令和4年5月12日

「Regional Banking Summit (Re:ing/SUM)地域金融のチカラでつくる未来」における取組み


 2022年2月12日放送の「Regional Banking Summit (Re:ing/SUM)地域金融のチカラでつくる未来」において、「子供の貧困問題解消に向けて地域金融機関が出来る7つのこと」[1]というテーマを掲げて、NPOや地域銀行等における子どもの貧困対策のこれまでの取組みや、両者の連携のあり方、貧困対策に取組む地域金融機関が留意すべき事項等について、NPOや地域銀行等の皆さまを登壇者としてパネルディスカッションを行いました。
 議論においては、今後、NPO等の支援団体と金融機関が連携を深め、金融機関側が貧困問題にさらに具体的に取り組んでいくため、下記のような論点が挙げられました。
 

【金融機関側と支援団体側とのコミュニケーション】

1.金融機関側と支援団体側が互いに何をして欲しいのか、何が出来るのか、意見交換レベルからでも相談を開始する  
 こと。金融機関というよりも地域における一つの団体として、支援団体側の「現場を理解して欲しい」という気持
 ちに寄り添うこと。

2.子どもの貧困問題に様々な立場から関与する関係者(例:金融機関、支援団体、自治体、地元企業等)の間に立っ
   て、それらをつなげられる『マルチリンガル人材[2]』を確保、育成すること。

3.金融機関側と支援団体側の双方が取り組みやすい、具体的な支援のメニューをたくさん用意し、共有すること。

【金融機関側の具体的な取組み】

4.こども食堂やシングルマザー等への支援、募金アプリの開発、金融リテラシー教育、支援団体のコンプライアンス
 強化等、具体的な取組みがすでに行われており、これらは、金融業界における横展開が可能なものであること。

5.金融機関が持つ既存の取引先(個人・法人)とのネットワークを活かした支援団体とのマッチングの促進や、金融
 機関の信用力の高さを活かした支援団体の情報発信、自治体との連携強化等が有用であること。

6.継続的な支援につなげる観点から、支援を行う現場の方と密にコミュニケーションをとり、変化するニーズを的確
 に把握するとともに、具体的な支援策の実施に際して、可能な範囲で、柔軟かつシンプルな運用とすること。

7.支援を継続的かつ実効的なものとするためには、経営のコミットメントとともに、金融機関内の部署間・支店間で
 の十分な連携が重要であること。そのためには、子どもの貧困問題の実態把握や、取組み事例の収集等を通じて金
 融機関内部全体での議論を喚起し、経営を含めた子どもの貧困問題への意識の醸成を図ることが肝要であること。

 こうした論点に対し、
 ・貧困の現場における課題は個別性・非定型性が高い一方、金融機関が出来ることはどうしても定型性・厳格性が
    必要となってしまうので、この乖離を埋められる取組みが必要。
 ・貧困対策は長期的な取組みではあるが、金融機関は、投資を長期目線で見ることが出来るし、いろいろなところ
  に効果が波及していったとしても究極的には地域経済に結びつくという意味で、投資主体として優れている
 ・長期的な取組みであっても、途中で貧困対策の成果が全く見えないということはない。取組みの成果が実ったと
    きにおける現場特有の喜びは確実に存在し、それは金融機関の一般的な業務で得られるものとはまた違った達成
    感を与えてくれるのではないか。
 ・金融機関の地域の信用力はとても高いので、地域に対して「金融機関が支援している」ことをメッセージで示し
    てくれるだけでも付加価値がある。
 ・金融機関の業務範囲について、昨今の規制緩和で金融機関が業務として取り組めることは増えてきている
 ・寄付をしたくてもどこにしたらいいかわからない、という方も多いので、金融機関は、そうした寄付先に関する
  情報を発信することで、取引先と支援団体等とのマッチングに協力出来るのではないか。また、業界団体がプ
    ラットフォームをつくり、あらかじめ一定の決まりを定めて支援団体に参加してもらうことで、支援する金融機
    関が支援先を一から選定するコストを業界全体として下げようとする取組みも行われている。
 ・金融機関内でも、部署横断的に取り組むことで、単独の部署では難しい取組み、新しい取組みも可能になるので
    はないか。また、金融機関同士や自治体との連携でも、様々な情報、知見を得ることが可能である。

といった意見が出されました。

 そのほか、具体的な議論の内容や登壇者の取組み等については、議事概要又は公表資料をご参照ください。
 
 当ラボは、今後も引き続き、貧困問題における金融分野の可能性について検証していきます。当ラボにご関心やご意見をお持ちの方は、以下の連絡先まで、ご連絡ください。
 
政策オープンラボ「貧困問題における金融分野の可能性ラボ」
連絡先:financial_inclusion@fsa.go.jp
 
PDF議事概要 子供の貧困問題解消に向けて地域金融機関が出来る7つのこと【前半】
PDF議事概要 子供の貧困問題解消に向けて地域金融機関が出来る7つのこと【後半】

PDF資料1 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社説明資料
PDF資料2 認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ説明資料
PDF資料3 一般社団法人全国子どもの貧困・教育支援団体協議会説明資料
PDF資料4 株式会社鹿児島銀行説明資料
PDF資料5 株式会社沖縄銀行説明資料
PDF資料6 株式会社東京スター銀行説明資料
PDF資料7 日本証券業協会説明資料

[ 動画新しいウィンドウで開きます(日経チャンネル)]子供の貧困問題解消に向けて地域金融機関が出来る7つのこと【前半】
[ 動画新しいウィンドウで開きます(日経チャンネル)]子供の貧困問題解消に向けて地域金融機関が出来る7つのこと【後半】
 

[1]「2019年 国民生活基礎調査(厚生労働省)」(2020年7月公表)によれば、子どもの貧困率は13.5%(約7人に1人)とされていることから、7という数字になぞらえて、「7つのこと」というテーマを掲げた。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa19/index.html新しいウィンドウで開きます
  

[2] 比喩的に、例えば、金融機関側の「言語」と支援団体側の「言語」の双方を理解したうえで、どのような取組みが出来るかについて具体的な検討を進めることが出来る人材。


 

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