衆議院財務金融委員会における麻生財務大臣兼金融担当大臣の所信表明

(平成28年2月10日)

(はじめに)

財務大臣兼金融担当大臣の麻生太郎でございます。本委員会の開催に当たり、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べます。

(日本経済の現状と財政政策等の基本的な考え方)

安倍内閣における三年間の経済再生に向けた取組により、日本経済はデフレ不況から脱却しつつあります。企業の経常利益は過去最高となるとともに、雇用・所得環境も確実に改善しております。

引き続き、民需主導の好循環を確固たるものにせねばなりません。「強い経済」の実現に向けて、これまでの経済政策を一層強化してまいります。

また、少子高齢化の進展は、国民の安心を支える社会保障制度の基盤を不安定なものとしかねません。デフレ不況から脱却しつつある今こそ、少子高齢化という構造的課題に真正面から取り組んでまいります。

さらに、社会保障制度を持続可能なものとするためにも、財政の持続可能性を維持することが必要不可欠です。今後、二〇二〇年度の基礎的財政収支の黒字化目標の達成に向けて、昨年策定いたしました「経済・財政再生計画」に基づき、「デフレ脱却・経済再生」への取組と、改革工程表を十分踏まえた歳出・歳入改革を着実に推進してまいります。

(平成二十八年度予算及び税制改正等の大要)

続いて、平成二十八年度予算及び税制改正等の大要を御説明申し上げます。

平成二十八年度予算は、一億総活躍社会の実現をはじめとした重要課題に取り組んでいくための予算です。また、「経済・財政再生計画」の初年度の予算として、その目安に沿って、一般歳出の伸びを対前年度で約四千七百億円に抑制し、公債金は、対前年度で約二兆四千億円の減額を行っており、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算となっております。

平成二十八年度税制改正におきましては、経済の好循環を確立する観点から、法人税改革として、課税ベースを拡大しつつ、税率を引き下げることで、企業の収益力を高め、投資や賃金引上げに積極的に取り組むよう促してまいります。

また、社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会における国の信認を確保するため、経済財政運営に万全を期し、来年四月には、消費税率の一〇%への引上げを確実に実施いたします。その際、消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として、軽減税率制度を導入いたします。

その他、所要の税制上の対応を行います。

また、関税改正につきましては、関税の暫定税率の適用期限の延長や個別品目の関税率の見直し等を行います。

このほか、国際金融につきましては、日本企業の海外展開を後押しするため、海外のインフラ整備事業に係る株式会社国際協力銀行の業務を強化する施策を講じます。

(今後の金融行政の在り方)

続いて、現下の金融行政について申し述べます。

経済の好循環を確固たるものにするためには、金融機関による質の高い金融仲介機能の発揮等により、企業活動を後押しすることが重要です。

金融機関には、取引先企業の事業内容や成長可能性等を適切に評価し、企業の生産性向上等につながる融資や本業支援に取り組むよう促してまいります。

さらに、金融・IT融合の急速な進展等、最近における金融を取り巻く環境変化に対応するため、金融関連制度の整備等を行ってまいります。

また、資本市場においても、市場の公正性・透明性を確保しつつ、経済の持続的な成長に資する、より良い資金の流れの実現に努めてまいります。

このほか、国際的な金融規制改革への対応については、全体として最適な金融規制の構築に向けて、積極的な問題提起を行ってまいります。

現在、日本の金融システムは、総体として健全であり、安定しておりますが、内外の経済・市場動向や、それが日本の金融システムに与える影響につきましては、引き続き、高い関心を持って注視してまいります。

(提出法律案の概要)

今後、御審議をお願いすることを予定している財務省関係の法律案は、「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案」、「所得税法等の一部を改正する法律案」、「関税定率法等の一部を改正する法律案」及び「株式会社国際協力銀行法の一部を改正する法律案」でございます。

また、金融庁関係の法律案は、「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案」でございます。

法律案の詳しい内容につきましては、今後改めて御説明をいたしますので、よろしくお願い申し上げます。

(むすび)

以上、財政政策及び金融行政等の基本的な考え方について申し述べました。今後とも、皆様のお力添えを得て、政策運営に最善を尽くしてまいる所存であります。

宮下委員長をはじめ、委員各位の御理解と御協力を切にお願い申し上げます。

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