「貸金業制度に関するプロジェクトチーム」第九回事務局会議の概要
日時 | 平成22年1月14日(木)11時00分~12時00分 | |||||||
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場所 | 金融庁 13階共用第一特別会議室 | |||||||
出席者 | 田村内閣府大臣政務官(金融担当)、中村法務大臣政務官、警察庁生活安全局 白川生活経済対策管理官、経済産業省商務情報政策局 坂口取引信用課長、日本銀行企画局 吉岡審議役 | |||||||
議題 | ヒアリング
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【窪田順生氏の説明】
最近、ソフトヤミ金が増えてきているという報道がされているが、このソフトヤミ金の特徴について説明したい。まず、(1)ソフトヤミ金とは、取立てがソフトであるという意味であり、金利は違法、高金利である、(2)借り手のリピーターが多い、(3)借り手に対して親身になって相談にのる、(4)借り手が再度融資を受けるためにソフトヤミ金業者をかばう、等が挙げられる。
ソフトヤミ金というのは基本的に小口であり、貸しても3万円程度。10万円貸すということは一般的に無いと考える。他方、金利は非常に高いが、例えば3万借りて、10日後利息が5割ついたとしても、返済額は4万5,000円であり、借り手としては、何が高金利なのか、と思う人も存在している状況。
貸金業法の象徴的な事例として注目しているのが沖縄である。現在、沖縄は非常に厳しい経済状況の中で、ヤミ金が非常に増えている。一つのケースは、登録をしていた貸金業者が、経営が立ち行かなくなり、登録を更新せず、無登録となって、上限金利を超えた金利で貸出しを行うというケース。このような場合、ヤミ金業者は、貸金業のノウハウと顧客のネットワークを持っている。もう一つのケースは、沖縄では借りられない人が多数存在しているので、このマーケットを狙い、暴力団関係のヤミ金融業者が本州から進出してくるケースである。
貸金業者から借りられない場合、ヤミ金に頼ってしまう人も存在している。経済環境の悪化や、改正貸金業法の影響等により、貸金業者から借りられない者が増加しており、ヤミ金に対する需要も増加しているのではないか。ヤミ金は需要があるので、特に厳しい取立てを行わない、つまりソフト化が始まっており、ソフト化しているがゆえに、被害者もわざわざ警察に通報して助けを求める必要もないと考えてしまう状況となっている。
改正貸金業法により正規業者から借りられない人たちが増え、ヤミ金に手を出すことが考えられる。ヤミ金に手を出した人は、ヤミ金が検挙されてしまうと、資金が借りられなくなり、結果として自らの首を絞めることになるので、警察にも通報できず、ヤミ金との共生を選ばざるを得なくなる。改正貸金業法によって、「正規業者から借入れをした多重債務者」を減らしたことで、結果として、「ヤミ金業者から借入れをした多重債務者」が増加するのではないか。
【浪川攻氏の説明】
マクロ経済状況について、リーマンショック後の信用収縮・企業間信用の悪化が著しい。財務省「法人企業統計季報」に基づいて算出した企業間信用の推移を見ると、第二次世界大戦後最大の落ち込み方となっている。
中小企業等の借り手に対する取材の中で、お金を借りることができなくなった、という話を聞くことがある。私が取材した先には、貸金業者から資金を調達していたが、その貸金業者の経営が悪化する中で、貸金業者からの資金調達が難しくなった、と言っていた中小企業もあった。
非登録貸金業者の実情は、なかなか表面化しない。
中小貸金業者は、純資産額の引き上げにより経営が悪化しているのではなく、完全施行で引き下げられる上限金利が原因で経営が悪化している。
過去貸金業者だった者が、貸金業登録の更新を行わず、無登録の状態で、既存のネットワーク、つまり過去の顧客の中だけで貸付けを行っているという例もある。このような場合、無登録業者は、昔から付き合いが有る顧客を相手として、短期のつなぎ資金を融資している。このような業者は、金利は高金利ではあるが、短期の貸付けであるため、それほどの金利負担にはならない。したがって、このような非登録貸金業者の問題は、なかなか表面化しないと考えられる。
過払利息返還の潜在規模は大きく、一挙に現在化すると貸金業者の多くが倒産しかねない。そうなれば、過払金請求権を持つ者にも資金が返還されないことになる。
貸金業者は、社員数を減らしており、同時に店舗も減少させている。これは、コスト削減のために有人店舗をどんどん減らして無人店舗化するという生き残り策を行っているということである。
この点について、私は、金貸しは有人でやるべきだと考えている。本来は、お金を貸す人がその場合で借り手に対するカウンセリングを実施することが重要であると考える。つまり、貸金業者は、借り手に対し、どういう計画で返すのか、借り過ぎではないのか等の話し合いを、その場で行うことが重要ではないかと思う。したがって、店舗の無人化は、心理的な面で、安易な借入れを増加させてしまうのではないかと考える。
改正貸金業法について、3点要望を申し上げたい。
(1)今年6月に予定されている貸金業法の完全施行は延期することが望ましい。特に総量規制の導入は、3年程度の延期措置が望ましい。
(2)延期中に、金利規制、カウンセリング体制、貸金業者の経営体制などを全般的に再検討する必要がある。
(3)監督官庁の「掛け声」によらずとも、貸金業者と法曹関係者、消費者保護団体等が、個人向け与信市場に関して検討するべきである。
【質疑応答】
○ 本日伺った問題点を解決するためには、官による貸付けや公益法人・公益財団法人による貸付け等、公的なセーフティネット制度しかないように考えられるが、どういった方法が考えられるか。セーフティネット制度に必要なサービスの条件について、現場の取材を通してどのようなものが考えられるか。
(答:窪田氏)多重債務者に接する際に感じるのは、教育が重要であるという点。ヤミ金融業者も「借金は病だ」と言っている。借金が身に付いてしまって、借金がその人の生活の流れの中に入ってしまっている。そういった人が、借金で破綻せず、ヤミ金に流れないような教育をすることが一番大事だと考える。セーフティネット貸付けでお金を借りたとしても、ヤミ金で借りていたのが、単に公的な所からの借入れに代わり、返済する必要がなくなったという認識しかない人は多い。そういった人たちに対してセーフティネット貸付けをする際に、親身な相談に乗れるような枠組みも必要と考える。
(答:浪川氏)理想的には、セーフティネットではなく、自ら解決していくという自助努力が基本であると考える。他方、それが難しい環境となっている中でのセーフティネット貸付けは必要であり、その枠組みがどのように作られるのかが重要だと考える。公的な金融の場合、ほとんどのケースで金利が一律となっている。他方、生活に困って借入れを行う人でも、それぞれ返済能力は異なると考える。大変厳しいかもしれないが、自助努力という要素を入れなければ、その人の人格を消すようなことになりかねない。例えば、弁護士が債務整理をする時に債務者が返済できる額を算出する機能と、貸金業界の返済能力を審査する能力が組み合わさっても良いのではないか。しかし、悲しいことにこの業界はこれまで対立ばかりをしてきている。弁護士と貸金業者が知恵を出し合い、融合していくようなことがあって、その人にあったセーフティネット貸付けのようなものが出来ればいいのではないか。
○ ヤミ金は増えているかどうかという点が1つの焦点になっている。感覚的なもので構わないので、ヤミ金が増えているのか教えて頂きたい。
(答:窪田氏)感覚的には、増えていると思う。摘発の数が減っていると言われているが、金のネックレスを着けているような、厳しい取立てを行ういわゆるヤミ金業者が減少したことで、このような業者の摘発が減っているだけで、非常にクレバーなソフトヤミ金は増えていると感じる。マーケットの規模はどの程度かは分からないが、ヤミ金に関わっている多重債務者の数は間違いなく増えているとこれまでの10年間の取材で感じている。
ヤミ金の中にはオレオレ詐欺をやっていた者が多い。オレオレ詐欺の取締り強化により、ヤミ金に流れてきている。ヤミ金業者の数は、この10年で2倍とまではいかないが、1.5倍くらいになっているのではないか。
(答:浪川氏)法律外で、仲間内でお金の貸し借りが行われているケースはある。過去に貸金業をやっていた人が、仲間内に貸付けを行った場合、仲間内金融になってしまう。そうすると、何をもってヤミ金融というのかが非常に曖昧であるが、このような仲間内金融の形態でヤミ金融を行っている人は増えているのではないか。以前は、神田付近にヤミ金融の広告が多数貼ってあったが、今は全然ない。頭がいいヤミ金はそんなことをやらない世の中になっている。
○ 朝日新聞や日経新聞にコード71に係る記事が載っていたが、これは決定事項なのか。
(答:田村政務官)政務三役で決定した。
○ 簡単に決定して良いのか。もっと議論の場が必要だったのではないのか。浪川氏はコード71についてどのように考えるか。
(答:浪川氏)コード71については、更なる議論が必要であると考える。過払い金請求が爆発的に増加しないための抑止は必要であり、重要なことである。何が正しい、正しくないかは、何の価値観をもって判断するかで別れるが、少なくとも金融というもので判断すると、コード71が削除されると審査が非常に難しくなる。もっと慎重な議論が必要なのではないか。
○ 業界にとって生命線と言われている問題を、貸金業者と債務者の両方を見てこられている方の意見を聞かずに、何故急いで決めてしまうのか。
(答:田村政務官)この事務局会議は、貸金業法改正の運用に必要な見直しを検討することがテーマであり、コード71問題について、取り上げる予定はなかった。コード71問題については、事務局会議のような公開の場ではないが、関係者から十分に話を聞いた上で、政務三役で議論して決定したことである。
(以 上)
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