「脱炭素等に向けた金融機関等の取組みに関する検討会」(第1回)議事録

1.日時: 令和4年10月13日(木曜日)13時00分~15時00分
 
【根本座長】  ただいまより脱炭素等に向けた金融機関等の取組みに関する検討会、初回の会合を開催いたします。座長を務めさせていただきます、早稲田大学の根本でございます。私、昨年までアジア開銀研究所というところでフリーファイナンスなどの研究をしておりまして、今はGPIF及び銀行の社外取締役も務めております。よろしくお願いいたします。
 
 皆様、御多忙のところを御参集いただきまして誠にありがとうございます。
 
 初めに、オンラインで御参加いただいている方向けの注意事項を申し上げます。御発言されない間は必ずミュート設定にしていただくようお願いいたします。御発言される際にはミュートを解除して、御発言が終わられましたら再びミュート設定にしていただくようにお願いいたします。
 
 それでは、早速議事に移らせていただきます。
 
 最初に、事務局の金融庁の方から御挨拶と、資料について、事前にお送りしているものではありますが、簡単に御説明をお願いいたします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  事務局を務めさせていただいております、金融庁の西田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 
 簡単に、資料に沿って御説明させていただければと思います。
 
 一枚お開きいただきまして、事前にお送りさせていただいている資料と同じものでありますけれども、脱炭素等に向けた金融機関等の取組みに関する検討会ということで、本検討会で基本的な指針について記載をさせていただいているところです。
 
 これは先だってですけれども、サステナブルファイナンス有識者会議がございまして、そちらのほうでも併せて御説明をさせていただいた資料となります。
 
 2050年の脱炭素に向けた内外の動きが加速する中で、金融機関については国際的な議論や顧客企業、地域の特性を踏まえながら、企業と協働して持続可能性の向上に資する実効的な取組を進めることが重要となっています。
 
 国際的には、2050年脱炭素と整合的で科学的な根拠に基づく移行計画というものの在り方について、大手金融機関を中心に議論が進められておりますけれども、併せて地域においても、顧客企業との間で、サプライチェーンの動向も踏まえながら、脱炭素をどう進めていくかということについて、顧客と共に創意工夫を図る金融機関も見られているというふうに承知しております。
 
 こうした本邦企業の状況を踏まえながら、具体的な脱炭素に向けてどういう対話というものを金融機関が企業と行っていくのが有用であるのか、また、その一助となるようにどのような検討を金融庁または政府において行っていくことが妥当か、有用かということについて議論をいただくために、この検討会を設置させていただいて、金融機関が脱炭素に向けた取組を行う際に有用な留意点も含めて、対話の活発化に向けた方策について御議論いただければというふうに思っております。
 
 論点については様々なものがあるかと思いますので、まさに今回、第1回でありますので、こういう論点も議論すべきじゃないかという点については幅広く御指摘をいただければと思いますけれども、その上で、掲げさせていただいておりますが、①、特に国際的な動向であるとか大手の金融機関を念頭に、ネットゼロに関わる国際的な金融機関によるイニシアチブがあると思います。後ほど資料でもつけておりますけれども、その具体的な議論の状況が一つの前提としてどうなっているのか。
 
 また、科学的に整合的な削減経路というものについても議論が進んでおりますので、トピックも幾つか例示で示させていただいておりますけれども、これがどうなっているのか。
 
 これらを踏まえて、実際に、では我が国で金融機関と、または投資家、それから企業による協働の取組を進めていくにはどういう論点があるのか。
 
 また、地域における脱炭素の取組ということで、先ほども申し上げましたけれども、いろんな取組みの事例が出てきているというふうに理解しておりますので、それをきちんとまずは理解するということ。その上で、地域企業が非常に様々な経営環境、直近ではエネルギーの価格の問題などもありまして、多様な状況、悩みもあろうかと思います。
 
 そうした悩みを抱える地域企業の方と、どのように具体的にステップを踏んで金融機関が対話していくことが有効かということについて御議論いただくということ。
 
 また、これらを踏まえまして、③ですけれども、金融機関において、脱炭素に向けて取組を進める基本的な考え方とか留意点というものを御議論いただくということ、こうしたことが考えられるのではないかなというふうに思っております。
 
 以降は具体の資料になりますので、少しペースアップして御説明させていただければと思います。
 
 3ページですけれども、金融機関における気候変動への対応についての基本的な考え方、「ガイダンス」というふうに我々は呼んでおりますけれども、この7月に策定をさせていただきました。
 
 これは、金融機関が顧客企業の気候変動対応を支援し、また併せてリスク管理をする。この双方において、どのような考え方が望ましいかということを当局としてまとめさせていただいたということであります。
 
 左下に絵がありますけれども、顧客企業の方にとって、気候変動というのは非常に大きな、マーケット全体、産業構造の在り方も変わっていくようなチャンスでもあり、またリスクでもあるということで、両面あろうかと思いますが、できるだけこのリスクというものを減らしながら、企業の成長につながるような支援を金融機関としてもしていくことが、金融機関自身にとってもリスクを減らして機会を増やすことで、持続可能な経営につなげていくことが重要じゃないかということで、顧客支援の重要性とリスク管理というものを併せて取り上げております。
 
 資料には、態勢整備としまして、ガバナンスとかフォワードルッキングな認識というものを書いてありますけど、そういったものです。
 
 それから、具体的に企業を支援していく際にどのような事例が考えられるかということで、右下にありますけれども、コンサルティングとか幾つかのものを例示させていただいて、こういうものが考えられるんじゃないかということで記載をさせていただいているところです。
 
 その内容を、支援のものについては4ページで幾つか事例を掲げさせていただいております。カテゴライズしていますけれども、左上のものを見ていただきますと、金融機関自身の知見の蓄積ということで、特に脱炭素については、いわゆる理系といいましょうか、技術開発とか技術についての理解が重要だということで、金融機関自身で技術の開発とかで、メーカーなどで関わられた方を採用されて、産業知見を深めて企業との対話に生かしていくというような事例。
 
 それから、地域の産業構造というものを改めて分析して、特に、例えば自動車であるとか鉄鋼であるとか、どの分野に優先して顧客との対話を進めていくべきかということを特定して進めていこうと。これは地域金融機関の例ですけれども、こういうものがございました。
 
 それから右上、面的な対応が重要だということで、産学官金の連携とありますけれども、地元の自治体や研究機関と連携しながら、事業者の脱炭素も踏まえた事業展開を面的に支援していこうという例。
 
 それから中核メーカーの対応というので、下請けのメーカーの方は非常に影響を受けるだろうということで、まず中核メーカーの方と対話をして、その中核メーカーとの対話の方針を踏まえて、では地域全体でどういうふうにサプライヤー企業に対応を促していくことが重要かということで支援を図る事例。
 
 それから左下、「アドバイスの提供」とありますけれども、まずは第一歩として「排出量の見える化」というのが重要だろうということに取り組む事例。具体的には、排出量計測の簡易なツールが最近出ているというふうに承知していますけれども、こういうものも使いながら、どういうエネルギーを使っていて、排出量が何か、どの程度かというものを簡単にまず計測して、そこから具体的な削減策に、次のステップとしてつなげていく、支援に移りつつある事例。
 
 それから、そのために具体的な製品・技術などについて金融機関の取引先の中で優位を持つ別の企業を、排出量を削減しようとする企業に御紹介するようなマッチングの事例。それから成長資金の提供ということでエクイティとか、あとグリーン・トランジション、それからリンクというものがあると思いますけれども、資金を提供していく支援、こういうものを御紹介させていただきました。
 
 5ページは、より面的に対応を進めていこうという例で、これは役所の施策の御紹介にはなるんですけれども、東海地方で経済産業局と財務局、金融関係を扱っております財務局で連携をしまして、金融・産業両面からサプライヤーへの企業支援を進めるということで、こちらにあるのがイメージですけれども、サプライチェーンの上のほうから裾野のほうまで含めて、どのような対応がそれぞれできるのかということについて、幅広い企業の方に入っていただいてネットワークを広げていただくとともに、情報共有をして戦略的に議論していこうと。また、地域の支援拠点を核としたサプライヤー企業への課題抽出・戦略策定など、専門人材を活用した伴走型支援の体制整備ということを図っているという記載がありますけれども、経済産業局を中心に、地域の支援拠点を通じて、具体的にどのように対応を進めていくことがよいかアドバイスをする体制整備を進めているということ、こうした御紹介させていただいています。
 
 中小企業の状況につきましては、6ページに、経済産業省が、商工中金さんが実施されたアンケートを基に作成した資料を掲げさせていただいておりますけれども、カーボンニュートラルの進展が経営に与える影響はどの程度かと伺いますと、全く影響ないという方はかなり少なくて、影響があるという方が7割程度なんですけれども、カーボンニュートラルの影響への方策の検討状況はどうかとなりますと、79.9%の方が、実施・検討していないというところで、まだ悩みを抱えておられる方が多いのかなということが見て取れるかなと思います。
 
 右側に方策検討時の課題や実施しない理由というものがありまして、かなりいろんなものがありますけれども、「規制やルールが決まっていない」「取組事例などに関する情報が乏しい」「対応コストが高い」「そもそも弊社の経営に影響がないと思うから」、というように企業ごとに様々ありますけれども、特に情報・知識、それから人材面での課題というものは特徴として見て取れるかなというふうに思います。
 
 以上が地域の状況としてまとめさせていただいておりますけれども、国際的なイニシアチブについて、国際的な動向について、何ページか割いて御紹介させていただければと思います。
 
 昨年の4月ですけど、ちょうどCOPの前にGFANZ、グラスゴー・ファイナンス・アライアンス・フォー・ネットゼロというものが発足いたしまして、こちらに絵がありますけれども、一番上にGFANZが傘のような形でありまして、マーク・カーニー国連事務総長特使を議長とするという形で、業態横断的な組織、議論していくイニシアチブということでありまして、その下にネットゼロ・バンキング・アライアンス、インシュランスとかアセットオーナー、アセットマネージャーというものをこちらで掲げておりますけども、これ以外にも業態別のネットゼロのアライアンスというものが幾つかあります。
 
 これをGFANZが束ねるという形の体裁になっておりますけれども、上にありますとおり、傘下となるイニシアチブの参加に当たっては、コミットメントがそれぞれ必要だということになっておりまして、例えば2050年までに投融資先に関わる温室効果ガスの排出をネットゼロにすること。そのための2030年までの中間目標を設定すること。さらに、これを公表していくことというのが求められると承知しておりまして、日本の金融機関はこちらに数が記載されておりますけれども、ネットゼロ・アライアンスに参加されるというものが、先だってのCOPのあたりからかなり増えて来られまして、加入後基本的には1年半以内にネットゼロの中間目標を設定するということが必要だというふうにされておられるものですから、幾つかの金融機関の方では、既にこのコミットメントに基づいた排出の具体的な計画というものを出しておられる先も出てきているというふうに承知しているところです。
 
 このGFANZでは、9ページになりますけれども、ネットゼロに向けた金融機関の取組について、包括的にいろんな文書を作成して議論を進めていると承知しています。
 
 6月に、こちらに絵を掲げておりますけれども、この5つの文書が出ておりまして、幾つかその後更新されたりしていますけれども、1、2、3、4、5とありますが、①は言わばネットゼロに向けて金融機関としてどうトランジション計画をつくっていくべきなのか、そういう議論かと思います。
 
 ②は「金融機関向けのパスウェイの利用ガイダンス」ですけれども、「セクター別」とありますが産業別に、どのように具体的に排出を、どの時点でどの程度排出を減らしていくべきかという道のりを「パスウェイ」というふうに呼んでいますけれども、このパスウェイはどのようなものであるべきか、適合性を判断するためのガイダンスです。
 
 それから③は「ポートフォリオのアラインメント」ということで、ポートフォリオをネットゼロにしていくというのが先ほどのコミットの中にありましたけれども、これを具体的に実現する際の事例が幾つか掲げられています。
 
 それから④「実態経済への移行計画への期待」。それから⑤「多排出資産の計画的な除却」というふうにありますけれども、顧客企業の移行計画というのがどうあるべきであるというのが④で、その中で、ネットゼロに向けたトランジションを計画的に進めていくためにはどのような考え方があるかというのを⑤でまとめているというような状況です。
 
 ①と⑤について、簡単に下のところで資料で御紹介させていただきまして、10ページが①の文章です。
 
「10の要素」とありますけれども、何が金融機関として定めるべきものなのかということについて、ファンデーション、それから戦略を定めるエンゲージメントの戦略、それから指標と目標、ガバナンスということで包括的にまとめておりまして、また11ページですけれども、金融機関としてやり得ることというのを4つに区分していまして、これは一つの整理学だと思いますけれども、1つ目はリプレースする。方策、技術ですね。ソリューションを支援していく、開発を支援していく。
 
 それから、既に1.5度目標と整合的になっている。1.5度というのは2050年も含めて気温上昇を1.5度に抑えるということで、先だってのCOPで重要性が確認されているわけですけれども、既に1.5度と整合的になっている企業へのファイナンスを進めていく。
 
 それから3つ目として、1.5度の業態別パスウェイと整合的で透明・堅牢な計画に基づく移行というものを進めていく企業への支援。それから、多排出資産の計画的な除却、「フェーズアウト」というふうに言っていますけれども、このフェーズアウトをしていくということで、4つのものを組み合わせながらやっていくことが必要なんじゃないかということとなっています。矢印の下のところですけれども、秩序立った移行のためには、多排出産業への支援を含む4つの方策全てが必要である。いずれの手法も、特に3、4については従来の事業と変わらないんじゃないかというような、言わばウォッシュの可能性はあるけれども、これを防ぐためにも透明性とアカウンタビリティーの確保、それからガバナンスが必要ではないかというような指摘となっています。
 
 このためGFANZとして、先ほどの①から⑤のような議論について様々検討していく必要がありますけれども、一方で、資金撤退は必ずしも企業の排出削減につながらない可能性があり、ファイナンスド・エミッションの削減ではなくて、実際の削減に資するファイナンスが必要ではないかと。
 
 ちょっと、この点以外は分かりづらい点があるかなと思いますので、次の12ページ以降のフェーズアウトの資料ですね、先ほどで言いますと資料の⑤ですけれども、この⑤についての資料で御紹介をさせていただければと思います。
 
 何ページがありますけれども、サマリーとして12ページの冒頭に掲げられておりますのは、1.5度目標の達成のために金融機関が果たすべき役割が多いけれども、金融機関が多排出資産への資金供給に躊躇している事例も見られると。
 
 その中で、管理された多排出資産の計画的除却についての手法を検討していくことは、ダイベストメントに代わる選択肢を与えることになるのではないかとしています。ダイベストというのは、その多排出資産から資金を引き上げるということで一般的に使われているかと思いますけれども、金融機関がダイベストをすることで、多排出資産が、気候変動に関して相対的に野心的でなく、開示や精査に消極的な資金提供者に渡ることとなれば、かえって、実際の排出量の増加を招く可能性もあるということで、単純なダイベストという形ですと、企業とのリレーションシップというのが切れてしまいますので、企業とはリレーションシップとかエンゲージメントを維持しながら対応を進める必要があるのではないか、すなわち、貸出資産における排出量というものだけを見るんじゃなくて、リレーションを維持しながらエンゲージメントを続けて、企業の転換、産業の転換というのを促していくことが重要じゃないか、そういう趣旨が掲げられております。
 
 13ページは、簡単になりますけれども、このマネージド・フェーズアウトというものについての他の論点です。
 
 それから14ページは、先ほどと重なりますけれども、現状維持と、真ん中、資金撤退と訳していますけれども、これはダイベストメントというふうに本文では書かれていますが、3つ並べまして、排出量を実際に削減していくのは真ん中のダイベストメントではなくてマネージド・フェーズアウトなのではないかという提言です。
 
 あと、先ほどの話と重なりますが、顧客との関係性のところで、資金撤退をしてしまいますと顧客との関係性を失い、影響力を減じる可能性がありますけれども、マネージド・フェーズアウトという考え方であれば、顧客との関係性を維持しながら、実際にエンゲージメントを通じた働きかけを続けていくということが重要じゃないかということが書かれております。
 
 次に、17ページを御覧いただければと思いますけれども、真ん中の辺りですね、資金動員、資金調達メカニズムに関するガイダンスを策定する。それからマネージド・フェーズアウトに関連する資産を特定するための枠組みを作成すると。いろんなことが掲げられておりますけれども、本検討会で議論していく事項と並行して議論されるようなところもあるかなというふうに思いますので、御紹介させていただいたところです。
 
 GFANZの下にネットゼロの幾つかのアライアンスがあると申し上げましたけど、そのうちバンクに関わるNZBAが同様にトランジション等に関する文書を出しておりまして、この点もご紹介させて頂ければと思います。内容については、日本の金融機関も積極的にこちらに参加されているところだと思いますので、今日は省かせていただきたいというふうに思いますけれども。
 
 それから、パスウェイという言葉がありましたけれども、18ページ、19ページを併せて御覧いただければと思うんですけれども、18ページは、SBTまたはSBTiと呼ばれるようなところが作成しているものでございまして、CDPさんとか国連グローバル・コンパクトなどが協働して運営しているのがSBTになりますけれども、左下を見ていただきますと、今を基準に設定しまして、そこから5年先とか10年先とかX年先の目標を定める、通例であれば、この線がX軸に交わるところがカーボンニュートラル、ネットゼロというものをイメージするところかなと思います。
 
 これに対して現在の排出量というのが左上にありまして、全体をネットゼロにしていくために、どれぐらいの角度、傾きでやっていく必要があるのかということも、地球規格といいますか、温室効果ガス全体がどうなるかという科学的な分析に基づいて試算をされているというふうに承知しています。
 
 幾つか線が引っ張ってありますけれども、一番上が2度というふうにありまして、これは気温上昇を2度に抑える。それから、一番下のほうが1.5度でありますので、気温上昇を1.5度に抑えるということで、上昇幅を抑える分、削減をより早めに厳しくやっていかなきゃいけないという試算になっているわけですけれども、こういう、直線的な線を前提に認証というものをされておりまして、右側に三菱電機さんの例を勝手ながら御紹介させていただいていますけれども、ネットゼロに向けて1.5度または2度というものに整合しているかどうかという点について、外部の機関からSBTの認証を受けているということで、日本企業でもかなりこうした認証を取られる事例がみられているというところだと承知しています。
 
 19ページがTPI、トランジション・パスウェイ・イニシアチブということで、FTSE社とかLSEさんが共同して研究されているというふうに承知していますけれども、右側を見ていただきますと、もう少し、こちらは直線的といいますか、波、幅があるような形になっています。
 
 SBTもTPIも同様にIEAのマクロの試算から導出されているというふうに承知していまして、2050年のカーボンニュートラル、1.5ディグリー、2ディグリーとこちらにもありますけれども、それぞれのためにどれぐらい排出を削減する必要があるのかということを試算されまして、幾つかの幅を持って記載をされているところです。
 
 赤線、緑線がありますけれども、緑のところですと、ある企業さんを取り上げて、緑の線のような形で排出が減っていますと。点線のところは、この企業の方がコミットされている、または公表されているところから推定すると、この点線のような形になるのではないかということで、この目標等が、世界全体の2度等の目標に対してイメージとしてどれぐらい相当しているのかをあえて図示したものと思います。
 
 ただ、後ほども議論があると思いますけれども、個社の達成すべき排出量は1.5度等の関係でどれぐらいかというのは必ずしも簡単に推定できることではないというふうに承知しておりまして、こちらも一つのイメージとして提示されていると思うのですが、ご紹介をさせていただきました。
 
 また、PCAFにおけるファイナンスド・エミッションの話というのを、20ページと21ページで御紹介をさせていただいています。
 
 先ほども、ファイナンスド・エミッションを減らすのではなく、エミッションを削減するファイナンスをやっていくべきじゃないかというような話もありましたけども、ファイナンスド・エミッションというのは、金融機関のポートフォリオの中でどれだけ排出に関わるものがあるのかというのを測定する簡便なツールということで、非常に多く利用されているというふうに理解しております。
 
 具体的な計算方式は21ページにございますけれども、ファイナンスド・エミッションの計測例ということで、融資、負債、純資産とありますけれども、融資先企業の財務状況のうち何割ぐらいが、自分の金融機関から出しているものなのか。それをこの企業さん全体の排出量に掛けたものが、この金融機関にとってのこの企業へのファイナンスド・エミッションである、というような形で計算をしているのがこの計算式です。
 
 より具体的なアセットクラスごとにどう計算するのか、データが取れない場合はどうするのかといったことについては、20ページ、これは日本の金融機関も積極的にご参加されていると承知しておりますけど、PCAFというところでイニシアチブがありまして、こちらで具体的な計算のやり方について定めているというふうに理解をしています。
 
 最後、22ページになりますけれども、本日御議論いただきたい事項ということでまとめさせていただいております。
 
 1ページで、共有・議論すべき論点の一例ということで3点掲げさせていただいておりますけれども、これ以外に、金融機関の脱炭素の取組を進めていく上で必要な論点があるかどうか。
 
 また、国際的なマインドについては、GFANZなどの取組は民間主体の任意の取組だと思いますけれども、これを国際的に標準化するというようなことで動きが非常に見られるところです。
 
 これを国内でどう適用していくか、適用していく場合にどのような課題があるのかということについて御議論いただければと思います。また、こうした課題に実効的に対応していくために、金融庁・政府としてやるべきことについてもご意見をいただければと思います。
 
 また、地域については、地域特性を踏まえて個別に対応を進めていく必要があると思いますけれども、関連した様々なステークホルダーの連携とか、あとサプライチェーン単位での対応とか、産業単位での対応とか、かなり多様にバリエーションがあるのかなと。また、人材の確保というのも課題かなというふうに思います。
 
 こうした中で、地域金融機関がどのようなことができるのか、留意点があるのか。また、この地域金融機関の対応を進めていくために、金融庁・政府として留意しておくべき点、支援を行うべき点があれば、また御指摘いただければというふうに思います。
 
 また、本年7月に、冒頭に御紹介しましたけれども、ガイダンスというものも策定しておりまして、このガイダンスの議論もベースとしながら、本検討会でさらにより具体的に議論を進めていきたいというふうに考えておるところですけれども、最終的な成果物について、どのような形で、内容としてどのような成果につなげていくかべきかということについても、ぜひ御指摘をいただければというふうに思います。
 
 説明は以上とさせていただきます。
 
【根本座長】  どうも御説明ありがとうございました。
 
 なお、本検討会の対象としまして、様々な金融機関も対象とされていると思いますが、事務局からの説明では大手銀行、地域金融機関といったお話があったと思います。
 
 本検討会におきましては、三菱UFJ銀行、千葉銀行、日本政策投資銀行、第一生命の4社の方に御参加をいただいておりますので、脱炭素をめぐる直近の取組に関しまして御紹介をいただきたいと思います。
 
 では、まず三菱UFJ銀行、天田委員より、よろしくお願いいたします。
 
【天田メンバー】  ありがとうございます。三菱UFJフィナンシャルグループ、三菱UFJ銀行の経営企画部サステナビリティ企画室で、室長をやっております天田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 
 サステナビリティ企画室は、MUFGグループのグローバルベースのサステナビリティ戦略の策定、それから推進を担当している部署でございます。どうぞよろしくお願いします。
 
 それでは早速ですけど、MUFGのカーボンニュートラルの取組の概要について御説明したいと思います。
 
 早速2ページ目までお進みいただければと思います。最初に、MUFGのサステナビリティ経営の全体像と位置づけについてでございますけども、2021年4月より、MUFGは「世界が進むチカラになる。」という自社のパーパスを定めまして、環境・社会課題解決への貢献を従来以上に強くコミットした中期経営計画を策定しております。
 
 さらに、世の中からの期待とMUFGの事業領域との親和性、この両面から、MUFGとして優先的に取り組むべきサステナビリティに関する10課題を特定しました。
 
 その中でも気候変動の対応というのは、リスク、それから機会、両面から最重要の課題の一つとして位置づけております。
 
 3ページ目にお進みいただければと思います。
 
 このような取組、開示を行っていく中で、例えば日本政府のカーボンニュートラル宣言など、気候変動対応に係る世界のモメンタムが大きく加速してきました。
 
 その中で、我々MUFGにおいても、2021年5月にカーボンニュートラル宣言を公表しました。先ほど金融庁様からお話のあったネットゼロ・バンキング・アライアンスにも加盟しております。
 
 2050年までの投融資ポートフォリオのGHG排出量ネットゼロ、それから2030年までの、スコープ1・2ですけども、当社自らのGHG排出量ネットゼロを2本柱とするコミットメントを出しております。
 
 ページの下段に示しております①から④は主な取組ですが、これはガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標といった、TCFDの開示の枠組みに沿った整理にもなっております。
 
 4ページ目までお進みください。今年4月、カーボンニュートラル宣言への対応として、1年間取り組んできた取組内容を、MUFGプログレスレポートという形で公表しております。
 
 こちらがサマリーになっていますが、定量的な実績であるとか目標の提示に加えまして、そこに至るアプローチであるとか、ベースとなるMUFGとしての考え方を可能な限り丁寧に説明したレポートになっています。
 
 投融資ポートフォリオの排出量ネットゼロに向けては、電力と石油・ガスセクターで中間目標を設定しております。
 
 中間目標設定に際して、パリ協定合意事項に貢献するということと同時に、脱炭素社会へのスムーズな移行を支援するという考え方を最も大事にしておりました。この2つの考えをどう両立するか、これを議論しまして、ここでお示ししているとおり、レンジでの中間目標というのを設定しております。
 
 また、ファイナンスを通じた脱炭素化というところで、我々が進めていますサステナブルファイナンスにつきまして、目標と実績というものを示しております。
 
 そのほかにも、自社の排出量のネットゼロに向けても取り組んでおりまして、現在では国内、これは子会社も含みますが、自社契約電力の100%再エネ化を既に完了しているという状況です。
 
 アセットマネジメント領域もございまして、こちらもネットゼロを進めておりまして、今月中には運用資産からの排出量ネットゼロに向けた中間目標を公表していく予定でございます。
 
 次のページへお進みいただければと思います。お客様の支援とエンゲージメントについても紹介させていただきますが、こちらも4月発行のプログレスレポートに掲載した内容でございます。
 
 お客様のニーズはファイナンスに限られるものではなくて、その前後、例えばGHGの排出量の把握であるとか脱炭素に向けた戦略の策定といったものにまで広がっておりまして、今後はカーボンオフセットなど、そういったニーズも見込まれてきます。
 
 エンゲージメントを通じてニーズを的確に把握した上で、それぞれのお客様の置かれた段階に応じたサービスを提供できるように、他社とも協働しながらソリューションの提供機会を拡大しております。
 
 その一例としましては、ゼロボード様、また日立製作所様とGHG排出量の可視化の支援であるとか、東京海上日動火災保険様とTCFDコンサルサービスなども進めておりまして、着実に実績も上げております。
 
 気候変動関連のビジネスが広がりを見せている一方で、様々な業種の企業が積極的にビジネス展開をしておりますので、この対応が遅れた場合にはビジネス機会を喪失するというようなことで、リスクにもつながると考えております。
 
 6ページ目までお進みいただければと思います。これが最後のページですが、ここで記載しておりますトップボックスのところ、MUFGではネットゼロ・バンキング・アライアンスであるとか、アジア・トランジション・ファイナンス・スタディ・グループといった国際イニシアチブにおいて、トランジションの推進に向けてガイドラインの策定を主導してきました。
 
 その背景としましては、トランジション・ファイナンスを最も必要としているのは、セクターで言えば多排出セクターであって、地域で言えばアジア、これは日本を含むと思いますけども、であると思っています。
 
 トランジション・ファイナンスを拡大する上で、欧米を含め、国際的に、多排出セクター及びアジアへの移行支援の必要性が認知されることが重要だという問題意識を従来から持っていたことが背景としてあります。
 
 成果物として今月、左側ですけども、NZBAトランジション・ファイナンス・ガイドというものが発行されております。これは実務的な観点から、最低限満たすべき原則としての位置づけとなっています。
 
 右側ですけども、先月、アジアの現実的かつ段階的なエネルギートランジションの実現に必要な共通原則であるとか基準等を議論してきましたアジア・トランジション・ファイナンス・スタディ・グループから、ここにお示ししているような2つの成果物が公表されました。これはICMAといったガイドライン、この既存のトランジション・ファイナンスに係るイニシアチブを補完するような実務的なガイドラインの位置づけになっております。
 
 MUFGからの説明は以上とさせていただきます。ありがとうございます。
 
【根本座長】  ありがとうございました。それでは続きまして千葉銀行、官澤委員、お願いいたします。
 
【官澤メンバー】  千葉銀行、経営企画部の官澤と申します。今回こういった形の検討会に参加させていただく機会をいただきまして、非常にありがたいと思っております。
 
 現在、弊行、地銀協会長行を務めており、個別行としての立場はそうですが、本日はまず地銀協を代表しているという立場で、一言御挨拶をさせていただきます。
 
 我々地方銀行にとって、地域のカーボンニュートラル実現に向けてリーダーシップを発揮して持続可能な社会づくりに貢献していくこと、これは極めて重要な役割であると認識しており、特に中小企業は大企業と比較しますとリソース面で不足しているという状況にあり、その中小企業にリーチを持っている我々が、啓蒙も含めて役割を果たしていくということ。逆に言いますと、まさに今こそ地方銀行が、力というか存在感を発揮できるという機会、チャンスだと、肌感覚で実感しているところです。
 
 2020年6月、地銀協としてTCFD提言に賛同し、会員銀行の機運の醸成に取り組んでまいりました。また、今年度2022年度の事業計画には、SDGsの達成に向けましたESG経営の推進を掲げており、会員銀行の気候変動への対応を支援しているというところです。
 
 現在、会員銀行は62行ございますが、62行のうち60行がTCFD提言に賛同しているという状況です。
 
 また、多くの地方銀行は気候変動問題への対応を重要な経営課題と捉えており、環境方針を制定するとともに、温室効果ガス排出量の削減目標の設定でありますとか、体制整備等を進めているということです。
 
 日本がカーボンニュートラルを実現していくために、今後、サプライチェーン全体での排出量の削減に取り組むということ、これが喫緊の課題となる中では、サプライヤーであります地域の中小企業に対する気候変動対応への支援の重要性が一層増しています。
 
 地方銀行は、地域の中小企業の脱炭素化、カーボンニュートラルに資するグリーンファイナンス等の資金支援のほかに、排出量の算定、見える化や、排出量削減に向けたビジネスマッチング等による非金融支援にも積極的に取り組んでいるところです。
 
 さらに、地方銀行は子会社を設立して自ら再エネ発電事業に参入したり、銀行法改正を受けまして、地域の関係者と連携して、地域特性に応じた再エネの活用拡大に取り組む動きも広がっています。
 
 少しだけ、個別行である千葉銀行の脱炭素化への取組について御説明します。
 
 一枚、簡単な資料を御用意させていただいております。
 
 脱炭素に向けました動きが加速している中、弊行も今年3月に、2030年度カーボンニュートラル達成の目標を公表いたしまして、国が掲げています2050年カーボンニュートラルに向けて、地域をリードしていくためにも、まずは当行自身が、遅くとも2030年度までにはカーボンニュートラルを達成したいと考えております。
 
 一方で、地域のお客様に向けた取組としては、サステナブルファイナンスや脱炭素コンサルティング等を通じまして、お客様の脱炭素に向けた取組支援を行っているところです。
 
 こうした中、今年1月、千葉県、当行を含めた県内地銀3行、県内の経済団体7団体、千葉県信用保証協会、合計12団体で、地域のSDGsに向けた取組を加速させていくための枠組みとして、千葉SDGs推進ネットワークを発足させたところです。
 
 当行は事務局としてネットワークの創設時から運営全般に携わっておりますが、このネットワークの参加団体が緊密に連携することによって、同じタイミングで千葉県が募集を始めた「ちばSDGsパートナー登録制度」の普及促進を進め、登録者数は募集開始から1年足らずで1,359団体まで増加しています。
 
 当行自身の取組に加えて、こうした枠組みを活用することで地域をリードし、千葉県のカーボンニュートラルの実現に貢献したいと考えております。
 
 右の図に記載しておりますが、サステナブルファイナンスについては、企業規模に応じた商品のラインナップを一通り取りそろえており、幅広い層のお客様に対して支援できる体制を整えており、再生可能エネルギー向けの融資についても積極的に推進しているところです。
 
 サステナブルファイナンスについては、2030年度までに2兆円という実行額目標を掲げており、達成に向けてグループ一体となって推進しているところです。
 
 簡単ではございますが、以上とさせていただきます。今後ともよろしくお願い申し上げます。
 
【根本座長】  どうも御説明ありがとうございました。では、続きまして日本政策投資銀行、吉田委員、お願いいたします。
 
【吉田メンバー】  日本政策投資銀行の吉田でございます。経営企画部でサステナビリティ経営室長をやっております。本日はお時間いただきましてありがとうございます。
 DBJ自体の取組というところでいきますと、今日はちょっと御紹介してないですけど、経営計画の中でサステナビリティ経営を進めていくためにGRIT、「グリット」というふうに言っていますけど、グリーン、レジリエンス、イノベーション、トランジション、この分野にDBJの投融資の4割程度をこの5年間に集中的に対応していくという計画を掲げております。
 
 それを今、実行している状況なんですが、私からは、よりDBJが今何を考えているかという意味でいきますと、本当に脱炭素社会に向けて実際の企業が一歩進めるかどうか、地域が一歩進めるかどうかという本当に難しい局面に来ていて、そこをDBJとしても何とか動かすように努力しているというような話を中心にさせていただいて、委員の皆様の御参考にしていただければと思っております。
 
 1ページ目は、DBJの環境であるとか自然資本に対する取組というのは、最近ではなくて古くは1960年代、DBJ自体が政府が株を持っているということもありますので、こういう公害防止から始まって非常に環境に対する意識が高い中で、2004年に環境格付融資ということで、実際の財務資本を評価して、ガバナンス面から会社さんに対して、評価と言うとちょっと語弊がありますけど、アドバイスをさせていただきながら、会社全体を評価しながらファイナンスを紐づけていくという取組みもやっております。
 
 今は、環境格付に加えて、人的資本とかでも少し集まっていますけれど、注目がありますけれど、健康経営であるとか、あと防災関係、そういう会社のバランスシートに載ってこないようなものをどう評価して、ファイナンスの世界に結びつけていくかということをやらせていただいております。
 
 1ページ目の下のほう、2021年にGRIT戦略ということで、これは中期経営計画の中で掲げているものになっております。
 
 2ページ目のところ、特徴的な取組でございます。これはもう御案内のとおりなのですが、商船三井さんの例を書いていますけど、これは、船業界は御案内のとおりIMOが明確なトランジションのパスウェイを出していて、そこに乗っていくということが客観的にも説明がしやすいということで、LNG船に切り替えていくというところがそのトランジション・パスウェイに載っているということで、外部機関、金融機関も含めてやりやすかったということがありまして、こういうものは「ザ・トランジション・ファイナンス」ということで世の中にも出てきているということかと思っています。
 
 一方で、やっぱりトランジション・ファイナンスの裾野というのはそれだけに限らずに、もう少し会社さんがネットゼロに向けて取り組むものも広く取り組んでいくべきじゃないかというのがDBJの考え方でありまして、そこで、川重さんが水素に向けて取組を進めておられる、チャレンジされているという中で、サステナビリティ・リンクド・ローン、SLLというのを、対話型ということを我々として特色を出して、サステナビリティ・リンクド・ローンを打っているわけでございますけど、これも広い意味では、本来はトランジション・ファイナンスの一環としてもあってもいいのではないかなというふうに思っております。
 
 先ほどデットガバナンスの話があったかと思いますけど、やはり融資をすることによって会社さんと対話の機会が生まれると。それで、会社さんのやっている取組を金融機関としてもしっかりマーケットに対してアナウンスしていくという役割も、金融機関としては大事になるのではないかなという考えの下で、こういうものも取り組ませていただいています。
 
 あと、両方に共通しますが、DBJ単体だけでやっているわけではなくて、地域金融機関の皆様方とメガバンクの方々にも入っていただいて、できるだけトランジション・ファイナンスの裾野を広げていくということも、DBJとして非常に重視して取組をしているところでございます。
 
 3ページ目でございます。続いて新しい技術に着目したもの、これも三井のトランジションの技術ロードマップに入っている一つの特徴かと思っておりますが、我々のこのつばめBHB、我々以外の方々もちろん入っておられますけど、こういうオンサイト型のアンモニア供給であるとか、今回ここの例には書いていませんけれど、核融合であるとか、あと蓄電池であるとか、そういう新しい技術に対するファイナンスということも、広い意味ではトランジションに資するものだというふうに考えておりまして、いわゆるラベリングのトランジション・ファイナンスではないかもしれませんけど、DBJとして重視しながら、こういうベンチャーであるとかスタートアップに対するローン、あと、エクイティということに対してもやらせていただいているという例で御紹介をさせていただいています。
 
 4ページ目が、やはり地域が非常に難しいなというふうに思っております。
 
 いろいろと我々も会社さんと対話をしているんですけど、やはり地域において脱炭素の先行的なリスクも機会も両方が出てくるというふうに感じております。
 
 この地域の動かし方を間違えると、日本の脱炭素は進まないんじゃないかという非常に強い問題意識をDBJは持っておりまして、今年度、この地域と脱炭素というのを掛け合わせて、いかにして一歩前に進められるかということを、10支店、全国にありますけど、支店を挙げて、あと役員も挙げて、この取組を今、頑張ってやっているというところでございます。
 
 水素・アンモニアですね、これは三井さんのほうでも今やっておりますけど、徐々にいろんな支援制度が見えてくるという中で、先行するエリアにおいてどのように進めていくかということがポイントになってくるかと思っておりますけど、水素・アンモニア調達の地図が載っておりますけど、全国でいろんなところで可能性があるわけですけど、これを全部やっていくわけにはいかないので、ある程度絞りながら、どのように支援していくかという、その絞っていくようなところも政府として考えなければいけないところだろうというふうに思っているところでございます。
 
 5ページ目のところ、我々はそういう問題意識の中で、いろんな協議会の中に入っております。
 
 今、日本で脱炭素に向けた地域の協議会って本当にいろいろ立ち上がっています。やっぱり地域においては、先ほど千葉銀行から御説明もあったとおり、一社だけで取り組むのは限界があると。ある程度、面的な対応をしながら、その地域に所在している産業全体を転換させていくということを考えていかないと、身のある脱炭素になっていかないという中で、この協議会というのが立ち上がっているわけですけど、協議会が立ち上がったは立ち上がったでいいのですが、やっぱり、船頭多くして、みたいなところも見受けられると。
 
 なので、最終的には本当にキーとなる会社さんがある程度インナーで議論して、初めの第一歩をどういうふうに作っていくかということが、非常にコアなポイントになってくるのかなと。そこは地域と産業の掛け算になってくると。産業全体のトランジションのパスウェイ、ロードマップと、それを地域でどう動かしていくかという地域の主要なステークホルダーの方々というのをつなぎ合わせるという、そういう役割が非常に大事になってくるということでして、DBJもその一つの役割として果たしていければということで、今、頑張っているということでございます。
 
 その一つの例が6ページ目でございます。これはどちらかというと東京資本ではなくて地域資本の会社さんが集まってということですが、四国中央市の例では、四国中央は紙一般の一大集積地になっていまして、大王さん、丸住さんが集積されていると。
 
 彼らは、石炭を使って自家発して大量の熱を使って紙をつくっていると。このままだと石炭が使えなくなるという中でいくと、産業全体が駄目になってしまうという非常に強い危機感の下で、四国中央市も含めてですけれど、こういう協議会をつくっていますが、御案内のとおり、地域の実情で申し上げますと、そういう狭いエリアに似たような会社さんがあると、大体あまり仲がよくないと。大王さんと丸住さんもそんなに仲よしではないという中で、お互い牽制し合っているんですけど、お互いに持っている問題意識は同じなんです。
 
 やっぱり、両社で同じような港に同じような水素とかアンモニアを別々に持ってきてもしようがないと。できるだけ一体化して調達していきたいという思いは一緒ですが、お互い言い出せないという問題もあるので、それは我々が問題意識を聞いて、そこをつなげるような役割をさせていただいているということです。
 
 これも、見た目はきれいですが、やっぱりやっていることは結構泥臭くて、例えば、変な話ですけど幹事会社の名前で「愛媛製紙、大王製紙、丸住製紙」って書いていますけど、この名前を並べる順番一つ取っても、例えば地域の会社さんとかはすごい気にされると。そういう現状とかもよくよく理解しながら、一歩どういうふうに前に進めていくかということをやっていかないと、日本の脱炭素というのがリアリティーを持ったものになっていかないということがあります。
 
 そういうことも我々も勉強しながらやらせていただいているということですが、この四国中央市としての話は、多分、地域資本の会社なので、ステップ的には第2ステップぐらいになっていくんだと思うんですけど、対岸の徳山、下松であったり、姫路であるとか、そういうところがどんどん燃料を入れていくのか、そこから燃料を入れてくるとか、いろんな選択肢を考えながらロードマップをその3社で考えていこうということで、実際に大王さん、丸住さんは、これも協議会をきっかけに連携協定みたいなものを結ばれているというようなことが動き始めているということでございます。
 
 こういうのが全国で、特に多排出産業が多いようなエリアでいろいろ出てきていますので、我々としてもそういうところで、つなぎ役ということで貢献してまいりたいというふうに思っております。
 
 すみません、以上、簡単にではございますけども、DBJからの報告とさせていただきます。
 
【根本座長】  どうも御説明ありがとうございました。続きまして第一生命、岡崎委員、お願いいたします。
 
【岡崎メンバー】  第一生命の岡崎です。よろしくお願いいたします。
 
 弊社の取組としましては、トランジション・ファイナンスに関する取組方針というものを、先月末、社内の決裁を経て対外開示致しましたので、そちらに関して、考えの背景と内容を簡単にご説明させていただければと思います。
 
 まず、このトランジション・ファイナンスに関する取組方針を決めたというか、対外開示した背景ですけども、先程来ございますとおり、2050年迄の社会全体のネットゼロ実現、それに向けて金融機関としての責務を果たすという意味で、我々もグローバルなネットゼロ・アセットオーナー・アライアンスに参加をしています。その中で、2050年迄の途中経過として、弊社の場合は2025年の中間目標をセットしており、今後5年ごとに中間目標をセットする必要があります。実際に企業であったり産業全体が転換していくためには、そのためのファイナンスをつけないといけないということで、我々としましては、実社会の構造の変換、ネットゼロに向けた動きをサポートするというところを重視したいというスタンスですけれども、一方で対外的にコミットしている中間目標もミートしていかなければいけないというところで、どちらも大事ということなのですが、これ、どちらも大事と言っていると保守的にならざるを得ないということで、ファイナンスの実行が及び腰になるということがあると思いましたので、弊社としては、このどちらも重要なものの中で、どちらをより重視すべきかというところで、社会全体のトランジションを重視するという姿勢を明確に示すということが必要である、というふうに思いまして、対外開示をしたという経緯でございます。
 
 当然、社内では議論もございまして、わざわざ外に対して言わなくてもいいんじゃないかとか、そういった話もありましたけど、金融機関として我々が積極的にこうした方針を開示して一種の呼び水となることで、社会全体がトランジションに対するサポートをより明確にしていくということが必要ではないかというふうに考えております。
 
 ただ当然、2030年の中間目標ですとか、その先の2050年というところの排出量削減のパスというところも重要ですし、その実現に向けて不断の努力をしないといけないということでございますので、ここのところの説明責任というところはしっかりしていかないといけないというふうに思っておりまして、資料ですと、取組方針の(1)の注書きのところに書いておりますけれども、このトランジション・ファイナンスの投資に係る割当ての排出量に関しては、数字はしっかり別枠で管理をして、もし仮に今後2030年とか35年、その辺りで実際に我々の数字が排出量の削減目標を上回るような場合には、トランジション・ファイナンスとしてはどれだけ投資をしているんだというところが見えるような形で開示をしたいというふうに考えてございます。
 
 2点目の取組方針のところに関わりますけれども、トランジション・ファイナンスに関して積極的に取り組むということはあるのですが、「トランジション」という名がついていれば投資をしますというわけでは全くございませんで、トランジションの戦略の妥当性ですとか実現可能性、案件ベースだけではなく、企業全体、できれば産業として、しっかりトランジションの戦略、道筋が見えているということが必要だというふうに思っておりますので、そこを我々としては、投資家と企業様の一定の緊張関係というものをしっかり保って、より実効的なトランジションの戦略の策定ですとか実現を企業に促していく。エンゲージメントや対話の中でそういったことを求めていきたいというふうに考えております。
 
 取組方針の次の3番、4番に関わるところですけれども、そういう意味では、投資の実行に至らなかった場合の説明ですとか、投資後の戦略の進捗状況のフォローもしっかりやっていくということが必要かと思っております。
 
 投資ができなかった場合には、何が企業様側で戦略として不十分だったのか、どういった定量的なデータが不十分であったのかというところをしっかりお示しもしたいというふうに思っておりますし、一回投融資をした後、企業様の排出量削減の進捗がパスウェイに満たない場合には、エンゲージメントをしっかりする。その後どのように修正というか回復を図って、道筋に戻っていただくか、というところも重要だと思っておりますので、そこをしっかり伝えていくというところ。これは企業様側、投資家側、双方がしっかり努力をして満たしていかないといけないところだというふうに思っております。それに向けて、我々もしっかり知見を深めていきたいというふうに考えています。そのようなことを、この取組方針の方でご説明させていただいております。
 
 資料の最後2ページに、生命保険協会の取組を載せさせていただいておりますが、生命保険協会全体としても、機関投資家としてESGの投融資ですとかスチュワードシップ活動に関して、継続して知見の向上や各種の取組を行っております。
 
 例えば、年一回の企業・投資家・政府への提言レポートの作成であったり、スチュワードシップ活動については協働エンゲージメントというものも実施しております。近年は気候変動を重点テーマとして取り上げており、そうした取組も資料としてまとめています。これらの状況も踏まえて、本日からの議論に参加をさせていただいています。
 
 私からは、簡単ですが以上となります。
 
【根本座長】  どうも御説明ありがとうございました。
 
 それでは、議論に移りたいと思います。今回、第1回目の会議となりますので、初めの御発言の際には簡単に自己紹介をしていただき、続けて御意見をいただく形で進めたいと思います。
 
 また、初回でありますので、事務局からの御説明に限らず、幅広い御意見を頂戴できればと思います。では、よろしくお願いいたします。
 
【藤井メンバー】  藤井と申します。今、金融庁の参事もしておりますけれども、サステナブルファイナンス有識者会議のメンバーもさせていただいています。
 
 事務局資料の23ページに「議論いただきたいポイント」がありますので、このベースでコメントさせていただきたいと思います。
 
 1つ目の、1ページの3点以外に必要な論点はあるかというところですけれども、言わずもがなでもあるのですが、人材育成は全てのパーツに必要不可欠であって、かつ、全体的な底上げが要ると思っていますので、1ページの3点と並ぶようなものかというところはありますけれども、必要ではないかと思っております。
 
 そうした中で、一部、証券外務員試験等にサステナブルファイナンスの項目が織り込まれつつあるという進展も理解はしておりますけれども、今後様々な資格制度等への織り込みが必要ではないかと思っています。
 
 またこの1つ目の点について、頭に置く必要があると思いますのは、金融機関の取組と裏表の関係にある実体経済への働きかけであります。
 
 金融機関がトランジション・ファイナンスを企業にどのように推進するにしても、企業さんの方の移行計画の策定が前提になりますので、先ほど第一生命様から御説明があったように、実体経済、すなわち事業会社の方でも同様の論点整理を同時並行的に行う必要があると考えております。
 
 この点につきましては、当然に経産省さんの方で動かれているとは思いますけれども、そことの平仄をぜひ取っていただきたいと思います。
 
 この点、8ページで御紹介がありましたGFANZの体系でも、金融機関のトランジション・プランニングとリアルエコノミー、すなわち実体経済のトランジション・プランニングというのが対になっていると理解しています。
 
 一気に続けますけれども、2つ目の論点で、スタンダード化を適用する際の金融庁・政府の支援方法という点は、3つ目の地域の対応における留意点と合わせてコメントをさせていただきます。日本におきましては、今日お話しいただいた大手企業以外の中堅中小企業向け貸出、5ページでご紹介いただいた東海地方の取組例でいいかえますと、Tier1以下の地域金融機関の貸出しウエートが過半を占めていると思います。
 
 ここでの取り組みを同時並行的に進めないと、5ページのピラミッドの上のほうで進展があっても、下のTier2、Tier3の事業会社さんでは進まないということになってしまって、全体としてのネットゼロを達成できないということになろうかと思います。
 
 一方で、リソース面でいいますと、この三角形と逆三角形の関係があるんじゃないかと思っています。大手金融機関は相当のリソースを張っている一方で、Tier2、Tier3の金融機関になるとリソースはかなり限られていると。これは事業会社さんも同様だと思います。
 
 そうした中で全体を底上げするためには、人材育成だけでは足りなくて、ある程度、金融庁ですとか関係省庁で標準的な基準とか指針といったもので、定型的に進められるような枠組みが必要ではないかというように思っています。
 
 最後の論点の本検討会としてのアウトプットにつきましては、これは予断を持つ必要はないと思いますし、今日は初回でもありますので、今後議論の展開で検討していけばいいと思ってはおりますけれども、金融機関における対応、あるいは企業との対話をこの検討会の趣旨としているという点で言いますと、7月に公表した、「基本的な考え方(ガイダンス)」との親和性は高いのではないかと思っております。
 
 私からは以上です。ありがとうございました。
 
【根本座長】  どうも御意見ありがとうございました。では佐藤さん、どうぞ。
 
【佐藤メンバー】  佐藤でございます。私は国際協力銀行で、2000年頃から、15年、20年ぐらい環境分野でしてきた経験があり、今は名古屋大学に出向して、環境政策とか国際的なイニシアチブの研究をさせていただいています。
 
 私の経験的に、国際金融といいますか、国際開発金融機関でも10年、15年かけて、気候変動だったり、サステナビリティというのを長く対応してきているというのを、私自身は結構長く見てきておりまして、そこで現在、日本のでも急激にその対応が進んでいるということなのですが、まず論点の3つの中で、この1番目にあります「国際的な動向・実例」について感じたのは、いろんなイニシアチブというのは、結構、欧米では10年、15年かけて、結果としてルール化されているという性質があるんじゃないかなと思います。
 
 つまり、これらは、彼らのいろんな紆余曲折の結果であって、これをあまりに結果だけを見ますと、どうしてもテクニカルな議論になりがちで、どうしてもこれしなきゃいけない的な、後ろ向きなことも出てくるかなと思います。
 
 そうしますと、日本全体でも脱炭素という大きな方向性が定まっておりますが、問題はやっぱり各論なのですが、国際金融機関で行われた議論を見ますと、やっぱり前向きに金融機関の取組をしていこうという流れかと思います。
 
 具体的に言いますと、環境分野をメインストリーム化、言わばニッチなものじゃなくて、中心業務としてひなたに持っていこうというのが一つと、あともう一つが、イノベーション的な要素があろうかと。どうしても従来の経験ではない事業が多くなるので、これはイノベーティブだと。
 
 じゃあどういうことかといいますと、やはり当初は、今もそうですけどブレンディッド・ファイナンスのようないろんな産業助成政策とか、場合によってはリスクに対して公的なものを絡めながら発展してきたということで、市場を変えていくというか、市場の質を変えていったかと。市場というのは、経済構造というか、あるいは人々の行動様式も含めて。
 
 そういうこともあるので、申し上げたいのは、その辺の総論というかビジョンというか理念みたいなものが、①の「トランジション等の国際動向」の前に、やはり国家の役割の確認とか、脱炭素を前向きにやっていくために、何が今、状況として起きているかの確認が必要ではないかと。
 
 例えば最近、経済学者の研究ですと、エコの商品を消費者がお金を多少出しても買っているとかですね。グリーンボンドなどのプレミアムもそうですけど、やはり消費者の前向きな行動様式みたいのがあって、それで新しい事業が出て、金融機関はそういうのにしっかり支援していきましょう、みたいな転換があるので、そういったところをやはり最初に見て、それに基づいてルールがあるというか、そういう流れかなというところがありました。
 
 その点でもう1点だけ、トランジション・ファイナンスについてもそうだと思いまして、たしかイギリスの機関のクライメート・ボンド・イニシアチブが2年ぐらい前に出したレポートですと、トランジションというのは一律に考えるのではなくて、やはり今あって、2050年も絶対必要だというサービスや産業というのは、幾らCOが多くてもすぐになくなっていくことはできない。
 
 ただ、逆に言うと他のもの、電力とかいろいろ代替性の高いものはどんどんどんどん脱炭素化します。そういった、産業をより理解して脱炭素を進めていく、そういうのが大事かなと思った次第です。
 
 以上です。
 
【根本座長】  ありがとうございます。
 
【井上メンバー】  IHIの井上といいます。私はIHIの下でコーポレートファイナンスを担当しています。
 
 なかなか難しい議論なのですが、先ほど藤井さんもおっしゃられたとおり、リソースというか、なかなかこの議論って理解するのが難しくて、弊社の場合、今日数えると、例えば専門部隊が経営企画とか広報とか総務で16人ぐらいの専門部隊を抱えています。それとは別に、私のようなコーポレートファイナンスとか、そういう部隊がいて成り立っているような形になっていまして、例えば今年の6月にトランジション・ボンドを出しましたけれど、そこに対してもやはりなかなかこう、ICMA向けのとかいろいろあって、なかなか理解が難しく、特にIHI、弊社の場合はスコープ1・2というよりはスコープ3が大半を占めるということで、要は、まさにこれまで、これまでというのは石炭火力で、石炭ボイラーとかをつくっていたのを、今後アンモニアにしていくとかいう中で、どういうふうにそれを、トランジションを強化するのかとか、いろいろな中で、やはり大手金融機関の知恵を借りながらとかいろいろする、大企業になるとそういうリソースがあるのだと思います。
 
 ただ、逆に言うと中小企業では、そこら辺のリソースは非常に足りていないと想像します。メガバンク等はすごくリソースを張っているんだと思いますけれど、そういうところが、浸透させるためには課題なのかなと思いました。
 
 以上です。
 
【根本座長】  ありがとうございます。オンラインで御参加いただいている黒﨑様、お願いいたします。
 
【黒﨑メンバー】  発言の機会をいただきましてありがとうございます。黒﨑美穂と申します。以前までは東京で、ブルームバーグの中のシンクタンク部門のブルームバーグNEFというところのオフィスの代表をしておりました。今はシンガポールにおりまして、フリーランスでアナリストをさせていただいております。
 
 本日は御発言の機会をいただくのと、あとはプレゼンテーションをしていただきまして、非常に有意義な内容だったかと思います。
 
 私の方から3点ほどございます。まず1点目ですけれども、こちらの御議論いただきたい点というところのちょっと外枠になってしまうのですが、こちらのアジア地域におりますと、やはりカーボンバジェットを意識した議論がよく行われております。
 
 特にシンガポールですと、金融庁のちょうど同じような形でマネタリーオーソリティー・オブ・シンガポールというのがあるのですが、そこの長官に当たるような方が、やはり「スピードとスケール」という言葉を何度もお使いになられております。
 
 その理由としては、やはりアジア地域含めまして、気候変動の影響を非常に受けるということで、カーボンバジェットの話をよくされて、その影響を受けたときのオペレーションのリスクをどうするか、そのために、それを防ぐためのファイナンスであるし、それが起こってしまったときのファイナンスであるということをよくお話をされています。
 
 ですので、こちら、いろんなイニシアチブの話も今日出ましたし、いろんな商品の話ですとか、具体的に何をしていくかというところもあるんですけれども、そもそも何でやらなければいけないかというところにもう一度立ち返ったときに、例えばこの地域金融機関にスケールとして広げていくときには、こういうことが地域でも起こり得るということをいま一度、この議論の中にぜひ入れていただきたいというふうに思いますし、そういったところをやはり金融庁から、もしくは政府からいま一度、こういうことなので必要ですということで言っていただくことが必要ではないかなというふうに思います。
 
 それを踏まえまして2点目ですけれども、トランジション・ファイナンスというのは、このシンガポールでもアジアの地域でも皆様興味を持たれておりますし、シンガポール政府自体もやろうということで、いろいろと動きも盛んなのですが、その中で、マーケットの方とお話をしますと、トランジションを遅らせるものであってはいけないということを皆さん、よくおっしゃられます。
 
 それは、先ほど御説明の中にもありましたウォッシングのところにも関わってくるのですが、トランジション・ファイナンスというのは、実態の今ある経済とグリーンの間にある大きなバケツのような形で、そこに何でも入れればいいというものではなくて、しっかりと、先ほどの議論にありましたようにパスウェイを描いた中で、今何ができるのか。それが先のグリーンのところにジャンプできるものであれば、グリーンを先行してやるべきだと思いますし、どうしても難しいものとして、やはり先ほど佐藤様の御発言の中にもありましたけれども、非常に排出が難しいところに対してのトランジションという概念になりますので、そこをいま一度御確認いただきたいというところが2点目となります。
 
 3点目ですけれども、この2ポツのところの、どのようなスタンダードで、国内に適用する際の課題等、議論になっておりますけれども、やはり国内に展開する際に国内のルールというのをつくるのは、なかなか、この議論の中でいろんな国際的なイニシアチブの御案内もあったと思うのですが、ここでまた、国内ではこういうふうにやりましょうというようなルールは、ぜひ避けていただきたいなというふうに思います。
 
 それはやはり、先ほどPCAFの話ですとか、スコープ1、スコープ2、スコープ3のようなお話もありましたけれども、国際的に排出量の数値のモニタリングというのは基準が設定されておりまして、このところでぜひ日本も、このトランジション・ファイナンスでリーダーシップを取っていただきたいと私も思っておりますので、ぜひこの展開をする際には、国際的な水準にのっとってやっていただきたいというふうに思います。
 
 その中で、国際的な水準の中で数値のモニタリングということが非常に大事だと思います。先ほどいろんな金融機関様の実例というのを非常に勉強させていただいたんですけれども、具体的に、このファイナンスをやったことでどれぐらいの排出量の削減になるか等々、いろんなスタディが出ておりますけれども、なかなか、グリーンボンドですら排出量削減はどれぐらいになりますというのが出てきていない状況下ですので、インパクトレポートにも少し関わるかもしれないんですけれども、これをやったらどれぐらいの排出量になる、その結果、ファイナンスド・エミッション、実体経済がどれぐらい減っていくというところに結びついていくかと思いますので、そこの数値の国際的なところと、やはりモニタリングと開示というのが非常に大事かなというふうに思います。
 
 以上です。ありがとうございました。
 
【根本座長】  御意見ありがとうございました。他にいかがでしょうか。どうぞ、岡崎さん。
 
【岡崎メンバー】  第一生命の岡崎です。再び発言させていただいて恐縮ですけれども、今、黒﨑さんのお話しになったことと関連づけて申し上げますと、私もやっぱり国内ルールを新たにセットするというのは避けたほうがいいかなというふうに強く思っておりまして、こうした計測のところは、大手金融機関をはじめとしてグローバルなイニシアチブに関わっており、そこで既に国際的な基準で計測されていますので、金融機関側と企業様のところでスタンダードが変わっていると、余計なコストを生むということにもなりますし、今後、日本でこういったファイナンスをつけていくというところには、国内だけでお金が回り切ればいいですけど、それだけではなく海外からお金を呼び込むというような仕組みが必要だと思いますので、その際に国内の基準でこうなんですという説明では通用しないというふうに思いますので、そういった観点からの意見です。
 
 あとは、これは私の実体験ですが、最近海外からお客様がいらっしゃってディスカッションをする中で、「経産省がつくられているロードマップというのがあるんだけど、それって知っています?」というと、知っている方と知らない方、半々ぐらいなんですけど、知っている方も、「このロードマップ、こういったパスウェイに沿って日本が脱炭素化していくということは国際的な基準にもかなっているよね。日本ではこのロードマップはパリ基準に整合的なものだということで扱っているんだけど」という話をすると、あまりいい答えは返ってこないというのが正直なところです。欧州のタクソノミーでは、最近「アンバー」というトランジションに近いような考えも入れていますけど、ああいった形でタクソノミーでグリーンとレッドとアンバーというのをつくっていて、またアジアでもシンガポールとかマレーシアではタクソノミーを作っているので、どうも海外の目線からすると、ロードマップでこうなんだからというよりも、タクソノミーでこうだというふうに整理をされているほうが分かりやすいし、クリアなのではないかと思います。
 
 ロードマップも、今後、経産省のほうで定量化されたり、よりレベルアップを図っていくと、企業サイドからも、我々投資家からも分かりやすいものになっていくというふうには思っているんですけど、国際的な目線から見て理解されるものでないと、先程ご指摘があった、「ウォッシュじゃないの、これ」というような話になってしまうというようなこともあるので、実現できるかどうかは分からないんですけど、タクソノミー的なものがあったほうが、より理解がされるんじゃないかなという気がしております。
 
 あと、全然毛色の違う話でもう1点なんですけど、やっぱり今後、特に中小企業さんですとか、地域にトランジション・ファイナンスを広めていくに当たって、計測や開示の負担感というのはかなり大きいというふうに思っています。
 
 我々も今、実際に、特にスコープ3の数字を計測しないといけないという点でかなり負担がありますけど、開示する側も大きな負担があると思いますので、なるべく共通のプラットフォームですとか、あとは、例えば我々投資家が企業様と対話する気候変動対応に関して求めるデータや話す内容は、どの投資家にも共通するものが多いと思っていますので、そういう意味では協働でエンゲージメントをするというところに関して、重要提案とかそういったところの、法律や規制絡みで阻害要因になってしまっている事項については、特別な対応というか、障害を除くようなご対応をぜひ実現していただきたいなというふうに思っています。
 
 私からは以上になります。
 
【根本座長】  どうもありがとうございました。オンラインで御参加の村上様、お願いいたします。その後、吉高様、お願いいたします。
 
【村上メンバー】  ありがとうございます。村上です。少し、論点は何かというところに私なりに発言したいと思いまして、今のお話とちょっとまた違う話になってしまいますけれども、少し自己紹介を兼ねてということでしたので、申し上げさせていただきます。
 
 私、今は日本総研というシンクタンクでESG、SDGs関係の調査をしておりますけれども、前職、社会人の最初は銀行でプロジェクトファイナンスを担当するというのが原体験のようなことでございました。
 
 当時、大型の石炭火力発電所をやっているチームの隣で、私は廃棄物処理発電ですとか風力発電ですとか、そういうのがやりたいと言ったら、ほかにやりたいという人もいなくてやらせてもらえていたような、もう20年以上前のことでありますが、そういう時代を経験しました。
 
 その当時からやはり強烈に記憶にあるのが、稟議を書く際には、そのプロジェクト、その案件が地域にとって15年、20年のスパンで本当に必要とされているのかという点が大変重視をされました。
 
 なので、廃棄物処理だからいいということではなくて、本当に人口が減ったり、ごみが減ったりしても必要とされるキャパシティーなのか、資金需要なのかということを非常に厳しく見られていたなという記憶がございます。
 
 そういったところから照らしますと、非常に率直に申し上げると、この共有、議論すべき論点といいますか、気候変動だからといって何か特別なことが必要なのかというと、気候の仕組みを理解するのは、確かに普通の金融機関を志望するような人にとっては難しいのかもしれませんけれども、社会にとってそれが本当に必要な事業なのかという点を議論する、この点については、さほど難しいことでは本来ないはずではないかという問題意識を持っております。
 
 むしろ必要とされているのかどうか、必要とするのかどうかという議論が十分にできないような環境ですとか、それを阻害するようなほかの経営的な要因、あるいは外部的な要因があるのではないかという、少し論点が違うかもしれませんけども、そういった問題意識も持っております。
 
 じゃあ何が必要なのかという議論になったときに、移行に関しても公正な移行ですとか、スピードですとか、いろんな論点があることはよく分かるんですけれども、日本全体の特徴としては、環境社会・経済と、サステナビリティの要素を取ったときに、やはり経済、特に目先の経済が強過ぎるというのが非常に大きく、いろんな意思決定に影響しているのではないかというふうに感じます。
 
 ですので、先ほどの例で申し上げますと、石炭はやめて、じゃあ廃棄物と風力だけやれていたのかというと、当時は多分、そうでは絶対なかったんだろうなというふうにも思うんですけれども、そういった個別の選択肢ができるような価値観ですね、そういったものが背中にあるのかというところが大事だと。目先のテクニカルな計算方法も大事ですけれども、そういった哲学といいますか、理念が重視されるべきではないかというふうに思います。
 
 もう1点だけ申し上げますと、リソースの問題もいろいろ俎上に上がっているかと思いますが、私も地域の金融機関ですとか、あるいは地域の中堅中小企業、社長さんとお話しすることもありますが、リソースの多寡というよりも、やはりそれに対して向かっていこうという意思があるかないかが大きいのかなと。
 
 リソースは、その社内になくても、例えば今も御説明にあったように、いろんなマニュアルですとかイニシアチブですとか、一昔前に比べれば非常にたくさんの資料があります、情報もありますと。ただ、読む時間がないとか、実行することが少しハードルと感じられるとか、そういうことではないのかなというふうにも思います。
 
 ですので、もしかすると若い、入社して間もないような世代の方であれば、もう勉強しましたという内容が、もしかすると経営者にとっては難しいと思われるのかもしれない。少しその辺りも柔軟に見ていく必要があるのかなということも感じております。
 
 今、最後にと申し上げましたけれども、その点で今の2ポツ目のところを考えますと、何となく議論全体が非常に内向きな感じといいますか、地域の話というのが重大なことはよく分かるんですけれども、特に政府に対する期待という点で申し上げると、こういったグローバルな動きの中にも、やはりこれに賛成しないような国や地域ですとか、地場の金融機関が勝手にやってしまったというような件とか、いろいろ耳にすることもございます。
 
 ですので、そういったところはなかなか民間にはできないことなので、こういったGFANZですとかの流れに乗ってこないような国に対するアプローチとか、産業に対するアプローチというのを強めていただくというのも、実は非常に心強くなるところではないかというふうに感じました。
 
 以上でございます。ありがとうございます。
 
【根本座長】  ありがとうございました。それでは吉高さん、お願いいたします。
 
【吉高メンバー】  発言の機会をいただきましてありがとうございます。私自身は2000年ぐらいから、金融機関におきまして環境問題や社会課題をどう解決できるかということに関わってまいりました。
 
 前半はどちらかというと国際的な、先ほど佐藤様の御発言もありましたけれど、本当に佐藤様とは長いお付き合いでございます。今は、このシンクタンクのほうには2年前に移りまして、三菱UFJ銀行と三菱UFJモルガン・スタンレー証券と3社兼務で、サステナブルファイナンスについていろいろな方に情報を御提供している立場でございます。
 私自身、全方位的にいろいろな方からこのグリーン、脱炭素だけではなくてグリーン全体のファイナンスということでお話をお聞きすることが多いものですから、今の論点について幾つかお話をさせていただきたいと思っております。
 
 まず、村上さん、佐藤さんもおっしゃっていたのですけれども、この1ポツに関しては私自身も、以前、日本は環境技術が進んでいて、アジアに対してはリープフロッグをしていきましょうという立場であったのですが、今、私自身が日本の地方に参りますと、まさに昔のアジアの状態に近いと思っておりまして、過去、私がグリーンファイナンスを海外でやったときと同じ手法が通じるところがございます。
 
 ですので、リープフロッグというのがもう通用しなくなってしまった世界におきまして、そのトランジションをどのように考えるかというのは、もう一回原点に戻るべきではないかというふうには思っております。
 
 つまり、先ほど黒﨑さんもおっしゃっておりましたけれども、例えばベンチャーキャピタルではシリーズAからシリーズFのステージがありますけれども、そういった形で、同じトランジションでもいろいろな段階があるかと思いますので、色分けをするのがいいのか、タクソノミーでするのがいいのかは分かりませんけれども、段階を分かりやすくしていく必要はあるのかなとは思っています。
 
 それから、3番目について主に申し上げたいことがございます。
 
 もちろん、PCAFのような算定手法というのは王道だと思っていますが、その手前で、地域の金融機関や、地域の中小企業さんとお話しますと、まずどこからやっていいのか分からないとおっしゃるのです。
 
 例えば融資先の電気使用量のデータがあるのかないのかとか、そこから始めたらいいにもかかわらず、そこも分からない。
 
 例えば、消費電力量に環境省が出している排出係数を掛けて、ざくっとグループ分けする、こんなことからもできるはずなのですけども、どこから手を出していいか分からないというところがあるので、まずそういった初歩的なところから始める。それから金融機関はリスク管理をついつい重視してしまうのですが、リスク管理というよりは、お客様と話すときに、まず自社をリスクフリーにするほうがビジネスチャンスがあるんだよというような、会話、エンゲージメントの仕方についてどうかと提案すると、金融機関の方は「なるほど」とおっしゃるんです。
 
 つまり、金融機関として、いつもリスク管理ばかりですと、この脱炭素に関しましては、コストという意識しかなくなりますので、なかなかエンゲージメントが進まない。もう少し入りやすい入口というのが重要なのかと思います。それはもちろん国際的なルールにものっとったものでありつつ、もう少しかみ砕くガイダンスが必要なのではないかというふうに思っております。
 
 あと、人材の問題は最も重要です。残念ながら、人材市場からこういう人を採るのはほぼ難しいので、中で育てていかなければならないのです。先ほど村上さんがおっしゃっていましたが、私自身20年もこういうことを金融機関の中でやっておりましたが、やりたい方はいたのですけど、優秀な人ほどこの分野をやらせてもらえないのですよね。金融機関としては、そのような人材はもっと重要と思われるところに配置しています。
 
 でも今は、これはもう重要な分野なので、やはりやりたいという人にもっとやってもらうような人事システムというものができていかないとと思っております。
 
 あと思うのは、金融機関の中で、こういった脱炭素だけではなくて、環境分野の目利きをつくっていくことが重要かと思っております。もちろん知識は重要なのですが、金融機関の方って皆さん勉強がお好きなので、知識はすぐつくと思うのです。
 
 問題は、感度というか、感覚です。つまり、今まで金融機関では考えられなかったような感覚が環境や脱炭素、社会課題の中にあるので、例えば今回の御説明の中に「産学民金」ってありましたけれども、もっと人事交流をしてみるとよいのではと思います。例えば半年でも環境関連の省庁に行ってみるとか、地域の環境局に行ってみるとか、それだけでも随分感覚が違ってくると思うので、そういった人材交流みたいなものが重要なのではないかというふうに、私自身がこれまでやってきて感じているところでございます。
 
 あともう一点ですけれども、先ほど自動車のサプライチェーンの事例があったのですが、もちろんサプライチェーンで、金融機関も同じようにそういったレイヤーがあるのでというのは重要なのですが、日本の産業では、実はサプライチェーンがないところも多いのですよね。例えば、繊維、農水産業、食品、ヘルスケアなんかはきちっとサプライチェーンがあるというわけではないというのが欧米と違うところだと思います。その点で、金融機関の役割って本当に大きいと思っています。
 
 ですので、サプライチェーンに限ることなく、あらゆるレベルで金融機関がその役割を果たす。その時には、脱炭素では地域全体でのエネルギーマネジメントが分かっていなくてはならなくなりますので、地域の電力会社との関係が重要で、地銀は密接に関係をつくっていかなければいけない。また、地域金融におきましては、レジリエンス、電力だけでなく熱利用、これは地域によってかなり特色がございますので、きちっとした態勢を取っていかなくてはいけないと思っています。
 
 ちょっと長くなってしまいましたけど、私は環境省の脱炭素先行地域の審査員をしておりますと、必ずといっていいほど、金融機関が実施体制に入っております。その中で、地域の、金融当局、環境局、経済産業局といったところと連携していかなければ、とても地域の金融機関だけでは対応できない。面的な対応が必要なのだと思います。
 
 最後に、4ポツ目に関してなんですが、ガイダンスと、もしくは、ガイドブックというのができるといいのかなと思っています。実際に運用に対して、こんな事例もあるという、単なる事例集ではなく、先ほど申し上げたように、まずどこからやればいいのかとか、そういったガイドブック的なものがあったら、このガイダンスとのシナジーがあるのではないかと思っています。
 
 以上でございます。ありがとうございます。
 
【根本座長】  ありがとうございました。DBJの吉田様、お願いいたします。
 
【吉田メンバー】  吉田です。発表の機会もいただいたので、ちょっと手短にと思います。
 
 この議論ですけど、どの辺りをターゲットにするのかというところも、今日、皆さんのお話も含めて、改めて整理していったほうがいいのではないかなというふうに思いました。
 
 というのは、新たな日本独自のガイドラインをつくるということについては避けたほうがいいんじゃないかというのは、私もそのとおりかなと思っていまして、これをまた世界の中で一々理解させるということをやってもなかなかしんどいと思います。
 
 一方で、今、我々はトランジション・ファンドにお金を出したりしているんですけど、世界の中でも、「トランジション」の定義って、ある意味揺れ動いている。
 
 例えば、トランジションの日本で言っているような議論って、1年前に言ったときは「はあ?」みたいな感じだったんですけど、その後にジャストトランジションみたいな話が出てきたりとか、世界もいろいろ揺れ動いているので、あまりスタティックに今のこの断面を切り取って定義をしても、あんまり意味がないかもしれない。
 
 なので、ある程度ダイナミクスみたいなことを意識していく必要があるんです。そう考えると、この定義みたいな話は、ちゃんとトランジションというラベルつきの議論をしたいのか、もう少し、ラベルつきの議論はありつつも、もう少し幅を広く取って、SLLみたいなことも含めて、日本の中でもう少し活性化させていこうよという議論にしていくのか。
 
 それ、先ほど吉高さんからもありましたけど、そういう意味でのガイドラインみたいなものがあっても、それは別にいいのではないかなと思いますので、議論のスコープを少しはっきりさせると、世の中全体も動いているという中で、いいのかなというふうに思いました。
 
 あともう一つは、やっぱり世界が定めている基準と、日本が本当の意味で持続可能な社会に向かっていくパスの中で、少し各論に入っていくと矛盾しているものというのがやっぱり出てきていると。
 
 例えば、先ほど船のLNGの話とかしましたけど、やっぱりいろんなところで石炭とか石油とかを使っているものが、一旦天然ガスを使って、その後に水素・アンモニアみたいな流れで行くときに、どうしてもガス会社というのはLNGを供給している手前、スコープ3が増えてしまう。日本全体としては減っていっているのに、ある業界だけ切り取ったら増えてしまうというところが、例えば矛盾としてあるのであれば、そういうところをどういうふうに捉えられるかとか、日本全体が大きく向かっている方向感と、各個別で見たときの矛盾みたいなものを解消するような、そういう議論とかができていくと、企業的には助かる部分があるんじゃないかなというふうに思いました。
 
 すみません、ちょっと手短でございますけど、以上です。
 
【根本座長】  どうもありがとうございました。天田様、お願いいたします。
 
【天田メンバー】  天田でございます。ありがとうございます。
 
 今回いろんな議論がありましたが、吉高さんの言われた人事交流も有益だと思いました。大手の金融機関はサステナビリティに対応する人数が多いという話も出ていましたが、実はそんなこともなくて、かなり人数が少なくて、手探りでやっているということは申し上げておきたいと思います。
 
 今日、いろいろ議論の中で出てきていますところで、我々のところと特に関わってくるところとして、トランジション・ファイナンスがございます。先ほど来、お話があったとおり、日本独自のものが必要なのかという点については、やはり国際的に認められるものでないと、リスクマネーを海外から呼び込めないというご指摘はそのとおりだと思っております。先ほど、トランジション・ファイナンスはラベル付のものか、幅広いものかスコープを決めなければいけないというご指摘もそのとおりだと思っています。ラベル付のトランジション・ファイナンスは、これまで政府の関係者の皆様の努力もございまして、日本では幅広くトランジション・ファイナンス、ボンドやローンも出てきていると思うのですが、恐らくこのラベル付以外のところも、これからはニーズが出てくると思います。まさにそういった技術を支えるというのが特に重要でありますし、金融機関としてはこのリスクを見極めるというのが非常に難しくなってくるところだと思っています。
 
 ただ、今後トランジションを進める上では、やはり多額の資金が必要になるのは間違いなくて、そのリスクマネーをどう呼び込むか、金融機関としてどう支援していくかというところが重要であり、それが恐らく日本の産業競争力の維持とか向上にも役立つのだと思っています。
 
 それを進める上で、我々民間の銀行という観点からすると、まだ確立されていない技術であるとか、長期にわたってそのイノベーションが実現するかどうか分からないものに対して、リスクマネーを供給することになるため、従来の銀行の審査では判断がつかないところも多いと思うので、それを日本として進める上では、公的な信用補完であるとか、官民で協働してやっていくということも必要だとは思いますし、海外からのリスクマネーを呼び込むというのも必要だと思っています。
 
 併せて、トランジションは規模の大きなファイナンスになってきますが、支援した後に、技術革新とかが起こって陳腐化することも起こり得ると思っています。
 
 そういったものを支援していることについて、後になって、ロックインと指摘されるリスクもあります。そうなると、インフラ系の案件の資金調達に支障が出てくるということも十分あり得ると思っていますので、事後的にトランジションの適格性が失われた場合でも、何らか金融機関や事業者の損失を抑制できるような仕組みがないと、トランジション支援に踏み込めないということも起こり得るだろうと思いました。こういったトランジションの仕組みとかを議論するというのも、今回論点としてあってもいいのではないかと思いましたので、一言申し上げさせていただきました。ありがとうございます。
 
【根本座長】  ありがとうございます。どうも大変貴重な、そして多義にわたる御意見をありがとうございます。
 
 せっかくの機会なので、私も意見を若干言わせていただけるとありがたいのですが、藤井様とか井上様がおっしゃった、企業の負担感とか協働化というところなんですけど、私、中小企業ファイナンスというのを結構ずっとやっていたものですから、やはり非上場企業さんの負担というのはかなり大きく、サプライチェーンの方からも言われ、いろんな金融機関の方からも言われみたいな、かつそのリソースも十分じゃないと。そこを何とかもう少し解決するのは、ぜひやっていただきたいと思います。
 
 事務局の方の例もあったと思うんですけど、やはり日本というのは銀行が企業の人に近い関係にあるというのは他国とも違うところなので、ぜひ銀行が情報収集についても仲介者として中心的な役割を持って、何らかのデータプラットフォームみたいなものをつくっていくとか、そういうことをしていただけたらいいなと思いますし、それを日本のモデルとして世界に発信するというのもあっていいのかなと思います。
 
 私、ちょっと前にコリン・メイヤーさんという方とパネルで御一緒しまして、イギリスの方なんですけど、やっぱり欧州でも中小企業をどうするかって、脱炭素、すごい困っているというようなことをおっしゃっていましたので、それが日本発のストレングスというか、アピールできたらいいのかなというふうに思いました。
 
 あと佐藤様、あるいは吉田様がおっしゃっていた産業界とのアライアンスというんでしょうか、それは私も実は電力会社の社外をやっていたときにも非常に感じたんですけれど、やはり地域によって事業環境が違って、なかなか、再エネであったり、そういった投資が難しい会社さんもあり、かつ、またそういった会社さんほど、割と熱効率の低い発電設備を使い続けていらっしゃるというのがあって、やっぱりそういうところの共働化なり共同研究なりをやる必要があるんだけど、その企業だけでは動けないという状況があるので、そこをぜひ解決するということも重要ではないかなと思いました。
 
 3番目に専門家のところなんですけど、まさに皆様の御指摘のとおり重要だと思います。
 
 吉高さんが、感性が重要という話があったと思うんですけど、私、大学・大学院で教えていると、最近はかなり有望な人が増えています。若い人ほどSDGsをすごく熱心にやっていて、企業を選ぶときもそこを見ていくとか、大変いろんないい提案を持っている人もいまして、将来は希望が持てるのかなと思います。
 
 そういう方をぜひ今後も生かしていただきたいと思いますし、あと、今、専門家では金融機関の方をおっしゃっていると思うんですけど、やはり規制当局の方も長期的に取り組む方が必要かなと。
 
 この部屋にはもちろん、そういう方がかなりいらっしゃるんですけど、やっぱり海外と比べると、向こうは本当にずっと長くやっているような方が多いので、日本の意見なりプレゼンスを上げる上でも、ぜひそこも取り組んでいただきたいなというふうに思いました。
 
 あと若干時間がありますが、オンラインで御参加の方、何かまだ言い足りないということはございますでしょうか。
 
 村上さん、お願いします。
 
【村上メンバー】  すみません、一言だけ。次回以降向けた、ちょっとこれは質問になるんですけれども、先ほど来、海外から投資を呼び込むということですとか、魅力をというのがあったかと思います。
 
 これは、事業に対する事業資金、事業を呼び込むということなのか、金融の投資・融資を呼び込むということなのかというところが、どっちなのかなというのが、ちょっとお聞きしながら、謎に思いながら聞いておりました。
 
 と申しますのが、長期的に日本では金余りで、それで銀行が企業に対していろんなディスカッションをする土壌が薄れていったというのがあるんじゃないかと思っているのですけれども、余っているのであれば、そのお金をしっかりここに使っていけばいいんじゃないかという、極めて単純な発想みたいなものはあり得るのか。そういったことというのがスコープになり得るのか。
 
 投資を呼び込むというところから走って、そこのマクロ的な、どのお金を何に使うのかというところについて、今後どこかのタイミングで議論になるのかは、もし別の場があれば教えていただければありがたく存じます。
 
 以上です。
 
【根本座長】  御質問ありがとうございます。では事務局でお願いします。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  ご議論ありがとうございます。何名かの方から資金を呼び込むというお話があったと思いますけども、当方の理解だと、その趣旨は、基本的には日本で行われている又は日本企業が行う事業、それはもちろん日本の顧客に販売するような事業だけでなくて、世界に展開していく事業も含めてだと思いますけど、こうした事業について日本の金融機関や投資家だけでなくて、世界の投資家に投資いただく、というのが呼び込むという趣旨かと理解しています。
 
 すなわち、資金については国際的に導入ということも視野に入れたほうがいいのではないか。そのためには、基準があまり日本特有という形になってはいけないのではないか、そういう御指摘だったかなというふうに理解しています。
 
 そうした観点では、ご指摘いただいた、国内の企業または個人の資金の動員、個人2,000兆円とよく言われると思いますが、「貯蓄から投資」を進めていくということ、その中でも鍵となるテーマの1つとしてESGがあるということはいろんなところでご指摘をいただいているところだと思います。
 
【高田総合政策課長】  すみません、御挨拶だけさせていただきます。金融庁総合政策課長の高田英樹と申します。本日は御多用の中、検討会に御参加をいただきましてありがとうございました。
 
 私、ちょっと本日、国会関係の会議に出席して、参加が遅れまして大変失礼をいたしました。次回以降もぜひ、忌憚のない御議論をいただければと思います。何とぞよろしくお願いいたします。
 
【根本座長】  よろしいですか。
 
 それでは、活発な御議論を大変ありがとうございました。次回は11月30日または29日に、国際的な議論を行いたいと考えております。大変貴重な御指摘、建設的な御議論だったと思います。本当にありがとうございました。
 
 事務局の方から御連絡はありますか。
 
【西田サステナブルファイナンス推進室長】  日付は今仮押さえさせていただいているんですけれども、ゲストの方にもお話しいただければというふうに思っておりまして、できるだけ早くフィックスして御連絡させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【根本座長】  どうもありがとうございました。
 
 では、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。
 

 ―― 了 ――

  

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