「貸金業制度に関するプロジェクトチーム」第八回事務局会議の概要
日時 | 平成22年1月7日(木)11時00分~12時00分 | ||||||||||
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場所 | 金融庁 13階共用第一特別会議室 | ||||||||||
出席者 | 田村内閣府大臣政務官(金融担当)、泉内閣府大臣政務官(消費者担当)、中村法務大臣政務官、警察庁生活安全局 白川生活経済対策管理官、経済産業省商務情報政策局 坂口取引信用課長、日本銀行企画局 吉岡審議役 | ||||||||||
議題 | ヒアリング
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【小島茂氏の説明】
連合には、組合員が約670万人加盟しているが、その中には一定程度の多重債務者がいる状況であり、長い間、加盟組合では、多重債務者問題についての相談及び対策を組合活動の1つとして取り組んできた。具体的には、関係の深い労働金庫の相談業務あるいは借換え等の取り組みとの連携をはかってきた。そういうことから、連合は、この多重債務問題には、抜本的・総合的な解決が必要だという立場でこれまで対応してきている。
2005年3月に設置された「貸金業制度等に関する懇談会」では、多重債務問題解消のために、過剰貸付の防止と多重債務化・被害拡大を防止するための総合的施策が必要であること等の意見を述べてきた。また、2006年12月の貸金業法等改正法の成立の際には、連合として『施行から2年半以内に見直しを検討することになっているが、高金利への抜け道をつくる変更がなされないよう注視しなければならない』旨の談話を発表し、2年半後の完全施行を求めている。
平成22年6月には、法律で予定している「総量規制の導入・上限金利の引き下げ」等の完全施行をすべきというのが基本的な考え方である。なお、その円滑な実施にあたって必要な措置も併せて対応していく必要がある。具体的には、低所得の消費者対策や中小事業者の資金ニーズの充足に対する施策が必要と考える。
現下の経済・金融情勢は非常に厳しい状況にあり、14%を超える金利での借入れをしている中小事業者も一定程度いる。そういった事業者に対する十分な金融支援というものが必要ではないか。
改正法の円滑な実施にあたって、事業者向けについては、地域金融機関が地域における「リレーションシップバンク」としての機能を発揮することが必要であり、事業者と金融機関との長期に渡る取引関係・信頼関係のもとで融資・相談に応じるという関係構築を地域金融機関が担っていく必要がある。そのためにも、昨年施行された中小企業金融円滑化法における検査・監督において、地域金融機関がリレーションシップバンクとして機能する体制を有しているのか、機能を果たしているのかを確認し、適切な指導を行っていく必要があるものと考える。連合としても、地方連合会等とも連携しながら地域金融の現場の実態を注視し、必要に応じ、改めて政府や金融庁に対し要請を行って参りたい。
次に消費者向けについては、低所得の消費者に対する生活福祉資金貸付制度をはじめとする各種セーフティネットの周知や「多重債務問題改善プログラム」に基づいて国・地方自治体での相談・救済体制の強化を行う必要があるものと考える。一昨年からは離職者に対する様々な融資制度も新しく出来ているので、そういうものを活用することも考えられる。
なお、一度ブラックリストに掲載された者は、長期間に渡り金融機関からの借入れができないため、子どもの学費や緊急時の医療費等の生活資金の融資又は支援について、今回の法改正とは別に検討する必要があるのではないか。
改正法の施行スケジュールどおりの実施により、ヤミ金融の増加をもたらすことがないよう違法な融資に対しては、厳格な取締りを実施すべきであると考える。
衆・参両院で全会一致で成立した貸金業法改正の趣旨は、多重債務問題に対する総合的な対策である。いわば、消費者サイドに立った法律の改正である。現在の政権の基本的な政策が供給サイドから需要サイドへの大きな転換であることからすれば、6月の法律改正の完全な実施が不可欠である。
【上田正氏の説明】
平成15年頃に多重債務の相談に来た相談者の典型的な債務総括表から分かるように、当時は貸金業者から借入れを行い、その返済のために借入れをするというケースが多く見られたが、最近(平成21年)は、消費者金融からの借入れは非常に少なくなってきている。その反面、家賃延滞などの日常の債務に係る相談にシフトしてきている。
多重債務相談者(4,098人)の属性等を平成19年度と平成20年度を分析してみると、年収200万円以下の方の相談が5割を超えてきている。また、借入れ動機について、遊行・飲食等の浪費によるものは減少しているが、生活費の補填によるものが4割近くに増えてきている。
相談者の消費者金融からの平均借入金額は平成20年度は123万円だが、5年前は約300万円だったので、当時の3分の1程度まで減少している。他方、家賃・水光熱費等の日常家事債務が増加してきている。
最近の相談事例としては、仕事を失ったことによるものが増えてきている。借入金の返済困難による相談よりも、生活自体が成り立たないという相談が非常に増えてきている。
最近の相談から明らかになってきている課題として、債務整理だけでは生活再建が図られるケースが少なくなってきていることが挙げられる。(1)くらしの困難に際して何処に相談に行けばいいのか、或いは関係先を盥回しにされたり、(2)離職者対策や社会福祉協議会の貸付制度などの公的セーフティネットが大幅に強化・拡充されているが、その情報が必要とされる人に伝わっていなかったり、(3)貸付要件や所得要件などにより、公的制度を利用できない人や生活再生を目的とした人への貸付制度が弱い、などが現状であり、課題となっているものと考える。
こういった課題に対して、くらしの総合相談窓口設置や、貸付先に富んだセーフティネット貸付制度の整備とその広報活動が求められてきている。
弁護士や司法書士に繋げばすぐに多重債務問題が解決していた従来までと異なり、債務整理した後の自立まで見守る地域の支援体制の確立が求められている。
平成19年の生協法の改正に伴い、生協制度による貸付事業の特質として、単に貸付けを行うのではなく、アセスメントと生活再建プランの策定が盛り込まれており、相談者の家計の状況・生活の状況・将来の状況などを含めて聞き取りをする中で、相談者の再建に繋がる貸付けを行い、家計診断やアドバイスをすることが盛り込まれている。また、総量規制の除外規定も盛り込まれている。
金融機関から借入れが出来なくなり、また、所得条件等で社会福祉協議会からも借入れが出来ない層に対し、生協の地域での相互扶助の理念を活かしたセーフティネット貸付けが求められているものと考える。
昨年の4月から盛岡市と提携して、生活再建資金貸付けを行っているが、貸付対象者は、過去に債務整理を行っている方や年齢制限・所得制限に抵触し社会福祉協議会から借入れが出来ない方などがほとんどである。本年4月からは、岩手県全市町村と提携して実施する予定である。
平成19年の生協法改正によりセーフティネット貸付けに取り組む生協が増えてきているが、全国には広がっていない。その要因として、新規に信用生協を設立する場合に純資産額5千万円を満たすことが必要であるが、これが困難であること、また、既存生協が新たに貸付事業に取り組むためには貸付事業のシステム構築にコストがかかること、また、貸倒リスクもあることから、ハードルが高いという現実がある。
生協制度によるセーフティネット貸付けを拡充するために、貸倒れに対する政府保証制度の創設を要望したい。一部の金融機関から「生活資金の貸付けは貸倒リスクが高いため、与信が困難」との指摘を受け、ネックとなっている。また、地域の自発的な生活の改善の取組みを支援する立場で、生協法の県域規制の緩和措置の検討をお願いしたい。
金利引き下げや総量規制の前倒しにより、他社の返済のための過剰融資は減少してきており、また、苛酷な取立てに関する相談も減少してきている。
今後の課題としては、セーフティネット貸付けの拡充や家計管理などの消費者啓発・消費者教育の拡充が必要であり、あわせて多重債務の要因の1つである「貧困問題」の解決に向けた取組みが重要となってきている。
【小澤敏郎氏の説明】
栗原市では、多重債務者救済のため「栗原市のぞみローン」という貸付制度を設けている。この貸付制度創設に取り組むきっかけは、平成19年6月の市議会の一般質問で自殺率の高い状況が指摘され、栗原市長が総合的な自殺対策に早急に取り組んでいくことを表明したことである。これを受け、栗原市いのちを守る緊急総合対策の社会的要因への1つの取り組みとして、平成20年1月4日に栗原市「のぞみローン」を開始した。
当該貸付制度は、栗原市が貸付資金として金融機関に1億円を預託し、栗原市、仙台弁護士会及び金融機関がそれぞれの専門分野で相互に協力・連携することで、多重債務者を救済していこうとするものである。
具体的な仙台弁護士会と栗原市の連携は、(1)無料法律相談の開設、(2)啓発広報に対する協力、(3)連携担当窓口の設置、等を内容とする「多重債務者救済連携協力に関する協定書」を平成20年3月7日に締結し、定期的に協議の場を設け、融資の個別案件の内容について指導を頂いている。
金融機関と栗原市との連携では、融資制度検討プロジェクトチームを設置し、市内の6つの金融機関の担当者から専門的な意見を伺い、現在も検討を行っているところ。
当該貸付制度の概要は、限度額1千万円以内・貸付利率7.9%(固定)・償還期間10年以内で、原則として、連帯保証人1人以上が必要で、家族になってもらうことが条件となっている。
当該貸付制度が有効と思われるケースは、法的整理を完了し、法的な整理に馴染まない債務(公共料金・家賃・教育費)などがあり、融資を受けなければ生活再建が困難なケースを想定している。
栗原市では多重債務相談を行い、多重債務者を仙台弁護士会や司法書士に誘導し、任意整理や特定調停等により、無理のない分割返済方法で生活の立て直しを図っており、ほとんどの相談者は「のぞみローン」を利用せず、解決に向かっている。
「のぞみローン」の平成21年11月30日現在の融資状況は、16件4,477万円であるが、「のぞみローン」の融資相談をきっかけとして、金融機関の既存のとりまとめローン等々での融資に至ったケースは、これまで合計59件6,982万円の実績がある。
多重債務相談の件数が増加しているが、その主な要因としては2つ考えられる。1つ目としては、「のぞみローン」の融資制度の宣伝効果が非常に大きかったものと思われる。また、2つ目としては、融資制度を勧める前に法律専門家の無料相談が受けられ、適切な債務整理方針を選択して解決へと導いてもらえるという栗原市の体制が多くの市民の信頼を得られてのものと実感している。
融資での解決を希望する相談者が、弁護士や司法書士から自己破産や任意整理等での解決方法の説明を受け、借換えが最良の方法でないことに気付くケースが数多くある。
その他の相談件数が増加している要因としては、市民の皆様がよく集まる集会所、金融機関ATMの入り口付近や医療機関などの404箇所へのポスターの掲示や広報誌などによる市民への広報が相当な効果を上げているものと考える。
栗原市の多重債務者対策「のぞみローン」の取組みは、ABCニュースやニューヨークタイムスなどの海外のメディアでも紹介されている。
これまでの取組みを通じて、市民との信頼関係はひとつひとつの問題を解決していく中でしか築けないことが分かった。
【質疑応答】
○ 消費者信用生活協同組合にお伺いしたい。相談を受けるためには、組合員となる必要があるのか。次に、栗原市にお伺いしたい。栗原市では、仙台弁護士会と連携して多重債務者を救済しているということであるが、仙台弁護士会は、他の市町村とも連携して同様の事を行っているのか。また、仙台弁護士会の費用負担はどうなっているのか。
(答:上田氏)相談については、組合員・非組合員を問わず、また、県内在住・県外在住を問わず、無料で行っている。貸付けを行う場合は、県内在住の組合員のみである。
(答:小澤氏)相談業務の経費については、弁護士費用の半額を栗原市が負担している。
○ 栗原市の参考資料3には、司法書士会も相談の受け手として記載されているが、弁護士会と同様と考えてよいか。
(答:小澤氏)宮城県司法書士会には、無償で手伝って頂いている。
○ 労働金庫と、ご説明にあったような栗原市のような自治体が緊密な連携をしていけば、生活保護の相談等にのることができるのではないかと感じた。今、連合の政策面の説明をして頂いたが、運動面での多重債務者への取り組みについて伺いたい。
(答:小島氏)多重債務問題については、労働金庫が相談、借換え等に長年取り組んできており、労働組合との連携が基本である。組合員の中にも多重債務者は存在するので、労働組合で相談を受け、労働金庫で相談業務や借換え等を行っていることを紹介するなど、日常的な労働組合と労働金庫との連携は行っている。また、栗原市のような自治体との連携も当然必要であると考えている。一部では労働金庫、47都道府県にある地方労福協等を媒介として自治体との連携に取り組んでおり、これを更に強化することが必要であると考えている。さらに、地方連合会やその下部組織である地域協議会では、従来、労働相談を中心に取り組んでい
○ 滋賀県野洲市の多重債務問題の取組みでは、多重債務者を救済することにより、公共料金の支払いや納税をすることができるようになり、結果として、滞納の改善により自治体にとってもプラスであったという事例があるが、そのような効果はあったか。
(答:小澤氏)資料の事例1のように、保育料を滞納していたがまとめて納めて頂いた例等、数多くの事例がある。
○ 個別の事例ではプラス効果が認められるものの、各自治体がこのようなスキームで取り組めば、どの自治体においても、ある程度の効果はあると考えてよいか。
(答:小澤氏)総合的に評価しても、市町村にとってプラスになると考えている。
○ 友愛社会を目指す鳩山政権になり、多重債務者を救済するためにも改正貸金業法の趣旨どおり完全施行を行うことが大事だと考えている。
○ 生活保護等の貧困対策の連携について、国の制度で変わればよいと思う点はあるか。
(答:小澤氏)現場の意見として、社会福祉協議会で行っているセーフティネットについては、十分周知されていないのではないかと感じている。取り扱い窓口等を工夫する必要があるのではないか。
○ セーフティネット貸付けについて、盛岡市と提携して行っているということであるが、実際にどのようなものか。
(答:上田氏)盛岡市から三千万円を信用金庫に預託してもらい、同額の信用金庫からの貸付枠でもって信用生協が貸付けを行っている。このことで貸付金利の低減を図っている。また、生活困窮者への相談と自立支援を内容とする生活再建支援等の業務を盛岡市から委託を受け、信用生協が行っている。
(以 上)
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(内線2648)