IV 指定紛争解決機関の監督上の評価項目
IV-1 紛争解決等業務の運営態勢
IV-1-1 指定紛争解決機関の業務運営態勢
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(1)意義
指定機関が紛争解決等業務の公正かつ適確な運営を図り、もって利用者の信頼性・利便性向上を図るためには、指定機関において、業務運営に関する報告、意思決定、検証及び改善等の一連のプロセスの確立が必要である。
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(2)主な着眼点
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業務運営や予算措置等の決定権限・報告態勢を明確に規程等に定めるとともに、役員(理事会等の意思決定機関を含む。)が適切に紛争解決等業務に関する課題等の報告を受け、検討及び指示を行う態勢となっているか。
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指定機関全体の業務量を的確に把握した上で、例えば、業務量が増加した場合、職員又は紛争解決委員を機動的に増員するなど、業務量に応じた業務運営態勢を不断に見直し、整備を図っているか。
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紛争解決手続において、法人や高額請求に係る申立事案が増加した場合、個人や少額請求に係る申立事案に対するリソース(人員・費用等)の配分に支障が生じないような業務運営態勢となっているか。
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紛争解決等業務の運営状況に応じ、利用者利便の更なる向上(例:地方在住者のアクセスの向上、高齢者等への配慮等)について検討する態勢となっているか。
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障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)及び「金融庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」(平成28年金融庁告示第3号)に則り障害者への適切な対応を行う業務運営態勢となっているか。また、対応状況を把握・検証し、その結果を踏まえ対応方法の見直しを行う態勢となっているか。
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内部監査等により、紛争解決等業務の運営状況の適切性等を検証し、その検証結果等を踏まえた速やかな改善を行っているか。
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IV-1-2 職員の監督体制等
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(1)意義
指定機関においては、利用者からの相談・照会等への対応、苦情処理手続の実施及び紛争解決手続の補助等を当該指定機関の職員が行っており、公正かつ適確な紛争解決等業務の遂行のため、研修の実施等による職員の資質の維持・向上が必要である。したがって、金商法第156 条の44 第1項第8号及び指定機関府令第7条第3号においては、業務規程で定めるべき事項として、「紛争解決等業務を行う職員の監督体制に関する事項」が規定されている。また、紛争解決委員においても、公正かつ適確な紛争解決手続を実施するため、他の紛争解決委員との紛争解決等業務に係る情報の共有や金融商品等の知識の習得等が必要である。
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(2)主な着眼点
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苦情処理手続の実施等を担当する職員への定期的かつ十分な教育・研修の実施等を含めた職員に対する指導等、適切な措置を講じているか。
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公正かつ適確な紛争解決手続の実施のために必要となる情報・知識を、紛争解決委員間で共有する態勢を整備しているか。
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IV-1-3 紛争解決委員の選任及び排除等
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(1)意義
紛争解決委員の中立性・公正性を確保するため、金商法第156 条の44 第4項第2号においては、業務規程が適合しなければならない基準として、「紛争解決委員の選任の方法及び紛争解決委員が金融商品取引業等業務関連紛争の当事者と利害関係を有することその他の紛争解決手続の公正な実施を妨げるおそれがある事由がある場合において、当該紛争解決委員を排除するための方法を定めていること」が規定されている。紛争解決委員の選任の方法及び排除するための方法を定めるに当たっては、中立性・公正性の観点から適正かつ実効的な方法を定め、これに基づいて紛争解決手続を実施するとともに、利用者の信頼性を確保するための取組を行うことが必要である。
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(2)主な着眼点
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紛争解決委員の選任の方法
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イ.あらかじめ、紛争解決委員の候補者名簿を作成しているか。
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ロ.紛争の個々の事案ごとに適切に紛争解決委員を選任するため、紛争解決委員の選任権者及び選任の基準・手続を定め、これらに基づき紛争解決手続を実施しているか。特に、指定機関が業態ごとに設立されていることにも鑑み、紛争解決委員の中立性・公正性について十分な配意を行うことが必要である。
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紛争解決委員を排除するための方法
紛争解決委員の排除に係る当事者の申立てに基づき又は当該申立てを待たずに、指定機関が自ら調査・判断する方法を定め、それに基づき紛争解決手続を実施しているか。
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業界団体の役職員を紛争解決委員に選任する場合には、金商法第156 条の50 第3項において、紛争解決委員のうち少なくとも一人は、弁護士等に該当する者でなければならないと規定されていることを踏まえ、弁護士等を含めた複数の紛争解決委員の合議制による紛争解決手続を採っているか。また、IV-3で後述する、利用者アンケートの活用や外部有識者による事後的な検証等を含め、利用者の信頼性を確保するための取組を行っているか。
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IV-1-4 負担金及び料金
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(1)意義
金融ADR制度は、簡易・迅速かつ低廉な紛争解決の手段を提供するものであることから、利用者及び業者の経済的負担が過大で利用の障害とならないよう、金商法第156 条の44 第5項においては、業務規程が適合しなければならない基準として、業者が負担する負担金及び当事者から徴収する料金について、「負担金及び料金の額又は算定方法及び支払方法(以下「負担金額等」という。)を定めていること」及び「負担金額等が著しく不当なものでないこと」が規定されている。
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(2)主な着眼点
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負担金及び料金の額又は算定方法について、紛争解決等業務を継続していくために必要な経費を過度に上回らないように定めているか。
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負担金及び料金の額又は算定方法について、各業者及び利用者にとって合理的なものとなるように定めているか。特に、利用者の経済的負担が過大となり、指定機関を利用する障害とならないように定めているか。
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負担金又は料金の額を改定するための手続を定め、それに基づいた決定を行っているか。また、業者及び利用者に対し、改定内容を十分に周知しているか。
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IV-1-5 利用者等に関する情報の管理
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(1)意義
指定機関においては、紛争解決等業務を行う過程において利用者の個人情報を含む様々な情報を把握することになるが、これらの情報が漏えい等した場合、利用者に多大な不利益をもたらすとともに、金融ADR制度に対する信頼を失う原因ともなることから、その適切な管理を行うことが必要である。
このため、指定機関においては、紛争解決委員及び役職員又はこれらの職にあった者に対する秘密保持義務の遵守が定められている(金商法第156条の41第1項)。また、指定機関は、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第5項に規定する個人情報取扱事業者として、同法、個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)、同ガイドライン(外国にある第三者への提供編)、同ガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)及び同ガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)、金融分野における個人情報保護に関するガイドライン及び金融分野における個人情報保護に関するガイドラインの安全管理措置等についての実務指針に基づいて、適切な個人情報の取扱いを確保するための措置を講ずる必要がある。
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(2)主な着眼点
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役員は、利用者等に関する情報管理の適切性を確保する必要性及び重要性を認識し、適切性を確保するための組織の確立(部門間における適切な牽制の確保を含む。)、内部規程の策定等、内部管理態勢の整備を図っているか。
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利用者等に関する情報の取扱いについて、具体的な取扱基準を定めた上で、研修等により役職員等への周知徹底を図っているか。特に、当該情報の他者への伝達については、秘密保持義務等の観点から、十分な検討を行った上で取扱基準を定めているか。
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利用者等に関する情報へのアクセス管理の徹底(アクセス権限を付与された本人以外が使用することの防止等)、内部関係者による利用者等に関する情報の持出しの防止に係る対策、外部からの不正アクセスの防御等情報管理システムの堅牢化等の対策を含め、利用者等に関する情報の管理状況を適時・適切に検証できる態勢となっているか。また、特定職員に集中する権限等の分散や、幅広い権限等を有する職員への管理・牽制の強化を図るなど、利用者等に関する情報を利用した不正行為を防止するための適切な措置を講じているか。
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利用者等に関する情報の漏えい等が発生した場合に、適切に責任部署へ報告され、二次被害等の発生防止の観点から、対象となった利用者等への説明、当局への報告及び必要に応じた公表が迅速かつ適切に行われる態勢を整備しているか。また、情報漏えい等が発生した原因を分析し、再発防止に向けた対策を講じているか。
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IV-2 紛争解決等業務の適切性等
IV-2-1 相談等を受付けた場合の対応
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(1)意義
金融ADR制度においては、法令において苦情・紛争に関する特段の定義を設けておらず、指定機関は、業者が提供する金融商品・サービスに係るトラブルについて、幅広く紛争解決等業務の対象とし、利用者の相談等に応ずることが必要である。また、相談等に対しては、指定機関が、利用者との応対を通して事案の内容を適切に把握し、利用者の疑問等について、適確かつ分かり易く説明することが必要である。なお、金商法第156条の38第11項における「付随する業務」には、指定機関が指定を受けた紛争解決等業務に関する相談等の業務が含まれていることに留意する。
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(2)主な着眼点
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指定を受けた紛争解決等業務の金融商品・サービスに関する利用者からの相談等について、その内容に応じ、苦情処理手続の案内や他の適切な指定機関の紹介等を行っているか。
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利用者の立場に立った、分かり易い説明に努めているか。特に、銀行窓販等のように業態の異なる複数の金融機関が関係する場合、利用者にとって、どの指定機関に申し立てることが可能かなどについて、分かりにくい場合もあると考えられることから、関係する指定機関が連携しつつ、より一層、利用者の立場に立った丁寧な窓口対応を行っているか(IV-5-1(2)参照)。
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IV-2-2 苦情処理手続における留意事項
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(1)意義
指定機関は、迅速な苦情の解決を図るため、苦情処理手続に係る交渉経緯や進捗状況等を適時・適確に把握し、利用者からの求めや交渉の状況に応じて、適宜・適切な措置(利用者への助言や事情調査等)を講ずることにより、利用者と業者との間の自主的な解決を促すことが求められる(金商法第156条の49)。
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(2)主な着眼点
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苦情申立ての対象となった業者から当該苦情に係る対応の進捗状況及び対応結果の報告を受けるとともに、当該業者が誠実かつ迅速な対応を行ったかについて確認するなどにより、交渉経緯や進捗状況等を適時・適確に把握しているか。
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法令(金商法第156条の48、指定機関府令第11条)に定められた手続実施記録の作成について、苦情処理手続の実施の経緯等が、適切に事後的な検証を行うことが可能なものとなっているか。
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適切な苦情処理手続の実施を確保する観点から、当事者との応対方法や資料の授受等に関する具体的な取扱い等を定めているか。
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苦情の実態・原因等を適確に把握し、利用者にとって納得感のある苦情処理手続を行うため、できる限り申立本人からの事情聴取を行っているか。
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IV-2-3 紛争解決手続における留意事項
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(1)意義
金融ADR制度は、簡易・迅速な紛争解決手段を提供するものであることから、指定機関は紛争解決手続の標準的な進行について定める必要がある。この標準的な手続の進行に基づき、各指定機関が実施する紛争解決手続は、取り扱う金融商品・サービスの特性等により、指定機関間においてその実施方法や和解の成否に差異が生ずることがあるものの、当事者間の和解に向けて努力することが求められることはいうまでもない。なお、紛争解決手続の実施に当たっては、中立性・公正性を確保し、利用者の手続に対する納得感・信頼感の向上に留意した取扱いが必要である。また、金商法第156条の44第6項に規定されている特別調停案については、金融機関と利用者との間における金融商品・サービスに関する情報収集力や交渉力等の面の格差に鑑み、利用者保護の充実を図る観点から、金融ADR制度に定められた措置であることも踏まえ、有効に活用する態勢を整備することが必要である。
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(2)主な着眼点
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金商法第156 条の44 第4項第6号においては、業務規程が適合しなければならない基準として、「紛争解決手続の開始から終了に至るまでの標準的な手続の進行について定めていること」が規定されているが、これについては以下の点に留意する。
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イ.紛争解決手続の開始に当たっての手続の進め方(金商法第156条の44第4項第7号の規定により定めるものを含む。)、紛争解決手続の期日における手続の進め方及び紛争解決手続の終了に当たっての手続の進め方(同項第12号及び第13号の規定により定めるものを含む。)を、例えば、手続の進行の段階に応じて定めているなど、明確にしているか。
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ロ.上記イのうち、紛争解決手続の期日における手続については、当事者が作成する当該当事者の主張を記載した書面の提出の方法、紛争解決委員からの求めに応じた報告及び物件等の提出の方法並びに紛争解決手続の期日における主張の方法等を定めているか。
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ハ.紛争解決手続の開始から終了に至るまでの標準的処理期間を定めているか。
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紛争の実態・原因等を的確に把握し、利用者にとって納得感のある紛争解決手続を行うために、当事者の主張等を十分に把握した上で手続を実施しているか。また、その際、できる限り申立本人との面談により事情聴取を行うよう努めているか。
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利用者から再度の面談要請がある場合や和解案の論拠となった証拠書類等に関する説明の要請がある場合、特段の支障がない限り、当該要請に応えるなど、利用者の手続に対する納得感に配意した対応を行っているか。
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特別調停案の提示は紛争解決委員に委ねられていることに留意しつつ、紛争解決のために必要な局面において、特別調停案を適切に提示できるような態勢を確保しているか。
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法令(金商法第156条の50第9項、指定機関府令第14条)に定められた手続実施記録の作成について、紛争解決手続の実施の経緯等が、中立・公正な手続の実施等の観点から事後的な検証を行うことが可能なものとなっているか。
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中立・公正な紛争解決手続の実施を確保する観点から、当事者との応対方法や資料の授受等に関する具体的な取扱い等を定めているか。
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金商法第156条の50第4項ただし書きにおいて、紛争解決手続を実施しない事由として、「その他の事由により紛争解決手続を行うのに適当でないと認めるとき」又は「当事者が不当な目的でみだりに(紛争解決手続の)申立てをしたと認めるとき」が規定されているが、例えば、反社会的勢力からの不当な申立てに対し、同規定に基づき手続を実施しない態勢となっているか。
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IV-2-4 法令等違反に対する監督上の対応
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(1)意義
紛争解決等業務は、指定機関に対する利用者の信頼を基本としており、指定機関の中立性又は公正性等に疑念を生じさせるような法令等違反が発生した場合、金融ADR制度全体の信頼性に波及するおそれがあることを十分に認識し、指定機関は法令及び業務規程等を厳格に遵守し、公正かつ適確な紛争解決等業務の遂行に努めることが必要である。
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(2)主な着眼点
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法令等違反の発覚の第一報
指定機関において法令等違反が発覚し、第一報があった場合は、法令等遵守に係る規程等に則り、以下の点が行われているかについて確認する。
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イ.役員(理事会等の意思決定機関を含む。)及び内部監査部門等へ迅速に報告を行っているか。
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ロ.刑罰法令に抵触しているおそれのある事実については、警察等関係機関等へ通報しているか。
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ハ.法令等違反が発生した部署から独立した部署(内部監査部門等)又はそれに代わる検証によって、調査・解明を実施しているか。
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法令等違反届出書の受理
金商法第156条の56第2号及び指定機関府令第15条第3項の規定に基づき、指定機関から届出書が提出されるが、受理時において、同府令第15条第1項第4号に規定されている事項が記載されているかを含め、適切に届出がなされているかについて確認する。
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紛争解決等業務の公正性及び適確性の検証
法令等違反と紛争解決等業務の公正性及び適確性の関係については、以下の点に基づき検証する。
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イ.当該違反への役員の関与はないか。組織的な関与はないか。
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ロ.当該違反が指定機関の紛争解決等業務に与える影響はどうか。
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ハ.内部牽制機能が適切に発揮されているか。
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ニ.改善策の策定や自浄機能が十分か。責任の所在が明確化されているか。
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ホ.当該違反の発覚後の対応が適切か。
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IV-3 紛争解決等業務の公表・検証・評価
IV-3-1 紛争解決等業務の公表
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(1)意義
指定機関における紛争解決等業務の結果等に関する情報は、苦情・紛争の未然防止の観点から有用であるほか、利用者の指定機関に対する信頼性向上にも資するものである。このため、指定機関は、紛争解決手続の非公開の規定(金商法第156条の50第7項)にも留意しつつ、紛争解決等業務に関する情報を積極的に公表することにより、利用者等に対し情報提供等を行う(金商法第156条の45第2項)とともに、その内容の充実に努めることが必要である。
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(2)主な着眼点
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苦情処理手続・紛争解決手続に関する申立てや結果等の状況を分析した上で、ホームページやパンフレット等により、積極的に公表しているか。
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個別の苦情・紛争事案について、その概要や結果等をできる限り公表しているか。
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利用者アンケートや外部有識者による紛争解決等業務の事後的な検証・評価の結果及びそれらを踏まえた改善措置(IV-3-2)、又は紛争解決等業務の中立性・公正性を担保する方法(例:IV-1-2における苦情処理手続の実施等を担当する人材の育成方法、IV-1-3における紛争解決委員の選任方法)等について、できる限り公表に努めているか。
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IV-3-2 紛争解決等業務の検証・評価
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(1)意義
金融ADR制度は、利用者保護の観点から構築されたものであることから、指定機関においては、紛争解決等業務の運営に当たり、中立性・公正性を確保し、利用者の手続に対する納得感・信頼感を得られるよう努めることが肝要であり、これらを把握し、紛争解決等業務の改善につなげる取組が求められる。このため、利用者アンケートや外部有識者等による事後的な検証・評価を活用することが重要である。また、紛争解決等業務に関する利用者からの苦情に対し適切に対応するとともに、その原因分析等を行い、紛争解決等業務の改善につなげることも必要である。
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(2)主な着眼点
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紛争解決手続等を利用した利用者の意見・要望等について、和解に至らなかった事案を含めて利用者アンケート等により把握し、その結果を踏まえて、紛争解決等業務の改善措置を検討しているか。特に、当事者と面談を行わないまま紛争解決手続を終結した事案(書面による手続の実施)については、当事者の手続に対する納得感等を把握し、その結果を踏まえた対応を検討しているか。
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外部有識者による提言・諮問機関を設置するなどにより、紛争解決等業務の運営について事後的な検証・評価を行い、それを踏まえた紛争解決等業務の改善措置を検討しているか。なお、その際、個人情報の開示によるプライバシーの侵害、個別の紛争解決手続結果の蒸し返し及び紛争解決委員の独立性の侵害等の問題が生じないように留意しているか。
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金商法第156条の44第1項第7号においては、業務規程で定めるべき事項として、「紛争解決等業務に関する苦情の処理に関する事項」が規定されているが、これについては以下の点に留意する。
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イ.紛争解決等業務に関する利用者からの苦情について、公正な対応ができる態勢を整備しているか。
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ロ.上記イの苦情への対応結果等の検証を行い、その検証結果を踏まえて、紛争解決等業務の改善措置を検討しているか。
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IV-4 苦情・紛争事案に関する分析結果等のフィードバック
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(1)意義
指定機関は、業者等に対し情報の提供等に努めなければならない(金商法第156条の45第2項)とされていることから、苦情処理・紛争解決手続の状況等について、分析・類型化等を行うとともに、その結果を業者等にフィードバックし、苦情・紛争の未然防止の取組に努めることが必要である。
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(2)主な着眼点
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紛争解決等業務に関し、苦情・紛争の発生原因や商品分類等、多様な観点から分析・類型化等を行い、その結果を業者にフィードバックしているか。
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典型的な苦情・紛争事案や増加傾向にある苦情・紛争事案等について、適時・適切に業者にフィードバックしているか。
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上記の分析結果を、必要に応じて、関係機関(例:金商法第156条の44第1項第6号に規定する「他の指定紛争解決機関その他相談、苦情の処理又は紛争の解決を実施する国の機関、地方公共団体、民間事業者その他の者」)に提供しているか。
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IV-5 関係機関との連携
IV-5-1 他の指定紛争解決機関との連携
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(1)意義
現行の業態ごとに設立された指定機関は、専門性の活用、簡易・迅速な手続の実施、業界の自主規制・自助努力の枠組みと整合的等のメリットを有する一方で、各指定機関間の手続の相違等により利用者の使い勝手に影響することが想定される。このため、金商法第156 条の44 第1項第6号においては、業務規程で定めるべき事項として、「他の指定紛争解決機関その他相談、苦情の処理又は紛争の解決を実施する国の機関、地方公共団体、民間事業者その他の者との連携に関する事項」が規定されている。指定機関においては、他の指定機関との間で、苦情処理・紛争解決の状況等に関する情報交換、申立事案の内容に応じた他の適切な指定機関の紹介又は申立ての移送、職員等に対する研修等について連携を図り、一層の利用者利便の向上に努める必要がある。
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(2)主な着眼点
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申立てを受けた事案について、その内容に応じ他の適切な指定機関がある場合には、申立人の問題意識を的確に把握し、その意向を十分に確認した上で、速やかに当該指定機関の紹介等を行う態勢を整備するなど、実効性のある連携措置を定め、それに基づき紛争解決等業務を運営しているか。特に、銀行窓販等のように業態の異なる複数の金融機関が関係する場合、利用者にとって、どの指定機関に申し立てることが可能かなどについて、分かりにくい場合もあると考えられることから、関係する指定機関が連携しつつ、より一層、利用者の立場に立った丁寧な窓口対応を行っているか(IV-2-1(2)参照)。
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「金融ADR連絡協議会」(注)や指定機関間の情報交換等を通じて、指定機関間の連携を図り、手続の実施方法等の改善につなげるなど、利用者の利便性向上に努めているか。
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(注)金融ADR制度のフォローアップに関する有識者会議の提言を踏まえ、全ての指定機関の実務担当者等により構成。
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IV-5-2 その他の機関との連携
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(1)意義
指定機関は、指定機関間の連携を図ることに加え、利用者の利便性の向上や紛争解決等業務の円滑な運営等のため、指定機関以外の苦情処理・紛争解決に関係する機関との連携を図ることが求められる。このため、金商法第156 条の44 第1項第6号においては、業務規程で定めるべき事項として、他の指定機関のみならず、「その他相談、苦情の処理又は紛争の解決を実施する国の機関、地方公共団体、民間事業者その他の者」(以下「その他の機関」という。)との連携についても規定されている。指定機関は、金融トラブル連絡調整協議会やその他の機関との情報交換等を通じて、一層の利用者の利便性向上に努めることが必要である。
なお、その他の機関には、金融サ-ビス利用者相談室を設置して相談業務を行っている金融庁、消費者行政を所管する消費者庁、消費生活相談センタ-等を設置している都道府県等、民事一般について裁判外紛争解決手続を行っている単位弁護士会等、事業者と消費者との間に生じた紛争の合意による解決等を行っている国民生活センタ-及び法律相談に関する情報提供を行っている日本司法支援センタ-等が含まれる。
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(2)主な着眼点
その他の機関と苦情処理・紛争解決の状況等に関する情報交換等に努めるとともに、申立事案の内容に応じた適切なその他の機関の紹介等を行っているか。