。日本企業に求められているのは、まさにこのような姿勢ではないかと思いました。

 以上を要すれば、欧米の事例をベストプラクティスとして単に真似するのではなく、各企業が自社のガバナンス体制の実態に見合った対応をすることが重要であると考えます。自社にとってのサステナビリティとは果たして何なのかなどのそもそも論を取締役会でしっかりと議論した上で、企業価値の向上を図る観点から何に取り組むべきかをゼロベースで考えることこそが重要であり、コード改訂に当たっても御配慮いただければ幸いです。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして円谷さん、どうぞお願いいたします。

【円谷メンバー】 
 ありがとうございます。改訂点のみかいつまんで発言させていただきます。まず、サステナビリティについては、高山メンバーと全く同意見でして、補充原則2-3の1番にリスク管理の一部であるとともに、同時に企業価値向上ですとか持続的成長ですとか、スチュワードシップ・コードの原則1と文言を合わせてもいいかもしれませんが、加えるべきだと思います。それとつながりますが、補充原則2-3の②のようなものを新設しまして、この①で検討した内容について企業の長期的、持続的価値向上に多大な影響を与える重要な課題について、検討プロセスを含めて内容を開示するといった補充原則を新たに追加・新設してもよいかと思っております。

 続きまして2つ目の論点、企業のガバナンス向上に向けて企業と投資家との対話をより実効的なものにするというところなのですけれども、スチュワードシップ・コードの原則4で協働エンゲージメントということが述べられておりますので、それと併せましてこちら、コーポレートガバナンス・コードの補充原則の5-1の②の3番で個別面談以外の対話の手段としてというところがございますけれども、その中で例えば機関投資家説明会やIR活動、この横に新たに協働エンゲージメントというのを加えてみたらいかがかなと。5-1の②の(iii)のところですね。というふうに考えております。

 以上、改訂についての御提案でした。どうもありがとうございました。以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして岩間さん、どうぞお願いいたします。

【岩間メンバー】 
 ありがとうございます。私は対話の中身ということについて考えていることを申し上げたいと思います。皆さん、おっしゃっておりますように知財と人材というのが非常に測りにくいということなのですが、対話する観点から言いますと、企業理念、あるいは経営戦略、あるいはサクセッションプラン、それから、人材育成プラン、そういったことが一連の関係のある話で、そういう形でどういう具合に有機的に連なっていて、何が投資家と企業サイドの対話の課題になるかということが非常に分かりやすくなる必要があるのではないかと思っています。そういう意味で言いますと、統合報告書の中にナラティブの説明というのがしっかりと出されて、それを基に対話が進んでいくということが必要なのではないかという具合に思っております。

 それから、川北先生からもお話がありましたが、DCの問題です。企業年金の母体企業との利益相反についてどうするかということについては、かなり議論が煮詰まってきているという具合に思います。それと同時にやはり確定拠出年金に移行した後の、あるいは確定拠出年金に移行する際の従業員に対する金融教育といいますか、あるいは投資教育といいますか、そういったことをしっかりやるということは、母体企業の非常に大きな責任であるということは間違いないでしょうし、その雇用政策上も非常に大事な話で、企業価値そのものにも直接影響してくるということになると私は考えておりまして、そういう意味でDCの有効性を高めるために母体企業がどういうことをしているか。もちろん利益相反は排除して受給者のために専一になるような仕組みとしてどう動かしているかについて説明をしていただくということをどこかに書いたらいいのではないかなという具合に思っております。

 それともう一つありますのは、先ほどどなたかがおっしゃいましたが、企業文化ということが非常に大事な話ではないか。実際、例えばR&Dがしっかりと成功するかということについても、企業の風土、土壌、文化、そういったことを促進するような形で醸成されているか。それから、経営がそういうことに対してしっかりとリードされているかといったことについては、もう少し我々としても着目する必要があるのではないかという具合に思います。それから、御指摘がありましたように運用会社、運用サイドがしっかりとレポートしていく、開示していくということについては、当然、必要な話であって、それはスチュワードシップ・コードの中に入るということになるのかもしれませんが、投資家サイドと企業サイドが相まって、呼応して事態が進展していくという具合に進んでいくのがいいのだろうと思っております。いろいろまとめていただいた内容について、私としては非常にいいものを出していただいていると思っております。

 以上です。ありがとうございます。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして武井さん、どうぞお願いいたします。

【武井メンバー】 
 武井でございます。まず、サステナビリティの関係についてですが、皆さんもおっしゃっているとおり、無形資産である人的資本であったり、あと知的財産についてもまさに競争優位性の観点からとても重要性を増しておりますので、そうしたもののきちんとした投資戦略であったり活用戦略について、統合報告というソフトな形できちんと外に説明をしていくということが大切なのだと思います。統合報告ということですので、やはり今回、ガバナンスコードのほうにおいてきちんと言及することが大事かなと思います。あと、この話は皆さんもおっしゃっているとおり、企業のパーパスであったり、企業理念に根差した話ですので、ガバナンスコードの第2章で言及したほうがよいかなと思います。もう1点、今のと絡む話で、DXに伴うDXガバナンスも重要です。デジタルトランスフォーメーションに伴ういろいろな効率性の向上や新たな社会的課題への対処もございますので、DXガバナンスについても言及したほうがいいのだと思います。

 あと、こういった実体面・戦略面だけでなく、社内の体制面としてサステナビリティ委員会も私は重要だと思っております。サステナビリティ委員会を、まず執行側に経営トップがちゃんとコミットした形で作るということが重要ではないかと。CSR委員会とか、そういったものからちゃんとバージョンアップして新たなサステナビリティ委員会を作る。その上で作られたサステナビリティ委員会について、取締役会や監督機関とがどうリンクを張るかということを整理することが重要かと思います。サステナビリティ委員会を含めて、これらの点は日本企業にとって相当取り組みの伸び代がある領域であると思います。それだけに、サステナビリティにきちんと取り組んでいるということの発信を強化することは、今後の成長戦略としても大事かと思います。

 次に、後段の対話の関係でございますけれども、対話の関係で1点補足するとしたら、対話の充実を損なうおそれのある機関投資家側の課題が依然として残っているのではないか。従前から指摘がある、企業が取り組む中長期的なイノベーションを損なうような短期的志向の課題だけでなく、いろいろな形式的対応が生じているという課題も依然としてまだ残っているのではないかと思います。ガバナンスコードはまさにあくまでコンプライ・オア・エクスプレインであって、強制コンプライではないというところに大変重要な意義があるわけですけれども、他方で機関投資家の方の中には、コンプライしていないとおよそ議決権行使上バツをつけるとか、そういった形式的な行動が見られます。こうした行動が形式的に広がりますとこれは強制コンプライになってしまい、コンプライ・オア・エクスプレインの趣旨に反してしまうのではないかという懸念があります。

 あと、これも従前から指摘がある課題ですが、議決権行使においても個社毎の個別説明をあまり斟酌しないで、1回決めた議決権行使基準を機械的、形式的に当てはめているとか、もしくは反対行使の実績をあえて作ろうとして一定数の反対票を投じるとか、そういった形式的な対応をしている機関投資家さんもまだ見られるところでございます。機関投資家さんにもいろいろいらっしゃっていろいろ幅があるわけですが、ただこうした形式的な対応についてはきちんと、今回ガバナンスコードの改訂を行う中で警鐘を鳴らすといいましょうか、改めて注意喚起をすべきではないかと思います。

 こういった機関投資家さん側の形式的な行動に関してはアセットマネジャーさんのほうにおける取組みも大事ですけれども、アセットオーナーさんの側でも、アセットマネジャーさんのほうにそうした形式的行動が生じないような工夫・取組みなどをやっていくことも重要だと思います。今回、特にガバナンスコードを相当大幅に変えて企業さん側にいろいろな対応を求めていくということであれば、機関投資家さん側についても機関投資家さん側の課題をきちんと解消していくということは極めて重要ではないかなと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして大場会長、お願いいたします。どうぞ。

【大場メンバー】 
 私からは、もう皆さんから御意見をいただいていますので、サステナビリティの開示に関して2点ご意見申し上げます。24ページにもまとめられておりますけれども、サステナビリティに関する開示の充実が進んでいるということで、それを前提としてどのような議論が今後必要か、こういうような問いかけになっているわけです。翁メンバーからも御意見がございましたように、取締役会がしっかり監督するということを前提として2つの点について御意見を申し上げたいと思います。

 1点目は、Sの重要性が指摘されていますが、Eに比べるとSは非常に定義が難しいという問題があると思います。例えば人権問題とか雇用の確保などがよく出てくるわけですが、雇用の確保が大事なのか、従業員の働きがいが大事なのか、こういったものをどのように定義づけていくかということは大変悩ましい問題ではないかと思います。したがいまして、Sの定義、環境面に関してはヨーロッパのタクソノミーともいわれますが、Sについてもどのような定義を前提にサステナビリティを考えるかということで、定義づけが大事ではないかと思います。

 2点目は、開示するとあるのですが、開示する場所はどこを前提にするのかという問題があると思います。企業から見て、ガバナンス報告書なのか、有価証券報告書なのか、これを明確にしておかないと、どこに示されているかということが分かりづらいという問題が出てくるのではないかということを懸念いたします。以上について整理をされることが望ましいと思います。

 以上です。

【神田座長】 
 どうもありがとうございました。

 これで本日御出席の皆様方からは、全ての方から御意見といいますか、御発言をいただきました。大変貴重な御指摘をたくさんいただきまして、どうもありがとうございました。本日いただいております時間は、まだ若干残ってはおりますので、もし追加で御発言があれば承りたいと思いますけれども、いかがでしょうか。どなたか追加で御発言、ございますでしょうか。特によろしゅうございますでしょうか。ありがとうございます。

 それでは、予定の時間より若干早いのですけれども、この辺りとさせていただければと思います。最後に事務局から御連絡がございましたらお願いいたします。

【島崎企業開示課長】 
 次回のフォローアップ会議の日程でございますが、皆様の御都合を踏まえた上で最終的に決定させていただきたいと思いますので、御案内をお待ちいただければと思います。どうもありがとうございました。

 事務局からは以上でございます。

【神田座長】 
 ありがとうございました。

 皆様方には、本日も長時間にわたりオンラインでの御参加をしていただきまして、多数の貴重な御指摘をいただきまして、本当にどうもありがとうございました。以上をもちまして、本日の会議を終了とさせていただきます。どうもありがとうございました。
 

―― 了 ――

 

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