「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第6回)議事録

  • 1.日時:

    令和4年6月20日(月曜)9時00分~11時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館 13階 共用第一特別会議室

「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第6回)
令和4年6月20日
  
【神田座長】
 皆様、おはようございます。それでは、皆様方おそろいでございますので、始めさせていただきたいと思います。ただいまからデジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の本日は第6回目の会合になりますけれども、開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところを御参加いただきまして、ありがとうございます。

 本日の会合も、前回に引き続きオンライン開催とさせていただき、一般の傍聴はなしとさせていただいた上で、メディア関係の皆様方には金融庁内の別室において傍聴をしていただくこととしております。

 また、本日、でございますけれども、送金・資金決算に関し、ステーブルコインについて具体的な内容も取り上げますので、テーマに応じたオブザーバーとしまして以下の皆様方に御参加いただいております。全国銀行協会、日本資金決済業協会、日本証券業協会、日本暗号資産取引業協会、信託協会、日本STO協会、金融情報システムセンター、Fintech協会、新経済連盟、以上の方々に御参加いただいております。

 では、議事に移ります。本日は前半と後半の2つに分けて討議をお願いしたいと思います。まず、前半ですけれども、DeFiにおける規律の在り方などについて、事務局から説明をしていただきます。後半は前回の会合に引き続きということになりますが、ステーブルコインに関する論点について説明をいただいて、その事務局からいただいた説明に対する御意見などを日本暗号資産取引業協会とFintech協会からいただいて、その上でメンバーの皆様方に討議をしていただくという流れで進めさせていただきます。

 なお、討議に当たりましては、前回と同じく、資料2に本日討議いただきたい事項としてまとめていただいておりますので、適宜、御参照いただければと思います。

 それでは、早速ですけれども、事務局からの御説明をお願いいたします。

【端本信用制度参事官】
 それでは、資料1に沿って御説明させていただきたいと思います。

 まず、3ページですけれども、DeFiの概要ということですけれども、1つ目の丸のところにございます。いわゆるDecentralized Finance、DeFiにつきましては、明確な定義はございませんが、一般的には、分散台帳技術に基づき、仲介者を必要としないことを目的とした金融サービスや商品を提供するものという形で説明されております。

 このいわゆるDeFiサービスでロックされている資産の規模、昨年末ですと1,000億ドルを超える規模まで急増しておりましたが、その後、暗号資産市場の急速な縮小に伴いまして、このDeFiサービスでロックされている資産の規模も、同様に下落しているということでございます。

 続きまして、4ページでございます。伝統的な金融サービス等の比較ということで、銀行監督者の集まりであるFSB、それから、証券監督者の集まりでありますIOSCOの議論を紹介させていただきたいと思います。

 まず、FSBのほうですけれども、その下の四角のところを見ていただきますと、左側から参りますが、既存のDeFiのサービス例ということで、暗号資産の貸付け等を行うもの、それから、暗号資産、アセットマネジメントということで、利回りの最も高いところに自動的に割当てるというような運用を提供するもの、デリバティブ、それから、その下、分散型取引所(DEX)とありますけれども、P2Pの売買等を行うもの、それから決済、その下、保険サービスを提供するものがあるということでございます。

 その右側に参ります。伝統的な金融との相違点ということで、オープンソースの技術を利用している。1番上でございます。その下でございます。トラストレスとありますけれども、必要な担保等を聴取するということで、カウンターパーティーリスク等の評価はしていないということでございます。その下、パーミッションレス型の分散台帳に基づくものが多い。それから、所有権とガバナンス構造の分散化の主張ということで、ガバナンストークンといったものを配付いたしまして、分散型の意思決定を企図しているということでございます。他方で、一番下のところにございますとおり、特に開発の初期段階におきましては、少数の者が大きな影響力を持っている場合も多いということが指摘されてございます。

 続きまして、5ページでございます。こちらはIOSCOのほうの報告書ということで、先ほど見ていただいたものと共通したものでございますけれども、まず、左側から、伝統的な借入・貸出との比較ということで、法制的なことを申し上げますと、暗号資産の貸付け等につきましては、現在、業規制の範囲に含める運用は行っていません。例えば、有価証券の貸付け等ですと、証券会社が付随業務として行っているということですけれども、暗号資産については、そのような規制監督は行っていません。そうした中で、金銭の貸付けと経済的に同様のものについては、資金業が一部適用される余地はあるかもしれませんけれども、全体としては業規制・監督の対象となってないということでございます。

 それから、その下、デリバティブにつきましては、暗号資産のデリバティブは金融商品取引法が適用されるということでございます。

 その下、伝統的な取引所の比較ですけれども、暗号資産の売買等ということですと暗号資産交換業という規制が適用されます。金融商品取引法のように、取引が集中された、あるいは量に応じて、より厳格な取引所規制といったものはないということでございます。

 それから、その下、資産運用の関係ですが、暗号資産の移転を伴うものにつきましては暗号資産交換業が適用されますが、暗号資産の運用にかかるアドバイスのみを行うというものについての業規制はございません。

 それから、右上、清算・決済活動との比較ということで、伝統的な銀行の送金で考えますと、送金した後に、銀行管理間でネッティングをし、その後、セトルするわけですけれども、そのような仕組みがない暗号資産のものにつきましては、決済の量が増大することに伴います決済時間の遅延、あるいは取引手数料等々の問題が指摘されているということでございます。

 その下のカストディ業務でございますけれども、暗号資産につきましては、自らウォレットで管理するセルフカストディ、あるいは、スマートコントラクトに預けるような場合がある等の指摘がされております。カストディ業務、暗号資産交換業、あるいは信託法制の中でやっていただくということかと考えております。

 それから、一番下でございます。伝統的な資金調達との比較ということで、DAO(Decentralized Autonomous Organization)を使った資金調達の実験的なプロジェクトが増加しているということでございます。現行法制ですと会社法等があるわけでございますけれども、そのような規律の外でこのような活動が行われているということございます。

 続きまして、6ページになります。DeFiが有し得るリスクということでFSBに戻りますけれども、1つ目の丸のところにございます、DeFi関連のハッキング被害が暗号資産のハッキング等の被害の75%以上を占めるということが指摘されていて、これは1つの大きな脆弱性ではないかということで指摘がされております。

 それから、最後の7ページでございます。IOSCOのほうに戻っていただきますけれども、これもDeFiが有し得るリスクということで様々なリスクが指摘されております。左側の1から5ぐらいまで見ていただきますと、様々な不公正取引、例えば、虚偽記載、虚偽のディスクロージャー、相場操縦、フロントランニング等々が指摘されております。これらの不公正取引につきましては、暗号資産の不公正取引、金融商品取引法をインサイダー取引以外のものについては適用するということで、刑事罰で担保するという仕組みになりますが、有価証券と異なりまして、その不公正な取引が実体経済に与える影響は限定的であろうということで、証券取引等監視委員会への権限委任はなされておりませんし、法執行の状況については差がある状況にございます。

 その他、様々リスクがございますけれども、それらにつきましては、これまで説明したとおりでございます。

 以上を踏まえまして、資料2のほうに行っていただきますと、本日討議いただきたいという事項ということで、1、DeFiにおける規律の在り方と規制の名宛人についてということでございます。

 まず、(1)でございます。先ほど見ていただきましたとおり、DeFiにおける金融サービス、伝統的な金融サービスと機能において類似、重複する面がございます。こうしたものを捉えまして、まず、議論あるいは検討の出発点といたしまして、同じビジネス、同じリスクに同じルールを適用するというところで、こうしたところから議論を始めていってはどうか。その後、個別具体的に丁寧に検討していくというアプローチはどうかということが(1)でございます。

 それから、(2)といたしまして、既存の金融規制監督、金融サービスを提供する主体を特定いたしまして、規制の名宛人とするアプローチが取られております。DeFiにつきましては、後ほど、FinTech室のほうから金融庁の委託調査の結果を御紹介いただきますけれども、特定の管理者がいないということでサービス提供されてございます。こうした中で、中央集権的要素、注2のところでございますが、利用者等がきちんとその部分が機能するということを信頼している部分を規制対象として捉えていくアプローチについてどう考えるかというのが論点2でございます。

 それから、最後、2ページになりますけれども、(3)といたしまして、その他、DeFiに関する検討を進めていく上で留意すべき点等があれば、幅広く御指摘いただければということでございます。

 私のほうからは以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、DeFiのトラストポイントに関する分析についての御説明をお願いいたします。

【牛田調整官】
 それでは、資料3に基づきまして御説明をいたします。

 本資料ですが、先週16日に公表いたしました、株式会社クニエによります委託調査報告書「分散型金融システムのトラストチェーンにおける技術リスク等に関する研究」の報告書の内容をベースにしたものでございます。

 資料、次のページをお願いいたします。また、本報告書の目的・背景でございますが、IOSCOとFSBの報告書の紹介もありましたが、これらの報告書でも、現状のDeFiプロジェクトの相当程度は中央集権的な要素を有しているのではないかという指摘がありました。そういった問題意識を踏まえまして、現在の主要なDeFiプロジェクト、Uniswap、Maker、Aaveという3つのプロジェクトを抽出いたしまして、これが一定のトラストポイント、ここでの定義は、利用者等が無条件にトラストせざるを得ない中央集権的要素というふうにしておりますが、そういったものを有しているのではないかという仮定に基づき、事例分析を行ったものでございます。

 次のページお願いいたします。ユースケースの1つ目、Uniswapでございます。これは分散型取引所、DEXと言われるもので暗号資産やステーブルコインを交換する機能、スマートコントラクトを提供しているプロジェクトです。仕組みの詳細については、この図の中で主な構成要素とともに記載をしております。詳細は割愛いたしますけれども、図の中央上部のUniswapプロトコルという太枠で囲んでいるところ、そこがUniswapに固有のスマートコントラクト群というところになっております。それがイーサリアム・ブロックチェーン上にデプロイされておりまして、その周辺にはブロックチェーンの外のところで関係する構成要素を配置しております。

 こういったプロジェクトにおいてトラストポイントと考えられる点という所を、この赤枠の点線で囲っております。このUniswapのケースですと、例えば、Uniswap Labsというところ、図の中央下部ですけれども、これはアメリカに拠点がある開発チームですが、ここがスマートコントラクト構造の開発というものを行っておりますし、あとは、ユーザーインターフェース、例えば、ウェブサイトですけれども、トークン交換を容易にするようなユーザーインターフェースの提供というところも行っております。加えて、コミュニティー運営への一定の関与というところも行っております。エコシステムの中で、相当程度の影響力を有しているのではないかというふうに考えております。

 その他のトラストポイントということですと、これは大半のDeFiプロジェクトに共通ではありますけれども、この図の左下のところです。例えば、ウォレットの提供者、大半のDeFiは、ノンカストディアル、セルフカストディアルのウォレットをUniswapなりのDeFiプロジェクトに接続をして使うという形になっておりますけれども、こういったウォレットが問題なく動くというところが前提になっているというところがございます。

 その下にございますのがコード監査会社というところで、このスマートコントラクトが正しく書かれているかというようなところを監査する会社で、その監査結果の公表なども行っているところですので、こういったものを見て、ユーザーは一定程度安心して使っているのかというふうに考えております。

 それでは、次のページお願いいたします。このMAKERというのは、いわゆる暗号資産型のステーブルコインを発行するプラットフォームでございます。イーサなどの特定の暗号資産だったり、ステーブルコインを担保に預けることでステーブルコインのDaiというものが生成できるというプロジェクトでございます。仕組みとしては、ややUniswapより複雑になっていって、少しビジーな図になってしまっておりますけれども、基本的な構成要素としては同じです。ここのMAKERプロトコルというスマートコントラクト群を中心にして構成要素を配置しております。

 Uniswapとの対比で申し上げますと、UniswapはUniswap Labsという開発チームがありましたが、MAKERの場合にも、かつては、Maker Foundationという組織がございました。この図の右下、バツがついているところですけれども、ただ、これはこのMakerDAOのコミュニティーがさらなる分散化を目指すという目的のもので解散を昨年7月にいたしております。もともと解散ありきで、最初のコミュニティーの成長のために時限的に設けられた組織というところでもありましたが、こういったものが解散をされて、現状は、その図の下で行きます、MakerDAOといういわゆるDAOのコミュニティーによって運営がなされているという形です。

 ただ、一定のトラストポイントは引き続き存在するというふうにも考えられまして、例えば、強制精算などが発生した場合に、裁定取引の相手方になるようなキーパーですとか、あとは、Maker Foundationではないものの、その他の関連法人というところは引き続き存在をしております。MakerDAOの中にも、例えばセキリティーのチームですとか、金融機関も含めた外部組織との調整を行うようなチームがありますので、こういったドメインチームとかコアユニットと言われる人たちも、相当程度コミュニティーに大きな影響を果たしているというふうに考えております。

 次のページお願いします。最後、ケーススタディーの3つ目ですけれども、Aaveと呼ばれるレンディングプラットフォームでございます。こちらは、一定の暗号資産やステーブルコインを担保に入れることで一定の与信枠を得られて、その範囲内で借入れができるというもので、逆に、貸付け側として流動性を提供して金利を得ることもできるというプラットフォームでございます。

 これも基本的な仕組みはMAKER、Uniswapと同じというところで、説明は割愛をさせていただきます。また、トラストポイントというところでも共通するところが多くなってはおりますが、特有のもの1つとして、この左下にございますホワイトリストというものがございます。ここは一種のKYCプロバイダー、アイデンティティープロバイダーという形になっておりまして、Aaveは機関投資家向けのDeFiサービスというところも提供しているわけですけれども、外部組織である彼らが一定の認証を行って、その認証を経た金融機関、機関投資家間でこのDeFiプラットフォームを使って取引ができるというような仕組みになっております。当然、ここのKYCが正しく行われているという仕組みが前提になっていていようかというふうに思います。

 次のページお願いします。これら3つのプロジェクトも含めまして、大半のDeFiはいわゆるガバナンストークンという議決権付の暗号資産を用いたガバナンス投票によってガバナンスの一部、コミュニティーの一部の意思決定を行っているという実態がございます。この仕組みを図のとおり描いておりますけれども、ここにも一部トラストポイントが存在しているというふうに考えております。丸を2つ付けておりまして、右上のところが投票代理というところですけれども、これは例として、MAKERの例ですけれども、少数の投票者、投票代理人が相当程度の議決権を有して、意思決定に強い影響力を有しているというふうに考えられます。

 他方、先ほども御説明したMakerDAOの中のチームの1つ、ガバナンスコアユニットというところも、一定程度、ガバナンスの提案の段階ですとか、スマートコントラクトを使った投票の段階とか、提案を実行するという各段階で一定程度の関与を行っているというふうに考えられますので、ここもDAOとは言いつつ、一定程度影響力を持っているというところかなと思います。

 最後、次のページお願いいたします。こういった分析を踏まえた論点でございます。今、御説明したとおり、現状のDeFiプロジェクトというものには様々なトラストポイントが存在をするというところは特定できたかというふうに思っております。ここに丸の1つ目の各項目に書かせていただいているような開発チームだったり管理権限保有者というところですけれども、他方で、トラストポイントが確定できたといっても、アドレスベースでは分かっても、実態としてどこの国にいる、どういった主体だったり法人かというのが分からないというようなところもございますので、必ずしも、だから規制の執行が容易であるというところではないのかなというところも認識をしております。

 2つ目の丸のところ、ユースケースの分析とともに、このトラストポイントの観点で、過去のインシデント事例の分析もこの報告書の中で行っておりますけれども、大半の場合は、このトラストポイントの一部が原因となってセキュリティーのインシデントが起こっているという実態がございます。ここにはWeakest Linkというところで、セキュリティーで最も弱い部分というところに書いておりますけれども、こういった情報セキュリティーの観点から、トラストポイントの特定とそこに存在するリスクへの対応というものは重要かなというふうに思っております。

 3つ目の丸ですけれども、今、ガバナンストークン、DeFiということでまとめて説明した部分がありますけれど、実態を細かく見てみますと、今回調べた3つのプロジェクトでも、それぞれガバナンストークン、ガバナンス投票でできることというところには大きな違いがございますので、ここは個々のプロジェクトを詳細に見ていただく必要があるのかなというふうに思っております。

 最後に、イノベーションの促進の観点を忘れてはならないと思いますけれども、Maker Foundationの例が典型的ですけれども、プロジェクトの最初の段階では責任主体の特定が比較的容易です。ただ、プロジェクトが成熟するに伴って分散度が高まってくるという実態がございますので、こういった観点、規制の容易さという意味では、前段のほうが容易ではあるものの、仮に分散した結果、インターネットに何かイノベーションにつながるようなものだとすると、こういったもの、どんどん分散度が増していくというところをどう考えるかというところも1つの論点かと思っております。

 私からの説明は以上となります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、以上、本日の前半部分とさせていただきまして、今の御説明を踏まえて、メンバーの皆様方に討議をお願いできればと思います。どなたからでも結構でございます。御発言いただける方は、チャット欄に全員宛て発言いただける旨を1行入れていただければと思います。早速、ありがとうございます。岩下さん、どうぞお願いします。

【岩下メンバー】
 御指名ありがとうございます。本日の論点の1番目についてコメントを申し上げます。

 ただいま事務局のほうから御説明いただきました、DeFiのトラストポイントに関する分析は、先日、金融庁のウェブサイトから報告書全文が公開されました。読んでいただいた方は多いと思いますけれども、こちらの分析は、こうしたDeFiと言われるものについて、現実にどうなっているのかということを実証的に調べた極めて貴重な資料であると思います。私も若干この議論に参加させていただきましたので、手前みそになってしまうことを恐れずに申し上げれば、多分、現時点でこの分野について最も詳細に分析した資料の1つだと感じております。

 この資料を見ていて私が改めて思ったのは、DeFiという言葉自体が必ずしも正確ではないということです。DeFiの「De」というのは、「Decentralized」で「分散金融」とか「非中央集権」などと翻訳されるわけですが、分散は分散なのかもしれませんけれども、非中央集権では全くない仕組みというものが多数見受けられました。ビットコインが非中央集権であるというのは、そういうふうに一生懸命つくったからで、今現在も中央に当たるものは存在しませんが、ビットコインに続く暗号資産の多くが実は中央集権の仕組みを残しています。最近破綻した幾つかのステーブルコインのプロジェクトにおいても、それの担い手となった人が結局は自らの懐を肥やすためにそのプロジェクトやっていたということで、実際に破綻後は訴訟の対象になっているということからすると、明らかに、これは誰かが、個人とか法人がそういう企画を行って、その結果失敗した、その結果その人が責められるということで、どこも分散化してないし、DAOでも何でもないわけですよね。

 ただ、それをあたかも分散している、DAOであるということをふるまうことによって、責任を逃れようとしている、規制の対象から逃れようとしているという感じが非常に強くいたしました。

 もう一つ感じたのは、今回の現象と、それからリーマンショックの原因となったサブプライム危機との類似点です。サブプライム危機の際には、皆さんよく御記憶だと思いますけれども、証券化された様々な不動産担保証券(MBS)であるとか、債務担保証券(CDO)であるとか、こういったものがあたかもすばらしいイノベーションであると喧伝されて、それらが高値で売買されました。しかし、その正体はというと、中にジャンクなものを詰め込んでいたものが多数あったということで、大きく信用を失って、それがリーマンショック、サブプライム危機の大きな原因となったということは皆さん御存じだと思います。それと同じような性格が、このDeFiというものの中に存在しているような感じがいたします。

 リーマンショックのときには、いわゆるフィナンシャルエンジニアリングという新しい言葉ですばらしいイノベーションだというふうに言っていたわけですけれども、今回もブロックチェーンの技術で、すばらしいイノベーションだと言う部分があると思います。フィナンシャルエンジニアリングやブロックチェーンの技術全体を否定するわけではもちろんありませんが、しかし、そういうものによって彩られたものというのは実態が見えにくくなります。それを利用して自らの利益を図ろうとする人たちが現に存在します。

 今日の事務局資料の資料1の3ページに、DeFiのTVL、DeFiサービスでロックされている資産総額というものがございます。これは今、この最後の右端が600億ドルぐらいになっていますけれども、今朝の段階だと300億ドル台になっていますので、もうここからして、この下がっている絵からさらに半分になっているわけでありますので、そういう意味では、DeFiというものの中身であるとか、実際の今の人々の熱狂度合いというものはもう冷めてきています。その結果として、大きな損失が生じて、ステーブルコインの事業者の破綻であるとか、あるいは、スリーアローズであるとかBlockFiであるとか、いろいろなところで、今、信用問題が出てきているという、こういう大変危うい状態にあるということをまず我々は認識するべきだと思います。

 セルシウスの資金払出し停止というのも、これもDeFiの典型的な破綻事例でありますので、もしも日本の国民一般にそういうサービスが提供されるということになっていたとすると、これは非常にまずい事態になっていたと思いますが、幸い、これまでのところ、そういうことになっていません。これは金融庁のこれまでの規制の方針がよろしきを得てということだと思います。

 長くなりましたので、討議の視点の論点ですけれども、論点1の(1)の、既存の金融サービスと同じ規制を適用するというのは、これは当たり前です。当たり前なので、それは当然そうするべきだと思うんですが、問題は、先ほど申し上げたように、分散化しているふりをする人がいます。MAKERのように、最初はセンターとなっていた人が、いや、私関係ありませんとなり、でも実際はコントロールしている。そういう人たちがいると、そういう人たちに責任を取らせることはなかなかできない。もっと正々堂々としている一般の伝統的金融機関に比べると、逃げ回っている人たちなわけです。そういう人たちを規制するのは、技術的には非常に難しい。もちろん、国境をまたぐという点でも規制が難しい。これがDeFiの難しいところで、海外ではやっているからといって、あるいは、海外で投資家に持たれているからといって、それをそのまま使うというわけには多分いかんだろうというふうに私は思います。

 現時点で規制できないものについては、国内で認める必要はないと思います。これから値上がりするだろうとか、海外で取引が活発であるとか、これがないと動かないからとかと言われますが、そういう話ではありません。これがないと動かないと称しているものは、大方のものは詐欺的な物件だと私は思っていますので、あえて火中の栗を拾う必要はないと思います。そういう意味で、日本の国内で、これらのものを一般消費者、投資家に対して利用可能な環境を積極的に提供していく必要はないだろうと私は考えています。

 その上で、国際的にそういうものが出てきてしまったときに、それに投資する人が出てきますから、それらのものについては一定のリスクがあるということ、これらの実態についてきちんとした情報の伝達をしていって、そういう問題があるのだということをきちんと知らしめていくことが非常に大事だと考えております。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、松尾さん、どうぞお願いいたします。

【松尾メンバー】
 発言の機会をいただきありがとうございます。

 私も岩下先生と同じくくだんの金融庁のレポートのアドバイザーをやっておりましたので、全く手前みそではございますが、世界に先駆けていいレポートであると思います。今回の論点について幾つか述べさせていただきたいと思います。論点の(1)にございます、「same business, same risk, same rules」というのは大原則であろうと思いますので、そのとおりだと思いますが、この金融庁の報告書を見ても分かるようにというか、分からないように、これがsame businessなのか、あるいはsame riskなのかということがまだ解明できてないと思うんです。

 なので、この解明であったり、same businessでないところはどこなのか、same riskでないところはどこなのかというところを継続的に我々は研究していく必要があり、これは、今回の骨太であったり、デジタル庁の重点計画でも、そういうところをまた詰めていきましょうという姿勢が出ていたと思うんですけれども、改めて研究をする必要があると思います。

 もう一つは、DeFiに対する違和感が出てくるところというのは、従来の伝統的な金融サービスと違って、アーキテクチャーが大分違うということで、アーキテクチャーが違うことによって、先ほど牛田さんのことにあった、トラストポイントがどこだというのがよく分からなくなるとか、あるいは、岩下さんがおっしゃったように、逃げ回る可能性がそこに存在するということなので、アーキテクチャーが違うとすると、規制あるいは監督のやり方が変わってくるのだろうということで、same architectureとかdifferent architectureというところは、我々は考えなきゃいけないんだろうと思います。

 (2)のところですけれども、私が第2回のときにプレゼンをする時間をいただいたときに、プレゼン資料で、point of failure、point of responsibility、point of profitの関係というのが重要だという話をさせていただいたんですけれども、ここにあるように、例えば、中央集権的要素を規制の対象にするというのは、最初はそうだろうなと思う一方で、先ほど牛田さんの資料にありましたように、トランスポイントはこことここですと言いつつ、何か事故が起きたときにこことここが責任を取る財力を備えているというわけではないこともあり、point of failureとかpoint of responsibility、point of profitが違うがゆえに逃げ切れるということも当然ながら起きるわけです。

 なので、この辺の責任と利益の関係を明らかにする必要があるのと、この資料の後のほうに、預保の話、預金保険機構であるとか、そういうことを保つコモンズみたいなものの必要性というのが記載されているような気がするんですけれども、この辺の責任と利益の関係が入れ違いになっているところというのも、ある種研究が必要なんだと思います。

 2点目として、今回、基本的に全部技術に着目しているんですけれども、人の悪い面、人の業みたいなところへの着目というのが極めて重要で、このくだんの金融庁のレポートによると、例えば、分散型でガバナンス投票するのだと言いつつ、投票率は5%ですみたいな案件がほとんどですみたいな、それは一体何なんだというようなことが赤裸々に書かれていて、多分、その部分がこのレポートの真骨頂だと僕は思うんですけれども。あるいは、先ほど牛田さんが何回も「DAOとは言いつつ」という言葉を使われましたが、まさにそこに先ほど岩下先生が御指摘された問題があると思うんです。

 今、Web3上のプロジェクト、海外でも日本でも、あるいは日本人が海外でやっているものでも、ブロックチェーンは仮にあるとしても、その上でかなりのところで人のオペレーションによって問題が起きているケース、あるいは、問題が起きつつケースがあって、それがSNSでも指摘されているケースがございますが、その辺の人間の行動をどう捉えていくかというところが、単に技術だけではないんだというところですね。

 一方で、人間の業と申し上げたように、今起きていることは、大抵昔の金融犯罪で起きたことと同じことが起きている。人間のやることは金を見るとあまり変わらないというのは、先ほど岩下先生がサブプライムローンの話をしたときと同じだと思うのですけれども、人間が起こす金融犯罪は多分ある種のパターンがあって、それがこの新しいアーキテクチャーを目の前にしたときに何が起こるのかということを今我々は目の前で見せられていると思いますので、その辺も含めて研究を進めていくことが重要なのかなと思います。

 もう一つ、人への着目という意味では、セキュリティーの問題は極めて重要で、そこが結局いろいろな破綻の引き金を引くことになるわけですけれども、じゃあ、毎日、例えば、国家レベルのサイバーアタックを受けるようなこういう金融サービスでありながら、それに対応するセキュリティー人材がいるのか。そんな人は世界で何万人もいないんですけれども、その何万人は大抵、もっと重要インフラの守りをしている中で、そういう人たちをちゃんとスタートアップが雇っているのかという問題があります。

 これは監督上非常に重要な話で、例えば、プロジェクトなりでサイバーセキュリティーのチームを二、三十人持っていますかという観点は、監督の対象だと思われます。そういうこと、ある種の技術だけじゃない人に対する着目というのが重要かと思います。

 もう一つは、規制と執行の役割の割合が変わってくるのだと思います。というのは、多分、先ほど、投票率5%問題もそうなんですけれども、恐らくは、これは証券ですとかこれはコモディティーですとかと分けたところで、実態がどうかということをテストしていく必要があって、御案内の通り、アメリカの場合、Howeyテストがあって、それの実態に即していくというやり方があって、日本はやり方が今までと違ったのでしょうけれども、different architectureになったがゆえに実態を捉えていくことがより重要になるので、そういうベンチマークをするテストみたいなものをこれから我々は考えていかなきゃいけないかもしれないというところです。

 あとは、(3)のところです。その他でDeFiと今後留意すべき点という意味では、アイデンティティーですね。CBDCもそうですけれども、アイデンティティーメカニズムをどうするのかというところが利便性に強く影響してきていて、ここをうまく設計することが逆にイノベーションだったり今後の競争力という意味になると思います。

 御案内のように、分散型アイデンティティーいうのは、ブロックチェーンの鉄板中の鉄板のアプリケーションの1つであって、直近、ジャック・ドーシーもWeb5ということで、マイクロソフト、IONをやっていた中心メンバーを引き抜いてまで新しいムーブメント起こそうとしていて、こちらに注目が集まっている以上、分散型アイデンティティーをどう扱うのかというのは、実はこれから重要な論点になるんだと思います。

 長くなりましたが、以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、坂さん、どうぞお願いいたします。

【坂メンバー】  よろしくお願いします。ありがとうございました。

 御紹介がありました資料3の元資料といいますか、報告書ですか。私も概略を拝見させていただきましたが、大変興味深い報告だと思います。これは恐らく、今後の議論の出発点になるかと思います。こういった具体的な実態を踏まえた具体的な議論というものが大事と考えております。

 それを前置きとして論点についてですけれども、まず、(1)について、2点申し上げたいと思います。1点目ですが、金融規制は、金融機能実現のための課題に対応するために整備されておりますけれども、分散台帳技術による場合も、金融機能実現のための課題がなくなるわけではありませんので、基本的に、既存の金融規制を適用するということが大前提かと思います。

 他方で、分散型金融の特性が既存の金融規制の適用を困難にしている面がある。現状では、匿名性が高いと言われていること、あるいは、責任主体が曖昧だというふうに言われていること、それから、容易に国境を越えるということころとをなどについては、これは対応が必要ですし、乗り越えるべき課題かと考えております。

 2点目ですけれども、分散型金融に現れる課題というのは、基本的には3つのレベルのもの、既存の金融規制のレベルのもの、金融のデジタル化のレベルのもの、それから分散型金融特有のレベルのものと3つのレベルのものがあると考えております。既存の金融規制のレベルのものでの対応も引き続き必要で、例えば、現物の暗号資産を対象とする投資助言は、現行の金商法の規制対象になっていないということですけれども、これは対象とする必要があると思います。また、暗号資産を用いた貸金業行為、例えば、100万円相当のビットコインを貸し付けて、100万円相当のビットコインを返済させるという行為は、これは貸金業の機能を営むものにほかなりませんので、これは規制対象であることをアナウンスすべきと思います。少し前に、金融ファクタリングの被害が問題になりましたが、被害が問題となる前に適切な注意喚起をすべきと思います。

 次に、(2)についてすけれども、資料3等によりますと、分散型金融においてもセキュリティーやプログラムの更新、それからインシデント対応のために、継続的な管理が必要だということだと思います。高度な分業がある程度行われているようですけれども、管理を担う主体、報告ではトラストポイントという言葉が使われておりましたが、かかる主体と規制対象とすることは自然な発想だと思います。

 それから、管理主体におけるガバナンスも重要で、現状、ガバナンストークン保有者の投票により重要な決定がされているというふうにありますけれども、これが実効的なガバナンスとなっているのかどうなのか、あるいは、実効的なガバナンスがいかに確保されるかということは、今後の課題であろうかと思いますし、今回、この資料3の御報告というのは、そういった議論をするための貴重な材料といいますか、前提となる情報を豊富に与えていただけるものだと思います。こういったものを踏まえた具体的な検討が必要と思います。

 それから、(3)についてですけれども、基本的には、ガバナンスですとか、あるいは、国際的な規制監督をどう実効的に行うかということが課題かと思いますけれども、既に現に起こっている問題がありますので、例えば、分散型金融の犯罪利用ですとか、あるいは金融規制の回避等、こういった具体的な問題にどう対処するかというところから議論をするということも1つのアプローチかというふうに考えます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、加藤さん、どうぞお願いいたします。

【加藤メンバー】
 ありがとうございます。資料2の1の論点に沿って意見を述べます。

 まず、(1)ですけれども、同じビジネス、同じリスクには同じルールを適用するとの考え方によってDeFiを分析する際には、DeFiでは暗号資産、これは資金決済法によって定義されるよりも広い意味でのクリプトアセットという意味ですけれども、これが取引に用いられる点をどのように考えるかが問題となるように思います。

 例えば、分散型取引所で取引されるものが暗号資産であるならば、暗号資産交換業による取引サービスを対象とする規制とのバランスが問題となるように思います。しかし、現行法では、暗号資産を対象とする取引の規制の必要性は、そのほかの金融サービスよりも低いと位置づけられているように思います。

 このことは、先ほどの事務局の説明でもありましたけれども、暗号資産の取引やデリバティブ取引に関する不公正取引規制が金商法の規制対象とされているにもかかわらず、課徴金や証券取引等監視委員会による犯則事件の調査の対象から外されている点にも表われていると思います。しかし、仮に暗号資産を使う人が増えていくのであれば、現在の暗号資産交換業を対象とする規制との比較でDeFiを分析することの妥当性が問題となるように思われます。

 次に、(2)についてです。資料3により、DeFiの中に何らかの、それも複数の中央集権的要素が含まれることが具体的に示されたことは非常に重要であると思います。ただ、これもあまり実質的な意味はないかもしれませんが、資料3に倣ってトラストポイントという表現を用いることが適切であるように思われます。中央集権的要素という表現ですと、そこを規制対象とすればDeFiを規制できるというような印象を受けてしまうのですけれども、中央集権的要素が果たしている役割は多様であり、かつ、実態としては複数のトラストポイントが存在するということが重要であるように思います。

 したがって、その中には規制対象としては適切ではないというか、実効的な規制を構築しにくいものも存在するように思います。むしろ機能の多様性や複数存在するという点を明確にする意味では、トラストポイントという表現のほうが適切であるように思います。

 その上で、DeFiに存在する各トラストポイントについて働きかけを行っていくというアプローチは検討に値すると考えます。それによって、トラストポイントの行動が変容すれば、金融規制の目的と抵触しない方向にDeFiが提供する金融サービスの内容が変わっていくことが期待できるからです。

 このような各トラストポイントに焦点を合わせるミクロ的なアプローチに加えまして、資料3の基になった委託調査報告書では言及がされておりますけれども、DeFiのガバナンスの仕組み自体、すなわちDAOと称されている仕組みの研究も必要になると思います。2008年の金融危機の後、金融機関のコーポレートガバナンスの強化が金融規制の課題として改めて再認識されたと理解しております。伝統的な金融機関におけるコーポレートガバナンスに相当するものが、DeFiにおけるDAOと称されている仕組みではないかと思います。もう少し具体的に言いますと、これは既に何名の先生から御指摘がありましたけれども、DAOを稼働させている人々のインセンティブ構造に着目する必要があると考えています。

 最後に論点の(3)についてです。私も資料3の基になった報告書を拝見しましたが、資料3では言及さていない点の中で、DeFiと既存の金融機関の間には既に密接な関係が存在する場合があるということ、実際にDeFiで生じた問題の中には、DeFiの各サービス同士の連携が原因として事故が生じているという事例があるということが、非常に重要ではないかと思います。

 後者の点について補足しますと、既存の金融サービスの中でも、例えば、銀行預金と電子マネーサービスが組み合わさると各サービス単独では想定していなかった形で実際に事故が生じているように思います。同じように異なるDeFiのサービスが組み合わせると事故が起こりやすいということが資料3の基になった委託調査報告書では示されており、この視点も非常に重要であると考えます。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、松本さん、どうぞお願いいたします。

【松本メンバー】
 まず、この論点1から3について順に述べさせていただきますけれども、「same business, same risk, same rules」というこの考え方自体には非常に賛成なんですが、DeFiならではの留意点があるかと言われたときに重要なところが、オープンなプロトコルであるというふうな部分が問題を非常に難しくしているなというふうに考えております。オープンなプロトコルであるということは、この特定のDeFiについてこの規制を考えたとして、例えば、これが貸金業に相当するものであると考えた場合に、ただ、この外側に、これを組み合わせてさらに接続されたDeFiが存在していたりというところで、非常に複雑なシステムリスクなんかを容易に生み出し得るなというところは、最初のほうで岩下先生もおっしゃっていました、リーマンショックのところの複雑な金融商品というところの問題と同様の問題をさらに加速して生み出し得るなという部分がありますので、この影響をどのようにすれば局所化できるかというところに頭を回しながら、この規制について考えていくこと、それぞれのリスクについて算定していくことが重要かなと思いますので。そうすると、全体のアーキテクチャーといいますか、システム的なところのリスクも含めて、制約をしていくべきなのかなと思っております。

 そう考えていきますと、このDeFiを実際に様々な人が利用できる世界を求めていこうとする場合は、シンプルな仕組みから順々に規制を検討していくこと、ないし、非常にグローバルな仕組みでありますけれども、このDeFiないしパブリックなブロックチェーンといいますか、パーミッションレスなブロックチェーンというものはグローバルな仕組みにはなってくるわけですけれども、その中でも、前々回かな、お話ししたような、我々が規制された環境下で一定独立した規範をつくっていくような考え方というのもあるのかなというふうに思っております。

 また、規制対象として、この中央的なもの、トラストポイントを考えるというところ、こちらも私は賛成でございます。基本的に、分散型とはいえ、DeFiの運用・開発について、中央が存在しないということはほぼないであろうというふうに考えております。というのも、ソフトウエアを開発する、これを安全に運用する、それをきちんと事業として伸ばしていこうというふうに考えたときに、これが自然発生的に生まれることなどというのが起き得るのかというと、私はビットコイン以降そういったことは起きていないと思っておりまして、基本的には、以降の全ての暗号資産に類するものについては、何らかの中央主体があって開発がなされているものだというふうに捉えております。

 これが雨後のタケノコのようにどんどん出ている直近のマーケットの状況もあって、盛り下がりつつあるかもしれませんが、この状況も大抵は、バックには多くのVCが、ベンチャーキャピタルがWeb3の流行のところを追いかけておりまして、このムーブメントが様々なスタートアップの後押しをしまして、それがDeFiや昨今のNFTだ何だといった新しい仕組みというのが押し出されているのかなというふうに思っておりまして、結局、スタートは何らかの企業が関わっている、ないし、出資を受けた個人などの組織が関わっているということが通常であると思います。

 ですので、こういった主体が様々な各国の法整備、これは日本だけではなくて、各国法整備に併せて規制をきちんと対応していくことというのは重要かと思っております。また、このDeFi自体が普及すると経済によいということであれば、これがたとえ大きく分散されたものであったとしても、それをじゃあ各国規制にきちんと合致した形で運用されるようにスポンサーとしてサポートしていくような取組というのが、例えば、暗号資産取引所といったような主体から行われるというのが普及を考えた上でも重要なのかなというふうに思っております。

 また、規制を考える上では、もう一つ、出入口としての暗号資産取引所とか、ステーブルコインの規制がきちんとワークしていることが重要なのかなと思っております。こちらの出入口のところできちんと規制に合致しないものに対するアクションを取れるかどうかというところも1つ立派な検討事項なのかなと思っております。

 最後、3つ目になりますが、その他留意点というところで、私は既存金融との接続というところが重要かと思っております。DeFiはDeFi、トラディショナルな金融はトラディショナルな金融でというふうに分けて考えるのではなくて、既存の金融がここに接続されていくとしたらどのような仕組みなり得るのかというところを考えていく、そのための実験場的な意味合いも非常に大きいと思っております。ただ、実験として様々な方の資産を預かるというのは、それは業としてどうなんだというところも当然ありますので、これは影響をどれだけ最小化できるかというところが、繰り返しになりますけれども重要と思っておりまして、ということは、いきなり全ての投資家が扱える、パブリックな、公募的な商品として扱えるというよりも、これがまずは特定投資家等のリテラシーを十分に保有している方にとってのサービスであって、その中で、一定の金額規模の中で実験されているというような仕組み等でサンドボックスがつくられていくというところがあると、ここで実際に実験が様々生まれていって、そこから既存金融にフィードバックできるものもどんどん出てくるのかなと思っております。

 例えば、STOというものも出ておりますけれども、既存証券の流動性をより高めようというときに、我々が法との解釈の隙間でどういうふうに考えていくべきなのかを様々検証することができるのかなと思っておりますので、そうした既存金融との接続というところも含めてDeFiというものを見ていき、既存金融側も含めた規制の在り方の見直しというところも当然あってしかるべきタイミングなのかなというふうに考えております。

 長くなりましたが、私からは以上となります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、井上さん、どうぞお願いいたします。

【井上メンバー】
 ありがとうございます。井上です。

 まず、先ほどから話題になっている委託調査報告書ですけれども、申し訳ございません、私これ、中身をちゃんと読んでおりませんので、今、何人かの委員から言及されましたから、ぜひこれはきちんと拝読して、次回からの議論に参加したいと思っております。そういう前提で、本日の御説明を受けて、資料に沿ってコメントを申し上げたいと思います。

 今まで出たご発言と同じことを別の言い方で述べるにとどまるのかもしれませんけれども、最初の点については、私も同じビジネス、同じリスクに同じルールというのは、そのとおりだと思っておりますけれども、問題は、同じ機能を提供する同じビジネスだけれども、リスクが異なることが往々にしてあるということが重要なのかなと思います。

 つまり、提供される機能としては同じだけれども、法律構成とか、各プレーヤーの役割あるいは権利義務関係とかが異なることによって、リスクが異なる。とりわけ、特定の当事者が破綻した場合、あるいはプロジェクトが破綻した場合のインパクトが、法律的な意味において異なり得ることに留意する必要があると思います。

 その点で、坂先生もおっしゃいましたけれども、抽象的ではなく、より具体的に問題を検討する必要がこの分野においてはとりわけ重要ではないかと考えております。恐らく、その1つの表れがこの2番目の「トラストポイント」というところにも出てきているのかなと思います。何らかのトラストポイントがあるというのは御説明からも分かりますし、普通に考えれば恐らくそうなんだろうなと推測できるわけですけれども、ただ、そのトラスポイントが幾つあるか、あるいは、それぞれが果たしている機能がどうなのか、あるいは、その人たちが負っている責任あるいは役割がどうなのかということが、必ずしも画一、均一ではないとすると、規制の仕方というのは非常に難しい。

 例えば、従来型の金融において、当事者が財産保全規制を課されているからといって、その従来型の金融と同じ機能を提供しているDeFiにおいて、トラストポイントに全く同じ財産保全規制を課してうまくいくかといえば、恐らくそんなことはないわけで、その前提として、トラスポイントに、例えば、利用者に対する民事的な責任があるのかが問題になります。単なる設計者とか、あるいは、何らかの機能を果たすかもしれないけれども、しかし、利用者との関係で直接権利義務には立たないというタイプのトラストポイントがあるときに、そこが何らの民事的責任を負わないとすると、そこに財産保全規制を課しても恐らくうまくいかないので、そういった民事的な法律関係もセットで考える必要があるかなと思います。

 あるいは、代替的な方法として、トラストポイントに説明義務を負わせて、その説明義務違反というロジックを媒介にして責任を負わせることも考えられるかもしれませんが、いずれにしても、繰り返しになりますけれども、具体的な問題を検討して規制の実効性を考えないといけないというところが、今回の問題の特徴かなと思いました。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、野田さん、どうぞお願いいたします。

【野田メンバー】
 野田です。よろしくお願いします。

 私も資料2に沿って説明させていただきます。まず、「same business, same risk, same rules」については、松尾先生がおっしゃったのと同じような意見を持っていまして、本当にsame businessでsame riskかは微妙というか、かなり多くのDeFiのサービスで、構造及び目的に関して少しずつ既存の金融機関が提供するものと異なる部分があると思います。単純に今までの規制をそのまま使うと不公平である可能性もありますし、非効率である、つまり規制に実効性がないという可能性もあるので、「既存のサービスとどのDeFiのサービスが似ているからこういう規制をかける」という方針で政策を設計していくのは、ちょっと危険なんじゃないかと思っております。

 こういう状況のときに、どう規制のつくり方を考えていくべきかという一般論の話をすると、既存のサービスに対してかけられている規制、これがどういう目的を達成するためにつくられているのか、それを踏まえて、達成したい目的から導入すべき制度が何なのかを逆算するという形で制度が設計されるべきではないでしょうか。

 こういうふうに考えていかないと、今までの類型に当てはまらないようなタイプのサービス、いろいろDeFiでは登場しておりますが、これらに対して良い制度を検討できないと思います。慣習というか、今までの経験に沿い、似たような状況を見つけてきて、似たような規制を当てはめていくということをやっていくと、結果としては、あまり有効ではなく、不便であるだけ、そういう規制の枠組みが出来上がってしまう恐れがあります。しっかり、何をやりたいから規制を入れるのか、技術的にどういう課題を抱えていて、規制を入れることによってどういう状態を達成したいのかということをしっかり考えていくことが大事になるのではないでしょうか。

 それ以外の部分についての議論ですが、DeFiといえども、実はすごく中央集権的な部分があるサービスは色々あるというのは重要なポイントだと思います。そういうサービスの中には、中央集権的な部分を活用して、管理者のような人たちが裏でこっそりサービスの形を勝手に変えたり、ゆがめたり、利用者に損害をもたらしたりすることができるものもある。これらのサービスについては、DeFiだから、コードが読めるからユーザーは安心できるというふうな立てつけすら成り立たなくなっていますので、これには規制を入れなければモラルハザードの危険が発生します。なので、こういう形で集権的な役割を果たすプレーヤーがいるDeFiサービスについては、従来の金融サービスのように規制を入れるのは自然だと私は考えております。

 私からは以上です。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、森下さん、どうぞお願いいたします。

【森下メンバー】
 ありがとうございます。資料2に沿ってお話をしたいと思います。

 まず、1点目ですけれども、同じ規制を適用することということについては、基本的にはそのとおりだと思いますけれども、既に何人かの先生が御指摘されていますように、こういったようなものについて、既存のサービスにはない特有のリスクがあるのであれば、異なる規制の適用も必要ということが言えるのではないかと思います。

 こういったDeFiのサービスが本当に限定的な一部の人の集まりのサークルの中にとどまっているのであれば、そういった限定性ということを理由に、特段の規制の対象としないというか、ちょっと規制を低くするということはあるかもしれませんけれども、広く一般の人が参加できるようになる、あるいは、社会に対する影響が大きくなるということになると、やはり一般の人たちの信頼を守るというため、あるいは、社会の秩序を守るための規制はやむを得ないと思いますし、繰り返しなりますけれども、そのときに特有のリスクがあるのであれば、プラスアルファの規制をかけていくということを考えるべきだと思います。

 2点目なのですけれども、規制の名宛人について、中央集権的な要素、あるいはトラストポイントというふうな言い方かもしれませんけれども、そういったものがあったときに、それを規制対象とすること自体は否定するものではありませんけれども、先ほどの野田先生の御意見に共通するところがあると思いますが、規制の内容に応じて誰をどのように規制するかということを改めてよく考えることが必要なのではないかと思います。

 例えば、中央集権的な役割を果たすプレーヤーがいたとしても、その人にできないことを命じたとしても、結局、規制の実効性がなくなってしまうということもあると思います。この点に関しては、文献というか論文などにおいても、例えば、そういった従来の金融機関や仲介者がいないような場合において、ほかに誰が代替的な規制の名宛人なるのかというようなことを研究しているようなものもあって、そこでは、例えばインターネットプロバイダーですとか、プラットフォーマーとか、あるいは機械のメーカーですとか、場合によっては最終的なユーザーとか、いろいろな人が規制の名宛人になり得るのではないかというようなことが検討はされています。

 なかなか決定的なものというのはないのかもしれませんけれども、従来のような中央集権的なプレーヤーがいないという中で、どのように規制を実効的にしていくかという際に、特定のトラストポイント単体に規制を引き受けてもらうということでなくても、規制によって実現したいことに応じて多少分散させる、場合によっては、最終的なユーザーを規制の対象とするというようなことも1つ選択肢として、柔軟に考えていく必要があるのではないのかなと思っています。

 あとは、規制のエンフォースメントを確保するという観点からは、金融システムにとって重要な取引との関係では、コンプライアンスを、規制を遵守できるような仕組みがない、あるいは、そういった規制を遵守できるような人がいないというようなシステムについては、サービスの提供自体を違法とするというのも考えられるべきだと思います。要は、コンプライアンスする能力がないような仕組みはそもそも行ってはならない。利用してはならないというか、日本の目から見て違法とするというようなことも、現実的な対応としては考えられるのではないのかと思います。

 国境を越えるサービスの提供ということが問題になると思いますけれども、拠点があるかないかには関わらず、日本において一定の利用者がいて規制の必要性があるのであれば、それを日本法の適用対象とするということ自体に、特段に、国際法あるいは国際的な法の適用ということから考えて問題があるということはないと思いますし、それが複数の国でサービスを提供する結果、特定のサービスに対して複数の国の規制が重畳的にかかるというのは一般的に発生していることですので、日本の目から見て必要であれば、国内に拠点がない人というようなサービスに対して日本法を適用していくということには何の問題もないと考えております。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、栗田さん、どうぞお願いいたします。

【栗田メンバー】
 よろしくお願いいたします。私はシステム開発の立場からお話をさせていただきます。

 頂いた資料1の4ページ目の右側に、伝統的な金融との相違点ということで、オープンであることという項目があります。DeFiはオープンソースの技術を採用し、技術的な専門知識を有する者なら誰でもソースコードを読むことが可能だと書いてありますが、揚げ足取りではないのですが、これは現実にはこの通りではないこともあるのだろうと思います。例えば、オープンソースのコードを一部は採用しているのでしょうが、システムの全てのソースコードがオープンソースのものに由来するものではないのだろうと思います。ですから、何らかの、オープンではない、クローズドな秘密のコードも含まれているというのが現実だと思います。

 それから、先ほど松尾先生がおっしゃっていましたけれども、実際には、ソフトウエアの運用には人が関係をしてきますので、たとえシステム全体がオープンソースで構成されていたとしても、ブラックボックスである人の脳が運用に関わってくるということになると、安全だと言えるオープンソース技術を採用していたとしても、運用も含めて実際的にすべてのアルゴリズムがオープンだということは言えないと思います。

 それから、技術的な専門知識を有する者は誰でもソースコード読むことが可能だというのは、それはそのとおりなのですけれども、現実には技術的な専門知識だけではなくて、その特定の領域における専門知識もありませんと、ソースコードを深く読んで理解をする、それから、問題ないということを確認・追認するということは難しいので、技術的な専門家がいればよいということではないと思います。

 このようなことも踏まえて、昨今のシステム開発の方法についてなのですが、幾つか潮流がありまして、1つは、前回もお話ししましたけれども、素早い開発です。アジャイル開発と言われますけれども、これを採用していくということがあります。長い期間をかけて、計画を立てて、作って、リリースをしてということ、1年とか2年とか時間をかけて行っていくのではなくて、2週間とか1か月とかそういった短い期間のサイクルでソフトウエア更新していくというやり方になります。

 それから、そういった中で、利用者からの、市場からのフィードバックを素早く受け取るということも含めて、開発と運用の一体化ということもあります。これはDevOpsと言われますけれども、ここで人が運用という形で関わってきますので、ソフトウエアが単独で機能するのではなくて、人とソフトウエアが、これは従来からそうなのですけれども、一体となって動いていくということで、ソフトウエアだけを見ることはできないということになります。

 それから、これも新しい話ではないのですけれども、相対的に小さいものを組み合わせて大きなシステムをつくっていくということも、昨今盛んに行われています。その中で、部品としてオープンソースなものもありまして、それをそのまま使う、あるいは、モディファイをして使うというようなことがなされています。そういった素早い開発をするとか、それから、開発と運用を一体化するとか、小さなものを組み合わせるというのが昨今の流れの1つになっています。これらは、先ほど申し上げましたが、別に昔から行われていることではあります。

 このときに1つ課題としてあるのが、創発特性という考え方です。システム開発をするときに、どんな問題が起こるのかということをあらかじめ考えておく必要があるのですけれども、システムを還元論的に部品の粒度で見て、それぞれの部品にはこんな特性があるので、それを組み合わせたシステム全体にはこんなことが特性としてあるだろうということを言えないのではないだろうかという話です。これも新しい話ではないのですけれども、創発特性とかエマージェントプロパティと言われますが、全体として見たときにどんなことが起こるのかということが部品だけを見ても分からないということで、全体として組み合わさって初めて分かる何らかのリスク、インシデント、あるいは良いことがあるかもしれないという話です。

 そういった創発特性みたいなものも見ながら、それから、昨今の新しい仕事の開発のやり方みたいなものも見ながら、先ほど松尾先生がアーキテクチャーという話をしていらっしゃいましたけれども、アーキテクチャーも含めて見ていく必要があるのだと思います。研究結果報告書にも、これまで起きたインシデントですとか、あるいは、リスクについての一覧がありましたけれども、そういったものを見ながら、個別の要素を見て類推できるリスクなのか、あるいはインシデントなのか、あるいは、システムとして組み上げて実際に運用してみないと分からないような類いの創発特性に類するようなものがあったのかなかったのかということについて、我々は研究をして、その結果、今後、さまざまな開発が、いろいろな要素が組み合わせることによってダイナミックに行われていく可能性があるわけですけれども、その1つ1つについて、どのように対応していくのかということについて考えていく必要があるのではないかと考えます。

 以上になります。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、横関さん、どうぞお願いいたします。

【横関メンバー】
 横関です。本日は、資料3を含め、丁寧な説明ありがとうございました。

 資料2の番号に従いますと、(1)(2)だけについてコメントいたします。(1)は基本理念としては賛成です。同じものには同じ規制ということでいいかと思いますけれども、分散型の場合は、伝統的な金融サービスと比べるとまだまだ成熟度が足りないシステムだというところを考えますと、同じ規制のやり方を今そのままかけるのではなく、理念として同じでも、少しやり方の異なる方法が必要ではないかと思っています。

 (2)については、移行期間といいますか、成熟度が上がるまでは、ある程度、中央集権的な仕組みで管理するというのは必要かなと考えています。そのためにも規制しやすい、例えば、システムのストラクチャーだけをまず許容しながら、実証の場も含めて提供していくというのが重要だと思っています。規制しながらも技術を広めていく場が実験的に必要だということです。システムの安全性などを実証、検証していきながら勉強していく場というのが重要かなと思います。

 それと同時に、規制する側も人を育てることが必要になります。その意味でも、そういった実証研究の場で仕組みを人も含めてつくっていくというやり方が必要かなと思いますので、従来どおりの金融との対比というような意味ではなく、新たなシステム開発というような観点から規制も考えていく必要があると思っています。

 後の議題もありますので、ちょっと手短ですが、以上になります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、佐古さん、どうぞお願いいたします。

【佐古メンバー】
 発言の機会をありがとうございます。もういろいろな意見が出ているところで、私からあまり付け加えることはないかと思うのですけれども、今回の資料3で御紹介いただいた内容を作成するに当たって、私も少しお手伝いさせていただいたので、その感想も含めてお話しできればと思っております。

 そのとき調査を一緒にしながら思ったことは、このDeFiに関して、本当に人間の業といいますか、もうけようとか、だまそうとか、そういう意図にまみれるところではなくて、社会にどういう価値をもたらすシステムなのかというのをちゃんと真摯に考えたサービスがこれからは出てきてほしいなというふうに思っております。

 牛田さんからも御紹介がありましたけれども、例えば、ガバナンストークンと一言で言っても、裏にあるメカニズムは様々だということも今回私は学びましたし、ガバナンストークンとか自律分散というきれいな、ぴかぴかの言葉にだまされて、裏は人が手動で、投票結果に基づいたプログラムをデプロイするような地道なオペレーションもあったりとか、本当に言葉でだまされないようにしたいなと思いました。

 松尾先生がおっしゃられましたけれども、一体どうやって動いているのか、どういうアーキテクチャーになっているのかというのを傍目から見てわかる人材が切実に必要だと思っていまして、そういう人材をたくさん育てていかなきゃいけないんだなと思っております。

 トラストポイントも、今回、牛田さんはわかりやすく書いていただきましたけれども、実は、あれほどきれいにまとめられなくて、連続的にトラストポイントがあって、ソースコードで言うと、どの1行も変わっても動作が変わってしまうので、しっかり読み解く人材というのが必要だなというふうに思っています。

 情報セキュリティー関連も、同じように今までいろいろな事件や事故があって、それで私たちは学んでいくんですけれども、この分野に関しても、今まで起こった事件や事故を糧としながら、ベストプラクティスをちゃんと積み上げていって、それを標準に搭載して、次の人たちが同じ誤りをしないようなメカニズムも育てていく必要があるかなと思っております。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 ちょっと私も一言だけ感想を申し述べたいと思います。それは取引のプロセスの自動化というか、自律化なのですけれども、そういうことになりますと、プログラムとかコードの健全性ということを担保する仕組みというのが要求されると思います。これは言葉を換えて言えば、松尾先生や栗田さんがおっしゃった人への着目、人間の行動ということで、誰に対してそういうことを求めるかということだと思いますけれども、そういう課題が非常にあるように感じました。

 すみません。今日は後半もまだこれからありますので、前半はこの辺りとさせていただきまして、後半のテーマに移らせていただきます。事務局から御説明をお願いいたします。

【端本信用制度参事官】
 それでは、資料1に戻りまして、御説明させていただきたいと思います。

 資料1の9ページでございます。前回も御議論いただきました、いわゆるステーブルコインですが、左側、①とあります、デジタルマネー類似型、それと、②それ以外、右側ということでございます。今回御議論いただきたいのは、前回と同様、この左側、いわゆるデジタルマネー類似型。法定通貨の価値と連動した価格で発行され、発行価格と同額で償還を約するもの、デジタルマネーとしての規律が適用されるステーブルコインについてということで、御議論いただきたいということでございます。

 その下を見ていただきますと、発行者、利用者からステーブルコインの代わり金として資金を預かり、保全し、償還請求があったときに償還するという機能を担う発行者につきましては、銀行、資金移動業者、信託会社ということが原則となっております。

 次のページに行っていただけますでしょうか。その趣旨ということでございますけれども、まず、1つ目のパラ、これは昨年の金融審議会資金決済ワーキング・グループ報告書の抜粋でございます。まず、1つ目のパラグラフでございます。2行目の後半辺りからですけれども、「この点に関しては」というところで、「発行価格と同額での償還と約している電子的支払い手段の性格等を踏まえると、発行者の破綻時等に利用者資産が適切に保護され、実務において利用者が円滑に償還を受けられることが重要となる。この点について、FSBの勧告においても、利用者の償還請求権の法的強制力等やプロセスに関する法的明確性を確保することを求めている」ということでございます。

 こうした観点から、現時点におきましては、基本的に、国内において発行者の拠点や資産保全等がなされていることを求める必要があるということで、銀行、資金移動業者、信託会社である必要があるという整理でございます。それ以外の方策につきましては、引き続き検討することが考えられるということとされております。

 続きまして、11ページです。その他の論点といたしまして、資金決済ワーキング・グループの報告書から抜粋させていただきます。まず、暗号資産型のステーブルコインをめぐる課題といたしまして、その2つ目の丸の一番最後の線が引いてあるところでございます。暗号資産型のステーブルコイン。これは仲介者に対する規制、仲介者を通じた規制ということで対応するということでございますけれども、この暗号資産型のステーブルコインに対する発行者規制の要否等について、引き続き検討することが考えられるとされております。

 それから、その下でございます。金融システムへの影響等ということで、1つ目の丸の1行目でございます。デジタル化が進展する下での預金保険の在り方についても論点となり得るということでございます。

 それから、その下、デジタルマネーの発行者に関連するその他の論点ということで、1つ目の丸のところにございます。いわゆるナローバンクの議論が幅広い論点を含み得るがということで、「ア」と「イ」ということで、銀行型、非銀行型ということで整理されております。その下のところにありますとおり、銀行型につきましては、銀行規制監督をどう考えるか等の論点がある。非銀行型につきましては、兼業規制、財務規制、あるいは発行者破綻時のセーフティーネットの必要性等についても検討すべきということが示されているということでございます。

 以上を踏まえまして、資料2、本日討議いただきたい事項に戻ってまいります。

 まず、(1)でございます。海外で発行された電子決済手段の日本国内における取扱いということで、先ほど見ていただきました左側のデジタルマネー類似型のステーブルコイン、原則として国内の発行ということでございますけれども、それと同水準の利用者保護等が確保されると評価できる方策ということで、3つ目のパラグラフで、1つの例示ということでございますけれども、こうした仕組みとして、前回議論していただきました①、②、③ということで、権利移転に係る明確なルール、AML/CFTの観点からの要請に確実に応えられる、それから、事後的な対応を余地がある。

 こうしたものに加えまして、例えば、現行の資金移動業者と同様に、移転上限を設けるといったリスク軽減措置を講じるとともに、発行者が破綻した場合、あるいは電子決済手段等の価格が下落した場合には、国内で登録を受けています仲介者がその電子決済手段、いわゆるステーブルコインを額面で買い戻す旨を約し、その確実な履行に必要な資金を保全していること等を基本に考えられるかどうかということが論点1でございます。

 それから、(2)といたしまして、先ほど御紹介いたしました、デジタルマネー全般、広い意味でのデジタルマネー、電子マネーも含めてということでございますけれども、今後議論すべき論点があれば、幅広く御意見いただければということでございます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、今、事務局で御説明していただいたことに関する御意見として、まず、日本暗号資産取引業協会の千野様から御発言をお願いいたします。よろしくお願いいたします。

【日本暗号資産取引業協会(千野)】
 日本暗号資産取引業協会の千野でございます。本日は発言の機会を頂戴いたしましてありがとうございます。

 今、事務局より御説明があった内容につきまして、弊協会といたしましては、海外で発行された電子決済手段、いわゆるステーブルコインですので、私のお話の最中にはステーブルコインというふうに申し上げますけれども、国内で取り扱うに際して、3つの要件が例示されたというふうに理解しております。1つ目は、移転上限を設けるというお話。2つ目は、発行者が破綻した場合に、事業者が買取りを約する。3つ目は、買取りを確実に履行するために、資産的な基準を設ける。この3つが例示されたというふうに理解をしてございます。

 私どもは暗号資産の業界に従事してございますし、ステーブルコインというのは、海外では暗号資産の一部として広く流通しておるものでございますので、国内の事業者におきまして、一番近いところで活動しているのかなというふうに思っております。

 そうした観点で、今回例示されました3つの要件につきましてコメントを申し上げます。1点目の移転上限の件でございますけれども、こちら、例えば、資金移動業、2種の資金移動業が、1回当たり100万円以下の上限というのがございますけれども、現状、海外でステーブルコインの利用のケースを見てまいりますと、基本的には、いろいろな取引所において担保目的で差し入れたりですとか、決済に利用するということが非常に多くて、100万円というようなものが仮に出てきてしまうと、こういったようなユースケースというのが極めて対応が難しくなってしまうのかなというふうに思っておりまして、非常に利便性が損なわれてしまう懸念があるかなというふうに思ってございます。

 2点目の買取りと3点目の資金保全の件でございますけれども、現状、暗号資産の交換業のプレーヤーを見渡しておりますと、こういった制度が入ってきた場合、体力的なところとかによって、これを満たすことがなかなか難しいというような現状があるのかなというふうに思ってございます。反面、こういったものが入りますと、新規参入が阻害されてしまいまして、基本的には体力、財力のある大手金融機関等の利用に限定されてしまうのかなというふうに思ってございまして、新しいプレーヤーが新しい事業をやっていくというイノベーションの面において、阻害されてしまうのではないかなということで懸念を持ってございます。

 これらの3つの例示されました要件を一律に否定するわけではございませんけれども、海外でのユースケース等を見ておりまして、全くもって日常決済でこういったステーブルコインが利用されているということはないわけでございますので、そこまでのリスク低減を図る必要があるのかというところにつきましては、コメントをさせていただきたいというふうに思ってございます。

 また、アメリカ等におきましては、信託のスキームを使って現地で発行されておるようなものもございまして、こうした信託制度を使って発行されているようなステーブルコインにつきましては、現地の法制におきまして相応の利用者保護が図られているというふうに理解をしてございます。

 こうしたものをそのまま日本に持ってくるという場合において、日本において事業者が過度に負担を行うということにつきましては、果たしてそこまで必要なのかなというところについてコメントをさせていただきたいと思っております。

 これらの3要件が実際規制として入った場合におきましては、恐らく、暗号資産のプレーヤーにつきましては、こういった制度を使って海外の発行分を国内で流通させるというのは、極めて難しくなってくるのかなというような印象を持ってございます。したがいまして、そのほかの手段としましては、これまでの資金決済ワーキング・グループや、本研究会におきましても議論がございましたけれども、国内の発行体として発行する。したがいまして、海外の発行体に、日本において銀行の免許を取る、もしくは提携をする等々の対応ということで発行を目指していくということが考えられると思いますけれども、こうした議論を行う際に、今までの議論におきましては、当該発行体の意見というのがあまり出てこなかったなというような印象を持ってございますので、こうした実際に海外で発行している、特にアメリカの信託法制などを使って発行しているプレーヤーが、実際日本の今検討している枠組みにおいて、発行することができるのかというような点について、きちんとヒアリングをする必要があるのかなというふうに思ってございます。

 最後に、6月7日に閣議決定されました政府の骨太方針2022におきましては、新しい資本主義に向けた改革というところにおきまして、「多極化された仮想空間へ」という箇所がございます。そこで、ブロックチェーン技術を基盤とするNFTやDAOの利用等のWeb3.0の推進に向けた環境整備の検討を進める。さらには、メタバースも含めたコンテンツの利用拡大に向け、2023年通常国会で関連法案の提出を図る。こういったような内容が書かれてございます。

 こちら、前回の研究会が6月6日だったというふうに記憶してございますので、翌日に閣議決定されたということで、比較的新しいお話ではあるかなと思いますけれども、こうした日本の政府の方針にWeb3の促進、またはDAOというような、先ほど議論がいろいろございましたけれども、こういったものも入ったということでございますので、政府としてこういったものを成長に使っていくんだというようなお話があったので、もう少しいろいろなユースケース等々を考えて、こういった方針にきちんと即した形である程度の議論を行う必要があるのかなというふうに思ってございます。

 私からのコメントは以上でございます。ありがとうございました。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、Fintech協会の落合様から御発言をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【Fintech協会(落合)】
 ありがとうございます。そうしましたら、Fintech協会のほうでは資料を準備してございますので、そちらを示しつつ、お話をさせていただければと思います。

 次のスライドをお願いいたします。今回の討議いただきたい事項ということで提示いただいた事項について、協会としてのコメントを述べさせていただきたいと思っております。

 1つ目が、まず、御討議いただきたい事項の(1)の海外発行の電子決済手段の日本国内における取扱いについてです。全般としては、これまでも申し上げてきた内容と同じ部分がございますが、海外でライセンスを取得して発行した電子決済手段については、できる限り、日本でも特殊な仕様変更なしに流通できるような道を検討いただけるとありがたいと思っております。

 この点については、既にこの(1)で、ある種、日本での取引業者を、一定の担保を設けることによって、できる限りそのような形を図ろう、できるようにしようということで御整理いただいているのが金融庁の方向性ではあると思っております。基本的な方向性については、こういった点も御考慮いただいているというふうに思っております。一方で、特に権利移転の点につきましては、必ずしも、日本の民法ですとか、産業競争力強化法における要件充足を前提とすると、海外の事業者においては、別段の対応が日本において必要になるという可能性がございます。実際に預金だけではなくて、資金移動業者が発行する電子マネーについても、日本の実務上では、記録された残高の消滅と発生により移転が行われており、特段の対抗要件の具備を必要とする形で行われていないころがあるかと思っております。そういった現状での取引の状況なども踏まえて、御検討いただければと思っております。

 2つ目のポツのところが、ユースケースとしては、暗号資産にかかる、ステーブルコインのユースケースとして、暗号資産取引だけではなく、NFTの決済ですとか、Web3に関係するスタートアップやプロジェクトの投資資金として用いられることがあると認識しております。こういったものをどう考えるかも念頭に置いて御検討いただければと思っております。

 3つ目のポツの部分ですが、海外の発行者が日本に拠点を置かずに発行するような場合、日本での適切なライセンスを有する取引業者が買取り、保全等の対応を行う場合には、追加での拠点設置は求めることなく、発行者と取引業者が協力して、必要な利用者保護を行い、取引が進められるという整理になるということでしたら、利用者保護と、外国での発行者の負担のバランスを取った合理的なものと考えております。

 渡航者が海外で銀行や信託会社等のライセンスを保有して、適格な取引業者を連携して適切に利用者保護を図れる場合等については、過度な移転上限を設定しないようにしていただきたいと考えております。この部分は、必要な補償等であったり担保等についても行えるような場合とはなると思いますが、そういった必要な対応ができる場合については、移転条件によるリスク低減を必須の手段としなくてもいいのではないかと考えております。

 また、続きまして、下の2つポツですけれども、AML/CFTについては、暗号資産における整理も参照しつつお願いしたいと考えております。パーミッションレスというのが、意義がある整理なのかどうかも争いはあると思いますし、DeFi自体も、前半の部分で御議論いただいたように、実際には中央管理者がいる場合が大半ではないことがあると思いますので、どこまでどういうものを指すのかもあろうかとは思いますが、パーミッションレスと称される類のステーブルコインやP2Pの取引が一律に禁止はされない形で整理をいただけるように御検討いただければと思っております。

 次のスライドをお願いいたします。もう一つの討議いただきたい事項の(2)のほうでして、ステーブルコイン行為に限らないデジタルマネー一般についての意見ということになります。この部分につきましては、移転上限ですとか滞留する規制がかかっている状況を踏まえますと、海外発行の場合に限らず、国内発行の場合も含めて、資金移動業者で幅広いユースケースに応じたステーブルコイン発行というのは、容易ではないと考えております。

 そういった意味では、資金移動業者の在り方について、ステーブルコインに限らずデジタルマネーについての整理が必要なのではないかということが示唆されたような部分もあると受け止めております。

 ここの部分については、ステーブルコイン特有の法制の問題だけでは解決できない部分でもあるということもありますので、ステーブルコインに関して、どういう形で政府令を整備されるのかという議論だけに限らず、全般的な課題について議論をしていただくことが必要なのではないかという御示唆があるような論点設定ではあるかと思いますが、そういった今回のステーブルコインに限らずの議論を整理していただくということは重要だと思っています。

 最後に、全体として、本日の討議いただきたい事項の1のほうでもありました、同じビジネスには同じリスクをということだと思っていまして、必要なリスクについては必要な対応であったり、それは規制の場合もあれば、補償により整備をするという場合もあると思います。この部分をしっかり行っていっていただいた上で、進められるような形にするということで、どちらかというと、暗号資産の取引だけに限らず、日常生活にも使われる可能性も含めて方向整備をされるということでございますので、一般的な資金移動業であったり、銀行・信託会社での規制の内容を踏まえつつ、責任のあるような形でイノベーションが進められるような構成が整備されることを期待してございます。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、以上の御説明や御意見を踏まえて、メンバーの皆様方に討議をお願いしたいと思います。本日、残り時間は若干限られるかもしれませんけれども、どなたからでも、御発言いただける方は、先ほどと同じようにチャットに全員宛てで教えていただければと思います。

 岩下さん、どうぞよろしくお願いします。

【岩下メンバー】
 クイックにですね。JVCEAさんとFintech協会さんに質問があります。ステーブルコインを前回の議論よりもより広く認めてほしい、特に、海外で暗号資産取引等に使われているようなもので、どこかの国が、マルタとかイギリス領マン島とか太平洋諸国とかが許可しているものもたしかあったと思いますけれども、そういうものだったらいいじゃないかと、100万円の枠を超えて使わせて欲しいということで、私にはちょっと意外な発言に聞こえました。質問は、前回も話題になったUST、あるいは、最近いろいろと問題になっているUSDD、あるいは、ずっと以前から問題になっているUSDT、これらのものについて、そういった扱いを求められるんですか。逆に言うと、今現在発行されているもの、例えばUSDCとか、何となく規制に親和的っぽいステーブルコインもありますが、一体何についてそういう要件緩和を求められているんですか。

 今、世の中で存在している10数種類のドルペッグのステーブルコインの中で、おっしゃるような条件を満たすものは私は存在しないと思っていますが、どこかに存在するという認識なんですかということをお二人にお聞きしたいです。

 以上です。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 そうしましたら、どうしましょうか。暗号資産取引業協会さん、Fintech協会さん、どちらからでも結構ですけれども。千野さんからでよろしゅうございますか。

【日本暗号資産取引業協会(千野)】
 じゃあ、千野から。岩下先生。私どもは別に、どこかの国が発行すれば、それをすべからく取り扱いたいというような意向ではございませんで、きちんとした法的な枠組み、これまで議論されていたいろいろな要件があろうかと思いますけれども、資産保全の件も含めまして、そうしたものが日本の法制度に近しいような状況下において発行されているものであれば、検討の俎上にのせてはどうかというような趣旨で申し上げております。USDT等いろいろな疑惑があることも承知しておりまして、そうしたものが国内において必ずしも認められるべきというような立場にもございません。

 したがって、極めて法的な安定性等々をきちんと検討した上で、何がフィットするのかという議論をまずはさせていただきたいというような趣旨で申し上げているところでございます。

 以上でございます。

【神田座長】
 ありがとうございます。Fintech協会、落合さん、いかがでしょうか。

【Fintech協会(落合)】
 ありがとうございます。この部分については、今回も、DeFiの報告書の議論を拝見いたしまして、非常にまとまったレポートだったと思います。中を見てみるとこういうことだったということは、まさしくおっしゃるとおりかと思いますし、現実には、しっかりとした取引業者を介して取引を行うのか、いずれにしても、仕組みが適切なのかどうか、適切な補償ができるのかどうか、こういったことが整備されて進んでいくものだと思います。現時点でこれは確実に担保できるであろうものについては、我々として、これは必ずと申し上げるものがあるということではないと考えてございます。

 そういった意味では、今のこの時点で存在するかどうかということに関わらず、将来的に、ステーブルコインの部分に限らず、ITに関する部分はどうしても海外のほうで先行して、その後、日本において広まるということが一般的に多くございます。そういった場合を念頭において、海外でも利用されて、かつ、適切な仕組みがあるものがある場合には、日本において適切なタイミングで取扱いができるように、そのような視点を考慮しながら制度整備をいただきたいということではございます。この時点で特段、どれがと申し上げるようなものではなく、金融庁のほうで御検討いただいているのも、その部分も考慮していただいているのではないかとも思いますが、気持ち法定通貨よりも厳しめに様々な法制度整備をされるということではあろうと思いますし、そういった前提の中とは思いますが、できる範囲で、海外からの将来的なものも含めて、取扱いについて御検討いただきたいということでございます。

 以上でございます。

【神田座長】
 ありがとうございます。岩下さん、いかがでしょうか。さらに。

【岩下メンバー】
 了解しました。現時点で想定しているものはないという御説明だったと思いますので、そういう意見であれば、そういう意見として承ります。了解しました。

【神田座長】
 ありがとうございました。

 それでは、次に、坂さん、どうぞお願いいたします。

【坂メンバー】
 ありがとうございました。今のお話をお聞きして、海外の発行のものを認めるということは、やや時期尚早ではないかなという印象もあるんですけれども、若干意見を述べさせていただければと思います。

 海外発行の電子決済手段については、外貨建のもののほか、円建のものも念頭に置く必要があると考えております。円建のものについては、例えば、海外の子会社で発行して、日本で流通を図るようなものですとか、あるいは、海外発行の円建のものの海外での流通、あるいは、国籍が分からない形、分かりにくい形での流通が図られる可能性というのも念頭に置く必要があると思います。

 これらを少し念頭に置きながら、資金決済ワーキングの報告も参照しつつ、5点述べたいと思います。

 まず、1点目ですけれども、電子決済手段では、預金、未達債務、信託受益権を用いた仕組みが議論されてきました。これらはいずれも政府預金も含めた預金を裏づけとするものでありまして、既存の金融システムの枠組みの中で利用者保護を図るものと認識しております。海外発行だからといって、これらよりも緩やかなものが発行されることは適切でないと思います。

 利用者保護と、それから国家の通貨発行権という視点もあると思いますけれども、こうした観点からも、海外発行の場合も、発行レベルにおいて、議論されてきた枠組みと同水準の内容であることが必要だと思います。

 2点目ですけれども、我が国で海外発行の電子決済手段の流通を認める場合、国内拠点、あるいは国内での資産保全というのは不可欠だと思います。利用者に海外の発行者への連絡ですとか、あるいは、海外の破綻手続への対応を強いることは利用者の大きな負担となります。

 3点目ですけれども、これらを前提として海外発行のものを認める場合に、移転上限の設定と、それから発行者破綻時における仲介者の買取り、資金保全を求めることは、これは1つの在り方であるかと思っております。移転上限の設定につきましては、現行法の枠組みでは、資金移動業とのバランスの観点から、100万円を超える額というのは難しいのではないかと思いますし、100万円以下のどこかの水準で検討するということなのではないかと受け止めております。

 4点目ですけれども、仲介者の資金保全については、利用者残高の全額が仲介者のもとで保全される必要があろうかと思います。保全の措置につきましては、できれば現行の資金移動業よりも確実性と利用者利便が高いものが本来は望まれるところかと思いますけれども、この点を少し留意いただければと思います。

 5点ですけれども、1点目の点とも関係しますが、暗号資産型ステーブルコインというのは、利用者保護、それから通貨発行権等の観点から、電子決済手段の規制枠組みの中で、これは取扱いを認めるべきではないと現段階では考えております。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、松尾さん、どうぞお願いいたします。

【松尾メンバー】
 また発言の機会をいただき、ありがとうございます。私からは1つコメントというか、疑問というか、今後の研究課題になるのかなと思うことを1つ、懸念を申し上げます。

 事務局資料に書かれていたやり方、特に利用者保護において、破綻した場合の処理に対して、例えば、確実な履行に必要な資金を保全していること等を基本とする。これはそれしか手がないだろうと思う一方で、私が第2回のときにプレゼンしたときに、グローバル、インターナショナル、ナショナルという話を差し上げましたけれども、まさにそこの論点にかかってくると思うんですが、例えば、ステーブルコインがデペグしましたと。みんないわゆる取付け騒ぎのような状況になりますといったときに、日本国民の持っている海外発行のステーブルコインが、ほかの国よりも優先されて保全されるということが、どういうふうにやって担保するのか、結構難しいのではないかという気もするわけです。結局、ほかの国の規制当局なり政府は、その国の国民のために保全しようと動くかもしれませんし、これはいわゆるグローバルな技術とインターナショナルなガバナンスの違いになってきて、ここに相当のコストな調停なりがかかるんだろうというふうにも予想するわけです。

 ということで、こういう状態をつくるのは極めて理想的な上で、それをどうするのかというところをある種、ステーブルコインを扱いたいという事業者と規制当局の間で一緒に考え必要があるんじゃないかということで、これは今答えがあるわけではなくて、これが研究課題なんだろうということで申し上げさせていただきます。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では、次に、森下さん、どうぞお願いいたします。

【森下メンバー】
 ありがとうございます。先ほど落合先生から、海外でライセンスを得た主体については、日本でそういったライセンスをある意味承認するような形の方向性というのは考えられないかというような話があったと思います。海外でのライセンスについて、日本と同等の規制が海外でなされているのであれば、そういった規制を相互承認するですとか、あるいは、代替的なコンプライアンスということを認めるということは金融法の領域でもなされていることですので、そういったようなアプローチというものは全くないということではないのかなというふうに思います。

 ただ、日本でステーブルコインの規制といったときには、発行者が破綻したときに、そのリスクは利用者が取らないというようなことを前提に様々な規制が組み立てられていますので、それと同じことを実現できるような海外の規制というようなものがどれだけあるんだろうかというあたりが1つの問題かなと思います。

 資料でも、破綻したときや価格が下落したときというようなことに、仲介者が買い取るというようなことがあれば認めてもいいのではないかというような考え方が示されていますけれども、その前提にあるのは、発行者の破綻や価格下落といったようなことのリスクというのは利用者が取るのではないんだと、そういったようなものをステーブルコインだと考えるのだというのが日本の考え方だと思いますので、それと同じような考え方に立った規制、それを確保できるようなものがどこまであるかというようなあたりがポイントかなと思います。

 仮にそれが本当に実践されているのであれば、中間事業者が一時的に買い取ったとしても、要は、最終の利用者に代わって一律的に負担はするかもしれませんけれども、最終的には、海外の事業者から回収することができるということになると思いますので、負担が物すごく大きなものになるかというと、そこは少し評価が分かれるところかなと思います。

 あとは、必ず拠点が必要かということですけれども、何かトラブルがあったときに連絡できる窓口が必要だというのはそのとおりだと思いますけれども、もし、仲介者との間で何らかのうまいメカニズム、例えば、送達、その他連絡の代理人のような資格をしっかりとアレンジできるということがあれば、必ず拠点を持たなければいけないというようなことまで求める必要はないと思いますけれども、果たしてそういったような協定をしっかりと組み立てていくことが可能かどうかというようなところのフィージビリティーが問題なのではないかというふうに感じております。

 以上です。
【神田座長】
 どうもありがとうございます。

 それでは、次に、オブザーバーではいらっしゃるんですけれども、預金保険機構の林さん、お願いいたします。ちょっと時間も限られておりますが、チャットをいただいた順番ということで、オブザーバーの皆様方も発言希望がありましたら、適宜入れていただければと思います。林さん、よろしくお願いします。

【預金保険機構(林)】
 ありがとうございます。預金保険機構預金保険部長の林と申します。

 国際預金保険協会による「実効的な預金保険制度のためのコアとなる諸原則」は、FSB、金融安定理事会の主要な国際基準の1つとされていますが、その中で、「預金保険の保護の範囲については上限を設け、大部分の預金者を保護するものの、相当な額、substantial amountの預金を市場規律の下に置くべきである」などとしています。

 デジタルマネーに関する預金保険の在り方等に関しては、そうした点も踏まえつつ、また、諸外国の制度整備の状況なども踏まえながら、我が国において、全額保護の決済用預金として、あるいは、資産保全の方法として決済用預金を用いることで、デジタルマネーの信用リスクを預金保険によりゼロとすることの是非等について、これからも幅広い観点から議論、検討を深めていくことが適切であると考えております。

 以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、松本さん、どうぞお願いします。

【松本メンバー】
 ありがとうございます。再度発言になりますが、私からは別の視点というところで手短にお話しさせていただきますが、ステーブルコイン、海外発行型のものをどうやって取り入れるかのところの議論ですけれども、取り入れるにしろ、しないにしろ、結局、例えば、日本国内で発行されたステーブルコインがDeFiで利用される等ということが起きた場合、これは最終的には、海外発行型ステーブルコインに対しての交換なども当然行われていくだろうと想定されるわけですので、それも踏まえて規制をどのように考えていくか、実質でどのように考えていくか。結局交換されるのであれば、これを受け入れていく方向で考えていくことも1つ必要なのか等々の視点が必要なのかなと思っておりまして、私はここに対して明確に何か意見があるわけではないのですが、この視点についても考えておくことが重要かなと思っておりまして、こちらで手短ですが発言させていただきます。

 以上となります。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 では、次に、井上さん、どうぞお願いします。

【井上メンバー】
 井上です。ありがとうございます。手短に申し上げます。

 今回、先ほどから議論されていますように、海外発行のものについては、まずは移転上限を設ける、それから、2つ目には、仲介者が額面で買い取る、そして、3つ目には、必要な資金を保全するという要件が挙げられておりましたが、これは1つの考え方だろうと思います。

 ただ、額面で買い取る約束をした上で、その履行に必要な資金をどう保全するかによるわけですけれども、そこが、きちんと変動額に応じて、かなりリアルタイムに近い形で保全されるのであれば、移転上限の規制については緩和することもあり得ると思いました。

 この移転上限の在り方と、必要な資金の保全の仕方とは、それなりに連関があるような気がしますので、両者を併せて考える必要があろうかと思います。

 ここについては、先ほど森下先生から、どれぐらい重い負担になるかについて、海外の発行者からきちんと回収できるのであれば、当面は仲介業者が負担しても、最終的には回収できるというお話がありましたが、こういった規制は、その意味で、仲介者が海外のステーブルコインのうち安定的な、あるいは、保全がきちんとされているものを選択して取り扱うインセンティブにもつながると思います。

 以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、日本暗号資産取引業協会の千野さん、どうぞお願いします。

【日本暗号資産取引業協会(千野)】
 手短に。先ほど、岩下先生と弊協会、Fintech協会さんとのやり取りにつきまして、最後、岩下先生のほうから、現状、今例示されている要件を満たすステーブルコインというのは存在しないというようなお話があったと思うんですけれども、私ども、存在しないというよりは、今後、そういった点も含めて、何が該当するのかというのを検討させていただきたいというふうに思っておりますので、その点は明確化させていただきたいと思っております。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、チャットをいただいております順番で、次に、神作さん、どうぞお願いいたします。

【神作メンバー】
 神作でございます。御指名ありがとうございます。

 論点の1について発言させていただきます。既に御指摘がございましたので、簡潔に申し上げたいと思いますけれども、物品等を購入したり、あるいは役務の提供を受けたりする場合において、代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができること。また、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値であること。このような要件を満たす電子決済手段の機能を確保するためには、海外発行のステーブルコインについては、御提案にございますように、電子決済手段等取引業者が電子決済手段を額面で買い取る旨を約するとともに、確実にそれを履行するために資金保全をすることが、電子決済手段の機能を確実にし、決済の確実性、安定性を確保するためには、私は必要になるのではないかと思います。

 それとともに、電子決済手段の機能を確保するだけではなくて、利用者保護という観点からも、電子決済手段等取引業者等には先ほど申し上げたような一定の義務を負っていただくことが必要になると考えております。

 また、電子決済の場合の移転上限の話でございますけれども、この移転上限についても、坂委員からも御発言がございましたが、資金決済法に基づく資金移動業者の規律との平仄が問題となり、ここではまさに同一の機能、リスクに対して同一のルールを適用するという基本的な考え方が当てはまる場面なのではないかと思いますので、移転上限についても、資金決済法の趣旨、目的に照らして、必要なルールを課すことが望ましいように思われます。

 簡単ではございますけれども、以上でございます。

【神田座長】
 どうもありがとうございました。

 それでは、次に、加藤さん、お願いいたします。

【加藤メンバー】
 ありがとうございます。2点コメントいたします。

 1点目は、論点の(1)で挙げられています①から③の規律についてです。これらの規律は、日本独自のものというよりは、これまでの例えばFMI原則や、ステーブルコインに関する国際機関における協議の成果などを踏まえて、①から③をステーブルコインに関する規制は備えているべきだろうというものであると思います。ですから、今後、例えば、アメリカなどでも、①から③に沿って規制がされるということが期待されるのではないかと考えます。

 そういった規制が整備された後に、①から③に沿った規制がされた海外発行の電子決済手段の日本での取扱いを考えることになると思います。

 2点目は、海外で発行された電子決済手段について、発行者に日本の銀行のライセンスを要求しない形で流通を認める条件についてです。ご提案されている電子決済手段等取引業者による額面での買い取り義務について、松尾先生の御発言を伺い、その対象の定め方について慎重な検討が必要であると思いました。買い取り義務の対象範囲を明確に定めることができないと、電子決済手段等取引業者が保全すべき資金の額も不明確になってしまいます。

 補足しますと、例えば、買い取り義務の対象は日本人が日本の電子決済手段等取引業者から買った電子決済手段などに限定されるのか、それとも、例えば、日本人が分散型取引所などから取得してきた電子決済手段等についても及ぶのかなどによって、電子決済手段等取引業者が負うリスクが変わるように思います。

 電子決済手段等取引業者が額面での買い取り義務を負うという規律が設けられた場合、電子決済手段等取引業者はデペグの可能性が低いものを選択すると思います。しかし、何らかの原因でペグが外れるということはあり得ます。そのような可能性が存在することを踏まえると、あえて意図的に市場を混乱させてデペグを発生させ額面以下で電子決済手段を取得し、電子決済手段等取引業者に額面で買い取らせて資金を回収するという動きを助長するような仕組みにならないように、何らかの工夫が必要になると思います。

 私からは以上です。

【神田座長】
 どうもありがとうございます。

 皆様に活発な御議論をしていただいているうちに、あっという間に予定の時間にほぼ近づきつつあります。

 それで、今、野田さんから、チャットをいただいていまして、大変重要な御指摘をいただいていますので、このチャットは何らかの形で事務局で記録していただいて、議事録に載せていただくようにお願いできませんでしょうか。

 今後も、時間の関係でチャットで御意見をという方もいらっしゃるかと思いますので、事務局と御相談して、今後も、チャットを時間中にいただいた方については、できるだけ議事録に何らかの形で残すというのでしょうかね、記載させていただくということを検討したいと思いますので、よろしくお願いいたします。どうも、野田先生、ありがとうございます。

〈野田メンバー チャットによるコメント〉
 野田です。時間がないようなので、チャットで済ませます。松本さんと同じく、CEXの扱いを規制しても他の手段で流通することはありうると感じており、この点については考慮が必要だと考えています。

 法定通貨交換型のステーブルコインの運営は、概念的には難しくなく、適切に資産が管理されることが保証されればよいということ思います。これを保証するにあたり、海外における規制が十分か、日本に拠点がなければこれを達成しえないかについては実務に関する話で、私には知見がないので判断がつきません。

【神田座長】
 それでは、議論も尽きないようでありますけれども、あまりいつも延長するのもよろしくないと思いますので、本日はこの辺りとさせていただきまして、また次回以降に御議論をしていただければと思います。

 言うまでもないことですけれども、追加でお気づきの点がございましたら、別途、事務局までメールその他の形で御連絡いただければ、非常にありがたく存じます。

 本日いただきました御説明、御意見等を踏まえまして、今後、さらにまた御議論を深めていただくということになるかと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

 最後に、事務局から連絡事項等ございましたらお願いいたします。

【端本信用制度参事官】
 次回の日程につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で御連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】
 本日も大変多くの貴重な御指摘をいただき、活発な御議論をいただきまして大変ありがとうございました。

 以上をもちまして、本日の研究会を終了といたします。どうもありがとうございました。

 

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室、市場課(内線3572)

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