「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」(第1回)議事録
-
1.日時:
令和3年7月26日(月)10時00分~12時00分
-
2.場所:
中央合同庁舎第7号館9階 905B会議室
- 【神田座長】
-
皆さん、おはようございます。予定の時間より少し早いようですけれども、御予定の方は皆様方おそろいでございますので、始めさせて頂きたいと思います。
お忙しいところを御参加頂きましてありがとうございます。ただいまからデジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会の第1回目の会合を開催させて頂きます。よろしくお願いいたします。
申し遅れましたけれども、私、議事進行というか座長を務めさせて頂くことになりました学習院大学の神田と申します。よろしくお願いいたします。
そこで、本日は初回の会合でございますので、まず、会議の運営と議事の公開、議事録の取扱いについてお諮りをさせて頂きます。会議ですけれども、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、今後必要に応じてということかと思いますけれども、本日のように、オンライン開催とさせて頂きます。しばらくの間はそんな可能性があるということかと思います。また、皆様方と会議室でお会いできる日が来ることを祈っております。
議事の公開ですけれども、オンライン開催でなくて、物理的にというかリアルで皆様方にお集まり頂く場合には、メディア関係の方々や一般の方々の傍聴ありということにさせて頂きたいと思いますけども、本日のようにオンライン開催の場合には、一般の方々の傍聴はなしとさせて頂きまして、メディア関係の皆様方には金融庁内の別室において傍聴をして頂くこととしたいと考えております。また、どちらの場合であっても、議事録は通常どおり作成の上、後日、金融庁ウェブサイトに掲載させて頂きたいと考えております。
以上は大会の運営、議事の公開及び議事録の取扱いについてですけれども、皆様方、以上のような方針について、御承認頂けませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり) - 【神田座長】
-
ありがとうございます。縦に首を振って頂いている方がたくさん見えますので、御承認頂いたということにさせて頂きます。
それで、後ほど事務局からの説明があると思いますけれども、この研究会ですが、何をするかということですけども、抽象的になりますけど、社会経済全体のデジタル化が進む中で、ブロックチェーン技術の活用を含め、金融のデジタル化が加速しているという状況にあります。それを踏まえて民間のイノベーションを促進しつつ、併せて利用者保護などを適切に確保するという観点から、送金の手段ですとか、証券商品などのデジタル化への対応の在り方等を御検討頂くと、そういうことを目的として設置されたものでございます。皆様方からぜひ活発な御意見、御批判、御提言等を頂きながら、幅広い観点から議論を進めていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、初回でございますので、事務局からメンバーの皆様方の御紹介をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
- 【端本信用制度参事官】
-
信用制度参事官の端本です。よろしくお願いいたします。
メンバーの皆様を御紹介いたします。資料1のメンバー等名簿順に、
岩下直行様、
加藤貴仁様、
神作裕之様、
栗田太郎様、
坂勇一郎様、
佐古和恵様、
野田俊也様、
松尾真一郎様、
松本勇気様、
森下哲朗様、
横関智弘様です。
また、本日は御欠席ですが、井上聡様、翁百合様にもメンバーをお引き受け頂いております。
オブザーバーの皆様につきましては、メンバー等名簿をもって御紹介に代えさせて頂きます。
また、今後議論が具体化していく際には、関係団体の方などに適宜お声がけをし、議論に参加して頂きたいと考えております。以上でございます。
以上でございます。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは、本日の議事に移らせて頂きます。本日は、まず事務局から、この研究会の設置趣旨について説明をして頂きます。続いて、松本メンバーからブロックチェーン技術の概要、あるいはメリット・デメリット、その活用に向けて考慮すべき実務上の課題などについてお話をして頂きます。その後、栗田メンバーから、システムの品質管理において考慮すべき観点から現行システムの特徴や課題についてお話をして頂きます。最後に、全体についてメンバーの皆様から御意見、御質疑を頂きたいと思います。以上のような流れで進めさせて頂きます。
それではまず、最初に事務局からの説明をお願いいたします。
- 【端本信用制度参事官】
-
資料2に沿って御説明いたします。
まず1ページ、本研究会設置の趣旨です。先ほど神田座長から御紹介ございました、金融のデジタル化が加速している中で、民間イノベーションを促進しつつ、併せて利用者保護などを適切に確保する観点から、デジタル化への対応の在り方を検討するということでございます。その下に近年の主な出来事を簡単にまとめさせて頂いております。
まず、真ん中ですけれども、暗号資産、2008年にブロックチェーン技術とビットコインが登場いたしました。その後2018年に制度整備、その下でございます。交換業者に登録制、暗号資産交換業が導入されました。その後、その下です。2018年に仮想通貨の流出事案がございました。それからその右側です。仮想通貨による資金調達が世界的にも盛んになってきたということでございました。
そうした動きを踏まえまして、その下です。2019年の制度整備、2つ目のポツです。利用者資産の原則オフライン管理、暗号資産交換業、これはオフライン管理を義務づけるとともに、資金調達を行う場合には証券規制、金商法が適用されるということが明確化されました。その左側でございます。送金(デジタルマネー)の世界ですけれども、2019年にグローバル・ステーブル・コイン構想というのが出てまいりましたし、その左側です。中銀デジタル通貨(CBDC)に関する検討等が当局間で進んできております。
その上を見て頂きますと、2009年の制度整備ということで、為替取引、それまで銀行が専ら行ってきたわけですけれども、資金移動業が創設されたということでございます。
その下、3つに分けて関係者のねらい、指摘されている課題を簡単に整理しております。まず、送金(デジタルマネー)の世界ですけれども、低コスト・迅速な送金、あるいは途上国におきましては金融包摂、ファイナンシャル・インクルージョンという観点からいろいろ検討が進められているということでございます。指摘されている課題ですけれども、マネロン・テロ資金供与対策との関係で問題はないか、あるいはシステム障害等が起きたときに、送金の安定化・確実な履行を図れるかといった点が指摘されているところでございます。
それから、真ん中の暗号資産のところでございます。株式など伝統的な資産に代わる投資対象となるのではないかという意見がある一方で、その下でございます。ボラティリティーが非常に高いという状況の中で、そういうものになり得るのかという意見も他方でございます。また、マネロン・テロ資金供与対策の観点から、いろいろ悪用されているのではないかという指摘も引き続きございます。
その右側でございます。証券の世界ですけれども、伝統的な有価証券をトークン化いたしまして、低コスト・活発な取引を狙う様々な実証事業等が行われております。その際に指摘されている課題ということですけれども、取引インフラとして十分なものになっているか、あるいは私法上の権利義務関係をより明確化する必要があるのではないか、そのような課題も指摘されているということでございます。
その右側でございますが、コンテンツ・著作物、この世界は基本的に金融規制・監督の話ではないのではないかと考えておりますけれども、そこに書いてあるような、関係者のねらい、あるいは指摘されている課題等があるということでございます。
続きまして、2ページでございます。今申し上げたようなものを、もう少しイメージが湧くようにまとめたものでございます。
まず左側、デジタルマネー、点線があるところでございます。一番左側からまいりますと、銀行など預金取扱機関が発行するデジタルマネーのようなものがございます。あるいは資金移動業者が発行するデジタルマネーがございます。CBDCに関する検討もありますし、ステーブル・コインということで、諸外国では、発行主体と、その権利を移転する主体が別主体で提供されているようなサービスも散見されているところでございます。
それから先ほど申し上げました、有価証券をトークン化した証券トークン、あるいは裏付資産のない暗号資産、あるいはコンテンツ・著作物をトークンにする、そういった動きが見られているということでございます。
その下でございます。デジタル・アセットの取引等のプラットフォームということで、分散型金融、特定の管理者がいない、あるいはいないと称する形でサービスが提供されているものが諸外国にはございます。暗号資産の交換、あるいは暗号資産の貸借等のサービスをこうした形で提供しているものがございますし、証券のトークンなどを既存のビジネスと融合させるという観点から、新興企業・既存の企業取引所等による様々な実証事業も行われるということが2ページ下のところに書いてございます。
続きまして、最後3ページ目でございます。
関連する声明や閣議決定ということで、まず、G7財務大臣・中央銀行総裁声明ということで1つ目のところでございます。デジタルマネー及びデジタルペイメントは大きな利益をもたらし得る一方で、様々な課題を引き起こす可能性があるということで、これらの課題について適切に対応する必要があるということで、CBDCについても様々な観点がここに記載されております。
それから次、2つ目ですけれども、グローバル・ステーブル・コインのプロジェクト、これにつきましては、関連する法律上、規制上、監視上の要件が十分に対処されるまではサービスを開始すべきではないという考え方が示されております。
その下は、骨太の方針・成長戦略実行会議ということで、国内の政府決定でございます。まず、CBDCにつきましては、政府日銀は、2022年度中までに行う概念実証の結果を踏まえ、制度設計の大枠を整理するというタイムラインになっております。それからここは金融規制、金融監督だけの話ではございませんけれども、非代替性トークンやセキュリティートークンに関する事業環境の整備を行うということが盛り込まれております。
以上でございます。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、メンバーの松本さんから御説明をお願いしたいと思います。松本さん、どうぞよろしくお願いいたします。
- 【松本メンバー】
-
御紹介にあずかりました株式会社LayerXの松本です。本日は10分ほどとなりますが、ブロックチェーン技術、その概略と、我々の観点になりますが、その意義についての御説明を簡単に差し上げたいと思っております。
スライドを2枚ほどめくって頂いてよろしいでしょうか。3枚か、その次で大丈夫です。
まず、ブロックチェーンの技術的な概略というところ、ここの、出席されている皆様の間で共通認識しておきたいというところで、なぜこのブロックチェーンというところが革新的だとこれまで言われてきたのか、その根幹部分について御説明させて頂きます。
このブロックチェーンというところは、一番重要な性質で言いますと、端的には何かが、何らかのプロセス、手続というものが、いつ実行されたか、こうした記録を特定ないし不特定の人間の中で合意して共有するという技術、これがこれまで存在しなかったという中で、今回実現できるようになったのがこのブロックチェーンを構成する各要素、技術の貢献かと考えております。
それまでの技術ですと、データベースというのは誰かが持っていて、それをほかのメンバーは信用しながら活用していくという形になってしまっていたんですけども、ここに対して、電子署名、スマートコントラクト、ハッシュチェーン、コンセンサスアルゴリズム、大きくはこの4つが重要な技術要素だと考えておりまして、この組合せによって、今回ブロックチェーンというところの、今、私が御説明しました、何かがいつ実行されたという事実を全員の共通認識にすることが実現されているというところになっております。
この4つの技術について、簡単にかいつまんでというところにはなるんですけども、お話をさせて頂きますと、まず、この電子署名というところ、技術要素的にはこれは公開鍵暗号方式を活用することがほとんどですけども、誰がこのデータを作成したか、ないしこの実行をしたのかというところに対して保証を与える技術がこの電子署名によって行われていると理解して頂ければと思います。
電子署名というところが、これがのちのち御説明させて頂くデメリットにもつながるんですけども、「誰が」を表明するためには、この電子署名の鍵を持っている必要がありまして、この鍵が漏えいしてしまうと、「誰」というところを簡単に窃取されてしまうというところで、電子署名のセキュリティー的な難しさも当然はらんでいるようなところになります。
何にせよ、この電子署名というところがまず、この取引情報、トランザクションとここに書いておりますけども、この中で、「誰が」というところを保証しまして、その中で実際に何を実行したのかというところを、スマートコントラクトと呼ばれるような、一種のこれはプログラムにすぎないんですけども、ブロックチェーン上で、この参加者の中で合意された特定の手続、これを実行した結果をこのトランザクションの中に含めることで、この一つのトランザクションの中には、誰が、いつ、何を実行したというデータが出来上がりますと。
このデータは、ただそこに存在するだけでは、当然ながら、合意にもそれを保存することもできませんので、この保存するためのデータ構造として、ハッシュチェーンというものが用いられております。これも技術的なところの細かい説明は省かせて頂きますけれども、このハッシュチェーンというのは、登録されたデータが時系列の順序をちゃんと持っていること、その内容に改ざんがないこと、これを容易に検証可能なデータ構造です。
例えば私が10個ぐらい取引を登録しまして、ほかの方がまた登録しましてということを繰り返した中で、私がお金をいきなり、ほかの方に送ったはずの取引を消しましたという処理をしてしまうと、このハッシュチェーンというところでは、即時にその内容が変化したということを検知できると。検知できるというのは、手元に自分たちが控えているハッシュ値というものがあるんですけども、それが変化した時点で何かが改ざんされているということが一目で分かってしまうデータ構造になりますので、このデータを用いることで、改ざんの検知の簡単さをつくっていると捉えて頂ければと。
そこに最後、コンセンサスアルゴリズムと言いますけども、特定ないし不特定多数の参加者の間で、特定のデータに対して、その状態に対して合意をする手法です。アルゴリズムが様々あります。プルーフ・オブ・ワークとか、プラクティカル・ビザンチン・フォールト・トレランスみたいなものとか、いろんなアルゴリズムがありまして、そのアルゴリズムを使って、参加者の間で、このハッシュ値で表現されるハッシュチェーンに合意すると。そうすることで、そこに記録されているデータが、全員の合意の下で実行されたものという形を保証しようとしていると。
これらの結果として、最初に申しました、何かのプロセスがいつ実行されたということが全体の合意として生成される。合意ということは、それを使って、さらに新たな取引を起こしたりということが、不特定多数の中ですらも実現できるようになったのが、ブロックチェーンの重要な側面かと考えております。
コンセンサスアルゴリズムのところに、今度は、特定の人たちか、ないし不特定の人たちかという区分のところで、パブリックブロックチェーンと、それ以外のプライベート、コンソーシアム型ブロックチェーンの違いがあるのかと思うんですけども、大まかにブロックチェーンの技術としては、こういったものが活用されております。
次のスライドお願いします。その次です。
このブロックチェーンの、実際に、この全員の共通認識としての、いつ、何が起きたかというデータを使うことで、何がメリットかというところで、いろんな取組が出ております。先ほども出てきましたが、ステーブル・コイン、あと中央銀行デジタル通貨、例えば企業間連携の効率化というところで、例えば物流では荷札を、様々な企業間で一つのブロックチェーンとして運用していくことができていたり、例えば最近ですと、Security Token Offeringや、Decentralized FinanceというDeFi、Non Fungible Token、NFT、様々のエコシステムがここに出来上がってきているわけですけども、こういったメリットはどこから発生しているのかというところの一つが、まずは透明性の高さというところが挙げられると考えております。
これはデータをその参加者の間で、全員の間で同じものを共有しております。同じデータを手元に共有するために、例えば自分のニーズに応じてそのデータを簡単に活用できますと。API、何らかの窓口を通じてデータを受け取りに行くというような、これまでの仕組みですと、決まった形のデータを少しずつ頂くような形が中心になってしまいますので、当然それの活用に対しても、なかなか制限が出てくるのですけども、手元にデータそのもの全てを持ってしまっているので、これを使って新しいエコシステムを自分たちでつくることができますと。
例えば、もう一つが改ざんの難しさ、検証の容易さというところで、悪意ある参加者がいたとしても、容易にその悪意を検出することができまして、コンセンサスアルゴリズムの中でそれを拒否することができると。なので、この手続が正当であることを機械的に保証することができる。複数の人々の間でデータは手元にあるにもかかわらず、改ざんが難しい、検証も簡単である、それをコンセンサスの下で運用できることで、安心して運用できるシステムであると。
その上で、そのプロセスが統一できる、こういった形、手続、例えば証券をAさんとBさんの間でやり取りをするという手続はどういうことかとか、そういったものをスマートコントラクトとして定義することで、先ほどの2つの特徴の上で、プロセスを統一することができると。全員が同じやり取りを簡単に行うことができる。
最後にこのオープンなエコシステムとありますけども、特にパブリックブロックチェーンの世界、ビットコインやイーサリアムと呼ばれるような世界ですと、ここに世界中の開発者が、日々様々な仕組みを上に載せるということをチャレンジしておりまして、この提案・議論・実験という中を通じて、新たな仕組みというものが今、例えばNFT、DeFi、DAOと呼ばれるような、多種多様な仕組みが今登場してきているのかと考えております。
こうした特定の権威的なものによらずに、安心安全にサービスを運営する、かつそのデータが共有されている、こういったところがブロックチェーン活用の一つのメリットかと考えております。
次のスライドお願いします。
一方で、デメリットは当然ながらありまして、これは技術的な観点が中心になるんですけども、まず一つが、このデータを共有するということは、当然ながらプライバシーの課題が大きくのしかかってきます。例えばビットコインですと、その中で、誰が、どこに通貨を送ったのかというところは、当然「誰か」というそのアイデンティティーを見られるわけではないんですけども、少なくともどのビットコインのウォレットからどのビットコインのウォレットにお金が送金されたのかというところは、全てトラック可能になっております。
こうした、日本ですとこれは個人情報に該当するようなものも含めて、加盟情報・個人情報に該当するようなものも含めて全て共有されてしまう設計になってしまうので、その中でどうやってデータを載せていくのかというところは当然課題になってきますので、このデータ化の範囲を絞るとか、例えば暗号化技術をどう組み合せていくのかといったところが求められてきております。
秘匿化技術というものもどんどん進歩しておりまして、一部の暗号通貨ですと、これが、例えば誰から誰に送信したかを完全に秘匿することもできるようなものも出ているんですけども、現状その技術によって実現できるプログラム、スマートコントラクトというのも相当に制約がありまして、まだまだここはプライバシーと向き合う課題は大きいのかと考えております。
もう一つがセキュリティー、先ほど秘密鍵、公開鍵暗号を使っている、電子署名を使っているというところでは、我々は鍵を管理せねばなりませんが、このデータを絶対に外に漏えいさせないというところの技術、運用方法については、最近ですと大分固まってきたところではありますけども、きちんと運用しようとしますと、一企業や、一個人に対しては非常に難しい技術となっておりますので、そこで不正操作が行われてしまえば、これはブロックチェーンのよいところが裏返って、自分たちの取引を取り消すこともなかなか難しいことも当然出てきます。
最後、処理性能のところでいきますと、通貨をやり取りするというようなトランザクションは相当な量になりますので、ここはどうしても我々の実運用に耐えうるパフォーマンスのブロックチェーンというのはまだまだ少ないというのが現状かと考えておりまして、ここは実運用に当たっては考慮せねばならない事項かと。
もう一つは、パブリックブロックチェーン特有の課題もありまして、例えばプルーフ・オブ・ワークと呼ばれるような大量の計算資源を必要とするコンセンサスアルゴリズムですと、現状、エネルギーの課題も非常に取り沙汰されております。大量の電力を今、消費しておりまして、これをこのまま許容できるのかどうかというところは議論になっているところでございます。
もう一つが、技術・サービス進化の速度が速過ぎるというところが、これは課題でもあると思っておりまして、新たな仕組みがオープンに議論されていって、実装されていくことで、規制等が追いつく前に、新しい仕組みがオープンに活用され始めてしまうことも多々あります。ですので、個々の規制の考慮が後追いになりがちだというところは、個々の課題になります。
最後、その鍵、誰が運営しているのか、誰が取引を行ったのかというところの確実な本人確認ができませんので、現状ですと。正確には取引所を通じたもの以外の確認が難しいというところがありまして、そこの完全な匿名化がなされているようなブロックチェーンなのかも含めますと、このKYC・AMLへの課題というところは大きくのしかかってくる問題かと思っております。
というところが、ここまでお話ししてきましたが、ブロックチェーンの技術的な概略と、メリット・デメリットというところになりまして、次のスライドのところは私たちの知見というところになりますけども、このパブリックブロックチェーンにしろ、ブロックチェーンにしろ、プライベート、コンソーシアム型のブロックチェーンにしろ、これらを活用しても、実は、ものによっては改善できる余地というのはそれほど大きくなかったりもします。
デジタル化が実際に行われていなければ、このブロックチェーンの活用というところも難しいですし、例えば法制度、これらが追いついていない場合は、これを活用しても、その当事者間では確かにこれは十分信頼に足るというふうな話になったとしても、これは法的な根拠としてのデータにはならないよねというところが当然出てきます。こちらの債権譲渡時の対抗要件のお話だったり、第三者対抗要件の話だったりというものがありますけども、こういった法制度が追いついてくることで初めて実現可能なものというものもありまして、こういった観点にそぐう活用なのかというのは、重々承知して活用する必要があるかと。
最後に、安全性・安定性というところについても課題はありまして、秘密鍵の保護はいわんや、もう一つはブロックチェーン、特にパブリックブロックチェーンは、意図せず、大量の攻撃を受けてしまうことも日々起きております。例えばこの51%攻撃とか、セルフィッシュマイニングと呼ばれる手法が、度々このブロックチェーンのトランザクションの正当性を脅かしておりまして、実際にそれによって問題が起きた事例も多々近年も発生しておりますので、どういったブロックチェーンを選択するかというところでも注意が必要になります。
こういった問題も頭に入れながら、何でブロックチェーンを使わねばならないのか、本当にブロックチェーンでなければいけないのか、ブロックチェーンでなくてもよいではないかというところも当然出てきますので、想定する効果がどれほどかを冷静に見極めて、あくまでブロックチェーンは一技術要素だという形で向き合っていくことが重要ではないかと我々は考えております。
というところで、私たちからの発表は以上とさせて頂きます。
- 【神田座長】
-
どうも貴重なお話を頂きまして、ありがとうございました。
それでは続きまして、メンバーの栗田さんから御説明をお願いできればと思います。栗田さん、どうぞよろしくお願いいたします。
- 【栗田メンバー】
-
ご紹介ありがとうございます。ソニー株式会社の栗田と申します。私はソフトウエア開発技術者です。どうぞよろしくお願いいたします。本日は、現行システムの特長と課題というテーマでお話しさせて頂きます。
弊社では、様々なシステムの開発と運用をしておりまして、そのときに、近年ですとブロックチェーン技術も用いております。例えば、ブロックチェーンの技術を用いた、モビリティー・アズ・ア・サービスのシステムの構築・提案であるとか、あるいは、学生・生徒さんの学びに関するデータの管理であるとか、それから、先ほど鍵の管理が難しいというお話がありましたけれども、その鍵を管理するためのハードウエアのご提案であるとか、そういった様々なブロックチェーンに関わる技術の開発であるとか、サービスや商品のご提案もさせて頂いております。
ですから、当方としては、アンチブロックチェーンということでは決してないのですけれども、この場では、現行システムの特長と課題ということで、今現在、皆さまに日常お使い頂いているシステムの構成や運用から見て、ブロックチェーンがどのように映っているのかということを、一技術者の視点からお話しさせて頂くということで、ご理解頂ければと思います。
次、お願いいたします。こちらは、何か具体的なサービスを表すものではないのですけれども、皆様が日々お使いくださっているICカードですとか、その技術を応用したサービスを抽象化したモデルだとお考え頂ければと思います。多くの場合、これはマイクロペイメントということで、それほど高額ではない価値のやり取りに使われているものになります。
皆様も恐らく1枚か2枚、あるいは何枚かICカードをお持ちだと思うのですけれども、表の説明の項目一番上にありますが、ICカードには、セキュアな演算機能を持つハードウエアが内蔵されております。「セキュアな」というのは、例えば何か金属の箱みたいなものを思い浮かべて頂きたいのですけれども、その中に、特に残高であるとか、それまでの決済の記録であるとか、それから先ほどから重要だと言われている鍵、そういったものが入っています。
この金属の箱は、ハードウエアセキュリティーの技術が搭載されているもので、箱を開けて中を見ようとすると中のデータが消えてしまうであるとか、あるいは、誤動作をさせることによってアタックをしようということに対応するために、温めて、高温にして動作をさせるとか、あるいは周波数を少し変えて動作させるとか、そういったことをしたときに動作しなくなるであるとか、あるいはレーザーを照射してアタックをするというようなことに対して対応するとか、様々なハードウエア的なアタックに対応するような、耐タンパーと言うのですけれども、その耐タンパーなLSIになっています。
それからその中には、その残高とかログとか鍵以外にも、ソフトウエアがありまして、こちらに利用者とそれから端末システムとが通信するときの認証のアルゴリズムが登載されていたりとか、あるいは、残高を更新するための減算をするとか、そういったような機能が入っていたりするものになっています。
そういったセキュアな演算機能を持つカードを皆さまがお持ちで、それからそういった認証や演算のための機能が、例えば店舗の端末等にも登載されていて、その2つが相互に認識・認証をして、何か処理をすることによって、使い捨ての鍵の共有が行われたりとか、それから、支払いが行われたりとか、そしてそのときの記録がお互いの中にたまっていくというようなことが行われているというのが、まず基本的なシステムの構成と仕組みになります。
記録は、このICカードとそれから端末の中にまず残るわけですけれども、それがいつか上位システムに伝わっていって、それが最終的には正式なログになるというのが基本的な考え方になります。ここがブロックチェーンとは大きく違うところです。
ブロックチェーンの場合は、上位システム側で、皆で合意形成・共有している台帳でもって、いつでもログが最新の状態になっているわけですけれども、このシステムの場合は、ICカードと端末でまず独立して、自律して処理が行われて、ログが生成されて、それがいつか、いつかというのは1時間後かもしれないですし、1週間後かもしれないですけれども、上位システムに伝わっていって、それが監査されて、正式なログとして発行されていくということになるわけです。
そのときに例えば不正な利用があるというようなことが分かった場合は、後から取消をするとか、そういったことになります。なので、これはオフラインでも動くシステムだということと、それからICカードと端末が独立して動きますので、素早く短い時間でリアルタイムに決済することができるという特長があります。なので、例えば災害時にネットワークが使えないとか、そういった有事にも対応することができるということになります。
それから2段目ですけれども、ICカードと同等のセキュアな演算機能を持つLSIをスマートフォンに搭載することによって、スマートフォンをICカードとしてお使い頂くということもできるようになります。スマートフォンのアプリを使えば、残高が確認できたりですとか、通信機能も使って上位のシステムと接続して入金をしたりするとか、そういったこともできるようになります。
一方で、ICカードとしてスマートフォンをお使い頂く場合は、アプリの起動が不要になります。それから、ここは厳密ではないのですけれども、スマートフォンのバッテリーがなくてもカードとして動作をすることができます。ですから、店舗において、スマートフォンのバッテリーが切れているのではないかとか、あるいは支払いのたびにアプリを起動しなければいけないということがなく、スマートにいつでもすぐにICカードと同等の機能に関してはお使い頂くことができるようになっています。
3段目ですけれども、先ほどICカードと端末は認識・認証して、何か処理をして、ログがたまっていくのですというお話をしました。その後、それが上位システムにいつか伝わっていくというお話なのですけれども、その伝わったシステム間での連携というのが行われるということになります。
例えば何か電子現金を使った後に、いくらの電子現金を使うと何パーセントのマイルがたまるといったような連動がある場合は、例えば電子現金の事業者であるAから、マイルを運営している事業者であるBに対して、いくらの電子現金が使われたので、これくらいのマイルがつくことになると思いますというような連絡が、システムAからシステムBに行くということになります。
システムAでどれくらいの電子現金が使われたのかということに関しては、システムAの人たちが責任を持って構築・運用する必要があります。それを確からしいということをシステムBのマイル運営をする人たちが信じていて、そこから来る連絡については、基本的には信頼する形で、その分のマイルをつけるというような運用になります。
こちら、緑色で書いてある字のところは現行システムの課題になるのですけれども、なのでリアルタイムの合意形成というよりは、事前の約束に基づく連絡のようなものであって、だからお互いのことを信頼し合うというような必要がありますし、それから、このときのシステムA、Bの人たちが、フラットな関係であるとは限らないというようなこともあります。
下は飛ばします。次のページお願いします。
このように、様々なシステムのスタイルがあるのですけれども、こちらのスライドでは、そういったものを抽象化して捉えつつ、これは何でもいいんですけども、ここではISOの25010という、ソフトウエアシステムの品質モデルに基づいて少し整理をいたしました。
左側がシステムやソフトウエアの一般的な特性として知られているものになります。その機能として十分であるのか、正確であるのか、そういった機能適合性であるとか、性能効率性、互換性、使用性、信頼性、保守性、移植性というのがセキュリティーを除く主な品質特性になります。
機能に関しては、各セキュリティー演算器によってまかなわれるというのが先ほどお話ししたことになります。性能効率性のところは、現行のシステムは非常にこだわっているところでして、オフラインでも即座に処理ができるとか、それから資源や容量が少なくても動作をするであるとか、何よりもその計算コストが低いというところがメリットになっています。
使用性に関しても、カードはシンプルで使いやすくて、どんな方でもすぐお使いになれるようになるということがあります。一方で、こちらは今お話ししている狭い範囲での現行システムのスコープに限らないのですけれども、何か複雑なスマートフォンのアプリですとか、それから店舗の、使い方が非常に複雑な端末ですとか、それからそれらがウェブサービス等と連携したりすると、一気に分かりづらくなるということがあります。この分かりづらいというのは主観的なものなのでなかなか難しいですけど、皆さまも御経験があるところだと思います。
あとは信頼性、それから保守性、移植性についても書いています。
右側がセキュリティーになるのですけれども、機密性に関しては、偏在する演算器のセキュリティーにより守るということで、野に放たれた耐タンパー性を持っているハードウェアセキュリティーモジュールがどれくらいの長い期間アタックに耐えられるのかというのが、セキュリティー上の勝負になります。それから、ログが上位に伝わっていったときに、各社のシステムがどれくらい堅牢であるかというところがポイントになります。ここは、アタッカーとの日々の競争といったところになります。
あとは3番目ですかね。誰が使えるのですかという話ですけれども、ICカードに関しては、拾ったら第三者が使うことができてしまいます。所有認証といいますけど、持っていることによって認証されるということです。近年では、例えば指紋認証の機能がついたICカード等も出てきているのですけれども、指紋登録をどこでするのか、それから価格がどれくらいなのかなど、様々な課題がありまして、なかなか普及していないというのが現状です。今のICカードというのは基本的に拾った人が使えてしまうということで、これは所有認証ということになります。
これに何かパスワードとか、それから生体認証とかつけるともう少し強くなるのでしょうけれども、スマートフォンにはこれらの機能がついていますので、何かパスワードを入れるとか、顔認証をするということによって支払いが行われるというようなことで、少しセキュリティーとしては強くなっていますが、こちらの認証機能に関しては、一般的には各スマートフォンの認証機能のセキュリティーに頼っていますので、製品ごとの強度に依存しているという課題があります。
それから少し話は変わって、ISO15408という規格があるのですけれども、こちらはICカードに限らず、セキュリティー製品ですとか、システムに関する第三者評価と認証の規格になりまして、ICカード業界ですと、この規格に則って仕様書を書いて、設計・実装をして、リリースをしてということを第三者の専門家の方々にご覧頂いて、追認をして頂くというようなことで、認証取得をしているというケースが多いです。こちらのセキュリティーの機能要件と、それから保証要件というところを満たしているということも、我々のシステムでは非常に重要なことになります。
あとその下、緑色で書いていますけれども、システムは非常に複雑ですし、その全てを誰かが全てを見るということは難しいのですが、システム全体に、特に暗号アルゴリズムを含めて、現時点のアタックの技術からして、脆弱性がないということの証明は非常に難しいですし、それから、また今日、新しいアタックの手段が生まれるかもしれませんので、明日以降大丈夫だという保証は極めて困難になっていますという大きな課題があります。
あとはプライバシーです。皆さまが各事業者さんのサービスをお使いのときに、何らかの情報をシステムに預けるということになりますけれども、基本的にはこちらは利用者がそれぞれの事業者を信じるというモデルになっています。
次のページをお願いします。最後まとめで、繰返しに近いのですけれども、現行システムの特長と課題ということで、それぞれまとめました。課題の3番目ぐらいからが大きなものだと思っています。今は利用者にとってサービス提供者のシステムはブラックボックスであって、利用者がサービス提供者を信頼するモデルになっています。例えばスマホのログを確認したら何かに20円使っているとして、これは何だか憶えていないという場合、その20円が何だったのかということについて即座に確認することは難しいです。
もちろん、この括弧書きの中に書いていますけれども、コストをかければ、電話をするとか何かそういうことをすれば、20円はいつどんなときに使ったのかということを思い出せるかもしれないですけれども、面倒だということも含めて、なかなか確認し切れない、信じるモデルになっているというのがあると思います。
あとは、事業者間の連携というところで、利用者にとって、様々な取決めが分かりづらいというところがあると思います。何かキャンペーンがいつまであるのだとか、そういったところというのはなかなか憶え切れないですけれども、様々な形の契約をリアルタイムに合意形成することができないというような話があると思います。
さらに、ここは利用者にとって本当に分かりやすい情報とは何だという課題があると思います。様々なサービスを皆さまがお使いの中で、店舗によってつくポイントが違ったりするわけですね。そういった情報も含めて、様々な合意みたいなものが生活の中にちりばめられているわけですけれども、さらにそれが、例えばポイントの還元率が時間軸に沿って変わっていく中で、今日の自分がここで何をすると、どういうことが起きるのかということについて、利用者が完全に理解、納得する形で提示できるかどうかというのは、大きな課題としてあると思います。
あとは先ほどお話ししたプライバシーの課題があります。
それから、最後になりますけれども、暗号アルゴリズムや運用を含めて、システム全体を品質保証し続けるということは極めて困難で、これをどうやっていくのだという大きな課題が、話としては大きいですけど、あるのかと思っています。
ということで、現行システムの特長と課題ということでお話しさせて頂きました。今後の議論の一つのきっかけになればと思います。ありがとうございました。
- 【神田座長】
-
どうも貴重なお話を頂きまして、ありがとうございました。
それでは、メンバーの皆様方から御質問や御意見をお出し頂きたいと思います。本日は初回の会合ということですので、今、松本さん、栗田さんからお話、御説明を頂いた中で触れて頂いた点以外の点についても、この研究会で今後検討すべきだというような事項を含め、幅広い観点から本日は御意見をお出し頂ければ大変ありがたく存じます。
なお、本日御欠席の井上さんから御手元の資料5の意見書を提出して頂いておりますので、メンバーの皆様方におかれましては、適宜御覧頂ければと思います。
- 【端本信用制度参事官】
-
御発言をされる際は、オンライン会議システムのチャットに全員に宛てて御自身のお名前を入力、送信して頂けるようお願いします。それを確認して、神田座長より御指名頂きますので、御自身のお名前をおっしゃって頂いた後に御発言頂くようにお願いいたします。
- 【神田座長】
-
ありがとうございます。チャットは全員宛てにお送り頂きたいと思います。私のパソコンにも、そうすると表示されますので、それを拝見して御指名をさせて頂きます。いかがでしょうか。どなたからでも。
ありがとうございます。岩下さん、どうぞお願いいたします。
- 【岩下メンバー】
-
岩下でございます。研究会の最初ということで、この研究会で研究を進めていくべき事項について私なりの考えを述べさせて頂きます。
また、今2人から大変貴重なお話を頂きました。私もこの分野は随分長くやっておりますので、2人のおっしゃっていることはどちらもよく分かる立場におります。すなわち伝統的な耐タンパー性を持ったICカードにデータを格納して、それを決済手段に使うという議論もありますし、あるいは、ブロックチェーンという言葉は実は私はあんまり好きではなくて、古くは、デビッド・チャウムに始まる、アノニマス・イーキャッシュから、サトシ・ナカモトのビットコインを経て、現在に至る幾つかの系譜というのも、これも技術、学問さらには実際のビジネスとして注目しているところであります。
こういったものについて私が考えるところですけれども、これを今回の研究会のタイトルが、デジタル・分散型金融、すなわちデジタル金融及び分散型金融という、そういうくくりになっているのかと思います。デジタル金融とは何かとよく聞かれるんですけれども、定義が難しい。金融とはもともとデジタルではないかと。銀行の預金というのは基本的に、ほとんど全てが銀行コンピューターのデータベースになっていますし、中央銀行の負債も現在は、金額的に言えば、過半のものがデジタル的な形で保有されているというのが実態でありますので。そういう意味では今さらCBDCとか、そういう議論を改めてする必要は本当にあるんだろうかというのは、私自身もいろいろと悩みながら、この分野を研究しているつもりであります。
この視点から、私が今回の議論について思うのは、一つはビットコインが世の中を変えてしまって、人々のこういうものに対する認識を変えてしまったというところがどうも一つあるんですね。それは確かにデビッド・チャウム以来のプライバシーに関する意識というものを改めて人々に認識させることになったという意味で、あるいは少なくともデビッド・チャウムが志して、なかなか実現しなかったプライバシーの保った形での匿名送金みたいなものを、極めて大規模な形で実現してしまったビットコインというアプリケーションができてしまった。それの意味することが、かつて議論されていたような権力や政府からの介入を排除して個人の自由を守るためのプライバシー保護みたいな議論から、どうもそういういいことばかりではなくて、いろいろと悪いことがあると。先ほど指摘のあったAML的な意味での悪いこともあるということが改めて明らかになってしまったということが一つ。
それからもう一つは、これをやるプロセスで、ブロックチェーンと一般に言われる技術というのが、全てがそういう同じ特徴を持っているとは思いませんけれども、中央がない仕組、分散型であるという、そういうことを言っているというのは、これまで様々な金融規制であるとか金融制度というものが、金融機関という担い手を常に意識しながらそれを規制することによって規制をしてきたという歴史的経緯から考えると、大変不思議な現象ではあるわけですね。規制するべき主体が存在しないのですから。
日本の場合、暗号資産交換業者を交換業者として規制していますけれども、暗号資産そのものが規制できているかというと、それは当然、規制するべき相手がないので規制できないわけですが、そういうものを果たして金融というカテゴリーにくくってよいのだろうかと。あるいはそれらのものは、本当に将来のある金融だろうかというところについて、伝統的な金融と並び称する形で分散型の金融というものが本当に存在し得るのかというのは、今のビットコインをめぐる様々な世の中の喧騒から一旦離れて、冷静に考えてみる必要があると考えます。
そういう意味では、純粋に技術的な話というよりは、例えばプライバシーに関する社会思想的な話であるとか、あるいはこれまでの金融制度とのつながりという意味での規制的な観点であるとか、そういう視点等も含めて、この分野というのは議論していくことが必要ではないかと考える次第です。
私から以上です。ありがとうございました。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。それでは、チャットの順番ですと、松尾さん、坂さんの順になると思います。
松尾さん、どうぞお願いいたします。
- 【松尾メンバー】
-
皆さんこんにちは。ジョージタウン大学の松尾でございます。私のバックグラウンドは暗号とその応用で、25年ぐらいこの分野で研究しています。90年代の後半には、岩下先生と一緒に、日銀NTT電子現金というのにも加わっていて、ここにICカードがあるんですけども、これはソニーの栗田さんから御発表があったようなプロトコルだったり、実装だったり、ICカードのハードウエアを実際つくっていたという経歴もあります。最近はブロックチェーンの研究を行っているんですけども、まず、この場で最初に私の宣言をしたいんですけども、実は、私は暗号資産は一切持っていません。
これは、実は私が書いた論文というのが特定の暗号資産の値動きに影響を与えるということを言われてしまう可能性があるので、学術的に言う中立性の観点で、これは極めて重要です。こういう委員会の議論でも、こういうことは実は重要だと思っています。この研究会は極めて画期的で、分散的金融というのは日々イノベーションが発生していて、極めて話題になっていて、規制も変化している中で、まずデジタル・分散型金融企画室というのが金融庁にできたこと自体が、世界的に見ても画期的であって、この研究会ができたことも画期的です。
この研究会にかかる期待というのは日本だけではなくて、地球レベルで実は大きいと思っています。この研究会においては、私は今日、御提案申し上げたいのは、実はちゃんとしたプリンシプル、基本的な考え方の理念というのを定めるべきではないかと。議論、ベースとしてですけども。これは研究会の趣旨として、分散型金融のイノベーションの促進と適切な規制ということがあるわけですけれども、ステークホルダーの間で共通の理解を持ちながら、公益性の在り方を議論することが大事ですので、プリンシプルなしで個別の論点を議論してしまうと、ちぐはぐになってしまうだろうという気がします。その中で、私は3つぐらいを軸とするのがいいかと思っています。
1つは問題の構造の理解です。ビットコインのような、あるいはインターネットはグローバルな存在であり、それ加えナショナルなものと、インターナショナルものというのが3つぐらいレイヤー、違うカテゴリーのものがあって、それが相互に関係し合っているのだということをフレームとして理解することが重要です。従来、規制というのはナショナル、国内の事情で規制というのが決まります。一方で金融の場合はインターナショナルで、国同士の関係でも規制が議論されます。一方でインターネットがそうであったように新しい技術とかビジネスというアイデアは、国の事情とか国際事情と関係なくグローバルに発生します。これがイノベーションの源泉です。
ということで、ナショナルとか、インターナショナル、グローバルの動きがそれぞれに重要であると思うわけですけども、その調和をどう図るかということが重要で、それが今、金融の世界であるとか、この研究会に突きつけられている課題の構図です。これをちゃんと議論することが逆に世界に対しても重要なことだろうと思います。
2番目は、その上で重要なのが、トラストと責任の依存関係の理解です。パーミッションレスブロックチェーンをはじめとした、そういう分散型金融技術を用いた新しい金融において、トラストと責任の依存関係がどうなっているかという解明をすることは非常に重要です。これなしに規制は多分議論できません。
よくビットコインとかを議論していて、トラストレスという言葉があるんですけども、これは実は正確な定義はないし、ただのマーケティングワードであって、実際はいろんなトラストを提供する主体の肩の上に乗っているんですね。その依存関係というのは、書いていなかったり、明文化されていなかったり、隠れていることがあって、それを解き明かさないと実際どういう規制が正しいかといった議論はできません。
特に金融サービスにおいて、永続性、ゴーイング・コンサーンみたいなことはすごく重要ですけども、スタートアップに任せて、そのスタートアップはどこかに買収されました、倒産しましたというのは、それはいいのかということも含めて、永続性がすごく重要です。
もう一つは、インサイダー、誰がインサイダーかということは重要ですけども、分散型ではない企業の場合、インサイダーは分かりやすいんですけども、分散型金融だとインサイダーは分かりにくいです。イーロン・マスクのツイート1つで状況が変わるというのは、彼は隠れたインサイダーではないんだけど、インサイダーですよね。類似の問題で、例えばJPXの社員は現在は株を買えないんですけども、分散型金融というのはエクスチェンジに関わるエンジニアとかビジネス主体が、トークンを持ってるということが許されるのかみたいなことも利益相反という重要な点に当たり、こういういろんな論点があります。
あとは、パーミッションレスブロックチェーンの一番の特徴は、先ほど松本さんの話があったんですけど、私から観点を変えると、シングルポイントフェイラー、単一障害点を取り除くところに大きな特徴があって、これが規制上の大きなポイントですと。こういうアーキテクチャーでは誰が責任を取るのか分からない。これは先ほど岩下さんがおっしゃったとおりです。
あとは、マネタイズがすごく難しくて、インターネットにおいてはその通信を支えるISPの集合が、例えばその単一障害点を取り除く一つのポイントになっているわけですけども、ISPはインフラとして機能するけども、公共的な役割を持っているので、問題ない運用を継続すること、ゴーイング・コンサーンの話ですけども、それを約束する代わりに広く薄くお金をもらう。
一方で、スタートアップがやるようなイノベーションは、あえてポイントフェイラーをつくることで、そこに責任を負うことでお金をもらっているという構図があって、ポイント・オブ・フェイラーとポイント・オブ・マネタイズとポイント・オブ・レスポンシビリティーという3つの組は議論のセットになっていて、これが規制上重要です。
あと3番目、グローバルに動的な対話が確立しなければいけない。近年のインターネットを基調にしたビジネスというのは、情報の集約を行っていればよかったという昔と違っていて、その在り方が財産とか健康とか、こういう極めて重要なポイントに引っかかっているがゆえに、大問題になっていて、昔だと、フェイルファストという、失敗を含めてトライから最善を見つければよいというやり方だったし、シリコンバレーはそういうやり方ですけども、現在は規制当局と対話をしなければいけないとなっていて、シリコンバレーの大きな企業もそのスタイルが変わってきています。この変化をちゃんと捉える必要があるだろうということです。
そのような対話をちゃんとするためには、マーケティングワードを使っていてはいけなくて、これはブロックチェーンもそうだと思うんですけども、例えば査読付き論文みたいな第三者検証可能な形で、議論の積み上げが必要です。これはDeFiとか分散型金融とかブロックチェーンですが、大抵の場合、マーケティングワード的に使われていて、この点にこの研究会は非常に留意する必要があります。
残念ながら、ブロックチェーンの技術、これは、私はいろんな学会のプログラムチェアとかをやっているので、実態を知っているんですけども、日本のブロックチェーンの技術の担い手からこういう論文が出てきていないです。LNCS、Lecture Notes in Computer Scienceという、コンピューターサイエンスの世界では一定のクオリティーを保ったジャーナルのシリーズがあるわけですけども、そこで、ブロックチェーンの査読論文を発表している日本人で、一番出しているのは金融庁の職員です。これぐらい金融庁の職員がたくさん頑張っているのに、エンジニアが頑張っていないという事情があるのは、あえて苦言を申し上げなければいけないかと思っています。
対話のエキスパートという人材も必要です。ビジネスサイドにも必要だし、金融庁にもそういう対話をする人が必要です。
もう一つ最後、動的なという意味で言うと、エルサルバドルでビットコインの法定通貨化が急に決まったように、事態はダイナミックに変化していて、この研究会を半年、1年やって、いろいろ議論を積み上げたんですけど、報告書を発表する前日にひっくり返るということが、この世界ではまだ起きるわけですよね。ということで、こういう事情を勘案して、グローバルに動的に動きを取り込んでいく必要があるだろうと思っています。
ということで、この3点を、この研究会での議論の考え方としてやるのが重要ではないかということで提案させて頂きます。長くなりましたけど、以上です。
- 【神田座長】
-
それでは続きまして、坂さん、どうぞお願いいたします。
- 【坂メンバー】
-
ありがとうございました。私は、日頃、主として個人の利用者や投資者の観点からものを考えることが多いので、この視点から現在の状況の中で課題と考えている点を、少し広くデジタル金融という観点から、3点指摘させて頂ければと思います。
1点目ですけども、まずセキュリティーに関する課題です。今年の3月に公表された情報処理推進機構の情報セキュリティー10大脅威の個人の部では、第1位にはスマホの決済の不正利用が挙がっており、そのほかフィッシングによる個人情報等の詐取、クレジットカード情報の不正利用、インターネットバンキングの不正利用等が挙げられております。
事業者のセキュリティー対策状況は、利用者には分かりませんので、制度的には規制と監督によってその実効性を確保する必要があると思います。この点、決済分野について見ますと、銀行預金・送金は銀行法により、またクレジットについては2020年の改正割賦販売法によって、関係業者も含めた相応の整備が行われております。他方、資金決済法上の前払支払手段や資金移動がそこまでの整備ということにはなっていないと思いますし、収納代行では、金融規制としての規制と監督は行われていないという状況にあります。
決済サービスの分業が進む中で、セキュリティー上どこかに穴があれば、そこが攻撃の対象となるということだと思いますし、セキュリティー確保の観点から、規制の横断化というのはより重要となってきていると思います。
2018年6月の金融制度スタディーグループの中間整理では、金融規制体系をより機能別、横断的なものとし、同一の機能、同一のリスクには同一のルールを適用することを目指すとされております。この視点は現在ますます重要になっているのではないかと思います。
また、セキュリティーについては、表裏の問題として、不正利用への補償という問題があります。デジタル化の一層の推進を図るという観点からは、預金者保護法の横断化ですとか、あるいは欧州の決済サービス指令第2版に準じた補償規定の整備が検討されるべきではないかと思います。
2点目ですけども、デジタル化の中での顧客接点の適正確保等に関する問題です。スマートフォンの普及やテック企業による顧客接点、顧客体験の改善、変革により、金融サービスの利便性が高まることが期待されているところと思います。他方で、例えばお金が借りやすくなる、投資がしやすくなることに伴って、過剰借入れや過剰投資に陥りやすい環境となり、多重債務や投機取引、過当取引へのリスクが高まることが懸念されます。特に情報を利用し、デジタル技術を駆使して、個々の顧客への働きかけが行われる場合には、顧客を顧みない短期的な利益獲得に技術が使われますと、顧客が効率的に多重債務や投機取引、過当取引に導かれることになってしまいます。こうした個々の顧客への働きかけは、アフィリエイトやSNSの利用等によって、直接、金融規制の対象となっていない主体によって行われているところでもあります。
新しい技術環境における顧客接点や、あるいは情報利用等について、適正化を図っていく観点からの検討が必要かと思います。例えばデジタルによる適切な顧客情報の把握や、適切な情報提供の在り方、データやアルゴリズムに起因するバイアスへの対処、倫理的かつ責任ある方法でのデータの利用、不適切な技術利用の防止・検知・是正の仕組み等を検討すべきではないかと考えます。
3点目ですけども、悪質な人たちによって、デジタルの悪用がされておりますので、それらの対応というのも必要な視点と思います。最近の顕著な動きとしては、暗号資産を利用した詐欺的な被害が急増しておりまして、これは金融庁も含め、関係機関から注意喚起がされているところと思います。暗号資産につきましては、海外における規制が十分でないことや、マネロン対策としてのトラベルルール、暗号資産の移転元・移転先情報の取得や通知に関する事務の体制整備がいまだ途上であるということが背景にあるものと思います。
新たな技術への既存の規制枠組みの迅速な適用・対応ですとか、あるいは国際的な規制の実効確保という課題の一局面かと考えております。こうした点についてもぜひ御検討をお願いできればと思います。以上です。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。加藤さん、どうぞお願いします。
- 【加藤メンバー】
-
事務局資料で紹介された課題の中には、前回の研究会で十分に検討できなかったものも含まれているように思います。この分野では、現在急速に取引実務が発展していますが、裏を返せば、検討する際に参照可能な具体的な材料はたくさん存在するということです。
今回の検討では、現在何が行われているかということを可能な限り描写するということがまず必要になるのかという気がします。その結果、現行法で対応できていることと対応できていないことが何か、そして、一見何か対応する規制が存在するようだけれども、実はその内容が適切ではないのではないかといったことなどが明らかになってくるような気がいたします。
そのほかに、もう少し具体的な問題についてコメントをしたいと思います。
まず1つ目ですが、課題として、AML、CFTが取り上げられていますが、分散型金融を対象とする規制を考える際には、国際協調が求められる領域が存在すると思います。国際協調が必要な領域と日本独自の対応が可能な領域というものは切り分けて、どこら辺に境界線があるのかという話、かつ、国際協調が必要な領域についても、今後の国際的なルール形成に有益な影響を与えることができるかといった観点から、この研究会でもいろいろと検討していく必要があると思っております。
もう一つは、松尾先生がおっしゃられた、全体像を見る必要があるということが非常に重要ではないかと思います。例えば、ステーブル・コインの話が、事務局の資料でも言及されていましたけれども、ステーブル・コインというのは、分散型金融を構成する一つのパーツにすぎないわけであって、ステーブル・コインを使って、さらにほかの様々なスマートコントラクトを使って、全体として何を、どういった取引がされているのかという、その一つ一つのパーツを越えた、そのパーツの集合体によって今現在何が行われているのかといったことを検討していく必要があると考えます。
そして、分散型金融の問題を考える際に避けては通れないのが、パブリックブロックチェーンをどう考えるかです。多くのトークンは、イーサリアムのブロックチェーンを使って、発行されている場合が多いと思います。そうすると、例えばステーブル・コインを対象とした規制を検討する際に、イーサリアムのブロックチェーンのことは取りあえず横に置いておいて、その上で取引されるステーブル・コインを対象とした規制を構築するという立場でいいのか。それともステーブル・コインが記録されている、そのパブリックブロックチェーンというものに対して、何かこの研究会で、ポリシーのようなものを出すかが問題になると思います。
最後のポイントは少し自分のまだ考えがまとまっているところではありませんけれども、問題意識として述べさせて頂きました。私からは以上です。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、野田さん、どうぞお願いいたします。
- 【野田メンバー】
-
ブリティッシュコロンビア大学の野田です。どうもよろしくお願いいたします。私は経済学者でして、特にそのインセンティブを設計して目的を達成する、そういう制度設計の理論、マーケットデザインと呼ばれる分野を研究しております。その一つの応用としてブロックチェーンに興味を持っています。経済学者とはいってもファイナンスとか金融については詳しくはなく、どちらかというと工学的なアルゴリズムの設計、そしてそこにどうインセンティブの問題が絡んでくるかというような、そういう話がメインの研究テーマとなります。
ここまでの議論で特に強く賛成したい点についてまず説明すると、まず岩下先生がおっしゃったような、単なる技術進歩というだけではなくて、ビットコインという何か非常に大きなアプリケーションが登場したという現象が結構大事ではないかということを強く思っています。価値の裏付けのない帳簿の上のただの数字にすぎないものに対し、世界中の人たちが価値を持つと認識するようになった。これによってどういうことが起きるのかということを注意深く追っていく必要があるのかな、と思っています。
それ以外に関しましては、個人的には強く重要だと感じているのは、松尾先生がおっしゃったように、レイヤー別に問題の構造を整理するべきだというポイント、あともう一つは、非常にスピードが速い分野であり、なおかつ、クリプトかいわいの現在進行形でサービスなどを開発している技術者たちが、あまり規制されていることを好まないというふうな性質から、対話が重要になるというポイントに賛同します。どういうふうな規制を入れることによって、誰が、できれば全員が、どのように幸せになるのかということをちゃんとコミュニケーションしていくことが大事になると考えております。
付け加えたい点としましては、個人的には、この研究会はもちろん主たるテーマというのは分散型金融ということで金融の話が中心になるとは思っているんですけれども、ブロックチェーンの登場というのは、それ以外の話にも非常に大きな影響を与えるものだと思っております。特にスマートコントラクトを現実に金銭的な価値を持つ数字を管理する台帳に直接書き込めるようになったということによって、従来可能ではなかったいろいろな取引が可能になっています。これはもちろん金融業界にとっても新しい選択肢が出てくるという意味で重要です。それ以外にも金融という枠を越えた取引、しかし、その金融庁以外にどの官庁が規制などを担当するべきか分からないようなものあって、いろいろ新しい論点が出てくるのかと思っております。
こういう状況で、従来の金融の枠組みだけに固執して考えることには個人的にはあまり意味がないと思います。そういう意味でいうと、もう少し幅広くそのスコープを取って、構造的に本質的には似ているようなものについては、本研究会で検討することが必要になってくるのではないかと考えております。以上です。ありがとうございました。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。それでは佐古さん、お願いいたします。
- 【佐古メンバー】
-
早稲田大学基幹理工学部の佐古と申します。私は長年NECで暗号研究者として勤務しておりまして、昨年から若い人に暗号技術がどのように社会に使われるのかを伝えたいと思って、現在の職に就いております。
今回の研究会ですけれども、暗号資産に関しては御存じのとおり、一般の人たちが詐欺の被害に多く遭っています。それは、ブロックチェーンという、先ほど松尾先生がマーケティングワードと言われましたけれども、そういうきらきらした言葉と、中身がよく分からないで、もうかるという話が先行した結果、私の暗号とは全然関係ないような知り合いまでが、お金を入れてみたとか、詐欺ではないか心配しているというような話がありました。
というわけで、今回このように研究会を開催するに当たっては、一般の人たちが被害に遭わないような、正しい情報を伝えたいと私は個人的に思っておりまして、そのためには一般の、恥ずかしながら私も含めてですけれども、金融の難しい言葉が、一般の人にもどういう仕組みで動いているのかというのが分かるように、説明できるようなコミュニケーションを取っていきたいと思っております。
特に、今までは紙ベースで行われていたものなので、例えば株券という名前がついた紙があったりとか、証券というか債券と名前のついた紙があって、その紙の名前が違うというので、違うものだということが人間は理解できたと思うんですけれども、デジタル化されていくと、そこの境目が分からなくなってきて、これは何だ、電子マネーなのか、トークンなのか、本当に一般の人は混乱してしまうと思うんですね。ぜひ、そこを明確にできるような、こういう扱い方をするからこういうものだよと、私も本当に法律不勉強で恥ずかしい限りなんですけれども、そこが分かるようにしていきたいと思っております。
実は私は長く電子投票を研究しておりまして、電子投票も考えるに当たって、本質的なところを見ていかなければいけないと思っています。例えば投票で1人1票というのがよく言われますけれども、それは必ずしも電子投票で1人が1回しか投票行為ができないというわけではなくて、デジタル化した際には、何回でも投票してもいいけれども、例えばその中で1票しか有効ではないよというような、そういう形で1人1票というのを実現することもできます。
紙ベースだと、もう1回投票用紙に書いてそれでおしまいということがあったんですけれども、このようにデジタルにした場合に、同じやりたい原則を実現するためにいろいろなアプローチがあるということも頭に入れて、これからきっと難しい金融用語が飛び交うと思いますけれども、この委員会の中で、本質について共通認識が生まれるように議論していきたいと思います。以上です。ありがとうございました。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは続きまして、森下さん、どうぞお願いいたします。
- 【森下メンバー】
-
ありがとうございます。まず本日、松本委員、あと栗田委員から、ブロックチェーンと現行システムの比較のような形で、それぞれの価値ですとか、あるいは課題というものが伺えて大変勉強になりました。
まず、その前に私は法律の分野で金融に関する問題ですとか、あるいは国際的な法の適用に関する問題などを中心に研究をしております。
それで、戻りますけれども、ブロックチェーンと、あとは現行システムの比較というようなお話を聞けて大変よかったと思っております。例えば現行システムの良さという点で、情報はいつか伝わればいいのでオフラインでも利用できる、ですとか、サービスの提供者が有事に対応できると、そういうような御指摘があったと思いますけれども、こういったものは今のユーザーに評価されているんだと思いますけれども、例えば分散型との関係ではどういうふうに扱われるのかというようなことを考えたりしました。
また、現行システムでは信頼する対象が運用者であるというお話があったと思います。これは分散型ではネットワークの仕組みを信頼してというふうなことになるのかという気がいたしますけれども、そういった信頼がどうやって成り立っていくのか、社会的に、一般的に成り立っていくのかという点ですとか、あるいは現行システムは、必ずしも分かりやすくなく、ブラックボックスというようなお話だったと思いますが、そういった点については、例えば分散型の技術との関係ではどうだろうというような気もしたところでございます。
あとはデジタル化ですとか分散型技術、あるいはそのほかの技術の利用によって、金融と非金融の境が不明確になってきているというのは、既に何人かのメンバーの方が御指摘になられたとおりかと思います。対象も幅広めに考えていくというようなことは非常に重要ではないかと思います。
あと、法とかルールの遅れですとか、法が追いついていないのではないかといったお話がありました。法学の研究者としては、本当に反省しなければいけないところだと思うのですが、私としては、いろいろな議論はかなりなされてきているとは思うのですけれども、具体的なアクションに結びつき切れていないというような印象、特にどちらかというと私法の分野ではそういったような印象があります。
ただ、こういったルールについて考える際には、技術を使って何ができるかという話を超えて、それぞれの技術にどういったリスクがあって、そういったリスクに技術等でどこまで、どうやって対応できるのかというような視点が大変重要になってくるかと思います。というのは、法律の大きな役割というのは、様々なリスクを、誰がどうやって負担するのか、どうマネージをするのかというところを考えるというところだからであります。
その点で、今日、松本様のお話の中にもブロックチェーンに関するいろいろなリスク、課題といったようなお話もありました。こういった点をより具体的にお伺いしていくということで、ルールに関する議論を深めることができるのではないのかと思います。したがって、この研究会でも様々なリスクをより具体的に特定していくこと。そして、そういったリスクについて、どこまで技術で、あるいは当事者の工夫で対応できるのかというようなことを詰めて議論してみたらいいのではないかと思います。
以前、自分で技術者と法律家の対話という企画をしたことがあったのですけれども、そのときには技術者と法律家がいろいろ異なる観点から議論をすることで、様々な発見がありました。この研究会にも多様な分野からの方が参加されていますので、そういった異業種というんですか、異なる分野からの様々な知見を持ち寄って、いろいろな、詰めた、よいアイデアを出していけるといいのかと考えております。
ルールの在り方を考える際には、技術者やビジネスの視点も大事だと思うのですが、先ほど坂先生が生活者の視点に関して御言及されたと思うのですけれども、ルールが生活者の実感から乖離しないこと、普通にデジタルとか分散型のシステムを使う普通の生活者の実感から乖離しないことが大切で、そういった点も意識していく必要があるのだと思います。
その関係で、国家の役割がすごく大事になってくるのかと思います。本当に技術的に自立した方は、国の助けなど要らないと、むしろないほうが自由にできていいというようなこともあるのかもしれませんけれども、必ずしもそうではない方が少なくないと思います。そうした中で、国がどこまで役割を果たしていく必要があるのか、あるいは、できるのかというのが大事な観点の一つであるように思います。
また、分散型の世界というのは、既にお話にも出ましたように、グローバルに、国際的に広がりやすい世界だと思います。現実の問題としても、既に、分散型の世界に法をどう適用していったらいいのか、規制をどう適用していったらいいのか、いずれの国の法が適用されるべきかということに関して、難しい問題があるのではないかということは指摘され、様々なアイデアが示されていると思います。
この研究会も、議論が国内に閉じるのではなくて、常にそういったグローバルな広がりがあるということを意識して、国境を越えた広がりを視点に持って議論がなされていくことが重要であると思います。その上で、最終的にはこの研究会の成果として、日本国内だけではなくて、世界に向けて、具体的な提案ですとか、働きかけができるような、そういったプロダクツが出るとすばらしいと感じております。以上でございます。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは、続きまして神作さん、どうぞお願いいたします。
- 【神作メンバー】
-
どうもありがとうございます。私も加藤先生や森下先生と同様に、法律を専攻しているものでございまして、技術には全く通じていないと申しますか、理解していないわけでございますけれども、今回の研究会のテーマに関連して、3点コメントをさせて頂きます。
第一は、特に金融規制という観点からいたしますと、分散型台帳技術が金融の分野でどのような機能を果たして用いられているのかに関心があります。これまでの金融規制についての金融庁および金融審議会の考え方は、機能に着目した機能別の規制に重点を置いてきていると思います。例えばこれまで金融の機能として、決済機能、あるいは資産運用の機能などが挙げられてきましたが、そういった領域において分散型台帳技術を用いて金融サービスが提供されるというときに、漏れがないと申しますか、きちんとカバーできる規制を構築することが大事であると思います。
したがって、分散型台帳技術が実際にどのような機能を、特に金融の分野において営んでいるのかということを、これはぜひ、実務の方にいろいろ御教示頂きながら、議論を進めていければいいと思います。
それから、その際の視点でございますけども、金融には例えば決済とか資産運用とか、あるいはリスクヘッジ、リスクコントロールとか、いろいろな機能があるわけですけれども、金融規制という観点から考えるときは、リテールとホールセールの区別というのが非常に重要であると思います。特にリテールの場合には、投資者保護および利用者保護という観点が正面に出てくると思います。リテールに関わる場合には、利用者保護の観点が重視されると思いますので、分散型台帳技術を用いた、広い意味での金融サービスの提供に当たって、リテールに関わるものか、それともホールセールのみかの区別が重要ではないかと思います。
この点に関連して、1点御質問をさせて頂きたいと思います。例えば決済サービスについて考えますと、御報告にありましたように、例えば災害のときや充電が切れてしまったようなことを考えると、オフラインでも利用できることが重要であるということが指摘されたと思います。他方で、オフラインの場合には、二重使用だとか不正使用、権限外利用、こういった問題が起こると思います。
先ほどのプレゼンテーションの中では、こういったことは認証技術で、今のところは指紋認証その他パスワードにとどまっているということだったかと思いますけども、こちらについての技術の発展の見通しと申しますか、どのような見通しを、技術者の方たちは、認証技術に対してお持ちなのか、オフラインで不正利用を防ぐということの技術的な対応について、どのように見ておられるのかということについて、ぜひ御教示頂ければと思います。
それから3点目でございますが、法規制との観点では、先ほど機能別に規制をする必要があると申し上げましたけれども、現在の規制の体系が、本当に分散型台帳技術に十分に対応できるのかという疑問があります。つまり規制の在り方自身にも見直さなければならない部分もあるのではないかと思います。松尾先生からは、例えばインサイダーの範囲といった御指摘がありましたけれども、例えば金商法の世界で申しますと、発行者、それからご指摘のあったインサイダーすなわち内部者の範囲、それからインサイダー情報、重要事実の範囲などは、分散型台帳技術を用いた様々な投資商品が出てきたときには、伝統的な発行者概念、インサイダー概念、インサイダー情報の概念、それから開示情報が十分に対応できるのか、もしかしたら根本的な見直しとか検討が必要になるようにも思われます。
いずれにしましても、今回、様々な分野の方々のお話を伺って、考えを深めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。御質問も頂いたのですけれども、先にチャットを頂いている横関さんと松本さんに御発言頂いて、その後で今、神作さんからの御質問、オフラインで不正利用を防ぐという考え方について、技術の方々から、どういうふうにお考えかということについて、どなたかにお答え頂ければありがたく存じます。
ということで、横関さん、どうぞお願いいたします。
- 【横関メンバー】
-
東京大学の横関と申します。私は分散型金融というフィールドからはかなり外れてはいるんですけれども、一般のシステムの安全性ですとか、そういったところの観点から本研究会に参加させて頂いております。
分散型金融、そういった技術、各方面の技術は、全般的にそうですけれども、振興と規制、つまり利用者がいるからということで、うまく使いたいというニーズから規制がこういった形で議論されるというような形になると思いますけれども、ブロックチェーン技術、あるいはビットコインの事例とか、細かなケーススタディーといいますか、そういったところからうまく、全体の原理原則も含めて、うまくまとめるのが、こういった在り方の研究会の意義かと思っています。
あとは技術的には、各種現行の技術、及びブロックチェーン技術とか、本日勉強させて頂きました。こういった技術に関しては、いろんな観点からシステムの性能・成熟度について総合的に議論することが必要かと思います。ISOの話もありましたけれども、どういった技術が、どういったところ優れているか、もしくは問題があるかを、丸、バツ、三角かもしれませんが、なるべく定量的な議論も含めて、しっかりまとめていくというのがこの研究会の在り方かと思います。そういったところも含めて、うまく規制側と振興側をしっかり議論していく場を提供する必要があると思っています。
もう一つは、いろんな製品技術もそうですけど、国際化はもう避けて通れないといいますか、国際的にもかなり利用するから日本でも利用するというようなところもありますので、日本だけに限らず、こういった研究会の在り方、それをうまく国際的に発信するような仕組みをぜひ考えていけたらと思っています。こういった、先ほど論文の話とかありましたけれども、これも非常に重要で、プレゼンスですね、日本がどう考えているか、どういったことを仕組みとして考えているかというのは、非常に、いろんな製品・技術を売り込むときもそうですが、そういった考え方そのものをしっかり発信するというのは重要だと思っています。ぜひこの在り方の研究会の結論といいますか、何かしらできたときに、それはうまくぜひ国際発信というのをぜひやって頂きたいと思っています。
最後に、新たなシステムの規制と振興の観点から、分散型、あるいはデジタル金融システムは非常にフレキシブルである必要があると思っています。常に技術も発展していきますし、毎年毎月どんどん違うものが出てくるかと思います。そのときに対応した議論を継続していく、あるいは改定していくという仕組みを考えなければいけないと思っていますので、一旦結論付けたからといってそれを固定・絶対とするようなことにならないよう、毎年、継続的にフレキシブルに対応していくということも、しっかり考えていければと思っています。取り留めもない発言で恐縮ですけども、いろいろ勉強させて頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは松本さん、どうぞお願いします。
- 【松本メンバー】
-
改めまして松本です。私からはベンチャーというか、産業観点からのお話をさせて頂こうかと思いまして。これまで、規制・保護の観点に関してはこれまでの皆さんの発言から、論点は相当網羅されたのかと思っておりまして、1点我々はこれから金融としてどうなっていくべきかという、もう少し広い観点でも考えていくべきかというところが、気になっております。
というのが、岩下先生が最初におっしゃられたとおり、金融というのはデジタルであると。この巨大なデジタルの中に今回、分散金融だったり、例えばSTOのような、これはパブリックブロックチェーンではない形のデジタルな新しい証券というものも登場しております。これらが登場以前と以後でどう変わって、我々としてはどうありたいのか、そういった観点からも、産業がどう変わっていくべきなのかというところを考えていき、最終的に投資家、もしくはその金融ニーズのある調達者、ないしさらにそれを使って起き得る社会発展がどう変わっていくのかというところを、より前に進めなければならないと思っておりまして。
その観点で1点だけ気になっているというか、ここでも、ぜひ議論できればと思うんですけども、DeFiと分散金融で新しい仕組みは今後もどんどん登場すると思います。これは翻って、既存の金融にもフィードバックされるべきものも多々登場してくると思いますし、そうやって取り込んでいく中で、より現実的な分散金融という在り方も見えてくるのかと思っております。
その取り込もうというときに、これはただ単にこのルールが導入されるだけでは、実は、この我々の証券の世界では効率化するかというと、そうでもありませんと。なぜなら今の金融はデジタルですけども、デジタルにも幾つか段階があると思っておりまして、今データベースとしては記録されている我々のこのお金だったり、証券だったりというところが、もう一段先に進む。つまりは、これを取り巻く我々の業務プロセスみたいなところのデジタル化というところが今特に重要ではないかと我々は捉えておりまして。
その観点がなければ、例えばDeFiだったり、NFTだったり、新しい仕組みがやってきたとしても、既存の業務プロセスが非常に重い以上、それを取り込むことがなかなかできませんということも当然起き得ると。さらに実際、証券発行のコストが落ちるんだというようなお話をSTOの文脈ではよくよく耳にするかと思うんですけども、この観点でも実はブロックチェーンを使って落ちるコストよりも、ただ単にその業務プロセスをよりデジタルにしていこうというところのほうが大きくコストに貢献する可能性も非常に高いというところが、我々のこれまでの取組から感じているところになります。
さらに、そういった業務プロセス全体のデジタル化があって初めて、こうした分散金融だったりで生まれてきた新しい仕組みを、これまでの金融システムに対して、どう接続していくか、より実効的な形を見つけるヒントにもなるのかと思っております。
そういった観点で、既存の金融に対してもどのようにデジタルはあるべきかというところまで含めて、今回の議論の範疇に含められるとうれしいというのが私からの発言とさせて頂きたいと思います。ありがとうございます。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは松尾さんから、先ほども神作さんからのオフラインの件について回答しますとチャットを頂いています。ありがとうございます。松尾先生、お願いします。
- 【松尾メンバー】
-
改めまして、松尾でございます。オフライン決済という課題は大昔からあって、先ほど岩下さんとやっていましたという90年代後半のNTTと日銀の電子現金、まさに電子現金として、日銀から日銀券を発行して、それを銀行を介してICカードに流通させて、ICカードの間でメールの添付ファイルを使って授受するというプロトコルを、実際に1万人規模でやったんですけども、そのときにもう既に検討している話でして、当時、電子マネーの研究というのは、モンデックスさんとかVISAキャッシュさんとか、Gキャッシュさんとかやっていたんですけども、日本で日銀とNTTがやった研究というのは、まさに日銀券を模擬するということなので、オフラインで譲渡できることはそのときすでに要件に入っていて、そのときのプロトコルを我々が設計し実際実装したわけですけども、そのときの幾つかの技術的なポイントとしては、普通の支払いプロトコルを走らせるんですけども、日銀券と全く同じようなことをやっていて、実際日銀にデータが還流してきたときに、二重支払いが起きていないかということをデータベース上でカット・アンド・チューズを使って、偽造や二重支払いみたいなのが起こっていないかというのをチェックするという、逆に言うと、還流したときにデータベースをすごくなめるという仕組みを使ったんですけども、電子的にオフライン譲渡というのを、添付ファイルを使ってやるということを実現しようとしていました。
「した」と言ったのは、実はオフライン譲渡は、今のCBDCの議論でもすごく特徴として挙げられていて、25年ぶりぐらいに同じ議論が蒸し返されているんですけども、一方で、通信に異常性があったりとか、ウォレットに何か異常があったときに、宙に浮くコインというのが出てくるのは、そのときあった我々の教訓でして。おっしゃったとおりオフラインのプロトコルを完璧につくるというのは、実は今でも多分技術的チャレンジだと思います。ただし25年前の話でして、その25年の間にできた、いろんなモダンな技術があるので、それはカバーできるんだろうと思っています。
先ほどの質問でいうと、そういう意味で、結構長年研究されている課題ではあるので、結構いろんな方に申し上げているのは、一応25年前にそういうチャレンジがあったのだから、そのときに何ができて、何をトライして、何ができて、何ができなかったのか、要は、ということを1回勉強するのがいいかと思っています。
何でこんなことを言うかというと、25年前ということは、私はそのときまだ新入社員から二、三年目で、今50歳ぐらいですけど、そのときに中心でやった、あるいはその管理職的に全体を見ていた人たちはもう引退されているんですよ。その引退した人たちの頭の中だったりを、また新しく若い世代にトランスファーするのがほとんど無理になってきて、式年遷宮のようなことをしていないので。なので、たまたま私とか岩下先生がまだ生き残っているので、改めてそのときに何をトライしたのかということを、ここでトランスファーするのも重要かと思っています。今日その詳しい議論をする時間はないと思うんですけども、ぜひそういう機会がここであってもいいのかと思いました。以上です。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。今の点は、ぜひそのうち一度お話を伺えればと感じました。
松本さん、どうぞお願いいたします。
- 【松本メンバー】
-
度々すみません。オフラインセキュリティーの、オフライン決済のセキュリティーについて1点補足させて頂くと、今その暗号学的な観点での保護の話等々が出てきたと思うんですけども、併せて最近の決済ネットワークですと、例えば機械学習の活用というのはまた別な観点でうまく組み合わされておるものかと考えておりまして、これは決済情報、どこの地域からどのような決済が行われたかというような情報をベースに、それが実際に当の本人の決済なのかというところを推測して、それを場合によっては決済をその場で止めてしまったり等々の処理が各カード会社等々で行われているのではないかと思いまして。
こういった観点は、この既存のシステムないしさらにこれから生まれるDeFiだったり、この分散金融の世界だったり、P2Pの決済の世界でどのように組み合せていくのかというところは一つ議論してもよい点かと思っておりまして。そのときに一つ、今度はプライバシーの観点での懸念も出てきますので、このプライバシーと、こうした決済を守るための機械学習的な、AI的な活用というところをどう両立するかというのが、一つの論点になるのかと思っております。発言は以上です。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
岩下さん、どうぞ。
- 【岩下メンバー】
-
今ほど松尾先生から若干触れて頂きましたが、先ほど神作先生から頂いた、オフラインでの、例えばICカード、あるいはスマホはもともとオンライン前提ですけど、電波が通じないところでどうするかという話については、長年の課題ではありました。また再び日が当たっているというところで、一体我々はどういう環境を前提としてアプリケーションをつくっていけばいいのかというのは、なかなか難しいところだと思います。
25年前に先ほど松尾先生が触れられたプロジェクトを日銀金融研究所とNTTとでやっていた頃は、実はインターネットがまだそんなにユビキタスではなかったので、スマートフォンとかを皆さん持っていらっしゃいませんでしたし、オンラインの環境のほうがむしろ特殊だったんですよ。このために、オンラインでなければ使えないとすると、世の中オンラインではないから使えないわけです。
だからオフラインでも使えるようにしようということで、かなりの苦労をして、かつ、リスクも背負ったわけですね。オフラインで使えるようにすると、ICカードの耐タンパー性を利用しなければいけない。多分今でも基本的には同じだと思います。後で事後的なチェックというのはありますけど。
そうすると、耐タンパー性というのは完璧ではないというか、より優位な技術があれば、それを破られてしまうということは当然想定しなければいけないものなので、そうだとすると、あまりに巨額のお金をその中に入れておくことはできないというのが当時の発想でした。
多分今は、そもそも全ての取引をオンラインでもオーケーかもしれない。要するにスマホを使う限りにおいては、決済ツールに関して常にオンラインになっているということを前提に取引ができるかもしれないという意味で、果たして、当時と同じような意味でオフライン、かつその耐タンパー性というところに頼る必要があるのか、それとも、環境が変わったから今は違うのであるという議論か、というところが一つの論点としてあると思います。ただ、耐タンパー性に頼り続けようとすると、多分それはリスク額の上限を抑えなければいけないということだと思います。
それからもう一つ、後で事後的なチェックという話にしたときには、どうしても、どこかのセンターがチェックをするという話になるので、こうするとプライバシーの話になりますが、これはデビッド・チャウムさんが昔やったみたいに、そういう場合でも、プライバシーを守る方法、ブラインドシグネチャーみたいな方法というのは1980年代に開発されていました。それに似たようなことは当然今でもできるわけですが、今はより進んでいるというか、そもそもビットコインというのはもともとデジタル証明書を、公開鍵証明書を使わないというか、アドレスの中にそれを入れてしまうことによって、もともとのアイデンティティーを全く隠匿したままで取引ができてしまうという、そういう方式を使っています。
これはこれで、プライバシーの問題については解決できたのですが、今度は逆にAMLの問題が出てくるという形で、いろいろ問題が重層化していますので、そこをどういうふうに考えていくかということかと思います。以上です。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
松尾さん、どうぞ。
- 【松尾メンバー】
-
今も岩下先生とずっと長年、仕事をしているので、改めていろいろ思うところがあるわけですけども、今の議論を、先ほどの森下先生のおっしゃられたコメントとちょっとだけ重ねると、これは政府の役割という話をされたと思うのですけども、当時、あの方式で何をやったかというと、匿名性は保ったんです。今のビットコインと一緒で、個人は基本的には公開鍵をアイデンティティーとして使いましょうと。実名は、公開鍵と実名の管理センターみたいなものを別に置いて、その人たちは、ふだんは関与しないんだけど、二重使用が見つかったら、その人たちが、裁判所が命令を出して、開示するというプロトコルになっていて。
ということは裁判をするというプロセスが走るわけですね。政府の行政とか司法とか立法の機能があるわけですけども、その人たちがこのエコシステムにどう関わってくるかということを当時も日銀と議論した記憶がありますし、こういう分散型金融だとかデジタル金融というのは、政府の各機能がどこで何をどう機能するのか、多くの場合、多分分散型金融の場合は、法律が追いつかないとすると、裁判所の役割というのが広くなるわけですけども、裁判所は何を証拠として採用するのかということがその場合に議論になるので、とするとどういう証拠がより重要かということが、多分この研究会においても、必ず考えなければいけないポイントかと思います。以上です。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。今のオフライン、オンラインは、ぜひそのうちまとめて、また御議論頂ければと思います。あるいはオフチェーン、オンチェーンというのも似たような話かと思います。
ほかにいかがでしょうか。皆様方から一通り御発言を頂きました。研究会自体は、目的ですとか、これまで指摘されている課題等は事務局資料、特に1ページに挙げているとおりですけども、いろんな分野の御専門の方に、せっかく集まって貴重な時間を使って頂いているので、今後この研究会で、どういう形で議論していったらいいかについて、もしヒントとかあればお伺いできればと、私としては思います。
目標というか、で言うと松尾先生、横関さんがおっしゃったようにというか、全体としての原理・原則とかプリンシプルとか、考え方というようなものについて、提言できるような形というか、議論していくというのが一方であって、他方でルールづくりとか、最後にもあった政府の役割ということで言うと、現在存在している法制度上の規制とかルールの過不足の点検というのですかね、特に不足している面についてどうかということが課題だと思います。
いずれの議論も、グローバルな視点、国内の視点の両方で見ていく必要があるということかと思うのですけども、具体的に議論していく順番ですけど、どうでしょうかね。何か具体的な例を取り上げていったほうがいいのか、あるいは分野というのですかね、分類というのでしょうか、で議論していったほうがいいのか、どんなものでしょうか。
概念整備ということで少し申し上げますと、暗号資産という言葉がありますけど、デジタル資産という言葉を使って言えば、いろんな概念があると思いますけど、ネイティブなものとノンネイティブというか、ビットコインやイーサリアムのように、ほかの価値に連動しないというか、そういうものと、ノンネイティブというか、ステーブル・コインから始まっていろんなものがありますけれども、他の資産ないしデジタル資産の価値に連動というか、結びつき、リンクするようなものとに大別されるかと思います。
使われ方ということで言うと、私、個人的にはペイメント、インベストメント、コラテラルと言っているのですけど、支払いの手段として使われる場合、それから投資の対象として使われる場合、そして担保取引というのでしょうか、金融とかファイナンス取引でもいいのですけれども、ぐらいに分けますと、ペイメントのところがまずいろいろあって、ノンネイティブでいえば、ステーブル・コインから始まって、ネイティブのほうへ行けば、またCBDC等があると思うのですけれども。さらには、MakerDAOとかDeFiとか、その手のような種類のものがありますし。
というような、どういうところから始めたらいいかについて、あと若干今日まだお時間がありますので、示唆を頂ければ、また事務局と御相談させて頂きたいと思います。事務局としてのお考えもあるかとは思いますけど、もし委員の皆様方から何かサジェスチョンがあればありがたく思います。
松尾さん、どうぞお願いします。
- 【松尾メンバー】
-
何度もすみません。ユースケースに関して言うと、今後もどんどん増えていくので、この研究会の対象のユースケースは今おっしゃって頂いたような、今、我々が認識しているユースケースでもいいと思うんですけども、多分重要なのは、ステークホルダーがいて、そのステークホルダーの間で役割が変化しているということをちゃんと認識する必要があって。これは先ほど私が申し上げた、責任と依存関係はどうなっているのという話に近いんですけども、あるいはトラストはどういう依存関係にあるのかということに近いんですけども。
まず、どういうステークホルダーの種類がいて、そのステークホルダーは何を期待していて、どこにインセンティブを持っていて、その社会秩序だったり、あるいは金融システムとしての安定であったり、あるいは消費者保護、投資者保護であったりということが実現されるために、そのステークホルダー達が何を期待して、何をなさなければいけないのかという、ある意味ステークホルダーと役割分担、責任分担の分析みたいのをしていく。そこに過不足があった場合、それは法律が手助けすべきものか、あるいは技術が手助けできるものかということを区分けしていくという作業が多分一番重要ではないかと、個人的には考えます。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは坂さん、どうぞ。
- 【坂メンバー】
-
ありがとうございます。一言だけですけども、今日もいろんな新たな御報告といいますか、知見を頂いたと思うんですけども、できれば今後の進行に当たって、ぜひ、実態といいますか、実情といいますか、そういった情報を豊富に共有できるような議論にして頂けると大変ありがたいと思います。ぜひよろしくお願いします。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
進め方についてでも、あるいはそれ以外の点についてでももちろんで結構でございますけれども。事務局から聞いておきたいようなことはありますか。特によろしゅうございますか。
松本さん、どうぞお願いします。
- 【松本メンバー】
-
1点だけお話しさせて頂きますと、松本です。議論するときに、結構この分野、例えばパブリックチェーンの話をしているのか、プライベートないしコンソーシアム型のブロックチェーンの話をしているのかとか、先ほどありました、リテールとホールセールの話をしているのか等々、議論の論点を整理しないと議論がばらけてしまったり、意見が、実は違うことを言っているようで同じことを言っているケースがあったりということが多々発生しやすいと考えておりますので、そこの論点の整理というのは丁寧に行うべきかというところだけ、1点補足しておきたいというところで発言させて頂きました。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。それと先ほど松本さんから御発言、御指摘頂いた点で、新しい世界ばかりに目が行きますけど、DXという場合に、まさに先ほどおっしゃった既存の金融の取引とか金融のシステムということについて、先ほど業務プロセスのDX化ということでおっしゃって頂いたことですけども、その将来というか、それも大変重要な課題だと思いますので、テイクノートさせて頂ければと思います。
- 【松本メンバー】
-
ありがとうございます。
- 【神田座長】
-
今日は、ほかにいかがでしょうか。非常に多くの方から、いろんな観点から御指摘を頂きまして、今後この研究会で、どういう順番に何を御議論頂くかはまた事務局とよく相談させて頂きたいと思いますけど。
森下さん、どうぞ。
- 【森下メンバー】
-
間際に申し訳ありません。先ほどグローバルな視点というお話があったと思うんですけれども、この問題は海外でもいろんなレポートも出ていますし、法の適用とか、そういうようなことについても、結構進んだ議論もあると思いますので、どこかのタイミングで、そういう諸外国の状況などについても認識を共有できるような機会があったらいいのではないかと思います。よろしくお願いします。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございます。
岩下さん、どうぞ。
- 【岩下メンバー】
-
岩下でございます。私も海外の状況は大変気になるんですが、いろいろと調べていても、何が本当で何がうそかよく分からない。分散型金融の世界の議論というのは、どうも公的な機関がきちんと何か調べてまとめているものはあまりないですよね。幾つかの中央銀行のレポートは出ていますので、見ていますけど、何かこれは本当かという感じがいつもしているので、そういう意味では、より確かな情報をきちんと入れるということがこれから大事ではないかと思うんですけど、一方でそれが非常に難しい分野であるというのも分かります。事務局に準備して頂くのは大変かもしれませんけども、よろしくお願いします。
もう一つは、この事務局資料にベン図がありますよね、事務局資料の2ページですか、「いわゆるステーブル・コイン」と真ん中に書いてある、関連する最近の取組と。この構造自体は、何となくこういう分類でやられるのかと思うんですけども、これは二次元ですが、縦にもう1次元あって、先ほど何人かがおっしゃった階層構造があるんだと思うんですね。何かに基づいた上の何かに基づいた上の何かに基づいた何かと、これは無限に実は存在し得るように思いますし、実際、相当込み入った仕組みを取っているものはありますけれども、そういうものについて、そういう階層の意識をどれぐらい持つかというところが割と大事なことのような気がします。
その意味では、ベースになる部分と、それからその縦の階層の部分と、その階層をどういう理屈で支えているのかみたいな話とか、その階層の支え方とか、そういうところを言っているのは、必ずしもそれを言っている人たちの言い分は全て真に受ける必要はないと思うんですけど、何を言っているのかというのが本当によく分からないことが多々ありますし、一方でのICOに見られたような、言うだけ言ってお金だけ調達して、そのままどろん、みたいな話というのがDeFiトークンの世界でも出てきているリスクはあると思うので、そういう意味でも慎重に、かつそのような情報を収集していく必要があるかと思います。以上です。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。特によろしゅうございますか。
それでは、今日は、予定の時間より早いかもしれませんけれども、多くの観点から貴重な御意見をたくさん頂きましたので、今日頂きました御指摘を事務局に、大変ですけど、整理して頂いて、今後どういう形で御議論頂くかということを考えさせて頂ければと思います。
本日は大変活発な御議論を頂きまして、どうもありがとうございました。本日頂きました御説明、御意見を踏まえて、今後、皆様方にはさらに議論を深めて頂きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。具体的なことはまた、順次お知らせをさせて頂きます。
それでは、最後に事務局から連絡事項などがありましたら、お願いいたします。
- 【端本信用制度参事官】
-
次回の研究会の日時につきましては、皆様の御都合を踏まえた上で後日御案内させて頂きます。よろしくお願いいたします。
- 【神田座長】
-
どうもありがとうございました。
それでは、以上をもちまして本日の研究会を終了いたします。どうもありがとうございました。
以上
お問い合わせ先
金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
企画市場局総務課信用制度参事官室、市場課(内線3572)