「自己資本に関する新しいバーゼル合意」の完成に向けた作業の進捗状況
バーゼル銀行監督委員会によるプレスリリース
バーゼル
2001年12月
※ なお、原文につきましては、国際決済銀行(BIS)のホームページ(http://www.bis.org)からも入手可能です。
〈本件に関する照会先〉
総務企画局国際課 渉外一係(内線 3162)
渉外二係(内線 3185)
プレス・リリース
バーゼル銀行監督委員会
2001年12月13日
「自己資本に関する新しいバーゼル合意」の完成に向けた作業の進捗状況
バーゼル銀行監督委員会は、本日、「自己資本に関する新しいバーゼル合意」の完成に向けた作業の進捗状況を点検した。当委員会は、最近数ヶ月間に公表された一連のワーキングペーパーに対する市場参加者との意見交換の深さと程度を極めて前向きに受け止めている。これらの対話は非常に建設的であった。「見直し後の合意」に関して提案されている修正は好意的に受け止められており、定量的影響度調査の結果は当委員会の目標の達成にかなり近づいていることを示唆している。これらに基づき、バーゼル委員会は、健全なリスク管理の実務に基づき、そしてそれに報いるような、「新しい自己資本合意」を完成させるとの目標を近く達成できるであろうと考えている。
「新しい合意」の完成に向けての新たなアプローチ
しかしながら、バーゼル委員会は、「見直し後の合意」がその目的を達成するようなものとなるように設計するうえで、次の市中協議文書に当委員会の最大限の努力を反映させる必要があると考え、これを自らに対する基準とすることとした。これを受け、当委員会は、次回の市中協議文書を公表する前に、「新しい合意」が銀行および銀行システムに与える全般的な影響を見極めるための追加的な検証を行うこととした。こうした、当委員会の「品質保証」のための作業は、以下の3つの点に焦点を当てる:
(1) リスク感応的な合意である必要性と、銀行が有効に活用できるよう十分に明快で機能し得る合意とする必要性との間のバランスをとること。
(2) 中小企業は経済成長と雇用創出の面で重要であるので、新しい合意の下で中小企業向け融資が適正な取扱いを受けることを確保すること。
(3) よりリスク感応的な内部格付手法を採用する銀行に若干のインセンティブを与えつつ、所要自己資本額が平均的に現行バーゼル合意とほぼ同額となるよう最低所要自己資本額を計算すること。
当委員会は、これまでは次の市中協議期間に並行的に影響度調査を実施することを計画していたが、現時点では、影響度調査をまず行うことが協議期間をより建設的なものとするうえで有用であると考えている。この追加的な検証を実施するため、当委員会の次回の市中協議文書は、以前に示唆されたように2002年の早い時期には公表されないこととなる。その代わり、当委員会は、まず、「証券化」や「特定の資産を返済源とする貸出」といった分野のように、市場参加者との意見交換が継続されている分野も含め、提案の全体像についての草案を具体的に詰めることを目指す予定である。完全に具体的な草案の全体像が用意された段階で、当委員会は草案の包括的な影響度調査を実施する予定である。
包括的な影響度調査の結果を織込んだ後、当委員会は正式な市中協議としてこれらの提案を公表する予定である。この市中協議文書には全ての関心のある主体からのコメントが歓迎される。当委員会は正式な市中協議期間を経た後、「新しい合意」を最終案とする予定である。バーゼル委員会は、以前、「新しい合意」を2002年に最終案とし、2005年にメンバー国で「新しい合意」を実施する予定であることを公表した。当委員会は今回行うこととした追加的な検証プロセスが非常に長いものになるとは考えておらず、したがって現時点では、「新しい合意」を最終案とする時期やそれを実施する時期について新たなスケジュールを公表することはしない。しかし、必要があれば、当委員会は今回行うこととしたステップが今後のスケジュールに与える影響を考慮する考えである。
「新しい合意」の実施を支援するためのイニシアティブ
「新しい合意」の完成に向けた作業の進め方に関するバーゼル委員会の上記のような決定を受け、当委員会は実施に向けての計画をたて始めることによって、各監督当局がそれぞれの作業に関する情報を共有し、そのことによって実施に向けたアプローチの整合性が確保されるようにする必要があると考えている。こうしたことから、当委員会は本日、「新規制の実施に関する部会」の創設を公表する。このグループは、カナダ金融監督庁長官のNicholas Le Panが当委員会を代表して率いることとなる。同グループは、監督当局が「新しい合意」の実施に関する情報と手法を共有する手段として機能することになる。
これは、合意が成功するためには、監督当局が新たな枠組みを実施に移す作業に対して強力な支援が不可欠である、との当委員会の見方を反映するものである。